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Channel: アジア映画巡礼
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『P.K.』と『Dum Laga Ke Haisha』

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ホーリーの日の夕方、周囲を見回すとぼちぼち人も出歩いている様子。気温もぐっと上がっているようなので、サリーを着て出かけることにしました。まずは、ホテルのお隣の寺院にお参りして、ちょうどやってきたオートリキシャに乗ってセレクト・シティウォークというショッピングモールへ。サーケートという地区にあり、こちらも巨大なショッピングモールです。ここにはシネコンチェーンPVRが入っています。

まず、どんな映画をやっているのかなー、とチケット売り場に行ってみたら、5分前から『Dum Laga Ke Hisha(気合を入れて)』が始まったばかりではありませんか。目下の一番ヒット作です。というわけで、あわてて映画館の中へ.....入ろうとしたら、入口のセキュリティ・チェックでカメラが引っかかってしまい、もう一度外へ出てカウンターに預けさせられる羽目に。「今はスマホとかでも動画が撮れるのに、カメラの形をしていてはダメで、スマホならいいの!?」と抗議をしてみたものの、「規則ですから」とガードマンに言われてカウンターへ。映画に遅れた、とあせってホールに飛び込んでみれば、延々とCFをやっている最中でした。

DLHK Poster.jpeg

この『ダム(息)・ラガー(入れて)・ケー(~して)・ハイーシャー(掛け声?)』は上映時間が1時間51分。どうやらこういう短い映画は、始めとインターバルの時に山ほどCFを入れて、上映時間を長くしているようなのです。大体の時間を計ってみたところ、あれやこれやの商品CFが20分、予告編が10分。本編が始まった時には、「あー、やっと始まった」という声が聞かれました。これでチケット代はRs.400(800円)もするのですからね。商品CFを見に来ているようなものです。

Dum Laga Ke Haisha - TRAILER - Ayushmann Khurrana | Bhumi Pednekar

物語は1995年の聖地ハリドワールに設定され、お見合い結婚で一緒になったプレーム(アーユシュマーン・クラーナー)とその太った妻サンデャー(ブーミ・ペードネーカル)がいろんな危機を乗り越えて、最後には妻を背負っての障害物競走で心を一つにするまでを描く、というものです。太ってはいるけれど、しっかりと教育を受け、夫よりも知識が豊富な妻。一方、1人息子で甘やかされ、経営するミュージックショップのカセットに夢中の夫(かつて人気があったプレイバックシンガー、クマール・サーヌーの大ファン、という設定です)は、10年生も満足に終えていない有様。

お見合いの時から太ったサンデャーが気に入らず、彼女が恥ずかしくて忌避するプレームは、全然魅力的ではありません。これが、お話が進むにつれて「おおっ」と思うシーンが重なって、主人公2人がどんどん魅力的に見えてくる....というのがこれまでのボリウッド映画だったのですが、何だかやけにリアルな展開ばかりで、最後まで感動がやってきませんでした。今は、こういうのが流行りなのかなあ。監督はこれが第1作のシャラト・カタリヤーです。私の隣に座っていた家族連れらしき女性4人は、インターバルで帰ってしまったらしく後半は姿が見えませんでした。そりゃーつまんなかったのはわかりますが、Rs.200をどぶに捨ててしまうのはもったいない...。金持ちが増えたインド、こういう無駄遣いをする方々も多くなっています。

Aamir Khan, as the title character PK, stands nude on the railroad tracks, looking into the camera while obscuring his genitals with a transistor radio.

この映画に比べると、昨日見た『p.k.』は1日の長どころか、百日の長がある作品でした。ラージクマール・ヒラーニー監督、今回は相当トンデモなストーリーなのですが、語りのうまさに最後まで引きつけられて見てしまいます。『p.k.』の特徴というかポイントは、1.主人公(アーミル・カーン)が宇宙人であること、2.地球の変な仕組み、特に宗教に関する様々な現象に異議を申し立てていること、3.主人公と世の中をつなぐのがTV局の記者(アヌシュカー・シャルマー)なのですが、彼女の恋物語が背景に埋め込まれていること、という点でしょうか。主人公が宇宙人、というのは最初から明かされていて、地球に降り立ったp.k.は、宇宙船を呼ぶ信号機を人間に奪われたため、それを探して地球にとどまることになった、というところから話が転がっていきます。彼らの星ではみんな裸だそうで、だから上の写真となるのですが、「何が変なの? カラスだって裸だろ。カラスが服着ていたらびっくりだよ」という彼の論法には「なるほど~」となってしまいます。

PK Official Teaser I Releasing December 19, 2014

地球にやってきた宇宙人、という設定は香港映画『ミラクル7号』(こちらは「宇宙犬」でしたけど)を思い出させますが、ラージクマール・ヒラーニー監督が一番描きたかったのは、SF物語というよりは2.の部分でしょう。最初に、「本作はどんな人々をも傷つける意図は毛頭ありません」というような断り書きが出ますが、ソゥラブ・シュクラーが演じる宗教家のモデルとなる人々はインドには山ほどいます。昨年ヒットした『Singham Returns(戻ってきたシンガム)』でもアモール・グプテーがそういう人物を演じていましたし、これまでにも映画にはよく登場しています。ところが『p.k.』ではそういった批判的な描写からさらに一歩進んで、まるでディベイトのように宗教論争が行われ、一般の人々の思い込みなどが粉砕されていくのです。この部分、多種多様な宗教や宗教家に囲まれているインド人にはツボったであろうことは想像にかたくなく、だからこそ大ヒットとなったのでしょうね。

pk-movie-trailer.jpg

ただ、インドをある程度知っている私でもついていけない部分も多く、日本公開となるとちょっと大変そうです。アーミル・カーンの演技力のすごさだけがわかる作品、というのでは見ている方も面白くないですよね。うーむ、日本人観客からも共感の笑いが引き出せる作品なのかどうか、もう一度詳しく見直してみたいと思います。3.の恋物語の方はすっごく上手な作りになっているので、この部分ではだいぶ救われて目もウルウルなんですが。どうでしょうねー、宇宙人『p.k.』。


こちらの映画は公開後だいぶたっているせいか、チケット代はRs.250(500円)でした。上の写真の奥がシネコンなのですが、聞きなれないDT Cinemasという名前が。ちょっと調べてみたら、DLFというショッピングモールのグループで、デリーとグルガオンなどで増殖中なのがDTシネマズが入ったDLFなんたらというショッピングモール。ニューデリーだけでなくオールドデリーやチャンディーガルにも広がっているようです。インドの大都市は、もうモールがないと生活していけない状態になりつつあります。


 


『インド・オブ・ザ・デッド』ゾンビの墓穴<2>ゴアのゾンビ度

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インドに来ていても気になるのが日本で上映中のインド映画。『女神は二度微笑む』はお陰様で皆様に高評価を「いただけて、好調をキープしているようです。この調子だと、4週間は上映が続きそうですね。まだご覧になっていない方は公式サイトをご参照の上、お早めに劇場へ。ネット上ではネタバレ禁止なので言いたいことが言えなくても、オフ会では思いっきり「発見」を突き合わせて、「あの写真はどうやって手に入れた?」「この日付は矛盾しないのか?」「あそこでの彼女のあの表情は?」等々、検証してみて下さいね。でもって、「もう一度見ないとわからん!」とリピートして下さることを願っています。

『フェラーリの運ぶ夢』も、ご覧になった方からは絶大な支持が寄せられているのですが、残念ながら都心では上映がなく、それがちょっとネックとになっています。市川妙典までは東西線を利用すればさほど遠くはないので、ぜひ足を運んで下さいね。足代かけて行く価値はあります! お近くにイオンシネマがある全国の皆様、あなたが幸せになれる上映情報はこちらです。かわいくてしっかり者のカヨゼ(正しくはカヨーズ)君(リトウィク・サホレ)が待っています~。

(C)Vinod Chopra Productions

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そして、いよいよあと2週間で野に放たれるゾンビ、じゃなかった『インド・オブ・ザ・デッド』ですが、せっかくインドに来ているので、舞台となるゴアの情報をちぃとばかしお届けしましょう。そもそも、なぜインド初のゾンビ映画の舞台がゴアになったのか? 劇中でも、「インドだぞ。お化けや幽霊ならまだしも、なぜゾンビが?」と3人組の1人バニーが疑問を呈していましたね。それに答えてお調子者男ハルディクが「ブローバリゼーションさ」と言い放つのですが、そのシーンを下の予告編で確認してみましょう。

映画『インド・オブ・ザ・デッド』劇場予告編

グローバリゼーションとはいえ、そもそもなぜゾンビの初お目見え地はゴアでなくてはいけなかったのか? それはですねー、ゴアがインドじゃないからなんですね。いや、国籍的には1961年にポルトガル領からインド領になるのですが、その後もポルトガル領時代の空気が持続しているのがゴアで、つまりはインドの中の西洋なんですよ。ですので、洋モノの出現はまずゴアから、というわけです。16世紀から、インドが武力で併合する1961年まで、400年以上にわたってポルトガルの統治下にあったゴア(このあたりの詳しい歴史はWiki「ゴア州」をどうぞ)は、植民地から解放されたあと、1987年にはインドの州に昇格して今に到っています。

 © Eros International Ltd 2013

アジアのポルトガル領と言えばマカオがすぐ思い出されますが、インドはもともとの住人がインド・アーリヤ系であったため、もっと本国に近い状態の植民地となります。住民の多くはキリスト教徒となり、名前もポルトガル風の名前が付けられて、本国の習慣が持ち込まれるのです。私がゴアに行ったのはもう20数年前で、友人が招いてくれて彼の家に泊めてくれたのですが、彼の実家に夕飯をお呼ばれしに行った時、それまでラフなワンピース姿だったお母様が、夕飯の席にはちょっと光沢のある生地で作った、ドレスと言うべきワンピース姿で現れてびっくりしました。ヨーロッパの感覚そのままなんだなあ、と感心したものです。

その滞在中に、友人があちこちの教会遺跡に案内してくれました。そこで見たのは、まさに天国の再来。観光地からははずれた所ばかり案内してくれたため、保存状態はひどいものでしたが、内部の輝きはまったく失われていませんでした。ちょっとその時の写真を並べてみましょう。もう、どこがどこの教会なのか名前も覚えていないのですが、こんなにキンキラキンの装飾が残っているのです。日本にキリスト教を伝えた宣教師、ザビエルの像があったりもしました。

こんな風に、インドではなく西洋であること、キリスト教文化が根付いていること、そして、インドへの併合後に勃興したヒッピー文化の聖地であったことなどから、ゴアは『インド・オブ・ザ・デッド』の舞台に最適の地だったわけです。ヒッピー文化が隆盛を極めるのは1970年前後ですが、そのイメージからゴアは「ドラッグ」「金髪女性」「フリーセックス」といったキーワードと共にインド人の頭にインプットされ、特に若い男性にとってはパブロフの犬的反応を引き起こす言葉になっているのです。

