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『クイーン』10月21日(土)より公開!

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早耳&早ツイッターの方はすでにご存じかと思いますが、インド映画『クイーン』が10月21日(土)より、横浜のシネマ・ジャック&ベティで公開されます。シネマ・ジャック&ベティにはcinetamaもひとかたならぬお世話になっており、副支配人にお願いして画像等をご提供いただいて、『クイーン』公開宣伝に一役買わせていただくことにしました。まずは、作品データをどうぞ。

『クイーン』
2014 年/インド/ヒンディー語・英語/146 分/原題:Queen
 監督:ヴィカース・バフル
 出演:カングナー・ラーナーウト、ラージクマール・ラーオ、リサ・ヘイドン
 (人名のカタカナ表記はcinetamaによるものです)
 配給:ココロヲ・動かす・映画社〇
※10月21日(土)より、横浜シネマ・ジャック&ベティにて公開。

 

© Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

実は、上のデータに「人名のカタカナ表記はcinetamaによるものです」と書いたように、配給会社による様々な公開準備が遅れに遅れていまして、公式サイトの開設や日本版予告編アップもまだできていません。普通、公開前にはマスコミ試写を2~3ヶ月にわたってやるのですが、それももちろんナシ。何もかも異例ずくめの公開なのですが、そんな扱いが気の毒なほど、『クイーン』は面白くて光る作品なのです。シネマ・ジャック&ベティのキャッチによると、「従来のインド映画のイメージを覆すスタイリッシュガールズムービー。貴重な上映をどうぞお見逃しなく!」とのことで、本当にインド映画に新風を吹き込んだフレッシュな作品です。ストーリーをざっとご紹介すると--。

主人公は、デリーに住む女の子ラーニー。”ラーニー”という単語はヒンディー語では女王、妃を表しますので、まさに”クイーン”なのですが、非常に保守的な家に育ち、デートするのにも弟をお供に連れていく、という超コンサバ女子です。でも、ヴィジャイ(ラージクマール・ラーオ)に見初められ、彼との結婚も本決まりになって、あとは数日後の結婚式を待つばかりの今は、ラーニーもその家族も浮き立っています。そんな時、ヴィジャイがラーニーを呼び出し、何かと思って行ってみれば、告げられたのは何と「君とは結婚しないことにした」という一方的な婚約解消宣言! 打ちのめされたラーニーでしたが、心配する両親に「新婚旅行のチケットで、予定通りパリとアムステルダムに行ってくる」と告げ、ヨーロッパに傷心旅行に飛び立ちました。でも、パリでは目にするものがことごとく驚きの対象で、目を丸くしているラーニーにホテルのインド系メイド、ヴィジャヤラクシュミー(リサ・ヘイドン)は、様々なことを教えてくれます。次のアムスでは、ホテルの部屋を3人の若者とシェアせざるを得ない状況になったものの、フランス人のティム、ロシア人のアレキサンダー、そして日本人のタカ(ジェフリー・ホー)というこの陽気な3人組のおかげで、滞在は一層楽しいものになりました。そんな時、ラーニーがヨーロッパでハジけているのを知ったヴィジャイは、突然彼女のことが惜しくなったのか、連絡を取ってきます....。

Queen | Official Trailer | Kangana Ranaut | Full HD | 7th Mar, 2014

インド版予告編があまりいい出来ではなくて残念なのですが、上に付けておきました。インド映画ファンだけでなく、すべての映画ファンに見てもらいたい、すっとんきょうなラーニーの冒険。でも、見終わったあとは胸がポッと暖かくなり、人間が自立するとはどういうことかをしみじみと考えさせてくれます。こんな素敵な映画が、映画好きの集まる開放的な映画館、横浜シネマ・ジャック&ベティでお披露目されるのも何だかふさわしいと思えてきてしまうのですが、先に書いたような事情から、配給会社の宣伝力はまず皆無と考えなくてはいけない厳しい状況です。インド映画ファンの皆様、ぜひこの映画の宣伝にご協力下さい。チラシは10月1日に出来てくるそうなので、私も100枚ぐらいいただいて、あちこちで配ろうと思っています。こちらからシネマ・ジャック&ベティに連絡ができますので、どこでチラシがゲットできるのか聞いてみて下さいね。

なお、字幕は藤井美佳さんの素晴らしい字幕が付いているはず(私も、まだ見ていないのです...)です。それもぜひ、お楽しみに! とりあえずの第一報でした。



<2017東京×沖縄中国映画週間>

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東京国際映画祭(TIFF)の関連企画<中国映画週間>が今年も開催されます。オススメ作品が2本あるのでご紹介したいのですが、ちょっと手抜きでチラシ画像の貼り付け方式採用。公式サイトはこちらです。

オススメ作品は、この夏休みに見て「すご~い!」と思った『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー[戦狼Ⅱ]』と、「おもしろ~い!」と思った『ナーガの真珠[鮫珠伝]』。呉京(ウー・ジン)の監督・主演作『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』のご紹介はこちら、イチオシ男優王大陸(ダレン・ワン)主演『ナーガの真珠』のご紹介はこちらです。ほかにも、劉徳華(アンディ・ラウ)主演作が2本に、鄧超(ダン・チャオ)、黄渤(ホアン・ボー)、黄軒(ホアン・シュアン)、胡軍(フー・ジュン)主演作などなど、期待が膨らむ作品が目白押し。こちらもぜひお楽しみに。


 

<コリアン・シネマ・ウィーク2017>

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昨日の<中国映画週間>に続き、やはりTIFF関連企画の<コリアン・シネマ・ウィーク2017>も開催されます。こちらは韓国文化院の主催で、韓国文化院のホールでの上映となるため、事前に申し込めば無料で見られるのが嬉しいですね。詳しくは韓国文化院HPでご覧いただければと思いますが、チラシ画像の貼り付けと、作品の簡単なご紹介をしておきます。

[上映作品] 

『 灰の花』 
 2016年/126分/原題:재꽃/日本初上映
 監督:パク・ソギョン
 出演:チョン・ハダム、チャン・ヘグム ほか

영화 '재꽃' 메인 예고편




『トンネル 闇に鎖された男』
 2016年/127分/原題:터널
 監督:キム・ソンフン
 出演:ハ・ジョンウ、ペ・ドゥナ ほか
※チラシのストーリーにもあるように、トンネルの崩落事故でがれきに埋まる車の中に閉じ込められた男の手元にあるのは、「バッテリー残量78%の携帯電話とミネラルウォーター2本、そして娘への誕生日ケーキだけ」。ここからの展開が意外性もあって、面白い作品になっています。ペ・ドゥナの奥さん役はちょっともったいない感じの使われ方ですが、ほかにも救出隊のリーダー役でオ・ダルスが出演するなど、主役のハ・ジョンウ始め皆さん熱演です。

ハ・ジョンウ×ペ・ドゥナ/映画『トンネル 闇に鎖された男』予告編

 

『歩く女王』
 2016年/93分/原題: 걷기왕/日本初上映
 監督:ペク・スンファ
 出演:シム・ウンギョン、パク・ジュヒ ほか
※現在、活躍の場を日本に移そうとしているシム・ウンギョンの主演作。

걷기왕 (Queen of Walking, 2016) 메인 예고편 (Main Trailer)  

 

『LUCK-KEY/ラッキー』
 2016年/112分/原題: 럭키
 監督:イ・ゲビョク
 出演:ユ・ヘジン、イ・ジュン ほか
※日本映画『鍵泥棒のメソッド』の翻案で、ユ・ヘジンの快演&怪演が見もの。『共助』といい、すっかり主役の似合う俳優になりましたね。

8/19公開!『LUCK-KEY/ラッキー』 予告篇

 

『グッバイ・シングル』
 2016年/120分/原題:굿바이 싱글/日本初上映
 監督:キム・テゴン
 出演:キム・ヘス、マ・ドンソク ほか

굿바이싱글 (김혜수, 마동석, 김현수) GOODBYE SINGLE

※予告編が見つからず、ちょっと長めの紹介映像ですが付けておきます。

ご予定がお決まりの方は、早速観覧お申し込みをこちらの「応募」からからどうぞ。非会員の方は、まず会員登録が必要です。


『バーフバリ 王の凱旋』<特報映像>がアップ!

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「バーフバリ! バーフバリ!」の声に乗って12月29日から公開される『バーフバリ 王の凱旋』ですが、今作の合い言葉は「王を称えよ!」です。キャッチコピーは何と「宇宙最強の愛と復讐」となっており、「宇宙最強のアクション俳優」と呼ばれるドニー・イェンもびっくり!の超強力宣伝が繰り広げられようとしています。まずは本日より、特報映像が解禁になりました。

「バーフバリ 王の凱旋」特報

『バーフバリ 王の凱旋』は、8割方が今は亡きアマレンドラ・バーフバリ(プラバース)のお話となるのですが、彼が旅先で王国の姫デーヴァセーナ(アヌシュカ・シェッティ)と出会ってからは、文字通り「宇宙最強の愛」が展開します。もう少し正確に言うと、「宇宙最強の男と宇宙最強の女の宇宙最強の愛」とでも言えばいいでしょうか。とにかくアマレンドラ・バーフバリの強さは、皆さんも前作『バーフバリ 伝説誕生』でとくとご覧になったと思いますが、デーヴァセーナ姫もハンパでなく強いのです。さらに外敵との戦いの合間に、王国に味方して戦ってくれるバーフバリから”同時に複数の矢を射るテクニック”を教えてもらい、文字通り「宇宙最強の女」となってしまうのですから、時としてアマレンドラ・バーフバリが尻に敷かれているように見えても仕方ありませんね。

 © ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

それにしても、『バーフバリ 伝説誕生』でシヴドゥことマヘンドラ・バーフバリ(プラバース二役)が恋に落ちるのは女戦士のアヴァンティカ(タマンナー)ですし、バーフバリ父子はよほど強い女性がお好きなんですね。というか、これはS.S.ラージャマウリ監督の女性観がよく出ているところで、英雄が惚れるのは自立した強い女性である、という、ジェンダー問題なんか蹴っ飛ばす法則が痛快です。また物語の要的存在のシヴァガミ妃(ラムヤ・クリシュナ)もそれこそ「宇宙最強の国母」であるなど、主要女性キャラクターが強さと美貌と魅力を兼ね備えた存在なのも、『バーフバリ』シリーズが大ヒットした要因かも知れません。

「宇宙最強の復讐」の方は、またおいおいにご紹介していきますのでお楽しみに。最後になりましたが、作品データと宣伝会社から付与されたストーリーを付けておきます。公式サイトもいよいよ本格始動し始めましたが、すでに公開劇場は全国で決まってきており、公式サイトを見ると、12月29日(金)には全国20カ所のスクリーンに「王を称えよ!」の文字が躍ることになるようです。12月29日は、大掃除も餅つきもほっぽらかして、我らがマヒシュマティ王国へとすっ飛んでいきましょう!

 

『バーフバリ 王の凱旋』  公式サイト 
(2017/インド/テルグ語//原題:Baahubali 2 - The Conclusion)
 監督:S.S.ラージャマウリ
 主演:プラバース、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、サティヤラージ、ラムヤ・クリシュナ、タマンナー、ナーサル
 配給:ツイン
※12月29日(金)より新宿ピカデリー、丸の内TOEIほか全国順次ロードショー

【物語】遥か遠い昔、インドに栄えたマヒシュマティ王国。自らが伝説の英雄バーフバリの息子であることを知ったシヴドゥは、父の家臣カッタッパから、ある裏切りによって命を絶たれ、王座を奪われた父の悲劇を聞かされる…。 カーラケーヤとの戦争に勝利を収め、国母シヴァガミから王位継承を託されたアマレンドラ・バーフバリは、自ら治めることになる国を視察するために、信頼する忠臣カッタッパと共に身分を隠し、旅に出る。その旅でバーフバリはクンタナ王国の王の妹デーヴァセーナと恋に落ちるが、王位継承争いに敗れたバラーラデーヴァは、バーフバリとデーヴァセーナの仲を裂き、バーフバリを王座から引き降ろすべく邪悪な策略を巡らしていた。やがて、王位を奪ったバラーラデーヴァはバーフバリと生まれたばかりのその息子の命をも亡きものにしようとする…。父バーフバリはなぜ殺害されなければならなかったのか? 母デーヴァセーナはなぜ25年もの間、鎖に繋がれていたのか? すべてを知ったシヴドゥはマヘンドラ・バーフバリを名乗り、暴君と化したバラーラデーヴァに戦いを挑む!

<追記:マスコミ関係者の皆様へ>宣伝担当はエデン、パブリシティお問い合わせ先は祭屋です。試写が間もなく始まりますので、ぜひご覧になって下さい。


第18回東京フィルメックス:上映作品ラインアップ発表

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映画祭シーズンの後半を担う、東京フィルメックスのラインアップが発表となりました。今年は第18回となる東京フィルメックス、今回も魅力的な作品が揃っている気配が濃厚です。ここに一応、コンペ作品と特別招待作品をアップしましたが、すでに公式サイトにはもっと詳しい紹介が出ていますので、ご興味のある作品はぜひ公式サイトをチェックしてみて下さいね。上映スケジュールもすでに出ていて、この記事の最後にリンクが付けてあります。

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第18回東京フィルメックス  公式サイト

 期間:11月18日(土)~11月26日(日)
 場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇 にて  

<コンペティション部門>
 日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作 

『馬を放つ』
 2017/キルギスタン、フランス、ドイツ、オランダ、日本/89 分/原題:Centaur
 監督:アクタン・ アリム・クバト (Aktan ARYM KUBAT)
 配給:ビターズ・エンド 

『見えるもの、見えざるもの』
 2017/インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール/86 分/原題:The Seen and Unseen
 監督:カミラ・アンディニ (Kamila ANDINI)


『殺人者マルリナ』
 2017/インドネシア、フランス、マレーシア、タイ/95 分/原題:Marlina the Murderer in Four Acts
 監督:モーリー・スリヤ (Mouly SURYA)


『暗きは夜』
 2017/フィリピン/107 分/原題:Dark is the Night
 監督:アドルフォ・アリックスJr (Adolfo ALIX Jr.)

