3月28日(金)から公開中のインド映画『デーヴァラ』、今日は4月1日の割引があるので、雨の中お出かけになった方も多いと思います。前回のキャスト紹介で、「NTR Jr.、ジャーンヴィー・カプール、サイフ・アリー・カーンについては、パンフレットをご参照下さいね」と書いたのですが、今日Netflixでインド映画『Nadaaniyan/ナイーブな恋のレッスン』を見て、ジャーンヴィー・カプールの妹のクシー・カプールとサイフ・アリー・カーンの息子イブラーヒム・アリー・カーンを見たため、サイフ・アリー・カーンについてもちょっと書いておこうと思った次第です。余談ながら、『ナーダーニヤーン(無邪気さ)』の方の感想は、「こんな映画作ってどうするのォ、ボリウッド」でした。
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デーヴァラの親友であり、敵ともなるバイラ役のサイフ・アリー・カーンですが、1970年8月16日に超有名人の両親のもとに生まれました。父親は「プリンス・パタゥーディー」とも呼ばれるマンスール・アリー・カーンで、独立前は藩王国の領主だった家に生まれた人でした。さらにクリケット選手としても有名で、チームのキャプテンを務めて「タイガー・パタゥーディー」と呼ばれる人気者でした。母親は女優のシャルミラー・タゴールで、ラヴィーンドラナート・タゴールの縁戚にあたります。サタジット・レイ監督の「オプー3部作」の第3作『大樹のうた』(1959)でデビューし、同じくレイ監督の『Devi(女神)』(1960)等数本のベンガル語映画に出たあとヒンディー語映画界からのオファーを受け、1964年『Kashmir Ki Kali(カシミールの蕾)』でシャンミー・カプール(ラージ・カプールの弟)の相手役としてヒンディー語映画にデビューを飾ります。するとたちまち大人気になり、1960年代、70年代を通じてトップ女優として活躍しました。代表作は『Devar(義弟)』(1966)、『Aradhana(祈り)』(1969)、『Amar Prem(不滅の愛)』(1972)等々いっぱいありますが、日本ではサタジット・レイ監督作品のベンガル語映画『主人公』(1966)が上映されているものの、残念ながら彼女のヒンディー語映画主演作は上映されていません。そんな人気絶頂の時にプリンス・パタゥーディーに見初められ、1968年12月27日にイスラーム教徒に改宗して結婚式を挙げます。そして1970年に長男サイフ・アリー・カーンが、1976年に長女のサバー、1978年には次女のソーハーが誕生します。その後、サイフ・アリー・カーンは1993年にヒンディー語映画界にデビュー、妹のソーハー・アリー・カーンも2004年にベンガル語映画でデビューを飾り、のちヒンディー語映画に出演して母の歩んだ道に入ります。ソーハーは2015年に俳優クナール・ケームーと結婚し、現在は時たま映画出演する程度ですが、サイフ・アリー・カーンは出演本数は減ったもののまだまだ活躍中。下の写真は、1992年に来日した時のシャルミラー・タゴール、それと1995年にムンバイ(当時はボンベイ)の映画撮影所で会ったサイフ・アリー・カーンです。
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サイフ・アリー・カーンが最初に注目されたのはデビュー2作目の『Aashik Awara(放浪の恋人)』(1993)で、「フィルムフェア」賞の新人賞を獲得していますが、ファンがどっと増えたのは1994年の『Yeh Dillagi(この冗談)』から。お金持ちの家の使用人の娘(カージョル)に惹かれる、お金持ちの家の次男坊を演じたのですが、下のダンスシーンがユニークな振り付けで人気を呼んだのでした。完璧なハンサム顔のサイフ・アリー・カーンが、コミカルでセクシーなダンスを踊る「オレ・オレ」、当時若者だった人は真似をした憶えがあるに違いありません。
Ole Ole Full Song | Yeh Dillagi | Saif Ali Khan, Kajol | Abhijeet Bhattacharya, Dilip Sen-Sameer Sen
この作品でサイフ・アリー・カーンは、兄(アクシャイ・クマール)と彼女を競い合う、という役柄でしたが、その後もなぜか、セカンド・ヒーローを演じさせると光る、という立ち位置がハマってしまいます。しかも、ハンサムなのにコミカルな役柄がうまく、ボリウッド映画変身の記念碑的作品である『Dil Chahta Hai(心が望んでる)』(2001)では、アーミル・カーンやアクシャイ・カンナーを超える助演男優賞や喜劇俳優賞を獲得する結果になりました。その後も、シャー・ルク・カーンが主演した『たとえ明日が来なくても』(2003)でもセカンド・ヒーローとして素晴らしい演技を見せるなど、得がたい俳優となっていきます。『たとえ明日が来なくても』は日本でも2008年に公開され、DVDも発売されたのですが、現在は手に入らないようで残念です。この作品は、心臓病でNYに治療に来たアマン(シャー・ルク・カーン)が、ナイナー(プリーティ・ジンター)に恋をするものの、自分の命が限られていると悟って、彼女と男友達のローヒト(サイフ・アリー・カーン)を結びつけようとする物語です。特に秀逸だったのは、アマンがローヒトに恋のレッスンを何日間かにわたって施すシーンで、あれほどしゃれたシーンはインド映画では見たことがありません。この作品もソング&ダンスシーンが素晴らしいので、その中の1曲を付けておきましょう。ローヒトとナイナーの婚約式の日に、両家の人々が歌い踊るシーンです。
Maahi Ve Full Video - Kal Ho Naa Ho|Shah Rukh Khan|Saif Ali|Preity|Udit Narayan|Karan J
もちろん、主演作でも2004年の『Hum Tum(僕と君)』で国家映画賞の主演男優賞を取ったりしているのですが、その後シェークスピアの「オセロ」を翻案した『Omkara(オームカーラー)』(2006)では、オセロ役にあたる主人公を演じたアジャイ・デーウガンに対し、イアーゴ役にあたる手下役を演じて、「フィルムフェア」賞の悪役賞始め多くの賞を獲得しています。そんな風に演技力もあるサイフ・アリー・カーンなのですが、日本公開された『ヴィクラムとヴェーダー(ヒンディー語版)』(2022)や、プラバースと共演して「ラーマーヤナ」の悪役ラーヴァナを演じた『Adipurush(最高神)』(2023)でも、いまひとつ光りませんでした。今回の『デーヴァラ』に続き、南インド映画での挑戦が続くのでしょうか。先日公開された『デーヴァン』の本編映像を付けておきます。
『デーヴァラ 』バトルアクション デーヴァラVSバイラ映像
なお、私生活では、女優アムリター・シンと1991年に結婚したあと2004年に離婚、その後2012年に女優カリーナー・カプールと再婚しています。アムリター・シンとの間には、1995年にはサーラー・アリー・カーンが、そして2001年には前述のイブラーヒム・アリー・カーンが誕生しており、2人とも俳優となって、祖母と両親の後を追っています。また、カリーナー・カプールとの間には男の子が2人おり、どちらもかわいいのでゆくゆくは俳優の道を歩むかも。そのカリーナーとの住居で、侵入した暴漢に刺される事件が起きたのが1月半ば。幸い、5日間という短い入院で退院してきたサイフ・アリー・カーンですが、有名人は本当に大変です。シャー・ルク・カーンら還暦のイケオジ組に比べると55歳と若いので、自分しかできない役を見つけて今後も我々を楽しませてほしいものです。