 © Eros International Ltd 2013

『インド・オブ・ザ・デッド』でも、バニーが仕事のプレゼンのためゴアに出張、と聞いたとたん、ハルディクとラヴの頭の中ではこういうキーワードが炸裂します。それでやって来てみれば、離れ小島でロシアン・マフィアが開催するドラッグパーティーに遭遇、という展開になるのですが、ゾンビの誕生が「離れ小島」に限定されているところなどはゴアに対する配慮がうかがえますし、その元締めが「ロシアン・マフィア」というのも、「インド人、悪いことしない」の逃げ道となっています。とはいえ、すぐに「ロシアン・マフィア」の化けの皮がはがれるのですが。

 © Eros International Ltd 2013

その化けの皮がはがれてから、インド人5人がゾンビに立ち向かう、というのも愛国心溢れる展開ですねー。キワモノ映画ではありますが、そういった深読みもできる、ちょっと面白い作品です。

ところで、ゴアにまつわるエピソードをもう一つ。現在、毎年11月に開かれるインド政府主催のインド国際映画祭は、ゴアで開催されています。2003年までは、隔年にニューデリーで、その他の年は各地方都市回り持ちで開催されていたのですが、2004年からはゴア開催となりました。なぜか? ある日のインド政府のお役人の会話です。「我が国の映画祭は、外国からちっとも注目されておらん。これはゆゆしき事態だ。本来なら、カンヌ国際映画祭ぐらいの注目度があってもいいはずではないか」「カンヌが注目されて、多くの参加者があるのはフランスのリゾート地カンヌで開催されているからではないか?」「それなら、わが国もリゾート地で開催すればよい。そうだ、ゴア開催にしろ!」

インドには、ゾンビ以上に手強い「お役人」という人種がいるのですよ。『インド・オブ・ザ・デッド』のゾンビなんて、カワイイものです。

 

サスペンス映画全盛?のボリウッド~『Badlapur(復讐の町)』と『Baby(ベイビー)』

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ニューデリー最後の映画は、ヴァイオレンス・シーンもあるサスペンス映画『Badlapur(復讐の町)』。ホテルから徒歩でも行けなくもないEast of Kailash(イースト・オブ・カイラーシュ)地区にある、Mシネマに行ってみました。まず1駅ですがメトロに乗って、下の写真のKailash Colcny(カイラーシュ・コロニー)駅へ。高架鉄ちゃんとしては、一瞬でもメトロに乗れて嬉しい! 運賃は、Rs.8(16円)でした。


そこから10分ほど歩くと、コミュニティ・センターというマーケットのような所に突き当たるのですが、その一角にある映画館がMシネマ。この写真からもわかるように、昔Sapna(サプナー/夢)と言っていた映画館で、独立した建物の映画館の中をすっかり改装し、シネコン仕様にしたものです。


2階席の廊下には、映画愛溢れるこんな壁面が。2階席は300ルピー(600円)もしますが、それに見合う豪華客席でした。しかし、カップホルダーの底に青白い照明が埋め込まれており、その青白い光が映画の邪魔になることおびただしいのはどうにかしてくれませんかねー。水のペットボトルを置いたら、まるで青いランプのようになるし。こうなると、豪華客席も考えものですね。


ここで見たのが、ヴァルン・ダワンとナワーズッディーン・シッディーキー主演のサスペンス映画『Badlapur(復讐の町)』。大手企業の広告マンだったラーグーことラーガウ(ヴァルン・ダワン)が、銀行強盗に巻き込まれて殺された妻子の復讐を15年かかって遂げようとする、という物語です。2人組の銀行強盗のうち、相棒(ヴィナイ・パータク)を逃して自らは捕まり、「自分はドライバーだったので何も知りません」と言い逃れようとするのがリヤーク(ナワーズッディーン・シッディーキー)で、彼は20年の実刑判決を受けて刑務所に収監されます。彼の馴染みの娼婦(フマー・クレイシー)や、15年目にリヤークが末期がんになった時、彼を釈放させようとアレンジする女性(ディヴィヤー・ダッター)もからんで、決着がどう付くのか最後まで観客を引っ張っていきます。

Badlapur Poster.jpgबदलापुर

バドラープルというのは実在の町だそうで、妻子の死後ラーグーが自分を持て余し、流れ着く町として出てきます。仕事も変えて復讐のためだけに生きるラーグーを、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』のお坊ちゃん主人公を演じたヴァルン・ダワンが、まったく違う暗く沈んだ表情で熱演しています。その他の出演者もみな芸達者な人ばかりで、ナワちゃんことナワーズッディーン・シッディーキーはまたもや卑小な男の役。卑怯な男なのですが、最後にあっと言わせてくれます。そして、『血の抗争』(2012)でもナワちゃんとコンビを組んだフマー・クレイシーが、実に印象深い演技を見せてくれてうならされます。ヴィナイ・パータクも、その妻を演じるラーディカー・アプテーもこれまたうまくて、全然退屈しないで見られました。

Badlapur Posters: Varun Dhawan in revenge mode!Badlapur Movie New Wallpapers (1)

監督は、『エージェント・ヴィノット』(2012)のシュリーラーム・ラーガヴァン。化けましたねー。

Badlapur Official Trailer | Varun Dhawan, Nawazuddin Siddiqui, Huma Qureshi, Yami Gautam

終了後は、ムールチャンド駅まで戻って昼ご飯。中に詰め物をしたパラーター2枚に、ちょっとしたダール豆煮や野菜カレーを付けて、さらにソルティー・ラッシー付き(クミンがすごく効いていた)でRs.100(200円)。結構ボリュームがあって、お味もおいしかったです。そして、追加で頼んだスイート・ラッシーがこれまた美味! 素焼きの壺に入ってRs.40(80円)、もう1杯飲みたいぐらいでした。


で、現在はチェンナイにいます。昨日デリーから飛んだのですが、チェックインが超モタモタするは(列に加わってから終わるまで1時間!)、飛行機は遅れるはで、「ジェット・エアウェイズなんかもうイヤだ!」と言いたい気分。でも、機内でくれる水のミニ・ペットボトルがほしくて、ジェット・エアウェイズに毎年乗っている私です。今回は初めて、事前チェックイン・メールが届いたので、座席だけでなくご飯の指定もしてみました。下が、「ローファット・ベジタリアン」の食事です。キャベツのカレー味炒めをチャパティーで巻いたものと、豆のお焼きみたいな取り合わせでした。お味はよかったです。


さて、チェンナイでの初映画は、ヒンディー語の『Baby(ベイビー)』。大スターとしてはアクシャイ・クマールのみ出演で、あとは名脇役が脇を固めるこれまたサスペンス映画です。

Exclusive: 'BABY' Official Trailer | Akshay Kumar | T-Series

正確にはサスペンス・アクションと言った方がいいでしょうか。政府の情報機関のエージェントであるアクシャイ・クマールが、ダニー・デンツォンパの指揮の下、暗躍するイスラーム教徒過激派を粉砕する、というのがストーリーです。アクシャイ・クマールの他にアヌパム・ケールが演じるIT専門家など3人の仲間がいて、それぞれに見せ場が用意されています。後半、サウジアラビアから脱出するシーンがあるのですが、そのシーンのサスペンス度はもうハンパないすごさ。手に汗握りました。このチーフ+4人のエージェントもの『ベイビー』、もしかしたらシリーズ化されるかも。

BABY poster 2015.jpgBaby Free MP3 Songs Download,Baby Songs, Bollywood Hindi Movie Baby ...

監督は、2013年にインド版『タチャ いかさま師』とでも言うべき『Special 26』を監督したニーラジ・パーンデー。この『スペシャル26』もひねりがきいた上手な映画だったんですが、今回はアクションの見せ場も盛り込みながら、仕掛けに満ちたサスペンスを見せていきます。いやー、ニーラジ・パーンデー監督、実力のほどをまたまた証明して見せてくれました。今回は中東各地にロケするなど、製作費も格段にアップしたようですが、そこで大味にならずに作れる実力はすごいですねー。

Bollywood Action, Thriller Movie directed by Neeraj Pandey. Baby movie ...

この2作品とも、製作費の3倍を稼ぐというヒットになっていて、どうやらサスペンス映画旋風がボリウッドには吹き荒れているようです。きっかけになったのが2012年の『女神は二度微笑む』のヒットでは、と思うのですが、当分の間サスペンス映画の製作が続きそうです。


巡り来た3.11に寄せて~『唐山大地震』のこと

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2011年3月11日の東日本大震災から丸4年が経ちました。あの時はムンバイにいた私ですが、今年も亡くなられた方のご冥福を祈るため、明朝、チェンナイのカパレーシュワラ寺院にお参りするつもりにしています。身内の方や友人・知人を亡くされた方は、あらためて悲しみが胸をよぎっていることでしょう。何年経っても忘れられませんよね。

そして私が3月11日になっていつも思い出すのは、中国映画『唐山大地震』(2010)のこと。2011年3月26日から公開が予定されていたこの作品は、東日本大震災を受けて急遽公開が中止されたのですが、その前に多くのパブリシティが出てしまいました。拙ブログでの紹介もその一つで、何と3月13日付けでアップされてしまったのです。アップをストップできなかったのは、インド旅行の前に書きあげて予約投稿の手続きをしてきており、パソコンを持参していなかったためにその取り消しができなかったのでした。急ぎ携帯を通じて、3月12日には地震のお見舞いと共に事前のお詫び記事をアップしたのですが、今でもそのことを思い出すたびに複雑な思いにとらわれます。

その『唐山大地震』ですが、今週末からあらためて日本で公開されることになりました。まずは、基本データをどうぞ。

『唐山大地震』  公式サイト

2010年/中国/中国語/2時間15分/原題・英題 :唐山大地震 AFTERSHOCK

 監督:馮小剛(フォン・シャオガン)
 主演:徐帆(シュイ・ファン)、張静初(チャン・チンチュー)、李晨(リー・チェン)、陳道明(チェン・ダオミン)
 原作:「唐山大地震」チャン・リン(張〔令羽〕)(角川文庫刊)
 配給:松竹メディア事業部

3月14日(土)より全国ロードショー


©2010 Tangshan Broadcast and Television Media Co., Ltd. Huayi Brothers Media Corporation Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved

中国も本当に大規模地震の多い国で、この映画でも1976年に河北省の唐山一帯で起こった20世紀最大の震災と言われる「唐山大地震」と、2008年に四川省で起こった「四川大地震」とが登場します。1976年の唐山大地震では、主人公一家のうち父親が亡くなり、幼い娘と息子はがれきの下敷きになってしまいます。人々が必死で助け出そうとしますが、大きながれきが二人の上に覆い被さっていて、片方を助けようとして持ち上げれば片方が押しつぶされてしまうという状況に。一刻を争うため、救助の人々は母親(シュイ・ファン)に迫ります。「男の子を助けるのか、それとも女の子を?」 母親は「二人とも助けて!」と叫び続けますが、ついには「息子を...」と声を絞り出します。幼い息子は片腕を失う結果になりますが、命は助かったのでした。

©2010 Tangshan Broadcast and Television Media Co., Ltd. Huayi Brothers Media Corporation Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved

そして、息が絶えたと思われた娘は、母親が息子を病院に運んでいる間に息を吹き返します。自分は母親に捨てられた、と思った娘は一言も口をきかず、救助に入ってきた人民解放軍に助けられ、その中の女性軍医と軍人の夫(チェン・ダオミン)に養女として引き取られます。そして大学生になった娘(チャン・チンチュー)は養母を亡くしたり、先輩との間に子供ができたりと紆余曲折の末、カナダ人と結婚してカナダに移住していたのですが、四川大地震のニュースを見て矢も楯もたまらずボランティアとして中国へ。そして、そこでやはりボランティアで来ていた弟(リー・チェン)と再会するのです....。


