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3月22日(日)インド時間午後5時

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インドでは本日午後5時(日本時間午後8時30分)、家々のベランダや窓から、拍手や何かを叩く音があたりに響き渡りました。これは、新型コロナウィルスと戦っている医療関係者―医師や看護師、保健師などに謝意と敬意を表す行動で、インド中で行われた模様です。もともとモーディー首相が3月21日(土)午後9時から22日(日)午後9時までの24時間に関して外出自粛要請をし、外出禁止令を発令したので、それを「ジャンター・カーフュー(人民の外出禁止令)」と呼んだことがきっかけですが、いつしか「それなら22日(日)の午後5時に、みんなで窓辺に出て拍手したり、何かを鳴らしたりして、医療関係者をはげまそう」ということになり、アッという間にSNSで国中に広まりました。そして先ほど実行され、その映像が続々とYouTubeなどにアップされてきています。映画スターたちも多くが参加、そのうちの映像の一つ、ボリウッド映画人の様子を写したものを貼り付けておきます。

India Clapping Against Corona | Akshay kumar, Ranveer Singh, Deepika Padukone, Bachhan Family

登場するのは、ディーピカー・パードゥコーンとランヴィール・シン夫妻、アクシャイ・クマールらしき人物が海岸でパフォーマンスしているシーン、カラン・ジョーハル一家、カングナー・ラーナーウトと身内の人々、デヴィッド・ダワン一家(ヴァルンの顔も見えます)、そしてプリーティ・ジンターがメッセージを語り、あとマニーシュ・マルホートラーが母親と登場、そして静止画像ですがアミターブ・バッチャン一家が出てきます。テレビか何かで流された映像のようで、同じものがニュースにも使われたり、何人かがYouTubeにアップしたりしています。

ほかにも、一般の人の映像も各地からアップされていて、金属のお盆を叩く人、シャンク(ほら貝)を吹く人、お祈りに使う小さな鐘を鳴らす人など、みんな思い思いの形で家から活動に参加しています。YouTubeで「India March 22nd 5:00pm」といったような文字を入れて検索するといろいろ出てきますので、興味のある方はご覧になってみて下さい。一方、この外出禁止令に「そんなことをしても効果は望めない」と反発する人もあり、様々ですが、現在新型コロナウィルス感染者は増加する一方で、この3日間で倍増し、341人にのぼったとか。各州も様々に独自の対応を取っており、たとえば南インドのカルナータカ州では下のような対応に踏み切ったと外務省のニュースは伝えています。

            

カルナータカ州政府は22日,新型コロナウイルス拡散防止のため,以下の事項を決定しました。
(1)23日はすべての公共交通を止める。バス及び県をまたぐ交通は3月31日まで運休。
(2)22日は,外出自粛要請が解除される午後9時から午前0時の間,Section 144(4名以上が集まることを禁止する条項)を適用する。
(3)ベンガルール市,ベンガルール農村県(Bengaluru Rural District),マンガルール市,マイソール県,カラブルギ県,ダルワード県,コダグ県,ベルガヴィ県においては,医薬品店,食料品店,農業サービスを除くすべての商業施設の営業を休止する。
(4)上記地域の大企業は,従業員を半数ずつ1日おきに交互に勤務させる。

            

日本も人ごとではないのですが、個々人が手洗い等に気をつければ感染が防げる状態の日本とは違うため、急激な感染者数の増加が起きないか心配です。インドの皆さん、がんばって下さい! ハヌマーン様、新型コロナウィルスをそのガダーで退治して下さいまし!

 


『きっと、またあえる』のコレに注目!<1>予告編来ましたぁ!!

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『きっと、またあえる』の公開日まであと1ヶ月になりました。ここから怒濤のような宣伝が始まるらしく、昨日予告編もついにアップされました! 映画の詳細をお知らせする前に、どどーん!と予告編を見ていただきましょう。

4/24(金)公開『きっと、またあえる』 予告編

キャハハ...、最後のやり取りが効いていますねぇ。え、「なんてバカなの」「オレのおふくろもそう思ってるよ」はごく当たり前の会話では、ですか? ここは予告編ということもあってソフトに訳してあるんだと思いますが、元はこうなんです。「カミーネー・ホー・トゥム・ローグ(あんたたちって、カミーネーだわ)」「マーン・ビー・ヤヒー・ボールティー(おふくろもそう言うね)」。そして「カミーネー(元の形は”カミーナー”)」は「卑劣な、下劣な」という意味なので、直訳すると、「あんたたち、ゲスの極みね」という感じになります。こんな汚い言葉を、天使のような美女が言うので爆笑になるシーンなのでした。さて、基本事項のご紹介が後になりましたが、データと共に簡単なストーリーもどうぞ。

『きっと、またあえる』 公式サイト 
 2019/インド/ヒンディー語・英語/143分/原題:Chhichhore
 監督:ニテーシュ・ティワーリー
 出演:スシャント・シン・ラージプート、シュラッダー・カプール、ヴァルン・シャルマ、プラティーク・バッバル
 配給:ファインフィルムズ
※4月24日(金)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

ここは名門の理系大学であるボンベイ工科大学。1992年、アニルッド・パタク(スシャント・シン・ラージプート)は期待に胸を膨らませて、この大学に入学しました。しかし、初日から何やら怪しげな雲行きに。まず入寮手続きに行くと、名前を省略して「アニ」と呼ばれるし(「ア(~でない)」+「ニルッド(束縛された、閉ざされた)」=「自由な」という意味で、かつクリシュナ神の子プラデュムナの息子である王子の名でもあるこの「アニルッド」を、変なところでぶった切るとは、とムカッとしたに違いありません)、「君の寮はH(ホステル)4号棟だ。変更したかったらまたおいで」と言われるし、どうもおかしな具合です。しかもH4に行ってみると、白菜頭の変な上級生が近づいてきます。自分のことを「セクサ」と紹介するこの2回生、本名グルミート・シン(ヴァルン・シャルマ)は、脳内がセックスでいっぱいなので「セクサ」らしく、何かというとすぐ罵り言葉を発する「アシッド」(ナヴィーン・ポリシェッティ)と共に、新入生の教育係のようです。アニは同じ新入生のマザコン男「マミー」と共に、「H10号棟の女子寮に行き古着をもらってこい! あと、身につけていた下着もな」と命じられ、いやいや女子寮に向かいます。そこで、工科大には珍しいハレー彗星級美女マヤ(シュラッダー・カプール)と出会い、それがきっかけでアニとマヤは付き合うことに。一方、優秀な学生が集まるH3号棟のボス、ラギー(プラティーク・バッバル)は、スポーツ万能のアニに目を付け、H3に引き抜こうとしていました。というのもこの大学では、毎年GC(ジェネラル・チャンピオンシップ)と呼ばれる各種競技会が行われ、クリケット、卓球、バスケ、カバディ、チェス等々で、寮の代表が熾烈な争いを繰り広げることになっているからです。毎年勝つのはH3で、H4は万年最下位。H3からの引き抜きを断ったアニは、H4の勝利を目指し、最上級生デレク(ターヒル・ラージ・バシン)やチェスに長けた上級生で大酒飲みの「へべれけ」(サハルシュ・クマール・シュクラ)らと共に、作戦を練り始めます....。

というのが約30年前の話。今はみんなそれぞれが各分野で成功を収め、家庭も持って、幸せに暮らしていました。ところがアニは、あれほど思い合っていたマヤと結婚したものの、息子が小さい時に離婚。その後息子のラーガヴ(ムハンマド・サマド)を一人で育ててきたのですが、その息子の身に大変な事件が起こってしまったのです。万策尽きたアニとマヤはセクサに助けを求め、やがて昔の「負け犬」たちがアニのもとに集まってきます...。

という具合に、約30年の時をへだてて、2つのストーリーが並行して進行していきます。見ている者が時代を混同しないよう、中年の皆さんには念入りな老けメイクが施されていますし、若い時は大学が舞台、中年になってからはまったく別の場所が舞台になるので、そのあたりの切り替えは大丈夫。社会的成功者としてインドの経済発展を担っている中年の人々にも、バカなことをやっていた時代があった、何が成功で何が失敗か、一概には決められないよ、というメッセージが込められている、と言えば固いイメージになってしまいますが、もうハチャメチャに面白いシーンが多く、笑って泣ける作品です。

中でもいろいろ笑わせてくれるのが、上写真3人組の右側の人セクサ。かなり際どいことも言っているのですが、下品にならず(字幕の訳が上手なおかげもあります)、最後まで楽しい笑いを提供してくれます。特に、サッカー試合中の演技力はたいしたものですので、お見逃しなく。セクサを演じたヴァルン・シャルマは、そういえば『Fukrey(怠け者)』(2013)のポスターで顔を見たな、という程度でこれまで全然注目していなかったのですが、この映画でちょっぴりファンになりました。ほかにも、『マントー』(2018)にも出演していたターヒル・ラージ・バシンや、『あなたの名前を呼べたなら』(2019)に一瞬顔を出していたサハルシュ・クマール・シュクラなど、要チェックの俳優が多数います。楽しみにして公開をお待ち下さい。次回は、このクセ者たちを見事に束ねた監督、ニテーシュ・ティワーリーのお話をしたいと思います。では最後に合い言葉を、「Are Pagle, Fikar Not!(アレー・バグレー、フィカル・ノット/バカだなあ、心配するなよ!)」。コロナ禍も乗り切るぞ!

[スチール写真クレジット]
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『サーホー』ワールドを攻略せよ!<その4>幕が明日上がる!

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『サーホー』、いよいよ明日から公開です。ちょっと残念なのは、東京都や神奈川県などの休日外出自粛要請を受けて、新宿ピカデリーを始めいくつかの劇場が28日(土)・29日(日)の興行を休止してしまったこと。でも、新型コロナウィルスの感染をふせぐためには、仕方ありませんね。その代わりと言っては何ですが、新宿ピカデリーはこちらのように明日の上映回数をとことん増やしてくれています。チケットの発売は本日真夜中、つまり3月27日(金)午前零時から。見たい時間の回をお早めにご予約下さい。

その『サーホー』、これまでご紹介してきた以外にもすごい点はいろいろありますが、ソング&ダンスシーンの豪華さも特筆したいポイントです。少し前になりますが、配給会社ツインさんの太っ腹公開前リリースで、「Psycho Saiyaan(狂気の恋人)」の日本語字幕版がYouTubeにアップされました。まずは、シュラッダー・カプールのセクシーな衣裳とダンスが光る、この画像を貼り付けておきましょう。

ド迫力な色気が超爆発のキレキレダンス/映画『サーホー』ミュージカルシーン

プラバースは余裕で踊っていますね。これ、大画面で見たら素敵ですよ~。30数年前のディスコ・マハラジャみたいなお立ち台で踊るラメのドレスの美女たちと、メタリックな衣裳の男性たちの中で、一人だけラフな黒い服と白いスニーカーで踊るたくましい男。本作は、衣裳デザインにも目を見張らされるシーンが多いです。

あとのソング&ダンスシーンは、「Ye Chota Nuvvunnah(君がどこにいても)」と 「Baby Won't You Tell Me」、それに「Bad Boy」。オーストリアのチロル地方で撮られた「Ye Chota Nuvvunnah」は、近未来的な展望台や飛行場、さらには吊り橋等を舞台に何度も衣裳替えをしたプラバースとシュラッダー・カプールが踊り、衣裳と背景を見ているだけでもあっという間に時間が経ってしまいます。余裕がある方は、何回衣裳チェンジをしたか数えてみましょう。

Ye Chota Nuvvunna | Saaho | Prabhas, Shraddha K| Guru Randhawa, Tulsi Kumar, Haricharan S |Krishna K

もう1曲、これもプラバースとシュラッダー・カプールがペアで踊る「Baby Won't You Tell Me」は、ストーリー進行に密接に関係した歌となっており、緊迫感とラブシーンの甘さとがミックスした不思議な雰囲気です。背景もCGと思われるシーンがあって、現実世界と空想世界を行ったり来たり。ニール・ニティン・ムケーシュ扮する謎の男(このシーンの少し前にその正体がわかるのですが)も登場、何やらやり取りをしていますね。劇場でご覧になって、やり取りの中身をご確認下さい。

Saaho : Baby Won't You Tell Me Full Video | Prabhas, Shraddha K | Shweta M, Siddharth M, Shankar M

そして、ボーナストラックとでも言うべき1曲が「Bad Boy」で、お相手となるのがジャクリーン・フェルナンデス。スリランカ出身の女優で、今、ボリウッド映画のトップ美女ヒロインとして、シュラッダー・カプールと並ぶ人気を誇っています。演技力としてはシュラッダー・カプールの方がありますが、コメディをこなす力はジャクリーン・フェルナンデスの方が上。ソング&ダンスシーンの振り付けも、それが意識されている感じです。セクシーなジャクリーン・フェルナンデス魅力と、彼女を悪女にしちゃう「バッド・ボーイ」プラバースの魅力を楽しむ1曲ですね。

Saaho: Bad Boy Song | Prabhas, Jacqueline Fernandez | Badshah, Neeti Mohan

というわけで、ソング&ダンスシーンの画像を予習していただきましたが、今日は皆さん、プラバースの新しいメッセージにも驚喜なさったことと思います。やっぱり、隠し球があったんですねー。それはこちらの公式ツイッターでどうぞ。

おっと、こちらの本編映像も正式のものだったんですね。先ほどYouTubeで見つけたのですが、ちょっと半信半疑だったもので。それも付けておきます。

『サーホー』本編映像~白熱の空中戦編

これらの映像が、明日、劇場スクリーンでつながります。チケット獲得に急げ!! 新型コロナウィルス感染のスピードに負けるな! 新ピカ、全部の上映を満員にしたいです!!!

