本日、10月30日から始まる第34回東京国際映画祭のラインアップが発表されました。今年の東京国際映画祭の会期は10月30日(土)~11月8日(月)で、場所が六本木から日比谷に移ったほか、プログラミング・ディレクターが矢田部吉彦さんから市山尚三さんに交替、石坂健治さんの肩書きもシニア・プログラマーとなりました。ラインアップ発表記者会見の詳細はこちらの公式サイトを見ていただくことにして、まずは上映予定のアジア映画の一覧をざーっとアップしてしまいます。付けられている解説と画像は公式サイトのものをコピペしましたが、※以下は私のコメントです。
[コンペティション]
『アリサカ』
フィリピン/原題:Arisaka
監督:ミカイル・レッド
『バードショット』のレッド最新作。護送中の証人が襲撃され、ただひとり生き残った女性警官が先住民の家にかくまわれる。だが、そこにも追手が迫ってきて…。バターンを舞台に繰り広げられるアクション・スリラー。
©TEN17P
『その日の夜明け』
スリランカ/原題:/英題:The Dawning of the Day
監督:アソカ・ハンダガマ(අශෝක හඳගම)
若きネルーダが見た英領セイロン。1929年、英領セイロンにチリ領事として赴任した詩人パブロ・ネルーダは、前任地で受けた心の傷を癒すため海辺で静かな生活を始める。植民地時代のスリランカを描いた意欲作。
©Asoka Handagama
『四つの壁』
トルコ/原題:/英題:The Four Walls
監督:バフマン・ゴバディ
クルド人音楽家を襲う悲劇、その克服。クルド人の音楽家のボランは、妻と子供を呼び寄せる日を楽しみにしながら部屋のローンを返済するために働いている。そんなボランを悲劇が襲う。『亀も空を飛ぶ』(04)のゴバディによる強烈な人間ドラマ。
©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED
『オマージュ』
韓国/原題:/英題:Hommge
監督:シン・スウォン(신수원)
明らかになる女性映画監督の歴史。仕事に行き詰まった韓国の女性映画監督が映画の修復の仕事を依頼される。その作業は自国の女性映画監督が辿った苦難な道のりを明らかにする。『パラサイト』(19)のイ・ジョンウンが主演。
©2021 JUNE Film. All Rights Reserved.
『一人と四人』
中国/原題:/英題:One and Four
監督:ジグメ・ティンレー
チベット映画期待の監督デビュー作。密猟が横行する雪山。山小屋の管理人の前にひとりの男が現れ、やがてひとり、またひとりとクセのある男たちが山小屋を訪れる。チベット映画の雄、ペマ・ツェテンがプロデュース。
※ジグメ・ティンレー監督はペマ・ツェテン監督の息子なのだとか。
©Mani Stone Pictures
『復讐』
フィリピン/原題:/英題:Payback
監督:ブリランテ・メンドーサ
スラム街のリアリティを描く衝撃作。警察に目をつけられたバイク泥棒のイサークは、ボスに庇護を頼むが冷たい扱いを受ける。イサークはボスに対する復讐を企むが…。スラム街の犯罪組織の中でもがく男を描いた作品。
※メンドーサ監督作品は[ガラ・セレクション]部門にも1本あります。
©Cignal TV, Inc.