 

『ジョニーは行方不明』★
 2017/台湾/ 105 分/原題:強尼・凱克/英語題:Missing Johnny
 監督:ホァン・シー (黄熙/HUANG Xi)

 

『とんぼの眼』★
 2017/中国/82 分/原題:蜻蛉之眼/英語題:Dragonfly Eyes
 監督:シュー・ビン (XU Bing)

 

『シャーマンの村』
 2017/中国/109 分/原題:跳大神/英語題:Immortals in the Village
 監督:ユー・グァンイー (YU Guangyi)

 

『氷の下』
 2017/中国/126 分/原題:氷之下/英語題:The Conformist
 監督:ツァイ・シャンジュン (CAI Shangjun)

 

『泳ぎすぎた夜』
 2017/日本、フランス/79 分/英語題:The Night I Swam
 監督:五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル (IGARASHI Kohei, Damien MANIVEL)
 配給:コピアポア・フィルム、NOBO

 

©2017 MLD Films / NOBO LLC / SHELLAC SUD

<特別招待作品>
※オープニング作品
『相愛相親(そうあいそうしん)』
 2017/中国、台湾/120 分/原題: 相愛相親/英語題:Love Education
 監督:シルヴィア・チャン (張艾嘉/Sylvia CHANG)

 

※クロージング作品
『24 フレーム』
 2016/イラン、フランス/114 分/英語題:24 Frames 
 監督:アッバス・キアロスタミ (Abbas KIAROSTAMI)

 

『時はどこへ?』
 2017/ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ、中国/111 分/原題:Where Has Time Gone?
 監督:ウォルター・サレス、アレクセイ・フェドルチェンコ、マドゥル・バンダルカル、 ジャーミル・X・T・クベカ、ジャ・ジャンクー (Walter SALLES, Aleksey FEDORCHENKO, Madhur BHANDARKAR, Jahmil X.T. QUBEKA, 賈樟柯/JIA Zhang-ke)

 

※画像はのちほど、どの監督作のものかキャプションを付けたいと思います。珍しくインドから、マドゥル・バンダルカル監督(『Page 3(ゴシップ・ページ)』2005、『Fashion』2008など)作品が登場していますね。来日するなら、ぜひインタビューしたいです。

『サムイの歌』
 2017/タイ、ドイツ、ノルウェー/108 分/原題:Mai Mee Samui Samrab Ter/英語題:Samui Song
 監督: ペンエーグ・ラッタナルアーン (Pen-Ek RATANARUANG)

 

『天使は白をまとう』
 2017/中国/107 分/原題:嘉年華/英語題:Angels Wear White
 監督:ヴィヴィアン・チュウ (Vivian QU)

 

『ファンさん』
 2017/香港、フランス、ドイツ/87 分/原題:方绣英/英語題:Mrs. Fang
 監督:ワン・ビン (王兵/WANG Bing)

 

『ニッポン国 VS 泉南石綿村』
 2017/日本/215 分/英語題:Sennan Asbestos Disaster
 監督:原一男 (HARA Kazuo)
 製作・配給:疾走プロダクション 配給協力:太秦

 

©疾走プロダクション

『東京ヴァンパイアホテル 映画版』
 2017/日本/142 分/英語題:TOKYO VAMPIRE HOTEL
 監督:園子温 (SONO Sion)
 製作:日活

(C)2017 NIKKATSU 

<特別招待作品:フィルメックス・クラシック> 

『モアナ(サウンド版)』
 1926, 1980/アメリカ/98 分/原題:Moana with Sound
 監督:ロバート・J・フラハティ、フランシ ス・H・フラハティ、モニカ・フラハティ (Robert J. FLAHERTY, Frances Hubbard FLAHERTY, Monica FLAHERTY)
 配給: グループ現代

 

2014 Bruce Posner-Sami van Ingen. Moana © 1980 Monica Flaherty-Sami van Ingen. Moana © ℗1926 Famous Players-Laski Corp. Renewed 1953 Paramount Pictures Corp.

『山中傳奇(さんちゅうでんき)』
 1979/台湾/191 分/原題: 山中傳奇/英語題:Legend of the Mountain
 監督:キン・フー (胡金銓/King HU)

 


<特集上映:ジャック・ターナー> (すみません、画像は省略しました)

『私はゾンビと歩いた!』
 1943/アメリカ/68分/原題:I walked with a Zombie /Vandou 

『夕暮れのとき』
 1956年/アメリカ/80分/原題:Nightfall / アメリカ / 1956年 / 80分

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上映スケジュールはこちらで、チケットは11月3日(金)より発売です。昨年は審査員をさせていただいて、とても貴重なフィルメックス体験となりましたが、見た作品やQ&Aを詳しくご紹介できなかったのが残念でした。映画祭終了後、こんな形でコンペ作品をいくつかご紹介をしたものの、監督のナマの言葉をお伝えしたかったです~。今年は、がんばらなくちゃ、ですね。では、アジア映画好きの皆様、11月は有楽町で会いましょう!


歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」

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歌舞伎座で、「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」を見てきました。大変な力作で、午前11時の開演から終演の午後3時40分まで、3回計約1時間の休憩は挟まったものの、上演時間約3時間半という超大作です。構成が実にうまくできていて、ちょっと記録しておきたい作品なので、簡単な場面構成を歌舞伎座で買ったプログラムを元に書いておきます。これからご覧になる方もいらっしゃると思うので、メモ書き程度にとどめておきますが、感想も盛り込んでみました。場面写真がないので、チラシ等適当な写真を入れ込みますが、お許し下さい。

 

芸術祭十月大歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」


<チラシ裏面にあった人物相関図>

 

●序幕 第一場 神々の場所

幕が開いて、最初に登場するのは神々しい衣裳をまとった神々です。上段に並ぶのが中心となる神々で、梵天(ブラフマー/尾上松也)、那羅延天(ヴィシュヌ←ナーラーヤナ/尾上菊五郎)、シヴァ神(尾上菊之助)、そして大黒天(マハーカーラ/坂東楽善)。争いの続く人間界を滅ぼそうかどうしようかと相談をしている最中に、下手(しもて)の花道から真っ赤な顔の太陽神(スーリヤ/市川左團次)が現れます。また、上手(かみて)の花道からは雷太鼓を背負った帝釈天(インドラ/中村雁治郎)が現れ、議論沸騰。結論としては、象の国の汲手(クンティー)姫と太陽神がまず交わり、生まれた子が争いを止める、それがうまく行かない時は、帝釈天と汲手姫が交わって子を成すことにする、という結論になります。
神々の衣裳は、明らかにインド古典舞踊カタカリの衣裳を模したもので、ぶわっと広がるスカートや、あれこれ付けられた飾りが豪華。生地が金&銀色のため、豪華絢爛そのものです。神々の後背もそれぞれに形が違い、この場面だけで歌舞伎の衣装制作能力にひれ伏したくなりました。菊五郎・菊之助父子や松也の声はよく通り、1階席かなり後方だったのですが、セリフもたっぷり楽しめました。 

●序幕 第二場 ガンジスの川岸

歌舞伎のお姫様姿の汲手(クンティー)姫(中村梅枝/中村時蔵のダブルキャスト)が登場します。舞台中央は滔々と流れるガンジス川。現れた太陽神と契った汲手姫ですが、結局生まれた子を箱に入れて、ガンジス川に流してしまいます。その時、赤ん坊の耳には大きな耳飾りが付けられていました。
この場面で音楽に気がついたのですが、上手の音楽ボックス(客席からも演奏者が見えるので、黒御簾とは呼べないですよね...)ではガムランの楽器が演奏され、またその上段の黒御簾内の三味線は、明らかにインド音楽のラーガ(どのラーガかまでは不明)を奏でていました。ガムランはこの後も、終幕に至るまで印象的に使われていましたが、それ以外にもコンガのような西洋打楽器も登場、すごく雰囲気に合っていました。インドネシアのワヤン等でも「マハーバーラタ」は主要演目なので、そんな所からのガムラン音楽の採用だったのでしょうか。 

●序幕 第三場 加楼奈(カルナ)の家

加楼奈の育ての親である、御者の家の場面。成長した加楼奈(尾上菊之助/二役)が暴れ馬を止めるくだりがあるのですが、馬の足さんお二人が名演技でした。馬の退場時に拍手も出ていたほどです。最後、加楼奈は家を出て弓の修業に赴きますが、この場面の扮装等は、まさに日本の室町時代か安土桃山時代。 

●序幕 第四場 五王子の宮殿

象の国のシーンで、汲手(クンティー)姫はこの国の妃となっています。ところが、今は亡き王は女性と交わると死ぬという呪いをかけられていたため、汲手姫は3人の神と契って、百合守良(ユディシュティラ)王子(坂東彦三郎)、風韋摩(ビーマ)王子(坂東亀蔵)、阿龍樹羅(アルジュナ)王子(尾上松也/二役)を生み、またもう1人の妃(マードリーなのですが、登場しません)は双子の納倉(ナクラ)王子(中村萬太郎)と沙羽出葉(サハデーヴァ)王子(中村種之助)を生んだのでした。
この5人の王子のそろい踏みが、「こうと決めたら一直線」などと自分の性格を紹介していってまるで白波五人男みたいで面白く、衣裳もぞれぞれに考えてあって目を奪われました。風韋摩王子の赤シャツが、緑の衣裳とのコントラストで素敵だったので、ぜひブロマイドかポスカにして売り出してほしいです。
この場には王子たちの教育係である久理修那(クリシュナ)仙人(尾上菊五郎/二役)もいたのですが、そこへ、王子たちにとっては従姉妹にあたる 鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)王女(中村七之助)が弟の道不奢早無(ドゥフシャーサナ)王子(片岡亀蔵)と共にやってきます。ドゥルヨーダナは、原典ではカウラヴァ百王子の長子なので男なのですが、それを女性に転じたのはまさに「アイディア!」。七之助が臈長けた女人を演じていて、その口跡の良さと共に存在感を発揮していました。 

●序幕 第五場 修験者の庵

加楼奈(カルナ)の修業の師である修験者とのやり取りと、その後に出会う行者とのくだり。呪いをかけられたり、誤って牛を殺してしまったりと、さんざんな目に遭って落ち込む加楼奈の前に、太陽神が現れて父親であることを告げ、2人の対話が続きます。ちょっと退屈で、再演の時はもう少し簡潔にしていただきたいと思ってしまった場でした。 

●序幕 第六場 競技場

武芸比べの場に加楼奈(カルナ)が出場するものの、阿龍樹羅(アルジュナ)が「王族でないものは出場できない」と加楼奈を拒否、それを鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)姫が自分の権限で王族の身分にして助ける、という有名な場面です。この恩義によって、加楼奈は鶴妖朶を終生の友として大切にする、という設定になっています。加楼奈と阿龍樹羅の弓比べのシーンは、なかなかに工夫がしてあって見応えがありました。 

●序幕 第七場 祭の町の別邸

賑やかな祭のシーンで、人々の踊りが登場します。木の枝を持ったりと、まるでインドのスティック・ダンスを模したような踊りでしたが、よく考えると日本舞踊にもありますね、こういう踊り。そのあと王子たちも踊るのですが、手がなんとなくインド舞踊のムドラー風。この場面は、例の「ラックの家の火災」のシーンで、五王子が鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)姫に焼き殺されようとする、という場面です。火事の表現もダイナミックで迫力十分。五王子を助けようとする加楼奈(カルナ)を鶴妖朶姫が止め、「あわれ五王子は炎の中...」で幕間の休憩となります。

 

30分の幕間は昼食タイム。皆さん、地階や歌舞伎座内の売店でお弁当を買って、座席で召し上がります。「マハーバーラタ戦記弁当」(タンドーリ-・チキン入り)は1,800円。ほかにも何種類かお弁当が売られていました。

 

持ち込みも可なので、私は自家製ピラフとカレー2種を詰めた、「マハーバーラタ弁当」を作って持って行きました。カレーは、ポテトのカレーとキャベツのカレーで、本日はヴェジ仕様です。昔買ったテレビドラマ「マハーバーラタ」のビデオから写真をコピーし、明太子の入っていた容器に貼り付けてみました。おサイフにやさしいお弁当です(笑)。

 

