何だか梅雨のような日々に逆戻りし、今さらながら、まだ7月半ばなのねー、と気がつく日々です。日本でも局地的なゲリラ豪雨が降ったりしていますが、インドでは約1ヶ月前にやってきたモンスーンが、最初アッサム州などで大暴れしたかと思うと、今は西インドに移ってきて、特にグジャラート州が水浸し状態です。グジャラート州だけでなく、中央部のUP州、MP州、マハーラーシュトラ州、テランガナ州などでも洪水が起きています。都市部では自動車が水浸しになり、農村部では立ち往生したバスや川沿いの家屋が流されるといった映像が、ニュースではくり返し登場してきます。毎年の事とは言え、やはり経済発展と自然保護とのバランスがうまくいっていない証左のような気がします。
そんな中で、7月29日(金)から公開予定の『ハーティ 森の神』(2021)を見ると、象さんならずともSDGSのために立ち上がらないと、と思ってしまいます。『ハーティ 森の神』はいろんな要素を詰め込みすぎてちょっと印象が散漫になってしまいましたが、元々主人公の「森の神」の主張は、象や他の動物たちが安心して暮らせる自然を守れ、ということなので、実に時宜にかなったまっとうな主張なのです。今日は、この映画の登場人物たちと、ついでに登場動物たちを簡単にご紹介しておこうと思います。(固有名詞表記は、配給会社の表記と一部異なっているものがあります)
スミトラーナンダン(ラーナー・ダッグバーティ)
大統領からは「森の人」という称号を授けられ、村人たちからは「森の神」と呼ばれている中年男性。祖父から受け継いだ「森を守り、森の生き物たちを守れ」という教えを実践しており、象たちを自分の友とし、鳥など動物たちの言葉も理解できるほか、木や植物にも愛情を注ぐ希有な人。それだけに直情径行型で、人々から誤解を受けたり、敵対する人物たちに付け入られてしまうことも。祖父がかつて、自然環境保護地区とすることを条件に国に寄贈した土地に、開発ディベロッパーDRL社が広大なリゾートを作ろうとしていることに反対して立ち上がる。
Rana Daggubati:1984年12月14日マドラス(現チェンナイ)生まれ。2010年テルグ語映画『Leader(リーダー)』でデビュー。主な出演作に『Baby(ベイビー)』(2015/ヒンディー語)、『バーフバリ 伝説誕生』(2015)、『Bangalore Naatkal(バンガロールの日々)』(2016/タミル語)、『インパクト・クラッシュ』(2017/ヒンディー語)、『バーフバリ 王の凱旋』(2017)、『Bheemla Nayak(ビームラ・ナーヤク)』(2022/テルグ語)などがある。
シャンカル(プルキト・サムラート)
雄象チョートゥを相棒とする、お気楽な象使い。DRL社が森の象たちの襲撃に遭ったため、象たちを近づけない役目を負うクムキー(囮の象)として雇われたチョートゥ、そして母方の叔父と共に、山中の開発現場にやってくる。だが、そこで一瞬出会った過激派の女性戦士アルヴィに一目惚れ。過激派部隊のリーダーであるアルヴィの兄アーラヴの所に結婚申し込みに行くことを夢みるが、アルヴィは彼など歯牙にもかけていない様子。シャンカルは彼女の写真が載ったを指名手配書を、後生大事に持っているのだが...。
Pulkit Samrat:1983年12月29日ニューデリー生まれ。2005年にムンバイに移り住み、モデルやテレビの仕事を経て、2012年にヒンディー語映画『Bittoo Boss』の主演で映画デビュー。若者コメディ『Fukrey(怠け者)』(2013)で顔が知られるようになり、続編『Fukrey Returns(帰ってきた怠け者)』(2017)はヒット作となった。他にもコメディ映画を中心に、多くの作品で主演している。
アルヴィ(ゾーヤー・フセイン)
幼い時、森の民に味方した父を警官に殺され、兄アーラヴと共に孤児になって、反政府活動に参加する。勇猛果敢な女性兵士で、銃だけでなく弓矢の腕前も抜群。シャンカルも矢を射かけられたが、その矢じりを大事に取っておきペンダントにしている。しかしアルヴィは異性への興味などゼロで、自分たちの理想を実現するための過激派としての闘争に身を投じていく。
Zoya Hussain:1990年10月1日ニューデリー生まれ。2017年アヌラーグ・カシャップ監督に見出され、『ブローラー/喧嘩屋』(2018)のヒロイン役でデビュー。言語に障害がありながらも、自立的に生きる大学生を演じて注目され、インドのジャーグラン(目覚め)映画祭で主演女優賞を獲得したほか、Zeeシネ・アワードの新人女優賞にもノミネートされた。今後が期待される女優である。
アルンダティ(シュリヤー・ピルガーンオカル)
新聞記者。DRL社が建設する山間リゾートの取材に来て、「森の神」の存在と主張を知り、密着取材を始める。彼の論理の方が正しいと思ったアルンダティは、「象の生息地を人が侵害」という記事を書き、新聞に掲載するが、DRL社のオーナーである大臣ジャガンナート・セーワクに睨まれ、脅しをかけられる。いろんな迫害を受けるが、それでも最後まで「森の神」に味方して森と動物たちを守ろうとする。
(Wiki:Shriya Pilgaonkarより)
Shriya Pilgaonkar:1989年4月25日生まれ。父はヒンディー語映画『Geet Gata Chal(歌歌いつつ)』(1975)などで人気者になり、その後ヒンディー語映画とマラーティー語映画で活躍している俳優サチン、母も女優スプリヤー・ピルガーンオカルという夫婦の一人娘として生まれる。幼い頃は子役で映画出演したりもしたが、日本語を習っていて将来は翻訳者になろうと思っていたという。舞台経験も経た後、2013年に父サチンが監督・主演したマラーティー語映画『Ekulti Ek(唯一のもの)』で映画デビュー。2016年にはシャー・ルク・カーン主演作『ファン』でヒンディー語映画デビューも果たした。その後も主としてヒンディー語映画の出演を続けている。
象さんたち
映画の冒頭で、水飲み場に集まってくる象たちの名前が、ヒンディー語の文字(デーヴァナーガリー文字)で書かれて画面に出てくるシーンがある。順番に列挙すると、シャールダー、マヒマー、カーヴェーリー、インドラーワティー、チャンパー、クシプラー、パドミニー、ナリニー、ガンガー、ボーラー、ガリマーとなる。ボーラーは子象で、この子だけが雄、あとは全部雌の名前である。
そのほか登場する動物たちには、リス、トラ、サル、鹿などがいるが、最初に登場する青い鳥と共に、すべてCG処理で登場させた動物ではないかと思われる。その他リアル動物では、警察犬も含め犬が出てくるが、中盤に登場する黒い犬はタレント犬らしくなかなか芸達者である。
いかがでしたでしょうか。ラーナーさんだけでなく、他の俳優たち、動物たちにもぜひご注目下さいね。最後に映画のクレジットと予告編を付けておきます。
『ハーティー 森の神』 公式サイト
2021年/インド/ヒンディー語/123分/原題:Haathi Mere Saathi
監督:プラブ・ソロモン
主演:ラーナー・ダッグバーティ、シュリヤー・ピルガオーンカル、ゾーヤー・フセイン、プルキット・サムラート
配給:ツイン
※7月29日(金)よりロードショー
『ハーティー 森の神』予告編