 

『サーホー』初日のプラバース関連ニュース

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『サーホー』が無事初日を迎えました。首都圏の劇場は、明日、明後日と休館になる所が多いのですが、それ以外の場所では上映を休まない劇場もありますので、明日以降もどうぞ存分にお楽しみ下さい。どこの劇場でも消毒液等を準備していますし、マスクをして、おしゃべりと共同飲食を控えれば、感染の危険性はぐっと減ります。でも、首都圏にお住まいの方は、明日から2日間はご自宅で、公式サイトYouTubeでの事前学習をしつつ、静かに過ごしましょうね。

『サーホー』の美麗なパンフレットもできております(上写真)。今日、新宿ピカデリーまで買いに行ってきたのですが、パンフレットというより写真集と言った方がいいぐらい、素敵なビジュアルがいっぱい使われています。もちろん、公式サイトの人物相関図もちゃんと収録してありますのでご安心を。パンフに作品レビューを寄稿しているのは我らが江戸木純さん、『バーフバリ 王の凱旋』の宣伝隊長です。「プラバースの見せ場とカッコ良さを凝縮した、まるで彼のプロモーション・ビデオのような魅力のショーケース」と書いてあったりして、やっぱり江戸木さんもそう思うよね~、とうなずいてしまいました。映画『サーホー』の深読み指南にもなっていますので、ぜひ一読してみて下さい。

それから、今日のインド版Yahoo!のニュースにも、プラバースが登場していました。見出しは「After Mahesh Babu, Baahubali Star Prabhas Donates Rs 4 Crore to Fight Coronavirus Outbreak (マヘーシュ・バーブに続き、『バーフバリ』のスターであるプラバースも、コロナウィルスのパンデミックとの闘いのため4千万ルピー(約6千万円)を寄付)」というもので、ニュース本文によると、このうちの3千万ルピーがモーディー首相の国民救済基金に、残りの1千万ルピーは500万ルピーずつに分けられて、プラバースの地元であるアーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナ州(元は一つの州)の州首相救済基金に回されるそうです。

プラバースは、暫定タイトル『Prabhas 20』と名付けられた作品の撮影のためにジョージア(元の呼び方は「グルジア」)に行っていたそうで、帰国後早速、相手役のプージャー・ヘーグデー(ヒンディー語映画では『Mohenjo Daro』(2016)や『Houseful 4』(2019)への出演で知られている若手美人女優)らと共に、14日間の自宅待機に入っているとか。Wikiで調べると、この作品には『Jaan』というタイトルが付けられているようですが、今後また変わるかも知れませんね。

映画スターの寄付に関しては、タイトルに名前が挙がっていたマヘーシュ・バーブのほか、『マガディーラ』(2009)のラームチャラン、その父で大御所映画俳優チランジーヴィ、そしてチランジーヴィの弟パワン・カリャーン(彼がまず最初に寄付をしたらしい)らが寄付をしたと記事に出ていますが、トリウッド(テルグ語映画界)だけでなく、ボリウッドのスターたちにも寄付の動きが出ています。そのほか、現在21日間の封鎖状態にあるインドでは、スターたちがSNSを通じて「手洗いをしましょう」「外出はダメよ」「コロナウィルスと闘っている皆さん、ありがとう」と言ったキャンペーン画像を自ら発信したりと、何とかコロナウィルスの爆発的な大規模感染を食い止めようと尽力しています。

この「21日間の封鎖」という感染拡大防止策は、ご承知のように日本でも考慮されていて、現在のような感染者数増加が続けば実行に移されるかも知れません。そうなると、もう自宅待機しかなくなるわけで、映画も見られなくなります。明日と明後日の首都圏の自宅待機が、感染者増加の抑制に何らかの効果をあらわすことを祈りたいと思います。

 

こんな時こそ韓国映画<1>『暗数殺人』のチュ・ジフンが凄い!

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この土・日の外出自粛要請が響いて、首都圏では「映画館はつらいよ」状態になっているようです。土・日は休館となったところも多かったのですが、前日の金曜日も、そして今日も、席がなかなか埋まっていません。いっそのこと、<イスラーム映画祭5>でユーロスペースが実施したように、「市松模様座席販売」方式を取り入れては? と思ってしまいます。つまり、前後と左右の座席が空いている形で、1席おきに座席を指定していくのです。売れる席数は約半分になりますが、観客の密度も半分になって、安心度が増します。

とまあ、いまだかつてない苦境に陥っている映画界ですが、そんな中でも韓国映画は元気です。ここのところ、3本も試写を見せていただき、それぞれに面白いというか力作で、うなってしまいました。今の時期に見るにはちょいしんどい作品もありますが、ほかにも次々と上映予定作品があって、インド映画@日本は「韓国映画に追いつき追い越せ」だよなあ、などと思っていたことが高望みだと思い知らされる感じです。ま、それは置いておいて、今日はこのところ出ずっぱりのチュ・ジフンがまたまた凄い演技を見せてくれる作品をご紹介しましょう。

『暗数殺人』 公式サイト 
 2018/韓国/韓国語/110分/原題:암수살인/英語題:DARK FIGURE OF CRIME
 監督:キム・テギュン
 出演:キム・ユンソク、チュ・ジフン、チン・ソンギュ
 配給:クロックワークス
※4月3日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国ロードショー

COPYRIGHT © 2018 SHOWBOX, FILM295 AND BLOSSOM PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

主人公は中年刑事のキム・ヒョンミン(キム・ユンソク)。ある日情報屋と会っていた安食堂に、情報屋が紹介したいという若い男カン・テオ(チュ・ジフン)が姿を現します。ところが、彼の話を聞いている最中に、カン・テオは別件で他の刑事たちにその場で身柄を確保されてしまいます。恋人殺しの容疑で収監されたカン・テオは、キム刑事を面会に呼び出し、思いもかけぬ告白をします。「オレが殺したのはあいつだけじゃない、ほかにも殺してるんだ」そして、殺した相手7人とその状況をリストに書き出すカン・テオ。「ウソだと思うなら、公園のここに行ってみな。オレの殺した女の下着がみつかるから」とカン・テオが描いた地図をもとに、キム刑事が一人で行ってみると、その通りの場所で証拠品を発見したのでした。カン・テオはその後、偏光サングラスなど自分の欲しい物をあれこれ要求し、引き換えに別の現場の地図を書くなどして、キム刑事を振りまわします。こいつは本当に7人も殺したのか? キム刑事はしらみつぶしにそれぞれの事件を調べていくのですが、殺したはずの相手が生きていたりして、謎はますます深まるばかり。カン・テオは大ぼら吹きなのか、それとも...。

COPYRIGHT © 2018 SHOWBOX, FILM295 AND BLOSSOM PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

暗数、つまり表に出ない数ということで、キム刑事は地下にもぐっていた殺人事件を根気よく掘り起こしていくのですが、最後にその捜査が衝撃的な事実にぶつかる、という脚本がまずお見事。脚本は監督のキム・テギュンと、製作総指揮としてクレジットされている『友へ チング』(2001)や『チャンピオン』(2002)のクァク・キョンテク監督との共同執筆となっています。確かに、プサン方言のセリフは『友へ チング』の記憶を呼び起こしますが、クァク・キョンテク監督作品とはまた違った、別種の緻密さを感じさせる作品です。キム・テギュン監督は1971年生まれで、クァク・キョンテク監督らの下で助監督を務め、2011年に『春、雪』でデビューした遅咲きの人。しかし、この2本目の作品『暗数殺人』がヒットした上、青龍映画賞、百想芸術大賞、韓国映画評論家協会賞で脚本賞を受賞、注目されるようになりました。『暗数殺人』は実際の事件を元にしたそうで、その描写が問題となるトラブルもあったようですが、俳優陣の名演もあって印象に残るサスペンス映画となりました。

名演が光るのは主役の2人、キム・ユンソクとチュ・ジフンですが、中でもチュ・ジフンの演技は凄いのひと言。冒頭に長髪姿で登場した時から「何かヘンな奴」と感じさせ、逮捕後囚人服に丸坊主姿となってからは、どこかネジがはずれたような人間を巧みに演じてみせて、キム刑事のみならず観客をも翻弄します。自分の犯した殺人事件をすらすらと紙に書いていく「こいつ、バカか?」と思わせられる表情から、殺した相手のことをとうとうと語る得意げな表情、そして、時にはキム刑事におもねるような小ずるい表情に、一転してキレて怒鳴り出す時の憤怒の表情まで、カン・テオ百面相とでも言いたくなるようなたくさんの顔を、チュ・ジフンが披露してくれるのです。ここ数年、大作、話題作に出演して演技力にますます磨きがかかった成果を、本作で確認できる感じと言えばいいでしょうか。それゆえにチュ・ジフンもいろんな賞も獲得しており、春史大賞映画祭や黄金撮影賞、映画製作協会賞では主演男優賞に輝いています。もちろんキム・ユンソクの受けの芝居あってのチュ・ジフンの演技力発揮ですが、陰惨な殺人事件の描写が続く作品なのに、カン・テオの登場シーンが楽しみになってくるような作品でした。

連続殺人犯vs刑事 の息詰まる攻防を描く!『暗数殺人』予告

予告編を付けておきます。今の閉塞感がパッと晴れるような作品ではありませんが、チュ・ジフンの凄さが味わえる力作ですので、ぜひご覧になってみて下さい。

 

『サーホー』ワールドを攻略せよ!<その5>「マハーバーラタ」の世界がここにも

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新型コロナウィルスという伏兵相手に苦戦している『サーホー』ですが、この間に調べ物をしてみました。最初に見た時からひっかかっていた、冒頭部分に出てくるサンスクリット語のシュローカ(句)です。下のオープニング映像の4分35秒ぐらいのところに出てきます。

3月27日公開!映画『サーホー』オープニング映像大解禁!

藤井美佳さんの格調高い字幕は、パッと見では意味がわかりにくいと思いますので、下に2つの字幕を書き出しておきましょう。

[知恵 定まりし者                                  
 その特徴や いかに] 
                                 
[英知 定まりし者   
  いかに座し 歩むか]

見当をつけてインド版Yahoo!で検索をかけてみると、あるQ&Aサイトで、「マハーバーラタ」中の「バガヴァッド・ギーター」の一節とわかりました。「バガヴァッド・ギーター」については、日本語版のWikiがありますので、そちらをご覧下さい。Q&Aの回答者はとても親切で、出典を明記し、下のようにサンスクリット語での表記と英訳とを書いてくれています。下にそのままコピペします。

Bhagavad Gita chapter 2, 54th shloka

अर्जुन उवाच- 
स्थितप्रज्ञस्य का भाषा समाधिस्थस्य केशव । स्थितधीः किं प्रभाषेत किमासीत व्रजेत किम्

Arjun wants to know
Hey Keshav!  What is the symptom of a man with a stable mind?  How does that stable man speak, how he sits and how he walks?

日本語のサイトでも、「バガヴァッド・ギーター」を全訳してあるサイトがあり、そのサイトから英語訳(上記の英語訳と少し違う単語が使われています)と日本語訳を引用します。

2-54

Arjuna said: 
What are the signs of a man whose intellect is steady, who is absorbed in the Self, O Keshava? How does the man of steady intellect speak, how does he sit, how does he walk?

