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TIFF DAY 9+1:総括と反省

今年のTIFFは、近年ではおそらく最低の本数しか作品を見られなかったTIFFでした。事前のプレス試写も含めてスクリーンで見られたのは11本しかなく、その他DVDで見た作品も数本のみ、それも早回ししたりしてきちんとした鑑賞にはほど遠いという、「深く反省」的な映画祭になってしまいました。まあ、アーミル・カーンが来たりしましたし、他の仕事でも忙しかったので、仕方がないのですが。

<アジアの未来>作品賞を受賞した『ゼロ地帯の子どもたち』(イラン/下)も見逃してしまい、情けない限りですが、ちょっとDVD鑑賞をした作品を簡単にご紹介しておこうと思います。

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『ミッドナイト・アフター』 公式サイト 

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香港/2014年/広東語/140分/原題:那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅van
 監督:陳果(フルーツ・チャン)
 主演:任達華(サイモン・ヤム)、林雪(ラム・シュッ)、黄又南(ウォン・ヤウナム)、恵英紅(クララ・ウェイ)、徐天佑(チョイ・ティンヤウ)

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今年3月の香港国際映画祭(スチールはそちらのを使わせていただきました。ごめんなさい。TIFFもこれくらいバラエティに富んだ画像を下さるといいのに)で見逃したので楽しみにしていたのですが、プレス上映を都合でキャンセルせねばならず、泣く泣くDVDで鑑賞。それも時間がなくて2回に分けて見たので、何やらよくわからない、というのが正直なところ。九龍半島から獅子山下のトンネルを通ったとたん異次元へ、という発想は面白いものの、それが原因で中文大学生たちがああなるのはなぜ?とか考えてしまうと、どうもムリムリのストーリーと思えてしまい、ただのこけおどし映画に見えてしまいます。

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そして、フルーツ・チャン監督作にしては動きがなく、大埔の茶餐庁でエンエンみんなが意見を出し合うシーンなどはまるで舞台劇のよう。あの活きの良さはどこへ行ったの、フルーツ・チャン監督、という作品でした。140分という長さですし、日本での配給会社が付くかどうかは微妙なところです。

『オプーのうた~「大地のうた」その後』 公式サイト
インド/2013年/ベンガル語/97分/原題:Apur Panchali
 監督:コウシク・ガングリ
 主演:オルデンドゥ・バネルジ、ポロムブロト・チョットッパダエ

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サタジット・レイ監督の『大地のうた(原題:Pather Panchali)』(1955)のオプー少年を演じたシュビル・バネルジの青年時代と、引きこもり状態である老年の彼とある映画青年との交流を描く現代のパートとが、交互に出てきます。青年時代はモノクロで描かれ、合間に『大地のうた』『大河のうた』(1956)『大樹のうた』(1959)のフッテージが挟まれます。例えば、シュビル・バネルジ青年が結婚するシーンでは、『大樹のうた』のオプー(ショウミットロ・チャテルジー)が妻(シャルミラー・タゴール)を迎えるシーンが挿入される、といった具合。この3作をよく見ていて、顔の見分けがついていかないと、かなり混乱してしまう作り方です。監督は、「三部作の主人公オプーとシュビル・バネルジとの間にいくつかの類似点を見出したから」と述べていますが、ちょっと無理なこじつけだったのでは、という思いがしました。

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それにしても、こんな風に作品のフッテージを使うことはOKなのでしょうか? 確かに50年以上前の作品ですし、一部ドキュメンタリー風の作りで当時の他の出演者を登場させてインタビューする等の手法も入っているのですが、フィクション部分に他人の名作を切り刻んで使うというのは「引用」の範囲を越えているように思われて、抵抗があります。インド国際映画祭(IFFI)で銀の孔雀賞=監督賞を獲っている、ということは、それが認められるどころか評価されたということなのでしょうが、どうにも釈然としませんでした。

『柔らかいステップ』 公式サイト 
ミャンマー/1972年/ビルマ語/106分/原題:Ché Phawa Daw Nu Nu/英語題:Tender are the feet
 監督:マウン・ワナ
 主演:ゾーウィン、サン・サン・エー

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ビルマ映画の上映自体が珍しいのですが、さらに伝統舞踊と伝統音楽がたくさん盛り込まれた貴重な作品でした。たとえば、現代で言うとこんな伝統舞踊です。ビルマにはポー・セン(1882-1954)という有名な伝統舞踊の男性舞踊手がいて、その伝記本なども出たりしていますが、この映画では大衆的な劇場で踊っていた女性が映画界に引き抜かれ、想い合っていた太鼓奏者と別れてしまい...というメロドラマが、たくさんの踊りや音楽とからめて描かれます。ストーリーや映画表現はかったるいものの、舞踊と音楽で結構楽しめてしまいました。

『北北東』 公式サイト 
中国/2014年/中国語/113分/原題:東北偏北
 監督:張秉堅(チャン・ピンジェン)
 主演:班贊(パン・ザン)、李濱(リー・ピン)

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文化大革命が終息した1978年の中国東北地方を舞台にした、サスペンスと言うにはちょっと可愛すぎる作品でした。わざと主人公や村人を間抜けっぽく描こうとしているのが見えるところがあり、いまひとつノリ切れませんでしたが、頭の冴えを見せ、と同時に心の暖かさを見せてくれる李濱(『老人ホームを飛び出して』のおばあさん)のキャラクターは清涼剤的存在でした。

そんなこんなで、楽しみにしていたTIFFも終わってしまいました。今日から11月。次は東京フィルメックス(11月22日~30日)ですね。チケット発売は11月3日(月)からなので、公式サイトをご覧の上、お早めに購入なさって下さい。

 


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