●二幕目 第一場 パンチャーラ国

パンチャーラ国の弗機美(ドラウパディー)姫(中村児太郎)の婿選びの場面です。婿候補はみんな仮面をつけて座っているのですが、俄(にわか)の目かづらみたいで滑稽味が醸し出されます。そこへ、弗機美姫が象に乗って登場。この象さんも馬の足方式で、登場した時は会場が沸きました。まるで、ジャイプルのアンバー城みたいなパンチャーラ国城です。
この婿選びは、原典の弓を使った力比べとは違い、姫の父親弗機(ドルパダ)王(市川團蔵)が候補者たちに質問をし、すべてに答えられた者を婿とする、というスタイルでした。親弗機王は少々粗忽な王様で、娘の弗機美姫にツッコまれたりして笑いを誘います。最初の回答者(市村橘太郎)がまた、ボケ具合が巧みで面白く、この場面では緊張がゆるみました。
最後に3人になった候補者は、仮面を取ってみると鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)姫と加楼奈(カルナ)、それに阿龍樹羅(アルジュナ)で、ここで阿龍樹羅たち五王子がどうやって火事から助かったかが明かされます。阿龍樹羅は自分たちを殺そうとしたのは鶴妖朶姫だと告発するのですが、加楼奈のとりなしで2人は去って行きます。で、阿龍樹羅と弗機美姫の結婚式となります。 

●二幕目 第二場 鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)王女の屋敷の庭

加楼奈(カルナ)の前に帝釈天が現れ、彼の生い立ちを明かして、阿龍樹羅(アルジュナ)と戦うよう進言します。鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)姫は先日のパンチャーラ国でのくやしさを忘れることができず、五王子を滅ぼそうと策を練ります。弟の道不奢早無(ドゥフシャーサナ)王子がサイコロの目を自在に出せる能力があるのを幸い、サイコロ賭博で五王子をハメることになりました。 

●二幕目 第三場 鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)の屋敷

招かれた五王子はサイコロ勝負を挑まれ、百合守良(ユディシュティラ)王子が受けて立ちますが、宝石から始まった賭けは最後には王国まで奪われてすってんてんに。ついには弟の四王子、五王子共通の妻となっている弗機美(ドラウパディー)姫まで賭けますが、結局負けてしまいます。このシーンでは、原典ではもっとあとに出てくる弗機美姫がサリーを引きむしられそうになるシーン(「あ~れ~、お代官様、ご無体な」てなシーンですね)が、サリーを着物と帯に変えて登場するのですが、ここの工夫も巧みで拍手パチパチ(でも、キーチャカ将軍ではなく、鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)姫がご無体をなさるのがちょっと変)。この敗北で、パーンダヴァの五王子は妻の弗機美姫と共に、12年間諸国をさすらい、さらに1年間身分を明かさずに巷で生きる事を約束させられ、追放の身となります。 

●二幕目 第四場 密林

諸国をさすらっている間のエピソードで、風韋摩(ビーマ)王子が森鬼飛(しきんび)と呼ばれる女羅刹と出会う場面です。森鬼飛の兄の羅刹森鬼獏(しきんば)は連獅子の赤毛獅子の姿で現れたと思うのですが、大サービスの構成でした。そういえば、女羅刹の格好は鷺娘に似ていたような....。 

●二幕目 第五場 ガンジス川のほとり

ガンジス川のほとりで祈る加楼奈(カルナ)の前に修行僧が現れるのですが、実はこれは...という場面。ここも2人のやり取り中心で、ちょっとだれました。加楼奈が戦いに赴く決心をする重要な場面なのですが....。 

ここで、二度目の休憩が入ります。20分でした。

 

●大詰 第一場 象の国の陣営

五王子追放から丸13年がたち、いよいよクルクシェートラを舞台に繰り広げられる合戦の幕開けです。正義は五王子軍にあり、という世間の声の中、鶴妖朶(ドゥルヨーダナ)姫は待っていた加楼奈(カルナ)が姿を現したことで、意を強くします。 

●大詰 第二場 開戦

戦が始まりますが、ここのアクションも結構迫力がありました。パーンダヴァの五王子軍の兵士は赤い帯を着け、対するカウラヴァは真っ黒な出で立ち。衣裳デザインがモダンで素敵です。 

●大詰 第三場 バガバッド・ギーター

戦いを躊躇する阿龍樹羅(アルジュナ)を久理修那(クリシュナ)が説得する場面。この場で久理修那が説く教えが、今もインドのヒンドゥー教徒たちの規範となっているのです。 

●大詰 第四場 加楼奈(カルナ)と汲手(クンティー)姫

阿龍樹羅(アルジュナ)の母であり、加楼奈(カルナ)の母でもある汲手(クンティー)姫が、戦わないよう加楼奈を説得する場面。結局母子の名乗りはナシのまま。 

(確か、ここでも10分ほどの休憩が入ったような...) 

●大詰 第五場 戦場

激しい戦いのあとの、最後の大団円。戦いのシーンが終わると場面は神々の座に移り、那羅延天、太陽神、帝釈天が登場。もう1人いた神様は多聞天(坂東彦三郎/二役)らしいです。さっきまで戦っていた加楼奈(カルナ)役の菊之助と阿龍樹羅(アルジュナ)役の松也も、それぞれシヴァ神と梵天に早変わりして加わり、「この世は滅ぼさず、しばらく人間に任せてみよう」で幕となりました。カーテンコールが1回ありました。

 

簡単にご紹介するはずが、ついつい長くなってしまいました。衣裳や装置なども素晴らしかったので、ぜひ「シネマ歌舞伎」化してほしいですね。今回の公演はまだ少しお席が残っているようなので、ご興味がおありの方はいらしてみて下さい。
そうそう、事前の情報収集では、「観劇しながら、端末を使って解説や見どころが聞けるイヤホンガイドが便利」というアドバイスがネットに上がっていたのでイヤホンガイドを借りたのですが、セリフを聞いたり音楽を楽しんだりするためにはかえって邪魔になることも。700円出して借りた方がいいかどうかは、ビミョーなところです。今回は、最初の5分ぐらい聞いてあとはずっとイヤホンガイドなしで楽しみました。筋を知っていた「マハーバーラタ」だったから、楽しめたのかも知れません。今回は、歌舞伎のすごさも十二分に味わえた、楽しい公演でした。


インド映画『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』の横顔

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横浜シネマ・ジャック&ベティでの『クイーン』上映、スケジュールはまだ出ないかな、と劇場サイトをチェックしてみたら、『クイーン』の公式サイトができていることを発見! やればできる、ココマルシアター、というか、ココロヲ/動かす・映画社〇さん。まだほとんど全部が工事中のようですが、クリックして開けられるのを楽しみにして待っています。

で、それまでの繋ぎに、ちょっとおせっかいながら出演者や監督のご紹介をば。そうそう、『クイーン』に副題があったことも、今回上映劇場の横浜シネマ・ジャック&ベティのサイトで知りました。チラシに書かれていた「旅立つわたしのハネムーン」はてっきりキャッチコピーだとばかり思っていました。すみません。なお、人名のカタカナ表記は、ジャック&ベティのサイトに倣いました。

<キャスト>

カンガナー(※)・ラーナーウト (下の写真はWikiより)

Kangana Ranaut is looking away from the camera

1986年3月23日(英語版Wikiによる。IMDbによると1987年3月20日)、ヒマーチャル・プラデーシュ州で誕生。父はビジネスマン、母は学校の教師で、大邸宅での大家族制の中で育ちました。チャンディーガルで教育を受け、両親に言われたとおり将来は医師になるべく勉強していましたが、12年生の時に方向転換。デリーに出て、モデルとしてキャリアをスタートさせます。その後俳優を目指し、舞台俳優を経て、2006年の『Gangster(ギャング)』で映画デビュー。後半は韓国を舞台にしたスタイリッシュなこのサスペンス映画は注目を集め、女優として順調なスタートを切ったのでした。その後も『Life in a Metro(大都会の生活)』(2007)、『Fashion(ファッション)』(2008)などに出演、主役ではなかったのですが、印象的な演技を見せて注目されました。R.マーダヴァンとの共演が彼女の持ち味を引き出してヒットした『Tanu Weds Manu(タヌはマヌと結婚する)』(2011)以降は主役級の女優として認められ、日本でも公開された『クリッシュ(Krrish 3)』(2013)や『クイーン』(2014)もヒットして、トップ女優の仲間入りを果たします。『Tanu Weds Manu Returns(続・タヌはマヌと結婚する)』(2015)など、ナチュラルな演技で見る人の心を奪う女優なのですが、正直に何でも言ってしまうせいかよくトラブルにも見舞われ、現在も『カイト(Kites)』(2009)や『クリッシュ』で共演したリティク・ローシャンとの間でゴタゴタが進行中です。

© Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

『クイーン』はカンガナー・ラーナーウトが最も輝いた作品と言えます。全然イマドキ女子ではなくて、顔はかわいいもののどっちかというとイケてない女の子ラーニー。結婚式の直前に婚約者から婚約破棄を通告され、泣いて取り乱すことしかできなかった彼女が、唯一勇気を出したのが「新婚旅行用に用意していたパスポートとチケットでヨーロッパ旅行に行くこと」。旅行中も素っ頓狂な言動が続いて、観客はハラハラし通しです。それが、ストーリーの進行に従ってどんどん彼女が好きになっていき、ラストは「ハグしたい!」と思わせてくれる我らが『クイーン』。ぜひ、日本語字幕で楽しんで下さいね。

なお、※印をした彼女の名前は、正しい発音は”カングナー”なんですが、本人がローマナイズで"Kangana Ranaut"と綴っているために、それに引きずられて、よほどヒンディー語を知っている人でないとつい”カンガナー”にしてしまいます。”サプナ-”(×サパナー)などと同じで、”カングナー”なんですけどね。こちらのトーク番組の6分半ぐらいの所で、本人が自分の命名のいきさつを語り、”カングナー”と発音しているのを聞くことができます。

 

ラージクマール・ラーオ (写真はWikiより)

Rajkummar Rao World Premiere Newton Zoopalast Berlinale 2017 02.jpg

1984年8月13日(31日? Wikiはデータと本文で誕生日が違っています)生まれ。ハリヤーナー州のアヒールワール出身で、デリー大学を卒業。その後、プネーにある国立映画&TV研究所で演技コースを修了。2010年に『Love, Sex Aur Dhokha(愛とセックスと裏切り)』で映画デビュー。『わが人生3つの失敗(Kai Po Che!)』(2013)で演技力が認められ、以後、アート系の作品を中心に多くの作品に出演しています。日本での映画祭上映作では、『わが人生3つの失敗』のほか、『血の抗争(Gangs of Wasseypur)』(2012)、『アリーガルの夜明け(Aligarh)』(2016)がありますが、2017年も『Newton(ニュートン)』で世界の映画祭から引っ張りだこ。日本では、この作品の映画祭上映がまったくないのは残念です。『クイーン』では情けない役ですが、彼の演技があったからこそ、カンガナー・ラーナーウトの輝きが増した、とも言えます。


リサ・ヘイドン (写真はWikiより)

Lisa Haydon at the 9th Annual Gemfields & Nazraana Retail Jeweller India Awards 2013.jpg

本名をエリザベス・マリー・ヘイドンという彼女は、1986年6月17日生まれ。チェンナイで誕生していますが、両親から受け継いだのがインド、スリランカ、オーストラリアの血。『クイーン』の初登場シーンでも素晴らしい肢体をご披露している彼女は、スーパーモデルとしてキャリアを積み、2010年から映画にも出演してるという人です。日本での映画祭上映作では『ハウスフル3(Housefull 3)』(2016)がありますが、こちらも美人3姉妹の1人として、美しくのびやかな容姿を見せてくれました。『クイーン』では、巴里に来たラーニーに次々とカルチャー・ショックを与える役回りですが、ハマり役と言え、パリでのシーンを豊かに彩ってくれます。


 

<スタッフ>

監督:ビカース・バール(正確には”ヴィカース・バヘル”/写真はWikiより)

Vikas Bahl.jpg 

監督だけでなく、原案も脚本も担当しているビカース・バール(どうも、発音と違うので書きにくいですね。「v」音が「b」音に変えられるのはマスコミやネットで時々あるのですが...)は1971年ニューデリー生まれ。私もよく行くラージパト・ナガルで成長し、デリー大のラームジャス・カレッジ(『マルガリータで乾杯を!』にも登場していましたね)を卒業後、MBAの資格を得るためムンバイへ。CF制作などを手がけるうち、アヌラーグ・カシャプらと2011年にファントム・フィルムズを設立します。それまでプロデューサー補として数年仕事をしてきた彼は、プロデューサーとして作品を送り出すかたわら、自身も2011年に『Chillar Party』で監督としてデビューしました。そして、監督第2作目の『クイーン』で大当たりを出した、という次第です。『クイーン』の制作陣には、どちらも有名監督であるアヌラーグ・カシャプとヴィクラマーディティヤ・モートワニーが加わり、音楽は彼らの作品や『マダム・イン・ニューヨーク』を担当したアミト・トリヴェーディーが作曲するなど、豪華なスタッフも『クイーン』のクオリティを高めたと言うことができます。そうそう、セリフ脚本にはカンガナー・ラーナーウトも加わっており、ラーニーの活き活きとしたセリフが生まれる原動力になったようです。

 

こんな、たくさんの楽しみが詰まっている『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』、いよいよ10月21日(土)より、横浜シネマ・ジャック&ベティで公開です!

