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Channel: アジア映画巡礼
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怒濤の韓国映画の春<番外>絶賛上映中&公開予定作

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「怒濤の韓国映画の春」ではあと3作品ご紹介する予定なのですが、紹介しきれない作品や試写を拝見できなかった作品をまとめてアップしてしまいます。公開順に並べてありますので、ご鑑賞予定に組み込んで下さいね。

<絶賛公開中>

『監獄の首領』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/124分/原題: 프리즌/英題:The Prison
 監督:ナ・ヒョン
 主演: ハン・ソッキュ、キム・レウォン、チョン・ウンイン、イ・ギョンヨン
 配給:クロックワークス
※1月13日(土)よりシネマート新宿ほかで公開中

そこは、アリバイ100%保証の完全犯罪区域! 『監獄の首領』予告


『捜査された都市』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/127分/原題:조작된 도시/英題:Fabricated City
 監督:パク・クァンヒョン
 主演:チ・チャンウク、シム・ウンギョン、アン・ジェホン
 配給:ツイン
※1月20日(土)よりシネマート新宿ほかで公開中

操作された都市 日本版予告編


『殺人者の記憶法』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/118分/原題: 살인자의 기억법/英題:Memoir of a Murderer
 監督:ウォン・シニョン
 主演:ソル・ギョング、キム・ナムギル、キム・ソリョン、オ・ダルス
 配給:ファインフィルムズ
※1月27日(土)よりシネマート新宿ほかで公開中

アルツハイマーの元連続殺人鬼vs新たな殺人鬼/映画『殺人者の記憶法』予告編


<公開予定作品>

『コンフィデンシャル 共助』 公式サイト
2017年/韓国/韓国語/124分/原題:공조/英題:Confidential Assignment
 監督:キム・ソンフン
 主演:ヒョンビン、ユ・ヘジン、キム・ジュヒョク、ユナ、チャン・ヨンナム
 配給:ツイン
※2月9日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国公開
★拙ブログご紹介はこちら

「コンフィデンシャル/共助」予告編



『悪女/AKUJO』 公式サイト 
2017年/韓国/韓国語/124分/原題:악녀/英題:The Villainess
 監督:チョン・ビョンギル
 出演:キム・オクビン、シン・ハギュン、ソンジュン、キム・ソヒョン
 配給:KADOKAWA
※2月10日(土)より角川シネマ新宿ほかで公開
★拙ブログご紹介はこちら

映画『悪女/AKUJO』予告編

 

『エターナル』  公式サイト
2016年/韓国/韓国語・英語/97分/原題:싱글라이더/英題:Single Rider
 監督:イ・ジュヨン
 主演:イ・ビョンホン、コン・ヒョジン、アン・ソヒ、ジャック・キャンベル
 配給:ハーク
※2月16日TOHOシネマズ 新宿ほか全国公開
★拙ブログご紹介はこちら

イ・ビョンホン主演!映画『エターナル』予告編

『ザ・メイヤー 特別市民』 公式サイト
2016年/韓国映画/韓国語/130分/原題:특별시민/英題:The Mayor
 監督:パク・インジェ
 主演:チェ・ミンシク、クァク・ドウォン、シム・ウンギョン、ムン・ソリ、ラ・ミラン
 配給:クロックワークス
※2月17日(土)よりシネマート新宿ほかで公開
★チェ・ミンシクが市長、クァク・ドウォンがそのブレインの選挙参謀という演技対決が見もの。選対広報スタッフのシム・ウンギョン始め、ムン・ソリ、ラ・ミランら女優陣の意外なキャスティングも面白い。

偽装、脅迫、賄賂、そして殺人…モラルなき選挙戦の行方は!? 『ザ・メイヤー 特別市民』予告


『THE KING ザ・キング』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/134分/原題: 더 킹/英題:The King
 監督:ハン・ジェリム
 主演:チョ・インソン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、リュ・ジュンヨル
 提供:ツイン、パップ/配給:ツイン
※3月10日(土)よりシネマート新宿ほかで公開
★2017年韓国観客動員数第6位で、チョン・ウソンとチョ・インソンが最高の演技を見せてくれる検察ノワール。後日詳しくご紹介。

韓国映画『ザ・キング』日本オリジナル予告動画解禁!


『時間回廊の殺人』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/100分/原題:시간위의 집/英題:House of the Disappeared
 監督:イム・デウン
 主演:キム・ユンジン、オク・テギョン(2PM)、チョ・ジェユン
 提供:ニュ-セレクト/配給:アルバトロス・フィムル
※3月17日(土)よりシネマート新宿ほかで公開予定
★25年という時空を行き来しながら、いくつものメビウスの輪が絡み合うようなストーリーが展開。そことそこが繋がる?と思った瞬間、別の扉が立ち現れ、観客は翻弄される...。

『時間回廊の殺人』予告編


『ミッドナイト・ランナー』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/108分/原題:청년경찰/英題:Midnight Runners
 監督:キム・ジュファン
 主演:パク・ソジュン、カン・ハヌル、パク・ハソン、ソン・ドンイル
 配給:クロック・ワークス
※3月24日(土)よりシネマート新宿ほかで公開
★2017年韓国観客動員数第5位のヒット作。

韓国動員550万人突破の驚異的大ヒットアクション! 『ミッドナイト・ランナー』予告


『グッバイ・シングル』
2016年/韓国映画/韓国語/120分/原題:굿바이 싱글/英題:Familyhood
 監督:キム・テゴン
 主演:キム・ヘス、マ・ドンソク、キム・ヒョンス、クァク・シヤン
 提供:ハーク/配給:ファインフィルムズ
※4月7日(土)よりシネマート新宿ほかで公開

4月7日公開『グッバイ・シングル』予告編


『リアル REAL』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/138分/原題: 리얼/英題:
 監督:イ・サラン
 主演:キム・スヒョン、チェ・ジンリ(ソルリ)、ソン・ドンイル、イ・ソンミン、チョ・ウジン
 配給:ツイン
※4月14日(土)よりシネマート新宿ほかで公開
★キム・スヒョンの二役が見られ、彼の様々な姿が登場する、ファンには嬉しい作品。しかしながら映画としては、かなりとっちらかった印象が...。

「リアル」予告編


『タクシー運転手 約束は海を越えて』 公式サイト
2017年/韓国映画/韓国語/137分/原題:택시운전사/英題:The Taxi Driver
 監督:チャン・フン
 主演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
 配給:クロックワークス
※4月21日(土)よりシネマート新宿ほかで公開
★これぞ、2017年韓国観客動員数第1位の大ヒット作。詳しいご紹介はのちほど。

2017年韓国No.1大ヒット!『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』 本予告


『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』
2017年/韓国映画/韓国語/120分/原題:불한당: 나쁜 놈들의 세상/英題:The Merciless
 監督:ピョン・ソンヒョン
 主演:ソル・ギョング、イム・シワン、チョン・ヘジン、キム・ヒウォン、イ・ギョンヨン
 配給:ツイン
※5月5日(土)より新宿武蔵野館ほかで公開
★詳しいご紹介はまたのちほど。

すごいですねー、韓国映画の攻勢。実は、中国語圏映画も結構公開されるので、それはまた後日、ご紹介致します。(”後日”が多く、宿題は溜まるばかり...)



『ダンガル』ゆうばりで『ジュマンジ』と激突!

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3月15日から始まる<ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018>で、『ダンガル きっと、つよくなる』(2016)が4月6日(金)からの公開に先駆けて上映されます。特別招待部門での上映で、オープニング作品はソニーピクチャーズの『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)であることから、ソニーとディズニーの威信を賭けた(?)争いとなりそうです。実はこの2作品、共に日本での公開日が4月6日(金)で、その対決が前倒しになった、という感じですね。映画祭の公式サイトはこちらです。

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』 公式サイト 上映日:3月15日(木)18:00~

2017年/英語(日本語字幕)/119分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 監督:ジェイク・カスダン
 出演:ドウェイン・ジョンソン、ケヴィン・ハート、ジャック・ブラック、カレン・ギラン、リス・ダービー、ボビー・カナヴェイル、ニック・ジョナス

VS.

『ダンガル きっと、つよくなる』 公式サイト 上映日:3月17日(土)12:30~

2016年/ヒンディー語(日本語字幕)/140分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/ギャガ

 (画像がないのでインド版ポスターを)

 監督:ニテーシュ・ティワーリー
 出演:アーミル・カーン、サークシー・タンワル、ファーティマー・サナー・シャイク、ザーイラー・ワシーム、サニャー・マルホートラー、スハーニー・バトナーガル、アパルシャクティ・クラーナー  

一刻も早く『ダンガル きっと、つよくなる』が見たい!というアーミル・カーンのファンの方は、夕張市応援のためにも、来月北海道へ飛んでゆうばりファンタにご参加下さい。主題歌のMVを付けておきますので、「♪ダンガル、ダンガル♫ ♪ダンガル、ダンガル♫」の所は一緒に歌って下さいね。

Dangal - Title Track | Lyrical Video | Dangal | Aamir Khan | Pritam | Amitabh B | Daler Mehndi


『ダンガル きっと、つよくなる』のチラシ到着!

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ギャガさんにお願いして送っていただいた、『ダンガル きっと、つよくなる』のチラシが届きました。早速スキャンして、お見せしてしまいましょう。

古いパソコンを使ってのスキャンなので、いまいち画像がよくなくてすみません。「古いパソコン」を使わざるを得なかったのは、5年ぐらい前に買って酷使していたパソコンが、一昨日の夜クラッシュしてしまったからです(泣)。昨日電気店に持って行ったら、ハードディスクが壊れているようでおシャカにするしかないらしく、仕方がないので新しいのを買って、今データの入れ替えをやってもらっています。画像とメールの送受信データだけは何とか助かってほしいのですが...。今後いろんなアジア映画を詳しくご紹介しようと、たくさんの映画の画像をいただいていたので、それが使えないとなるとOMG!天ア!です。世の中、一寸先は闇ですねぇ。

というわけで「きっと、つよくなる、♪ダンガル、ダンガル」と唱えながら、タッチの感覚が違うキーを打っています。私も、ギーターとバビーター(姉妹の名前の原音表記)に負けないようがんばる!(スパルタ親父を貸してほしい...)