[アジアの未来]
『アメリカン・ガール』
台湾、香港、中国/原題:/英題:American Girl
監督:ロアン・フォンイー (阮鳳儀)
LAから台北へ帰還した少女。SARSが猛威を振るう2003年、アメリカから台湾に帰還した13歳の少女と家族。母の病や同級生との確執など、監督の自伝的要素も挿入される。母親役は『百日告別』(15/トム・リン監督)のカリーナ・ラム(林嘉欣)。
『ASU:日の出』
スリランカ/原題:Asu
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
ひとりの女性の生と死を見つめて。幸せな日々を送る妊娠中の妻に癌が見つかる。夫の説得も聞かず、子供を守るべく癌治療を拒み続けるが、自身は衰弱していく。新鋭サンジ―ワ監督(『バーニング・バード』/東京フィルメックス2017審査員特別賞)第3作。
『もろい絆』
インド/ヒンディー語、英語/原題:Jhini Bini Chadariya/英題:The Brittle Thread
監督:リテーシュ・シャルマー
聖地ヴァラナシを巡るふたつの物語。ヒンドゥー教とイスラム教の複雑な歴史背景をもつ古都ヴァラナシを舞台に、手織りサリー職人の男、ストリートダンサーの女、それぞれのドラマが並行して進行するが、ある事件が起こり…。
※ムスリムの手織り職人とイスラエル人旅行者、キャバレーダンサー(仮設舞台でセクシーな踊りを見せるダンサー)と彼女を愛するチンピラ、という2組の男女の物語が進行するのですが、意外な事件が起こり、それがまた意外な結果に。ダンサーの女性の腰の動きが見事で、プロのキャバレーダンサーをキャスティングした? と感心。
©Hardhyaan Films
『ブローカーたち』
フィリピン/原題:/英題:The Brokers
監督:ダニエル・R・パラシオ
不動産ビジネスの闇に迫る社会派。新人社員マイクが手がける土地開発ビジネスと、土地を追われる多くの人々との衝突を描く緊迫の社会派ドラマ。新鋭パラシオ監督(『アンダーグラウンド』/TIFF2017出品)注目の第2作。
©Center Stage Productions (CSP) Co.
『異郷の来客』
中国/原題:/英題:The Coffin Painter
監督:ダーフェイ (大飛)
息子を殺された老父と少女の交流。息子殺しの犯人が刑期を終えて出所するのを待ち続ける画棺匠(棺桶に絵を描く画家)の老父。ところが近所に越してきた母娘との交流で変化が兆す。果たして復讐の行方は?
©Shenzhen Moon Pictures Co., Ltd.
『最後の渡り鳥たち』
トルコ/原題:/英題:The Last Birds of Passage
監督:イフェト・エレン・ダヌシュマン・ボズ
ノマド(遊牧民)の家族ドラマ。夏と冬が来る度にラクダやヤギとともに移住するテント暮らしの遊牧民の家族。伝統的な暮らしと近代化の間で揺れるなか、移動の季節が巡ってくる。彼らはどんな未来を選択するのか?
©IEDB Film
『ザクロが遠吠えする頃』
アフガニスタン、オーストラリア、オランダ、イラン/原題:/英題:When Pomegranates How
監督:グラナーズ・ムサウィー
緊迫のアフガニスタンから届いた1本。内戦の最中、働いて家族を支える少年がオーストラリア人記者と知り会い、俳優になる夢を叶えようとするが…。イラン出身の女性監督が隣国の子供たちを活写。
『世界、北半球』
イラン/原題:/英題:World, Northern Hemisphere
監督:ホセイン・テヘラニ (حسین تهرانی)
少年の瞳に映るイランの農村。14歳の少年は父のいない家族の中で重要な働き手。母の希望で農地を借りて耕すことになるが、地中から人骨が見つかり家族は翻弄されていく。テヘラニ監督渾身のデビュー作。
[ガラ・セレクション]
『チュルリ』
インド/マラヤーラム語/原題:Churuli(ചുരുളി)
監督:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
インドの山奥で起こる奇怪な事件。『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(19)の監督ペッリシェーリの新作。山奥の村チュルリで起こっ ていることを調査するために村にやってきた刑事たちが巻き込まれる奇怪な出来事を描く。
※『ジャッリカットゥ』で肉屋のヴァルキを演じたチェンバン・ヴィノード・ジョーズがまたまた出演しています。あのタマゴ顔のおじさんは、リジョー監督映画のミューズ??
