来週の大学の授業が、学園祭や入試等で3大学とも休みになったため、思い切って台北の金馬国際影展にやって来ました。台北に来るのは5年ぶりで、金馬国際影展となると、以前一度だけ来たのがもう20年近く前だったか...というところです。以前に来た時は、確か長春路あたりにあった映画館での開催だったと思うのですが、今回は何と、西門町の映画館が会場になっていて、これは便利! 台北新光影城とin89豪華數位影城で、今日行った新光影城の方は古い商業ビルの4階で行くまでは場末感が漂うものの、3スクリーンある立派なシネコンでした。
チケットも、台北金馬影展(台湾映画界の最大のイベントと言っていい映画賞金馬奨の授賞式が11月25日に行われ、それまでの期間、金馬国際影展という国際映画祭が3週間にわたって開催されます)のHPから簡単に申し込めるので、ついつい7枚も予約してしまいました。支払いはヴィザかマスターカードで処理でき、座席指定もできます。1度に8作品まで申し込めて(時間制限があるので、これがなかなか難しい)、申し込んだ単位ごとにQRコードが付与されて来ますので、それを会場の発券機にかざせば、下のようなチケットが出てくる、という、どこかの映画祭に教えてあげたいような便利&親切なシステムです。なお、私は「敬老愛心票(シニアチケット)」なので、何と1枚125元(500円弱)。でも、普通のチケットでも前売り券なら昼間の上映で150元(600円弱)、夜の回でも190元(約750円)なので、本当にお安いのです。
本日見たのは、クリストファー・ドイルが自らの来し方を語る『風(Wind)』と、裸体写真家として過激な写真を街中で撮っている中国のカメラマン任航をフィーチャーした『我有一個憂鬱的,小問題(I’ve Got a Little Problem)』というドキュメンタリー2本立てでした。『風』の方は、モノクロ画面でドイルがオーストラリアで育った幼い時からの思い出を語っていき、その合間合間にカラー画面でイメージ映像やドイルの仕事の映像、そして彼がこれまで手がけた作品のクリップが挟まれる、という構成です。「小さい頃父親に海にほりこまれてね、それから海に馴染んでいったんだ」「オーストラリアは70~80%が砂漠だ。オーストラリアにいると砂漠は親しい存在なんだが、後年自分がこんなにたくさん砂漠での映画を撮ることになるとはね」といったことを英語で語っていくのですが、20歳ぐらいの時に商船に乗り込んであちこち回ったことや、イスラエルのキブツにいたこと、インドのナガランドやビハールでも灌漑の仕事をしていたことなどもその中に入っています。「インドではね、50歳ぐらいの人を使って仕事をさせてたんだよ、20歳の若造がね。なぜって、ぼくは英語をしゃべる白人だったからね」
その後香港にやって来たのが、ちょうど中国の文化大革命が終熄した頃だった、と言いますから1970年代末でしょうか。香港中文大学で北京語を学び、その時先生から「君の名前は?」と聞かれて「クリストファー・ドイルです」と答えたところ、「それでは不十分だね。杜可風にしなさい」と命名されたのだとか。「中国語で”君子可風(如風?)”という言い方があるんだよ。それから取られたみたいだ」とか、実に多岐にわたってトークを繰り広げてくれます。特にこの話以降は標準中国語でのトークが続き、台北に着いて「10ヶ月ほど学んだ普通話の知識はどこへ行ったの、私!」と落ち込んでいた私の耳にもとても分かりやすい中国語で、感心してしまいました。
もう1本の『我有一個憂鬱的,小問題』は、日本のアラーキーとかも意識しているという任航の写真やパフォーマンスをこれでもか、と見せてくれるのですが、性器がもろに写っていたりと、美を感じるよりも気持ち悪い写真が多く、ぺらぺらと話す任航という人にも好感がまったく持てなくて、げんなりしてしまいました。結構な仲間が協力してくれて、屋上やスタジオで全裸になってくれているのですが、このカメラマンのどこに人を引きつけるものがあるというの、という感じの人で、最後の方では旅の疲れもあって寝てしまいました(機内上映でアンディ・ラウ主演&スティーブン・フォン監督の『侠盗聯盟』とイ・ジョンジェ主演の『代立軍』半分をガチで見てしまい、一睡もせずだったのです)。
ところで、このシネコンにあったのが上のポスター。そう、アーミル・カーンが製作と出演もしている、『Dangal(レスリング)』(2016)のザーイラー・ワシーム主演の『Secret Superstar(秘密のスーパースター)』です。インド本国では10月19日に公開されて、すでに興収が10億ルピーを超すヒットとなっています。台湾では11月24日から公開だそうで、うらやましいですねー。
外に出たら、西門町は中国や香港からの観光客で混み合っていました。さてさて、明日もまた金馬影展のため西門町に通います。