5月30日(金)から公開されるインド映画『ヴィクラム』(2022)を、オンラインで見せていただきました。いやー、もう、最高です、最高!! 久々に、タミル語映画から活きのいい秀作が出ましたねぇ。監督のローケーシュ・カナガラージは現在のタミル語映画監督の中では、マニラトナム、カールティク・スッバラージ、スダー・コーングラーらと並ぶ大好きな監督なんですが、彼らの秀れた作品の中でも『ヴィクラム』は最高峰と言いたい出来の作品です。ストーリー、脚本、キャスティング、主演俳優とその演技、個性的な脇役たち、アクション、ギャグ、そしてオチのシーンも含め、全編が大・大満足の出来です。久々に、「いい映画見たなあ」感に満たされました。興行収入が43億5千万ルピー~50億ルピーという、歴代興収32位にランクインしたのも当たり前ですね。インド人観客の皆さん、特に南インドの男性観客諸君は、何度かリピートして見に行ってるに違いない、この映画。日本で公開されるとは本当にありがたいです。人間関係が結構複雑でプロットが前半わかりにくいため、日本語字幕があるととっても助かります。まずは映画のデータをどうぞ。
『ヴィクラム』 公式サイト
2022年/インド/タミル語/171分/字幕:渡辺はな・字幕監修:小尾淳/原題:Vikram
監督:ローケーシュ・カナガラージ
出演:カマル・ハーサン、ヴィジャイ・セードゥパティ、ファハド・ファーシル、ガーヤトリ
配給:ツイン、hulu
※5月30日(金)より全国順次公開
まだ画像をいただいていないので、今回はチラシ画像だけですが、上に貼り付けたチラシ裏面にあらすじが書いてありますので、それを読んでいただければと思います。え、手抜きせずに自分で書けって? いやー、それが複雑でして、特にワルどもの関係がもう1回見ないと正確に書けないんですよ。それに、書いちゃうとネタバレになるところもあるし。拡大しておきましたので、上を読んで下さいね。で、こんな素晴らしい映画を作った監督はこの人です、ローケーシュ・カナガラージ。
この写真はずいぶん前からWiki「Lokesh Kanagaraj」で使われているんですが、実際の顔はちょっと違うみたいなんです。というわけで、目に付いたイメージ画像を2つほど付けておきます。
1986年3月14日生まれなので、この間39歳になったばかり。タミル・ナードゥ州の南西部、ケーララ州との境にちかいコインバトゥール県のキナットゥカダブ生まれで、大学卒業後MBAの資格を取り、一時銀行勤めもしたらしいのですが、短編映画を撮ってはコンテストに応募する中で、審査員だったカールティク・スッバラージ監督に才能を見いだされます。ローケーシュ・カナガラージより3歳年上のカールティク・スッバラージ監督は、一足先に2012年の『ピザ 死霊館へのデリバリー』でデビューを飾り、2014年には『ジガルタンダ』というヒットを飛ばして注目されていました。カールティク・スッバラージ監督は、2016年にプロデュースしたオムニバス映画『Aviyal』で監督の1人にローケーシュ・カナガラージを起用、この中の短編『Kalam』が彼のデビュー作となります。そして2017年には『チェンナイの夜』で独り立ちし、続くカールティ主演作『囚人ディリ』(2019)のヒットで、押しも押されぬ人気監督となったのでした。その後はヴィジャイ主演の『マスター 先生が来る!』(2021)、本作『ヴィクラム』(2022)、さらには再びヴィジャイ主演で『Leo』(2023)を続けて大ヒットさせるなど、秀作を作ってはヒットさせる監督として、コリウッド(タミル語映画界)の中心人物の1人に位置づけられています。
そんなローケーシュ・カナガラージ監督ですが、本作は超大物スター、カマル・ハーサンを主役にすえたことで、いつも以上に力が入ったのでは、と思います。ラジニカーントと並ぶコリウッドの大御所カマル・ハーサンは、ラジニカーントが「スーパースター」と呼ばれるのに対し、「スーパーアクター」と呼ばれる演技巧者。日本ではソフト発売された『インドの仕置き人』(1996)ぐらいしか主演作は知られていないのですが、お正月明けに公開されたテルグ語映画『カルキ2898-AD』(2024)のスプリーム・ヤスキン役での出演で注目されていることから、いいタイミングでの本作公開というところです。カマル・ハーサンら出演者については、また別途ご紹介することにしましょう。
VIKRAM - Official Title Teaser | #KamalHaasan232 | Kamal Haasan | Lokesh Kanagaraj | Anirudh
それにしても最大の謎なのは、本作『ヴィクラム』が、4年前にリリースされた予告編(上)とまるっきり異なること。ローケーシュ・カナガラージ監督の襟元を掴んで、「どーいうことなのよ、これ!」と締め上げたいぐらいです。思わせぶりな最後の晩餐みたいなこの予告編のシーン、チラとも出てこないんですよ!? まあ当時はコロナ禍で、その後コンセプトが大幅に変わった、ということなんでしょうかねー。YouTubeから消去していないのは偉いので許しますが、皆さんも上のイメージで期待していると足払いをくらわせられますので、日本での配給会社ツインが作ってくれた日本版予告編をきちんと見て、脳内変換しておいて下さいね。最新予告編に登場する3人の主人公――特殊工作員のアマル(ファハド・ファーシル)、麻薬組織のボス、サンダナム(ヴィジャイ・セードゥパティ)、そして無職の男カルナン(カマル・ハーサン)は、いずれも惚れ惚れする、重量級の主人公たちです。あと1ヶ月と20日、指折り数えてエンカウンター(出会い)を待っていて下さいね。
映画『ヴィクラム』予告篇:インドの怒らせてはならない男たちの大ヒットクライムアクション!