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カンボジア映画『シアター・プノンペン』関連イベント

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2014年の東京国際映画祭で上映されたカンボジア映画『遺されたフィルム』。拙ブログでもこちらこちらで取り上げましたが、この作品が『シアター・プノンペン』と改題されて、7月2日(土)から岩波ホールで公開されます。詳しいご紹介は後日再び、ということで、まずはこの映画に関連するイベントのお知らせです。

 

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映画『シアター・プノンペン』を語る イベント公式サイト

 日時:2016年5月25日(水)19:00-20:30予定(開場18:30)
 参加費:無料(定員: 100名) 予約受付中
 会場:国際交流基金JFICホール [さくら] アクセス
 主催:国際交流基金アジアセンター 協力:パンドラ 

予約方法:メールにて、お名前及びご所属を明記の上、件名を「5/25ソト・クォーリーカー監督公開イベント」とし、以下のアドレスjfac_vdp_info@jpf.go.jp までお知らせください。締切は5月23日(月)です。
※当日参加もお席がある場合受け付けますが、ご予約の方優先となります

7月2日(土)より岩波ホールにて公開の『シアター・プノンペン』の予告編上映と共に、カンボジア初の女性監督であるソト・クォーリーカー監督を迎え、渡辺えりさんをナビゲーターに、制作の裏側や、映画制作への思いを語っていただきます。

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『シアター・プノンペン』の公式サイトはこちらです。バッチリ予習もして、ぜひどうぞ。



重厚な韓国映画『王の運命(さだめ)』

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6月に入ると、またまた韓国映画の話題作が公開されます。ソン・ガンホ、ユ・アイン主演による時代劇『王の運命(さだめ)-歴史を変えた八日間-』です。韓国映画や韓国ドラマのファンなら、すでにお馴染みであろう歴史上の事件「思悼(サド)世子の米櫃餓死」を真っ正面から描いた本作は、『王の男』(2006)などのイ・ジュニク監督作品。今回も力作です。

『王の運命(さだめ)-歴史を変えた八日間-』 公式サイト
2015年/韓国/韓国語/125分/原題: 사도(思悼)

 監督:イ・ジュニク
 主演:ソン・ガンホ、ユ・アイン、ムン・グニョン、チョン・ヘジン、キム・ヘスク、ソ・ジソプ
 配給:ハーク
 宣伝:ポイント・セット
※6月4日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー

© 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

主人公となるのは、李氏朝鮮王朝の第21代国王であった英祖(ヨンジョ/在位1724-1776)と、その息子で、亡くなったあと「思悼(サド)世子」と名付けられた世子(皇太子)。英祖(ソン・ガンホ)は最初の男の子、孝章世子を皇太子にして間もなくの1728年に9才で亡くしており、その後1935年に誕生した次男を2才で世子にすると、自分の期待を一身に背負わせて育てました。世子は非常に聡明でしたが、英祖が王として最も重視すべき勉学を強いるのに対し、世子は成長するにつれて芸術や武芸に興味を抱き始めます。こうして世子は徐々に父英祖の敷いた路線を嫌うようになり、英祖との間に溝ができ始めました。さらには、英祖との葛藤が世子の心をむしばみ始めます。

© 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

この頃、朝鮮王朝では少論(ソロン)派と老論(ノロン)派が勢力争いをしており、その影響もあって、ついに英祖は世子を廃位することを決定します。それと共に、これまで自分にそむく行為のあった世子を米櫃に閉じ込め、死に至らしめるよう命を下します。世子の正室(正夫人)恵慶宮(ヘギョングン/ムン・グニョン)や、世子の母で、英祖の側室の1人である映[女賓](ヨンビン/チョ・ヘジン)らは何とか助け出そうとするのですが、英祖の決心は固く、8月の暑さの中、野外に据えられた米櫃で世子は苦しむことになります。まだ幼い世子の息子サンまでもが、父を助けようと必死になるのですが、英祖は赦さず、とうとう8日目に世子は死を迎えます....。

 

© 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

映画では、この8日間が時系列的に描かれる合間合間に、過去の出来事の描写がさし挟まれます。なぜ英祖は、かたくななまでに世子を米櫃から出そうとしなかったのか。なぜ世子は、父英祖にそうされる要因を作ったのか。イ・ジュニク監督は、英祖のぬぐいがたいコンプレックスにも踏み込んで、李氏朝鮮王朝の中で最長在位期間を誇った英祖の人となりを多角的に捉えていきます。そして、ソン・ガンホがそれによく応え、その名の通り英明でありながらも、人としてこじれた部分を持つ英祖を重厚に演じています。その重厚さの殻が崩れ、だだっ子のようになる英祖の顔が見えるシーンは、ソン・ガンホならではの巧みな演技と言えるでしょう。『観相師』(2013)に続く時代劇2本目ですが、『観相師』の庶民的な役とは違った王の威厳をきちんと醸し出し、年齢のうつろいもしっかりと感じさせてくれるソン・ガンホ、さすが名優です。

© 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

一方、このところその演技力が高く評価され始めたユ・アインは、難役というべき世子を一生懸命に演じています。父英祖に愛されたいと思いながら、なぜか疎まれるような結果になっていく世子の運命は、これまたこじらせ系の最たるもの。ちょっと演技がいっぱいいっぱいのところも見受けられますが、それがかえって世子の姿と重なって、見ているこちらまで息苦しくなるほど真に迫っています。『ベテラン』(2014)に続き、また新境地を切り開いたユ・アインです。

© 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

実は、春先に必要があって韓国ドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」(2010)なんぞを見ていまして(遅い!)、そこで「思悼世子の息子」「老論派」「少論派」などという言葉が出て来たため、『王の運命(さだめ)-歴史を変えた八日間-』を見た時にいろいろと繋がってきたのでした。さらに、本作の中では「サン」と字幕に出てくる世子の息子が、李(イ)氏朝鮮なので「イ・サン」になると気付き、これまた非常に遅ればせながら韓国ドラマ「イ・サン」(2007)を見てみたりと、本作を見たおかげでまたまた世界が広がりました。韓国ドラマに詳しい皆様方なら、そんなことはとっくにご承知でしょうが、こんなにもたびたび取り上げられている事件なのに、どうしてイ・ジュニク監督は今また映画で描こうとしたのでしょうか。インタビューでイ・ジュニク監督は、「韓国では誰もが知る歴史的事件にもかかわらず、誰も正しく知ることのなかった家族史に焦点をあてました」と語っていますが、確かに、父子のこじれた関係は現代の家族にもあてはまりそうです。

「王の運命ー歴史を変えた八日間ー」予告編解禁

様々な読み方ができる、重厚な時代劇『王の運命(さだめ)-歴史を変えた八日間-』。上の予告編にあるように、成人したイ・サン、つまり第22代の王正祖(チョンジョ)として、ソ・ジソプも特別出演しています。私としては、イ・ジュニク監督が彼の過去の時代劇作品『黄山ヶ原(ファンサンボル)』(2003)や『王の男』(2006)のように、庶民を登場させて彼らの視点から描く手法を今回とっていないのが気になるところですが、あえて王家の家族ドラマも庶民と同じ、という形で見せようとしたのかも知れません。重厚な人間ドラマ、ぜひ大きなスクリーンでご覧になって下さいね。


 

インド映画特別講座<第1回>アンコール開催のお知らせ

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「インド映画完全ガイド」をベースにしたインド映画特別講座、昨日は最終回となる<第3回>を開催しました。前にこちらでご案内したように、「インド社会とインド映画」ということで、高倉嘉男さん執筆の「多様な宗教のもと、融和を訴えるインド映画」と「”マス”と”クラス”の二極化を越えて」をテキストにしたのですが、いろんなご質問が出て、私もとても勉強になりました(昨日ご質問下さった皆様、ヴィシュヌ神が手でくるくる回しているものの名前は、”スダルシャナ・チャクラ”でした)。この<第3回>は来月もう一度開催する予定で、6月18日(土)の方はまだ1~2名空きがあります。ご希望の方はこちらの記事でご確認の上、会場スペース・アーナンディのHPからお申し込み下さい。

そして、昨年11月に開催した<第1回>の講座も、アンコールの声がありましたので再度開催致します。こちらは7月の開催ですので、下記の詳細をご確認の上、ご興味がおありの方はお早めにお申し込み下さい。

スペース・アーナンディー/インド映画特別講座
「インド映画完全ガイド」発売記念:インド映画を極める!
<第1回>インド映画のクライマックス・アクションと舞踊
アンコール開催のお知らせ

「インド映画完全ガイド」を記念しての上記の講座は、あと<第3回>の2回目(6月18日)を残すだけとなりましたが、<第2回>からご参加下さった皆様の中から、「<第1回>をもう一度やってほしい」という声が出て来ました。そのため、<第1回>講座をアンコール開催することに致しました。

 日時:7月16日(土) 15:00~17:00
 場所:スペース・アーナンディ(東急田園都市線高津駅<渋谷から各停で18分>下車1分)
 定員:20名
 講座料:¥2,000(含む資料代)
 講師:松岡 環(「インド映画完全ガイド」監修者&編集者)
 TEXT:塩田時敏「インド映画においてはアクションもまた群舞なのだ!」(P.142)
    佐藤雅子「インド映画の多様かつ絢爛な舞踊の歴史」(P.140)
     (カッコ内は「インド映画完全ガイド」のページ数です)

最初に<第1回>を開催したのは昨年の11月でしたが、あの折の反省点も踏まえて、内容や構成をもう一度検討する予定です。現在ヒット中のシャー・ルク・カーン主演作『ファン』では、初の韓国人アクション監督オ・セヨンが起用されていて、インド映画アクションはまさに日々進歩しています。また舞踊シーンは、数が少なくなった分重要度が増してきています。メイキング・シーンも多数挟みながら、詳しく解説していきます。取り上げる作品は、以下のようなものを予定しています。