<追記>予告編も登場!

「ダンガル きっと、つよくなる」予告編


2018年公開予定のアジア映画ラインアップ

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現在、「キネマ旬報」2月下旬号「キネマ旬報ベストテン発表特別号」が発売中です。例年のように、「2018年 劇場公開予定作品ラインアップ」が掲載されていますが、 本年もこれをもとに、今年の劇場公開予定アジア映画作品ラインアップをまとめてみました。数が多いためポスター画像や予告編を挟まずに、ずらーっとデータだけ並べます。地域別の中の順番は、公開予定順です。 

<韓国映画>

『THE KING ザ・キング』
(2017/韓国/韓国語/原題: 더 킹)
 監督:ハン・ジェリム
 主演:チョ・インソン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、リュ・ジュンヨル
 配給:ツイン
 公開予定:3月10日(土) 

『ミッドナイト・ランナー』 
(2017/韓国/韓国語/原題:청년경찰)
 監督:キム・ジュファン
 主演:パク・ソジュン、カン・ハヌル、パク・ハソン、ソン・ドンイル
 配給:クロック・ワークス
 公開予定:3月24日(土) 

『グッバイ・シングル』 
(2016/韓国/韓国語/原題:굿바이 싱글)
 監督:キム・テゴン
 主演:キム・ヘス、マ・ドンソク、キム・ヒョンス、クァク・シヤン
 配給:ファインフィルムズ
 公開予定:4月7日(土) 

『リアル』
(2017/韓国/韓国語/原題: 리얼)
 監督:イ・サラン
 主演:キム・スヒョン、チェ・ジンリ(ソルリ)、ソン・ドンイル、イ・ソンミン、チョ・ウジン
 配給:ツイン
 公開予定:4月14日(土) 

『The Fortress』
(2017/韓国/韓国語/原題:남한산성(南漢山城))
 監督:ファン・ドンヒョク
 主演:イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイル
 配給:ツイン
 公開予定:4月14日(土) 

『タクシー運転手 約束は海を越えて』
(2017/韓国/韓国語/原題:택시운전사)
 監督:チャン・フン
 主演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
 配給:クロックワークス
 公開予定:4月21日(土) 

『犯罪都市 アウトローズ』
(2017/韓国/韓国語/原題:범죄도시)
 監督:カン・ユンソン
 主演:マ・ドンソク、ユン・ゲサン
 配給:ファインフィルムズ
 公開予定:4月28日(土) 

『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』
(2017/韓国/韓国語/原題:불한당: 나쁜 놈들의 세상)
 監督:ピョン・ソンヒョン
 主演:ソル・ギョング、イム・シワン、チョン・ヘジン、キム・ヒウォン、イ・ギョンヨン
 配給:ツイン
 公開予定:5月5日(土) 

『それから』
(2015/韓国/韓国語/原題:)
 監督:ホン・サンス
 主演:クォン・ヘヒョ、キム・ミニ、キム・セビョク
 配給:クレストインターナショナル
 公開予定:初夏 

『夜の浜辺でひとり』
(2017/韓国、ドイツ/韓国語/原題:)
 監督:ホン・サンス
 主演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ
 配給:クレストインターナショナル
 公開予定:初夏 

『クレアのカメラ』
(2017/韓国、フランス/韓国語/原題:)
 監督:ホン・サンス
 主演:キム・ミニ、イザベル・ユペール、チャン・ミヒ
 配給:クレストインターナショナル
 公開予定:夏 

『ひとめぼれ(仮題)』
(2017/韓国/韓国語/原題:)
 監督:ホン・サンス
 主演:キム・ミニ、チョン・ジェヨン、コ・アソン
 配給:クレストインターナショナル
 公開予定:夏 

『V.I.P.(原題)』
(2017/韓国/韓国語/原題:브이아이피)
 監督:パク・フンジョン
 主演:チャン・ドンゴン、キム・ミョンミン、イ・ジョンソク
 配給:クロックワークス
 公開予定:初夏 

『Kkun(英題』
(2017/韓国/韓国語/原題:꾼)
 監督:チャン・チャンウォン
 主演:ヒョンビン、ユ・ジテ、ペ・ソンウ
 配給:クロックワークス
 公開予定:夏 


<中国・香港・台湾映画>

『ゴッド・オブ・ウォー』
(2017/香港・中国/中国語/原題:蕩寇風雲)
 監督:ゴードン・チャン(陳嘉上)
 主演:チウ・マンチェク(趙文卓)、サモ・ハン・キンポー(洪金寶)、倉田保昭
 配給:ハーク
 公開予定:3月10日(土) 

『恋するシェフの最強レシピ』
(2017/香港・中国/中国語/原題:喜歓·你)
 監督:デレク・フイ(許宏宇)
 主演:金城武、チョウ・ドンユイ(周冬雨)
 配給:ハーク
 公開予定:3月10日(土) 

『メイド・イン・ホンコン』
(1997/香港/広東語/原題:香港製造/4kレストア・デジタルリマスター版)
 監督:陳果(フルーツ・チャン)
 主演:サム・リー(李璨森)、ネイキー・イム(嚴栩慈)
 配給:ユナイテッドエンタテインメント
 公開予定:3月10日(土) 

『ミッション・アンダーカバー』
(2015/中国/中国語/原題:非凡任務)
 監督:アラン・マック(麦兆輝)、アンソニー・パン(潘耀明)
 主演:ホアン・シュアン(黄軒)、ドアン・イーホン(段奕宏)
 配給:マクザム
 公開予定:3月11日(日) 

『グレート・アドベンチャー』
(2017/中国/中国語・英語/原題:侠盗聯盟)
 監督:スティーブン・フォン(馮徳倫)
 主演:アンディ・ラウ(劉徳華)、スー・チー(舒淇)、トニー・ヤン(楊祐寧)
 配給:ハーク
 公開予定:3月31日(土) 

『29歳問題』  
(2016/香港/広東語/原題:29+1)
 監督:彭秀慧(キーレン・パン)
 主演:周秀[女那](クリッシー・チャウ)、鄭欣宜(ジョイス・チェン)、蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)、楊尚斌(ベン・ヨン)
 配給:ザジフィルムズ/ポリゴンマジック
 公開予定:春 

『軍中楽園』
(2014/台湾/中国語/原題:軍中樂園)
 監督:ニウ・チェンザー(鈕承澤)
 主演:イーサン・ルアン(阮継天)、アイビー・チェン(陳意涵)
 配給:太秦
 公開予定:5月 

『夏、19歳の肖像』
(2017/中国/中国語/原題:夏天、19歳的肖像)
 監督:チャン・ロンジー(張栄吉)
 主演:ホアン・ズータオ(黄子韬)
 配給:マクザム
 公開予定:夏 

『Sky Hunter(英語題)』
(2017/中国/中国語/原題:空天獵)
 監督:リー・チェン(李晨)
 主演:リー・チェン(李晨)、ファン・ビンビン(范冰冰)
 配給:アット エンタテインメント
 公開予定:2018年 

『The Kids(仮題)』
(2015/台湾/中国語/原題:小孩)
 監督:サニー・ユイ
 主演:ウー・チエンホー、ウェン・チェンリン、クー・ユールン
 配給:ココロヲ・動かす・映画社○
 公開予定:2018年  

『レイジー・ヘイジー・クレージー』
(2015/香港/広東語/原題:同班同學)
  監督:ジョディ・ロック (陸以心)
  主演:クォック・イッサム(郭奕芯)、フィッシュ・リウ(廖子妤))、マック・チーイ(麥芷誼)
  配給:ココロヲ・動かす・映画社○
  公開予定:2018年


<東南アジア映画>

『バリクバヤン(仮題)』
(2015/フィリピン/タガログ語・英語・スペイン語/原題:Balikbayan #1: Memories of Overdevelopment Redux III )
 監督:キドラット・タヒミック
 主演:キドラット・タヒミック、ジョージ・スタインバーグ、カワヤン・デ・ギア
 配給:シネマトリックス
 公開予定:夏 

『ベトナムを懐(おも)う』
(2017/ベトナム/ベトナム語/原題:Da Co Hoai Lang)
 監督:ヌエン・クワン・ブン
 主演:ホアイ・リン、チー・タイ、トリッシュ・レ
 配給:アルゴ・ピクチャーズ
 公開予定:9月 

『Bad Genius(英題)』
(2017/タイ/タイ語/原題:)
 監督:ナタウット・プーンピリヤ
 主演:チュティモン・ジャンジャルーンスックジン
 配給:ザジフィルムズ、マグザム
 公開予定:2018年 

『珈琲哲学-恋と人生の味わい方-(仮題)』
(2017?/インドネシア/インドネシア語/原題:Filosofi Kopi 2?)
 監督:アンガ・ドゥイマス・サソンコ
 主演:チコ・ジェリコ、リオ・デワント、ジュリー・エステル
 配給:ココロヲ・動かす・映画社○
 公開予定:2018年
※『珈琲哲学』(TIFFでの上映時のタイトルは『珈琲哲學-恋と人生の味わい方-』)というタイトルの作品は昨年すでに上映済みなので、「ベンとジョディ ~珈琲哲學 第二章~」(アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映)では、と思います。「キネマ旬報」のリストにはタイトルと監督名、キャスト名しかなく、製作年が明記してない(()内のデータはこちらで整備したもの)ので、ちょっと不明です。 


