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女優イ・ヨンエ完全復活!『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』は明日公開!!

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『親切なクムジャさん』(2005)以降スクリーンからは遠ざかっていたイ・ヨンエが、映画女優に復帰しました。圧倒される演技力は健在、と観客を狂喜させてくれる作品は、新人監督キム・スンウによる『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』(2019)。まずは作品のデータをどうぞ。

『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』  公式サイト
 2019年/韓国/韓国語/108分/原題:나를 찾아줘/英語題:BRING ME HOME
 監督:キム・スンウ
 出演:イ・ヨンエ、ユ・ジェミョン、イ・ウォングン、パク・ヘジュン
 提供:マクザム
  配給:ザジフィルムズ、マクザム
※9月18日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

(c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

冒頭、干潟のような場所を歩いて行く女性が映し出されます。彼女の名はジョンヨン(イ・ヨンエ)。ソウルからこの海辺の村に、わが子を捜しに来たのでした。ジョンヨンの7歳の息子ユンスがいなくなったのは6年前。公園で姿を消したユンスを捜し、看護師のジョンヨンと高校教師の夫ミョングク(パク・ヘジュン)は、「行方不明家族 捜索の会」の青年スンヒョン(イ・ウォングン)の助けを借りて、あらゆる場所を訪ねまわりました。ミョングクは教師の職も辞し、マイカーのリアガラスにユンスの写真を貼って、その写真の入った捜索ビラを配っては捜しまわっていたのですが、ある時交通事故に遭い、帰らぬ人に。1人残されたジョンヨンの元に、ユンスの目撃情報がもたらされます。ユンスに似た特長を持つ少年ミンスがいるという海辺の《マンソン釣り場》にジョンヨンはやって来ますが、経営者や従業員からはそんな子はいないと言われてしまいます。同じ頃、地元警察に勤める若い警官も、捜索情報を見てミンスではないかと思い始めていましたが、彼の上司ホン警長(ユ・ジェミョン)は取り合ってくれません。ホン警長はジョンヨンに対しても、釣り場の経営者たちをかばうような発言をし、彼女を追い返そうとするのでしたが...。

(c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

まずは、素晴らしい女優イ・ヨンエがスクリーンに戻ってきてくれたことを喜びたいと思います。2005年のパク・チャヌク監督作『親切なクムジャさん』出演の後、2009年8月にイ・ヨンエは結婚してしまい、2011年2月には男女の双子を出産し、ずーっとスクリーンからは遠ざかっていました。その間、2017年のテレビドラマへの出演はあったのですが、実に14年ぶりのスクリーン復帰となりました。今、調べてみたところ、イ・ヨンエの出演作は決して多いとは言えず、パク・チャヌク監督による大ヒット作『JSA』(2000)以前に2本、そして『JSA』以降は、オ・ギファン監督作『ラスト・プレゼント』(2001)、ホ・ジノ監督作『春の日は過ぎゆく』(2001)、それから『親切なクムジャさん』の3本だけです。テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」(2003)という印象に残る作品はあったものの、なぜイ・ヨンエがこんなに深く記憶されているのか、我ながら不思議でした。それは、『ラスト・プレゼント』の売れない芸人の妻は比較的平凡なキャラクターでしたが、それ以外は難物と言ってもいいような役柄を見事自分のものにして観客を引きつけた、彼女の演技力に圧倒されたからだったと思います。

(c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

その演技力は、長いブランクを経ても、いささかも衰えていませんでした。一心に子供を捜す母、という母性愛に溢れる役ながら、後半にはかなりヘビーなアクションシーンもあり、そんな手に汗握る場面でも存在感を放つイ・ヨンエは、やはり素晴らしい、得がたい女優と言わざるを得ません。本作の、韓国での制作報告会の記録がプレスに掲載されていたのですが、その発言の中でイ・ヨンエはシナリオを読んだ時の感想として、「思いがけず長期間、女優の仕事を休んでいた私にとって、この映画は長い間待った甲斐のある作品だと確信しました」と語っていますが、そのような作品に仕上げる自信があったからこそ引き受けた、とも言えるでしょう。ほんの小さなシーン、たとえば最初の方の夫とのやり取りとか、目当てのミンスが見つからず、同じく児童労働させられているらしい男の子を抱きしめる場面などにも、その場に引き込まれるような魅力を感じました。これも前述の制作報告会での発言ですが、『親切なクムジャさん』と本作を比較して、「『親切なクムジャさん』でも母性愛のある母親役、本作でも子を捜す母親の役を演じています。でも大きな違いは、私が実生活でも母親になったということです。だからこそ、あらゆることを立体的に感じて表現することができたし、母親になったからこそ、とてもつらかったです」と語ったイ・ヨンエ。本作を見ていただくと、この発言に心から納得することができるはずです。

(c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

そして本作『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』には、イ・ヨンエとがっぷり四つに組める相手役が登場します。ホン警長を演じたユ・ジェミョンは、今年話題になったテレビドラマ「梨泰院クラス」の悪役で広く知られるようになった人物です。年齢よりも老け役を演じた「梨泰院クラス」とは違い、ホン警長は47歳という実年齢そのままで演じられる役で、中年のいやらしさも含め、こちらも見事な悪役ぶりを見せてくれます。ホン警長始め、《マンソン釣り場》に関係する男たちはいずれもがジョンヨンの敵となり、か弱い彼女が男たちに立ち向かわざるを得なくなるのですが、その中でもホン警長との闘いはまさに死闘という趣きで、迫力満点です。

(c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ところが、またまた前述の制作報告会の記録では、ユ・ジェミョンはイ・ヨンエのことを「先輩(ソンベニム)」と呼んで、非常に謙虚な受け答えに終始しています。例えば、「正直言うと、私がイ・ヨンエ先輩と一緒にこの場にいることも、共演することも思いもよりませんでした。(中略)私自身も懸命に役作りをし、先輩と息を合わせ、目を合わせ、ぶつかり合うという作業は、本当に想像以上の幸せでした。”さすがイ・ヨンエ先輩だ”と何度も思いました」といった具合です。イ・ヨンエが1971年1月31日生まれ、ユ・ジェミョンが1973年6月3日生まれなので、同年代と言ってもいいと思うのですが、韓国社会では2年の長があるだけで、こういう扱いになるのですね。その時の映像らしきものがありましたので、お二人の素顔を見たい方はこちらをどうぞ。『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』とのギャップが面白いこの制作報告会の記録、劇場パンフにも掲載されるのでは、と思いますので、もし載っていればぜひご覧になってみて下さい。

(c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

最後に、早く姿を消してしまって残念だった夫、ミョングク(パク・ヘジュン)の写真も付けておきましょう。『毒戦 BELIEVER』(2018)ではコワい役だったパク・ヘジュン、愛妻家のとてもやさしい夫を演じていて、もっと長く見ていたかったです。それにしても、中国映画の陳可辛(ピーター・チャン)監督作品『最愛の子』(2014)でも同じような子供失跡事件が描かれましたが、韓国でもこういう事件が数多く起きているようです。劇中の「行方不明家族 捜索の会」は実際の事務所を登場させているのでは、と思われ、本作もそういった関係者にいろいろ配慮しながら作られたと思われるシーンがあります。『最愛の子』とは少し方向性が違いますが、韓国社会を知るためにもぜひ見ておいていただきたいと思います。予告編を付けておきます。

映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』予告編

 

おっと、ユ・ジェミョン「梨泰院クラス」ファンのために、特別映像がアップされていました。こちらもどうぞ。

「梨泰院クラス」チャンガ会長が出演『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』本編シーン

 


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