 

公開イベント「Up & Down: ドキュメンタリー×中国×アート -王我監督を迎えて-」

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お知らせが遅くなってしまいましたが、明日、中国のドキュメンタリー映画に関する公開イベントがあります。

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 Up & Down: ドキュメンタリー×中国×アート

-王我監督を迎えて-

◼日時:10月13日(金)18:20開始 21:00終了予定
◼会場:立教大学 14号館2階D201番教室
    入場無料、申込不要、どなたでもご参加になれます。

◼プログラム:
 ・イントロダクション 王我×秋山珠子(立教大学)
 ・『Up & Down(上下)』(監督:王我/2007/12分/日本語・英語字幕)上映
 ・『映画のない映画祭』(監督:王我/2015/85分/日本語・英語字幕)上映
 ・トークセッション 王我監督×石坂健治さん(東京国際映画祭アジア部門ディレクター/日本映画大学教授/アジア映画研究会代表)×秋山珠子
◼共催:科学研究費挑戦的萌芽研究「カルチュラル・アサイラム―中国インディペンデント・ドキュメンタリーの生成と流通―」(研究代表者:秋山珠子、課題番号:15K12846)、アジア映画研究会
◼協力:山形国際ドキュメンタリー映画祭、東京大学 中国語映像翻訳ゼミ

◼開催趣旨:
 1990年、中国に初めて、国有メディアから離れ、個人が製作したインディペンデント・ドキュメンタリーが誕生しました。以来、中国インディペンデント・ドキュメンタリーは、常に現代アートとの密接なつながりを持ちながら、起伏に富んだ歴史を刻んでいます。中国初のインディペンデント・ドキュメンタリー『流浪北京』(呉文光/1990)は北京のボヘミアン・アーティストたちを捉え、2000年代に進んだデジタル化以降は多くのアーティストがドキュメンタリー製作に参入し、2006年には著名な美術評論家・栗憲庭(リ・シェンティン)が中国最大のアーティスト・コロニーである宋荘に中国初のインディペンデント映画基金を設立し、北京独立映像展が誕生しました。
 今回、お招きする王我(ワン・ウォ)監督は、数多くの監督やアーティストから指名が殺到するグラフィック・デザイナーであり、中国実験ドキュメンタリーのパイオニアとして知られています。氏による対照的な2本の作品—中国インディペンデント映画シーンのピークとその自由さを象徴する実験ドキュメンタリー『Up & Down』(2007)と、北京独立映像展が当局により中止に追い込まれた顛末を記録した『映画のない映画祭』(2015)—を上映し、トークセッションを行います。中国インディペンデント・ドキュメンタリーの起伏と、現代アートとの錯綜した関係を探求する貴重な機会となることでしょう。

●監督プロフィール
王我(Wang Wo)
 1967年河北省生まれ、2015年よりアメリカ在住。中央工芸美術学院でグラフィック・デザインを学び、清華大学にて美術デザイン修士号を取得。2004年から映画を撮り始め、独創的な実験ドキュメンタリー作品により国内外で注目される。主な作品に『Outside(外面)』(2005)、『Noise(热闹)』(2007)、『Up & Down(上下)』(2007)、『映画のない映画祭(没有电影的电影节)』(2015)など。グラフィック・デザイナーとして北京独立映画祭などのポスターを手がけ、そのシンプルかつ大胆な表現により、「中国で最高の映画ポスター・アーティスト」(栗憲庭)とも称えられる。艾未未(アイ・ウェイウェイ)、胡傑(フー・ジェ)など多くのアーティスト、映画監督とのコラボレーションがある。

●作品解説
『Up & Down(上下)』(王我/中国/2007/12分)
 王我作品を貫く、デザインとフォルムへの追求が凝縮された短編。複数のインディペンデント監督による、都市を描くオムニバスの1本として製作された本作のテーマは「北京」。冒頭、上下に分割された画面に映るのは、建国門から天安門広場へと至る、地上と地下の移動ショット。中国の中心である天安門広場に至ったのち、画面は左右に分割され、見慣れた風景は大胆かつユーモラスに再編集されていく。

『映画のない映画祭』(王我/中国/2015/85分)
 2006年から10回開催された北京独立映像展は、国内で公開されることのない中国インディペンデント映画の貴重な上映の場として、国内外の注目を集めていた。しかし当局からの規制は年々強化され、2014年ついに映像展は完全閉鎖を余儀なくされる。王我は中止に追い込まれた第11回北京独立映像展を、そこに居合わせた監督、アーティスト、スタッフ、観客らが撮影した雑多な素材とネット画面から再構成する。「開幕式」と「閉幕式」からなるシンプルな二部構成、エンドロールの大胆な使用法は、実験映画作家である王我の面目躍如である。


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台湾で『映画のない映画祭』が上映された時の予告編が出て来ましたので、貼り付けておきます。おお、王宏偉(ワン・ホンウェイ)もご出演ですね。

【第十屆台灣國際紀錄片影展】敬!華語獨立紀錄片|沒有電影的電影節 A Filmless Festival

先日山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映時に見た浦川とめさんが、10月10日付けのブログで紹介していたこの作品、日本語字幕で見られるのが楽しみです。

 


珍しいタイムスリップ作品『あなた、そこにいてくれますか』

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10月25日(水)からの東京国際映画祭に先駆けて、釜山国際映画祭が12日(木)から開幕となりました。こちらこちらで、華やかな開幕式の様子を垣間見ることができます。相変わらず勢いが衰えない韓国映画界ですが、このところヒット作が固め作品に偏っている気がします。つまり、男たちのガチ勝負、といった作品がヒットする傾向にあり、ラブロマンス作品がいまひとつ上位に上がってこないのです。2017年上半期の観客動員トップ3も、ユ・ヘジンとヒョンビンの『コンフィデンシャル/共助』、チョ・インソンとチョン・ウソンの『ザ・キング』、ハン・ソッキュとキム・レウォンの『プリズン』と、ヒロインはどこに行ったの?作品ばかり。そんな中で、やさしい手触りの作品に出会いました。明日から公開される『あなた、そこにいてくれますか』ですが、やさしい手触りの反面、タイムスリップものというSFタッチの側面もあり、なかなかに興味深い作品です。まずは、作品データからどうぞ。


(C)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

『あなた、そこにいてくれますか』 公式サイト

 2016年/韓国/111分/原題:당신, 거기 있어줄래요/英語題:Will You Be There?
 監督:ホン・ジヨン
 出演:キム・ユンソク、ビョン・ヨハン、チェ・ソジン、キム・サンホ
 配給:ギャガ・プラスGAGA

※10月14日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか他全国順次ロードショー

(C)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

物語は、2015年のカンボジアの平原から始まります。村でのボランティア医療活動を終え、韓国の医師チームがヘリで引き上げようとしているところです。医師ハン・スヒョン(キム・ユンソク)が最後にヘリに乗り込もうとしたところ、ある老人が病気の赤ん坊を抱えてやってきます。病人を無視できないスヒョンは結局1人で村に残り、赤ん坊を治療しました。赤ん坊が助かったことを知った老人は、御礼にとスヒョンに丸薬を10粒渡します。それは、過去に戻ることができる薬、とのことでした。

そんな丸薬など一笑に付したスヒョンでしたが、帰国途中何の気なしに1粒飲んでみると、深い眠りに落ちてしまい、気がついた時にはプサンジン駅の公衆電話ボックスにいました。今はもう駅としては廃止されてしまったプサンジン駅、そして携帯電話の時代には珍しい公衆電話ボックス...。その時、若い男(ビョン・ヨハン)が「大丈夫ですか?」と声を掛けてきてくれたのですが、その顔は何と30年前の自分の顔でした。1985年、研修医をしていたスヒョンは、ソウル大公園でイルカのショーに出ていたヨナ(チェ・ソジン)と恋人同士になり、ソウルまでよく通っていたのです。あの薬は、本当に過去に戻ることができる薬だったのか...。スヒョンは、過去に戻れるなら、ヨナのことでどうしてもやっておきたいことがありました。短時間で効果が切れる薬を再び服用し、1985年の自分の前に現れたスヒョンは、次々といろんなことを言い当て、若いスヒョンを驚かせます。スヒョンがそうまでして、ヨナのためにやりたかったこととは....。

(C)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

タイムスリップものはハリウッド映画を始めアジア映画でもいろいろ作られていますが、その鉄則は「現在の自分が過去、あるいは未来の自分と出会わないこと」。というわけで、出会うのは若き日の両親だったり、戦国時代の武将だったりするわけですね。ところが本作は、そのオキテを正面から破り、しかも何も知らなかった若き日のスヒョンにも事実を知らせてしまう、という、ある種の荒技を使っています。それによって、若き日のスヒョンが「この中年男が本当に未来の自分なのか?」と確かめる手法が見られたりもして、タイムスリップものとしては新鮮な感覚が味わえました。もちろん、オキテ破りをしたことによる矛盾や混乱も出て来てしまい、ストーリー運びが少々わかりにくかったりもするのですが、2015年のスヒョンであるキム・ユンソクと、1985年版のビョン・ヨハンとがうまく同じ雰囲気を醸し出していて、2人一役が見事に成功しています。

(C)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

そして、2人の間に存在するヨナ(チェ・ソジン)が、そのまま光と水の中に溶けていってしまいそうなはかなさと若い女性らしい暖かさを併せ持っていて、この不思議な物語を成立させることに貢献しています。ソン・ユナ(ソル・ギョングの奥さん)にちょっと似た、夢見るような瞳とほっそりした瓜実顔。笑顔は幼いのですが、スヒョンが過去に戻りたいと強く願うのも納得できる、不思議な魅力をたたえています。役のキャラクターではあるものの、こちらの胸に甘い感情を呼び込んでくれる、こんな女優さんは久しぶりにお目に掛かりました。女優キム・オクビンの妹で、1994年生まれとのこと。これから人気が出るかも知れませんね。

(C)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

原作は、2006年に発表されたフランスのギヨーム・ミュッソの小説「時空を超えて」で、日本語訳も出ています。脚本も担当したホン・ジヨンは、『キッチン~3人のレシピ~』(2009)で鮮烈なデビューを飾った女性監督ですが、『キッチン』や前作の『結婚前夜~マリッジ・ブルー~』(2013)とはまた違った新しい可能性を、本作では切り開いて見せてくれました。スヒョンだけでなく、親友の警官テホも1985年の青年版(アン・セハ/写真上)と2015年の中年版(キム・サンホ/写真下)を登場させるなど、少し策に溺れすぎたところもあるものの、1985年の時代を再現する手法などは細かく神経が行き届いていて、安心して見ていられます。

 

C)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

その、1980年代の象徴として登場するのが、キム・ヒョンシクという男性歌手で、彼の曲「あなたの姿」が劇中だけでなくエンドクレジットでも流れます。1980年代の韓国の男性歌手と言えば、我々が知っているのはチョー・ヨンピルやナ・フナ、あるいは『鯨とり-コレサニャン-』(1984)に出演したキム・スチョルあたりでしたが、キム・ヒョンシクは1990年、32歳の時に肝臓癌で亡くなった歌手とのことで、今の若者にはほとんど知られていない人だとか。時代性を出す曲として、あまり有名ではない「あなたの姿」が起用されたとのことですが、エンドクレジットで流れるのはキム・ヒョンシクのオリジナル盤ではなく、何とキム・ユンソクとビョン・ヨハンが歌っているヴァージョン。そのMVがありましたので、最後に付けておきます。素人っぽい歌声が、なかなかいいですね。

『あなた、そこにいてくれますか』テーマ曲「あなたの姿」特別MV

 

今年も様々に我々を楽しませてくれた韓国映画。試写のご案内をいただかなかったので詳しいご紹介はできませんが、11月10日(金)からはイ・ビョンホン、カン・ドンウォン主演の『マスター』(公式サイト)が、そして11月11日(土)からはソン・ガンホ主演の『密偵』(公式サイト)が封切られます。その前にこの作品、『あなた、そこにいてくれますか』を見て、ぜひ心を潤して下さいね。

映画祭の季節@ムンバイ~MAMI始まる

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韓国映画『あなた、そこにいてくれますか』の紹介でプサン国際映画祭に触れましたが、10月・11月はアジア各地で映画祭の季節です。インドでも、10月12日(木)から18日(水)まで、MAMI(Mumbai Academy of Moving Image)の主催する<Jio MAMI 19th Mumbai Film Festival with STAR>が開催中です。Jioはリライアンス傘下の会社で、STARは言わずと知れた衛星放送テレビ局ですね。通称<MAMI(マミー)>で知られたこの映画祭は、1997年から開催されてきた、地方映画祭としては老舗です。

Here’s the official poster of Aanand L Rai & Anurag kashyap’s Mukkabaaz!