<インド映画>

『ダンガル きっと、つよくなる』
(2016/インド/ヒンディー語/原題:Dangal)
 監督:ニテーシュ・ティワーリー
 主演:アーミル・カーン、ファーティマー・サナー・シャイク
 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン、ギャガ
 公開予定:4月6日(金) 

『機械(仮題)』
(2016/インド、ドイツ、フィンランド/ヒンディー語/ドキュメンタリー映画/原題:Machines)
 監督:ラーフル・ジャイン
 配給:アイ・ヴィー・シー
 公開予定:夏 

『ガンジスに還る』
(2016/インド/ヒンディー語/原題:Mukti Bhavan)
 監督:スバーシシュ・ブティヤーニー
 主演:アディル・フセイン、ギータンジャリ・クルカルニー
 配給:ビターズ・エンド
 公開予定:秋

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予備のパソコンで打っているため、ものすごく時間がかかってしまいました。というわけで、短い解説も付けられずすみません。インド映画の最後の2本だけちょっと情報を入れておくと、『機械(仮題)』は山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で上映されて好評を博した作品です。古い工場の機械がいろいろ映し出され、そこからインド社会が見えてる、という作品のようです。『ガンジスに還る』は、お正月の記事「新年好!」でご紹介した「Hotel Salvation」のことで、岩波ホールで上映されます。ガンジス川ほとりの聖地ベナレスへ、そこで最後を迎えるために赴く年老いた父と、父に付き従う中年の息子とを、ユーモアもまじえながら描いていく佳作です。

この2作品のほか、いずれの作品も原題をコピペしてYouTubeの検索に貼り付けていただくと、予告編(Trailer)が出てきますので、どんな映像かご覧になりたい方はチェックしてみて下さいね。2018年もたくさんのアジア映画が公開されますので、楽しみにしていましょう!


インド映画の話題あれこれ

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インド映画の映画祭上映やソフト発売の話題をまとめてみました。

1.『ブルカの中の口紅』(2016)上映とアランクリター・シュリーワースタウ監督のトーク  

 2月12日(月・祝) 14:00~ 
 アテネ・フランセ文化センター(定員130名/自由席) アクセス
 500円(上映30分前の開場時より発売開始)
公式FB

Lipstick Under My Burkha (2017).jpg

明日のイベントですのに、今頃の告知になってすみません。パソコンの故障で、画像もなくて...状態です。この映画は2016年の東京国際映画祭で上映され(紹介サイトはこちら)、その時にアランクリター・シュリーワースタウ監督、そして主演女優のアハナー・クムラーとプラビター・ボールタークル(『PK』のアヌシュカー・シャルマーの妹役でもあります)の2人が来日したのですが、今回は監督と共に音楽監督のゼーブンニサー(ゼーブ)・バンガシュが来日するとか。下の映像のように、ステキな歌手でもありますので、何か歌って下さるかも。パキスタンの映画賞で受賞した時の映像ですが、ボリウッド映画でもお馴染みのアリー・ザファルが司会をしています。

Zeb Bangash | Best OST Diyar-E-Dil | Lux Style Award 2016

 『ブルカの中の口紅』はインド中央映画検定局との攻防の末、昨年やっと公開されたのですが、何とスマッシュ・ヒットに。そんなお話も監督から聞けるかも知れません。私も会場に行きますので、ご一緒にぜひどうぞ。

 

2.大阪アジアン映画祭で『ニュートン』上映

すでに皆さんご存じでしょうが、3月9日(金)~18日(日)、第12回大阪アジアン映画祭が開催されます。昨年の上映作品が今年次々と公開になったりしていますが、オープニング作品の『朴烈(パク・ヨル) 植民地からのアナキスト』を始め、1日でも早く見たい作品ばかり。インド映画ファンの方は、『ニュートン』をぜひ楽しみにしていて下さいね。2017年、最も高く評価されたアート系作品、と言っても過言ではない作品で、『クイーン』の情けない婚約者を演じたラージクマール・ラーオが主演です。主人公の名前が「ニュートン」と言うのですが、下の予告編でもおわかりのように、ヌータン・クマールという本名があるにもかかわらず、自分で「ニュートン」と名乗るようになったのだとか。ナクサライト(極左の過激派で武装闘争主義者)が出没する農村地区の選挙監視委員になった、この青年の運命やいかに?

Newton | Official Trailer | Rajkummar Rao

共演は、パンカジ・トリパーティー(『血の抗争』などに出ている個性派おじさん俳優。悪役が多いのですが、『ニュー・クラスメイト』では人のいい校長先生役でした)、マラーティー語映画でも活躍する女優アンジャリー・パーティル、『Masaan』(Netflix題名は『生と死と、その間にあるもの』)など最近ひっぱりだこのおじいさん俳優サンジャイ・ミシュラーらです。私もとっても見たいのですが、3月はダメなんです...(泣)。

また、大阪アジアン映画祭では、スリランカ映画『パンツ泥棒』も上映されます。映画祭の公式サイトにある、上映作品一覧はこちらです。


3.『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』&『ダバング 大胆不敵』極音上映@立川シネマシティ

普段は原則として、再上映以降のインフォメーションは載せないのですが、『ダバング 大胆不敵』の公開元ビオスコープ社さんから送られてきたご案内に、「『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』 は本年の3月で日本での上映契約が終了とのことで、最後に全国を回るようです」とあり、これは大変、ということでご紹介することにしました。『ダバング 大胆不敵』ともども、「日本で一番音響がいいとの評判の劇場で音楽が重要なインド映画にはピッタリだと思います」とのことなので、映画を見る楽しみが倍加すると思います。

 

Omshantiom.jpg Theatrical release poster of Dabangg.

第二金曜 極音ナイト

 『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』 劇場サイト
  2月16日(金)19:00~ 1日限定上映《極上音響上映》 
  2月16日(金)~22日(木)の上映も予定

 『ダバング 大胆不敵』  劇場サイト
  2月23日(金) 1日限定上映《極上音響上映》(開始時間は未定のようです)

 立川シネマシティ HP
 tel:042-525-1251 

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』の今後の日本各地での上映予定は、配給会社アップリンクのサイトをご参照下さい。宝塚歌劇の舞台になったのがちょうど1年前。こちらに舞台レポートがありますが、ノベライズ本での字幕歌詞訳無断使用事件もあったけ(遠い目)。スクリーンで見られなくなるのは本当に残念です...。

4.『裁き』ソフト発売予約受付中

というわけで、今やソフトでしか見られないインド映画が増えていますが、インド映画ファンの皆さんは、ソフトをがっつり買っておいて下さいね。私が今、待っているのは、昨年さんざん楽しませてもらったマラーティー語映画『裁き』のブルーレイ/DVD発売。3月2日(金)発売予定で、3月1日にはやってくるはず。アマゾン沼でのご紹介はこちらですが、配給会社トレノバさんから画像をいただきましたので、ブルーレイとレンタルDVDの画像を付けておきます。 

 

この画像だけは、添付ファイルで送って下さったので、PCクラッシュから逃れられたんですよね。あとのいろんな画像は、ダウンロードしてサイズ調整も済ませているのに、もしかしたら全部オシャカかもしれないんです、トホホ。 

それはさておき、この『裁き』はとても興味深くて面白い映画で、2度、3度と見るたびに新たな発見があり、毎回見ては興奮していました。私はトレノバさんから字幕仮ミックスDVDをお借りして、トークや監督インタビューに備えたのですが、合計6、7回は見たでしょうか。ですので、ついトークで自分の発見をしゃべりすぎてしまい、横浜シネマリンの時のように時間切れになったこともしばしば。あと、日本で制作された『裁き』の予告編が実によくできていて、某大学のゲスト講師をした時に、予告編だけで「映画を読む」という授業を成立させてしまったことがありました。招いて下さった先生からは、「3分ほどの予告編だけで授業ができるなんて、初めて知った」とあきれられてしまったのですが、登場人物たちを上手に紹介してあり、問題となりそうなシーンがバッチリ押さえてあって、解説の素材が山と眠っている予告編なのでした。もう一度、ぜひご覧になってみて下さい。

ある歌手が裁判にかけられ…!映画『裁き』予告編

こういう優秀な配給会社さんと出会えたこともあって、『裁き』は忘れられない作品となりました。惜しむらくは、もうちょっと配給会社さんに儲けてもらいたかった(^^)という点で、ソフト発売を機にじっくり見ていただき、ファンが増えることを願っています。


5.『バーフバリ 王の凱旋』もソフト発売予約受付中

こちらは「もう出ちゃうの?」なんですが、アマゾン沼のこちらのとおり、あと10日で発売です。でも、まだまだ各地で上映が続きますので、公式サイトの劇場情報公式ツイッターをぜひ毎日チェックしていて下さいね。大スクリーンで王を称えたマヒシュマティ王国民の皆さんには、必ずや大きな「ラーブ(laabh/御利益)」がもたらされることでしょう。ジャイ・マヒシュマティ、シュブ・ラーブ! こちらは先日アップされた、ミュージカル・シーンの画像を付けておきます。

『バーフバリ 王の凱旋』MTV“バーフバリ万歳”

 

『ブルカの中の口紅』上映&監督トーク・イベント報告  

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昨日紹介して、今日はもうレポート書いてます・・・と昨夜書きかけたのですが、写真を整理していたら眠くなってしまい、報告が今日になりました。昨日、2月12日(月・休)にアテネフランセ文化センターのホールで行われたシンド映画『ブルカの中の口紅』の上映と、アランクリター・シュリーワースタウ監督を招いてのトーク・イベントは、場内ほぼ満員という盛況で、来日した監督もとても喜んでいました。