Howrah Bridge 1958 film poster.jpgTheatrical poster showing Prince Salim hugging AnarkaliPakeezah.jpg

Devdas.jpgOmshantiom.jpgTees Maar Khan (2010 film) poster.jpg

Krrish.jpgTheatrical release poster of Dabangg.Commando (2013 film).jpg

ご予約は、スペース・アーナンディHPの「受講申し込み」からどうぞ。ご予約下さった方には、ご予約確認と共に、スペース・アーナンディの地図をメール送付致します。では、皆様とお目にかかれるのを楽しみにしております。

[講師紹介]
まつおかたまき。1949年兵庫県生まれ。麗澤大学、国士舘大学非常勤講師。大阪外国語大学(現大阪大学)でヒンディー語を学び、1976年からインド映画の紹介と研究を開始。1980年代にインド映画祭を何度か開催したほか、様々なインド映画の上映に協力している。『ムトゥ踊るマハラジャ』『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』『きっと、うまくいく』『女神は二度微笑む』など、インド映画の字幕も多数担当。著書に、「アジア・映画の都/香港~インド・ムービーロード」(めこん/1997)、「レスリー・チャンの香港」(平凡社/2008)、編著書に「インド映画完全ガイド/マサラムービーから新感覚インド映画へ」(世界文化社/2015)などがある。

  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪

この「インド映画完全ガイド」の連続講座終了後も、続けて何かインド映画講座をやっていきたいと考えています。6月と7月の講座に来て下さった皆様のご意見も聞きながらテーマを決めていきたいと思いますので、よろしくご協力下さいませ。


インド映画自主上映会:カンナダ語映画『U-Turn』

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Periploさんから寄せられた情報です。かつて『Lucia』(2013)というヒット作を撮ったパワン・クマール監督の新作だというので、公開前から大いに話題になっていた作品だとか。

『U-Turn(Uターン)』

Kannada film U Turn poster.jpg

 2016年/カンナダ語/121分/英語字幕
 監督:パワン・クマール
 主演:シュラッダー・シュリーナート、ロジャー・ナーラーヤン

■日時:2016年6月4日(土)午後 2:00~
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza アクセス
■料金:大人1,500円
■主催:東京カンナダ人会(Tokyo Kannada Balaga) 予約


Periploさんの詳しいご紹介ページはこちら。さらに、Periploさんからは、次のような情報もいただいています。

「以前に、シッダールト主演のタミル映画『Enakkul Oruvan』をチェンナイでご覧になったとブログで書いてらっしゃいましたが、その原作である『Lucia』を撮ったのがパワン・クマール監督です。同監督が『Lucia』の成功の後、3年ぶりに世に問う一作とのことで、現地では大変に期待され、また5月20日の封切り後も好意的に評価されているようです。本作の予告編が発表された時点で、シッダールト、サマンタなどの州外の映画人が支持を表明し(これはかなり珍しいことのはず)、特にサマンタは、自らがプロデューサーになってタミル・テルグのリメイクを作るつもりになっている、などという未確定情報も流れています。」

『U Turn』の予告編はこちらです。

U Turn | Trailer | From the Director of Lucia | Kannada with Eng Subtitles

予告編を見る限りでは、結構シリアスなタッチのサスペンス映画のようですね。監督の手腕で”買い”のこの作品、ぜひご自分の目で確かめてみて下さい。



台湾と香港でインド映画公開!

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日本よりも一足先に、台湾と香港でインド映画ヒット作が公開中&公開予定です。台湾では5月13日(金)より『帝国戦神:巴霍巴利王(バーフバリ)』(2015)が公開され、現在は、台北は信義のワーナーなど5館、高雄は2館、そのほか台中、台南、嘉義など全国10館で上映されています。

台湾版ポスターはこちら。


ファンのこんなサイトもあり、大ヒットとはいかないものの、台湾の人々の心をつかんだようです。中国語版予告編を付けておきます。

【新年好禮活動】帝國戰神:巴霍巴利王 中文預告

続いて香港では、『Bajrangi Bhaijaan』(2015)が5月26日より公開予定。香港タイトルは『把她帯回家』で、「彼女を家に帰す」というような意味になります。

把她帶回家(Brother Bajrangi)電影圖片 - BrotherBajrangiPoster20160418_1461642167.jpg

香港では、このポスターの最下段にあるように、5つのシネコンで公開されます。『きっと、うまくいく』や『マダム・イン・ニューヨーク』に続くインド映画ヒット@HK、となるか? 中国語版予告編はこちらです。おや、「バヘン・ジー」は「妹妹(ムイムイ)」と字幕がついていますね。「小姐(シウチエ)」じゃないんだ~。

《把她帶回家》 ?Brother Bajrangi 預告片 5月26日上映

近くですので、ご覧になりたい方は飛んで行っちゃう手もありかも、です。

Raees Poster.jpgSultan's logo.jpg

なお、本国インドでは、今年のイード(イスラーム教の断食明けのお祭り)公開作に予定されていたシャー・ルク・カーン主演作『Raees(ボス)』が、少し前に公開予定表から姿を消しました。サルマーン・カーン主演作『Sultan(スルターン)』の公開がイード時期の7月6日に固まったためと思われ、ガチの勝負は避けて、時期をずらしての公開となる模様です。「『Raees』は2017年に公開」という予測を載せている記事もあってちょっと波乱含みですが、シャー・ルク・ファンは早い公開を希望してツイッター活動などを繰り広げています。

一方、『Sultan』の方は、本日本格的な予告編がお目見え。宣伝活動が正式に動き出しました。今回の「バヘン・ジー」は、アヌシュカー・シャルマーです。

SULTAN Official Trailer | Salman Khan | Anushka Sharma | Eid 2016

何だかロケ地が『PK』と被っていますね。『Sultan』、どのくらいのヒットになるか、楽しみにしておきましょう。


 

<緊急告知>『若葉のころ』初日初回@シネマート新宿に監督登壇!

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以前こちらでご紹介した台湾映画『若葉のころ』が、明日5月28日(土)からシネマート新宿とシネマート心斎橋で公開されます。ついさっき、本作の宣伝担当の方から、監督ジョウ・グーダイ(周格泰)が初日に来日して、急遽舞台挨拶を行うことになった、というメールが入りました。これはラッキー! 『若葉のころ』を見ようと思っていらっしゃる方は、ぜひ初日の初回にかけつけて下さい。大きなスクリーン1で上映されるので、迫力もぐんと増しますよ~。(と、水曜日にScreen 1で韓国映画『花、香る歌』を見てきたばかりのcinetamaの保証付き!) 宣伝担当の方からいただいたメールをまとめたものを、下に貼り付けておきます。


©South of the Road Production House

『若葉のころ』は、1971年の大ヒット映画『小さな恋のメロディ』の挿入歌としても知られる名曲“若葉のころ”の旋律と、映像美溢れる瑞々しい情景に乗せて、17歳の女子高生とその母、そして母が17歳だった頃の初恋の男性など登場人物たちの思いが、1982年と2013年を行き交い、観る者の記憶に眠る、かつての純粋な恋を思い起こさせるような美しいラブストーリーです。さらに、全編を通して映し出される高い映像美は、台湾の人気アーティストジェイ・チョウらのミュージックビデオを手掛けてきたジョウ・グーダイ(周格泰)監督ならではの魅力となっております。

そのジョウ・グータイ監督が来日することになり、初日舞台挨拶に登壇いただけることとなりました。

5月28日(土) シネマート新宿  初回(12:30~14:45ごろ) Screen1
        上映終了後、監督挨拶

観客の皆様にも写真撮影自由とさせていただきます。ぜひ、お運び下さい。

(追加写真/周格泰導演)©South of the Road Production House

周格泰/ジョウ・グータイ(監督・原案)

1964年生まれ、台湾出身。10代の頃から自主制作映画の撮影を行う。台湾の私立大学・世新大学の新聞コミュニケーション学部、テレビ、放送、映像総合学部を卒業。在学中に6年間制作会社に所属し、アートデザインや写真、映画の演出術を学ぶ。その後、20年以上、映像業界で仕事に従事する。アジアで数多くのミュージックビデオやCMの製作を行ってきた。2009年、第19回台湾・全曲賞最優秀ミュージックビデオ監督賞を受賞。映画は本作が初監督作品となる。

©South of the Road Production House 

あんな初々しい物語と、大人のラブストーリーを同時に撮れる監督って、どんな方でしょうね。本当は見に行って、レコードの謎やら映画の看板の謎やらうかがいたかったのですが、最終土曜日なので私は身動き取れず。台湾映画を愛する皆様、ぜひ代わりにいらして、ご挨拶を聞いてきて下さいね。『若葉のころ』の公式サイトはこちらです。予告編ももう一度どうぞ。

映画『若葉のころ』予告編


【画像を追加しました】

宣伝の方に、「監督さんの顔写真がほしいですぅ~」と無理をお願いしたら、上に追加でアップしたお写真と、それから下の『若葉のころ』の台湾イベント時に撮られたらしきお写真を、シネマハイブリッドジャパンの方が送って下さいました。ありがとうございます!

(追加写真/周格泰導演)©South of the Road Production House

皆さん、明日はこのシブい魅力が光るジョウ・グータイ監督に、客席から手を振ってあげて下さいね~。


A.R.ラフマーン、福岡アジア文化賞大賞受賞!

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今年の福岡アジア文化賞の大賞に、インドの作曲家A.R.ラフマーンが選ばれました。毎年、受賞者はほぼ全員が授賞式に来日するこの賞ですので、9月の授賞式には彼も来日し、講演、あるいは公演(!)等、何らかのイベントがあるものと思われます。ファンの方は、福岡アジア文化賞のHPをチェックしていましょう! 