©2010 Tangshan Broadcast and Television Media Co., Ltd. Huayi Brothers Media Corporation Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved

この作品は地震そのものをリアルに描くことよりも、その後に人々を襲う運命についてじっくりと描くことを主眼としています。地震がいかに人々の運命を翻弄したのか、そしてそれが彼ら自身の力でどのように修復されていったかを描いていくのです。今回2度目に見直してみて、監督の視点が結構醒めているのをあらためて感じました。単なる涙・涙の32年目の再会物語にはせず、欠点もいろいろある人間が大きな自然災害に遭遇しながらも生き延びていく姿を描くことで、人間の強さを示そうとしているかのようです。チラシのキャッチフレーズは「母子の絆に涙!」ですが、もっと複雑な感情が渦巻く、考えさせられる作品でした。

なお、そんな『唐山大地震』の中で、唯一明快で暖かく、終始ぶれないキャラクター、養父を演じるチェン・ダオミンの主演作がもう1本公開中です。3月6日(金)より公開中の『妻への家路』(2014)で、こちらの監督は張芸謀(チャン・イーモウ)、共演は鞏俐(コン・リー)とこれまたしっかりした作りの作品となっています。公式サイトはこちらですので、ぜひ併せてご覧ください。

 

タミル語映画はサイコがお好き~『Anegan』と『Enakkul Oruvan』

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チェンナイはそれほど暑くなくて助かっています。最高気温は33度ぐらいなので、昼間のかんかん照りだと「暑いよう~;;」なんですが、朝夕は涼しくて快適です。ホテルの部屋も冷房いらず、というか、冷房を止めていても夜寒く、お布団に毛布をかけてもらったほど。泊まっているホテルThe Residencyは、ビジネスマンがよく泊まるような中級の上ぐらいのホテルですが、T.ナガルというサリー屋さんや宝石商のお店がいっぱいある商業地区のはずれにあります。早期予約割引で1泊8千円ぐらい。もちろん、豪華ビュッフェ朝食付き。南インド料理の朝食ヴァリエーションを楽しんでいます。

映画は、この前の『Baby』はエクスプレス・アヴェニューというショッピングモールにあるシネコン「エスケープ」で見たのですが、タミル語映画は別のショッピングモール、チェンナイ・シティ・センターのINOXで見ることにしました。昨年も書いたのですが、このショッピングモールはチェンナイで最も早く登場した欧米型のショッピングモールだったものの、今はさびれる一方。今回も本屋のランドマークが撤退し、さらにさびれた感が漂っていました。なお、あとで判明したところによると、私の大好きな本屋ランドマークは、ネットの本屋に顧客を奪われた結果店舗を全部閉鎖したそうです。本を実際に手にとって見られる場所がなくなり、とーっても不便になりました。

Anegan Poster.jpgEnakul-Oruvan-Movie-Stills.jpg

話がそれましたが、INOXで見たのは『ANEGAN』と『ENAKKUL ORVAN』の2本です。『ANEGAN(アネーガン/多変化人間)』は日本でも2月のタミル語映画上映会で上映された作品で、こちらにデータなどを紹介してあります。主人公は、ゲーム会社にITエンジニアとして雇われるアシュヴィン(ダヌシュ)と、そこで働く金持ちの娘マドゥ(アミラ・ダストゥール)。マドゥは精神科の女医の治療を受けているのですが、というのも彼女の深層意識には何人かの人格が現れてくるためでした。


彼女が語る最初の物語は1962年のビルマ。母親がインド人女性の金持ちの娘(アミラ・ダストゥール)がインドからの労働者青年(ダヌシュ)に命を助けられ、やがて二人は恋仲に。しかし、ビルマ軍の将校である父親(ムケーシュ・ティワーリー)は反対し、二人はネ・ウィンによる軍事クーデターが起こったことでインド人排斥の風潮が高まる中、インド人夫婦に化けてインド人が強制送還される船に乗り込もうとします。しかし、そこを父親に見つかってしまい、二人は海中へ身を投じるのですが....。


次の物語は1987年のマドラス。警部(アシーシュ・ヴィデャールティー)が登場します。貧しい青年(ダヌシュ)と、医者の娘(アミラ・ダストゥール)が恋に落ちるのですが、やはり二人は結婚できません。そこに新たな見合い相手(カールティク)が現れるのですが、彼はとんでもない男でした....。


ここで起きる事件が現代によみがえり、主人公2人と警部、そして現在はゲーム会社社長となっている見合い相手に関わる謎が解き明かされていきます。恋あり笑いありアクションあり、スリルとサスペンスもいっぱいで、もちろんダヌシュは踊りまくります。予告編を付けておきましょう。

Anegan Trailer (Revised) | Dhanush | Harris Jayaraj | K.V. Anand

そういう娯楽要素満載の映画なのですが、心理的な要素がすべての元というタミル映画お好みのテイストが全編に流れていて、いちいち対応する事柄を確認させられている気分になってしまいます。上記の3時代の設定の他、古代にも何かあったということまでほのめかされていて、数本の映画を一挙に見せられてゲップが出そうでした。ヒロインのキャラがウルサイのとあいまって、少々疲れました。

Enakkul Oruvan poster.jpg

続いての『ENAKKUL ORUVAN(エナックル・オルヴァン/私といる誰か)』は、どこかで聞いたタイトルだと思ったら、昔のカマラハーサンの作品と同題名でした。今回の『ENAKKUL ORUVAN』は、カンナダ語映画『LUCIA』(2013)のリメイクだそうです。主演はシッダールト、ディーパ・サンニディ、監督は新人のプラサード・ラマル。予告編を付けておきましょう。

Enakkul Oruvan Official Theatrical Trailer | Siddharth | Santhosh Narayanan

本作の中では、2つの話が同時進行します。カラーで描かれるのは、古い映画館に勤める、ちょっとトロい青年ヴィグネーシュ(シッダールト)の物語。彼は、映画を見に来たピザ屋の店員ディヴィヤ(ディーパ・サンニディ)が好きになります。もう一つのお話で、モノクロで描かれるのは、人気スターであるヴィッキー(シッダールト)の物語。彼はある日バイクの宣伝に出ていた娘ヴィディヤ(ディーパ・サンニディ)が気に入り、アイテムソングの相手役に起用します。そこから2人の恋が始まっていくのですが....。

Enakkul Oruvan movie Wallpaper -16743

ヴィグネーシュもヴィッキーもクスリを飲んでいて、これがどうやら精神高揚剤というかヤクのようなクスリらしく、それが2人をつなぐ鍵となります。さらに、このクスリを捜査している警察もからんできます。タミル語がほとんどわからない私は、2人は別人なのか、それともどちらかが現実で一方は夢なのか、ということがわからず、まるで五里霧中でいる気分でしたが、シッダールトは二役を実に上手に演じ分けており、その点は見応えがありました。

それにしても、タミルの人はこういうサイコロジーを下敷きにした映画が本当に好きですね。謎とサスペンスに満ちた物語、確かにこれまでヒット作がいっぱい出ていますが、さてこの作品はどうでしょう?

INOXへは昨日もタミル語映画を1本見に行ったのですが、こちらはコメディタッチの作品だったのでご紹介はまたあとで。INOXに入るとフロアにいたスタッフの人に、「昨日も来てましたね!」と声を掛けられてしまったので、今日は別のシネコンに行こうと思います....。


すさまじい映画だった『I(アイ)』

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毎日、タミル語映画2本というノルマを自分に課して(笑)、チェンナイをうろついています。私はタミル語はほんの少ししかわからないので、かえって映画の出来不出来がよく判断できることがあります。セリフがわからなくても引き込まれて見てしまう映画は◎、途中でだれて退屈する映画は×、というわけです。昨日見た『I(アイ)』は、3時間以上の上映時間にもかからわず、全然だれないどころか、ものすごく集中して見てしまいました。


主演は、『神さまがくれた娘』(2011)で名演技を見せてくれたヴィクラム。またまた、スター・イメージを壊すものすごい演技を見せてくれます。監督は、『ロボット』(2010)や『ボス その男シヴァージ』(2007)で日本でも知られているシャンカル。毎回どの作品も力業で見せてくれる監督ですが、『きっと、うまくいく』(2009)のタミル語版リメイク『Nanban(友だち)』(2012)のあとがこの怪作とは。守備範囲の広い監督ですねー。

Theatrical poster

物語は、チェンナイの下町に住むリンゲーサン(ヴィクラム)の日常から始まります。スポーツジムを経営するリンゲーサンの憧れの人は、美人CMタレントのディヤー(エイミー・ジャクソン)。彼女の顔が出ているものなら、雑誌はもちろん、パッケージに彼女が写っているブラジャーやネグリジェまで買い占める始末。親友のバーブー(サンダーナム)にもあきれられますが、リンゲーサンはボディビルダー大会で1位を獲って「ミスター・タミルナードゥ」になったあと、CFに出演するようになり、バーブーの手引きで憧れのディヤーにも会うことができました。


ディヤーはずっとジョン(ウペーン・パテール)とカップルを組んで様々なCFに出ていましたが、ジョンはあからさまに肉体関係を迫るようになり、それを断ると彼女との仕事を忌避するようになります。ディヤーはリンゲーサンと出会い、彼をあらたな相手役にと考え、トランスジェンダーのスタイリスト、オズマ・ジャスミン(オージャス・ラジュニー/本人そのままの役柄で出ているようです)に頼んで、彼を変身させてもらいます。ダサい下町の兄ちゃんから、スタイリッシュなモデルへ。やがて2人は個人的にも愛し合うカップルとなっていき、結婚式が目前となりました。


ところが、その成功をうらんだジョン、自分の思うとおりにならないリンゲーサンにいらだつ大物スポンサーらは、ボディービル時代の宿敵を雇ってリンゲーサンをたたきのめします。そして、何かを注射されたリンゲーサンは、やがて髪の毛が抜け、体中に奇妙なこぶができ、背もまがってきてしまいます。以前の自分とは似ても似つかぬ体になったリンゲーサンは身を隠しますが、ディヤーが結婚すると聞いてその会場から彼女を拉致、古い館に幽閉し、自分をこんな姿にした人々への復讐を開始して行きます...。


上の写真が、ウィルス”I”に感染させられて醜い姿となったリンゲーサンです。このブログでは無断拝借映像はポスターとWikiのものに限っていたのですが、『I』の場合は主人公の変化をお見せしたいために、スチールを引用させてもらいました。ヴィクラムの特殊メイク、相当に手が込んでいます。なぜかヒンディー語版なのですが、予告編を付けておきますのでご覧下さい。

Official : 'I' Theatrical Trailer in Hindi | Aascar Films | Shankar, Chiyaan Vikram, Amy Jackson

途中中国ロケ(桂林の漓江という所らしいです)も差し挟まれ、瓦屋根での壮絶アクションもあったりと、シャンカル作品らしくサービス精神旺盛です。ヴィクラムのムキムキ肉体も目の保養。インドのボディービルダーたちも総出演しているようです。


