スペース・アーナンディで実施しているインド映画講座「『新たなるインド映画の世界』から<第1回>インド映画とジェンダー」の3回目が終了しました。新型コロナウィルス感染防止対策として定員を半分の10人程度にしているため、受講して下さった方は合計約30名。この講座は常連の方が多く、私もリラックスしてお話しができ、とてもありがたいです。今回の「インド映画とジェンダー」では、『マダム・イン・ニューヨーク』(2012)と『スルタン』(2016)を取り上げていろいろ分析をお話ししたのですが、『スルタン』の魅力をいまひとつ上手に伝えられなかったのではないか、と反省しています。
この作品は、最初にしょぼくれたスルタンの現在の姿が登場するものの、その後は過去にさかのぼって、いつものサルマーン・カーン作品でお馴染みのマッチョな自分勝手男の姿が描かれるのですが、好きな女性ができたこと、彼女と結婚したこと、生まれた男児を失ったこと、それによって妻が離れて行ったことが彼に影響を与え、静かにスルタンは変わっていきます。格闘技のプロモーターからの誘いを受けて」マッチョ男としては再生しますが、それも愛する妻を取り戻したいからこそ。そして、栄光を掴む一歩手前で数年ぶりに妻と対峙したスルタンは、本音を彼女にぶつけるのです。このあたり、実にサルマーン・カーンらしくない姿を見せてくれて、高倉嘉男さんが本の中で書いている「男性像が相対的にソフトになって来ている」という表現は、このスルタンにも言えるのかも、と思ってしまったり。栄光を掴んだ後のラストシーンでは、その後のスルタン――女性を尊重し、彼らを支える役割を担おうとするスルタンが描写されて、エンドシーンではもう涙腺決壊。スルタンのジェンダー意識が変化したことをはっきりと示して、映画は終了します。同じ頃に作られ、同じ女子レスリング選手を登場させた『ダンガル きっと、つよくなる』(2016)よりも、優れたジェンダー意識を持つ映画、と言っていいと思います。
♫Baby ko base pasand hai♫
残念ながら、『スルタン』は日本では公開されず、SPACEBOXからDVD発売されただけで、しかも映画の日本での権利が切れたため、DVDも廃盤状態となっています。ただ、Bollywood Style Shop Ratna(ラトナ)ではまだ在庫があるかも、とSPACEBOXの方に教えていただきましたので、ご希望の方はこちらのラトナのHPをチェックなさるか、問い合わせてみて下さい。下に、『スルタン』の予告編と、ソング&ダンスシーン「俺のベイビーはベースが好き」を付けておきます。
Sultan | Official Trailer | Salman Khan, Anushka Sharma | Ali Abbas Zafar | New Movie Trailer
Baby Ko Bass Pasand Hai Full Song | Sultan | Salman Khan, Anushka, Vishal-Shekhar, Badshah, Shalmali
そう言えば、アヌシュカー・シャルマーも、2017年12月に結婚したクリケット選手ヴィラート・コーフリーとの間に、今年の1月11日に女の子が誕生したのでした。ヴィラートはなかなかできた人だという噂なので、「男の子がよかった」などどは言っていないことでしょう。昨年、アヌシュカーの妊娠が発表された時は、コロナ禍の中の明るいニュースだったこともあって、「ステイ・ホームの理想的な使い方だ」などという冗談も飛び交いましたっけ。子育てが一段落したらまたスクリーンに戻ってきてほしいアヌシュカーですが、今後はプロデュ-サーとしての仕事に重点が移るかも知れません。
インド映画講座の次回は、「『新たなるインド映画の世界』から<第2回>インド映画とカースト制度」として、『裁き』(2014)と『僕の名はパリエルム・ペルマール』(2018)を取り上げる予定です。9月4日(土)、9月25日(土)、10月2日(土)の各回はいずれもほぼ満席なのですが、あと1~2名でしたらお席がご用意できます。スペース・アーナンディのHPで内容等をご確認いただき、よろしければお早めにお申し込み下さい。おっと、今HPをチェックしたら、どの回も「残席1」となっていますね。ご希望の方は、HPの最後にある「受講申込フォーム」から、お急ぎお申し込み下さい。皆様のお越しをお待ちしています。
<おまけ>今日のインド発のニュースに、「S.S.ラージャマウリ監督の新作『RRR』は来年のイードの週末に公開予定」という記事がありました。少し前に「本年10月13日に公開決定」という嬉しいニュースが出たばかりだったのですが、現在の映画館の復旧状態を見て、配給会社が安全策を採るよう進言しているようです。来年の断食明けの祭り(イード・ウル・フィトル)は5月3日。その頃にはインドもワクチン接種が行き渡り、100%安心して映画を楽しめるようになっているでしょうか。インドの映画情勢、まだまだ流動的のようです。