福岡アジア文化賞のサイトにも彼の写真がありますが、ここには昨年の東京国際映画祭(TIFF)で上映されたドキュメンタリー映画『ジャイ・ホー~A.R.ラフマーンの音世界』(2015)のスチールを付けておきます。この機会に、ウメーシュ・アグルワール監督のこの秀作ドキュメンタリー映画を、どちらかの配給さんが買って下さることを願っています(ご希望の方は、TIFF事務局までどうぞ)。予告編も付けておきます。

JAI HO - A FILM ON A. R. RAHMAN (Trailer)

以下には、福岡アジア文化賞のプレス・リリースをそのまま貼り付けておきます。 A.R.ラフマーン以外の受賞者にも、どうぞご注目下さいね。

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福岡アジア文化賞 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  第27回(2016年)福岡アジア文化賞受賞者の決定について
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2016.05.30

アジア地域の文化振興と相互理解および平和に貢献するために、福岡市と(公財)福岡よかトピア国際交流財団によって創設いたしました「福岡アジア文化賞」ですが、本年も福岡アジア文化賞選考委員会・審査委員会において厳正なる審査を経まして、5月30日に文化賞委員会で、第27回福岡アジア文化賞受賞者を下記のとおり決定しましたのでご報告いたします。

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≪大賞≫ A.R.ラフマーン
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●インド
●音楽

【贈賞理由】
A.R.ラフマーン氏は、世界的な映画音楽の作曲家として優れた実績を残し、映画音楽の新境地を開拓して、あらためてこの分野が注目される契機を作ってきた。南アジアの伝統音楽、西洋のクラシック音楽、アメリカのヒップホップなど現代の大衆音楽を大胆に融合させ、甘美なメロディーを強烈なビートにのせた楽曲の数々は、氏が音楽を担当した名作映画の題名とともに、多くの人々の心に刻まれている。

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≪学術研究賞≫ アンベス・R・オカンポ
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●フィリピン
●歴史学

【贈賞理由】
アンベス・R・オカンポ氏は、優れた歴史学者であり、大学教員、コラムニスト、歴史・文化行政の責任者や顧問として、フィリピンの学術・文化・社会の発展に貢献する知識人である。フィリピンの歴史がグローバルなネットワークのなかで展開してきたことを分かりやすく説明し、開かれたナショナリズムの発展と国際交流の推進に大きな役割を果たしている。

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≪芸術・文化賞≫ ヤスミーン・ラリ
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●パキスタン
●建築

【贈賞理由】
ヤスミーン・ラリ氏は、パキスタン初の女性建築家として現代建築を手がける一方、パキスタン・ヘリテージ財団を創設し、歴史的建造物の保存と修復活動を行ってきた。また、2005年パキスタン大地震を機に人道支援活動へも力を注ぎ、同国における社会文化活動の先駆的な女性リーダーとして、文化遺産保護と災害に強い社会づくりに貢献している。

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各受賞者の詳細につきましては、本賞ウェブサイトにも掲載しておりますので、ご参照いただければ幸いです。 

これからもこの賞を通じてアジアの学術・芸術・文化の発展に貢献された方々に敬意を表し、アジアの固有かつ多様な文化の価値を都市の視点でアジアに、そして世界に伝えていきたいと考えます。

今後とも本賞の発展に向けてご協力を宜しくお願い申し上げます。


2016年5月30日
福岡アジア文化賞委員会
事務局長 丸尾 秀明

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発信元: 福岡アジア文化賞委員会事務局

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A.R. Rahman - Maa Tujhe Salaam

上は、日本版も出たインド独立50周年ソング「Maa Tujhe Salaam(マー・トゥジェー・サラーム/母なる大地に捧ぐ)」(1997)のMVです。ほかにもA.R.ラフマーンの歌を聴きたい方は、彼の音楽映像ばかりを集めたこちらのYouTubeサイトでどうぞ。MVもいいですが、ナマで聞いてみたいものですねえ~。期待していましょう。

 


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭<1>インド映画長編コンペ初エントリー

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7月に行われる、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016のラインアップが発表されました。今年は珍しく、長編コンペにインド映画が入っています。映画祭概要と、インド映画『ニュ-・クラスメイト(The New Classmate)』のプレス・リリースを貼り付けます。

<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016 開催概要>

■会期: 2016年7月16日(土)~7月24日(日)

■会場: SKIPシティ 映像ホール、多目的ホールほか(川口市上青木3-12-63)
    彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市上峰3-15-1) [7/17、7/18のみ]
          こうのすシネマ(鴻巣市本町1-2-1エルミこうのすアネックス3F) [7/17、7/18のみ]

■主催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会

公式サイト 

【お問合せ】
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭事務局
〒333-0844 埼玉県川口市上青木3-12-63 5F
TEL:048-263-0818  FAX:048-262-5635

[長編部門]

『ニュー・クラスメイト』 (The New Classmate) ※ジャパン・プレミア

 (C)Films Boutique

【STORY】

未来への希望を捨ててはいけない。
身分も学歴も超える、母の愛。

メイドで生計を立てるチャンダは、劣等生の娘アプーが気がかり。ある日、アプーが学校を辞め自分もメイドになると言い出しショックを受ける。チャンダは娘と同じクラスに入学し、勉強で対決することを決める。

【解説】
本映画祭では史上初めてノミネートとなる、映画大国インドから届いた作品。この作品で監督デビューを飾ったアシュヴィニー・アイヤル・ティワーリーは、カースト制度が廃止された現在でも、階級格差や差別が根深く残るインドにおいて、教育によって娘の世界が広がってゆくことを願う母の愛を、女性監督らしいきめ細やかさで描き出している。本作は、2015年のロンドン映画祭やローマ国際映画祭といった映画祭で上映され、好評を博した。また、2013年の大ヒット作品『ラーンジャナー』や『Tanu Weds Manu』(11・未)の演技などで、本国では数々の賞を獲得している、母・チャンダを演じたスワラー・バースカルの気品ある美しさも見逃せない。


監督:アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー
出演:スワラー・バースカル、リヤー・シュクラー、ラトナー・パータク・シャー、パンカジ・トリパティ
(C)Films Boutique

監督:アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー (Ashwiny Iyer Tiwari)

     (C)Films Boutique

世界的に著名な広告代理店レオ・バーネットにて、インドと東南アジアを中心に16年間エージェントとして働いた経験を持ち、カンヌライオンズ、ニューヨーク・フェスティバル、ワンショー、クリオ、D&ADなどの広告賞を受賞。短編映画『What’s for Breakfast?』(13)がダーダーサーヘブ・ファールケー賞を受賞し、注目される。すでにボリウッドで最も期待される女性監督のひとりとして活躍しており、現在父と娘の関係を描く小説「ホームワーク」を執筆中。映画化もすでに決定している。

(C)Films Boutique

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『ニュ-・クラスメイト』はインドでは4月22日に公開されました。その時のタイトルは、『Nil Battey Sannata』。私も意味がよくわからず首をひねったのですが、この映画の中でこの言葉の意味が説明されています。北インド中部、ウッタル・プラデーシュ州などで使われるスラングで、「無能な奴」というような意味なのだとか。

自らをそう言って卑下するメイド(ヒンディー語では、『マルガリータで乾杯を』にも出てきた単語「バーイー」が使われています)のチャンダー(スワラ-・バースカル)と、彼女の娘で10年生のアップーことアペークシャー(リヤー・シュクラー)が主人公なのですが、脇役にも個性的な人が顔を出しています。チャンダーがメイドとして通うのは、女性ながら高等教育を受けて博士号も持つDr.ディーワーン(ラトナー・パータク・シャー)とその夫がゆったりと暮らす家。チャンダーはこのDr.ディーワーンを「ディーディー(姉さん)」と呼んでいるのですが、ディーディーを演じているのはナシールッディーン・シャーの奥さんであるラトナー・パータク・シャー。お母さんも女優、妹も女優(『ラームとリーラ』のコワいお母さん役スプリヤー・パータク)、息子2人も俳優(1人は『僕はジダン』、もう1人は『Happy New Year』に出演)という俳優一家の要的存在の女優です。

また、アップーが通う中等学校のシュリーワースタウ校長先生を演じているパンカジ・トリパーティーは、『血の抗争』ではスルターン・クレイシーという血の気の多い肉屋の跡継ぎを演じ、ヤクザっぽさ満点でしたが、本作ではユーモアたっぷりに「いい人」を演じています。予告編を付けておきましょう。

Nil Battey Sannata Official Trailer with Subtitle | Swara Bhaskar, Ratna Pathak

アップーの同級生たちも名優揃い。笑わせ、泣かせ、スカッとさせてくれる、とても見応えのある作品です。詳しいストーリーは伏せておいた方が見た時楽しいので、ご紹介はここまで。ぜひ、埼玉のSKIPシティまで足をお運び下さい。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭<2>」では、他のアジア映画上映作品をご紹介します。




SKIPシティ国際Dシネマ映画祭<2>特別招待作品に中国映画2本

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昨日のインド映画に続き、中国映画の上映情報もちょっと。特別招待作品という枠で、2本の中国映画が上映されます。プレスリリースを貼り付けておきます。(原題や人名の中国語表記などを加えてあります)

★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

[特別招待作品] 

『長江図』 (Crosscurrent)  ※ジャパン・プレミア

 

(C)Ray International (Beijing) LTD.