それにしても、南インドのスターたちはスター・イメージを壊すことに寸分の躊躇もないようで、『I』のヴィクラムもハンパではありません。そこまで悲惨にしなくても、と思ってしまう後半の変身ぶりは、ボリウッドのスターには無理でしょう。本作のWikiによると、この映画はもともとシャンカル監督がラジニカーントにプロットを語って聞かせた3本のうちのひとつとか。他の2本は『ボス』と『ロボット』に結実したのですが、この『I』はさすがにラジニ様もお断りになったそうです。普通断りますよねー。それを引き受けてしまうヴィクラムは、どこまでチャレンジングなんだ、と思わずにはいられません。

ヒロインを演じたエイミー・ジャクソンはイギリス人モデルで、ミスコンで優勝したことからタミル語映画のプロデューサーがインドに招き、2010年からインド映画に出演するようになりました。こういうモデル役にはピッタリの人で、劇中でCF監督が言っていた「ケミストリー」を起こせる人です。CF撮影の美しいシーンを付けておきます。ワイヤーも使いまくりで、このシーンなどを見ると、シャンカル監督、張芸謀監督の『HERO 英雄』好きでしょ、とツッこみたくなってしまいます。そういえば、劇中で「中国でロケするのよ」と聞いたリンゲーサンが、「ジェット・リーの国か!」とか言ってましたね。

I - Pookkalae Sattru Oyivedungal Video | A.R. Rahman | Vikram | Shankar

『I』は日本でもタミル語映画上映会で上映されるようなことを聞いた憶えもあるのですが、もし上映されたらぜひご覧になってみて下さい。

<追記>13日の金曜日なので、ゾンビ情報をひとつ。『I』の中でもゾンビが出てきます。CFの1シーンで、あまりの良い香りに誘われ、墓場に眠っていた死人も蘇る、というシーンで登場。『インド・オブ・ザ・デッド』(2013)の影響でしょうか。インド版CFの様々なスタイルが見られるのも、『I』の魅力の一つです。公開迫る『インド・オブ・ザ・デッド』もがんばって下さいね。(拙ブログ記事を公式ツイッターでご紹介下さり、ありがとうございました~)

 

 

チェンナイでお買い物

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チェンナイでは映画を見る合間にお買い物にいそしんでいます。インドに来ると気が大きくなってしまって、つい気に入ったクルター(インド風のブラウス)などがあると、「衣装、衣装」とつぶやきながらご購入。今のところ、私のお気に入り三大店舗は「ファブ・インディア」「ライフスタイル」「ウェストサイド」。どれも全国展開している庶民派ブランドですが、それぞれに一長一短があって、全部回らないとお買い物は終わらないのです。例えば、「ファブ・インディア」は伝統的なスタイルが多く、安心して着られますがちょっと地味。「ライフスタイル」は結構派手目のパンジャービー・ドレスやクルターが多くて、若い人向き。でも、ここのサルワール(ゆったりしたズボン)は細身ではきやすい。「ウェストサイド」は今のところ一番気に入るデザインが多く見つかる店で、中高年も着られる色目とかも揃えてあります。価格も様々ですが、1500ルピー(3000円)前後でいいデザインのクルターが見つかります。

昨日映画を見に行ったモール「スカイウォーク」にはウェストサイドが入っていて、今日行ったモール「エクスプレス・アヴェニュー」にはライフスタイルが入っている、と、いったようにそれぞれがモールに住み分けているほか、ファブ・インディアは市内に独立した店舗をいくつか持っているなど、こういった全国展開型のブティックが地元のブティックを圧迫している、というのが昨今のファッション事情のようです。そうそう、スカイウォークの入口の時計屋さんには、ここ数年シャー・ルク・カーンの写真が飾ってあったのですが、今年からディーピカー・パードゥコーンの写真に変わっていました、ぐすん。


実はこのスカイウォークには本屋のランドマークの店が残っていたのですが、置いている本はペーパーバックのみ。しかも、お店の半分以上が子供向けおもちゃと文房具で占められており、つぶれるのも時間の問題という感じ。本屋がないモールはつまりませんが、それでもこのスカイウォークは中心部からちょっとはずれたアンナーナガルにあるせいか、フードコートにも面白い店があったりします。まず、私の大好きなインド版アイスキャンデー、クルフィーを売っている店が。1本40ルピー(80円)、おいしかった~。日本でも売り出されないかしら。デリーのムールチャンド駅高架下のクルフィー屋さんがなくなっていてがっかりしていたのですが、チェンナイで仇を取ったぞ!


本屋は結局、超老舗のヒギンボトムズに行ってきました。今となっては、映画の本はここが一番揃っています。でも、書棚がすごいほこりまみれ。まあ、目の前で地下鉄工事を延々としているので(確か、2年前から掘り返している)しょうがないのですが。

Product Details

ここで面白い本を見つけました。"Filmi Escapes: Travel with the Movies"という、なんとロンプラことLonely Planet社から2013年に出た本で、インド映画のロケ地を網羅しています、というか、この土地を舞台にした映画は、ということで、いろんな映画が挙げてあるのです。これはありがたい!

その中でゴアを見てみると...。おお! 一番大きくスチールが扱われているのが、『インド・オブ・ザ・デット』ではありませんか。下の写真が見開きの半ページに登場しています。これは、オデッサさんにお送りしなければ。

 © Eros International Ltd 2013

ほかには、シャー・ルク・カーンとアイシュワリヤー・ラーイ主演の『Josh(ジョーシュ/情熱)』(2000)や、アジャイ・デーウガン主演の『Golmaal(インチキ)3』(2010)などのスチールが登場しています。『ウェスト・サイド・ストーリー』の翻案である『Josh』の歌が見つかったので、ゴアの町並みなどお楽しみください。

Sailaru Sailare (Josh)

本文にはもっといろいろな映画が登場していますが、意外と日本で映画祭上映された作品も多いです。グル・ダットの監督作品『網』(1952)やシャーム・ベネガル監督作品『ゴアの恋歌』(1985)も、以前からのインド映画ファンはすでにご覧になっていることと思います。『ゴアの恋歌』は原題を『Trikal(3つの時代)』と言い、YouTubeで見られますが、この映像の1時間44分の所では、インドポップスの女王アリーシャー・チナーイーとゴアのポップス歌手レモ・フェルナンデスが歌う素晴らしい歌が聞けます。ゴアにハマりつつある方は、ぜひ見てみて下さいね。

Trikal

あらら、最後はゴアの話になってしまいました。さらにちょっと追加すると、チェンナイで見たタミル語映画はあと3本。『Kaki Sattai(カーキ色のシャツ=制服)』は面白かったのですが&主人公役がシャーヒド・カプールと似ていて好みだったのですが、あとの2本『Tamilukku Ondrai Aluthavum』と『Katham Katham』は退屈して寝てしまいました...。

Kaaki Sattai poster.jpg


ネット難民のムンバイ

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ムンバイではホテルのネットが繋がらず、困っています。一度携帯から投稿したのですが、それがアップされていないようなので、再度投稿を。実は今友人の家に居座って、Wifiを使わせてもらっています。ここだとさくさく繋がるのになあ。チェンナイやニューデリーでも全く問題がなかったのですよ。ホテルの人は私のPCの設定が悪いのだと言うのですが、確かにスタバに行って試してみても繋がりません。スタバのはTATA DOCOMOのWifiだというのに。

昨日の朝はあちこちのネットカフェで自分のPCを繋がせてもらえるか聞きまわったのですが、すべてダメ。店のPCを使うしかなく(これにも写真付きの身分証明が必要)、日本語のサイトは見られるものの、入力が日本語ではできないので、ブログ更新もままなりませんでした。というわけで万策尽きてしまい、ロンドンがベースのインド映画研究者なのですが、ムンバイにも家があるナスリーン・ムンニー・カビールに泣きついて、彼女のマンションのWifiでやっとメールチェックもさせてもらった次第です。

これが親友のナスリーンで、グル・ダットの研究書や、ジャーヴェード・アクタルのインタビュー本、様様なクラシック作品の脚本本など、たくさんの本を出版しているスグレモノの女性です。実は一昨日、女優ワヒーダー・ラフマーンさんのお宅にお邪魔できたのですが、それもナスリーンのアレンジでした。かつてグル・ダット映画祭で来日したこともあるワヒーダーさん、もう77歳とのことですが、相変わらずおきれいで、今度はアパルナ・セーン監督のベンガル語映画に出演予定とか。国際交流基金のグル・ダット映画祭以来14年ぶりの再会を、ワヒーダーさんやお嬢さんと喜びあいました。お嬢さん、来日した時にすっかりグリーンティー・アイスにはまってしまっていため、今回はグリーンティーパウダーを持参しました。

そのほかのお土産には、グレゴリ青山さんの本「グだくさんのグ」の中のワヒーダーさんに関する部分を英訳をつけて持って行きました。目にしたワヒーダーさん、「あら、これ私だわ」とびっくりしておられました。今頃、じっくりと見ておられることでしょう。ちょうどこの日はこれから演劇を見に行くのだということで、やはり往年の人気女優アーシャー・パーリクさんが誘いにいらしていました。というわけで、40年前なら、みんな喜びのあまり死んじゃうようなツーショットです。私は今でも目がつぶれそうな気分でした。

ワヒーダーさんのお住まいは、サルマーン・カーンの自宅マンションと同じ敷地にあり、入り口の門前にはファンが詰めかけていました。でも門番さんは「今日はサルマーン・サーハブは自宅にいないんだけどなあ」とつぶやいていました。ファンは待ちぼうけですねー。

ついでにナスリーンが、シャー・ルク・カーンの家も回ってくれました。建築問題で何やらもめていて、正面左の塀の外にあったスロープが破壊されていました。2年前、「ボリウッド4」の取材でねばったことが思い出されます。


そんなラッキーもあるインドですが、ネットが繋がらないため、ブログのアップが間遠になると思います。香港に着いたら、香港国際映画祭のことをまたいろいろフォローしますので、しばしの間お待ちくださいね。

 

ムンバイのポスター屋さん

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本日もまた、インターネット接続難民で友人宅にお邪魔しています。彼女のお宅はバンドラ地区のマウント・メリー教会に登っていく坂の途中にあり、海が見える素敵なマンションです。マウント・メリー教会はアミターブ・バッチャンの主演作『アマル・アクバル・アントニー』(1977)のロケにも使われたという教会で、9月8日のマリア様の誕生日には盛大なお祭りが行われるそうです。


マウント・メリー教会に行ったのは平日だったため、中で皆さん静かに祈ってらっしゃいましたが、願いを託すには門前や敷地内で売っている色とりどりのロウソクを捧げるといいのだとか。こんなにカラフルなロウソクがいくつかある露店にぶらさがっています。


さて、ネット難民生活に追われてなかなか映画関係の用事ができませんでしたが、グラントロードにあるいつものポスター屋さんにも行ってきました。まずはガーンディーさんのお店に行っていろいろ揃えてもらったのですが、『ハッピー・ニュー・イヤー』とかはあったものの、『pk』がなく、取り寄せてもらったりして時間がかかってしまいました。ガーンディーさんは商売上手で、待っている間に「昔の映画のプレスシートもあるよ。普通Rs.250(500円)で出回ってるものだけど、Rs.50(100円)にしておいてあげるから」と売り込まれました。下の右の男性は、ガーンディーさんではなく助手の人です。