オープニング作品はアヌラーグ・カシャプ監督の『Mukkabaaz (ムッカーバーズ/The Brawler/拳骨野郎)』で、上はそのポスターです。まだ予告編はできていないようで、スチール画像を使ったティーザーですが、下に付けておきます。先日見たIFFJの『アキラ』(2016)では悪徳デカとして登場、たっぷりと顔を拝ませてもらったアヌラーグ・カシャプ監督。俳優としてだけでなくて、監督としても精力的に仕事をしていますね。

Mukkabaaz Movie Official Trailer | Motion Teaser | Anurag Kashyap, Ft.Nucleya, Ravi Kishan | 10 NOV

映画祭のオープニングは、ムンバイのシティ中心部にある昔ながらの劇場リバティー・シネマで行われたとのことで、一度は閉館したリバティー、閉館4年後の昨年夏にまた甦ったのだとか。昔のままかどうか、次にムンバイに行った時映画を見に行ってみようと思います。下は閉館直後、2013年3月に撮ったリバティー・シネマの外観と内部です。

オープニングにはボリウッド映画界のスターやセレブがたくさん来場したようで、MAMIの映画祭は近年ぐっと派手になってきたみたいです。その来場者の中にカングナー・ラーナーウトもいて、大胆なドレスが人目を引き、インド版Yahoo!で取り上げられていました。『クイーン』のラーニーとは180度反対の、ファッショナブルなカングナーをご覧下さい。カメラのレンズ位置がちょっとセクハラ気味ですが、それを狙ったドレスだから仕方ないですね。

AWKWARD! Kangana Ranaut And Karan Johar Come Face To Face At Jio Mami Film Festival

上の動画、後半はカラン・ジョーハル監督のQ&Aで、「このリバティーは僕の監督第1作『何かが起きてる』を公開してくれたところなので、僕自身にも思い出深い場所だ」とか語っています。<Jio MAMI 19th Mumbai Film Festival with STAR>の公式サイトはこちらです。上映作品一覧はこちらで、インド映画の”Fiction(劇映画)”が多いものの、短編劇映画もたくさん上映されるため、3分の2ぐらいは短編映画となっています。インド映画のアート系作品をご覧になりたい方は、ぜひこの映画祭にどうぞ...とは書いてみたものの、チケットは上映館のPVRというシネコンチェーンに行くと手に入るのでしょうか。まだまだ手強いインドです...。


ヒューマントラストシネマ渋谷で只今『あなた、そこにいてくれますか』上映中

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ここのところ、インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)で通っているヒューマントラストシネマ渋谷。先日行った時に、韓国映画『あなた、そこにいてくれますか』(紹介記事はこちら)で若き日のハン・スヒョンを演じるピョン・ヨハンのパネルがあったので、ついインド映画そっちのけで見入ってしまいました。ピョン・ヨハン、今の素顔はこんななんだ~、と、映画の中との違いに思わずニヤニヤしてしまった次第です。


で、本日また行ってみたら、作品全体を紹介する大きなパネルが出現していました。まわりに貼られているのは、皆さんからのコメントです。上写真のパネルに続き、これも劇場さんの手作りなんでしょうね。こういうのを見ると、劇場さんの映画愛がひしひしと感じられて、ウルっときてしまいます。


さらに、その横には、素敵なドローイングのパネルが。特に左側の似顔絵が、各人雰囲気があっていいですね。プロの方なんでしょうか。


『あなた・そこにいてくれますか』はIFFJとハシゴもできますので、ぜひどうぞ。公式サイトはこちらです。

ところでIFFJ、本日見たのは『サルカール3』で、最後のどんでん返しが効いていました。シリーズ3作目のためあまり期待しないで見に行ったのですが、2005年の『Sarkar』、2008年の『Sarkar Raj』には及ばないものの、脚本もまずまずの出来で楽しめました。セリフに「サルカールの息子2人云々」という箇所があって、アビシェーク・バッチャンが演じた息子(今回は遺影で登場)以外にいたっけ? と帰ってWikiを見てみたら、そうでした、K.K.メーナン演じる長男がいたのでした。長男の名前はヴィシュヌ、次男の名前はシャンカル、そして『サルカール3』で登場してきたシャンカルの息子はシヴァージー(アミト・サード)と、な~るほどのネーミング。アミターブ・バッチャン、『サルカール』と比べると、年を取ったなあ、という感じがありありですが、もう75歳ですものね。今回も生き延びた、サルカールことスバーシュ・ナーグレー(字幕はなぜか”ナーガレー”になっていました)。ラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督、この先もシリーズを続けるのでしょうか...。

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『バーフバリ 王の凱旋』圧倒される怒濤の展開!

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『バーフバリ 伝説誕生』の続編、『バーフバリ 王の凱旋』を試写で見せていただきました。今回も前作に引き続き、インターナショナル版での上映です。1箇所、クリシュナ神を祭る歌のシーンがカットされているのはわかったのですが、ほかは前作同様非常にうまくつまんであり、むしろ密度がぐっと高くなった感があります。インターナショナル版を編集したのは、ハリウッド映画で『トランスポーター2』『グランド・イリュージョン』、最近では『キング・ホステージ』等の編集を担当したヴァンサン・タベロン。アクション・シーンはもちろんのこと、小ネタのギャグシーンもしっかり残してあって、クスッと笑わせてもらいました。


以前の記事であらすじを引用しましたが、『バーフバリ 王の凱旋』は巨大な「2」の数字とそれにかかる「Baahubali」の文字が出た後、ちょっと変わったデザインのタイトルバックで始まります。本編の幕開けには、悪魔払いの祭りの日、頭に火種を入れた容器を載せ、素足で森の寺院に参るシヴァガミ妃(ラムヤ・クリシュナ)が登場。この形で寺院を回れば願いが聞き届けられるというのですが、このシーンはラスト近くのシーンと呼応しているという、憎い幕開けです。そして、巨大な象が暴走してきてシヴァガミ妃に危険が迫ります。と、そこに姿を現したアマレンドラ・バーフバリ(プラバース)が巨大なガネーシャ像を乗せた山車で見事に象を静め、上のメイン・ビジュアルのシーンとなるのです。『バーフバリ 伝説誕生』のシヴァリンガ持ち上げシーンにも匹敵する強烈な導入部で、これだけでハートが持って行かれてしまいます。それに続くシーンも含めて、「Saahore Baahubali」というソングシーンとしてYouTubeにアップされているので、下に付けておきましょう。ここに、藤井美佳さんの格調高い歌詞訳がかぶさってくるのですから、マヒシュマティ王国の民と一緒に、花びらを画面のバーフバリに撒きたくなる人が続出するに違いありません。

Saahore Baahubali Full Video Song - Baahubali 2 Video Songs | Prabhas, Ramya Krishna

その後、バラーラデーヴァ(ラーナー・ダッグバーティ)に父ビッジャラデーヴァ(ナーサル)が悪巧みを吹き込む場面、やってきた衛士隊長カッタッパ(サティヤラージ)がそれを暗に諫めるシーン等々、どれを取っても目が離せないシーンばかり。さらに見所満載なのが、シヴァガミ妃から命じられてカッタッパと共に国内や隣国を視察していくアマレンドラ・バーフバリが、クンタラ王国に赴いたシーンです。クンタラ国王の妹で、美しい王女デーヴァセーナ(アヌシュカ・シェッティ)との意表を突く出会いや、数々の駆け引きに加え、デーヴァセーナの従兄で初登場のクマーラ・ヴァルマ(スッバラージュ)が誘う笑いのシーンなどもあり、硬軟取り混ぜてのお楽しみシーンが次々と出て来ます。さらにアクションシーンが文句なく素晴らしく、盗賊(なんですね。あまりに数が多いので、他国の軍かと思いました)が城を襲撃した時の「二人弓3連射」シーンなどは優雅なペアダンスを見ているようでした。

© ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

デーヴァセーナ姫を連れてアマレンドラ・バーフバリが自国の王宮に帰った中盤以降も、状況がめまぐるしく変わり、だれることなくクライマックスまで突っ走ります。見終わってみると、暴走機関車に轢かれた気分がするぐらい、物語の怒濤の展開に圧倒されていました。「バーフバリ中毒」度は『バーフバリ 伝説誕生』を見た時よりも重症で、すぐまた2回目が見たくなります。あのアクションの細部はどうなっていたの? と思うシーンも多くて、アクションの組み立てをいちいち確認してみたい思いに駆られました。

© ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

今回のヒロインはデーヴァセーナで、アヴァンティカ(タマンナー)の出番が少ないのが残念ですが、女戦士姿で最後に登場し、エンドシーンでは女性らしいハーフ・サリー姿もちらっと写ります。あそこ、マヘンドラ・バーフバリとその妃として、もっとアップにしてくれてもよかったのになあ。タマンナー・ファンにはサービスとして、今夏シンガポールの地下鉄の駅で写したタマンナーのサリー姿広告写真を付けておきましょう。


で、今回のエンドロールには、BGMは最後までバッチリ付いているのかって? それがですね、今回は別の意味で衝撃のエンドロールなんですよ。これもインターナショナル版ゆえでしょうか。ぜひ、劇場で「えーっ!」を味わって下さいね。『バーフバリ 王の凱旋』は12月29日(金)からの公開です。公式サイトはこちら、暮れも正月も、大掃除も初詣も、「バーフバリ!」の前には敵ではないのじゃ! 

 

『クイーン』が明日からお目見えします!

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インド映画『クイーン』が明日10月21日(土)から、日本のスクリーンにお目見えします。これまで、こちらとかこちらでご紹介しましたが、少し書き足りなかったこともあるので、明日の初日を控えてもう一度登場してもらうことにしました。まずは、再度、データからご紹介します。

 

© Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

『クイーン』  公式サイト(すみません、いまだに工事中で何もアップされていません...)
 2014 年/インド/ヒンディー語・英語/146 分/原題:Queen
 監督:ヴィカース・バール
 出演:カンガナー・ラーナーウト、ラージクマール・ラーオ、リサ・ヘイドン
 配給:ココロヲ・動かす・映画社〇
※10月21日(土)~27日(金)、横浜シネマ・ジャック&ベティ(アクセス)にて公開。上映時間は連日15:15〜17:40。

(10月21日からオープンすると言われている配給会社直営館@吉祥寺でも上映、と発表されているのですが、ご紹介して万一実施されないとご迷惑をお掛けすることになるので、ご希望の方は「ココロヲ・動かす・映画館〇」で検索してお調べ下さい)

『クイーン』の見どころはこれまでいろいろとご紹介しましたが、実は我々日本人にとって見逃せない見どころがあるのです。それは、日本人キャラが登場すること。「タカ」という名前で、主人公のラーニー(カンガナー・ラーナーウト)がパリからアムステルダムに移動して宿泊する、ホステルで出会うことになります。ホステルなので、一部屋に二段ベッドが2つ入っていて、4人の相部屋なのですが、ラーニーがフロントで教えてもらった部屋に入るとすでに男性たちが部屋にいて、ラーニーはパニックに陥ってしまいます。その男性たちが、ロシア人のオレクサンダー(Mish Boyko/ミッシュ・ボイコ) 、アフリカ系フランス人のティム(Joseph Guitobh/ジョセフ・ギトブ?)、そして日本人のタカ(Jeffrey Ho/ジェフリー・ホー)というわけです。タカは日本人のステレオタイプ、小柄な青年となっていて、時折短い日本語を発します。上のチラシの真ん中、ラーニーのバックパックの所に顔が見えてるのがタカです。

© Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

タカを演じているジェフリー・ホーはマレーシア生まれの俳優で、本名はJeffrey Chee Eng Ho、マレーシア華人ですね。ロンドン・スクール・オブ・ドラマティックス(LSDA)で学び、以後ロンドンをベースに活躍している人です。日本語はまったくしゃべれないようで、劇中の日本語もぎこちなくて、我々日本人が聞くと「イタい」日本語になっています。ただ、キャラクターの背景として、東日本大震災の被災者、という設定がなされており、それがとても効いています。ラーニーがイヤミなイタリア人シェフに挑発され、フェアでインド料理の露店を出さなくてはならなくなった時も、ラーニーを助けて助手として活躍してくれますし、ホステル相部屋4人の中のムードメーカーでもあります。日本語の台詞回しを除けば、これまでのインド映画に登場した日本人としては最高にいい奴なのです。ジェフリー・ホーの演技、ぜひ楽しんで下さいね。

© Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

あともう1人、というか、もう1グループ、日本人が登場します。さて、どこでしょう? わかった方は、ぜひコメントをお寄せ下さい。こちらも、日本語が別の意味で「イタい」んですけどね。

明日は皆さんと横浜シネマ・ジャック&ベティでお目にかかれるのでは、と思いますが、一つだけお願いが。実はジャック&ベティ、上映ホールが「ジャック」と「ベティ」の2つあり、ロビーで繋がっているのですが、ロビーで声高におしゃべりすると両方のホール内にも響くのです。最初行った時、知らなくてシネコンとかのつもりで友人たちとしゃべっていたら、中からお客様がわざわざ出て来て、「静かにしてくれる? 中でよく聞こえるんだよ」とお叱りを受けました。というわけで、おしゃべりは小声でどうぞお願いします。そのかわり、と言っては何ですが、中に入っての上映時には、大いに笑ったり、時には拍手をしたりしましょうね。アムスでは危ないスポット訪問も登場するので、指笛とかも似合いそうです。(まったく、ラーニーのウブなことと言ったら! 昔はこういう女の子を「カマトト」と言ったのですが、今の子たちは何と呼ぶのでしょう?)

© Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

では、黄金町(最寄り駅。映画館の住所は中区若葉町3-51です)でお目に掛かりましょう!

 

『我は神なり』ヨン・サンホ監督インタビューが到着!