【STORY】
本年度ベルリン国際映画祭にて銀熊賞を受賞。
悠久の長江を映像美で魅せる恋愛映画。 

古い貨物船の船長ガオ・チュンは、船内の古びた缶から「長江図」と書かれた詩集を見つける。それに導かれるように船は長江を上流へと進み、道中、上海で見かけた女性と再会するなど、奇妙なことが続く。極寒の長江の風景と相まった幻想的で美しい叙事詩。 

【解説】
本年度の第66回ベルリン国際映画祭において、中国作品として唯一コンペティション部門にノミネートされ、ホウ・シャオシェン監督作品や、『空気人形』(09)、『ノルウェイの森』(10)のカメラマンとして知られるリー・ピンビンが銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した本作。撮影は長江の沿岸で2か月にわたって行われ、上海から南京、三峡ダムを通り上流へと至る中で移り変わってゆく長江の雄大な景色を、夢幻的な美しさで捉えた映像は必見。北京電影学院で学んだヤン・チャオ監督は、卒業制作として監督した『Run Away』(01)がカンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門で受賞。初長編作品『Passages』(04)でもカンヌ国際映画祭でカメラドールスペシャルメンションを受賞している。主演のチン・ハオは『スプリング・フィーバー』(09)、『二重生活』(12)などロウ・イエ監督作品の常連俳優。日中合作映画『東京に来たばかり』(12)では倍賞千恵子と共演している。

<2016年/中国/116分/原題:長江圖>

監督:ヤン・チャオ(楊超)
出演:チン・ハオ(秦昊)、シン・ジーレイ(辛芷蕾)


(C)Ray International (Beijing) LTD.

監督:ヤン・チャオ (Yang Chao/楊超)

 

  (C)Ray International (Beijing) LTD.

北京電影学院の演出学科を卒業し、監督及び脚本家として活躍。最初の脚本・監督作品である短編『Run Away』(01)は、第54回カンヌ国際映画祭でシネフォンダシオン部門第3位を受賞。長編一作目の『Passages』(04)は第57回カンヌ国際映画祭でカメラドールスペシャルメンションを受賞した。本作の脚本は2005年第58回カンヌ国際映画祭の企画マーケット「L'Atelier」で紹介され、ワールドプレミア上映された本年の第66回ベルリン国際映画祭では、撮影監督が銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した。

 

『I PHONE YOU』 (I Phone You)  ※ジャパン・プレミア

 

(C)Ray International (Beijing) LTD.

【STORY】
中国とドイツをiPhoneで結ぶ
男女3人の恋物語の行方は如何に? 

山村の花屋で働くリンは、ベルリンから来た中国人ビジネスマンと恋に落ちる。しかし彼はiPhoneを彼女に贈り、帰国してしまう。その後、iPhoneで連絡を取り合うなか、彼女は思いにまかせベルリンへ。だが、空港に迎えに来たのは彼の運転手だった。

【解説】
中国、ドイツ合作による本作は、中国の田舎町で暮らす女性が、ひょんなことから知り合った中国人ビジネスマンを追ってベルリンへとわたり、迎えに来た彼の運転手をしているドイツ人男性と過ごす中で巻き起こる恋愛模様を、ポップな映像も楽しいコメディタッチで描いている。『レイン・オブ・アサシン』(10)、『ドラゴン・フォー』シリーズ(13,14)などに出演しているジャン・イーエンと、『グッバイ、レーニン!』(03)、『アイガー北壁』(10)などのフロリアン・ルーカスが共演。タン・ダン監督はドイツで最も古い歴史をもつバーベルスベルク映画・テレビ大学などで学び、これまでに本作を含む4本の劇映画を監督しているほか、多くのドキュメンタリー作品も手がけている。 

<2011年/中国、ドイツ/90分/原題:愛封了>

監督:タン・ダン(唐丹)
出演:ジャン・イーエン(江一燕)、フロリアン・ルーカス


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 監督:タン・ダン (Tang Dan/唐丹)

 

    (C)Ray International (Beijing) LTD.

カッセル芸術大学にて芸術系修士課程及びバーベルスベルク映画・テレビ大学で中国人初の映画演出修士課程を終え、数多くのドキュメンタリー及び短編映画を監督。『The Autumn for Guoguo(果果的秋天)』(05)で初の長編映画を監督し、続く二作目の『Dream Team(夢之隊)』(08)は北京大学学生映画祭で優秀作品賞を受賞した。最新作『Love of Alps』は、中欧コンテンツラボの合作作品として選ばれている。

★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

『長江図』は以前こちらでご紹介したとおり、本年3月の香港国際映画祭で見たのですが、実はDVD鑑賞だったため、その幻想的な映像を120%堪能したとは言いがたかったのでした。できれば今回、大スクリーンで見てみたいものです。

(C)Ray International (Beijing) LTD.

映画祭の公式サイトはこちらです。すぐにスケジュールが知りたい!とおっしゃる方は、こちらをどうぞ。カテゴリー別に色分けがしてあって、とても見やすいスケジュール表ですね。しかも、ここから作品紹介に飛べるスグレモノ! チケットも好評発売中で、コンペ作品の前売り券は何と1作品600円! 来日ゲストも続々決まっているようですので、発表をお楽しみに~。

『長江図』の予告編を付けておきます。

2016台北電影節|長江圖 Crosscurrent

『I PHONE YOU』の方は、当映画祭の予告編がアップされていました。

『I PHONE YOU』(愛封了)予告編 ◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016特別招待作品

昨日ご紹介したインド映画『ニュ-・クラスメイト』もどうぞよろしく~~~。

 

 

マレーシア映画『世界を救った男たち』上映のお知らせ

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横浜のシネマ・ジャック&ベティで、珍しいマレーシア映画の上映があります。以前、こちらのなら国際映画2014紹介記事でも取り上げた、リュウ・センタット(劉成達)監督作品『世界を救った男たち(Lelaki Harapan Dunia)』(2014年/マレーシア、オランダ、ドイツ、フランス/ 93分)です。ご案内下さった方からいただいたチラシを、そのまま貼り付けます。チラシが見にくい場合は、こちらのサイトもご参照下さい。

リュウ・センタット監督は、以前にもご紹介したとおり、アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『ポケットの花』(2007)で注目された監督です。ジェームス・リー監督がお父さんを演じた『ポケットの花』は、2人の子役がとても印象的な演技を見せてくれましたが、この『世界を救った男たち』は『ポケットの花』とはちょっと違った、コメディタッチの物語のようです。予告編をどうぞ。

Lelaki Harapan Dunia Official Trailer (27 November 2014 di Pawagam)

おお、何やら「村は大騒ぎ」といった雰囲気ですね。2回だけの上映なので、この機会にぜひお楽しみ下さい。シネマ・ジャック&ベティのサイトから、前売り券を購入することができます。登録をする必要がありますが、確実にチケットを確保したい方はこちらからどうぞ。

上のチラシにある現地版チラシのちょっと違ったヴァージョンが下のものですが、インド映画に詳しい方なら、「お、”世界”は”Dunia”なのか。"ドゥニヤー"と同じじゃん!」と思われたことでしょう。そうなんです。元はアラビア語で、それが両方の言語に入ったのですね。というわけで、どうやって男たち(Lelaki)が世界(Dunia)を救うのか、ぜひお楽しみに~。

なお、「Di Pawagam」は「劇場で」という意味で、「At Theater 27 Nov.2014」というわけです。それから、上の方の赤字「SELAMAT」は皆さんご存じですよね。「安全、幸せ」というような意味で、あとにいろんな時間帯名などを付ければ挨拶になります。「Selamat Pagi(おはよう)」「Selamat Siang(こんにちは/11時~15時ぐらい)」「Selamat Sore(こんにちは/15時~18時ぐらい)」「Selamat Malam(こんばんは)」「Selamat Datang(ようこそ)」「Selamat Jalan(さようなら/立ち去る人に)」「Selamat Tinggal(さようなら/見送る人に)」....とまあ、「Selamat(スラマト)」を使った言い方は山ほどあります。この映画『世界を救った男たち』では、「Selamat」の次に何が来るんでしょうね....。

<追記>

この記事を書いていて、急にマレー語を勉強したくなり、戸加里康子著「旅の指さし会話帳⑮マレーシア/マレーシア語」(情報センター出版局、2013第二版第5刷)を買いました。今年の夏、しばらくぶりにKLとイポーに行くので、以前学んだインドネシア語(たった5日間の夜だけ集中講座!)で間に合わせていたのを覚え直そうと思ったのです。すると、上に書いた1日の挨拶がちょっと違っているのに気がつきました。「おはよう」と「こんばんは」はOKなのですが、「Selamat Tengahari(こんにちは/12時~14時ごろ)」「Selamat Petang(こんにちは、こんばんは/14時~日暮れ頃まで)」となっていました。お詫びして、ちょい訂正致します。Minta maaf!(すみません~)

なお、この本は、マレー語のほかにも華語(標準中国語)とタミル語も載っているというスグレモノ。チェンナイに行った時にも役に立ちそうです。


 

インド映画自主上映会:テルグ語映画『A Aa』

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 いつものように、Periploさんからいただいた情報です。ポスター画像がバカでかくなってすみません。ちょっと仕事が立て込んでおりまして、もろコピペですがご勘弁下さい。

A.. Aa Movie Poster 9689


『A Aa』

2016/テルグ語/154分/英語字幕
 監督:トリヴィクラム・シュリーニヴァース
 主演:二ティン、サマンタ、アナパマ・パラメーシュワラン

■日時:2016年6月12日(日)午後 2:30~
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza アクセス
■料金:大人2,400円
■主催:インドエイガ・ドットコム HP 予約
※ サイト上で開映13:30となっていますが、誤りなので訂正するようPeriploさんから依頼中です。

A.. Aa Movie Poster 9815

バンガロール在住のカーヴェリ川長治さんのレビューはこちら。なお、Periploさんからは、メールで次のようなコメントもいただいています。「今回は珍しく、当初予定していなかった作品が、現地で封切られて評判がいいために急遽上映となったようです。4月以降『Theri』、『24』、『Brahmotsavam』と続いたサマンタ出演作ですが、『マッキー』のころと比べて確かにしっとりとした魅力が増して、ひっぱりだこも頷ける気がします」 というわけで、スディープならずとも追いかけたくなるサマンタ・ルス・プラブの魅力が全開の作品であるようです。

なお、タイトルはWiki「A Aa」によると、主人公たちの名前、 Anasuya Ramalingam/アナスヤー・ラーマリンガム(サマンタ)と  Aanand Vihari/アーナンド・ヴィハーリー(ニティン)のそれぞれの頭文字を取ったものだそうです。インドの皆さんはチケットを買う時に、「『ア・アー』2枚」とか言ってるんですかねー。なになに、スマホでネット予約するから、窓口では言う必要ないって?  はいはい、さようですか。では、予告編もどうぞ。あら、また『DDLJ』ごっこやってる...