下のようにまあまあいい作品があったので20枚ほど買ってしまいました。ポスターは1枚Rs.40(80円)なので、内容がいいものやヒット作ならまあ「買い」ですね。ラージ・カプールとナルギス主演の『放浪者』(1951)のプレスシートもあったので、コレクターとしては嬉しかったのですが、総じて1970年代・80年代のB級作品が多く、どこから出て来るんだろう、と来歴をいろいろ考えてしまいました。ちょっと写真が一部横向きのまま直らないのですが、こんなプレスシートをゲットしました。

なお、ガーンディーさんは古いポスターをいっぱい持っていて、売りたがっています。アミターブ・バッチャンの主演作のほか、シャー・ルク・カーンの作品も揃っているそうです(ホントかな?)。1枚Rs.100(200円)とかふっかけて来るのと、保存状態があまりよくないため、苦労して日本に持って帰ってもすぐぴりぴりと破れてしまうので買わなかったのですが、こちらもご興味がおありの方はガーンディーさんのお店にいらしてみて下さい。


ガーンディーさんのお店の2軒先には、ラージューさんことラージェーシュ・ヴォーラーさんのお店がまた表通りに戻ってきていました。ガーンディーさんのお店で揃わなかったものは、ラージューさんのお店で少し補充でき、助かりました。行ってご覧になる方のために、2軒の住所を書いておきます。ドリームランドという映画館の先にありますので、この映画館を手がかりにタクシーで行き、そのあたりにいる人に下の住所を聞いてみて下さい。
Gandhi Film, 7-A (この番号は変わっているかも)
Mansi Graphics, Shop No. A-20
以下は共通の住所です。
Simplex Building, Pawwala Street (別名Pavwala Police Chowky), Opp. Vijay Chamber, Near Dreamland Cinema, Grant Road, Mumbai-400 004


とにかくポスターを揃えてもらうのは1日で終わらず、いつも2日は通い、しかも待たされたりするので毎回半日仕事になります。ムンバイに来たら『DDLJ』も見ようと思っていたのに、結局は映画館マラーター・マンディルの前で写真を撮るだけに終わってしまいました。今日は何とか映画を見ようと、この記事をアップしたら映画館に行ってみるつもりです。でも、パソコンを持って映画館には入れないみたいで、この前デリーでは「パソコンは事務所で預かります」と取り上げられたため、いったんホテルに置きに戻らねばなりません。まったく、ネット難民はつらいよ、です。今泊まっているKharのOriental Residency Hotelは、ネットさえ繋がればとってもいいホテルなのですが、残念です....。


香港映画2本の日

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ムンバイから香港に着きました。定宿にしている安いホテルが取れず、旺角のStanford Hotelに泊まっています。19階の部屋なんて、久しぶりです。部屋からの眺めは....ビルばっかりですねー。でも、Wifiでネットもすごくよくつながるし、やっぱり香港は快適です。

このスタンフォード・ホテルには10年ぶりぐらいに泊まったのですが、なんだかきれいになっていて、格が上がったような....。今日はお部屋にフルーツが配達されていました。地下鉄の駅までちょっとあるのが難点ですが、1分行けばもう旺角の賑やかな街並みなので、食事も映画も手軽に楽しめます。でも、買い物等もあったため、チムサーチョイのiスクエアの映画館に行ってきました。

本日見たのは、次の2本です。

五個小孩的校長雛妓

『五個小孩的校長』は楊千「女華](ミリアム・ヨン)と古天樂(ルイス・クー)主演、監督は關信輝(エイドリアン・クワン)という人です。実際にあったお話が元になっており、有名小学校で教師をしていた主人公が学校のやり方に反発して辞職、ニュースで見た児童が5人しかいない元朗の田舎の小学に校長として赴任する、というストーリーです。児童は全員女子で、香港人が3人と、インド人(パキスタン人かも)姉妹2人という構成です。それ以上人数が減ると小学校は閉鎖されることに決まっており、そのうちの1人が4か月後には卒業を控えている、ということで、主人公は子供たちを教えると同時に、児童募集活動も開始します。

点此看大图片

ありきたりの作りではあるのですが、それぞれの児童の家庭事情もうまく盛り込み、巧みにエピソードが重ねられていって、ついホロリと泣かされしまいます。子供たちが本当に名優ぞろいで、とっても可愛かったです。最後に、実際のモデルと彼女たちが並べられた映像が出てきて、そのそっくりぶりにもびっくり。インド系姉妹の両親を演じる俳優さんたちも上手で、引き込まれました。香港の俳優は、呉耀漢(リチャード・ン)、馮粹帆、劉玉翠、姜浩文ら懐かしい顔がいっぱい出演していました。

『雛妓』は、香港国際映画祭の「香港電影面面観」というプログラムの中の1本にも選ばれています。監督は、いつも問題作を作る邱禮濤(ハーマン・ヤウ)。主演は蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)と任達華(サイモン・ヤム)でした。主人公は文章を書くことが好きで雑誌記者をしているのですが、そのきっかけとなったのは、義父から性的暴力を受けて家出したこと。その時偶然政府の教育関係の役人だった男と出会い、30歳以上年の離れた彼の愛人になることで、高校、大学を卒業します。彼には妻子がおり、最終的には別れますが、チェンマイで幼いタイ人娼婦に会った時、昔の自分がオーバーラップして彼女と関わることに。そんな形で、性暴力を受けた1人の女性の成長を描いていく作品です。 

《雛妓》:不是談雛妓

うーん、いつものハーマン・ヤウの冴えは見られず、一方シャーリーン・チョイはいつもの甘えた声の演技でこちらもそそられず....。いや、彼女は結構性表現演技でがんばってはいるのですが、主人公の厚みというか凄みというか、そういうものが全くと言っていいほど出ていなくて、こちらの胸に響いてくるものがありません。シャーリーンももう32歳、大人の女優になれるのはいつの日か...。でもまあ、映画祭では日程的に見られない作品を見られてよかったです。

あと、下のような映画も上映中のリストに入っているのですが、上映場所と時間が限られているため、見られるかどうかちょっと不明です。23日(月)の夕方からは香港国際映画祭になってしまうので、その前がチャンスですね。明日もまた、追求してみます。

失孤12金鴨鍾馗伏魔‬:雪妖魔靈天將雄師

衝上雲霄賭城風雲2四非

吉星高照2015浮華宴

なお、昨年秋の雨傘革命の跡はもうまったくないと言っていい香港ですが、今日バスを降りてホテルに戻るまでに、旺角の歩行者天国を黄色い折り畳み傘をさして足早に歩いて行く3人組を見かけました。今でも続いている抗議行動だったのでしょうか....。


『女神は二度微笑む』の迷宮<番外>トークショー

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まだ香港で、頭の中はインドと香港ごっちゃまぜなんですが、ちょっと告知をさせていただきます。3月最後の日に、ユーロスペースで東京外国語大学の丹羽京子先生とトークショーをします。下に、配給会社のブロードウェイさんが作って下さった告知文をそのまま貼り付けますね。ただ、拙ブログは覆面ブログ(と言うのだろうか?)なので、私の名はブログ管理人名になっています。敬称がついたままですが、お許し下さい。

 

◆大ヒット御礼、『女神は二度微笑む』上映後トークショーが決定!◆

女神と呼ぶにふさわしい美しいヒロイン、映画史に残る大どんでん返し、歌わない踊らない新感覚インド映画の頂点的作品として話題を呼ぶ「女神は二度微笑む」の大ヒットを記念して、本作品の字幕制作者であるアジア映画研究者のcinetamaさんと、ベンガル語文学の専門家である丹羽京子さんとのトークショー を開催いたします!
映画に登場する場所の特長や背景について、ヒロインとドゥルガー女神の二重写しの読み解き、映画内で使われているベンガル語という言葉についてなど、お2人にお話しいただく予定です。ぜひご来場ください。

日時:3月31日(火)18:30『女神は二度微笑む』上映後
場所:渋谷ユーロスペース
ゲスト:cinetamaさん(「女神は二度微笑む」字幕制作者・アジア映画研究者)、丹羽京子さん(ベンガル語文学専門家・東京外大大学院総合国際学研究院准教授)

劇場の告知サイト


丹羽先生は東京外大でヒンディー語を専攻、その後ベンガル語の専攻に転じて、タゴールの研究書のほか、たくさんのベンガル語文学(インドおよびバングラデシュ文学)の訳書やベンガル語学習本を出しておられる方です。試写をご覧いただいた後に感想をお聞きしたら、「コルカタのあちこちでロケしていますねー。どれもよく知られた場所ですよ」と嬉しそうだったので、これはいつかお話をお聞きしなくては、と思っていたのでした。私も一緒に、映画の地理的な解き明かしをうかがおうと思っています。

それから、やっぱりドゥルガー(ドゥルガ)女神のことですね。インドで関連する絵を買ってきたりしたので(何と買ったのはデリーのパハルガンジ。昔ヒンディー語を教えた人で、デリー在住のお二人が手伝ってくれました)、それをお見せしながら解説をしていただければと思っています。絵は今、スーツケースの中で眠っています。

 

私の話では、字幕を作っている時に発見した<女神の墓穴>を言うべきか言わざるべきが、今悩んでいるところ。まだ公開が続いているので、ほのめかすだけに終わるかも知れません。そう、この映画、<迷宮>だけでなく<墓穴>もあったんです。あと、ナワちゃん(上写真のナワーズッディーン・シッディーキー)のこともお話ししたいのですが、時間が短いのでナワちゃんLOVE!のお話は後日@朝日カルチャーセンターでまた。

では、この日に見に来て下さる皆様とお目にかかれるのを楽しみにしています。二度目をご覧になろうと思っていらっしゃる方は、この日をぜひお選びください。


第39回香港国際映画祭開幕!