アルジュナは言った。
理知が安定し、真我に浸っている人には、どんな特徴があるのだろうか、ケーシャヴァよ。安定した理知をもつ人は、いかに話し、いかに座り、いかに歩くのか。

「ケーシャヴァ」とは、クリシュナの別名です。「バガヴァッド・ギーター」は戦いを躊躇するアルジュナと、彼を説得するクリシュナとの対話でなり立っているので、途中に呼びかけが入っているのですが、互いにいろんな別名で呼びかけています。

で、この部分を、脚本も担当したスジート監督はなぜロイ(ジャッキー・シュロフ↑)の勝利宣言のような場に引用したのか、しかも最初の部分は、ロイと敵対することを決意しているデーヴラージ(チャンキー・パーンデー↓)の姿にかぶせて引用したのか、という点なのですが、さあ、これは皆さんそれぞれで考えてみて下さい。プラバース主演作『バーフバリ』が「マハーバーラタ」を下敷きにしていた、という点を意識してのことだろうとは思うものの、「バガヴァッド・ギーター」の引用というのは割とインド映画にはあるケースなので、それほど深読みしなくてもいいのかも知れません。とはいえ、気になりますね...。

そのプラバースですが、『サーホー』ではいろいろな顔を見せてくれます。「BANGER!!!」に書いた紹介記事では、「今回も”父と子”がテーマ」と書いたのですが、主人公だけでなく、いろんな「父と子」問題が『サーホー』には内包されています。本作を見た時に頭に浮かんだキーワードは「継承」という言葉で(自分では、『イップ・マン 継承』の影響かしらん、と思ったりしたのですが...)、ここからまだまだ面白くできるはず、という、そんな感想も持った『サーホー』なのでした。今の時期、映画館にいらっしゃるのは大変かも知れませんが、好き放題にお席も選べますので、ぜひご覧になっておいて下さい。でも、明日と明後日、土日はまた休館のところが多いのですよね...。『サーホー』の公式サイトでご確認の上、お出かけの時は準備を万全にしてどうぞ。

ちょっと余談ですが、インドの映画スターたちが一般の人たちに、「気をつけて下さいね」「手洗いはしっかりやって」「咳エチケットも守りましょう」等々を呼びかける動画がYouTubeにはたくさんアップされています。プラバースは今、自主隔離中のせいか出てきませんでしたが、S.S.ラージャマウリ監督の自作『RRR(Roudram Ranam Rudhiram)』に主演するN.T.R.ジュニアとラーム・チャランがペアで出演した映像がありましたので、ここに付けておきます。2週間ほど前にアップされたものですが、英語字幕が付いていて、助かりますね。

#RRR Covid19 Needs our Attention | Jr.NTR | Ram Charan

さらにオマケで、『RRR』の撮影開始儀式の映像もどうぞ。かなり前のものですが、ラージャマウリ監督やN.T.R.ジュニア、ラーム・チャランと共に、ラーナー・ダッグバーティ、そしてプラバースの顔も見えますので、目の正月用にご覧になってみて下さい。インドでは、映画の一番初めの撮影開始時に、必ずこのような儀式をやります。ヒンディー語では「ムフールト」または「ムフーラト」(儀式を行う吉祥の時間、という意味)と呼びますが、神の祭壇をもうけて僧侶が進行役となり、その前でココナツを割って祈る、という形が一般的です。『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)の後半で、このココナツが割れないのであせるプロデューサーのムケーシュ(アルジュン・ラームパール)、というシーンもありましたね。

RRR Launch Video - NTR, Ram Charan | SS Rajamouli

 

では、まだまだ続く新型コロナウィルスの感染との戦い、励まされる画像を見たりしながら、がんばっていきましょう。

こんな時こそ韓国映画<2>キム・ユンソク初監督『未成年』

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韓国映画界の名優と言ってもいいキム・ユンソク。私が彼を認識したのはずいぶん遅くて『チェイサー』(2007)からで、その前にチェ/ドンフン監督の『ビッグ・スウィンドル!』(2004)や『タチャ いかさま師』(2006)に興奮させられながらも、ペク・ユンシクの名演の前にはキム・ユンソクはすっかりかすんでしまって目に入らなかったのでした。それが、『チェイサー』の元刑事のデリヘル店長役で突如大きな存在の俳優となり、その後は2、3本見逃した(脚本を担当した『南へ走れ』(2012)を見逃しているのは痛恨の極み!)ものの、ほぼ全作品を追いかけては毎回満足のため息をもらすことが続いています。本当に、何をやらせてもうまい俳優で、どんな役でもほのかにやさぐれ感が漂うのが魅力になっている人だと思います。

上の写真は、2019年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭でキム・ユンソクの初監督作品『未成年』、つまり本作がコンペ作品として上映された時に、パブ素材として提供を受けた監督プロフィール写真です(映画祭の紹介ページはこちらです)。当初は、監督であり出演もしているキム・ユンソクがゲストとして来日する、とのことで楽しみにしていたのですが、直前で来日はないとわかり、結局この映画祭には場所が遠いこともあって行きませんでした。また、受賞作品の中にも名前はなく、やっぱり名優といえどもすぐに名監督にはなれないのね、と思ったりしたのでした。でも、作品はどうしても見てみたくて、昨年11月から今年2月にかけて開催された「のむコレ」で上映されるとわかった時には、初日11月15日に上映された本作を真っ先に見に行きました。ご承知のように「のむコレ」は、一般公開の決まっていない作品、DVDスルーで紹介される作品などを集めてシネマート新宿のスクリーンで上映してくれる企画で、2019年は約半数がアジア映画だったため、アジア映画ファンにはとてもありがたい催しだったのでした。そして今回、めでたく公開が決まった、というわけで公開はちょっと先ですが、今のうちにご紹介しておきます。

『未成年』 公式サイト 
 2019/韓国/韓国語/96分/原題:미성년/英語題:ANOTHER CHILD
 監督:キム・ユンソク
 出演:ヨム・ジョンア、キム・ソジン、キム・ヘジュン、パク・セジン、キム・ユンソク
 配給:クロックワークス
※5月29日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開

© 2019 SHOWBOX AND REDPETER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

ある寒い夜、女子高生のジュリ(キム・ヘジュン)は郊外にある鴨肉料理レストラン風の店を窓から覗き込んでいました。中では父(キム・ユンソク)が職場の仲間たちと食事会を開いていて、父のしぐさはその店の女主人(キム・ソジン)との親密さをはっきりと伝えていました。そう、ジュリは父の浮気を疑って、その証拠を握ろうとしていたのです。父の浮気がバレたら、気位の高い母(ヨム・ジョンア)がどんなに傷つくことか。唇をかみながらその場を離れようとしたジュリは、同級生のユナ(パク・セジン)が帰宅してくる姿を見つけて愕然とします。父の浮気相手が、学校で問題児とされているユナの母だったとは。次の日ユナに、母親の不倫をやめさせるよう談判に行ったジュリは、ユナの母が父の子を妊娠していると知らされ、さらに混乱します。ユナはジュリの母にもこの事実を告げ、ジュリの母は相手のレストランに客を装って出向くなど、問題はますますこじれていきますが...。

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というわけで、上に貼り付けた日本版チラシのように、一人の男を挟んで二組の母子が対立する物語です。高級マンションに住むジュリ一家と、店に続く昔風の住居に暮らすユナ母子。ジュリは優等生で、ジュリの母も教養のある物静かな人という感じ。会社か事務所を経営している父とは、若い時に恋愛結婚をして、インテリ同士のハイソな家庭を築いている、という印象です。一方ユナの母は、当初「日陰の身」という言葉が当てはまる楚々とした人かと思ったのですが、さすがレストランを経営するだけあって、気は強いは、口も達者だはと、あとになるほどに本当の姿がボロボロと出てきます。娘のユナも女子高では不良と見られていて、母親以上に喧嘩っ早くて態度も大きいのです。そんなユナにジュリは突っかかっていきますが、このユナとジュリの関係が、本作の柱となっています。

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若い二人の心のあり方や、二人がぶつかることによって起きる互いの心の化学変化などはよく描けています。また、若い二人を演じたキム・ヘジュンとパク・セジンも、全力でぶつかり合っていて、その演技に引き込まれます。特に、生まれてくる赤ん坊を思いやるユナと、それに影響されて徐々に変わっていくジュリという後半は、心を掴まれるものがありました。ですが、母親二人の描き方、特にユナの母親の描き方にはどうもついて行けず、こんな女性をジュリの父親はなぜ好きになったのだろうか、と疑問に思うぐらい、いいところがないのです。中でも、病院でのシーンが悪印象でした。元は舞台劇とのことですが、ジュリの母親との違いを示すために強烈なキャラクターになっていたのかも知れません。

と不満点はあるものの、キム・ユンソクがきちんと監督の仕事ができる人だという証明にはなったのでは、と思います。今回、自身は情けない夫の役を平凡に演じてみせて、目立たぬ存在に徹していましたが、次回監督に専念できる環境があれば、もっと印象的な作品が生まれるかも知れません。とりあえず、監督としての可能性は示してくれたので、ファンとしては満足というところです。最後に予告編を付けておきます。

映画『未成年』予告編

 

スペース・アーナンディ/インド映画連続講座 4月18日(土)の開催中止

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新型コロナウィルスの感染者が増え続けています。特に、3月22日(日)に1,000人を超してからは増加のスピードが一段と速くなり、1日300人超の増加という事態になってしまいました。そのため、2週間後に予定していた次の催しを取りやめに致します。

スペース・アーナンディ/インド映画連続講座第Ⅳ期
「映画で知る! インド人の生活」
<第3回>食文化を知る!~映画に見る食の役割と作法

日時:2020年 4月18日(土) 15:00~17:30  ⇒ 中止   
場所:スペース・アーナンディ(東急田園都市線高津駅<渋谷から各停18分>下車1分)
定員:20名

ずっと前からご予約下さっていた20名の皆様には、本当に申し訳ありません。こんな事態下ですので、ご了承いただけましたら幸いです。

同じテーマで5月16日(土)15:00~17:30の開催も予定しているのですが、こちらはもう少し様子を見ることに致します。4月18日(土)にご予約下さっていた皆様に中止のご連絡を差し上げた時、「5月16日への振り替えも可能です」という旨のお知らせも入れたところ、何人かの方が新たにご予約下さって、5月16日もすでに満席となっております。こちらの開催については、開催2週間前に判断をし、ご予約の皆様方へのご連絡と、ブログでのお知らせを致しますので、今しばらくお待ち下さい。

さらに情勢が落ち着けば、後日の追加開催も考えております。こちらは決定しましたら、また告知致します。

では皆様も、お体にお気を付けてお過ごし下さい。つらい時期ですが、楽しい映画や画像をいっぱい見て免疫力を高めながら、この難局を乗り切って下さい。景気づけに、昨年一番のインド映画ヒット作『War(戦い)』から、リティク・ローシャンとタイガー・シュロフの超絶ダンスが見られる「Jai Jai Shivshankar(シヴァ神万歳)」をどうぞ。

Jai Jai Shivshankar - Full Song | War | Hrithik, Tiger | Vishal & Shekhar, Kumaar, Benny | Holi Song

 

リティク・ローシャン、もう46歳だというのに、このキレッキレは驚異的....。

 


『きっと、またあえる』のコレに注目!<2>”きっと、またあとであえる”

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ご承知のように、新型コロナウィルスの感染拡大を抑えるため、政府の緊急事態宣言が明日にも出される模様です。期間は、明日4月7日(火)から1ヶ月間、5月6日(水)までとなるのでは、と予想されています。地域は、東京、埼玉、千葉、神奈川という首都圏と、大阪、兵庫の関西圏、そして福岡の7都府県となるものと思われます。これを受けて、4月24日(金)から公開予定だったインド映画『きっと、またあえる』(2019)が、公開延期となりました。本日、公式サイト公式ツイッターで発表されたもので、緊急事態宣言が出されればその地域では「自宅にとどまる/Stay Home」が原則なので、おそらく該当地域の映画館はすべて一時休館となるため、仕方のない措置ですね。

『きっと、またあえる』はすでに全国で多くの映画館での上映が決まっていたのですが、この公開延期を受けて公式ツイッター上では、上映予定の映画館からも公開延期のお知らせがアップされています。それぞれ、心のこもったお知らせ文となっており、映画題名を上手に盛り込んであるところが泣かせます。ちょっと、首都圏の3つの映画館のツイートを並べてみましょう。

チネチッタ
4/24(金)より公開予定でした『きっと、またあえる』は公開延期となりました。延期後の公開日は決定次第お知らせいたします。楽しみにされていた皆様、申し訳ございません。
またあえることを願っております。

横浜シネマリン
5/2(土)より当館で公開予定でした『きっと、またあえる』が公開延期となりました。延期後の公開日は決定し次第HP、SNS等でお知らせいたします。楽しみにされていた皆様、本当に申し訳ございません。きっと、またあえる日を楽しみにお待ちください。