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今夏大ヒットした『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)のヨン・サンホ監督によるアニメ作品『我は神なり』(2013)が、10月21日(土)から公開されています。以前の拙ブログでのご紹介はこちらですが、このたび宣伝会社さんから、『我は神なり』に関するヨン・サンホ監督のインタビューが届きました。拙ブログでは提供されたインタビューはあまり掲載しないのですが、このインタビューは内容が興味深く、『我は神なり』をご覧になった方には響くものがあるのでは、と思い、アップする次第です。まずは、ヨン・サンホ監督のお写真からご紹介しましょう。1978年生まれだそうですが、若く見えますね。

 

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Q:監督自身がこの作品で追及しようとしたテーマ、思いをお教えください。

ヨン監督:記憶をたどってみると、この作品を書いた時は、エセ宗教を通じて、人間の信念の本質のようなことを問いかけてみたかった気がします。「果たして人間は信念がなくても生きることができるのか?」、あるいは、「間違った信念を持った人をあざ笑う権利が、私たちにはあるのか?」など、人間が持っている信念、信頼の本質について問いかけたかったのです。

©2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

Q:『我は神なり』は実写映画を想定してシナリオを書いたそうですが、長編アニメーションで表現した理由をお教えください。また、『新感染 ファイナル・エクスプレス』という実写の傑作を撮り終えた今、今後はどのように実写とアニメーションを撮り分けていこうと考えていらっしゃいますか?

ヨン監督:韓国のアニメーション産業はとても小さいんです。また、私のように大人を対象としたアニメーションを作る人間は、ほぼ皆無といっても言い過ぎではないでしょう。私はもともとアニメーションの監督ですので、自分の作品をすべてアニメーションとして作るのが夢でした。しかし現実的な様々な問題で、アニメーションだけに固執するのは難しい状況でした。それで、『我は神なり』を実写映画として作ろうかとも考えたのです。しかし、実写映画としても投資が集まらない中、非常に低予算で『The King of Pigs』をアニメーションとして製作する機会が巡ってきました。そこから、『我は神なり』のアニメ化が自然に実現したんです。現在は実写映画の『新感染 ファイナル・エクスプレス』が、私の作った3本のアニメーション作品より興行成績がよいため、投資者の立場ではリスクの大きなアニメーション作品より実写映画を強く勧める状況です。しかし、今後もよい機会があれば当然、アニメーションを作り続けたいと思っています。

©2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

Q:『我は神なり』は、ダム建設で水没を運命づけられた村という舞台の設定がとても印象的です。この映画の世界観を、どのようにイメージを膨らませて作ったのでしょうか。

ヨン監督:『我は神なり』の舞台である韓国の田舎の村は、十数年前までは「温かくて人情の厚い」という言葉で語られる場所でした。しかし、ポン・ジュノ監督の『殺人の記憶』以降、韓国の田舎の村の持つ不気味なイメージが台頭し始めました。私も『我は神なり』で、一見スリラーと似合いそうにない田舎の村という設定で、怪しげな雰囲気を作ることができるだろうと思いました。また、最初に設定を考える時、この村を「終末が運命づけられた村」にしたいと思いました。そして、現実の世界において「村の終末」とは何だろうと悩んだ末に、ダム建設による水没予定地域の村という設定にたどり着きました。そのことが、村の住民たちの感じる喪失感や疎外感の底にあるのです。

Q:監督は、影響を受けた監督としてイ・チャンドン監督を挙げています。また以前、本作に関して、デビット・リンチの「ツインピークス」への憧れがあったとおっしゃられています。イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』や「ツインピークス」からの影響はあったのでしょうか?また他にイメージした監督や作品はありますか?

ヨン監督:『シークレット・サンシャイン』の持つ「許すことの二重性」「和解の二重性」など、私たちが普段当然視していることを、裏面から眺めるイ・チャンドン監督の視線が好きです。また「ツインピークス」の場合は、平和に見える田舎町がはらむ奇怪で恐怖に満ちたイメージが好きだったような気がします。他にも日本の漫画家・古谷実の「ヒミズ」という作品がとても好きです。『我は神なり』の絵柄や表現、雰囲気に多くの影響を受けたと思います。

©2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

Q:主要キャラクターの造型について、どのようにつくりあげていったのかお教えください。

ヨン監督:当初の企画から、「真実を語る悪人」と「偽りを言う善人」の対決を描くのが目標でした。私たちはしばしば、ある人が真実を語っているにもかかわらず、その語っている人のイメージが自分の望むものと違っていたり、自分が認めることができない悪人であったりする時、彼の言葉を嘘と見なしてしまいます。逆に、言葉を語っている人が善人だという理由で、彼の話をすべて真実だと思ったりもします。これが、人が間違った信念を持つようになる重要な契機だと思いました。このことを宗教的なものに限らず、様々な事柄で見ていく中で、ストーリーを引っ張る主要キャラクター2人の設定が決まりました。

Q:キム・ミンチョル役のヤン・イクチュンの声優としての評価をお教えください。

ヨン監督:ヤン・イクチュンはとても繊細な人です。そんな繊細な人が、キム・ミンチョルという会話がまったく通じない壁のような人物を演技することで、キム・ミンチョルのキャラクターがより複雑になり、深みを増したと思います。ヤン・イクチュンは、監督と声優という立場ではなく、共に映画を作った同僚のように感じています。

©2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

Q:監督自身の「信仰」についての考え方を聞かせて下さい。

ヨン監督:私自身は、信仰についてそんなに深く考えてみたことがないので、何を申し上げていいかよく分からないですね。しかし言えるのは、私はほとんどすべてのことについて疑問を感じる人間だということです。

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『我は神なり』の公式サイトはこちらです。まだご覧になっていない方は、このインタビューも参考にして、ぜひいらしてみて下さい。何に対しても疑問を持たずにはいられないというヨン・サンホ監督の、強烈な個性に圧倒されるアニメーションです。

 

映画は始まりから凄かった! がわかる『リュミエール!』

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本日より第30回東京国際映画祭(TIFF)が始まりました。このTIFFでも特別上映されるのが、10月28日より公開のフランス映画『リュミエール!』。このブログは「アジア映画巡礼」なのでアジア映画をご紹介するのが基本なのですが、そんな枠を越えて、全映画好きの人必見!なのが『リュミエール!』なのです。まあ、少しでも映画に関心のある方は、「リュミエール」という名前を聞いただけで「ああ、あの」となるでしょうからもう説明も不要なのですが、今回の映画は、「映画」の始祖とも言うべきリュミエール兄弟の作品紹介ではあるものの、ひと味違う面白い構成になっています。まずは、基本データからご紹介しましょう。

『リュミエール!』 公式サイト
 2016年/フランス/フランス語/90分/原題:Lumière!
 監督・編集・脚本・プロデューサー・フランス語ナレーション:ティエリー・フレモー(カンヌ国際映画祭総代表)
 映像:1895年~1905年リュミエール研究所(シネマトグラフ短編映画集1,422本のうちの108本より)
 配給:ギャガ GAGA

※10月28日(土)より東京都写真美術館ホール他全国順次公開

© 2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon 

上の写真が、オーギュスト(左/兄/1862-1954)とルイ(右/弟/1864-1948)のリュミエール兄弟です。リュミエール兄弟は1895年12月28日、パリのグラン・カフェの地下にあったサロン「インドの間」で初めて映画を上映したのですが、当時「シネマトグラフ」と呼ばれた映画は実に画期的な発明でした。それまでのエジソンが発明したキネトコープは覗き眼鏡方式で、1台1人しか楽しめなかったのですが、それに比べてシネマトグラフは、スクリーンに映写するという方法で一度に大勢の人に見せられるようになったのです。


© 2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon  

その時上映されたのは、『工場の出口』『列車の到着』(上写真)『水をかけられた撒水夫』(下写真)などの短編映画10本で、いずれも人々を大いに驚かせました。『リュミエール!』では、これらの作品が何ヴァージョンもあることを明かし、その違いを見せてくれます。ダイナミックな構図で、まるで列車が観客の前に飛び出してくるような感覚を味わわせてくれる『列車の到着』は、プラットホームにいる人が違っていたりしますし、世界初のコメディ映画と言える『水をかけられた撒水夫』は、ホースを踏んで水を止めてしまう人物が異なったりします。リュミエール兄弟は単に風景を記録しただけではなく、最初期からすでに優れて映画的な演出を入れ込んでいたのでした。

 

© 2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon  

それらのシネマトグラフはヨーロッパからアジアに伝わり、1896年7月にはインドのボンベイ(現ムンバイ)で、同年8月には中国の上海で、そして1897年1月には日本の大阪で上映されます。つまり、リュミエール兄弟は映画という上映方式を発明した「発明家」であるだけではなく、その後も映画製作を続けた「映画製作者」として、さらにそれを世界各地で見せてまわった「興行師」としても映画史上に名前を残すことになったのでした。

 

© 2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon  

さらにリュミエール兄弟は、映画製作者としての行動を世界各地に広げていきます。自社のカメラマンたちを世界各地に派遣し、珍しい事物をカメラに収めさせるのです。今回の『リュミエール!』で紹介されるアジアは、ベトナム、カンボジア、日本ですが、ベトナムの子供(上写真)や、日本の武術家の姿(下写真)などがカメラで撮られています。

 

© 2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon  

こういったリュミエール作品は、これまでもビデオやDVDで発売されていて、私も何種類か目にしています。そういった作品集と比べて『リュミエール!』がユニークなのは、リュミエール作品を最もよく知っているリヨンのリュミエール研究所のディレクター、 ティエリー・フレモー氏によるナレーションが付いていることです。時にはユーモアもまじえながら、リュミエール作品の魅力を詳しく解説していってくれて、目からウロコの思いがすることも。映画に少しでも興味のある人ならば、これを見逃す手はありません。

© 2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon  

アジア映画でも、映画の黎明期に言及される時には、よくリュミエールの映像が使われます。中国映画『西洋鏡 映画の夜明け』(2000)や、インド映画『移動映画館』(2013)のように劇中に登場することもあるので、この機会にぜひ、リュミエール作品に慣れ親しんでおきましょう。今回はちょっとした特撮(?)も見られて、口あんぐりになってしまいます。本当に映画って、その始まりの始まりから凄かったのですね~。最後に予告編を付けておきます。

映画『リュミエール!』予告編 10月28日(土)公開

 

 


TIFF2017:私のDAY1

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第30回東京国際映画祭(TIFF)が昨日より始まり、六本木会場が賑わっています。昨日のオープニングは失礼し、プレス上映が本格的に始まる今日から、六本木に出勤となりました。地下鉄六本木駅から続く通路は、今年は30周年ということで思い出のシーンの数々が貼ってあるため、いつものようなポスターによる華やかな展示にはなっていません。ヒルズの敷地内も、例年よりTIFF関係が目立たない感じです。

本日見た作品は3本。短くですが、ご紹介して行きましょう。

 

『キリスト』
2016/フィリピン/原題:Kristo
監督:HF・ヤンバオ

Kristo Poster

イスラーム教シーア派の行事アーシュラー (ムハッラム)を思い出させるような、キリストの犠牲を悼んで信者が体を傷つけながら行進する祭りが最初に登場します。顔を布で覆い、裸になった上半身に鞭を当てながら、歩いて行く若者たち。中には十字架を模した角材をかつぐ青年や、実際に十字架に磔にされる人もいます。その祭りが終わって、今度は闘鶏場のシーンとなり、主人公ボーイ(クリストファー・キング)が登場。ボーイは闘鶏の賭け金を仲立ちする仕事をボス(フリオ・ディアス)の長女下でやっており、ボスや仲間の男たちからは信頼を置かれています。一方、妻(アンゲラ・コルテス)には市場でバナナ屋をやらせ、4人の子供たちを養っています。長女ジェムジェムが小学校を卒業することになり、壇上でスピーチするというので、卒業祝いにはパソコンを買ってやりました。闘鶏場でもめたり、妻と口げんかしたりと、小さなトラブルはあるものの平和な日々が続きますが...。

©Eichef Media \ Films 2016

あまりに穏やかな描写が続くので、最後にはきっと何か起きるのでは、と思っていたら案の定...という作品でした。手持ちカメラの撮影が、リアル感を出しています。ブリランテ・メンドーサ監督の推薦による作品で、冒頭に「”クリスト”とは”賭けを仲介する者”」という説明が登場します。 

『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』
2017/台湾/原題:阿莉芙/英題:Alifu, the Prince/ss
監督:ワン・ユーリン(王育麟)


台東の近くに住むパイワン族の族長の1人息子アリフ(舞炯恩)は台北で美容師をしていますが、女性になりたいと強く思っています。同居している同僚美容師(趙逸嵐)は女性でありながら男性になることを願っており、アリフのまわりにはトランスジェンダーの人々がいっぱいいるのです。アリフがバイトをするバーのマダム(陳竹昇)も性転換をして女性になった人で、中年のボーイフレンド(呉朋奉)を何かと頼りにしています。このバーではゲイのショーがあるのですが、それに出演している公務員(鄭人碩)はピアノ教師である妻との2人暮らしで、このアルバイトのことは内緒にしています。そんな中で、アリフの父が「もう年だから、息子に後を継がせる」と言いだし...。


 様々な位相を持つ台湾のLGBTの人々を描いているのですが、少し深さが足りないという印象を受けた作品でした。

『大仏⁺』
2017/台湾/原題:大佛普拉斯/英題:The Great Buddha
監督:ホアン・シンヤオ(黄信堯)


冒頭から、「私は監督の阿堯(アヤオ)です」という台湾語のナレーションが入り、最後までそのナレーションですべてが説明されていきます。大仏を作っている何だかうさんくさい工場とそこの守衛(荘益増)、彼の友人であるゴミ拾いの男(陳竹昇)、そして工場の社長(戴立忍)らが織りなす、何とも奇妙な人間関係が描かれますが、いまひとつ意味が分からず......。基本的にはモノクロ画面で進行していきます。

 

©2017 Creamfilm, MandarinVision. All rights reserved.