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第39回香港国際映画祭が、本日開幕の運びとなりました。オープニング・フィルムは張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督作品『念念(Murmur of the Hearts)』です。本日は、まず5時半頃から香港コンベンションセンターでレッドカーペット行事、そして6時半からオープニング・セレモニー、そしてその後、7時40分から『念念』のプレミア上映、8時と9時40分から一般上映が行われました。

いつものレッドカーペットなら、スターは最後の方にどどっとやってくるので油断して5時40分頃行ったら、すでに『念念』組が目の前に! あわてて写真を撮りました。主演の梁洛施(イザベラ・リョン)は真っ白のドレス、彼女の母親役を演じる李心潔(アンジェリカ・リー)はダークレッドのドレスでした。


続いて....と言いたいところですが、あとは香港スターはなかなかやってこず、状態。外の監督たちがチラホラ姿を見せました。『満州里來的人(A Man from Manchuria)』の唐Di(木偏に「隷」の右側)監督と主演の俳優さんらしき人。司会者がいてアナウンスしてくれるのですが、字面で見ないと知らない方はなかなかわかりません。


来ました来ました、知ってる方が。イランのモフセン・マフマルバフ監督と奥様です。今回は、彼にスポットライトを当てた特集が組まれています。

 

6時を過ぎると、映画祭大使の男優、古天樂(ルイス・クー)も登場。今回は皆さんお早いお越しです。


下の中国服姿は、かつてゴールデン・ハーベストで名プロデューサーとしてならした蔡瀾(チャイ・ラン)さん。美食エッセイでも知られた文筆家ですが、お年を召されましたねー。でも、チャーミングな笑顔は昔のまま。

そして、杜[王其]峰(ジョニー・トー)監督もお出ましに。この後のパーティーでは偶然私の前に立っていらしたのですが、悠然とワインを飲み、おかわりしてらっしゃいました。人気者で、次々といろんな人が挨拶にみえてました。


こうして始まったオープニング・セレモニー、お偉方のご挨拶の後ルイス・クーが登場。何だか面白いデザインのお洋服ですね。


そして、『念念』組の皆さんが登壇。司会者をのぞき左から、監督のシルビア・チャン、主演男優の張孝全(ジョセフ・チャン)、主演女優のイザベラ・リョン、アンジェリカ・リー、そしてもう一人の主演男優柯宇倫(クー・ユールン)です。アップの写真も付けておきましょう。

そして、いつもの全員揃っての乾杯!となるのですが、ひな壇に皆さんが並ぶのに結構時間がかかります。その間におしゃべりしたりする人もいて、いろんな表情が見られました。

ずーっとおしゃべりしていたのはこの二人です。


ジョニー・トー監督とルイス・クー、もう何本一緒に仕事をしたかわかりませんよね。ジョニー・トー監督の男優遍歴(?)も、周潤發(チョウ・ユンファ)、劉徳華(アンディ・ラウ)から始まって、劉青雲(ラウ・チンワン)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、呉鎮宇(ン・ジャンユー)に張家輝(ニック・チョン)、そして今はルイス・クーと一番呼吸が合っているようです。てなことを考えていると、乾杯!になりました。


その後私は8時からの回のチケットをもらっていたので、7時40分の回のホールに映画関係者や著名人などが入っていくのをぼーっと見ていたのですが、何と最後にアンソニー・ウォンがやってきて監督や出演者たちとエール交換しているシーンを目撃。皆さんこれから舞台挨拶なのに、特にシルビア・チャン監督はアンソニー・ウォンと嬉しそうに語らっていました。


8時からの上映では、事前の舞台挨拶はなかったかわりに、上映後のQ&Aがありました。映画のストーリーを簡単に説明しておくと、主人公兄妹は中学生ぐらいの時に両親が離婚して、兄(クー・ユールン)と妹(イザベラ・リョン)は離ればなれになります。離婚の原因は、緑島という別名「監獄島」に暮らして、小さな食堂を営みながらも子供たちの才能を伸ばそうとした母(アンジェリカ・リー)と、「息子は麺を作ってればいいんだ」という父との対立でした。緑島に残った兄は観光ガイドとなり、台北に出てきた妹は画家となります。妹にはボクサーの恋人(ジョセフ・チャン)がおり、網膜剥離の症状が出始めていて追い詰められているのですが、妹の方もまた妊娠がわかって、過去の様々なトラウマが蘇ることに....。映画はファンタジーも織り交ぜながら、登場人物たちの過去と現在を描いていきます。


上映後のQ&Aに、監督だけでなくキャスト達も登場するとわかった観客は大喜び。あちこちでスマホが掲げられて、写真が撮られます。

私の前の席の女性は、ジョセフ・チャンに専念していました。やっぱりなあ。


でも、実は演技者として輝いていたのは、イザベラ・リョンとクー・ユールン。この兄妹が再会するまでがストーリーの大きな軸となるのですが、イザベラ・リョンは登場した時から存在感があり、内部から出てくる強靱さのようなものを感じさせて、とても美しかったです。日本で言えば、麻生久美子のような感じの女優に成長していました。一方のクー・ユールンは、以前の線の細さがウソのように、立派な青年になっていてこちらもとってもチャーミング。元々上手な俳優でしたが、それに落ち着きが加わって、一回り大きな俳優になっていました。


2時間ぐらいの上映時間のうち、1時間半ぐらいまでは「シルビア・チャンの作品にしては暗いなあ」と思っていたのですが、最後の30分でどんどん心が持って行かれます。クライマックスでは、目が潤んでしまいました。日本でも上映されるといいですね。特にクー・ユールン、これからも期待しています!


香港国際映画祭初日:公式画像

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映画祭事務局から、とても美しい画像が配信されてきました。プロの画像をお楽しみ下さい。(All Rights Reserved by 39th Hong Kong International Film Festival)

レッドカーペットでの『念念』組の皆さん。


イザベラ・リョン。


映画祭大使のルイス・クー。


オープニング・セレモニーでの『念念』組。


最後に全員での記念撮影。

(C)39th Hong Kong Internatinal Film Festival

第39回香港国際映画祭報告<1>映画祭の華『美好2015/Beautiful 2015』

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香港国際映画祭も早くも3日目、本日は毎年製作されているオムニバス映画『美好』シリーズの最新作『美好2015/Beautiful 2015』のプレミア上映が行われました。このシリーズは香港国際映画祭が製作、毎年著名なアジアの監督4人に依頼して短編を作ってもらい、それを1本の作品として映画祭でお披露目する、といいうものです。今年はスポンサーに中国大手インターネットメディアのYouku([にんべんに尤]酷)が付き、イランのモフセン・マフマルバフ監督、香港の厳浩(イム・ホー)監督、台湾の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督、中国の黄建新(ホアン・チェンシン)監督という豪華メンバーが結集しました。

本日は午後7時前から、九龍駅の上にあるシネコン、グランドシネマで記者を集めての会見が行われ、7時15分から上映開始。私は直前まで映画祭事務局でDVDを見ていたため、会見がほぼ解散状態の時に着いたのですが、黄建新監督以外の方の写真をパチリすることができました。まず、イム・ホー監督。さすが地元の人、人気者で、次々と記念撮影をせがむ人が。



ツァイ・ミンリャン監督(右端)と主演男優の李康生(リー・カンション/中)。もう46歳なのにそばで見ても若いリー・カンションは、今でも「小康(シャオカン)」という呼び名がピッタリです。


モフセン・マフマルバフ監督と奥様。旧知の日本の友人(実はこの方、最近のインド映画公開の功労者でもあります)と話しておられました。


スクリーンは数百人入るかという一番大きなホールだったのですが、ぎっしり満員。映画祭事務局でチェックした時に満員ということがわかり、そういう時VIPゲストは希望すれば招待券がもらえるのですが、私はプレスの身分なのでチケットはもらえず。事務局の友人の、「必ず空席があるから、待っていれば入れるよ」という言葉通り粘ってみたら、とても親切な映画祭の現場責任者の方がホール内をチェックしに行ってくれ、「一番前とかですがいいですか?」と入れてくれました。ラッキー! 20分遅れぐらいで(きっと舞台挨拶があったと思うので10分遅れぐらい?)中に入ることができました。では、4作品を簡単にご紹介しておきましょう。

モフセン・マフマルバフ監督『房客/Tenant』

イギリスに暮らすイランからの難民青年、アミール・アリーが主人公となります。彼は、ハンディキャップのある人たちの案内を請け負い、お金を稼いで暮らしています。少しでもお金がほしいため、同時に何組もの顧客を受け持つアミール。エリザベス女王がテームズ川を船で下るパレードがあった雨模様のこの日、彼が受け持ったのは車椅子の老婦人とそのお供の子犬トゥイッギー、そして目が不自由な若い女性で、ポルトガル人のマルガリータ、やはり目が不自由な青年で、バチカンから来ているアレッシオの3人でした。アミールはうまく3人を案内していましたが、途中イランでのトラウマで気を失ったりし、また老婦人をトイレに連れて行くために見物の場を離れたりして若い2人とはぐれてしまい、おまけに犬までいなくなるというハプニングに見舞われます....。


英語をなかなか達者に話すアミールがうまく3人をさばいていく様子や、若い2人が「あなたの好きな色は?」「グリーンだよ」「この音は何かしら?」とか他愛ない会話から心を近づけていくシーンにはこちらも胸が温かくなりますが、やはりつらい結末が、という苦みを含んだ作品でした。上空で警戒する警察のヘリの音で、アミールは気を失ってしまうのですが、そこにイランの現状への批判を込めて....というところなのでしょう。

イム・ホー監督『死後三天/Three Days after My Death』

ホームレスの人にお弁当を恵んでいた中年女性が、帰途自動車にひかれて危篤状態に。彼女はその時「天使」と名乗る若い男性と出会います。天使は彼女を野原に案内してくれ、花をプレゼントして彼女の話を聞いてくれます。彼女にはアメリカで働く息子がおり、ちっとも帰省しない、それも嫁が悪いからだ、と彼女はさんざん愚痴ります。とその時、ホームレスの男性が自殺してしまい、彼も仲間に加わってきます....。


死亡直後の脳内世界、みたいな内容で、ぼかしたアップの映像多用、過剰なBGMと、ちょっとしんどい作品でした。

ツァイ・ミンリャン監督『無無眠/No No Sleep』

ずっとシリーズで続いている、リー・カンションが行者のような格好をして超ゆっくりと街を歩く、という作品の一つで、今度の舞台は東京です。渋谷の歩道橋にうごめく影は、深紅の衣をまとったリー・カンション。スローモーション的な動きで、ゆーっくりと一歩を踏み出して行きます。それが続いた後は、地下鉄日比谷線、山の手線などの電車から写した映像が続き、そしてカメラは深夜のサウナへ。そこで独り体を洗っているのは、安藤政信。湯船にはリー・カンションが沈んでいて、やがて安藤政信も隣に入ってきます。じっとゆだっている(笑)二人。リー・カンションの右手と安藤政信の左手が湯の中で交差して....。


と書くとちょっと期待してしまうのですが(笑)、何も起こらず、あとは二人が別々に寝ている姿を写すだけ。BGMも一切なく、静かな映像が続きます。でも、力のあるその映像にぐぐっと引きつけられる作品でした。安藤政信はシャワーのシーンでオールヌードの全身をさらしてくれます。勇気がありますねー。

ホアン・チェンシン監督『失眠筆記/Insomniac Diary』

この作品は北京の金持ち青年梁(リャン)が主人公。彼のモノローグで始まります。不眠症に悩む彼は医者にセラピーを受けており、そこで過眠症に悩む25歳の女性周(ジョウ)と出会います。二人は梁の近代的で豪華なマンションで同居し始めますが、周の過眠症がどんどん度を増していき、梁は監視カメラを据え付けたりして、いつ何時彼女が倒れても助けられるようにします。でも、ある日....。


ラストシーンは、いろいろ解釈できる映像になっていました。しかし、大会社勤務とはいえ、あの程度の役職でこんな豪華なマンションに住めるのか....。料理も編み物も上手な男、という梁(ショーン・ドゥ)のキャラはさわやかで感じがよく、周役の佟麗婭(トン・リヤ)との美男美女演技を楽しめる作品でした。

さてさて映画祭報告、あと2回ほど続きます。作品のスチールは全て、第39回香港国際映画祭の提供です。

Photo(C)39th Hong Kong Internatinal Film Festival

 

香港の街で見た映画

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映画祭以外に見た映画のことを書いておきます。劉徳華(アンディ・ラウ)主演の、少々変わった映画があったのです。「変わった」というのは映画自体ではなく、アンディ・ラウの役柄としては、という意味です。 