あつぎのえいがかんkiki
当館にて5月公開予定の『きっと、またあえる』が公開延期となりました。きっと、またあえるので決定次第お知らせいたします。

というわけで、このブログ記事もタイトルで『きっと、またあえる』をモジってみました。こんな時にいろいろ仕えるなんて、本当にスグレモノの邦題ですね~。

公開時期は未定でも、「Stay Home」でいっぱい時間ができたことですし、『きっと、またあえる』の紹介もガンガンしていきたいと思います。とりあえずは、各キャラクターとそれを演じている俳優の紹介をしていきたいのですが、それは次回からとして、今回はヒロインのマヤ(シュラッダー・カプール)が登場する歌のシーンを付けておきます。最初のサビの部分だけ、ちょこっと歌詞とその訳を書いておきますので、一緒に歌ってみて下さいね。

Full Song: KHAIRIYAT (BONUS TRACK) | CHHICHHORE | Sushant, Shraddha | Pritam, Amitabh B|Arijit Singh

♫KHAIRIYAT(無事)♫
 作詞:アミターブ・バッタチャーリヤ/作曲:プリータム

カィリヤト・プーチョー
Khairiyat   Poocho
無事(かと)尋ねてくれ

カビー・トー・カィフィヤト・プーチョー
Kabhi   To     Kaifiyat      Poocho
たまには    状況を   尋ねてくれ

トゥムハーレー・ビン・ディーワーネー・カー・キャー・ハール・ハィ
Tumhaare     Bin  Deewane    Ka   Kya   Haal  Hai
君が  いないと  恋に夢中の男  の(は) どんな 状態 なのか

ディル・メーラー・デーコー
Dil    Mera   Dekho
心を   僕の   見てくれ

ナー・メーリー・ハィシヤト・プーチョー
Na   Meri    Haisiyat  Poocho
~するな 僕の  地位を  尋ねる

テーレー・ビン・エーク・ディン・ジャィセー・ソゥ・サール・ハィ
Tere            Bin     Ek       Din       Jaise       Sau    Saal    Hai
君  なしでは  1   日が     まるで   100 年  だ

では、新型コロナウィルスの感染拡大を抑えて伝染を収束させるため、一緒にがんばりましょう!

[スチール写真クレジット]
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インド映画の円盤が続々到着

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昨年はインド映画の公開本数が多かったので、そのソフトが今続々と発売されています(アマゾン沼への支払いが大変!)。今日はアマゾン沼から何と!3本の映画のソフト、計5種類が届きました。こんな大きいクッション封筒が届いたのは初めてです。ちょっと、各ソフトの顔ぶれと、それぞれの特典映像(カッコ内は私が付けた説明です)や封入されたオマケなどをご紹介しましょう。

『シークレット・スーパースター』(2019年8月9日公開)

 

    2017年/インド/ヒンディー語/150分/原題:Secret Superstar
 監督:アドヴェイト・チャンダン
 出演:ザイラー・ワシーム、メヘル・ヴィジュ、アーミル・カーン
 発売元:フィルムランド、カラーバード
 販売元:TCエンタテインメント
 [特典映像](DVD、BDとも)
  ・メイキング1~4(YouTubeにもアップされている各5分前後のメイキング。とてもよくできたメイキングなので、日本語字幕で見られるのは貴重)
  ・ソングローンチイベント(=挿入歌の音源リリース記念イベント)
  ・エンドロール映像(エンドロールのMV。本編にもあるので英語字幕のみ)
  ・海外オリジナル予告編(=インド版予告編)
  ・日本版予告編
 [封入特典]オリジナルポストカード(DVD、BDとも5枚封入)

 

『ヒンディー・ミディアム』(2019年9月6日公開)

   2017年/インド/ヒンディー語/132分/原題:Hindi Medium
 監督:サケート・チョードリー
 出演:イルファーン・カーン、サバー・カマル
 発売元:フィルムランド、カラーバード
 販売元:TCエンタテインメント
 [特典映像]
  ・イルファーン・カーンインタビュー完全版(英語での発言で日本語字幕付き。約8分のかっちりした内容のインタビュー)
  ・海外オリジナル予告編(=インド版予告編)
  ・日本版予告編
 [封入特典]オリジナルポストカード(2枚封入)

 
『マニカルニカ ジャーンシーの女王』(2020年1月3日公開)

 

 2019年/インド/ヒンディー語・英語/148分/原題:Manikarnika: The Queen of Jhansi
   監督:ラーダ・クリシュナ・ジャガルラームディ
 出演:カンガナー・ラーナーウト、ジーシュ・セーングプタ、スレーシュ・オベロイ、アトゥル・クルカルニー
 発売元:ツイン
 [特典映像](DVD)
  ・日本版予告編
 [特典映像](BD)
  ・モーションポスター(静止画4枚と動画2種、物語の背景説明からなるプロモ映像)
  ・オリジナル特報/オリジナル予告編
  ・日本版予告編

フライング・ジャット [Blu-ray]

このあとも、『燃えよスーリヤ!!』のソフトが出版されるはずです。どんな特典映像が付くのか楽しみにしています...と、アマゾン沼をチェックしてみたら、『フライング・ジャット』のブルーレイとDVDまで7月に発売されるではありませんか! ムービープラスで配信されたので、ソフト発売も、になったのかも知れませんね。ファンの方はこちらでチェックして、ご予約をどうぞ。コロナ禍で収入が減っていて苦しいのですが、貴重な資料なので買っておかなきゃ。『フライング・ジャット』の紹介記事@「BANGER!!!」はこちらです。これが発売される7月3日には、新型コロナウィルスの感染も終息に向かっていることを祈ります。

緊急事態宣言の出た地域では、映画館はおそらく明日からすべて休館になるはずです(『サーホー』 落ち着いたら、仕切り直しロードショーをしてほしい!)。ご参考までに、シネマート新宿の公式サイトのお知らせを引用しておきます。

「首相により緊急事態宣言が発令され、それに伴い、東京都知事により映画館の使用停止要請がなされることから、4月8日(水)から当分の間、当館ではやむを得ず休館とさせていただきます。お客様には大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。※なお、営業再開時期については、決まり次第当館HP等でご案内いたします。」

映画館には休業補償が、配給会社には損失補償がなされることを、切に願っています。

対コロナウィルス・ビタミン剤①「手洗いソング」と「Stay Home短編映画」

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毎日かなり長時間、YouTube、Netflix、Amazon Prime、DVDなどを見ています。特にYouTubeはヘビーユーザーになってしまっていますが、今の時期インドからは、「これは面白い!」「これは貴重!」という動画がいろいろアップされています。以前にも何本かご紹介しましたが、あのほかにも、外出禁止令で通いのお手伝いさんが来られなくなったため、スターたちが自らお掃除している姿、というビックリな動画もありました。カトリーナ・カイフがインド式の箒(ジャールー/झाड़ू)で床を掃いていたり、若手女性スターが自宅のレッスン場を拭き掃除して、パッと倒立した足先にぞうきんを挟んでミラー上部のほこりをふいたり、あるいはトイレ掃除をしているカップルがいたりと、インド社会を知る者には「目が点!」な動画がいっぱいあって、興味深かったです。「掃除人カーストが就労拒否して王宮はゴミだらけに」という寓話を描いた『おとぎ話』(Bhavni Bhavai/1980)という映画を知る身としては、今どきの若いスターたちの行動に拍手パチパチです。

(インドのほうき屋さん。ネットの画像サイトより)

そんな若いスターたちが、また面白い動画をアップしていました。手洗い奨励ソングなのですが、発祥はアメリカみたいですね。20秒間のラップに合わせて、どの人も手洗いダンスして見せる、というもので、個々人の動画の最後に、やっている人の名前が出ます。ちょっとセクシーなダンスもあって、これなら普段あまり手洗いしそうにないアンクル、チャーチャー、カーカー(いずれも”おじさん”)たちも真似したくなるかも。日本でも嵐などの手洗い動画がありますが、こういうダンサブルなものの方が手洗いが楽しくなりますね。

Shehnaaz Gill, Disha Patani, Bharti Singh, Arishfa Khan, Genelia D'Souza Dettol Hand Wash Challenge

 

そして、「おうちdeシネマ」の需要に応えるこんな動画も。アミターブ・バッチャンの「わしのサングラスはどこにいった?」というセリフから始まる、超・超・超豪華出演者による短編映画です。流れる言語は、ヒンディー語、パンジャービー語、マラヤーラム語、タミル語、テルグ語、ベンガル語....。

Family a made-at-home SHORT FILM | feat. Rajinikanth, Alia bhatt, Ranbir Kapoor, Priyanka Chopra

何人の出演者の名前がわかりましたか? 最後にアミターブ・バッチャンがバラしているような作り方で作られたもので、よくまあ、これだけのスターが協力したものだ、と感心してしまいます。さて、2本の動画ビタミン剤、効き目はどのぐらいでしたか? また時折、対コロナ・ビタミン剤をご自宅までお届けします。

 

緊急事態宣言による公開延期の作品&「ミニシアターを救え!」プロジェクト

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緊急事態宣言で指定された地域では、4月8日(水)から映画館がすべて休館となっています。一応約1ヶ月間、ゴールデンウィークが終わる5月6日(水)までの予定ですが、その1ヶ月間に多くのアジア映画の公開が予定されていました。すでに新しい公開日が決まっている作品もありますし、公開日が未定のものもあります。今のところ、把握できてるアジア映画、あるいはアジア関連映画のリストは下の通りです。公式サイトのリンクと予告編を付けておきます。

『新喜劇王』4月10日公開→新宿武蔵野館、シネマート心斎橋営業再開次第 公式サイト

チャウ・シンチー監督最新作『新喜劇王』予告編

 

『タゴール・ソングス』4月18日公開→公開日未定 公式サイト

映画『タゴール・ソングス』予告編

 

『あなたの顔』4月25日公開→5月23日公開 公式サイト

映画『あなたの顔』予告編

 

『はちどり』4月25日公開→公開日未定 公式サイト

世界各国で50冠以上!韓国映画『はちどり』予告編

 

『きっと、またあえる』4月24日公開→近日公開 公式サイト

『きっと、またあえる』 予告編

 

『薬の神じゃない!』5月1日公開→10月公開予定 公式サイト

映画『薬の神じゃない!』予告編

 

『色男ホ・セク』5月1日公開→  公式サイト

2PMジュノ主演最新作!映画『色男ホ・セク』予告編

 

『長沙里9.15』5月1日ヒューマントラストシネマ渋谷、5月15日シネ・リーブル梅田にて公開→  公式サイト

『長沙里9.15』予告

 

『さらばわが愛、北朝鮮』5月2日公開→公開日未定 公式サイト

映画『さらばわが愛、北朝鮮』予告編

また、アジア映画の上映は、シネコンよりもミニシアター系の映画館が引き受けることの方が多いのですが、そういった劇場の窮状を見て、#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトが始まりました。私の所へはコミュニティ・シネマセンター(公式サイト)からの連絡メールが届きましたので、それをコピペしておきます。ご支援いただける方は、下の文中にある署名サイト、そして13日から開設されるクラウド・ファンディングのサイトを通じてご支援の意思をお示し下さい。よろしくお願い致します。

            

新型コロナウィルスによって大きな打撃を受けている小規模映画館(ミニシアター)を支援するための、#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトが始まりました!コミュニティシネマセンターも、#SaveTheCinemaと一緒に、ミニシアターを支援する活動を続けます。

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新型コロナウィルス禍は、文化の一翼を担う映画の上映者にも大きな打撃を与えています。
とりわけ、インディペンデントの小規模映画館(ミニシアター)や上映事業者は甚大なダメージを受けています。
地域やコミュニティに根差した上映活動を行う、コミュニティシネマの中核となるミニシアターは、単なる娯楽施設ではなく、地域に多様な文化芸術体験を提供し、コミュニティの「文化権」を確保する重要な文化芸術拠点であり、美術館、劇場・音楽堂等の公立文化施設や、劇団、楽団、美術作家等と同様に、社会に欠くことのできない大切な存在です。
ミニシアターは、地元の小規模事業者やNPO、個人によって経営されるものが圧倒的多数を占めています。
諸外国と異なり、運営に対する公的な支援を受けていないミニシアターは、公立文化施設以上に苦しい状況に置かれています。
新型コロナウィルスが大きな問題となって以降、映画館の集客は30~50%以上減少しました。さらに、3月26日に東京周辺での「外出の自粛」要請が発表された後は、日を追うごとに観客数が減少は急激に加速しています。また、ミニシアターの興行を支えている良質な映画作品の配給者が、次々と新作の公開延期を決めており、今後の見通しもますます悪化しています。
この状況のもと、緊急事態宣言対象地域となった都府県の映画館の多くが休館を決めました。他府県の映画館や上映事業者も、自らの責任で、運営や活動の休止を決断するよう迫られているのが実状です。しかし、何の経済的補償もない中での「休館」は、そのまま「閉館」に繋がってしまうことになりかねません。今の状態が6月まで続けば、夏を待たずに閉館する映画館が続出することが予想されます。
いま、「映画」を届ける文化芸術拠点が地域から失われてしまう瀬戸際にあります。