本日のTIFFはちょっと奇妙な感覚の作品ばかり。明日からはどうでしょうねえ.....。


TIFF2017:私のDAY2

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今日は朝フィリピン映画『アンダーグラウンド』の試写を見るはずが、六本木に着いてみると体調思わしくなくてパス。1時間ほどしたら回復してきたので、オン・デマンドで別の作品を見ることにしました。TIFFの映画祭パスはいくつかの段階があり、私のパスはオン・デマンドの上映が見られるパスなのです。ただし、全部英語字幕のみで日本語字幕はありません。家のパソコンでもちょこちょこ見ていたのですが、六本木会場にもパソコンで見られる部屋があるので、そちらに行ってみました。というわけで、本日はパソコン画面で見た『詩人の恋』を皮切りに、4本見てきました。

『詩人の恋』
 2017/韓国/英題:The Poet and the Boy
 監督:キム・ヤンヒ
 主演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・カラム


舞台は済州島。主人公の詩人(ヤン・イクチュン)は、サークルで自分の詩を誉められたりけなされたりすると一喜一憂している気弱な男。ほかに学校でも非常勤で詩作を教えているのですが、生計はもっぱら妻(チョン・ヘジン)が働いて支えています。妻は子供を望むものの、詩人は精子の数が少ないとかでなかなか妊娠しません。妻に責め立てられて食欲もなくした詩人でしたが、なぜか近所にできたドーナツ屋のドーナツには夢中になり、とりつかれたように食べまくります。そして、ドーナツ屋に通ううちに、そこで働く青年(チョン・カラム)が気になり始めます...。

滑り出しは笑いも含んだストーリー展開なのですが、後半、詩人と青年が接近するにつれてちょっと息苦しい場面が多くなります。ヤン・イクチュンが冴えない詩人をさらりと演じていて、やっぱりうまいなあ、この人、と思わせられました。こんなに俳優として引っ張りだこでは、監督作品を作っている暇がありませんよね。


『怪怪怪怪物!』
 2017/台湾/原題:報告老師!怪怪怪怪物!/英題:mon mon mon Monsters
 監督:ギデンズ・コー(九把刀)
主演:鄧育凱(トン・ユィカイ)、蔡凡煕(ケント・ツァイ)、劉奕兒(ユージェニー・リウ)、陳珮騏(チェン・ペイチー)

Mon mon mon MONSTERS.jpg

今夏香港で上映中だったので、見に行こうかどうしようか迷ったのですが、私の好みとは合わない感じだな、と思ってパスしたら、やっぱり私にはヘビーすぎました。ある高校を舞台に、クラスのいじめられっ子(トン・ユィカイ)がいじめっ子のリーダー(ケント・ツァイ)に無理矢理仲間に引き入れられる、というのが導入部です。いじめっ子4人+いじめられっ子は先生に命じられて奉仕活動に行き、老人の世話をしているうちにそこに出没するゾンビを学校に連れて来てしまいます。ゾンビ姉妹の妹の方で、姉は妹を捕まえられた復讐に、高校生たちを襲い始めます...。

とにかくいじめがすごいやり方で、それだけでもう吐きそうになってしまいました。彼らは捕まえたゾンビもいじめ抜き、そのやり方たるや凄惨そのもの。スプラッタ・ホラーと言えるのでしょうが、むき出しの悪意の方が恐ろしく、私にはちょっと勘弁してもらいたい映画でした。


©Star Ritz International Entertainment Co., Ltd.

『ビオスコープおじさん』
 2017/インド/英題:Bioscopewala
 監督:デーブ・メーデーカル
 主演:ダニー・デンツォンパ、ギーターンジャリ・ターパー、ティスカー・チョープラー、アーディル・フセイン

©HANDMADE FILMS PVT LTD AND STAR INDIA

ラビンドラナート・タゴール原作の「カーブルから来た果物売り」を元に作られた映画は、1961年のバルラージ・サーハニー主演作『Kabuliwala』がつとに有名ですが、その映画を下敷きにした作品です。コルカタに住む有名なファッション写真家ロビ・バス(アーディル・フセイン)は、アフガニスタンに行く直前にパリに留学している娘ミニー(ギーターンジャリ・ターパー)に電話しますが、ミニーはその電話を無視してしまいます。ところが、ロビの乗った飛行機は墜落し、ミニーはあわててパリからコルカタへ戻って来ます。ちょうどそこへ、父が長年保釈を要請していたラフマト・ハーンが恩赦で釈放された、という知らせが入ります。父の助手のような存在であるボーラーが説明してくれ、やがてミニーも幼い時にかわいがってくれた「ビオスコープおじさん」のことを思い出します。彼は殺人犯として収監されていたのですが、事実を突き止めようと、ミニーはボーラーと共にゆかりの人を訪ね歩きます....。

「ビオスコープおじさん」は戦乱のアフガニスタンから逃げてきた人で、約20年前のヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の対立事件の時ミニーを守ってくれた人、という設定になっています。アフガニスタン人、行商人、ミニーの守り手、という「カーブルから来た果物売り」の基本設定を生かしながらも、まったく違ったストーリーに仕立て上げていることにまず感心しました。サスペンス風味も効いていて、ラストまで観客を引っ張っていってくれます。

今回はプレス向けの上映で見たのですが、デーブ・メーデーカル監督(上写真)は上映前とあとにきちんと入り口に立っていてくれて、ほんの立ち話ですがインタビューもできました。

Q:監督は、姓からマハーラーシュトラ州ご出身とわかりますが、タゴールの作品をベースにしたのはなぜですか?
監督:父はマハーラーシュトラの姓ですが、実は母はベンガル人なんです。子守歌はいつもベンガル語の歌で、タゴール・ソングとかよく聞かせてくれました。ですから、タゴール作品にも小さい時から親しんできたんです。

Q:主役のアフガン人にダニー・デンツォンパを起用したのはなぜですか?
監督:アフガニスタンには、大きな部族が2つ存在します。パシュトゥーン族とハザーラ族です。このうちハザーラ族はモンゴロイドの顔立ちなんですね。ですので、シッキム出身のダニーにはぴったりです。それから、ダニーは以前アミターブ・バッチャンの主演作『Khuda Gawah(神に誓って)』(1992)に出演していて、その時にアフガニスタン・ロケに行っているのです。今回は、その時の彼の経験にとても助けられました。

というわけで、疑問が2つ解けました。上の写真は、メーデーカル監督と奥様です。ヒロインを演じたギーターンジャリ・ターパー(『汚れたミルク』などにも出演)もとてもきれいでしたが、デリー出身という監督の奥様もすごく美人の方でした。

 

『ヤスミンさん』
 2017/マレーシア/ドキュメンタリー/英題:Yasmin-san
 監督:エドモンド・ヨウ

©Greenlight Pictures

石坂健治プログラミング・ディレクターの推薦作品で、『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』(2016)の行定勲監督作品「鳩 Pigeon」のメイキングを中心に、ヤスミン・アフマド監督の軌跡をも辿ります。行定監督の「鳩 Pigeon」の主人公はヘルパーのヤスミン(シャリファ・アマニ)なので、このドキュメンタリーは2人の「ヤスミンさん」を追いかける作品というわけですね。冒頭でシャリファ・アマニがヤスミン・アフマド監督と初めて出会った時のことを語り、彼女のユニークさを余すところなく伝えてくれます。また、エドモンド・ヨウ監督はホームビデオらしき映像をたっぷり使って、ヤスミン・アフマド監督が若き日に両親や妹のオーキッドと戯れている姿も見せてくれます。

ヤスミン・アフマド監督やシャリファ・アマニのファンはもちろん必見ですが、行定監督(上写真)の語りも面白く、幼い頃の鳩を介した元ヤクザのおじさんとの出会いなど、胸にしみるエピソードを語ってくれます。行定監督ファン、ひいては日本映画ファンも必見と言えますね。実は上の行定監督のお写真は、この上映と時間が重なってしまった国際交流基金のパーティーに行った時に撮ったものです。ラスト30分弱という時間になってやっと会場に行けたので、どなたももういらっしゃらないなあ、と思っていたら、突然行定監督からお声を掛けていただいたのでした。お話を聞くと、タゴール文学もよく読んでいらっしゃるそうで、インドへの関心も高いようです。先ほどの『ビオスコープおじさん』もご覧になり、「作りがしっかりしていますよねえ」と誉めて下さっていました。さらに、「実はあの監督とその前に青山ブックセンターで会ったんですよ。洋書の置いてあるところはどこだろうか、と尋ねられたんですが、まさかあの映画の監督だったとは」とびっくりのエピソードも教えてもらって、今日は大満足の1日となりました。

明日は「インド通信」の発送作業日なので、TIFFは欠勤します。また雨になるようですが、皆さんはTIFFの映画を楽しんで下さいね。 


TIFF2017:私のDAY3

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台風がまたまた来襲した日曜日は、1本だけ見てきました。コンペ作品のイラン映画『ザ・ホーム-父が死んだ』です。コンペ作品はプレス用上映でも、終了後にゲストによるQ&Aが行われます。このシステムは大変ありがたく、映画祭に感謝!なのですが、雨風があまりに強かったためカメラを持って行かず、ゲストの写真はスマホで撮るという「ごめんなさい」状態でした。というわけで、へろへろな写真ですがお許し下さい。スマホ写真術も、もっと習得しないといけないな~、とスマホで写真を撮るたびに思っている私です。

『ザ・ホーム-父が死んだ』
 2017/イラン/トルコ語/78分/原題:/英題:The Home
 監督:アスガー・ユセフィネジャド
 出演:ラミン・リアズィ、モハデセ・ヘイラト、ゴラムレザ・バゲリ、セディゲ・ダルヤニ、ナルゲス・デララム、シルース・モスタファ、メイサム・ワリカニ

© Iranian Independents

映画の冒頭、主人公の女性サーイエは父が亡くなったというので実家に飛んでくるのですが、その時にはすでに父の遺体は家から運び出され、運搬する車に乗せられていました。パニック状態になったサーイエは、「父を家に戻して! 私の部屋に安置して!」と叫び続けます。周囲の人は彼女をなだめるのですが、ともかくも彼女を落ち着かせるために遺体をいったん自宅に戻します。葬儀を取り仕切っているのはサーイエの従兄のマジドで、彼を始めとするサーイエの叔父一家は、認知症になったサーイエの父の面倒をずっと見てきたのでした。そんなことも忘れたかのようにサーイエはマジドをなじるのですが、マジドはそれに腹を立てることもなく、サーイエの意を受けて死者へのお供え物を買いに行かせるなど、彼女をなだめようといろいろ手を尽くします。その間にもいろんな親戚がやってきたり、近所の人々も弔問しながらお節介の隙をうかがったりと、葬儀の場は喧噪に充ち満ちた状態になります。さらにそこに、ある大学のアフマディという教授がやってきて、それまで隠されていた遺体運び出しの意図が明らかになってくるのですが....。

狭い自宅での葬儀の場に空間を限り、そこでの数時間を描いたこのドラマは、ものすごく濃密な会話劇になっています。時にはやかましいぐらい人の声が飛び交い、子供たちも勝手に騒ぎ、それらの音に観客は翻弄され尽くす、という感じです。ところが、だんだんとお話はサスペンス溢れる方向に進んでいき、最後にはアッと驚く事実が出て来ます。非常によく構築された会話劇で、もう一度見ると、あそこにこのヒントが隠されていたのか、という断片がいくつも見つかるのでは、と思わせられました。最後の方になってサーイエの夫ナデルも姿を現しますが、ころっとした人の良さそうな従兄のマジドと比べると、背がすらりと高くてイケメンのナデルは明らかにポイント高しで、キャスティングの妙も効いていました。上映終了後のQ&Aには、アスガー・ユセフィネジャド監督と主演女優のモハデセ・ヘイラトさんが登場しました。通訳はいつもお馴染みのショーレ・ゴルパリアンさんです。


監督:イランの人々と、それからアゼルバイジャンのタブリーズの皆さんも代表してのご挨拶を申し上げます。私は20年間テレビの仕事をしてきたのですが、今回初めて映画を撮りました。

モハデセ・ヘイラト:コンニチハ、サラーム。この作品が日本で初めて上映されて、とても嬉しいです。それに加えて、皆さんと一緒にこの作品を見られたことも嬉しかったです。

Q:素晴らしい会話劇で、サスペンス風味もあって、圧倒されました。一つ疑問に思ったのは、サーイエが「お父さんの遺体を私の部屋に」と強く言いますが、「私の部屋」を主張していたのは女性の部屋だと女性も入りやすい、つまりイランのザナーネ(女性の領分である空間)という考え方のような習慣がある、とかだからなのでしょうか?

監督:習慣から、ということではありません。サーイエは1人娘なので、自分の部屋で父親を悼みたい、という気持ちがあるのですね。特に遺体を大学側に渡したくないから、自分の部屋に入れて守りたい、と思ったわけです。

司会者:会話が重なって進行していく本作ですが、リハーサルはどのくらい行われたのですか?

監督:限られた場所でたくさんのセリフを交わす、というのは難しい演出になりますが、でも私はテレビでの仕事が長いので、そういう限られた空間でならセットの中と同じで撮りやすいのでは、と思いました。脚本を読み合わせたり、リハーサルとかは3ヶ月にわたってやりましたので、本番でも大丈夫だと思っていました。

司会者:モハデセ・ヘイラトさんは、3ヶ月のリハーサルを経て、実際に撮影に入った時どのように思われましたか?