Lipstick Under My Burkha (2017).jpg

『ブルカの中の口紅』は、2016年の東京国際映画祭で上映され(ストーリー紹介と上映後のQ&Aの報告はこちら)、最終日には国際交流基金アジアセンター特別賞がアランクリター・シュリーワースタウ監督に授与されました。この賞には副賞があり、それによって今般監督が日本に招聘され、と同時に特別に上映会が「FUN FUN FUN! ASIAN CINEMA」の一環として開催された、というわけです。今回は監督と共に、『ブルカの中の口紅』の音楽担当で、パキスタンで作曲家、歌手として活躍するゼーブンニサー・バンガシュ音楽監督も来日しました。アランクリター・シュリーワースタウ監督はインドのムンバイ在住、ゼーブンニサー・バンガシュ音楽監督はパキスタンのラホール在住ということで、お二人は久しぶりの邂逅を喜び合っていました。下の写真はイベント終了後に撮ったもので、右が監督、左が音楽監督です。


『ブルカの中の口紅』は、会場で配られた解説にも書いたのですが、地方都市ボーパール(1984年に大きな青酸ガス漏れ事故でたくさんの犠牲者が出た町です)を舞台に、古い集合住宅に暮らす4人の女性を描いたもので、社会や家族による制約や偏見、圧迫から逃れようとする彼女たちの姿が描かれます。かなり激しいセックス描写や、きわどいセリフなどが入っていますが、それは、55歳のヒンドゥー教徒”おばさん”ことウシャー、30代のイスラーム教徒の主婦兼訪問販売員シーリーン、20代のエステシャンで起業をめざすヒンドゥー教徒のリーラー、そしてタイトル・ロールとも言える、ブルカの下にジーンズはいて大学に通うイスラーム教徒の女子学生レーハーナー(字幕や解説では、どの名前も音引きを取ってあります)の正直な心情を表出するために必要なものでした。ですが、インド政府の中央映画検定委員会(CBFC)はそれらを理由に当初検定を拒否、映画製作者側が上級機関に訴えて、かつ自主的に10数カ所のカットを申し出たため、再度検定が行われたのでした。そこでさらに数カ所のカットが指定され、結局「A(アダルト)」指定を受けたものの、映画は昨年7月に無事公開されました。そして、製作費6千万ルピー(1億円強)に対し、興収2憶6,680万ルピー(約4憶5,300万円)というスマッシュヒットになったのです。1年3ヶ月前の東京国際映画祭での上映から、今回の来日までの間に、こんなことが起きていたのでした。今回は写真を中心に、トークも含むイベントの様子を簡単にご紹介していきます。

『ブルカの中の口紅』上映が終わると会場から拍手が起こり、さあ、監督の登場かな、と思っていたら、美しい歌声が後方から流れてきました。何と、後方入口から、ゼーブンニサー・パンガシュ音楽監督(以下、「ゼーブ音楽監督」)が歌いながら登場です。(すみません、お顔が写り込んでいる方、パソコンが古くて目線が入れられずお許し下さい。どうしても不都合な場合は写真を取り下げますので、コメントを通じてご連絡下さい)通路を歌いながら進み、前のステージに登場。歌は映画の中の曲で確か「Le Li Jaan」だったと思いますが、興奮していてメモを取らず...。


アカペラのとてもやさしい声でした。パキスタンの人気歌手兼作曲家の素晴らしい歌声が聞けるなんて、本当にラッキー!


そして、司会兼モデレーターの松下由美さんが登場。ゼーブ音楽監督の短いご挨拶がありました。


ゼーブ音楽監督:ここに来られて本当に光栄です。日本に初めて公演で来たのは数年前でしたが、日本の皆さんと日本の文化、それに食べ物が大好きになりました。いつも来日すると嬉しいのですが、今回はまた特別に嬉しいです。自分が初めて音楽監督をやった映画の上映ということで、興奮を味わっています。この作品の音楽を担当する、というのは、自分にとって特別なことでした。この映画にはいろいろ障害も多かったのですが、監督が熱意を持って解決してくれました。ご承知のように、私の国パキスタンとインドとはそんなに仲がよくありません。だからよけいに、意義のある作品だったのです。監督とも頻繁に会えたわけではなかったので、ここで再会できて、国際交流基金の皆さんに感謝しています。


松下:この作品の持つメッセージを伝えるために、音楽にはどんな工夫をなさいましたか。

ゼーブ音楽監督:作詞はアムリター・ダースという有名な方にお願いし、私が作曲を担当しました。彼女の詩はヒロインたちの気持ちがにじみ出ているような内容だったので、それが生きるように曲を付けました。


そしていよいよ、アランクリター・シュリーワースタウ監督(以下、監督)の登場です。ゼーブ音楽監督もそのまま、前の客席に。


最初は、松下さんがいろいろと監督に質問をしていく予定だったようですが、観客の皆さんの目がキラキラしていたせいか、「どなたか、まずご自分の気持ちを伝えたい!という方がいらっしゃるようなら」ということで、女性の方の手が上がり、マイクが渡りました。インド映画をよく見ている方のようでした。


Q1:インドでも公開されたとありますが、どうしてこれが上映できたのか知りたいです。

監督:本当にラッキーだったんです。この映画は昨年7月に公開されてヒットしました。最初は上映禁止になったのですが、我々がいろいろトライした結果、公開できるようになりました。上級機関に控訴したりして大変だったんですけれど、全国封切りになってみると、いい反応が返ってきました。

松下:なぜ舞台をボーパールに? 数年前に東京国際映画祭で上映された、『祈りの雨』(2013)という、ガス漏れ事件を扱った作品が印象に残っているんですが。

監督:私はムンバイの人間なんですが、この作品にはボーパールがぴったりだったんです。主人公の4人のうち、2人はヒンドゥー教徒、2人はムスリム、つまりイスラーム教徒なのですが、それぞれ宗教の違う人たちが近い距離で暮らしている町、それがボーパールなんです。もう一つは、ボーパールは古い世界と新しい世界が共存している所でもあるんですね。全部がある町なのです、ボーパールは。それに、ボーパールは場所もいいし、住んでいる人たちもよくて、撮影にとても協力的なんです。ということで、ボーパールを選びました。


松下:検閲が通らなかった問題で、監督のお話ではカットしたのは数秒だけで、「あまりにもフェミニストすぎる」と言われてカットになったとか。フェミニズムの浸透具合の順位では、インドも低いんですが、日本はもっと下です。(注:すみません、松下さんはデータの数字をきちんと言ってらしたのですが、確認できずこんな書き方になりました)インドでは、この作品を保守的な男性などはどう思ったんでしょう。映画という媒体を、どういう考えで選ばれたのですか?

監督:主張が先にあって映画を撮っているわけではないんですが、女性のストーリーに興味があって、こういう作品を作っています。女性の考え方、視点、というものが、自分には大事で、そういう観点からの映画製作なんですね。映画を作る人の中には、ストーリーを語ることが大事、という人もいると思いますが、私の場合はちょっと違って、自分の観点を表現するためにたまたま映画を選んだ、ということです。


ここで、会場からの質問受付となります。 

Q2:最後は4人の女性が失敗した、ということでしょうか?

監督:エンディングは、オープンなエンドになっています。見る人の解釈に委ねているわけですが、ただ私は、4人の女性たちが失敗したとは思っていません。4人の女性が互いに助け合おうとする、希望を感じるエンディングになっていると思います。もちろん、その翌朝に何か大きな転換があって、彼女たちの人生が変わるという意味ではありません。彼女たちが自由に向かっていく助走となっている、とでも言えばいいでしょうか。もう一つ言うと、インド映画はスッキリと終わる作品が多いのですが、私はスッキリしない終わり方にして、観客にいろいろ考えながら帰ってほしいと思ったんです。ことは単純ではないんだ、というところを見せたいと思いました。

Q3:「女性のストーリーに興味がある」とおっしゃいましたが、そういう監督自身のご家庭、育った環境、そして他の子供たちも同じような状態だったのか、といったことをお聞きしたいのですが。

監督:私が育ったのは、女性がしっかりしていて強い家で、母も、そして祖母も高等教育を受け、働いていました。周囲の子供たちとは違っていたんですが、それが当たり前だと思って育ちました。私は女性を平等に扱う中で育ち、そういうことを教えられてきたんです。それは、進学した全寮制の女子校でも、女子大に入ってからも同じでした。母や祖母の考え方も、男女は平等でなければならない、というもので、その点、母や祖母に感謝しています。インドでは、人生の最大の目的は結婚することですが、私は親から「結婚しろ」と言われたことがありません。インドの大多数の人とは違っていますし、普通の女性から見ると変わっていると思います。

Q4:私は見ていて解放感を感じました。

監督:ありがとうございます。

Q5:インドではどんな人が見に行ったのですか? どんな人からの評価が高かったのでしょう? エンタメ系作品を見る観客とは違う人たちが見に行ったのでは?

監督:この映画には、エンタメ要素もいれておいたんですけどね(笑)。実は公開前に、マーケットリサーチ会社に頼んで観客の予想をしてもらったのですが、彼らの分析では、「誰も見に来ない」という結果が出ました。ところが公開してみるとヒットしたので、その会社から、「今後はリサーチ方法を変えます」と言う連絡が来ました(笑)。インドでは、見たい作品がないから映画を見に行かない、という人もいます。そういった人も含めて、観客がインディーズ系作品を支持してくれて、新しい観客層ができていったのではないかと思います。


Q6:インドでヒットした事に関していくつかお聞きしたいのですが、①観客は男性と女性、どちらが多かったのでしょうか、②年齢層は? ③監督のこれまでの作品とその傾向は?、④影響を受けた監督、あるいは作品は?