映画と観客を結ぶ架け橋、映画という表現の最前線である「映画館」をどうしても守りたいという想いを抱く、映画監督、作家、ミニシアター関係者たちが集まって、SaveTheCinemaプロジェクトが始まりました。
4月6日には、賛同をよびかける署名がサイトで始まりました。
*このサイトでは署名のみを集めています。全国のミニシアターに応援を届けるクラウドファンディングは、4月13日からこちらでスタートします。応援いただけますと幸いです。

今後は、政府へミニシアターへの支援を求める要望書を提出する予定です。

現在のミニシアターの状況や取り組み、映画館を愛する俳優・監督からのメッセージなどを盛り込んだSAVE the Cinema のウェブサイトもできます。

 公式Twitter  公式FB

どうぞ、みなさま、SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトにご支援、ご協力ください。
このプロジェクトにつきましては、コミュニティシネマセンターもSNSやWebサイトを通じて随時発信していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

連絡先:一般社団法人コミュニティシネマセンター
Mail: film@jc3.jp

歌が導く豊穣の世界『タゴール・ソングス』[その②]♫Ekla Cholo Re♫

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緊急事態宣言で公開が延期になったドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』ですが、この機会に登場する歌をいくつかご紹介しましょう。その前に、[その①]をアップしたのがだいぶ前なので、本作の基本データと簡単な紹介文を載せておきます。

『タゴール・ソングス』  公式サイト
 2019/日本/105分/ベンガル語、英語/ドキュメンタリー
 監督:佐々木美佳
 製作・配給:ノンデライコ
※4月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開予定→延期/公開日未定

非西欧圏で初めてノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴール。イギリス植民地時代のインドを生きたこの大詩人は、詩だけでなく歌も作っており、その数は二千曲以上にものぼります。「タゴール・ソング」と総称されるその歌々はベンガルの自然、祈り、愛、喜び、悲しみなどを主題とし、ベンガル人の生活を彩りました。そしてタゴール・ソングは100年以上の時を超えた今もなお、ベンガルの人々に深く愛されています。なぜベンガル人はタゴールの歌にこれほど心を惹かれるのでしょうか。歌が生きるインド、バングラデシュの地を旅しながらその魅力を掘り起こすドキュメンタリー。

監督は佐々木美佳。若干26歳、ドキュメンタリーの制作自体が今回初めての佐々木監督は、東京外国語大学在学中にベンガル文学に魅了され、その文化を知ってゆく過程でタゴール・ソングと出会いました。アカデミックなアプローチとは全く異なるドキュメンタリーという手法によって、過去と現在、さまざまな人々を繋ぐ“歌”の真の姿に迫る重層的な作品に完成させました。(以上、本作チラシより)

『タゴール・ソングス』の中には実にたくさんのタゴール・ソングが登場するのですが、インド映画ファンにとって嬉しいのは、「これ、知ってる!」という歌が1曲出てくることです。それが、『女神は二度微笑む』(2012)で主題歌のように使われていた「Ekla Cholo Re(エクラ・チョロ・レ/ひとりで歩め)」です。

『女神は二度微笑む』は、身重の女性ヴィディヤ(ヴィディヤ・バーラン)が連絡を絶った夫を捜しにロンドンからコルカタに赴き、地元警察の若い警官(パラムブラト・チャテルジー)や本省から来た警部(ナワーズッディーン・シッディーキー)と共にその謎を解いていく、というサスペンス映画です。後半、人が信じられなくなったヴィディヤが、窓の外をドゥルガ・プジャの祭りの場へと運ばれていくドゥルガ女神像を見つめるシーンで流れるのが、この「Ekla Cholo Re」で、歌っているのはヒンディー語映画界の大物俳優アミターブ・バッチャンです。そのシーンをまず見ていただきましょう。

Ekla Cholo Re Song | Kahaani | Amitabh Bachchan

この歌の歌詞は、以前『女神は二度微笑む』の公開時にもブログに載せたことがあるのですが、今回は下段を単語の逐語訳にしてみました。やさしい歌ですので、一緒に歌ってみて下さい。

Ekla Cholo Re

ジョディ・トル・ダク・シュネ・ケウ・ナ・アシェ・トベ・エクラ・チョロ・レ
Jodi  tor  dak     shune    keu   na   ashe   tobe   ekla  cholo re
もし    君の 呼ぶ  聞いて    誰   ない  来る     でも 一人 歩め/行け
(くり返し)

トベ・エクラ・チョロ、エクラ・チョロ、エクラ・チョロ、エクラ・チョロ・レ
Tobe   ekla   cholo,    ekla   cholo,   ekla   cholo,   ekla   cholo  re
それでも一人  歩め、一人で    行け、一人     歩め、  一人で 行くんだ
(くり返し)
(英語歌詞)
ジョディ・ケウ・コタ・ナ・コイ、オレ・オレ・オ・オバガ、ケウ・コタ・ナ・コイ
Jodi    keu   kotha  na  koi,   ore  ore   o  obhaga,  keu  kotha na  koi
もし   誰(も) 話 ない する     おお  不運な人よ    誰(も) 話 ない する

ジョディ・ショバイ・タケ・ムク・ピラエ・ショバイ・コレ・ボイ
Jodi  shobai thake  mukh phiraee  shobai    kore bhoi
もし  みんな 止まる  顔    そむける  みんな    怖がる
(くり返し)
トベ・ポラン・クレ
Tobe poran khule, 
それでも 着る 開く(胸を開いて)
(くり返し)
オ・トゥイ・ムク・プテ・トル・モネル・コタ・エクラ・ボロ・レ
O    tui   mukh  phute  tor    moner kotha   ekla     bolo  re
おお 君は   顔を   上げて君の   心の    思いを 一人   言うんだ
(くり返し)
ジョディ・トル・ダク・シュネ・ケウ・ナ・アシェ・トベ・エクラ・チョロ・レ
Jodi    tor   dak    shune   keu   na   ashe   tobe   ekla   cholo  re
もし     君の   呼ぶ 聞いて   誰   ない 来る   でも   一人 歩め/行け

「Ekla Cholo Re」は英語版Wikiがあって、ベンガル語文字、それからローマナイズで原語歌詞が載せられており、さらに英語訳が付いています。で、ちょっと問題になるのが、この英語版Wikiでは、歌のタイトルが「Ekla Chalo Re」になっていることです。「Cholo」「Chalo」どちらが正しいの? 実はこれ、歌詞のベンガル語文字「 একলা চলো রে 」をそのまま機械的にローマナイズすると「Ekla Chalo Re」になり、発音に即してローマナイズすると「Ekla Cholo Re」になるんですね。「 চ」は「cha」なんですが、ベンガル語の短母音「a」は通常「o」と発音されるので「cho」になるわけなのでした。ほかにも、文字を素直に読んだ発音とは違う発音になる単語がベンガル語にはいくつかあって、ベンガル語学習者には頭が痛いのです。そういう私はもう40年ぐらい前に1年あまり、毎週日曜日にベンガル人研究者の方のもとに通ってベンガル語を習っただけなので、ちゃんとモノにしたとはとても言えません。というわけで、もし上記歌詞の発音や意味に間違いがあれば、ぜひご指摘下さい。

最後に、『タゴール・ソングス』の予告編を付けておきます。予告編の中でもこの歌が流れますので、聞いてみて下さいね。

『タゴール・ソングス』予告編 / Tagore Songs_Trailer

 

『きっと、またあえる』のコレに注目!<3>主演カップル初顔合わせ

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いつあえるかな~の『きっと、またあえる』ですが、出演者がとっても魅力的なので、徐々にご紹介していきましょう。今日は主演カップルのアニことアニルッド(スシャント・シン・ラージプート)とマヤ(シュラッダー・カプール)という、初顔合わせのお二人です。

アニ役のスシャント・シン・ラージプートは、1986年1月21日生まれの34歳。『きっと、うまくいく』のラージクマール・ヒラニ監督作品、『PK/ピーケイ』(2014)でお馴染みですね。冒頭でヒロインのジャグー(アヌシュカー・シャルマー)とベルギーのブルージュで出会い、結婚式当日のすれ違いで別れざるを得なかったパキスタン人青年をさわやかに演じていました。冒頭だけの出演かと思っていたら、最後にも登場して観客をボロ泣きさせるという、主人公のPK(アーミル・カーン)よりも印象に残ると言っては言いすぎですが、もうけ役でした。ちゃんとソング&ダンスシーンまで用意されていたので、ラージクマール・ヒラニ監督、よほど彼が気に入ったのだと思います。その歌のシーンをどうぞ。

'Chaar Kadam' FULL VIDEO Song | PK | Sushant Singh Rajput | Anushka Sharma | T-series

『PK/ピーケイ』は2016年10月に日本公開され、日本版ソフトも出ていますので、公開前に予習したい方はぜひご覧になっておいて下さい。しかし、2013年の大阪アジアン映画祭をご覧になった方は、「スシャント・シン・ラージプートの紹介は、こっちの方が早いもんね」とおっしゃるかも知れません。そう、この第8回大阪アジアン映画祭で上映された『わが人生3つの失敗』(2013)こそが、彼の日本初お目見えだったのです、というか、この作品がスシャント・シン・ラージプートのデビュー作だったのでした。『わが人生3つの失敗』は人気作家チェータン・バガトの小説の映画化で、邦題は英語タイトルから訳したため、小説の題名と同じになっています。映画の原題は「Kai Po Che!」と言い、凧揚げの時相手の凧と闘って、「凧の糸切れた!」と叫ぶグジャラーティー語の言葉なのだとか。このデビュー作でスシャント・シン・ラージプートは人気者になり、翌年の『PK/ピーケイ』、2016年の『M.S.ドーニー~語られざる物語~』(日本ではIFFJ2017で上映)も大ヒット、次々と主演作を世に出し続けている、というわけなのでした。

Kai Poche film poster.jpg M.S. Dhoni - The Untold Story poster.jpg

『きっと、またあえる』では老け役も体験し、今後ますます演技の幅が広がりそうです。Netflixでは、ジャクリーン・フェルナンデスと共演した『DRIVE ドライヴ』(2019)が見られますので、予習候補リストに入れておいて下さい。

一方、ヒロインのマヤ(音引きを付けると「マーヤー」。のちのお釈迦様、ゴータマ・シッダールタの母の名前と同じですね。ヒンディー語では「神通力、幻」というような意味もあります)を演じるシュラッダー・カプールは、1987年3月3日生まれの33歳。超大作『サーホー』(2019)でプラバースの相手役を務め、今や「最高に稼げる俳優の一人となったシュラッダー・カプールが興行収入ランクを席巻!」という記事まで出るほどの人気者です。この記事では、今年公開された『Baaghi 3(反逆者3)』と『Street Dancer 3D(ストリート・ダンサー3D)』が彼女の魅力でヒットしたと述べ、『きっと、またあえる』や『サーホー』のヒット実績にも言及しながら、シュラッダー・カプールが役柄を魅力的に演じて観客や批評家を魅了し、興行成績も押し上げた、と褒めちぎっています。確かに、独身女優ではカトリーナ・カイフやジャクリーン・フェルナンデスがいまひとつ魅力的なヒロイン像を表出できていない現在、シュラッダー・カプールの活躍は目立ちます。

Photo by R.T. Chawla

シュラッダー・カプールは父親シャクティ・カプールが俳優で、母親シヴァーンギー・カプール(旧姓コールハープリー)もかつて女優、そして母方の叔母はパドミニー・コールハープリーという1980年代の人気女優、という家に育ちました。上の写真は写真を撮ったカメラマンの説明によると、「シャクティ・カプール一家」とのことで、右からシャクティ・カプール、妻のシヴァーンギー、娘のシュラッダー、撮影時期は1990年代末です(左端の女性は不明)。シャクティ・カプールは、1980年代までは悪役専門、その後コメディ俳優に転じて、ゴーヴィンダー主演作などで人気を博した人です。この頃は絶頂期で、ご家族と共にどこかのパーティーに出席した時の写真のようです。

