うっとうしい雨の日が続きますね。九州の皆さん、大雨は大丈夫でしたか? インドもムンバイが大雨被害に見舞われています。そんなムンバイがまだ「ボンベイ」と呼ばれていた頃、多くの文学者がインド映画の現場に関わっていました。ある人は脚本家として、ある人は作詞家として、またある人はダイアローグ・ライター、つまりは、実際に俳優がしゃべるセリフを書き上げる人として。そんな時代を切り取った映画が、今週無料で見られます。以前こちらでお伝えした、TUFS Cinemaで上映される『マントー』(2018)です。もう一度、主要な情報を載せておきます。
映画『マントー』上映(2018/インド=フランス/日本語字幕付/上映時間118分/原題:Manto)
(1)東京
日時:2019年7月4日(木)18:00から、および同7月7日(日)16:00から
場所:東京都府中市朝日町3-11-1 東京外国語大学アゴラ・グローバル内プロメテウス・ホール(定員501)
どちらの回も予約不要。入場無料。先着順。
(2)大阪
日時:2019年7月5日(金)18:00から
場所:大阪大学中之島センター(大阪府大阪市北区中之島4-3-53)(定員192)
大阪会場については、入場無料、事前予約制といたします。
予約専用メール・アドレス: manto2019osaka@gmail.com (おひとりさま2席まで)
※どの回も、映画上映終了後、ダース監督(下写真)による解説(通訳付き)を実施します。
©Aditya Varma
ワークショップ開催
テーマ: 現代インド女性をめぐる問題:女優として、活動家として
日時:2019年7月9日(火)18:00から
場所:東京外国語大学(東京都府中市朝日町3-11-1)100番教室(定員60)
使用言語:英語(通訳なし)、入場無料、予約不要、先着順.
©Aditya Varma
『マントー』は1946年(インド独立1年前)のボンベイから始まり、1912年生まれのサーダト・ハサン・マントー(ナワーズッディーン・シッディーキー)がウルドゥ語作家としての地位を確立し、妻サフィア(ラシカー・ドゥッガル)と共に作家仲間のイスマト・チュグターイー(ラージャシュリー・デーシュパーンデー)やクリシャン・チャンダルらと語り合うシーンが写されます。彼はまた、映画界でも脚本家として名を馳せており、当時の人気スター、アショーク・クマールら映画界の友人も多くいました。
©Aditya Varma
そして、映画製作の現場ややり手プロデューサー(特別出演:リシ・カプール)とのやり取りなどが登場し、人気女優ナルギスやその母ジャッダン・バーイー(イラ・アルン)が顔を見せるパーティーも開かれたりしますが、やがて1947年8月15日のインド・パキスタン分離独立が到来。当初インドに留まると決めていたマントーも、様々な事情からボンベイを離れ、1948年にパキスタンのラホールに移り住むことになります。ラホールにもファイズ・アフマド・ファイズら文学者仲間がおり、またその後「ロリウッド」と呼ばれるようになるラホールの映画界もあったのですが、マントーは生活困窮を始め次々に困難と遭遇します。その一つが、彼の作品「冷たい肉」を猥褻だとして起こされた裁判で、その様子が劇中ではリアルに再現されています。また、「冷たい肉」の一シーンのほか、マントーの作品が再現されたシーンも、本作には随時挿入されています。
©Aditya Varma
マントーのストレスのはけ口は酒とタバコへと向かい、やがてアルコール依存症の治療のため入院した時にはすでに手遅れで、1955年1月18日、42歳で亡くなったのでした...。
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と、こんな風に1946年からの約10年間を描く意欲的な作品で、当時の様子も丁寧に再現されており、見応えがあります。一度見ただけでは人間関係や当時の情勢など、わかりにくいところがあるかも知れませんので、ぜひ事前の予習をしてお出かけになって下さい。事前の予習としては、こちらでマントー作品が読めますのでトライしてみて下さい。
「黒いシャルワール」 サアーダット・ハサン・マントー 著 鈴木斌、片岡弘次 編訳
「グルムク・スィングの遺言」 サアーダット・ハサン・マントー 著 鈴木斌、片岡弘次 編訳

Manto - Official Trailer | Nawazuddin Siddiqui | Nandita Das | In Cinemas 21st September 2018