監督:私の監督作は、本作が2作目です。最初の作品は『Turning 30』(2011)という、都会に住む女性を主人公にした作品でした。彼女が自由とは何かを模索するストーリーで、本作とテーマが似通っていると言われればそうかも知れません。『ブルカの中の口紅』はヒットしたとは言っても、元々製作費が安い低予算映画ですから、人が押し寄せたわけではありません。男性もたくさん見に来てくれましたが、多かったのは女性、それもグループで見に来てくれた人が多かったです。若い人も多かったし、年齢層の高めの人もたくさんいました。あと、映画館だけでなく、女性たちのイベントでもよく上映されましたね。一つデータが出ているのは、アマゾンのストリーミング配信の視聴では南アジアで最もよく見られた作品となったことで、一番高い視聴率を獲得しました。


ゼーブ音楽監督:私もコメントしたいんですが、脚本を読んだ時、4人の女性の世代がそれぞれに違うので、興味を引かれました。あと、若い男性が自分よりずっと年上の女性に好感情を抱いていたりするシーンも、印象に残りました。

監督:4人の女性のうち、1人はだいぶ年上ですが、あとの3人はそれほど年の差はありません。でも、それぞれのライフステージが違っているので、これは女性の成長段階の話だとも言えると思います。本作に出てくる女性たちは、いずれも私自身の分身である、という気持ちで撮りました。若い男性観客では、リーラーのキャラクターが好きだ、という人が多いです。反対に女性観客は、”おばさん”ウシャーが気に入ったようで、好感度が高かったみたいです。

Q7:ディワーリー祭が描かれていますが、これはヒンドゥー教のお祭りでは? イスラーム教徒の人たちも一緒になって祝うのですか?

監督:ヒンドゥー教徒、イスラーム教徒の区別なく祝います。最大のお祭りであるディワーリーはもちろん、他のお祭りも同様です。インドは、マルチカルチャーの土地柄ですからね。外から見ると、ヒンドゥー教徒、イスラーム教徒と別々になっているように見られますが、こんな風にいろんな宗教の人がシェアするお祭りが多いです。いつもどこかで何かのお祭りをやっていますし、お祭りの周辺で、いろんなイベントが行われていることも多いです。ディワーリー祭も、10日間にわたって行われますしね。

Q8:好きな俳優は誰か、聞かせて下さい。

監督:私はワガママなので誰と言うことはできませんが、私の好きな俳優は、その役柄に一番ハマって、映画の中でしっかりとした演技をしてくれる人です。ですので映画が終わると、特に好きな人がいなくなりますね。


その後、ゼーブ音楽監督がもう1曲「Ishquiya」を聞かせてくれて、イベントは終了となりました。2時間の映画と、歌のパフォーマンスも挟んだ1時間半のトークショー、とっても充実したイベントでした。アランクリター・シュリーワースタウ監督、ゼーブンニサー・バンガシュ音楽監督、お疲れ様でした! 下はイベント終了後、リラックスした表情を見せるお2人です。監督にご挨拶したら、2016年の東京国際映画祭でインタビューしたことを憶えていてくれて、「おぉ!」と固い握手をしてくれました。(「INTRO」掲載のインタビュー記事はこちら


あとでちょっとゼーブンニサー・バンガシュ音楽監督としゃべる機会があり、ヒンディー語(彼女はウルドゥ語)で話していたら、「日本でもニックネームでみんな呼んだりするの?」と聞かれ、「ありますね。”~ちゃん”を付けて、例えば”tamaちゃん”とか呼ぶんですが、”~ちゃん”は言わばペルシア語の”~jaan”ですね」と言ったらそれがウケて、サインまでしていただいてしまいました。とってもきれいなウルドゥ語のサイン、読める方は読んでみて下さいね~。一番下の行が「ゼーブンニサー・バンガシュ」というお名前で、アラビア文字なので右から左へと読みます。楽しい時間をありがとうございました!



最後に、お二人を招聘して、上映とステキなイベントをして下さった国際交流基金アジアセンターの皆様にも感謝!です。東京国際映画祭での特集上映「CROSSCUT ASIA」、そろそろインドはいかがでしょうか?(と、この機に乗じて売り込む)

 

『ダンガル きっと、つよくなる』<予選:その1>

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先週のPCのクラッシュで、映画紹介記事のアップがほとんどお手上げ状態です。新しいPCを買った量販店で救えるデータは救ってもらったのですが、画像のファイルがほぼ全滅。せっかく宣伝会社さんからいただいた上で、ブログアップ用にリサイズしたのがみんなおじゃんになりました。泣くに泣けない...。不幸中の幸いでダウンロードのファイルが救済されているので、そこからまたコツコツと作品別ファイルを作り、リサイズしていくしかありません。ずーっと拒否していたウィンドウズ10になってしまったので、設定もなかなかできず、仕事をするためには古いパソコンをまた引っ張り出し...というわけで、一体どうなるのやら。めげていても仕方がないので、まずは一番書いておきたい『ダンガル きっと、強くなる』について、ちょこっとトリビア等をアップします。最初に映画のデータをどうぞ。

 

『ダンガル きっと、強くなる』 公式サイト

2016年/インド/ヒンディー語/140分/原題:Dangal
 監督:ニテーシュ・ティワーリー
 主演:アーミル・カーン、サークシー・タンワル、ファーティマー・サナー・シャイク、ザーイラー・ワシーム、サニャー・マルホートラー、スハーニー・バトナーガル、アパルシャクティ・クラーナー、リトウィク・サホーレー、ギリーシュ・クルカルニー
(cinetamaのカタカナ表記なので、配給会社の表記とは違っているかも知れません)
 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/ギャガ

※4月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

実話に基づいた本作ですが、上の日本版チラシに写っている3人が、主人公である父親のマハヴィル・フォガト(音引きを付けると「マハーヴィール・フォーガート」)と、左側が長女のギータ(同:ギーター)、右側が次女のバビータ(同:バビーター)です。演じているのは、長女ギータがザーイラー・ワシーム、次女バビータがスハーニー・バトナーガルで、どちらも少女時代の両者としての出演です。ハイティーン以降は、長女ギータをファーティマー・サナー・シャイク、次女バビータをサニャー・マルホートラーが演じています。下のインド版ポスターで、アーミル・カーンの右側に立っているのがギータ(大人時代)、そこから時計とは反対回りに、バビータ(大人時代)、ギータ(少女時代)、そして一番前がバビータ(少女時代)となります。最初このポスターを見た時は、これが4人の姉妹かと思ったのですが、ちょっと時空を超えた配置だったわけですね。

Dangal Poster.jpg

このほか、彼女たちの従兄オムカル(同:オームカール)も、本作では重要な役割を果たします。オムカルはマハヴィルの弟の息子。劇中ではマハヴィルが兄、とはっきり語られてはいないのですが、オムカルがマハヴィルのことを「ターウー・ジー(伯父さん=父親の兄)」と呼んでいることや、オムカルの父親がマハヴィルに「バーイー・サーハブ(兄さん)」と呼び掛けていることから、マハヴィルの方が年上とわかります。このあたり、英語字幕では「brother」だけなので、判別が大変ですね。

本作では、このオムカルの大人時代を演じているアパルシャクティ・クラーナーがナレーションも務めています。甥の立場からスパルタ伯父さんを語る語り口は、何とも軽妙かつ腰が引けていて、大いに笑わせてくれますが、この人、誰かに似ているのです。特にタレ目のあたりに見覚えが...と思って調べてみると、アーユシュマーン・クラーナーの弟でした。アーユシュマーン・クラーナーは、日本でも映画祭上映された『Vocky Donor(ドナーはビッキー)』(2012)、『ヨイショ! 君と走る日』(2015)などに出演している人気男優であり、歌手としても活躍している人です(下の写真はWikiより)。兄のアーユシュマーン・クラーナーはすでに10本近い作品に出演していますが、弟のアパルシャクテイ・クラーナーの方は『ダンガル』が初出演。初々しい(でも、すでにかなりおじさん顔)、オムカル役の演技を楽しむことができます。

AyushamannKhurrana.jpg

オムカルは、ヒロインのギータやバビータと同じく、子供時代を別の俳優が演じています。名前は、リトウィク・サホーレー。この名前にピン!と来たあなたには、インド映画熱烈ファン認定証を差し上げます。わからない方は、次の画像を見ていただきましょう。インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)での上映後に、小規模ながら公開された『フェラーリの運ぶ夢』(2012)です。


う~ん、ちょっとチラシの字が小さいですね。キャスト表の最後に「リトウィク・サホレ」とあります。そう、上のフェラーリにシャルマン・ジョーシーと共に乗っているのが、リトウィク・サホーレーです。『ダンガル』では中学生に成長したリトウィク君の姿を見ることができます。日本版予告編ではチラとしか登場しないので、彼の姿を確認できる現地版予告編を付けておきます。『フェラーリの運ぶ夢』を楽しまれた方は、背丈が伸びたリトウィク君にびっくりなさると思いますが、演技も達者で、『ダンガル』の前半にアクセントを付けてくれます。

Dangal | Official Trailer | Aamir Khan | In Cinemas Dec 23, 2016

後日、画像をいただいたらあらためてキャスト紹介をしますが、こんな風になかなか凝ったキャスティングです。なお、主人公の妻ダヤー(ギャガ様、いただいたプレスの表記「ダーヤ」は間違いです。ご訂正下さい)役はサークシー・タンワル、成長したギータが国の強化選手となった時のコーチ役はギリーシュ・クルカルニーで、2人とも、ヒンディー語映画と共にマラーティー語映画でも活躍しています。2人の顔が確認できる日本版予告編も付けておきます。

「ダンガル きっと、つよくなる」予告編

実はこの日本版予告編、セリフの字幕が「超訳」になっているんですね。予告編はえてして、実際の映画の中で使われている字幕とは違う、もっとキャッチーな訳の字幕を付けて見る人にアピールするものなのですが、『ダンガル』の予告編はそれがちょっと過剰になっていまして...。「今日からオリンピックを目指す」のセリフの元訳は、「(なぜなら)今日からお前たち2人はレスラーの人生を歩むんだ」なので、だいぶ「盛って」あります。聞くところによると、実際のフォガト氏は、娘たちが金メダルをとるためには強豪がいっぱい出場しているオリンピックでは不利なので、コモンウェルス・ゲーム(英連邦大会)にターゲットを絞って、見事金メダルを獲得させたのだとか。予告編のここの訳は、「今日からは金メダルを目指せ」とかの方がよかったかも。でもギータは2012年のロンドン・オリンピックに出場し、健闘しているので、それだけでもすごいことだ、ということで、今ちょうど冬季オリンピック期間でもありますし、この超訳が使われたのかも知れません。あと、最後のコーチのセリフ「誰だこいつ?」も、実際の内容は「(俺の)お茶はどうしたんだ?(まだ出てこないのか)」なので、劇中で悪者に描かれているとはいえ、ちょっとお気の毒ですね。予告編はそのシーンだけが切り取られて使われるため、字幕も付けるのが難しいのだ、とご理解下さい。すべては本編が勝負です!