シュラッダー・カプールは2010年にアミターブ・バッチャン主演の『Teen Patti(3枚のトランプ)』でデビューしますが、人気がブレイクしたのは2013年の『愛するがゆえに』(上写真。公開時にいただいた画像を使わせていただきました)でした。アメリカ映画『スター誕生』をインドに置き換えてインドでもヒットした『愛するがゆえに』は、2015年8月に日本公開され、日本版DVDも出ているのですが、ちょっとアマゾン沼でも見当たりませんね。権利が切れたのかも知れません。その後は、シャーヒド・カプールの相手役で「ハムレット」を映画化した『Haider(ハイダル)』(2014)、ヴァルン・ダワンの相手役で見事なダンスを披露した『ABCD 2(誰でも踊れる 2)』(2015)、タイガー・シュロフの相手役を務めた『Baaghi(反逆者)』など、次々と話題作、ヒット作に出演して行きます。その後はちょっとパワーが落ちますが、昨年から今年に掛けて大ヒット作を連発し、前述のような押しも押されぬ人気女優No.1になっている、という次第です。

『きっと、またあえる』は、やはり男子寮のエピソードが中心なので、シュラッダー・カプールの実力が十分発揮されているとは言いがたいのですが、スシャント・シン・ラージプートとの共演は初めてなのでとても新鮮。ハレー彗星に巡り会うぐらいの確率でしか理系大学には存在しないという、美人リケジョはもっと活躍してくれてもよかったと思うのですけどねえ、ニテーシュ・ティワーリー監督。奥様のアシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー監督(『ニュー・クラスメイト』(2016)や『Panga(対戦)』(2020)など、フェミニズム作品を撮っている)に叱られませんでしたか? 冗談はさておき、シュラッダー・カプールの魅力を予告編で再度確認して、会える日を楽しみにお待ち下さい。

『きっと、またあえる』 予告編

 

ディアスポラになるということ~『さらばわが愛、北朝鮮』

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本作も、5月2日(土)から2週間の公開が予定されていたのですが、緊急事態宣言で公開が延期になってしまいました。『さらばわが愛、北朝鮮』というタイトルから、私や香港映画好きの友人たちは、「レスリー・チャンの『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993)と何か関係が?」と思ってしまったのですが、これは全くの的外れでした。本作の原題が『Goodbye My Love, North Korea』というのだそうで、それを直訳した邦題、というだけだったのです。ということで、まずは基本データをどうぞ。ここにはハングルでも原題が書いてありますが、ハングルは「グッパイ・マイ・ラブ NK(=ノース・コリア)」と読めます。

『さらばわが愛、北朝鮮』  公式サイト
 2017/韓国・ロシア/80分/韓国語、ロシア語/ドキュメンタリー/原題:굿바이 마이 러브 NK/Goodbye My Love, North Korea
 監督:キム・ソヨン
 配給:パンドラ
※5月2日(土)~15日(金)特別限定ロードショー@K's cinemaの予定が延期に。

©822Films+Cinema Dal

1952年、金日成(キム・イルソン)を指導者として1948年に成立した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から、8人の若者がソヴィエト連邦共和国(ソ連/現ロシア)のモスクワにある全ソ連国立映画大学(VGIK)に留学します。当時は、1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争が約1年間の激しい戦いの後一時休戦に入っていた時で、スターリン時代のソ連に、8人は希望に燃えるエリート留学生として赴いたのでした。ところが彼らの留学中、1950年代半ばになると、北朝鮮の政治動向がおかしくなってきます。キム・イルソンの個人崇拝傾向が強くなり、朝鮮労働党内から民主的な空気が消え失せてしまうのです。1955年12月には、南朝鮮労働党出身の指導者的人物が処刑され、1956年には「延安派」と呼ばれる中国出身者や、ソ連出身者を中心とした「ソ連派」の人々も粛正されていきました。1957年になると、留学生たちとも親しかった駐ソ連大使が「延安派」と目されて更迭され、ソ連を去ります。一方ソ連では、留学生たちが到着した翌年の1953年にスターリンが死去。1956年2月のソ連共産党大会では、後継者のフルシチョフがスターリンの個人崇拝を批判し、「ソ連の春」が訪れようとしていました。

©822Films+Cinema Dal

そんな中、1957年11月にモスクワで開かれた朝鮮留学生大会では、映画大学のシナリオ科の留学生ホ・ウンベがキム・イルソンの個人崇拝を批判し、その後に行方をくらまします。大使館職員との攻防の末、ホ・ウンベは医科大学に留学していた恋人と共にソ連に亡命。あせった大使館は留学生たちがホ・ウンベの思想に染まるのを恐れ、留学生たちを監視しながら、何度か討論会を開かせました。その大使館の目を逃れ、1958年1月に集まった留学生たちは激しい議論を交わし、その結果彼らもソ連に亡命する決意を固めていくのです。そして1958年2月4日、ソ連政府に亡命申請書を送るのですが、これはホ・ウンベがすでに亡命していることもあり、たとえ北朝鮮に戻っても「ソ連派」として粛正されることが目に見えていたのと、「ソ連の春」を目の当たりにして、個人崇拝の北朝鮮に戻ることを嫌悪したからでした。

 

 

その後の彼らは、亡命に加わらなかった2名を除き8名全員が映画大学から退学となり、学生寮を出てモスクワ郊外で自活を始めます。先に亡命してタシケントに住んでいたホ・ウンベが食料を持って訪問し、「私たちは、今こそ真の人間になるという意味で、同じ”真(ジン)”という名前に変えよう」と提案したことから、何人かが名前を変えたため彼ら8人は「八真」と呼ばれているとか。その後、北朝鮮に配慮するソ連当局からは、亡命者として分散移住をさせらたりしながら、この「八真」たちはソ連で生き抜いていきます。8人のプロフィールは以下の通りです。

©822Films+Cinema Dal

「八真」プロフィール
キム・ジョンフン(写真↑↓)
・留学までの経歴:黄海道(ファンヘド)出身
         大学の物理学部で学ぶ
         朝鮮戦争で迫撃砲中隊小隊長として戦う
・ソ連/ロシアでの職業:映画監督(カザフフィルム所属)
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ→ムルマンスク(北の沿岸部の西端)→アルマトイ(カザフスタン南部。ハン・デヨン、チェ・グギン、ヤン・ウィンシクとも)
・その他:本作韓国公開時の唯一の生存者(のち、逝去)

©822Films+Cinema Dal

チェ・グギン(1926~2015 /写真↓)
・留学までの経歴:1934年両親と中国に移住、人民解放軍に入隊
        1948年北朝鮮に戻り、北朝鮮初の劇映画「わが故郷」で俳優デビュー
・ソ連/ロシアでの職業:映画監督(カザフフィルム劇映画部門所属)
        「龍の年」を共同監督
        1987年「チョカン・ワリハーノフ」で芸術・文化部門国家賞受賞
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ→アルマトイ(ハン・デヨン、キム・ジョンフン、ヤン・ウィンシクとも)
・その他:「八真」の最年長。本作最後のインタビューを終えた後、2015年5月に死去
     ハン・デヨン作「38度線」の映画化を希望していた

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ハン・デヨン(ハン・ジン)(1931~1993)
・留学までの経歴:金日成総合大学でロシア語を専攻
・ソ連/ロシアでの職業:作家
       カザフスタン、レーニンキチ新聞社(現・高麗日報)にて執筆活動開始
       1962年短編小説「ムクドリ」を発表、高麗人2世の文学をリード
       1965年「継母」の公演後、高麗劇場の文芸部長就任
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ→バルナウル(西シベリア)→クズロルダ(カザフスタン)→アルマトイ(キム・ジョンフン、チェ・グギン、ヤン・ウィンシクとも)
・その他:留学中は他の留学生に授業内容をロシア語から朝鮮語に翻訳
     亡命後、ロシア人女性ジナイダ・イワノフナ(↓)と結婚

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リ・ギョンジン(1930~2002)
・留学までの経歴:(不明)
・ソ連/ロシアでの職業:(不明)
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ(1958年一時居住証)→モスクワ近郊
・その他:ロシアで死去

ホ・ウンベ(1928~1997)
・留学までの経歴:(不明)
・ソ連/ロシアでの職業:在ロシア高麗人協会会長
            高麗日報会長
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ→タシケント
・その他:1997年モスクワ(ウズベキスタンとの説も)で死去
     亡命の経緯は次の通り。モスクワ映画大学在学中の1957年11月27日、朝鮮留学生大会に参加し、金日成の個人崇拝を批判して失踪。大使館の追跡と説得により自主的に戻ったところ、すぐに監禁されたが、大使館のトイレの窓から逃げ、地下鉄の駅員に助けを請うた。ソ連/ロシア当局に引き渡され、医科大学に留学していた恋人(チェ・ソノク)と共に亡命

チョン・リング(1931~2004)
・留学までの経歴:(不明)
・ソ連/ロシアでの職業:(不明)
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ(1958年8月一時居住証)→イルクーツク(中部シベリア)
・その他:ロシアで死去

リ・ジンファン(1933~2005)
・留学までの経歴:(不明)
・ソ連/ロシアでの職業:(不明)
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ(1958年8月一時居住証)→ドネツク(ウクライナ)
・その他:ロシアで死去

ヤン・ウォンシク(1932~2006)
・留学までの経歴:(不明)
・ソ連/ロシアでの職業:ドキュメンタリー映画監督(カザフフィルム所属)
            カザフスタン高麗日報ハングル版主筆
・ソ連/ロシアでの居住地:モスクワ→スターリングラード→アルマトイ(ハン・デヨン、キム・ジョンフン、チェ・グギンとも)
・その他:2006年アルマトイで暴漢に刺され死亡

©822Films+Cinema Dal

本作のキム・ソヨン監督は1961年生まれの韓国の女性監督で、公式サイトに詳しい紹介がありますが、本作の主人公たちのことを知って、映画製作に着手した時にはすでにキム・ジョンフン以外の人はすべて亡くなっていたのだとか。チェ・グギンのインタビューは2015年に亡くなる直前に、キム・ジョンフンと共に訪問の記録として撮ったのではと思われます。そういった貴重な映像と当時の写真を紹介しながら、なぜこの8人が故郷を捨ててディアスポラとならざるを得なかったのか、その選択によって彼らの人生がどう変わったのか、といった点を描いていきます。ただ、80分に収めるにはあまりにも大きな物語で、登場人物の顔の区別もつきにくく、解説付きでもっとじっくりと見てみたいと思わせられる作品でした。

©822Films+Cinema Dal

本作中には、チェ・グギンが共同監督としてソ連で撮った映画『龍の年』等のクリップも出てきて、全編見ることができたら、と思ってしまいます。これらのクリップや、引用されている記録映像が、3画面を横に並べる方式で出てくるのにも興味を引かれました。あれはソ連式というか、ロシア式の紹介方法なのでしょうか。旧ソ連領には朝鮮民族の人も多く居住している、ということは知っていました(一昨年急死したフィギュアスケートのデニス・テンもそうです。彼は本作とも重なるカザフスタンの人でしたね)が、こんな経緯でソ連に亡命した人たちもいたとは。驚きの世界が広がる『さらばわが愛、北朝鮮』、新型コロナウィルスの感染が終息したら、ぜひご覧になってみて下さい。最後に予告編を付けておきます。

映画『さらばわが愛、北朝鮮』予告編

 


<イスラーム映画祭5>@名古屋&神戸は開催延期

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3月にこちらでご紹介した<イスラーム映画祭5>。3月14日(土)~20日(金) の渋谷 ユーロスペースでの上映は、市松模様座席指定方式(前後左右に空席を作って座る形式)でかろうじて開催され、多くの観客が映画上映とトークを楽しんだのですが、その後緊急事態宣言が出て、昨日主催者の方から「4月25日(土)~5月1日(金)の名古屋シネマテークでの開催ならびに5月2日(土)~5月8日(金) の神戸・元町映画館での開催を延期します」というお知らせが届きました。楽しみにしておられた皆さんも多かったと思いますが、こんな時ですので仕方がありませんね。主催者の方からのお知らせは以下の通りです。

4月25日(土)からの「イスラーム映画祭5名古屋篇」および、5月2日(土)より予定しておりました「イスラーム映画祭5神戸篇」の開催を、新型コロナウィルス感染拡大の状況を考慮して延期する運びとなりました。開催時期は大まかに秋頃を予定しておりますが、今後の状況しだいではさらに延びる可能性もございます。

映画祭そのものは、各作品の上映権を回数ごとに購入しておりますので、あとは上映素材の都合がつきさえすればいつでも開催する事ができますが、今現在、名古屋会場の名古屋シネマテークや、神戸の元町映画館はじめ全国のミニシアターは、国や各自治体からの(補償なき、もしくは補償不透明な)営業自粛要請の影響を受け、大変な苦境に陥っております。

いくら映画祭がいつでもできると申しましても、肝心の劇場がなければ映画を上映する事はできません。そうした状況を見て今ミニシアターを支援しようとする動きが同時多発的に始まっています。宜しければみなさまにも以下の情報へのアクセスや署名、拡散をお願いできましたら誠に幸いです。(署名は本日13日までです!)自分もいつかの映画祭再開を虎視眈々と見据えながら、こうした支援活動に参加していきたいと思っております。

SAVE the CINEMA ミニシアターを救え!
http://savethecinema.jp/

ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金
https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid

開催時期が決まりましたらまたお知らせいたしますので、今後とも「イスラーム映画祭5」、なにとぞ宜しくお願い申し上げます!

