ホーリーの日の夕方、周囲を見回すとぼちぼち人も出歩いている様子。気温もぐっと上がっているようなので、サリーを着て出かけることにしました。まずは、ホテルのお隣の寺院にお参りして、ちょうどやってきたオートリキシャに乗ってセレクト・シティウォークというショッピングモールへ。サーケートという地区にあり、こちらも巨大なショッピングモールです。ここにはシネコンチェーンPVRが入っています。
まず、どんな映画をやっているのかなー、とチケット売り場に行ってみたら、5分前から『Dum Laga Ke Hisha(気合を入れて)』が始まったばかりではありませんか。目下の一番ヒット作です。というわけで、あわてて映画館の中へ.....入ろうとしたら、入口のセキュリティ・チェックでカメラが引っかかってしまい、もう一度外へ出てカウンターに預けさせられる羽目に。「今はスマホとかでも動画が撮れるのに、カメラの形をしていてはダメで、スマホならいいの!?」と抗議をしてみたものの、「規則ですから」とガードマンに言われてカウンターへ。映画に遅れた、とあせってホールに飛び込んでみれば、延々とCFをやっている最中でした。
この『ダム(息)・ラガー(入れて)・ケー(~して)・ハイーシャー(掛け声?)』は上映時間が1時間51分。どうやらこういう短い映画は、始めとインターバルの時に山ほどCFを入れて、上映時間を長くしているようなのです。大体の時間を計ってみたところ、あれやこれやの商品CFが20分、予告編が10分。本編が始まった時には、「あー、やっと始まった」という声が聞かれました。これでチケット代はRs.400(800円)もするのですからね。商品CFを見に来ているようなものです。
Dum Laga Ke Haisha - TRAILER - Ayushmann Khurrana | Bhumi Pednekar
物語は1995年の聖地ハリドワールに設定され、お見合い結婚で一緒になったプレーム(アーユシュマーン・クラーナー)とその太った妻サンデャー(ブーミ・ペードネーカル)がいろんな危機を乗り越えて、最後には妻を背負っての障害物競走で心を一つにするまでを描く、というものです。太ってはいるけれど、しっかりと教育を受け、夫よりも知識が豊富な妻。一方、1人息子で甘やかされ、経営するミュージックショップのカセットに夢中の夫(かつて人気があったプレイバックシンガー、クマール・サーヌーの大ファン、という設定です)は、10年生も満足に終えていない有様。
お見合いの時から太ったサンデャーが気に入らず、彼女が恥ずかしくて忌避するプレームは、全然魅力的ではありません。これが、お話が進むにつれて「おおっ」と思うシーンが重なって、主人公2人がどんどん魅力的に見えてくる....というのがこれまでのボリウッド映画だったのですが、何だかやけにリアルな展開ばかりで、最後まで感動がやってきませんでした。今は、こういうのが流行りなのかなあ。監督はこれが第1作のシャラト・カタリヤーです。私の隣に座っていた家族連れらしき女性4人は、インターバルで帰ってしまったらしく後半は姿が見えませんでした。そりゃーつまんなかったのはわかりますが、Rs.200をどぶに捨ててしまうのはもったいない...。金持ちが増えたインド、こういう無駄遣いをする方々も多くなっています。
この映画に比べると、昨日見た『p.k.』は1日の長どころか、百日の長がある作品でした。ラージクマール・ヒラーニー監督、今回は相当トンデモなストーリーなのですが、語りのうまさに最後まで引きつけられて見てしまいます。『p.k.』の特徴というかポイントは、1.主人公(アーミル・カーン)が宇宙人であること、2.地球の変な仕組み、特に宗教に関する様々な現象に異議を申し立てていること、3.主人公と世の中をつなぐのがTV局の記者(アヌシュカー・シャルマー)なのですが、彼女の恋物語が背景に埋め込まれていること、という点でしょうか。主人公が宇宙人、というのは最初から明かされていて、地球に降り立ったp.k.は、宇宙船を呼ぶ信号機を人間に奪われたため、それを探して地球にとどまることになった、というところから話が転がっていきます。彼らの星ではみんな裸だそうで、だから上の写真となるのですが、「何が変なの? カラスだって裸だろ。カラスが服着ていたらびっくりだよ」という彼の論法には「なるほど~」となってしまいます。
PK Official Teaser I Releasing December 19, 2014
地球にやってきた宇宙人、という設定は香港映画『ミラクル7号』(こちらは「宇宙犬」でしたけど)を思い出させますが、ラージクマール・ヒラーニー監督が一番描きたかったのは、SF物語というよりは2.の部分でしょう。最初に、「本作はどんな人々をも傷つける意図は毛頭ありません」というような断り書きが出ますが、ソゥラブ・シュクラーが演じる宗教家のモデルとなる人々はインドには山ほどいます。昨年ヒットした『Singham Returns(戻ってきたシンガム)』でもアモール・グプテーがそういう人物を演じていましたし、これまでにも映画にはよく登場しています。ところが『p.k.』ではそういった批判的な描写からさらに一歩進んで、まるでディベイトのように宗教論争が行われ、一般の人々の思い込みなどが粉砕されていくのです。この部分、多種多様な宗教や宗教家に囲まれているインド人にはツボったであろうことは想像にかたくなく、だからこそ大ヒットとなったのでしょうね。
ただ、インドをある程度知っている私でもついていけない部分も多く、日本公開となるとちょっと大変そうです。アーミル・カーンの演技力のすごさだけがわかる作品、というのでは見ている方も面白くないですよね。うーむ、日本人観客からも共感の笑いが引き出せる作品なのかどうか、もう一度詳しく見直してみたいと思います。3.の恋物語の方はすっごく上手な作りになっているので、この部分ではだいぶ救われて目もウルウルなんですが。どうでしょうねー、宇宙人『p.k.』。
こちらの映画は公開後だいぶたっているせいか、チケット代はRs.250(500円)でした。上の写真の奥がシネコンなのですが、聞きなれないDT Cinemasという名前が。ちょっと調べてみたら、DLFというショッピングモールのグループで、デリーとグルガオンなどで増殖中なのがDTシネマズが入ったDLFなんたらというショッピングモール。ニューデリーだけでなくオールドデリーやチャンディーガルにも広がっているようです。インドの大都市は、もうモールがないと生活していけない状態になりつつあります。