A Aa Official Trailer || Nithiin || Samantha || Trivikram Srinivas || Mickey J Meyer



 

『PK』ポスター画像をいただきました!

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もうすでに皆さんがいろんなサイトで目になさった、『PK』のポスター画像第1号。公式サイトこちらでは「しゃべるポスター映像」という動画も紹介されていますが、私もお願いして画像をいただきました。「この男に、常識は通じない」というキャッチコピーもいいですね~。

 

このアーミル・カーンを見ると、元のポスターが以前インドのサイトで、「Best Costume Design Award」(わはは...)とコメントを付けて紹介されていたのを思い出します。そしてこのコスチュームこと、インド人が「2 in 1」と呼び慣わしているラジカセですが、これがどうやら日本製らしいのです。こちらで、「National-Panasonic RQ-565D」と紹介されています。1970年代に市場に出回ったそうですが、こんなレトロな製品、どこから見つけてきたのでしょうね。もしかしたら、インドでは現役でまだまだ活躍しているのかも知れません。ラージ・カプールの『詐欺師』(1955)の歌、「私の靴は日本製」に続く、身にまとう日本製品の登場ですね。

なお、このシーン、アーミル・カーンはすね毛を始末したりとか、肉体を美しく見せるために大変な思いをしたことが、インド版DVDのメイキング映像に出て来ます。今後も少しずつ、いろんな情報がリリースされていくようです(何だか、すごいことも計画されているらしい...)ので、公式サイトと共に、公式FB公式TWもこまめにチェックしていて下さいね。

<追記>今YouTubeを見たら「しゃべるポスター映像」を発見。付けておきます。

映画『PK』しゃべるポスター映像!

<オマケ>アーミル・カーンがしゃべっているセリフは次の通り。

アレー・アイセー・トゥクル・トゥクル・カー・デーク・ラヘー・ホー
Aare aise   tukur-tukur  ka  dekh rahe ho?
あれ、そんなに ジロジロと  何を  見ているんだ 

パヘチャーネー・ナヒ・カー・ハムカー
Pahachane  nahi ka humka?
わから    ないのか 僕が 

アレー・ハム・ピーケー・ハイ・ピーケー
Arre hum  PK  hai  PK
あれ、 僕は  PK  だ  PK


 

 

ラジニカーント新作『Kabali(カバーリ)』

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7月のインド映画ラインアップは、北ではサルマーン・カーン主演『Sultan(スルターン)』が、南ではラジニカーント主演『Kabali(カバーリ)』が世の中を席巻しそうな勢いです。『スルターン』の公開は7月6日、『カバーリ』の公開は今のところ7月15日に予定されていますが、『カバーリ』はいろんなスケジュールが押せ押せになっており、また少し遅れるかも知れません。

Rajinikanth in Kabali.jpg

『カバーリ』とは、一説によるとシヴァ神のことだそうで、1ヶ月半ほど前にリリースされた予告編はこちらです。相手役の女優は、『BADLAPUR(バドラープル) 復讐の町』のラーディカー・アプテーです。

Kabali Telugu Movie | Official Teaser | Rajinikanth | Radhika Apte | Pa Ranjith

そして、今週正式な予告編がリリースされるはずが、今、検定局にかけているので遅延、というお知らせがありました。その直前に、イラストを使ったカッコいい「予告編の予告編」みたいなのが出たのですが、そのほかファンの作った予告編やら、あれやらこれやらいっぱいYouTubeにはアップされていて、もう何が何やら。とりあえず、その「予告編の予告編」を付けておきます。

Kabali Pre-Trailer

すでにしてお祭り騒ぎになっているようなタミル語映画界。ラジニは偉大というか、大いなるマンネリというか(また役柄がいつもと似たような感じです...)、ですが、とりあえずご健勝(間違った! ”ご健闘”でした。健康不安が先に立って、つい...)を祈っております~。



新鮮で重いカンボジア映画『シアター・プノンペン』

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少し前にちょっと関連イベント開催をご紹介したカンボジア映画『シアター・プノンペン』。2014年の東京国際映画祭で上映された時は『遺されたフィルム』というタイトルでしたが、こちらは原題&英語題名の直訳でした。今回公開されるにあたって、より具体的にカンボジアという国と映画の内容をイメージさせるタイトルに変更され、ソト・クォーリーカー監督も大納得とのこと。この新しいタイトルで、いよいよ皆様の前にお目見えです。まずは、データからどうぞ。 

『シアター・プノンペン』 公式サイト 

©2014 HANUMAN CO., LTD

2014年/カンボジア/クメール語/105分/原題:ដុំហ្វីលចុងក្រោយ/英語題:The Last Reel

 監督:ソト・クォーリカー
 主演:マー・リネット、ソク・ソトゥン、トゥン・ソーピー

 配給:パンドラ
 宣伝デザイン:プランニングOM、オフィス63
 宣伝パブリシティ:スリーピン 

※7月2日(土)~7月29日(金)岩波ホールにてロードショー公開

©2014 HANUMAN CO., LTD

物語は、カンボジアの首都プノンペンの夜から始まります。傍若無人に遊び、バイクをころがす若者の集団。ソポン(マー・リネット)は集団のリーダーであるベスナ(ルオ・モニー)のガールフレンドでした。彼らは、バイクの駐輪場である今は使われなくなった映画館を根城にしており、ソポンはそこから自分のバイクで深夜に帰宅するのが常でした。ソポンの父(トゥン・ソーピー)は軍人で、地方に行っていることも多く、家には母(ディ・サヴェット)と大学生のソポン、そして姉の行動を心配するやはり大学生の弟がいました。母は体調を崩しており、その面倒を見ながらも、厳格な父への反発もあって、ソポンは夜遊びをやめられません。

そんなある夜、ベスナとはぐれてしまったソポンは、1人駐輪場に戻って来ますが、そこでびっくりすることに出会います。映画館のスクリーンに自分とよく似た女性の姿が写っいたのです。どうやら昔の映画の1シーンのようで、映写室に行ってみると、駐輪場の管理人ソカ(ソク・ソトゥン)がフィルムを映写していました。そして壁には、その映画の古いポスターが貼られていたのですが、ソポンはそこに写っている女優ソテアが若き日の母であることに気がつきます。ソカから、クメール王国を舞台にしたこの映画『長い旅路』は最終巻が欠けている、という話を聞き、ソポンは何とか自分たちの力でその最終巻を再現できないかと考え始めます....。

©2014 HANUMAN CO., LTD

本作は、冒頭に登場する、暴走族のような若者の描写にまず度肝を抜かれます。そして、彼らのバイクの駐輪場→昔の映画館→残った1本の映画→そこに隠された出演者たちの運命→消えた最終巻を再び撮ろうとする若者たちの行動...といったようにお話が転がっていき、ヒロインが自分の両親の過去を知ることで、カンボジアという国の歴史と向き合うことになる、という、とても巧みな重層構造の作品が姿を現していくのです。また、劇中劇として出てくるクメール王国時代の、王と村娘、そして仮面のヒーローの話は、いろんな暗喩が含まれているようで、現代のシーンと響き合います。最初に見た時はそれほどと思わなかったのですが、今回試写で再び見せていただいて、かなりよくできた脚本だとあらためて惹きつけられました。

©2014 HANUMAN CO., LTD

そして、「カンボジア」といえば観客がどうしても連想してしまうであろうクメール・ルージュ(赤色クメール)の時代についても、映画人が受けた苦難を中心に、現代に現れたその傷あとという形でも描かれていきます。虐殺のあともしっかりと見せてくれ、その中でソポンの母やソカがどのように翻弄されたのか、それが現在に至るまでどんな爪跡を残しているのか、ということが描かれるのですが、単に善悪二項対立ではない描き方は、カンボジア人監督ならではと言うことができるでしょう。ちょっと理解しにくいエピソードもあるものの、それも含めて、多くの観客がカンボジア映画との初めての出会いをしっかりと体験できる、新鮮、かつ重みのある作品となっています。

©2014 HANUMAN CO., LTD

本作を撮ったソト・クォーリカー監督は、1973年生まれ。プレスによると、1999年にカンボジアが外国に門戸を開いたことで、どっと入ってきた海外メディアの手伝いをするうちに、映像製作に目覚めたとか。本作はカンボジア在住のイギリス人脚本家イアン・マスターズが草案を作り、それをたたき台にして、「クメール・ルージュ時代を内側の視点から見たものに書き換え、その時代を経験した人たちの声を色濃く出した」そうです。その過程で監督は当時の関係者にいろいろインタビューしたそうですが、クメール・ルージュの中心にいた人たちにインタビューした時には、いろいろ怖い目にもあったのだとか。