以上が<イスラーム映画祭5>主催者からのお知らせと呼びかけです。ミニシアター支援についてはこのブログでもご紹介しましたが、署名は一応締め切られたものの、第2弾が考えられているようです。また、この署名と入れ替わる形でクラウドファンディングの募集が始まり、すでに4,501人が賛同して出資、たった1日で5,200万円強のファンドが集まりました。私もこれからポチッとする予定ですが、3,000円から500万円までいろんな金額が選択でき、またチケット○枚等のリターンがある映画ファンには嬉しいものと、「お返しは結構で~す」という太っ腹支援も選択できるなど、悩むのも楽しいクラウドファンディングです。「布マスク要りませんから、こっちへ寄付して下さい」とかができるといいのになあ。では皆さんも、お財布に余裕がありましたら、通い慣れたミニシアターを思い出してポチッとしてみて下さいね。

最後に、<イスラーム映画祭5>で上映されるインド映画『アブ、アダムの息子』(2011)の挿入歌「Makka Madeenathil(メッカ、メディナに)」の動画を付けておきます。イスラーム世界では来週からラマダーン(断食の月)が始まるのですが、この情勢ではどうなるのでしょうね...。

Adaminte makan Abu Song - Makka Madeenathil

 

対コロナウィルス・ビタミン剤②トリウッドスター男気ミュージカル

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対コロナウィルス・ビタミン剤、2回目の「お薬、出しておきますね」です。

前回の「Stay Home 短編映画」はなかなか好評で、友人から「ビタミン剤受け取りましたよ~」というメールをもらったり、すでにこの短編映画を知っていた配給会社勤務の知人からは、「短編映画“Family”、あれは面白いですね! ロックダウン中の外出禁止を逆手に取ってありえない共演、ああいうのをフットワーク軽く作れるのはすごいと思いましたし、コメディというのもこういった状況だからホッとします」というコメントをいただきました。「湿布」と違って効き目が高かったようで(私のブログにはよくミルクボーイの漫才ネタが出てきます。ミルクボーイの漫才は関西人のツボを押しまくってくれて、私には一番のビタミン剤です)、まずはめでたい。この短編映画、YouTubeでもいろんな所が再度アップしていますが、その中からインドの映画情報サイトcoimoiがアップした動画にリンクを張っておきますので、未見のかたはご覧になってみて下さい。

あの短編映画の中で、ひげそり姿で登場したのがテルグ語映画界の超大物俳優であり、政治家でもあるチランジーヴィ(上写真。Wikiのサイトより)なのですが、この出演からアイディアがひらめいたのか、今度はチランジーヴィが面白いものを作ってくれました。彼を中心に4人のトリウッド(テルグ語映画界のこと)男優が出演する、コロナウィルスへの注意を促すミュージック・クリップで、先週YouTubeにアップされました。ギターを弾いているのは作曲を担当した音楽監督のコーティで、歌も彼が歌っています。

Telugu Actors come together for Coronavirus awareness video

 

チランジーヴィのほかに3人の男優が出てきましたが、誰が誰だか、おわかりになりましたか? ギターの前奏に合わせてまずチランジーヴィがカメラを据え、続いて出てきたオレンジ色のポロシャツ姿のナーガールジュナもカメラを据えて調整します。その次に登場する白Yシャツ姿はサーイ・ダラム・テージで、最後に小豆色のシャツのワルン・テージが加わります。若いサーイ・ダラム・テージとワルン・テージはクールに演じていますが、おじさんたち3人、チランジーヴィとナーガールジュナ、そしてコーティは演技力たっぷりで、男気溢れる映画の中のミュージカルシーンを見ているみたいです。これも皆さん自分の家でそれぞれに撮影して、それをうまくつなぎ合わせているのですが、先週の短編に比べて編集が上手です、というか、インド映画界お手の物のミュージカルシーンなので、劇映画と違って作りやすかったのでしょうね。とても楽しいクリップになっています。英語字幕がありませんが、歌の中に英語の単語が出てくるのと、それぞれの動作で、何を歌っているのかはおわかりいただけると思います。

Nagarjuna at 62nd Filmfare awards south.jpg

ところでこの俳優4人の関係ですが、ナーガールジュナ(上写真。Wikiより)、あるいはアッキネーニ・ナーガールジュナと姓を入れて呼んだりする彼以外の3人は親戚です。現在30歳のワルン・テージは、チランジーヴィの弟でやはり俳優であるナーガバーブの息子、そして現在33歳のサーイ・ダラム・テージはチランジーヴィの妹の息子なのです。ですからチランジーヴィからすると甥、その息子である『マガディーラ 勇者転生』のラーム・チャランから見ると、二人とも従弟ということになります。余談ながらもひとつオマケを付けると、ナーガールジュナの前の奥さんはラクシュミ・ダッグバーティと言い、ラーナー・ダッグバーティの叔母に当たります。南インド映画界の縁戚関係図は「最中」の家系図よりも複雑で、いろいろたぐっていくとどこかでみんな繋がっている感じです。興味のある方はこちらのサイトでお勉強して下さいね。

一方ボリウッドでは、こんなの~んびりした動画が人気を呼んでいます。

Salman Khan With HIS NEW LOVE | Being taken for a ride...

 

サルマーン・カーンが「Stay Home」している動画なのですが、場所がムンバイ市内のバンドラにある自宅ではなく、郊外のファームハウスと呼ぶ別荘のようです。トップスターたちはだいたい皆さんファームハウスを持っていて、サルマーン・カーンのはナヴィ・ムンバイ地区のパンヴェールにあるようです。お馬さんと戯れるサルマーン、この「ビタミンP(プレーム)」もぜひお試し下さい。

            

インドのモーディー首相は、昨日の国民への演説で、4月14日(火)までのはずだったロックダウンの延長を告げ、19日間延長して5月3日(日)までとする、と伝えました。「感染者数がまだたった500人の時に、インドは他国に先駆けて21日間のロックダウンを宣言した。効果は大いにあった」と自慢そうに言っていましたが、インドの感染者数は一昨日1万人を超えました。外出禁止令を守るよう、警官が警棒で外出者を叩いたり、地面に座らせて制裁したりしているのですが、その一方で都市を脱出しようと地方からの出稼ぎの人がバスターミナルに押しかけたりする現象が起きており、昨日もムンバイのバンドラ地区に何千人という人が集まって、「帰省するためのバスを出せ!」と迫ったそうです。日本よりも、状況はさらに厳しいインドです。

 

 

王兵作品とその研究書「ドキュメンタリー作家 王兵 現代中国の叛史」

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先日、力作のご本をいただきました。土屋昌明、鈴木一誌編著「ドキュメンタリー作家 王兵<ワン・ビン> 現代中国の叛史」(ポット出版プラス、¥3,600+税)という研究書で、中国の映画監督王兵とその作品を、王兵監督自身へのインタビューもまじえながら紹介・分析した労作です。目次を書いておきましょう。

「ドキュメンタリー作家 王兵<ワン・ビン> 現代中国の叛史」

中国全図と王兵監督作品の撮影地
『鳳鳴 中国の記憶』に関連する中国現代史年表
『鳳鳴 中国の記憶』は王兵監督作品の背骨である=土屋昌明
  「はじめに」に代えて

第1部 王兵監督が/を語る
 王兵監督インタビュー①  聞き手・文責=土屋昌明
   『鳳鳴』『無言歌』から『死霊魂』への思いと映画の可能性
 ドキュメンタリー撮影ノート ― 王兵監督との対話から=文平
 王兵監督インタビュー②  聞き手・構成=樋口裕子
   歴史の空白を描くことから、いま、激変する中国を撮る

第2部 『鳳鳴 中国の記憶』を読み解く=山根貞男・土屋昌明・鈴木一誌
 映画『鳳鳴 中国の記憶』と中国現代史

第3部 作品の核心に向かって
 王兵という〈試し〉― 『鉄西区』から『収容病棟』まで=藤井仁子
 ワン・ビン作品における視線のポリティクス ― 見る/見られるの非対称性を巡って=劉文兵
 中国のインディペンデント・ドキュメンタリー=中山大樹
 記憶の居場所 ― 王兵と<難民>=鈴木一誌

第4部 創作の軌跡 ― 王兵監督フィルモグラフィ=山口俊洋・土屋昌明

フィルモグラフィ参考文献一覧 他 

Bing Wang

王兵監督(上写真はIMDb「Bing Wang」より)は1967年、中国の陜西省西安(シーアン)生まれ。『鉄西区』(2003)を皮切りに22本の作品を撮っていますが、『無言歌』(2010)、『苦い銭』(2016)とビデオアート作品を除いて、ほとんどがドキュメンタリー映画です。3部構成になっているドキュメンタリー映画『鉄西区』は、各部がそれぞれ240分、175分、130分となっており、合計545分、つまり9時間5分のドキュメンタリー作品ということで、人々を驚かせました。日本でも2003年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映され、見事大賞を受賞したのですが、この時から日本に、王兵ファンがどっと生まれたのです。続く2作目のドキュメンタリー『鳳鳴 中国の記憶』(2007)も、2007年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で183分版が上映されて、再び大賞を獲得しました。そして、この作品は配給会社ムヴィオラによって日本公開され、以後中心的な作品は、ドキュメンタリー映画、劇映画ともに日本公開がなされています。公開の前に山形国際ドキュメンタリー映画祭や東京フィルメックスで上映された作品もあり、王兵監督も何度か来日を果たしました。

実は今回も、王兵監督作品のドキュメンタリー映画『死霊魂』(2018)が4月4日(土)から公開されるはずでした。上は試写状で、ご覧いただくとおわかりのように、これも3部構成で合計8時間26分という超長尺作品です。試写で一部だけでも見たいと思ったのですが、なぜかどの日も他作品の試写や用事があったりして結局は見に行けず、そのせいでこのブログでは作品紹介ができませんでした。そんなことから私はてっきり公開されたのだと思っていて、こちらの記事「公開延期作品」でも取り上げなかったのですが、公開直前に「6月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムで公開」に変更されたそうです。よかったですね。公式サイトはこちらです。ついでに下に、予告編を付けておきます。(最後の公開期日が訂正されていませんが、ご理解下さい)

ワン・ビン監督『死霊魂』予告編(6月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開)

 

ただ、土屋先生(いつもよく専修大学で開催される中国のドキュメンタリー映画の上映をご案内していますが、その主催者でもある専修大学教授で、中国文学や中国語ドキュメンタリーゼミなどを担当しておられます)たちのこの本は、「本書の着想は、2009年初頭、『石炭、金』をポンピドゥーで見たあと、近くのカフェで王兵監督と話したときに思いついた」と「『はじめに』に代えて」にも書かれているように、今の時期の発売となったのは偶然のようです。着想から11年、内容がぎっちり詰まった素晴らしい本が完成したことを喜びたいと思います。もし、アマゾン沼でお求めの時は、こちらからどうぞ。王兵作品のソフトも出ていますので、それらが全部掲載されているページにリンクを張りました。

            

なお先日、先に挙げた記事でご協力をお願いした「ミニシアターを救え!」プロジェクトですが、4月13~15日というこの3日間だけで、9,153人の方がクラウドファンディングに協力し、総額102,997,868円(4月16日午前零時現在)と、目標額1億円を早くも突破しました! ご協力下さったブログ読者の皆様、ありがとうございました。私もほんのちょっぴり協力し、家から近いシネマヴェーラ渋谷のチケットをいただくことになってます。ファンディングの期間はまだ30日間残っていますので、映画好きのお友達にもぜひご紹介下さい。今日は、呼びかけ人の濱口竜介監督と深田晃司監督の御礼メッセージがアップされ、お二人ともミニシアターの思い出を語っておられましたが、深田監督が今はなき三百人劇場で見たアッバース・キアロスタミ監督作品やモフセン・マフマルバフ監督作品のことにも言及されて、イラン映画の素晴らしさを言って下さったのは嬉しかったです。ミニシアターの皆さん、またそちらの劇場で素敵な作品を見せていただける日まで、一緒にがんばりましょう!

