先ほどいただいたコメントの中にご質問があり、コメント内でお答えするのは大変なので、記事にしてみました。ただし、それなら私も、とどっとご質問が寄せられてもお答えできないため、これは1回限りの「夏休み特別企画:ご質問お答え箱」ということでご了承下さい。いろいろ調べてお答えするのには、相当に時間がかかるんですよ~。本来の業務優先、ということでお許し下さいね。
さて、今回、業務よりもこちらの方が面白い、と思わせられたのはカンスケさんの下のご質問です。
<サンジェイダットとマドゥリの「Thanedaar」という映画の中で「・・・タマタマ、、、」 という言葉がキーワード?というくらいに出てきています。歌のタイトルにもなってます。 今までにインド人、パキスタン人、ネパール人に聞いても意味が分からないと言うんです。。ヒンディー語の映画なのに。言葉はあまり重視しないんでしょうか?たしかに私でもそこそこ楽しめますが。
すっごく気になります! このDVDを貸してくれた友人は20年くらいずーっと気になったままらしいです。私もこのモヤモヤを晴らしたいので、この場をお借りしてよろしければぜひ教えて下さい。>
「サンジェイダット」は正しくは「サンジャイ・ダット」、「マドゥリ」の方は「マードゥリー・ディークシト」ですが、私はこの映画のことを全然知りませんでした。『Thanedaar(ターネーダール/警察署長、警部)』という1990年のこの作品、当時はそんなに話題にならなかったのではと思います。監督はラージ・N・シッピー、作曲はバッピー・ラーヒリーです。
書いていらした歌がYouTubeで見つかりました。
Tamma Tamma Loge - Thanedaar - Superhit Bollywood Song - Sanjay Dutt & Madhuri Dixit
歌詞を聞いてみたのですが、私も「Tamma」というヒンディー語はないと思います。日本語だと「ちょっとタンマ」と言ったりしますけどね(笑)。「Loge」の方は「ローゲー」で「レーナー(取る)」の主語が「tum」の時の変化形ですが、「タンマーを取るかい、タンマーが要るかい」というような意味になるものの、「タンマー」が何かわからないのでは意味を成しません。これまでカンスケさんがお訊ねになった方々の答は、どれも正しいのです。
ところで、古くからのインド映画ファンの皆様は、このさびの部分、どこかで聞いたぞとお思いになったことでしょう。そうです、アミターブ・バッチャンが主演した『タイガー 炎の三兄弟(Hum)』(1991)の歌とそっくりですね。『タイガー』は日本で上映された時の題名ですが、この作品はアミターブ・バッチャンのほかラジニカーント、ゴーヴィンダーという人気スター3人が共演したとあってインドでもヒットし、特にその歌「Jumma Chumma De De(ジュンマー、キスしておくれ)」という歌は当時大人気ソングとなりました。
こちらの映画は監督ムクル・S・アーナンド、作曲は大ベテランのラクシュミーカント=ピャーレーラールでした。おんやぁ、作曲家が違うのに同じサビのメロディーって、これは一体??? とその前に、曲だけでなくてソング・ピクチャライゼーションも最高の『タイガー』の映像をご覧下さい。アミターブ・バッチャンの相手役はキミー・カートカルです。振り付けはチンニー・プラカーシュ。フレンチ・カンカンとかホースで水をぶっかけるとかマグカップでビールの泡を飛ばすとか、もう最高の振り付けですねー。
Jumma Chumma De De - Amitabh, Kimi, Sudesh Bhosle, Hum Song (k)
さてさて、ではそっくりさんサビ部分の謎解きをしましょう。実は、両方ともある曲からパクっているのです。元歌は、ギニア生まれのマリ育ち、ワールド・ミュージックがブームだった頃日本でも人気が高かった歌手モリ・カンテの「Tama」。これもYouTubeに音源がありましたので聞いてみて下さい。
Mori Kanté Tama 1988
歌っている言語が何語かわからないのですが、「タマ・タマ・ローゲー・タマー」と聞こえますね。『ターネーダール』の曲はこのサビをこのままいただいてしまった、一方『タイガー』の方は似た音で、意味を持たせた歌詞にした、というところのようです。意味はわからないけど、調子がいいのでイタダキ~って、それでいいのかインド人、ですが、1990年代まではインドはパクリ天国でしたからね。ほかにもこういうパクリはいっぱいあったようです。
では、暑い毎日、お体に気をつけて楽しい夏休みをお過ごし下さい。