また、5月25日(水)に国際交流基金で行われた渡辺えりさんとのトークショーでは、渡辺さんの暖かな質問に答えて、自身の過去にも触れて本作の背景をいろいろ話してくれました。1973年生まれのソト・クォーリカー監督は、1968-1996とされるクメール・ルージュ時代の半ばから後半にかけて、子供から大人になった人ですが、パイロットだった父親を虐殺で亡くし、母親と二人だけで育ったのだとか。生活は大変で、お母さんはとても苦労したそうです。民間人のパイロットである父親が殺されたのは、軍への入隊を拒否したためで、それもあって今回ヒロインの父親を軍人にすることにはかなり葛藤があったようでした。ただ、保守的な考え方を持つ父親、ということと、彼自身がクメール・ルージュ時代の犠牲者でもあった、という部分を出すために、あえて軍人にしたようです。渡辺えりさんも、「そうやって客観的に見ようとする視点がすがすがしいですね」とコメントしていました。


この日は会場にその苦労したお母さん、そして監督のご主人とお子さん2人も姿を見せ、最後のフォトセッションではみんなでパチリ。家族の支えがあってこそ、とも言っていた監督ですが、自身も意志の強い人のようで、映写技師ソカ役のソク・ソトゥンが「こんな重荷を背負った役はやりたくない」と言った時も、どうやってソカを演じるのか、ということを徹底的に彼と話し合い、最後には彼もチャレンジできたことに満足していたとか。本作を見てもらえればわかりますが、人物それぞれに影があり、中でも映写技師ソカは二重三重に屈折した役柄になっています。また、一番単純そうに見えるヒロインのソポンを演じたマー・リネットに関しても、「カンボジアの女の子は、伝統的に人の言うことにただ従うだけ、という面があるのです。ですので6ヶ月間一緒にロケをする中で、私の家にも来てもらって、意見をいろいろ交換しました」とのことで、マー・リネットも相当しぼられたのでは、と思います。


また、ソポンの母親で、かつて人気女優だったソテアを演じたディ・サヴェットは、日本でも東京国際映画祭で上映された”カンボジア映画の父”ティ・リム・クゥン監督の『怪奇ヘビ男』(1970/下のポスター)など、多くの映画に出演しているベテラン女優。かつての人気女優という役のせいか、少々お化粧が濃かったりと少し違和感を感じるシーンもあるものの、映画の要となる役を貫禄で演じていました。

Puos Keng Kang Poster

最後に予告編を付けておきます。またとない貴重なカンボジア映画を見る機会だけでなく、映画としても面白い作品ですので、ぜひお見逃しなく。

「シアター・プノンペン」予告編


最後にオマケを1つ。本作の製作会社は、ハヌマーン・フィルムズ。インドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」に登場するサルの武将ハヌマーンの名前がついています。配給会社からロゴマークをいただきましたので、下に付けておきます。「ラーマーヤナ」はご承知の通り、インドから東南アジアにも伝わっていて、タイやカンボジアではこういった伝統演劇のキャラクターの格好で描かれることが多いのです。インドではバジュラングバリーとも呼ばれるハヌマーン。そのハヌマーンつながりで、インド映画好きの方もぜひご覧になってみて下さい。


©2014 HANUMAN CO., LTD

『PK』チラシをいただきました!

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今週出来上がったばかりの、『PK』のチラシを送っていただきました! REGENTS様、ムサシノ広告社様、ありがとうございます~。とてもしっかりした、いい紙のチラシです。本気度が伝わってきますねー。

チラシは、上記の上映館に行けばゲットできます。また、明日の「インド映画特別講座」ご参加の皆様にはお配りするほか、お持ち帰り用も十分にご用意しています。バンバン配っちゃって下さいね。参院選の候補者に負けず、『PK』の知名度アップにがんばりましょう!



『カバーリ』の悪役は趙文瑄(ウィンストン・チャオ)だった!

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仕事のツメに疲れると、すぐYouTubeを見てしまう私。さっきもロバの鳴き声画像(!ホントに「アホ、アホ」と鳴くんです)を捜しがてら、チラと見ていると、こんな画像を発見!

Kabali Exclusive - Villian Interview (Winston Chao)

えー、7月公開のラジニカーント主演作『カバーリ』の悪役は、趙文瑄(ウィンストン・チャオ)だったのか!! KLタワーが写っていたので、マレーシアが舞台だとは思っていたのですが、ラジニの敵は中華マフィア、とかなのでしょうか。それにしてもなぜウィンストン・チャオ? そのあたりの意外性は、上記インタビューで本人も語ってくれています。

The-wedding-banquet-1993-poster.jpgRed Rose White Rose.jpg

ウィンストン・チャオと言えば、中華な世界では”孫文役者”として有名な俳優です。最初は、アン・リー監督の『ウェディング・バンケット』(1993)の主役で注目され、台湾映画で大活躍。続いて香港映画でも活躍し、スタンリー・クワン監督の『紅い薔薇 白い薔薇』(1994)の主役のほか、多くの作品に出演しています。メイベル・チャン監督作品『宋家の三姉妹』(1997)で孫文を演じたことから、よく孫文役が来るようになり、『孫文-100年先を見た男』(2006)でも主役を演じました。うーむ、その彼がラジニ映画に、しかも悪役でとは、『カバーリ』はグローバル感に溢れていますね~。

KABALI's Terrorising villain Winston Exclusive Interview!

YouTubeには、他メディアのウィンストン・チャオのインタビューもあり、上のも面白かったので付けてみました。「アイシュワリヤー・ラーイ」がなかなか発音できないウィンストン・チャオ(笑)。ファンの方はいろいろご覧になってみて下さいね。ますます、『カバーリ』を見る楽しみが増えました。


夏のアジア映画3本@アテネ・フランセ文化センター

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いつもアテネ・フランセ文化センターで行われている、映画批評家クリス・フジワラ氏による連続講議。本年春は中国映画を素材にしての連続講議でしたが、本夏はネパール&アメリカ、ミャンマー&台湾、フィリピンの3本の映画が登場します。まだHPには掲載されていないようなので、チラシを貼り付けておきます。


こちらのHPにも間もなく詳細がアップされると思いますので、関心のある方は7月に入ったらチェックしてみて下さいね。『マナカマナ 雲上の巡礼』(2013)と『アイス・ポイズン』(2014)の予告編をそれぞれ付けておきます。『アイス・ポイズン』こと『冰毒』は2014年の大阪アジアン映画祭でも『アイス』の邦題で上映されましたが、趙徳胤(ミディ・ジー)監督は私が以前惹かれた映画『帰來的人(Return to Burma)』(2011)の監督でもあります。『帰來的人(Return to Burma)』の紹介記事はこちらです。

『マナカマナ 雲上の巡礼』

Manakamana Official Trailer #1 (2014) - Documentary HD

『アイス・ポイズン』

ICE POISON (Bing Du)Trailer 2014

今、調べてみてわかったのですが、 『マナカマナ 雲上の巡礼』は昨年6月に公開されていました。私のように見逃した方は、この機会にぜひどうぞ。クリス・フジワラ氏の鋭い講義も聞けますので、またとない好機です。

 

 

インド映画『ニュー・クラスメイト』

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明日からいよいよ7月。6月はインド映画の字幕をやっていたせいか、すごく長かったように感じましたが、7月にはその作品『ニュー・クラスメイト』も映画祭上映されます。その映画祭、<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016>はこちらで簡単に紹介していますが、今日はもうちょっと詳しく、『ニュー・クラスメイト』をご紹介しましょう。まずは、基本データからどうぞ。

Nil Battey Sannata (Poster).jpg

『ニュー・クラスメイト』 ※ジャパン・プレミア 公式紹介サイト

2015年/インド/ヒンディー語/96分/原題:Nil Battey Sannata/英語題名:The New Classmate

監督:アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー
出演:スワラー・バースカル、リヤー・シュクラー、ラトナー・パータク・シャー、パンカジ・トリパーティー

(C)Films Boutique

物語の舞台は、タージ・マハルのある町アグラ(アーグラー)。主人公は、メイド(ヒンディー語では「バーイー」)として働いているチャンダー・サハーイー(スワラー・バースカル)と、その娘アペークシャー(リヤー・シュクラー)です。「アペークシャー」とは「期待」という意味なのですが、「希望」にも通じるところがあるため、この名前を日本語に翻訳すると「希美(のぞみ)」ちゃん、という感じでしょうか。「アペークシャー」は呼ぶのには長いので、母チャンダーはいつも「アップー」と愛称で呼んでいます。映画は、このアップーが10年生となった始業式の朝から始まります。

10年生というのはインドではとても大切な学年で、これを修了して最後にある「Board Exam(全国共通試験)」を受けることで、高等教育、つまり大学に行く道が開けるのです。中流以上の生活をしようと思ったら、10年生を修了できずにドロップアウト、ではまず無理。母親のチャンダーは、9年生は終えたのですが10年生で挫折してしまい、落第となったクチでした。

チャンダーがメイドとして働いているのは、女医ドクター・ディーワーン(ラトナー・パータク・シャー)の家です。映画では詳しく説明されていませんが、ドクター・ディーワーンは今は医師生活から引退しているものの、町の名士のようで、人々から尊敬されています。しかしながら、ご本人はちょっと素っ頓狂なところがある、とても気さくな女性です。チャンダーは彼女を「ディーディー(お姉さん/メイドは近しい女主人に対してはこの呼び方をすることが多いようです)」と呼び、何でも相談しています。ドクター・ディーワーンのご主人も理解のあるいい人で、チャンダーはいい家庭で働いていると言えますが、そのお給料だけでは生活が大変なのか、さらにスパイス工場と靴工場でもパートをしています。

こうして、生活費と娘アップーの学費を捻出していたチャンダーですが、ある日アップーの発言でショックを受けることに。「将来何になりたいの?」と聞いたチャンダーに対し、アップーは「メイド」と答えるのです。アップーに言わせると、「医者の子は医者、エンジニアの子はエンジニア、だからメイドの子はメイドに決まってるじゃん」という論理なのですが、娘には勉強して立派な人になってもらいたい、と思って無理を重ねていたチャンダーには大ショックでした。おまけに、アップーの数学の成績が見るも無惨なことを知ったチャンダーは、頭を抱えてしまいます。それをドクター・ディーワーンに相談したところ、とんでもないアイディアが出てきてしまい....。