最後にもう一つ、トリビアを。「ダンガル dangal」というのは「レスリング競技、レスリングの試合、レスリング競技場」というような意味なのですが、レスリングの試合の中でも、賞金や賞品が出る試合のことを言う単語のようです。スポーツとしてのレスリングというより、勝負事としてのレスリングですね。映画のセリフをよく聞いていると、それまでレスリングを「クシュティー kushti(インドの伝統的レスリング)」と呼んでいたのが、ギータを初めて試合に出場させる時に父親が、「明日はロータクに行くぞ。ダンガルに出るんだ」と言うのを聞くことができます。そしてその結果は....。このシーンも映画の中の見せ場の一つなので、ぜひ劇場でお楽しみ下さい。

なお、日本公開版『ダンガル』はインターナショナル版で、少し短い140分(インド上映版は161分)となっています。カットされているのはオープニングタイトルのシーン等で、前述のギータが初めてダンガルに出場するシーンでも、観客が彼女を揶揄してセクハラまがいの発言をする所などが切ってあります。オープニングタイトルは「♪ダンガル、ダンガル」という歌の入るシーンなのですが、一般のインド人たちがクシュティーをやっている姿をいろいろ写した映像が使われており、日本で言えばふんどし一丁で体を鍛える若者からおじさんまでが次々と登場します。クシュティーを知らない外国人が見たらどう思うだろうか、というような配慮でもって、監督がカットしたのかも知れません。なお、「♪ダンガル、ダンガル」の歌は、エンディングでたっぷり聴けますので、そこで楽しんで下さいね。


中国インディペンデント映画『関愛の家』上映

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専修大学の土屋先生からお知らせをいただきました。下にチラシの画像を貼り付けましたが、日本でも知られた胡傑監督と艾暁明監督による映画、『関愛の家(原題:関愛之家)』(2007)が上映されます。ゲストによる解説もありますので、ご興味がおありの方はぜひどうぞ。2月24日(土)午後3時15分から、専修大学神田校舎にての開催です。



『ビッグ・シック』でマサラ風味もちょっぴりどうぞ

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実話を元にした作品で、実話の主人公であるパキスタン系青年が脚本を書き、主演もしてしまった、という面白い映画があります。今年のアカデミー賞脚本賞にもノミネートされている、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』です。インド映画ではないのですが、インド映画ネタも登場する興味深い作品なので、ちょっとご紹介をば。まずは作品のデータをどうぞ。

(C)2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』 公式サイト

 監督:マイケル・ショウォルター
 主演:クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、レイ・ロマノ、アヌパム・カー(正しくは”ケール”)
 配給:ギャガ GAGA
※2月23日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国公開

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上写真の真ん中が、アヌパム・カーと書かれてしまっているアヌパム・ケールです。ボリウッド(インドのヒンディー語映画界)の名脇役ですね。Anupam Kherと綴るのですが、Kherを「カー」とはかなり苦しい読み方で、アメリカ人ならむしろ「ケー」と読むのではないでしょうか。でも、ずっと前、どの映画かの配給会社が(ひょっとして、『ベッカムに恋して』が2003年に公開された時?)「カー」と表記してしまったので、以後訂正してしまうと検索などで引っかからないため、仕方なく皆さん「カー」と表記しているようです。正しく「ケール」と表記して下さる勇気ある配給会社さんが今後出てきてくれることを祈りますが、彼は主人公の父親役です。主人公は右側にいるクメイル(クメイル・ナンジアニ)で、左側に座っているのは兄です。

クメイルはパキスタン生まれで、小さい頃に家族でアメリカにやって来ました。大学を出た彼は、両親からは弁護士になれと言われているのですが、彼の夢は一流のスタンダップ・コメディアンになること。そのため一人暮らしをしながら、小さなライブパブのステージに立っています。ほかに収入を得る手段としてウーバー(余談ながら、UberのCEOはイラン系アメリカ人のダーラー・コスローシャーヒー氏)の運転手もやっているのですが、そんな彼が出会ったのはアジア系ではない、若い白人女性エミリー(ゾーイ・カザン)でした。エミリーと親密な関係になったものの、毎週家に帰るたびに偶然を装ってパキスタン系の若い女性を次々と紹介する母や、イスラーム教徒の相手しか認めない父に言ったら絶対に大反対される、と秘密にするクメイル。ところが、母に押しつけられて会った女性たちの写真がエミリーに見つかってしまい、2人の仲は決裂しました。

しかしながら、エミリーが突然倒れ、彼女の友人から面倒を見てほしいと頼まれたクメイルは、病院に駆けつけます。エミリーの家族は離れた場所に住んでいるため、クメイルが治療承諾書にサインすると、治療法の一環としてエミリーは昏睡状態にさせられてしまいます。実家からかけつけたエミリーの両親(ホリー・ハンター、レイ・ロマノ)も動転してしまい、クメイルは彼らと一緒にエミリーを見守ることになるのですが、彼女はなかなか昏睡から覚めません...。

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映画の核となっているのは、クメイルとエミリーの恋、そしてエミリーの両親(上写真の左の2人)とクメイルとの心の交流です。この両親、こう言っては何ですが、どちらもちょっと変わり者。特にお母さんはエキセントリックな人なのですが、クメイルに対しての偏見とかはまったくなく、それはお父さんも同じ。そんな両親、特にお母さんが、クメイルと接することで彼女自身も変わっていくという柔軟な人に描かれていて、とてもチャーミングです。一方のクメイルの両親はというと、前述のように同じパキスタン出身のイスラーム教徒の娘しか眼中にない、という、頑固な人物として描かれます。多分にカリカチュアライズされていて笑えるものの、エミリーの両親に比べると「遅れてる」感がありあり。クメイルを演じたクメイル・ナンジアニの両親がモデルになっているんでしょうね。このあたりにマサラ風味が漂う作品なのでした。

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最初にも書いたように、これはクメイル・ナンジアニ、ウルドゥ語での発音は「クメイル・ナンジヤーニー」が実際に体験したことを描いています。『ビッグ・シック』のプロデューサー、ジャド・アパトーがある作品に端役で出演していたクメイルに光る才能を見出し、話しているうちにこの体験談を聞いて、「映画にしないなんてありえない!」と説得したのだとか。クメイルは妻のエミリー・V・ゴードンと共同で脚本を書き、それがアカデミー賞候補になっているのですから、人生どう転ぶかわからないものですね。『ビッグ・シック』をご覧になれば、この2人の体験の特異さがよくわかり、「人生どう転ぶかわからない」感がアップすると思います。

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この作品はアメリカでもヒットしたそうなのですが、マスコミ試写のプレスに載っていた町山智浩さんの解説文によると、ここ最近の、インド&パキスタン系コメディアン・ブームがその背景にあるのだとか。長いので印パ系コメディアンと言ってしまいますが、そういえば数年前、カナダで活躍する印パ系コメディアンの動画をよくYouTubeで見ていて、次々繰り出される自虐ネタに笑った覚えがあります。上の写真は、クメイルが芸を披露するパブで共に舞台に立つ仲間たちですが、こういう中に印パ系の人がいても違和感がないのが今日のアメリカなのでしょう。町山さんが引用している彼らのジョークに、「うちの親父は成績オールA以外許さないんだ。俺の血液型がBだと知って勘当しようとしたよ」というのが書いてありますが、実際印パ系の人々にはB型が多く、それが「口が達者」という性格を形作っているのだ、というのは友人の血液型研究家の話。コメディアンには向いていると言えます。IT技術者の次は、印パ系の人はコメディアンとしてアメリカで地歩を築いていくかもしれません。

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ところで、『ビッグ・シック』の中のインド映画ファクターは? インド映画ファンの方がご覧になる時の楽しみがなくなるのでそれには言及しませんが、1つだけ疑問に思ったことがあるので書いておきます。クメイルの両親は結婚前に一緒にボリウッド映画を見に行って、それで結婚を決めたそうなのですが、その映画題名が本作の最後の方で明かされます。期待してそのセリフを待っていた私の耳に飛び込んできたのは、『サッテー・ペー・サッター』という題名。へ? 

