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Channel: アジア映画巡礼
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Netflix インド映画&ドラマおススメ作品

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先週、ちょっと時間が出来たので見始めたら、ぐっと引き込まれたネットフリックスの作品がありました。インド製のドラマ『レイラ(Leila)』(2019)で、「シーズン1:1~6話」がアップされています。同名の原作があり、それに基づいたものですが、最後まで見た感じではまだまだこの先が続くようです。第一話の大まかなストーリーをご紹介しましょう。

現在は2040年代の後半。指導者ジョーシー(サンジャイ・スーリー)のもとアーリヤヴァルタという国が作られ、その中では各コミュニティが高い塀に囲まれたエリアの中で別々に暮らしていました。塀の中にあるお金持ちのコミュニティでは、きれいな空気と水を享受することができる一方、貧民たちはゴミ捨て場に隣接した、スラムのような場所に暮らしていました。シャーリニー(フマー・クレイシー)は使用人の若い女性サプナーも雇い、夫リズワーン・チョウドリー(ラーフル・カンナー)と娘レイラと共に広い家で何不自由なく生活していましたが、ある日室内プールで泳いでいいたリズワーンが侵入してきた男たちに襲われ、「水を無駄遣いして!」と殺されてしまいます。さらにシャーリニーは幼い娘レイラと引き離され、女性福祉センターという再教育機関へと連れ去られてしまいました。女性福祉センターではえんじ色のサリーを着せられた女性たちが、男性指導者グル・マ(アーリフ・ザカーリヤー)に命じられるまま、「わが血筋はわが運命、この国に生まれ私は幸運です」と唱えさせられ、自己純化に取り組んでいました。やがてシャーリニーは、ここに連れてこられた女性たちは異なる宗教間で結婚し、”混血児”を産んだ人が多いことに気がつきます。収容された女性たちは”純度”を高めるために毎日薬を飲まされ、やがてテストを受けて純度を測られるのですが、それは罪を犯したとされる仲間を殺す残酷なテストでした。そんなセンターで2年暮らしたシャーリニーは、テストに合格せず、今度は労働収容所に送られることになります。迎えに来たのは、労働収容所の若い監視員バヌ(シッダールト)でした。連れて行かれる途中、貧民街で暴徒に出くわし、車を倒されたのをきっかけにシャーリニーは逃げ出すのですが...。

同名の小説を原作とする、ディストピアものドラマです。ですが、何やら現代インドを彷彿させる事象がいろいろ出てきて、非常に不気味です。途中でバヌの正体がわかり、最後の回で指導者ジョーシーが姿を現して「この先はどうなるの?」と思わせられたところで第6話が終わるため、おそらくシーズン2が作られていると思うのですが、シーズン1の公開が2019年6月14日だったのに、まだシーズン2がアップされていません。これは、コロナ禍で撮影ができないのか(かなり現地ロケも多かったので、CGを使って合成するにしても、スラム街等でのロケが必要になるため厳しそう)、それとも、どこかから横やりが入ったのか...。監督は、ディーパー・メーヘター(『炎の二人』『とらわれの水』など問題作を作ったカナダ在住の女性監督)、パワン・クマール(カンナダ語映画『ルシア』の監督)、シャンカル・ラーマン(カメラマンとしてのキャリアが長く、監督作も撮っている人)の3人の名前がクレジットされています。ディストピアものはインドでは珍しいのですが、非常にうまく作ってあり、不気味な空気感にゾクゾクしました。5時間余り一挙に見てしまったので、翌日から眩暈に襲われて困っています...。下は『レイラ』の予告編です。

Leila | Official Trailer [HD] | Netflix

 

もう1本は、先日、4月16日にアップされたばかりのヒンディー語オムニバス映画『ただならない物語(Ajeeb Daastaans)』。ネトフリお得意のオムニバス映画ですが、今回は最初の2作は凡作、あとの2作が面白い、という作品になりました。第一話『愛人(Majnu)』は、地方の顔役と結婚したものの、彼に愛されず欲求不満の女性(ファティマ・サナー・シェイク)と、顔役に無理強いされて彼の元で働く、顔役の運転手の息子という三角関係の物語。監督は『バドリナートの花嫁』などのシャシャーンク・カィタン。

第二話『おもちゃ(Khilouna)』は、妹と二人で金持ちの家の通い使用人をしながら、男たちを手玉に取る若い女性(ヌスラト・バルチャー)が主人公。彼女たちが暮らす家のリアリティのなさが、ラージ・メーヘター監督の力量を見せてしまっていました。ヒット作『Good Newwz』を撮ったりしているんですけどねぇ。

第三話『濡れたキス(Geeli Pucchi)』は、『Masaan』(ネトフリにアップされていたのですが、捜す時には見つからず...。『生と死の間にあるもの』というような邦題だったと思います)のニーラジ・ガィワン監督の作品で、本作のどの映画評もこのパート推しになっています。主演は、コンコナー・セーン・シャルマーとアディティ・ラーオ・ハイダリー。被差別カースト出身なので差別され、学位を持つ事務職志願者なのに工場労働者として働かされる女性(コンコナー・セーン・シャルマー)と、バラモンの家の嫁であることからすんなり事務職で採ってもらえた女性(アディティ・ラーオ・ハイダリー)との、微妙な友情の物語です。ラストは、それでいいのか、という気がしないでもないのですが、あの紅茶カップがすべてをブチこわしたんだろうな、と納得。コンコナー・セーン・シャルマーの演技が光ります。

最後の『沈黙に包まれた会話(Ankahi)』は、何とカヨーズ・イーラーニーの初監督作品です。カヨーズ・イーラーニーという名前で、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』(2012)をパッと思い浮かべた人は凄腕インド映画ファンです。あの作品では、小太り大学生役で出演していた、ボーマン・イーラーニーの息子ですね。本作では、難聴の十代の娘のために手話を習った母親(シェーファーリー・シャー)と、聴覚障害者の写真家(マーナヴ・コウル)との淡い恋が描かれます。二人の流ちょうな手話は、日本語字幕で見ると非常に豊かな言語表現としてすんなりこちらに入ってきて、日本語字幕付き手話映画もいいなあ、と思わせられました。あの、どぎつい悪役が印象的なマーナヴ・コウルが、とても静かで知的な役柄を演じていて、このキャスティングも二重丸。手話を憶えようとしない夫にいらだつ母親、等の表現はステレオタイプでしたが、シェーファーリー・シャーもなかなかチャーミングでした。カヨーズ・イーラーニー監督、次作が楽しみです。

なお、ネトフリで4月30日から公開予定の『The Disciple(弟子)』も注目作です。監督は、『裁き』のチャイタニヤ・タームハネー。昨年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、つまり最高賞を獲得しています。日本で一般公開にならなくて本当に残念ですが、ネトフリで我慢しましょう。この間、ニュースに「米ネトフリ、会員伸び鈍化」という記事が出ていましたが、日本も、それからインドも、ここ最近、急激な新型コロナウィルス感染者数増加に見舞われていて、配信の存在感がまたまた大きくなるかも知れません。最後に、『ただならない物語』の予告編を付けておきます。

Ajeeb Daastaans | Official Trailer | Netflix India

 


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