モハデセ・ヘイラト:私は舞台女優で、映画は初めてというか、カメラで撮られるのは初めてなんです。セリフはトルコ語(舞台がイラン西北部のタブリーズで、西はトルコ国境、北はアゼルバイジャン国境に近いため、アゼ-リーと呼ばれるトルコ系の言葉を話す人が多数を占める)で言わないといけなかったので、難しくて、ペルシア語とは違う言語に切り替えるのが大変でした。でも、監督が事前に丁寧に指導して下さったので、実際に撮影が始まるとスムーズに撮ることができました。


Q:アゼ-リーで作られたのはなぜですか? これまでのイラン映画で、アゼ-リーやトルコ語で全編作られた作品はありましたか?

監督:私は自分がアゼルバイジャン出身で、タブリーズでトルコ語を聞きながら育ったため、自分が慣れ親しんだ言葉で作ってみようと思ったのです。タブリーズで撮ったので、スタッフもみんなトルコ語ができましたし、故郷で撮れて本当によかったと思います。トルコ語はイラン映画では、多少入っているという作品はあったのですが、ほとんど全編がトルコ語で撮られた作品というのは本作が初めてです。ですので、この作品を作ることができて嬉しく思っています。

Q:クローズアップと長回しが多いですね。カットバックがあまり使われていませんが、それはテレビからの手法によるものでしょうか? 初めて映画を撮ることになった経緯は?

監督:20年間テレビの仕事をしてきて、退職したので映画を撮りました。テレビの仕事をしていた時から映画を撮ってみたいと思っていたのですが、忙しくて実現できませんでした。撮り方については、脚本を書く時にロングかクローズアップかを決めるわけですが、感情を出す時には長回しを使いましたし、一方でセリフを集中的に入れる時にはカットを使いました。クローズアップが多いのは、主人公たちが他の人とコンタクトを取らずに演技をする時にはクローズアップにしたためです。

Q:緊張感のある作品で、最後にはドキッとさせられました。この映画で監督が主張なさりたかったのは、どんなことなのでしょうか。

監督:真実と現実との違いを頭に入れながら、脚本を仕上げました。人生の真実の裏にはいろいろあることを見せたかったのです。ラストでは娘の違う感情が出て来ていますが、あれにより、観客がもう一度見ると、最初泣いている娘も違ったように見えてくるのではないかと思います。



TIFF2017:私のDAY4(その1)

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本日は、素晴らしい作品を見ることができました。日本映画なのですが、「主演はミャンマー人」として紹介しておいた『僕の帰る場所』です。11月1日(水)の午後1時30分から2回目の上映がありますので、皆様にぜひ見ていただきたいと思い、取り急ぎご紹介をアップするものです。TIFFの作品紹介はこちらです。まだ少しですがチケットが残っているようなので、明日ご覧になりたい作品をまだ決めてらっしゃらない方はぜひこの作品を。年休を取って見に行っても、見る価値のある作品です。監督とゲスト(主演の一家4人)によるQ&Aも予定されていますので、あっと驚くようなお話も聞けるかも、です。

 

『僕の帰る場所』 公式サイト 
 2017/日本/日本語・ビルマ語/105分/英題:Passage of Life
 監督:藤元明緒
 主演:カウンミャットゥ、ケインミャットゥ、アイセ、テッミャッナイン


主人公は、日本に滞在して難民申請をしているビルマ人一家の、夫婦と小学生の息子カウン君と幼稚園児の息子テッ君。ママが精神科のお医者さんと話しているシーンから始まり、パパの帰りを待ちわびる3人の姿を映していきます。難民申請がなかなか認められないのでママは精神を病みつつあり、カウン君やテッ君も行動や言動が乱暴になったりと、一家はかなり追い詰められていました。いつも笑顔で妻や子供たちと接するパパでさえ、申請に向けてのヒアリングで「故国において、身の危険を感じた、という証拠は何かありますか?」などと聞かれると、ついイラッとしてしまいます。日本人の協力者もいるのですが、入管の抜き打ち調査員が自宅にやってきたり、励まし合ってきた仲間が「国に帰ることにした」と言うのを聞くと、不安は増す一方でした。その不安に押しつぶされそうになったママは...。

見始めた時、あれ、ドキュメンタリー映画だったっけ? と思ってしまったほど、ドグマ95的な撮り方(手持ちカメラ、自然光など)で全編が推移します。一家4人や他の出演者たちも本名で出演しているようで、演技を感じさせるものが全然ありません。途中で、パパの勤務先のレストラン・シーンに登場する店長と、難民申請の書類の受け渡しをする市役所窓口の女性が「この人、役者さんだ」とわかる演技をしていて、やっぱり劇映画なんだ、と認識させてくれましたが、主人公たちのシーンは本当にドキュメントそのものでした。とはいえ、ハッと気付くと、撮り方やカットの重ね方もドキュメンタリーではこうは行かないはず、と思うところがあり、見ていて不思議な気分でした。

本作で物語の中にググーッと引き込まれたのは、主人公一家のあまりにもリアルな姿によるところが大きいです。特に子供たちの、演技にはとても見えない表情やセリフは大きな魅力を発揮していて、観客の目をスクリーンに釘付けにしてくれます。アッバース・キアロスタミ監督の『友だちのうちはどこ?』の演出や、韓国映画『わたしたち』の演出とはまた違う、不思議で素晴らしい演出だったと思います。


プレス上映が終わった時、会場入り口には藤元明緒監督(上写真左)ほか何人かのスタッフ・キャストがいらしていて、チラシを配って下さっていました。監督にちょっとお聞きしたところ、しっかりした脚本を書いて撮影に入ったそうで、どんな風な演出がなされてあそこまでのリアリティが出せたのか、出演者の皆さんに聞いてみたいところです。配給会社がまだ決まっていないのでは、と思いますが、この上映後いろんな方からの賛辞を聞いたので、どこかがきっとお声を掛けておられることと思っています。セリフの一つ一つが心に刺さってくる思いのする『僕の帰る場所』、どうぞお見逃しなく。



TIFF2017:私のDAY4(その2)

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今回のTIFFは台風のほかいろんなことと重なって、いつもほど会場に行けていません。実は今日も、先日発生した水漏れの修理に工務店の人に来てもらうため、外出不可の1日でした。結局水漏れ箇所は発見できず、もう少し様子を見ることになってしまいました。築30年超のマンションなので、給排水管もそろそろ交換時期なのです。そんなわけで、オン・デマンドで2作品見たのですが、昨日見た2作品も交えて簡単にご紹介したいと思います。 

『セクシー・ドゥルガ』
 2017/インド/マラヤーラム語、ヒンディー語/86分/英題:Sexy Durga
 監督:サナル・クマール・シャシダラン
 出演:ラージャシュリー・デーシュパーンデー、カンナン・ナーヤル、スジーシュ・K・S、ヴィシュヌ・ヴェード


南西端インドのケーララ州。冒頭でかなり長く、ある町で行われるドゥルガ女神のお祭りが紹介されます。椰子の繊維がボディとなったドゥルガ像、そして、タイプ-サムのように体に太い針を突き刺し、クレーンにつり下げられて行進するトランス状態の男たち...。その喧噪が静まった町はずれで、人待ち顔にたたずむ大きな荷物を持った若い女性がいました。2人乗りのバイクがやってきて、後部座席の若い男が降り、「早く逃げろ」という運転者の声に励まされるように女性と共に去って行きます。その後2人はヒッチハイクをしようとするのですが、夜でもあり、止まってくれる車は現れません。ようやく止まった車には、あまり人相のよくない二人組の男が乗っていました。男たちはあれこれ詮索し、女性の名前がドゥルガ、若者の名前がカビールであると聞き出します。「姉ちゃんは北インドの人間で、兄ちゃんはイスラーム教徒か」途中、ドゥルガとカビールは何度かその車から逃れようとしますが、運命は2人にそれを許してくれません...。

手持ちカメラでかなりの長回しが重ねられ、夜の闇の中と暗い車の中での映像が続くという、閉鎖状況のイライラがたまってくる作品でした。脚本としてはよくできていると言っていいのですが、主人公2人の行動があまり納得できず、「何が言いたい???」となってしまいます。お祭りとの関連もいまひとつ不明で、さらにオープニングで出てくる「ラーマーヤナ」のシュールパナカーのエピソードとの関連も不明。最後の最後にヒロインが名前の通りドゥルガと化すのかと思ったのですが...。

 

『Have a Nice Day』
 2016/中国/アニメ/北京語/74分/原題: 好極了/英題:Have a Nice Day
 監督:リウ・ジエン(劉健)
 声の出演:チュー・チャンロン、ツァオ・カイ、リウ・ジエン、ヤン・スーミン

© 2017 Nezha Bros. Pictures, Le-Joy Animation Studio 

中国南部のあるしょぼくれた町。ボスである劉の金を運んでいた手下の中年男は、運転手の張に刺されて金を奪われてしまいます。その頃ボスの劉は、幼馴染みの男を監禁し、若い手下阿徳と共にいたぶっていました。そこに、張が金を盗んだという電話が入り、劉は伝説の殺し屋に依頼して金を取り戻そうとします。そんなこととは知らず、ひとまず駅前旅館に落ち着いた張は、小汚い食堂で腹ごしらえし、恋人と連絡を取るためにネットカフェに向かいました。ところが、食堂の親父は張の鞄に大金が入っていることに気付き、妻と共に張を追ってきます...。

Have a Nice Day (film) poster.jpeg

まだまだ登場人物がいるのですが、それらの人々がみんなお金の入った鞄に踊らされ、最後には玉突き状態になって次々と死体になっていく、という、とんでもないブラック・コメディー・アニメーションでした。絵柄がリアルすぎて、どの人物にもまったく好感が持てない(笑)という、悪相の集団に悪意をまぶしたみたいなアニメなのですが、な~んか面白く、つい見入ってしまいました。物語は章立てになっているらしく、画面の右下方に「1」とかの数字が出てくるものの、あれは別になくてもいいのでは、という気がします。冒頭でトルストイの言葉が引用されることといい、劉健監督のこだわりもかなりヘンで、異色の中国アニメーションでした。


『アケラット-ロヒンギャの祈り』 公式サイト 

 2016/マレーシア/華語、広東語、福建語、マレーシア語/106分/原題:Aqerat阿奇洛/英題:We the Dead
 監督:エドモンド・ヨウ
 主演:ダフネ・ロー(劉イ青[女文])、ハワード・ホン・カーホウ(韓家豪)、ルビー・ヤップ、ジョニー・ゴウ、ウォン・ジュン・ヤップ

©Pocket Music, Greenlight Pictures

マレーシア北方の海辺の町。レストランで働くフイリンは、台湾に言って働くためにお金を一生懸命貯めていましたが、それを同居していた女性に持ち逃げされてしまいます。レストランの経営者である黒社会(ヤクザ)のボスは、フイリンに別の仕事を紹介してやります。それは、ボスの下で働く兄貴分とその手下3人と共に、ミャンマーから海を渡ってくるロヒンギャの難民たちを売買する仕事でした...。

セリフが極端に少なく、絵での説明もほとんどないという、エドモンド・ヨウ監督が作ったもう一つのTIFF作品、『ヤスミンさん』とは対極にある作品でした。今、世界的に関心の的になっているロヒンギャ族がマレーシアにも難民としてやってきているのを初めて知りましたが、彼らが金ヅルになるシステムがいまいちよくわからず、また難民たちの描写もファンタジーのようで、ちょっと白けました。

 

『ある肖像画』 公式サイト 
 2017/フィリピン/フィリピノ語/120分/原題:Ang Larawan/英題:The Portrait
 監督:ロイ・アルセニャス
 主演:ジョアンナ・アムピル、ラケル・アレハンドロ、パウロ・アヴェリーノ

©Culturtain Musicat Productions

1941年10月のマニラ。あと2ヶ月で日本軍が侵略してくるとは知るよしもなく、古い建物の2階に、昔のままの家具に囲まれてカンディダ(ジョアンナ・アムピル)とパウラ(ラケル・アレハンドロ)姉妹が父と共に暮らしています。父は有名な画家なのですが、事故に遭って以来部屋に引きこもって、人と付き合おうとしません。そんな家に、親戚の青年ビトイが訪ねてきます。久しぶりの訪問に喜ぶ姉妹。さらに、ジゴロみたいな青年トニー・ハビエル(パウロ・アヴェリーノ)もスーザンとバイオレットという2人の女を従えてやって来、それを皮切りにいろんな人が訪ねてくるようになります....。 

本格的なミュージカルで、セリフがいつの間にか歌になり...と、ミュージカル・ナンバーを挿入するというよりは 全編がこれミュージカル、という作品でした。主人公たちだけでなく、脇役たちのどの人も例外なく、非常に達者な歌を披露してくれます。ごくごく自然な歌への移行、それが可能になる素晴らしいメロディー、そして出演者たちの歌唱力、と、音楽的には最高の映画でした。ただ、舞台がほとんど主人公たちの家だけに限られ、まさに舞台劇を見ているようで、少々閉塞感も覚えました。でも、その点を除けば、最後の聖母マリアの祭りに集う女性たちのテルノ(民族衣装)が素晴らしい等々、「美術さんや衣裳さん、いい仕事、してますねえ」の作品でもあり、いろんな面で楽しめました。

 

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