(C)Films Boutique

という風に書いていくと、「ニュー・クラスメイト」が誰になるかおわかりでしょう。この学校のシーンでは、魅力的なキャラクターが何人も加わって、なかなかに見応えのあるシーンが形作られています。まず、始業式のシーンから観客の目を奪うシュリーワースタウ校長先生(パンカジ・トリパーティー)。『血の抗争』(2012)の血なまぐさいスルターン・クレイシー役とはガラッと違う愉快な校長先生を、パンカジ・トリパーティーが好演しています。数学担当の先生としてのシーンも面白く、愛すべき演技が楽しめます。

そして、アップーのクラスメイトたちも、ハマリ役のキャスティングです。アップーと同じ落ちこぼれ組の男子生徒ピントゥー(プラシャーント・ティワーリー)に、かわいい女子生徒スィーティー(ネーハー・プラジャーパティ)、そして、優等生のアマル(ヴィシャール・ナート)。いずれも自然な演技で、お話にリアリティを持たせてくれます。特に「数学と友達になってみろよ。面白い奴だぜ」と言ったりするアマルは、最後に意外な面も見せてくれ、思わずハグしたくなってしまうこと請け合いです。

もちろん、主人公2人とベテラン女優のラトナー・パータク・シャーの演技が本作の柱ですが、こういった多彩な脇役が映画の奥行きを広げてくれて、何度見ても見飽きない作品に昇華させています。かわいいご都合主義もあったりするものの、女子教育、さらには学校教育全体について、カースト制度や貧富の差なども溶かし込みながら描いていく佳作です。前にもアップしましたが、もう一度予告編をどうぞ。

Nil Battey Sannata Official Trailer with Subtitle | Swara Bhaskar, Ratna Pathak

そして、この映画のタミル語版リメイク作品が、現在インドでは公開中。もともと、ヒンディー語版と共に、アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー監督の母語であるタミル語での製作も企画されていたようで、二言語製作と言ってもいいようです。タミル語版のタイトルは『Amma Kanakku』で、「お母さん、数学する」というような意味なのでしょうか(タミル語がお出来になる方、教えて下さい)。こちらのお母さん役は、何と『神さまがくれた娘』(2011)で大金持ちの娘を演じていたアマラー・ポール。そして、『マルガリータで乾杯を!』(2014)の母親役レーヴァティが、「ディーディー(タミル語だと何と呼んでいるのでしょう?)」役を演じています。こちらの予告編も付けておきます。

Amma Kanakku - Official Trailer | Amala Paul, Samuthirakani | Ilaiyaraaja | Ashwiny Iyer Tiwari

日本での公開も実現しないかな、 と思い、女性映画の公開に実績がある配給会社さんにお声を掛けているのですが、もし興味をお持ちの配給会社さんがいらっしゃいましたら、ぜひお見逃しなく。上映は次の2回です。

7月17日(日)14:00~ SKIPシティ映像ホール

7月20日(水)11:00~ SKIPシティ多目的ホール

詳細は映画祭のHPでどうぞ。ご覧になった方は、このページにコメントなどお寄せ下さいね。2週間先ですが、お待ちしています。


7月はヒマラヤへ<1>人間味溢れる韓国映画『ヒマラヤ』

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今日は室内でも32度もあり、湿度50%超でほんとに参りました。こんな時目に浮かぶのは、涼しげな雪山の景色ですが、アジアの最高峰エベレスト(チベット名:チョモランマ/ネパール名:サーガルマーター/8,848m)や聖なる山カイラースがあるヒマラヤ山脈は、アジアでの雪山代表格でしょう。そのヒマラヤを舞台にした作品が、7月に2本公開されます。それで少しは涼しくなっていただこうという、「7月はヒマラヤへ」特集。まずは韓国映画でその名もズバリ、『ヒマラヤ ~地上8,000メートルの絆~』からどうぞ。

 

『ヒマラヤ ~地上8,000メートルの絆~』  公式サイト
2015年/韓国/韓国語/124分/原題:히말라야 

 監督:イ・ソクフン
 主演:ファン・ジョンミン、チョンウ、チョ・ソンハ、チョン・ユミ   

   配給:CJ Entertainment Japan
 宣伝:ポイント・セット

※7月30日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー

 

©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

実話をもとにした本作の主人公は、韓国の登山家オム・ホンギル(ファン・ジョンミン)。物語は、1992年に彼が率いるチームがネパールで、カンチェンジュンガ峰(8,486m)の6,500m地点において遭難しかけたテミョン大学の学生たちを助けるところから始まります。遭難寸前で助けられた大学生のパク・ムテク(チョンウ)は、亡くなった仲間の遺体を収容したいがためにホンギル隊長の言うことをきかず、ついにはホンギルから、「お前は二度と山に登るな。独断で暴走するバカに山に登る資格はない!」と怒鳴りつけられてしまいます。

ところがその後、韓国に戻って8,000メートル級の山14座完全制覇をめざし、チームの仲間たちと訓練に明け暮れるホンギルの所に、ムテクと友人パク・ジョンボク(キム・イングォン)が押しかけメンバーとなってやってきます。家までやってきて、ちゃっかりとホンギルの妻(ユソン)や子に馴染んでしまった2人を追い返すわけにもいかず、ホンギルは彼らを受け入れることに。それまでの隊のメンバー、統括的な立場にあるイ・ドンギュ(チョ・ソンハ)や、唯一の女性隊員チョ・ミョンエ(ラ・ミラン)はじめ、ベテランのメンバーたちにも受け入れられた2人は、次なる13番目の目標、カンチェンジュンガ登頂に向けて訓練を続けます。そして、ホンギルと共に2000年5月に登頂に成功したムテクは、以後ホンギルの片腕となって、K2(8,611m)の登頂にも成功するのです。

しかしながらその頃から、ホンギルの足の故障が本格化し、彼は現役引退を考え始めます。そんな中2004年に、ムテクはホンギルに替わって隊長となり、エベレスト登頂に挑むのですが、その中で悲劇が起きてしまいます。見事登頂に成功した下山途中、ムテクとジョンボクが遭難、それを助けようとしたジェホンも遭難し、3人の遺体はエベレストに取り残される形になったのです。ムテクの最愛の妻スヨン(チョン・ユミ)ら遺族から、「遺体のない葬儀なんて」と泣かれたホンギルは、ムテクらの遺体をエベレストから連れ戻そうとするのですが....。

 ©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved 

映画は、世界の高峰が集まるヒマラヤの山々に登ろうとするホンギルらの英雄的な姿を描く作品ではなく、むしろ彼らの苦しい行動に密着し、雪崩に襲われ、崖から転落しそうになる恐怖をまざまざと描いていきます。カッコいいシーンもあるにはあるのですが、それよりもコツコツと訓練を繰り返し、様々な準備をした上で現地に赴き、天候に阻まれたりしながら一歩一歩登っていく地道な登山風景が描写されていきます。登山費用を捻出するために、スポンサー契約を取りたい企業にプレゼンするシーンなどは、滑稽ささえにじませるリアルなシーンで、人間性溢れる真摯な作りの作品です。
 
©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
実は、この作品を見る少し前に、別のエベレスト登山を描く日本映画を見たのですが、そこに表れた妙な精神主義と、登山描写のいいかげんさ、地元ネパールをいかにもうさんくさい町に描く視点が気に入らず、げっそりしたのでした。原作が小説の作品と、『ヒマラヤ ~地上8,000メートルの絆~』のように事実に即した作品との違いかも知れませんが、こちらではホンギルらがネパールの人々と「ナマステ(こんにちは)」と挨拶をかわし合うシーンも出てきて、謙虚な心持ちで現地に入っている登山家たちの姿がしっかりと描写されています。登山シーンは主として、実際のヒマラヤとフランスのモンブラン、そして韓国の採石場などで撮影されたそうですが、その迫力は相当なもの。ベースキャンプで山に向かって大声を出すというような変な描写(山肌は遠いとはいえ、雪崩が起きたらどうするの、日本映画)もなく、作品の中に引き込まれました。

©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
劇場でご覧になる時には、ぜひパンフレットをお求め下さい。登山家の田部井淳子さんが、とてもいい一文を寄せておられます。「本作品は、アジア人初8000m峰14座登頂に成功した実在の韓国人登山家、オム・ホンギル氏の実話をもとに構成されている。しかし、劇中ではその輝かしい『登頂』記録ではなく、あえて『遺体回収』という山岳史的には隠れた偉業を主題とし、物語を描いていることに特徴がある」という田部井さんの言葉は、その後「遺体回収」に関するリアルなお話などが語られて、本作のユニークさを際立たせてくれています。そして、田部井さんの文章から、本作のスタッフ・キャストの大変さがあらためてわかることにもなるのです。

 ©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
主演のファン・ジョンミンは、これまでも『国際市場で逢いましょう』(こちら)や『ベテラン』(こちら)でもご紹介したように、今最も勢いのある俳優です。人間味溢れる役をやらせたら、この人の右に出る俳優はいません。今回は、ホンギルの兄貴的存在イ・ドンギュを演じたチョ・ソンハとの組み合わせがいい感じで、少し前に『トキメキ☆成均館スキャンダル』の正祖(イ・サン)役のチョ・ソンハを見慣れていたせいか、目に新鮮な洋服姿(下写真真ん中)にときめいてしまいました。ファン・ジョンミンのほかは割と地味な役者さんが多いのですが、それがまた物語にリアリティを与えてくれて、最後のクライマックスに到る直前、ホンギルが再びヒマラヤへと皆に呼びかけていくシーンはグッときてしまいます。