Satte Pe Satta poster.jpg

『サッテー・ペー・サッター(Satte Pe Satta)』(1982)の意味は「7の上に7」で、MGMの有名なミュージカル映画の焼き直しです、といえば、古き良き時代のミュージカル映画がお好きな方はすぐおわかりでしょう。そう、『略奪された7人の花嫁(Seven Brides for Seven Brothers)』(1954)ですね。元の映画は私の好きなラス・タンブリンも出ていて、ダンスシーンが見応えのある開拓時代ものミュージカルだったのですが、その設定をパクった『サッテー・ペー・サッター』は、アミターブ・バッチャン&ヘーマー・マーリニー主演作ではあったものの、それほどヒットした作品ではありませんでした。どうせ見に行くなら、もう少しましなアミターブの映画があったでしょうに、と思ってしまいましたが、これも実際のクメイルの両親がその時に見た映画なのかもしれません。

というわけで、映画としてもしっかり楽しめ、アメリカの現実もとっくりわかり、マサラ風味もちょっぴり味わえる『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』、春休みにぜひどうぞ。

 

追悼シュリデヴィ

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『マダム・イン・ニューヨーク』の主演女優シュリデヴィ(ヒンディー語表記に倣って音引きを付けると「シュリーデーヴィー」)が、昨日、2月24日に心臓発作のため亡くなりました。1963年8月13日生まれなので、享年54。シュリデヴィはプロデュ-サーである夫のボニー・カプール(アニル・カプールの兄で、アルジュン・カプールの父)、下の娘クシーと共に、ボニー・カプールの妹の息子である俳優モーヒト・マルワーの結婚式に出席するためドバイに行っていたそうで、その旅先での急死でした。上の娘ジャーンヴィーは現在デビュー作を撮影中のためドバイには行かなかったそうなのですが、どんなにかショックを受けていることでしょう。来日時、母娘3人で仲良く買い物をしていたり、着物姿で記念写真を撮っていた姿が配給会社ビオスコープ社のツイッターに載っていたことを思い出します。その2014年5月末の来日時の写真を付けておきます。5月29日に行われた記者会見のレポートはこちらをどうぞ。写真もいっぱい入れてあります。

シュリデヴィの遺体は、財閥のアニル・アンバーニーが差し向けたプライベートジェット機でドバイから戻るそうで、明日は自宅でお別れが行われ、その後斎場へと向かうのではないかと思います。インドの有名人の場合、たいていYouTubeにお葬式の様子がニュースチャンネルによってアップされますので、それを見ながら彼女のご冥福を祈ることにしますが、来日時、「油もの、揚げ物とかは食べないのよ。あとはお水をいっぱい飲むわ」と語っていて、健康には十分注意していたと思われるシュリデヴィなのに、どうしてこんなことに、と思わずにはいられません。

約50年間、女優として歩んできて、最後の主演作は昨年公開されたサスペンス映画『Mom(ママ)』でした。出演した作品はざっと数えて280本。子役時代(1967~1977ぐらいまで)、ヒロインとしてカマルハーサンやラジニカーントと共演したタミル語映画時代(1977~1982あたりまで。1978年のカマルハーサン主演作&バーラディーラージャ監督作『Sigappu Rojakkal(赤いバラ)』がヒットし、一躍トップ女優となりました)、ボンベイ(現ムンバイ)映画界に進出し、「ワン・ウーマン・インダストリー」とまで言われたボリウッド時代(1983~1995ぐらいまで。1983年のジテーンダルとの共演作『Himmatwala(勇気ある者)』のヒットで全国区の人気となり、『Mr.インディア』(1987)で人気は頂点に。その後、ヤシュ・ラージ・フィルムズの『Chandni(チャーンドニー)』(1989)と『Lamhe(ひととき)』(1991)で演技力も認められて、アミターブ・バッチャンに代わり業界トップの座に君臨)、そして、結婚後半引退状態だった彼女をカムバックさせた『マダム・イン・ニューヨーク』(2012)からの再登場時代と、活躍期は4つぐらいに分けることができます。主演作約280本の中で日本で上映されたことがあるのは、『三日月』(1982/タミル語)と『Mr.インディア』(1987/ヒンディー語)、そして『マダム~』ぐらいで、あとDVDスルーの作品やテレビ放映された作品があるのみです。

インドでは、回顧上映が行われるかも知れませんね。日本でも、何かできるといいんですが...。


韓国映画の実力派俳優シリーズ第1弾『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』

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2017年の韓国映画観客動員数No.1の作品が日本のスクリーンに登場します。こちらでもちらとご紹介した、ソン・ガンホ主演の『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』です。ご承知の方も多いかと思いますが、本作は1980年5月に起こった光州事件を背景に、日本から光州事件の取材にソウルへ飛んだドイツ人記者と、彼を光州まで乗せてまたソウルへと連れ帰った個人タクシー運転手との交流を描いています。ただ、想像していたような英雄譚や美談ではなく、2人のマイナス面にも踏み込むリアルな作品で、それゆえに光州事件自体を観客に問いかける内容ともなっています。まずは、映画のデータをどうぞ。

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『タクシー運転手 約束は海を越えて』 公式サイト

2017年/韓国/韓国語・英語/137分/原題:택시운전사/英題:A Taxi Driver
 監督:チャン・フン
 主演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
 配給:クロック・ワークス
※4月21日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー

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1980年の春。個人タクシー運転手のキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は、道路事情もよくなりつつあるソウルの街を快調に飛ばしていました。口をついて出るのは、譚詠麟(アラン・タム)が「火美人(フォーメイヤン)」というタイトルで歌って中華圏でヒットさせた、趙容弼(チョー・ヨンピル)作曲の軽快な歌。一見のんきそうなマンソプでしたが、妻を亡くし、11歳の娘を男手ひとつで育てている苦労人で、稼ぎもあまりよくないため、家賃支払いも滞りがちでした。そんなある日、タクシー運転手が集まる食堂で、耳寄りな話を漏れ聞きます。仲間の一人が、これから外国人客を乗せて光州(クワンジュ)まで行き、通行禁止となる前にソウルに戻れば10万ウォンもらえると自慢していたのです。10万ウォンといえば滞納している家賃の額ではないか!と、その運転手を出し抜いてマンソプが待ち合わせ場所にタクシーを走らせると、韓国人記者(チョン・ジニョン/カメオ出演)と共に待っていたのは、日本からやってきたドイツ人記者のピーター(トーマス・クレッチマン)でした。以前中東に出稼ぎに行っていたマンソプは、適当なブロークン・イングリッシュで二人を煙に巻き、ピーターを乗せて一路光州へと向かいますが、その頃光州は大きな混乱のまっただ中にあったのでした...。

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光州事件は、これまでもイ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディー』(1999)やキム・ジフン監督の『光州5・18』(2007)などで描かれてきましたが、1979年末にクーデターで全権を掌握した軍人の全斗煥(チョン・ドゥファン)が1980年5月17日に戒厳令拡大措置を実施し、金大中(キム・デジュン)ら民主派と目される人々を逮捕したのがきっかけとなりました。それに反発した学生を中心とする人々が立ち上がったのが5月18日で、光州市を中心に、特に全羅南道で激しい抗議行動が起きたと言われています。それを知った東京在住のドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)はすぐにムービーカメラを携えてソウル入りし、韓国人記者の助けを借りて情報を収集、今ならまだ光州に入り、町が封鎖される前にソウルに戻ってこられる、と判断してタクシーを飛ばすことにしたようです。彼の証言などをもとに構成された本作は、人情話やドラマチックな展開も盛り込みながら、2日間にわたるマンソプとピーターの足取りを追って光州事件を再現していきます。

 

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見せ場はいくつかあり、まずすでに軍隊が展開している光州へ、通行止めになっている幹線道路を避けて車がいかに入るか、というシーンに手に汗握らされます。そして、うまく入り込んだ光州で見たものすごい現実が2つめの見せ場になるのですが、当初はトラックで移動する大学生たちにインタビューしたり、英語が話せるク・ジェシク(リュ・ジュンヨル)がピーターの通訳のような形でついていくことになったりと、高揚感は漂うものの割とのんびりしたシーンが続きます。しかしながら、病院に行ってみるとけが人や亡くなった人が大勢いることがわかり、緊迫度がいや増しに。そんな中、タクシーも抗議行動に参加し、タクシー運転手たちは無償でけが人を運んだりしており、マンソプはそんな光州のタクシー運転手と知り合うことになります。リーダー格はファン・テスル(ユ・ヘジン)で、当初マンソプをよそ者が来て自分たちの町で稼いでいる、と反発の目で見ていた彼らも、やがて仲間意識を芽生えさせ、その夜ソウルに帰れなくなったマンソプとピーターをテスルは自宅に泊めてやります。タクシー運転手同士の連帯感、というのも大きな見せ場の一つで、特にラスト近くにあっと驚くシーンが用意されています。

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マンソプとピーターの仲も、お金を巡って争ったり、記者魂に燃えるピーターをマンソプが持てあましたりと、一筋縄ではいかない展開となります。その緩和剤となるのが地元運転手のテスルと大学生のジェシクで、中でもジェシクは、テレビ番組の大学歌謡祭への出場を目指すノンポリ学生という設定のため、ユルい空気を漂わせてくれてホッとします。演じているリュ・ジュンヨルは、この作品の前に見た『ザ・キング』(2017)では眼光鋭い若手ヤクザを演じていて印象深かっただけに、上手な役者さんだなあ、と引き込まれました。でも、軍隊が彼らに襲いかかるシーンは正視に耐えない残酷さで、軍隊側にいた主人公にこれがトラウマとなるという『ペパーミント・キャンディー』を思い出してしまいました。残虐な私服警官ならぬ私服軍人も登場した戦いはまさに内戦そのもので、南北間の争い以上に悲惨な歴史の1ページだったのだ、と思わずにはいられません。

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最後の見せ場は光州からの脱出劇で、ここはかなり脚色があるのでは、と思われますが、マンソプは無事にソウルにピーターを連れ帰り、ピーターの映像は世界中に流れることになります。YouTubeのこちらに彼の撮った映像がドイツのテレビ番組となってアップされていますので、興味がおありの方は見てみて下さい。劇中でもドキュメンタリータッチの映像が使われていて、一部画面サイズが小さくなったりするところがあるので、実際にピーターが撮った映像では? と思ったりしたのですが、よくわかりませんでした。1980年の韓国を知る上でも貴重な作品ですが、映画作品としてもよくできているので、ぜひ劇場でご覧になってみて下さい。最後に予告編を付けておきます。