タイトルは『失孤/Lost and Love』、監督は彭三源、出演はアンディ・ラウのほか、井柏然(ボラン・ジン)、呉君如(サンドラ・ン)、梁家輝(レオン・カーファイ)ら。彭三源という人は、調べてみると女性監督で、作家、脚本家としてこれまで活躍してきた人のようです。特にテレビドラマの脚本を多く手がけているようで、『失孤』で初めて映画監督に挑んだとか。

物語は、中国で頻々と起こっている幼児連れ去り事件を扱っています。1998年に2歳の息子を誘拐された雷澤寛(アンディ・ラウ)は、15年の間ずっと息子を探し続けています。彼のバイクの後ろには、2歳の息子の写真を引き伸ばした旗がひるがえり、中国全土を回っては尋ね人のチラシを配ってまわる日々。人々は、「15年も経ってたら、会っても顔がわからないだろうに」とか言い合いますが、雷はどこかの村や町に「誘拐されて連れてこられた子がいる」と聞けば出向いて確認し、また旅に向かうのでした。


ある村でバイク事故に遭った雷は、村の修理工場の青年曾(ボラン・ジン)に助けられます。曾もまた、どこかから誘拐されてきた子供でした。年が合わないため息子ではなかったものの、親を探したいという曾の子供の頃の写真もバイクの後ろに付け、雷はまた旅に出ます。そして、後を追ってきた曾と合流した雷は、雷の故郷らしき村に行きつくのですが....。


中国の苦い現実を描き出す本作はロードムービーともなっており、中国人の様々な旅を垣間見ることができます。アンディ・ラウの役は、絶望的な状況にいながらも希望を失わない、貧乏だけど強靭な魂を持った男。途中道を間違えてパトカーに注意され、事情を聞いた警官(レオン・カーファイ)からそっとカンパをもらった時は、その記録をノートにつけてあとで返そうとする、という律儀な男でもあります。中国人俳優なら、陳道明(チェン・ダオミン)や張涵予(チャン・ハンユー)ら、この役に似合いそうな人がいっぱいいると思うのですが、それをあえてアンディ・ラウが演じるのが、本作の見どころとなっています。ただ、それでアンディが新境地を開いているか、というとそこまでの見応えはなく、むしろボラン・ジンとのからみにアンディらしい軽さ、明るさが出ていて、引かれるものがありました。


こういう幼児誘拐というか連れ去りは、子供が売れる、という現実があるからで、本作の中でもサンドラ・ン扮する女性が赤ん坊を跡継ぎのほしい家に売りに行くシーンが描かれます。彼女は結局捕まるのですが、子供たちは跡継ぎだけでなく労働力としても売られていき、戸籍がないまま成長していきます。本作でもボラン・ジン演じる曾が、「戸籍がないから学校に行けなかった」というシーンがあり、養父母はよくしてくれても結局は闇の存在として大きくなるしかないのです。日本ではちょっと考えられませんが、広大な中国では各地で起きていることのようです。


あと1本、上の作品『台北夜蒲團團轉/One Night in Taipei』も見たのですが、こちらはひたすらドホホなお色気が売り物の作品でげっそり。実はホテルから徒歩3分の所にある新寶戯院という映画館でやっていたのと、映画祭と同時期に開かれているフィルマートでの上映作品に入っていたため、つい見てしまったのですが、勘弁して、の作品でした。香港人が台湾に行って、怪しい世界に引き込まれる、というアバンチュールものですが、今後タイトルに「蒲團」が付いていたら絶対に見ないことにしよう、と固く心に誓った次第です。数年前に大ヒットしたポルノ映画『3D SEX&禅』の原題が「3D肉蒲團之極樂寶鑑」なので、その流れを組んでいるもの、という意味なんですね。


新寶戯院、もう1本の上映は『シンデレラ』で、女子中学生がいっぱい入って行っていました。こっちにすればよかったなー。


ところで、今回いつものホテルが取れなくて仕方なく泊まったスタンフォード・ホテルは、サービスが非常によくて、ちょっと料金が高いホテルってこんななんだー、と久しぶりに高級感(といってもささやかなものですが)を味わいました。着いた次の日には果物が、チェックアウトの前日にはどうも自家製らしいピーナッツチョコがお部屋に届けられましたし、チェックアウト時に「タクシーをお願いします」と言ったら、「ちょうど送迎バスが出発する時間なのでどうぞ」と貸切状態で九龍駅へ。スタッフの皆さんがとても行き届いていて、気持ちよかったです。


禁煙フロアも半分以上を占めているし、洗濯物はよくかわくし、すぐ近所に郵便局もあるし(私がチェックする三大ポイントがこれ)、お金があるなら毎回でも泊まりたいぐらいです。でも、いつも泊まるホテルより5割増しの料金(14,000円弱)なので、次はまた旺角のいつものホテルになると思います。では、あとの報告は日本に帰ってから、ということで~。



第39回香港国際映画祭報告<2>インド映画のラインアップ

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香港国際映画祭は、アジア映画のラインアップが充実しているので毎年万難を排して(というほどでもないか...)行っています。ただ今年は参加期間が短かったためと、映画祭側の都合でDVDブースの使用開始が2日目の午後3時からになったため、東南アジア映画や韓国映画はまったく見られず、そのかわりインド映画3本を制覇してみました。1本はボリウッド映画ファンならすでに注目済みの『Haider(ハイダル)』、あとの2本は、マラヤーラム語映画の『CR No:89』と『Kanyaka Talkies/Virgin Talkies(カンニャカ映画館)』です。

『Haider(ハイダル)』

Haider Poster.jpg

ヴィシャール・バールドワージ監督作で、シェークスピアの「ハムレット」を翻案したものです。ヴィシャール・バールドワージ監督は以前にもシェークスピア作品「マクベス」を翻案した『Maqbool(受け入れる)』(2003)、そして「オセロー」を翻案した『Omkara(オームカーラー)』(2006)を作っており、この『ハイダル』と合わせて”シェークスピア三部作”と言うことができます。いわば、インド版黒澤明監督(こちらは「マクベス」と「リア王」ですが)ですね。


『ハイダル』は、1995年のカシミール地方が舞台になっています。イスラーム教徒ゲリラとインド政府軍が戦闘を繰り広げていた中で、ミール医師(ナレーンドル・ジャ-)はゲリラの指導者を自宅で手術したことで政府軍に捕らわれ、指導者が潜んでいた医師の自宅は攻撃を受けて破壊されてしまいます。行方不明となったミール医師を妻(タッブー)とミール医師の弟のミール弁護士(K.K.メーナン)が探しますが、見つかりません。ミール医師の息子ハイダル(シャーヒド・カプール)はアリーガルの大学で学んでいましたが、事件を聞いてカシミールに戻り、ガールフレンドのアルシヤー(シュラッダー・カプール)の助けを借りて父を探し始めます。


しかしそのうちにハイダルは、母と叔父がただならぬ関係にある気配を感じ、事件の背景をあやしみ始めます。そんな時、父ミール医師からの伝言を預かっている、という男ルーフダール(イルファーン・カーン)が現れ、やがて父が死亡していたことが判明します。その墓にぬかづいたハイダルは、父の死の真相をあばくために、狂気のふりをすることにしました....。


以前の作品もそうですが、『ハイダル』も巧みに翻案がなされており、昨年度の様々な映画賞を総なめしたことが納得できるような、出来のいい作品になっていました。出演者が全員高い演技力を見せていて、見応えがあります。ことにハイダル役のシャーヒド・カプールは、いつものチャーミングな笑顔を封印してシリアスなハイダル像を作り上げ、さらに途中からは丸坊主姿になるなど、気合いの入った演技を見せてくれました。本作は「ハムレット」の翻案という側面よりは、カシミール問題を描いた作品として評価でき、『ロージャー』(1992)や『アルターフ 復讐の名のもとに』(2000)の系譜に繋がる作品として見ることができます。予告編は以下のとおり。

Haider Trailer (Official) | Shahid Kapoor & Shraddha Kapoor | In Theaters October 2nd

ヴィシャール・バールドワージ監督のシェークスピア劇翻案作品はこれで終わりかと思われますが、インドでは3本の脚本も出版されて、話題を呼んでいました。


『CR No:89』

「CR」とは「Crime(犯罪)」のこと、と解説されているのですが、タイトルの意味がよくわかりませんでした。マラヤーラム語作品で、スデーヴァン監督のデビュー作ながら、ケーララ州では様々な賞を受賞しています。2013年の作品です。


まず、ジープが夜町を出発するシーンから始まり、山の中の村の日常が描かれます。結婚式の招待状を配って歩く青年や、小さな食堂での風景など、ちょっと退屈な描写が続きます。続いて、村の自動車修理工場によそ者の中年男がバイクでやってきて、山中の道でジープが故障したから修理に来てくれ、と頼みます。修理工は10代の息子にあとを任せ、バイクの後ろに乗って行ってみると、もう1人、少し若い男がジープのそばにいました。


修理工がチェックしてみると、持ってきた部品では直らないことが判明。中年男に町の店まで部品を買いに行ってもらうことに。若い男と待っている間に、修理工は何だか様子がおかしいことに気づきます。まず、ナンバープレートが偽物なのです。さらにそっと荷台を見てみると、トマトが積んであるものの、その下に武器が見え隠れしています。修理工は携帯で警察に通報しようとしたところを見つかってしまい、携帯を壊されてしまいますが、これでいよいよ彼らが犯罪者だということがハッキリしました。中年男が部品を手に入れて戻ってきますが、彼の乗っていたバイクは結婚式の案内状を配っていた青年のものであったことがわかり、修理を拒否した修理工もその青年と同じように拘束されてしまいます...。


出だしは少々退屈でしたが、修理工が登場するあたりからよくできたサスペンス映画になっていきます。脚本が練り上げられていて引き込まれました。予告編を付けておきます。

CR NO : 89-Movie -Official Trailer

 

『Kanyaka Talkies/Virgin Talkies(カンニャカ映画館)』


これも2013年のマラヤーラム語映画で、監督はやはりこれがデビュー作のK.R.マノージュ。ケーララ州の片田舎にある映画館カンニャカ・トーキーズを巡る、人々の人間模様を描いていきます。主人公と言える人は何人かいて、まず在宅看護師として働く女性アンシー。彼女は女優になりたいという夢を持っていますが、それを逆用されてポルノまがいの作品に出ることになってしまいます...。


そして、性的な誘惑にノイローゼ気味の神父。ケーララ州はキリスト教徒が多い州としても知られていますが、神父の葛藤が描かれていきます。


さらに、最初にも登場するのですが、カンニャカ・トーキーズのオーナーであるヤクーブ(ヤコブ)の悲劇的な物語も描かれていきます。こうして、映画を軸として見た人々の生き方が様々に登場し、ケーララの風土をあぶり出して行きます。予告編はこちらです。

Virgin Talkies Trailer - Directed by K.R Manoj


香港国際映画祭、今年のインド映画はアート系好みでした。確かにボリウッド映画の娯楽作品では、これは、という作品がなかったですからねー。街中での上映作品の中にもインド映画はなく、ちょっと寂しい今年でした。

※作品のスチールは全て第39回香港国際映画祭の提供です。Photo(C)39th Hong Kong Internatinal Film Festival

 