 

『きっと、またあえる』のコレに注目!<4>愛しのセクサ

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日本中が緊急事態宣言下になりました。そんな状態なので、少しでも楽しいことを思い出しながら&やりながら、毎日を自宅で過ごしたいと思います。目下のところ、私の頭の中の消しゴム、じゃない、頭の中の小さな灯になってくれているのが、『きっと、またあえる』のセクサ君です。あの映画の中では、人物造形が一番成功しているキャラだと思います。というわけで、セクサ君のことを思い出すと、頬が緩んできます、フフフ....。そんなセクサ君と、映画公開前にぜひ親しくなっておいて下さい。以後、呼び捨てにしますが、セクサというのはあだ名で、本名はグルミート・シン・ディロン。多分、パンジャーブ州の出身ですね。下の写真の右から2人目、ユニークな白菜頭をしたぼっちゃり男子がセクサです。

『きっと、またあえる』は、以前にもご紹介した(<1><2><3>)ように、ムンバイの工科大学の第4号棟の男子寮(ホステル4=H4)を舞台に、そこに集う学生たちの日々を描く部分がストーリーの核になっています。時代は1993年に設定されており、前回ご紹介した主人公のアニことアニルッドが新入生として入寮した時から、それぞれの寮が各種スポーツやゲームなどで競うGC(ゼネラル・チャンピオンシップ)の勝敗が決まるまで、という約半年間を描きます。アニが新入生としてH4にやってきた時に、2年生として彼を迎え、いろんな意味で”鍛えた”のが、セクサとアシッドでした。「セクサ」は前に書きましたが、「アシッド」もあだ名です。「セクサ」はセックスのことばかり考えているからついたあだ名で、「アシッド」は激烈な罵り言葉をいつも使うことから、「酸、痛烈な」という意味のこのあだ名がつきました。アシッドは上写真では左から2番目、下の写真では真ん中にアシッド、右にセクサが写っています。

このセクサというあだ名ですが、「セックス」というあからさまな単語ではなく、ちょっと綿アメでコーティングしてある感じで、生々しさが消してありますね。頭の中が性的なことでいっぱいになって悶々とするのは、20歳前後の男子ならありがちなことですが、『きっと、またあえる』では少々きわどい表現を使ったりしながらも、下品にならないセリフ(藤井美佳さんの字幕がまたうまい!)や表情でセクサのキャラを構築しています。セクサのコレクションとしてアメリカの雑誌「プレイボーイ」も登場するものの、表紙だけなので何ら問題なし(中身はご承知のように、「プレイボーイ」も「プレイガール」も結構スゴかったんですよ~)。ほほえましいセックス・アディクトのセクサですが、やがてそんなことを忘れるぐらい、愛すべきキャラになっていきます。このあたり、楽しみにしていて下さい。特に、GCのサッカー試合で見せるレッドカード・テクニックは、今思い出しても笑いがこみ上げてきます。体型も含めて、よくぞこんな俳優を見つけてきたな、とニテーシュ・ティワーリー監督、またはキャスティング・ディレクターに脱帽です。

セクサを演じているのは、パンジャーブ州ジャランダル出身のヴァルン・シャルマ。1990年2月4日生まれの30歳です。偶然にも、州都チャンディーガルの工科大でメディア・エンタメ・映画技術の学位を取っているそうで、今回の役にはドンピシャですね。2013年にコメディ映画『Fukrey(のらくら者)』でデビュー、主人公であるデリーののらくら者たちの一人に扮して、注目されました。主人公役はほかに、プルキト・サムラート、アリ・ファザル、マンジョート・シンと、その後の活躍を考えるとなかなかの顔ぶれです。この映画でヴァルン・シャルマはコメディ演技賞も獲得、続編『Fukrey Returns(帰ってきたのらくら者)』(2017)も作られたものの、他の作品ではなかなかブレイクせず、やっと『きっと、またあえる』で大いに本領を発揮した、という次第だったのでした。この顔では、今後もコメディ映画一筋になりそうですが、だんだんといい味が出てくる俳優では、と期待しています。皆さんもご覧になったあとで、ぜひ評価をお聞かせ下さい。

しかし、上写真を見てみると、ヴァルン・シャルマの腹囲がハンパではありませんねえ。それで点が甘くなったかも、私...(同類共感)。『きっと、またあえる』の公式サイトはこちらです。最後に予告編を付けておきます。

インドの学生寮を舞台に、笑いと涙の青春の日々/映画『きっと、またあえる』予告編

[スチール写真クレジット]
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<オマケ>

ヴァルン・シャルマが最近アップした動画を発見。「家にいてやることはいっぱいあるよ、映画いっぱい見て、料理に歌にダンス、ともかく家にいてね、手洗いも忘れずに、ねっ?」としゃべる姿はセクサよりもせっかちな感じですが、最後の笑顔がセクサそのもの。ママと一緒に金属のお皿を叩いているので、3月22日(日)にアップした動画でしょうか。君の笑顔を励みにして、私もがんばる!

CORONA VIRUS : WHAT'S VARUN SHARMA......DOING AT HOME?

 

緊急事態が明けたなら...①映像の冒険が楽しい中国映画『凱里ブルース』

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今日から17日後に、緊急事態宣言の期限が切れます。でも、その日、5月6日(水)をカウントダウンして待つような状況ではなく、その時になってみないとその後のことはわからない、というのが正直なところですね。それを考えてやきもきしてしまうのは、実は私の好きな作品で、5月8日(金)から公開される映画が2本あるからなのです。両作品の公式サイトをチェックしたところ、今の時点では変更はないようなので、時間がある今のうちに、ご紹介しておこうと思います。1本は中国のインディペンデント映画『凱里(カイリ)ブルース』、もう1本は香港・中国作品『イップ・マン 完結』です。本日はまず、『凱里ブルース』からどうぞ。

© Blackfin(Beijing)Culture & MediaCo.,Ltd - Heaven Pictures(Beijing)The Movie Co., - LtdEdward DING - BI Gan / ReallyLikeFilms

『凱里ブルース』 公式サイト   
 2015/中国/110分/中国語/原題:路边野餐/英語題:Kaili Blues  
 監督:ビー・ガン(毕赣) 
 主演:チェン・ヨンゾン(陳永忠)、ヅァオ・ダクィン(趙達清)、ルオ・フェイヤン(羅飛揚)、シェ・リクサン(謝理循)、ユ・シシュ(余世学)、クォ・ユエ/ルナ・クォック(郭月)
 配給:リアリーライクフィルムズ+ドリームキット
※5月8日(金)より東北地方、9日(土)より東京、シアター・イメージフォーラムほかロードショー

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凱里(カイリ)は、中国南方の内陸部、貴州省にある市の名前です。亜熱帯に近く、しかも海辺ではないので、空気がねっとりと町や山を覆い、時にはもやがかかります。こんな凱里市に9年の刑期を終えて戻ってきた男チェン・シェン(陳升/チェン・ヨンゾン)は、自分の体の治療も兼ねて、老齢の女医の診療所で手伝いをしていました。チェン・シェンには妻がいたのですが、戻ってきてみると妻は亡くなっており、可愛がっていた甥のウェイウェイ(衛衛/ルオ・フェイヤン)も姿が見えません。ウェイウェイの父はチェン・シェンの弟(シェ・リクサン)で、彼はなぜか、チェン・シェンの気持ちを逆なでするようなことばかりします。チェン・シェンはウェイウェイの夢を見たり、亡き母の夢を見たりして、心が安まりません。やがてチェン・シェンは、昔の恋人に思い出の品を届けてほしいと女医から言われたのをきっかけに、その苗族の元恋人とウェイウェイを捜す旅に出ます。そこでチェン・シェンは、バイクを走らせていたウェイウェイ(ユ・シシュ)と、それと知らずに出会い、ダンマイ(蕩麦)という町に赴きます。青年に成長したウェイウェイは、洋裁を仕事にしている娘ヤンヤン(洋洋/ルナ・クォック)に気があるようで、彼女をずっと追いかけています。一方チェン・シェンは、女性の理容師に髪をあたってもらいながら、自分の来し方の話を人のことのようにして語り聞かせます。川辺の町ダンマイは、過去と現在が繋がっているような、不思議な感覚を覚える町でした...。

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一応のストーリーらしきものを書きましたが、整合性のある物語が進行していくのではなく、主人公チェン・シェンの内部にあるものがいろんなイメージで描かれていく、という感じの作品です。ストーリーを追おうとすると混乱に突っ込んでいくことになってしまうので、映像の流れに身を任せて、その時々のイメージを受け入れていると、それがだんだんと心地よくなってきます。特に、後半が始まるぐらいの所から、川辺の町ダンマイで起こる出来事が進行するシーンは、約40分間がワンカットに収められていて、とても不思議な感覚を味わうことができます。

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最初に『凱里ブルース』を中国インディペンデント映画祭で見た時は、ここのワンカットという撮り方に気づかず、物語の進行の方に気を取られていたのですが、ワンカットであることを知ってから二度目に見てみると、掟破りの撮り方も入っていて、さらに引き込まれてしまいました。ワンカットと言っても、カメラが捉える対象人物が次々と変化するので、そこでカットが切り替わっているような錯覚を覚えます。その上、手持ちカメラでカメラマンが徒歩で追いかけている、と思って見ていたら、ウェイウェイのバイクに乗るチェン・シェンに合わせて、カメラもごく自然に乗り物に乗ったらしくスムーズに移動するなど、「どうやって撮ったの?」がたくさんあって、とても興味深いシーンです。カメラがまるで自らの意思を持って空中浮揚しているみたいな、素敵なワンカットでした。

© Blackfin(Beijing)Culture & MediaCo.,Ltd - Heaven Pictures(Beijing)The Movie Co., - LtdEdward DING - BI Gan / ReallyLikeFilms

本作で長編劇映画デビューを果たしたビー・ガン監督は、1989年6月凱里生まれの30歳。本作は最初、大学の恩師などの支援といった自主製作資金で撮り始め、その後プロデューサーを得て完成させたそうですが、俳優たちもプロではない人がほとんどで、主人公チェン・シェンを演じるチェン・ヨンゾンはビー・ガン監督の叔父なのだとか。しかしこのチェン・ヨンゾン、高橋悦史似のシブい中年顔で、これ以前にもビー・ガン監督の短編や中編にも出演していたせいか、堂々たる主演俳優ぶりです。また、ヤンヤン役のルナ・クォックがみずみずしい演技を見せてくれ、映画のメイン・イメージに、チャイナドレス姿の彼女が使われているのも納得の存在感でした。

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ほかにも、劇中で何度か詩が読み上げられたり(ビー・ガン監督の自作の詩のようです)、オープニングにはお経が出てきたりと、様々なサインが詰め込まれた作品です。上の写真で、少年時代のウェイウェイがいじっているのは壁に描かれた時計で、日時計ならぬ照明時計になっており、針の影が時間を示すのですが、照明は点or滅の二択しかなく、それを時計と言えるのかとか、細かいところにとらわれ始めると無限の楽しみが見いだせる作品です。ビー・ガン監督の映画は本作のほか、2017年の『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ(地球最后的夜晩)』が2018年の東京フィルメックスで上映後に、本年2月28日から公開されました。こちらはタン・ウェイ(湯唯)、シルヴィア・チャン(張𦫿嘉)、ホアン・ジエ(黄覚)らプロの俳優を起用したもので、チェン・ヨンゾンも出演しています。やはり主人公の過去と現在、現実と夢とが錯綜する物語で、後半には60分間のワンカットシーンがあります。ただ、『ロングデイズ・ジャーニー』のワンカットシーンは、夜と室内とで暗くて、『凱里ブルース』のシーンほどには心躍りませんでした。下は、2018年のフィルメックスでいただいた、『ロングデイズ・ジャーニー』の画像です。あの映画か、と思い出される方も多いでしょう。

『ロングデイズ・ジャーニー』をご覧になった方は、『凱里ブルース』もぜひどうぞ。無事公開となることを願いつつ、予告編を付けておきます。と、YouTubeを見てみたら、本編映像も2編、最近アップされていました。続けて付けておきますので、ビー・ガン監督の手腕をちょっぴりお楽しみ下さい。

ポン・ジュノ監督やギエルモ・デル・トロ監督も絶賛/映画『凱里ブルース』予告編

 

映画『凱里ブルース』本編映像1

 

映画『凱里ブルース』本編映像2

 

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