先日<インディアンムービーウィーク(IMW)2021 パート2>で、ダブル・ヴィジャイと言うかトリプル・ヴィジャイを堪能しました。『マスター 先生が来る!』(2021)では、主演のヴィジャイと敵役のヴィジャイ・セードゥパティ、『俺だって極道さ』(2015)ではとっても若いヴィジャイ・セードゥパティを楽しんだわけですが、中でも『マスター 先生が来る!』はいい出来で、もう1回見てみたい、と思わせられました。まだまだ上映がありますので、ぜひご覧いただけるよう、以下に簡単な紹介を付けておきます。
『マスター 先生が来る!』
2021年/インド/タミル語/179分/原題:Master
監督:ローケーシュ・カナガラージ
主演:ヴィジャイ、ヴィジャイ・セードゥパティ、マーラヴィカ・モーハナン
ヴィジャイが演じるのは、今回は大学の教授J・Dことジョン・ドゥライラージ。勤務時間外は酒浸り、勤務時間内もスキットルが常にお供という破天荒なプロフェッサーなのですが、学生たちからは信頼され、慕われています。今回、学生自治会の選挙についても、教授たちが実施させまいとしたことに反対し、学生たちの味方となって選挙を実施。トップ当選した女子学生サヴィタ(ゴゥリ・G・キシャン/『'96』のジャーヌー役の女の子)と、次点となってしまった対立候補で、大物男子学生バールガウとの関係も修復させ、カップルにするという結果まで生んでしまいます。同僚の教授たちはジョンに冷たい目を向けますが、新任講師チャールー(マラヴィカ・モーハナン)だけはジョンに好意の視線を送っていました。
一方、十代の時に父親を3人の男に殺され、自身も少年院に入れられて辛酸をなめたバヴァーニ(ヴィジャイ・セードゥパティ)は、今や少年院を自分のシマとし、悪の限りを尽くす男になっていました。麻薬中毒にさせられている少年たちや、バヴァーニの手先となって大人になってからも少年院に居続ける青年たちのひどい実態に、NGOとして少年院に関わるうちに気づいたチャールーは、ジョンの少年院教官志願書をでっち上げ、3ヶ月間の臨時教官として彼を少年院に送り込みます。そこでジョンは目も当てられないようなひどい現状に直面し、青年組のボスであるダス(アルジュン・ダース/声がシブい! 今後の注目株です)らと対決しながら少しずつ少年院を変えていくのですが、もちろんバヴァーニが黙っているはずはなく、ジョンの行動を阻止するために彼と親しい大学生らを襲い、殺していくという作戦が展開されていきます...。
ストーリーを書き出してみると、かなり盛りだくさんで、外連味たっぷりのように思われますが、見ている時は上手な展開に乗せられてしまい、あれよあれよの3時間でした。ヴィジャイ作品はこれまで、決めゼリフ、決めアクション等々ド派手なものが多くて食傷気味になることもしばしばでしたが、今回は抑えてあって、全体のバランスがよかったのも見応えに繋がったのではと思います。脚本も担当したローケーシュ・カナガラージ監督は、ヴィジャイ作品は初めての人です。これまで馴染んだA.R.ムルガダース監督やアトリー監督から離れ、まだあまり実績のないローケーシュ・カナガラージ監督と組むのは不安もあったでしょうが、コロナ禍の本年1月に公開されて、前作『ビギル 勝利のホイッスル』(2019)にほぼ並ぶ25~30億ルピーという興収を上げた本作、ヴィジャイの新たなる転換点となるかも知れません。実績のない、と書きましたがこのローケーシュ・カナガラージ監督、2019年の『囚人ディリ』で早くも才能を発揮していたようで、IMW2021で当初予定されていたプログラム「タミル・クライム映画特集」に選ばれていました。『囚人ディリ』は今後あらためて見られるかも知れない、とのことなので、IMW公式サイト(『囚人ディリ』も紹介されています)を注目していて下さい。最後に『マスター 先生が来る!』の予告編をどうぞ。
Master - Official Trailer |Thalapathy Vijay, Vijay Sethupathi |Lokesh Kanagaraj |Amazon Prime Video
『俺だって極道さ』
2015年/インド/タミル語/139分/原題:Naanum Rowdy Dhaan
監督:ヴグネーシュ・シヴァン
主演:ヴィジャイ・セードゥパティ、ナヤンターラ、ラーディカ・サラトクマール
『俺だって極道さ』の方は、子供の頃から「警官になるか、極道になるか、どっちが得か」を考え続けて来た、警察官を母(ラーディカ・サラトクマール)に持つパンディヤン(ヴィジャイ・セードゥパティ)のお話です。大きくなってからは、自分は極道になったつもりでいるものの、ただの理屈っぽいウザ男だったパンディヤンですが、ある時聴覚が不自由な娘カーダンバリ(ナヤンターラ)と知り合い、警官だった彼女の父を殺した犯人を追ううちに、ホンモノの極道世界に巻き込まれることになります。勘違い男の軽いコメディ+アクション映画になるはずだったのでしょうが、あれこれ理屈がぶら下がって、少々くどい作品になってしまいました。でも、ヴィジャイ・セードゥパティのファンにとっては、体重が現在の3割減、細面で若さが溢れるヴィジャイ(あっちのヴィジャイよりもいい男かも)を拝める、またとない作品です。昔見た『ピザ』(2012)を思い出してしまいましたが、ナヤンターラも若くて、過剰アイメイクの『まばたかない瞳』とをつい比べてしまったのでした。こちらも予告編を付けておきます。
Naanum Rowdy Dhaan - Official Trailer | Vijay Sethupathi, Nayanthara | Anirudh | Vignesh Shivan
IMWのキネカ大森での上映は10月7日(木)まで続きます。たくさんの作品を、ぜひ楽しんで下さいね!