「マレーシア映画ウィーク」

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うっかりしていて情報収集が遅くなってしまったのですが、4月11日(土)~19日(日)、「マレーシア映画ウィーク」が開催されます。場所はシネマート六本木で、<ありがとうシネマート六本木-劇終-THE LAST SHOW>の一環となっています。チラシ画像の貼り付けで申し訳ありませんが、まずは取り急ぎ、お知らせをアップします。


今回の目玉はもちろん、2009年に亡くなった女性映画監督ヤスミン・アフマド作品ですが、そのほかにもマレーシア映画の”現在(いま)”がわかる作品が目白押し。また、ヤスミン・アフマド監督の妹のオーキッド・アフマドさん、『細い目』の主演俳優シャリファ・アマニとン・チューセン、『タレンタイム』等の音楽担当ピート・テオなどなど、多彩なゲストにも注目です。拙ブログでは過去にもヤスミン・アフマド監督について取り上げたりしていますので、こちらこちらもご参照の上、シネマート六本木にぜひお運び下さい。

 

 

『女神は二度微笑む』トークイベント

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本日、『女神は二度微笑む』@ユーロスペースでの最終回上映終了後、東京外大の丹羽京子先生とトークをさせていただきました。丹羽先生は2012年に開設されたベンガル語専攻科の准教授で、コルカタを中心としたベンガル語圏とその文化、特にベンガル文学に詳しい方です。


お話は、まず冒頭に登場するコルカタのメトロ(地下鉄)のことから。インドで最初にできた地下鉄で、1984年に開通したそうなのですが、この「インドで最初の地下鉄」というのがコルカタの人たちには自慢なのだとか。事実、ニューデリーのメトロの開通はその後だいぶたってからですし、ムンバイは今やっと一路線が開通しただけ。自慢するのもわかります。


この映画に登場する交通機関としては、ほかにもヒロインのヴィディヤ(ヴィディヤー・バーラン)がよく乗っていたタクシー(コルカタは全身黄色のタクシーなので、まさにイエロー・キャブです)、ヴィディヤを助ける警官ラナ(パラムブラト・チャテルジー)が通勤に使っていた市電がありますが、ラナの帰宅時の市電シーンがなかなか趣きがある、と丹羽先生も絶賛して下さっていました。


ほかにコルカタではオートリキシャ(三輪タクシー)も走っていますが、リキシャと呼ばれる人力車は、他地域では自転車が牽引するのに、コルカタでは文字通り人力で牽引されるのが珍しいです。人力車には、殺し屋のボブが乗っていたりしましたね。そういえば、今朝の毎日新聞に森永卓郎さんのインタビュー記事が大きく出ていて、「ボブは森永卓郎に似ている」という意見が多いためネタにしようかと思ったのですが、トークの時間が短くてあきらめました。下がボブですが、似てますかね~? このシャーシュワト・チャテルジーという俳優さん、素顔はもっと若々しくて、知的な感じの人です。映画雑誌「Filmfare」の2012年9月9日号に、素顔と共にインタビュー記事が出ています。バックナンバーをお持ちの方は確認してみて下さいね。


さて、本作は地下鉄カーリーガート駅付近からお話が始まるのですが、駅名はもちろん、本作に登場する地名等はほぼ全部が実在のものです。カーリー女神の寺院への入口とも言うべきカーリーガート駅、そこから割と近くにあるホテル・モナリザ、そしてクライマックスのドゥルガー・プージャーの舞台となる「三角公園」ことトライアンギュラ・パーク。この公園は、コルカタの中でも南の方になるのだとか。事前にうかがったお話によると、この公園はドゥルガー・プージャーの時にはコルカタ最大とも言われる女神像が立てられることでも知られているそうです。


そのドゥルガー女神ですが、シヴァ神の妃パールヴァティー女神が姿を変えたもので、穏やかなパールヴァティーに対し、ドゥルガーは悪魔を退治するという勇壮な女神、カーリーはさらに恐ろしい形として現れてきます。温和→ちょいコワ→めちゃコワ、という女神三態でしょうか。それが主人公ヴィディヤと重なる、というわけで、現地版ポスターは、下のようにヴィディヤとドゥルガーを重ねてあったりします。


ドゥルガー女神の祭りは、ベンガル暦で日にちが決められるため、9月の末から11月ごろまでの間のどこかで、毎年変わります。そして、ドゥルガー・プージャーの3週間後には、カーリー・プージャーと呼ばれるカーリー女神の祭りが行われるそうです。これも事前にうかがったお話で出たのですが、ベンガル地方ではこのように女神信仰が盛んで、それは「母」のイメージにも重ねられるため、おどろおどろしいカーリーもカーリー・マー(お母さん)とよく呼ばれるのだとか。


ベンガル地方はこのように独特の文化を持っていて、劇中に出てくる「二つの名前」もその一つ。ラナは本名をサーティヤキ(ベンガル語だとシャットキ? ヒンディー語風なまりのベンガル語だとサトヨキ)と言い、サーティヤキが「バロ・ナーム(正式名)」、ラナが「ダーク・ナーム(呼び名)」となります。ダーク・ナームは単なる愛称もしくはあだ名というイメージとは異なり、広く日常的に使われるそうで、ダーク・ナームをいつも使っている場合、第三者がその本名を知らないことも有りうるとか。事実、本作の中ではカーン警視(ナワーズッディーン・シッディーキー)がラナの正式名を知らなかった、というシーンがラスト近くで出てきます。

こういうベンガル文化の粋をあちこちに散りばめた本作ですが、ベンガル人はこの作品をどのように見ているのでしょう? 丹羽先生のお話だと、「かつてはベンガル映画とヒンディー映画は厳然と違うものだったので、ベンガル人はこの映画のハイブリッド感が新鮮だったようです。いわゆる典型的なヒンディー映画は見ない人もこの映画は見たと言われますし、コルカタでもヒットしました」なるほど~、ハイブリッド感ですかー。


私の方からは、クライマックスシーンに対するツッコミ(ネタバレになるので書けません;;;)と、さらには何度も見てみると時間経過の点で疑問が出てくる、というお話をしました。この時間経過に関する矛盾点、将来DVDが出たらお買い求めの上、「ここだ!」という所を発見していただけたら、と思います。4、5回ご覧になった上で、時間経過を書き出してみるとわかるかも。

『女神は二度微笑む』、ユーロスペースでの上映は4月3日(金)までです。まだご覧になっていない方(このブログの読者では、いらっしゃらないですよねー)はお急ぎ下さい~。公式サイトはこちらです。本日お越し下さった皆様、本当にありがとうございました!

 


レスリー・チャン十三回忌

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香港の歌手であり、俳優でもあった張國榮(レスリー・チャン)が亡くなってから丸12年。今日4月1日は彼の十三回忌となります。今年は、昔買ったブロマイドの中から、四眼仔(セイガンチャイ/眼鏡っ子)のレスリーを選んでみました。


毎年思うのは、天国で安らかに眠って下さい、ということだけ。レスリーが今の香港を見たらがっかりするかも知れないので、地上には目を向けなくていいですからね、も添えておきましょう。レスリーの映画を今見ると、時代が変わったんだなあ、としみじみ思います....。

 

しばらく関西放浪中

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インド&香港から帰ってきたばかりですが、関西をあちこち放浪しています。

まず京都では、マンガ家のグレゴリ青山さんに京都街歩きのガイドをしていただくという、最高に贅沢な経験をしました。グレゴリさんは、「京都「トカイナカ」暮らし」(集英社インターナショナル)という本を出されたばかりです。「グレちゃんの京都シリーズ」(と私が勝手に名付けている)最新作、こちらをご参照下さい。旅先なので本のヴィジュアルがご紹介できなくてすみません。後半には養蜂日記?も付いているという、とっても面白い内容です。

その中にも登場する「レトロ京都」というお店は、東山の智積院前をしばらく下っていったところにあります。上記の本ではP.83に掲載、お店の外見はこんな感じです。


こちらは、京都に関するレトログッズ、特に紙もの(絵はがきなど)が大量に集まっているお店です。この日も謎の版画というか千代紙というか、素晴らしいデザインの和紙をたくさん見せていただき、ついつい手が出てしまいました。のちほど、またスキャンしてご紹介したいと思います。

あと手が出たのは、ここのお店の看板猫「ワラビちゃん」。お店にいた1時間ほどの間、ずっと接待してくれました。これは後半に、箱入りムスコとなった図です。


グレゴリさんは本の中で「目が離れていてキュート」と描いているのですが、ワラビ、そないに目ェ離れてるかー?


う~ん、やっぱり普通の猫よりは離れてるかな。さすが猫好きのグレゴリさん、観察眼は確かです。私は実は3歳ぐらいの時に猫に顔をひっかかれ、血まみれになって13針縫った、という経験があるため、べたーっとかわいがるところまではなかなか行けないのですが、でも、猫は好きです。というわけで、もし「レトロ京都」にいらしたら、ワラビちゃんを探してみて下さい。

そのほか、京都駅にほど近い、昔遊郭があったあたりも案内してもらいました。京都は桜が今盛りで、どこに行っても満開の桜が迎えてくれます。


この一帯は道が入り組み、そぞろ歩くにはぴったりの地形です。そこかしこに、上のような往事の姿をとどめる建物がありました。


今は旅館になっているところも。外国人旅行者が好んで泊まっているようで、たくさんの欧米系や中華系の観光客と出会いました。


こぢんまりしたお店でも、装飾が凝っていたりします。京都は建築美術の宝庫ですね。グレゴリさん、素敵な道案内、ありがとうございました!

続いて行ったのは、三重県津市に住む友人の所。大阪、奈良、京都、三重は近鉄線が繋いでおり、1日乗り放題チケットとかほしいぐらい観光スポットがあります。友人の家は、榊原温泉口という駅から近い所にあるのですが、榊原温泉駅に降りるとホームからこんな建物がっ!


ルーブル美術館の世界で唯一の姉妹館という「ルーブル彫刻美術館」というものだそうですが、後ろには金の仏像もそびえており、宮田珠己さんにでもカヴァーしていただきたい世界です。ルーブルの姉妹館を作るという発想はいいのですが、外見をもうちょっと何とか....。友人宅はだいぶ離れているので、美しい田園風景が広がる一帯でホッとしました。


友人宅から行ったのは、橿原神宮のある橿原市の今井町。ここは古い町並みが保存されているのです。広東語の先生に教えていただいたのですが、行ってビックリ、町並み保存どころか、町全体が保存されていて、しかもそこは今も人々が暮らす町、という素晴らしい一画でした。詳しく解説する時間がないので、写真だけですが、こんな古い家々が続きます。

夕刻の1時間余りだけでしたが、異次元にお邪魔してきました。と、ここでも猫に遭遇。猫だまりみたいな所があって、10匹ぐらいの猫がのんびりしていました。


というわけで、関西放浪、まだ少し続きます。 

そうそう、関西と言えば、千里の国立民族学博物館の南アジア展示がリニューアルされたのですが、それを記念していろんなイベントが行われます。そして、その中には、『DDLJ 勇者は花嫁を奪う』(めでたくあの変な題名からリニューアル!)の上映会も! せんきちさんに教えていただいて、情報解禁を知りました。こちらのサイトをご参照下さい。新しくされた南アジア展示の中には、うちからお嫁に行った映画ポスターも展示されているかも知れません。この機会に、ぜひ民博に足を運んでみて下さいませ。

 


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