  ©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

韓国で昨年の興収ベストテンの第8位(昨年末時点。まだ上映が続いていたので、順位がアップしているかも)に入る本作を作ったのは、『ダンシング・クイーン』(2012)と『パイレーツ』(2014)という大ヒット作を世に出したイ・ソクフン監督。本年44歳なので、今最も油が乗った時期と言えるでしょう。心温まる作品や、楽しい娯楽作だけでなく、『ヒマラヤ ~地上8,000メートルの絆』のような、じっくりと腰を据えて撮ることが必要な作品もOKと証明したイ・ソクフン監督、これからさらに化けるかも知れません。下に予告編を付けておきますが、大迫力の公式サイトもぜひご覧になってみて下さいね。

亡くなった後輩のために突き進む!映画『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』予告編


7月はヒマラヤへ<2>心を捉える巡礼の旅『ラサへの歩き方』

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「ヒマラヤ」行きの映画、2本目は中国映画『ラサへの歩き方~祈りの2400㎞』です。こちらは登山ではなく、聖なる山カイラス(カイラース)への巡礼で、チベット自治区の東端カム地方からラサを経由してカイラス山までが2400㎞なのですが、この気の遠くなるような距離を五体投地しながら巡礼していく人々を描いています。まずは作品データからどうぞ。


『ラサへの歩き方~祈りの2400㎞』 公式サイト 
2015年/中国/チベット語/115分/原題:岡仁波齐(カンリンポチェ=カイラス山)

 監督:チャン・ヤン(張揚)
 主演:ヤンペル、ニマ、ツェワン、ツェリン、セパ
 配給・宣伝:ムヴィオラ

※7月23日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開


中国領チベット自治区の東端にある、マルカム県プラ村。すぐ東は四川省です。プラ村のニマの家は、父親が亡くなったばかり。父の弟、つまりニマの叔父ヤンペルは、ずっとラサへ巡礼に行きたいと願っていました。ニマはこの機会に、叔父を連れてラサ巡礼を決意します。その話を聞いて、近所の家からも巡礼希望者が現れました。ケルサン一家からは、妊娠中のツェリンとその婿セパ。ケルサンの言によると、「来年が聖山カイラスの巡礼年である午年で、生まれる子供も午年になるし、セパも午年だから、この巡礼に行くといい」とのこと。ツェリンの妹ツェワンはニマ家の嫁でもあるので、同行すればツェリンの出産・育児にも手を貸してくれる、という見通しもあったのです。

そのほか、家畜の解体業を長年続けていて、それが心にわだかまるワンドゥ。自宅の新築中に2人が亡くなったため、その償いをしたいジグメとその妻ムチュ、そして幼い娘のタツォことタシ・ツォモ。さらに、セパの弟ダワ・タシに、ケルサン家の甥ワンギェルも加わり、総勢11名となった巡礼団は、村からラサへと向かいます。彼らの巡礼のやり方は、老人であるヤンペルと妊婦のツェリンを除き、全員が五体投地で進んでいく、というものでした。その準備として、体の前部を覆う皮の前掛けや、地面につく手を守る手板を作り、旅に必要な道具や食糧を購入。荷物を積んだトラクターを従え、彼らは1200㎞離れたラサへ、さらにはラサから1200㎞の彼方のカイラス山へと巡礼に出発しました....。


「五体投地」はそのネーミングの通り、全身を地に投げ出す礼拝の仕方です。まず、祈りのポーズで両手を頭の上に上げ、それを降ろすと同時に膝をつきます。それから、手板を付けた手のひらを地面につけて、それをぐっと伸ばすのです。こうすると、地面にうつぶせに寝そべって両手を伸ばした形になります。続いて、元のように立ち上がると、自分の体の長さだけ、つまりさっき手の先がついた所まで進み、再度そこで同じ事を繰り返します。こんな、まるで尺取り虫のようなポーズを繰り返して、長い道のりを進んでいくのです。1回に進めるのがせいぜい2mですから、ラサまでの1200㎞なら、それを60万回繰り返す計算になります。その間に祈りが積み重ねられることになるので、実に尊い巡礼となるわけでした。プレスにある監督のインタビューによると、「実際の巡礼では1日10㎞は進む」とのことなので、順当に行ったとしてもラサまでは120日かかることになります。


もちろん、こんな苦行をしないで、まずラサまで車やバスで直行し、ラサのチョカン寺でじっくりと五体投地で祈る、という人も多いのですが、主人公たちは苦労の多い全行程五体投地の巡礼を選びます。その分旅の楽しみも多くなり、様々な人との出会いもあって、巡礼の醍醐味を味わえる旅ともなるのです。毎日、宿営地を決めてはテントを設営し、調理をしてテントの中で眠る生活が続きますが、途中ツェリンが男の子を出産したり、泊めてくれた人の農作業を手伝ったり、トラクターが事故に遭ったりと、いろんなハプニングも起こります。それだけに、ラサの町を目前にした時のみんなの喜びもひとしお。ラサの町を前に、彼らが歌い踊るシーンは、本編中最も美しいシーンの一つとなっています。


ラサの町でも心温まる誇らしい出来事があり、その反面、この先カイラス山までの巡礼を続けるためには資金が足りなくなってしまい、それを稼ぐためにラサでの滞在が延びることに。運良く宿の女主人が、「体の弱い私に替わって、10万回の五体投地でラサを回ってくれたら、宿代はタダでいいわ」と言ってくれ、2ヶ月かかって10万回の五体投地を終えた彼らは、何人かが建築現場の資材運びなどの労働をやって貯めたお金を持ち、今度はさらに1200㎞西にあるカイラス山を目指します。カイラス山では悲しい出来事も起こったものの、見方を変えるとそれも功徳の表れであり、カイラス山の麓に響く僧侶の読経を聞きながら、人々は巡礼の到達点を噛みしめるのでした...。


と書いてくると、まるでドキュメンタリー映画のようなのですが、実は本作はれっきとした(?)劇映画。経済発展する中国の新しい男女関係を描いた『スパイシー・ラブスープ』(1997)でデビューしたチャン・ヤン監督は、『こころの湯』(1999)や『胡同のひまわり』(2005)、そして『グォさんの仮装大賞』(2012)など、庶民を描いた人情派の作品が得意な監督です。それまでのホームグラウンドだった漢民族の世界を離れ、チベットの人々を描こうと思ったのは、「私自身は仏教徒ではないが、宗教には関心があり、初めてチベット人の巡礼を見て以来彼らのモチベーションを理解したいと考えていたから」だそうです。確かに本作を見ていても、巡礼の行程に数ヶ月かけるチベットの人々の時間の流れは、どこか我々と違うと思わざるを得ません。その背景にある信仰心と、実に柔軟なものの考え方を、チャン・ヤン監督は解き明かしてみたいと思ったのでしょう。以前から何度もチベットに通ってドキュメンタリー映画も撮っていたそうで、長年の思いが結実したのが本作なのでした。


そのチャン・ヤン監督の思いを後押しするように、彼が思い描いていた登場人物たちにどんぴしゃりの人々が、プラ村で次ぎ次ぎと見つかります。各地をロケハンで巡り歩いたあとのこの奇跡的な出会いは、ぜひパンフレットの監督自身の言葉で読んでみて下さい。観客側としては、最初、幼いタツォちゃん(上の写真)といつもマニ車を回している年寄りのヤンペル以外はなかなか人物の区別がつかなかったのですが、やがてみんなが身内のように思えてきて、途中で誕生したツェリンとセパの息子テンジン・テンダルがトラクターの上でゴキゲンでいる姿など見ると、思わずあやしたくなってしまいます。テンジン君の日々の成長の姿は、映像の中に日時が凝縮されていることを感じさせてくれ、チャン・ヤン監督上手な人物構成とキャスティングにうならされてしまいます。


ラサからカイラス山に向かう行程は、村とラサ間の巡礼行程に比べて、あまり緻密に描かれていないのが残念に思えるほど、この巡礼物語は我々の心をつかみます。五体投地は肉体的には相当の苦行なのですが、ドキュメンタリー映画ではないため、監督の演出に従ってそれを何度も繰り返し、1日1㎞しか進めない日もあったとか。約9ヶ月に及ぶ粘り強い撮影とチベットの人たちの真摯な演技とが、本作の中で静かな化学反応を起こして、観客の心をつかんでしまうようです。それに加え、チャン・ヤン監督が配したエピソードの数々も心憎いばかりに印象的で、観客もいつの間にか彼らと一緒に旅をして、思い出を積み重ねているような感じがしてきます。どのエピソードにもチベットの人たちの心優しさが光っていて、パンフレットの中で東京外大AA研の星泉先生が書いておられる、「他者の幸せを祈る旅」という言葉が大いに納得できるのでした。


前々から思っていたのですが、現在のアジア映画で至高の作品を生み出しているのはチベット語映画では、という気がします。このブログでも、ペマ・ツェテン監督の『オールド・ドッグ』(2011/こちら)や『タルロ』(2015/こちら)、ソンタルジャ監督の『河』(2015/こちら。あら、コピペしたポスターが消えていますね)などをご紹介してきましたが、いずれも人間の存在にまっすぐに切り込む作品、という思いが強くする作品群です。『ラサへの歩き方~祈りの2400㎞』もこれらチベット語映画に通じるものがあり、見る者の心を深く動かしてくれます。なお、本作の公開に合わせて、ペマ・ツェテン監督の『静かなるマニ石』(2005)が明日、7月7日(木)19:00~、そしてソンタルジャ監督の『陽に灼けた道』が7月14日(木)19:00~、いずれも上映されます。詳しくはこちらをどうぞ。

最後に、『ラサへの歩き方~祈りの2400㎞』の予告編を付けておきますね。ぜひ、大きな画面でご覧になって下さい。

 映画『ラサへの歩き方~祈りの2400km』予告編


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