©Movie Monastery
『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』
フィリピン、日本/原題:Gensan Punch
監督:ブリランテ・メンドーサ
巨匠メンドーサ×尚玄主演の日比合作。義足のため日本でのプロボクサーへの道が閉ざされた津山尚生はフィリピンへ渡って挑戦を続ける。くじけず目標に向かう実在のボクサーをモデルに、彼を支える異国のコーチ、仲間たちの姿を描くヒューマンドラマ。
©2021 GENSAN PUNCH Production Committee
『リンボ』
香港/原題:智齒/英題:Limbo
監督:ソイ・チェン (鄭保瑞)
猟奇的連続殺人事件の謎を追う刑事。香港のスラム街で起こる猟奇的な連続殺人事件を追う刑事をモノクロ映像で描く。ラム・カートン(林家棟)と池内博之が共演。スラム街を再現した美術も素晴らしい。ベルリン映画祭で上映。
©2021 Sun Entertainmen」t Culture Limited. All Rights Reserved
『MEMORIA メモリア』
コロンビア、タイ、フランス、ドイツ、メキシコ、カタール/原題:Memoria
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
今年のカンヌ映画祭審査員賞受賞作。全編が南米コロンビアで撮影されたアピチャッポンの最新作。不気味な爆発音に悩まされつつ、ボゴタから山の中の小さな町へと旅するヒロインをティルダ・スウィントンが演じる。
©Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF/Arte and Piano, 2021.
『Raging Fire(英題)』
香港、中国/原題:怒火/英題:Raging Fire
監督:ベニー・チャン (陳木勝)
中国4週連続No.1大ヒット! ドニー・イェン(甄子丹)×ニコラス・ツェー(謝霆鋒)が大激突! 麻薬事件を追う刑事と凶悪な犯罪集団のボス。ふたりの宿命が交差した時、怒りの炎が燃えあがる! 香港映画界の巨匠ベニー・チャン監督遺作。
©2021 Emperor Film Production Company Limited Tencent Pictures Culture Media Company Limited Super Bullet Pictures Limited ALL RIGHTS RESERVED
[ワールド・フォーカス]
『テロライザーズ』
台湾/原題:/英題:Terrorizers
監督:ホー・ウィディン (何蔚庭)
通り魔事件に始まる台湾の群像ドラマ。第21回東京フィルメックスで上映された『幸福城市』の監督ホー・ウィディンの最新作。台北駅で起こった通り魔事件に始まり、台北に住む数人の若者たちの日常を錯綜させたドラマ。トロント映画祭でワールドプレミア上映された。
『復讐は神にまかせて』
インドネシア、シンガポール、ドイツ/原題:/英題:Vengeance Is Mine, All Others Pay Cash
監督:エドウィン
ロカルノ映画祭金豹賞受賞作。マッチョな荒くれ者の青年は、ケンカに強い女性と恋に落ちるが、実は性的不能のコンプレックスを抱えていた…。撮影は名手・芦澤明子。Tokyo Gap-Financing Market 2020参加企画の作品。
©Palari Films
[TIFFシリーズ]
フォークロア2『お出かけ』
シンガポール/原題:/英題:Folklore 2: The Excursion
監督:ニコール・ミドリ・ウッドフォード
エリック・クーが製作するホラー・シリーズ「フォークロア」から、シンガポールのニコール・ミドリ・ウッドフォード監督『お出かけ』、松田聖子監督作品『あの風が吹いた日』の2作品を上映。
©2021 HBO Pacific Partners, v.o.f Folklore is a service mark of HBO Pacific Partners, v.o.f. All rights reserved.
『最初の花の香り』
台湾/原題:/英題:Fragrance of the First Flower
監督:エンジェル・テン [鄧依涵]
女性の同性愛を扱った台湾のシリーズ。LGBTQ作品に特化した台湾の動画配信サイトGagaOOLala製作のミニ・シリーズ。平凡な家庭の主婦が、高校の後輩との再会を通して新しい自分を発見するまでを描いた作品。パリで開催されるSeries Maniaで上映された。
©Portico Media Co., Lt
作品一覧は公式サイトのこちらからご覧になれます。予告編が付いているものもありますので、いろいろ検索してみて下さいね。チケットの売り出しは10月23日(土)からなので、じっくりと検討する時間がありそうです。なお、東京FILMeXの方は、会期は10月30日(土)~11月7日(日)の予定で、ラインアップ発表は10月6日(水)とのこと。フィルメックスもちゃんと開催されますので、安心して下さいね。関連映画祭やイベント情報は、またのちほどお伝えします。