2017年韓国No.1大ヒット!『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』 本予告



J-WAVE「ACROSS THE SKY」WORLD CONNECTORS インド映画特集@3月4日

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3月4日(日)放送のJ-WAVE「ACROSS THE SKY」のWORLD CONNECTORSというコーナーに出演します。「ACROSS THE SKY」は午前9時~12時の番組なのですが、その中で9:20~9:40ぐらいが「WORLD CONNECTORS」というコーナーになっていて、今回は「インド映画」にフォーカス、というわけです。番組のナビゲーターは玄理(ヒョンリ)さん。こんな素敵な方です。番組を紹介するこちらのサイトにも、眼鏡なしのきれいなお写真があります(私のはスマホ写真でごめんなさい)。


今回のインド映画特集は、玄理さん、そして構成担当のTさんのお二人が『バーフバリ 王の凱旋』(2017)を見て「やられた!」となったことがきっかけのようで、世界文化社の本「インド映画完全ガイド」を通して、私にお声がかかった、という次第です。その後Tさんは『ダンガル きっと、つよくなる』の試写も見て下さり、そんなこんなも交えながら、インド映画の現状を紹介する番組となる予定です。Tさんは以前シンガポールに住んでいらして、その時の家主さんがインド系の人だったとかで、インド世界もよくご存じですし、一方の玄理さんは韓国映画を筆頭に、インド映画もよく見て下さっていて、話が弾むこと弾むこと、という感じでした。日曜日の朝ですが、聞いてみて下さいね。


番組の中では、私の好きな曲もかけていただく予定です。あと、玄理さんのチャーミングなお声、プロのお仕事ぶりもぜひお聞き逃しなく。『ダンガル きっと、つよくなる』は必ず副題を付けておっしゃるなど、見習わなくっちゃなあ、と思いました。玄理さんはインドにもおいでになったことがあり、今後インド映画がヒットすると、また取り上げて下さるかも。『バーフバリ 王の凱旋』もまだまだ快進撃を続けていますし、『ダンガル きっと、つよくなる』もあと1ヶ月ちょっとで公開です。J-WAVEを聞いて、インド映画好きの方がさらに増えますように!

 

J-WAVE「ACROSS THE SKY」WORLD CONNECTORS インド映画特集のお知らせ

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3月4日(日)放送のJ-WAVE「ACROSS THE SKY」のWORLD CONNECTORSというコーナーで、インド映画の特集があります。「ACROSS THE SKY」は午前9時~12時の番組なのですが、その中で9:20~9:40ぐらいが「WORLD CONNECTORS」というコーナーになっていて、今回は「インド映画」にフォーカス、というわけです。番組のナビゲーターは玄理(ヒョンリ)さん。番組を紹介するこちらのサイトに、お写真もあります。

『バーフバリ 王の凱旋』まだまだ快進撃中!

いただいたメールによると、今回のインド映画特集は、玄理さん、そして構成担当のTさんのお二人が『バーフバリ 王の凱旋』(2017)を見て「やられた!」となったことがきっかけだとかで、その後Tさんは『ダンガル きっと、つよくなる』の試写も見て下さったとか。さあ、どんなお話が出るのでしょうか。日曜の朝ですが、ぜひ、J-WAVEにダイヤルを合わせて下さいね!

『ダンガル きっと、つよくなる』も日に日にツイートが増えてます!


韓国映画の実力派俳優シリーズ第2弾『THE KING ザ・キング』

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第2弾は「検事ノワール」映画とも言うべき『THE KING ザ・キング』です。日本でも検事が主役になる映画やドラマが存在しますが、韓国の検事(韓国語では「コムサ」)はそれはもう、映画の中にひんぱんに登場します。有名なのは『公共の敵2』(2005)でソル・ギョングが演じた検事カン・チョルジュンですが、ほかにも挙げれば長いリストができそうです。その中には、正義の味方だけではなく、ワルもいっぱい。彼らは検事の職務に忠実なだけなのですが、その職務が清濁併せのむやり方でないと遂行できないうえ、出世欲、権利欲を追求していくとたちまち悪の側に分類されてしまう世界に足を踏み入れざるを得ない、というわけです。そんな映画を私は密かに「コムサ(検事)ノワール」と呼んでいるのですが、その極めつけが登場しました。昨年の韓国映画観客動員数で第6位になった『THE KING ザ・キング』です。まずは映画のデータをどうぞ。

 

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『THE KING ザ・キング』 公式サイト
(2017/韓国/韓国語/134分/原題:더킹)
 監督:ハン・ジェリム
 主演:チョ・インソン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、リュ・ジュンヨル
 配給:ツイン
※3月10日(土)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー

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トップシーンでは、激しい雨の中、3人の男が車を走らせながら与太話をしている姿が映し出されます。中心になっているのは部長検事のハン・ガンシク(チョン・ウソン)で、「安東の河回仮面のように笑え」(慶尚道安東の河回村の仮面劇で使われる仮面は、多くが笑い顔だったり微笑んだりしているのだとか)と独特の持論を展開しています。ヨイショしながらそのお説を承っているのは、部下の検事ヤン・ドンチョル(ペ・ソンウ)、そして元部下だったパク・テス(チョ・インソン)です。と、突然雨の中で車はスピンし、衝突事故を起こします。衝撃を受けたテスの頭の中で、過去の出来事がよみがえります...。

テスが検事になろうと決心したのは、いっぱしの不良だった高校時代でした。窃盗を繰り返すどうしようもない父親が捕まり、検事に偉そうに責められている惨めな姿を目にした時、検事こそがテッペンだ、とテスの頭に刷り込まれてしまったのです。必死で勉強し、あこがれの検事になれたテスは地方都市で検事生活をスタートさせ、やがて金持ちの娘でテレビ局勤めのサンヒ(キム・アジュン)とも結婚、ソウルへの転勤も実現して、順風満帆の生活を送るようになります。テスをソウルに呼び戻してくれたのは先輩検事のドンチョルでしたが、彼らの上に立つ部長検事ガンシクはテスが想像もできない世界に住んでいました。時あたかも1980年代の後半、民主化の波が押し寄せようとしていた時で、政権も全斗煥(チョン・ドゥファン)から慮泰愚(ノ・テウ)に代わり、さらに90年代に入ると民主派の金泳三(キム・ヨンサム)が登場しようという時でした。そして、政権交代にまで、ガンシクを始めとする検事たちの手が及んでいたのです...。

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まさに伏魔殿とも言うべき韓国の検察庁の姿が、多少の(かなりの?)誇張を交えながら描かれるのが本作の見どころです。日本のテレビドラマ「HERO」のキムタクみたいな検事は一人もおらず、みんなビシッと背広姿を決め、全身これ権力のかたまりみたいなオーラを放っています。中でも部長検事ガンシクのご威光はすさまじく、ペントハウスにある秘密クラブにテスが連れて行ってもらうと、そこはシャンペンタワーも違和感のない高級クラブの世界でした。そこで踊り狂うガンシクのカッコ良さは、『THE KING サ・キング』最大のハイライトシーンです。これをチョン・ウソンがやるのですからたまりません。まったく、『アシュラ』(2016)の薄汚い刑事とは180度違った、しかしながらなぜか共通する臭いを漂わせたチョン・ウソン、毎年毎年、チャレンジングな役柄を選び取って驚かせてくれます。今回はさらに、漫画チックなコミカル演技も随所で見せており、演技の幅がどんどん広がってきているようです。間もなく45歳、実力派に生まれ変わる瞬間を本作で目撃することができます。

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一方、主役と言うべきチョ・インソンも目を見張らせてくれます。36歳なのに私服の高校生(その頃はまだ、韓国の高校では制服がなかったそうです)を演じても違和感なく、検察庁入庁後は少しずつ年齢を重ねていく姿を髪型の変化と共に、若さ→落ち着き→ふてぶてしさ、と演じ分け、最後の反撃へとつなげていきます。『霜花店(サンファジョム)』(2008)以来映画出演がなかったチョ・インソンですが、『卑劣な街』(2006)を凌ぐ演技を見せてくれていて、チョン・ウソンに負けていません。今後は映画出演が増えるのでは、と期待できます。

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そして注目は、テスの高校時代のライバルを演じたリュ・ジュンヨル(上写真左)。『タクシー運転手』の所でもご紹介しましたが、あの映画のノンポリ大学生とは全く違う、高校を出た後ヤクザとなるチェ・ドゥイル役です。『THE KING ザ・キング』は実は検察庁の話だけでなく、検察庁と表裏一体関係にあるヤクザの世界も描かれます。木浦(モッポ)の暴力団「野犬派」がその核となる存在で、ボスに信頼されているのがドゥイルなのですが、ドゥイルはテスには「汚い仕事は全部俺がやってやる」と言い、事実その通りのことをやってのけてくれます。ちょうど検察庁を闇色に塗り込めたようなヤクザの世界が登場することで、両者の関係が重層的に見えてきて、「検事ノワール」がより強固なものになる、というわけです。このあたりの面白さも、ぜひ楽しんで下さい(とはいえ、「野犬派」のボスの敵を粉砕する手法はちょっと...ですが)。

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ほかにも個性的な脇役がいっぱい登場しますが、一番大きな脇役は時の大統領かも知れません。劇中にもドキュメンタリー映像が差し挟まれ、歴代の大統領が次々と映し出されます。マスコミ試写でいただいたプレスに書かれていた文章、秋月望「『ザ・キング』の時代を解析~韓国現代史」がそれぞれの時代の情勢や、映画の細かい背景まで解説してあって、とても参考になりました。劇場でのパンフにも掲載されていると思いますので、ぜひお読みになってみて下さい。韓国の観客たちはこういった情勢の中にこれまで身を浸してきたわけで、その時々の経験が本作によって呼び覚まされ、ヒットにつながったのでしょう。監督・脚本のハン・ジェリム監督は、これまでソン・ガンホを主演に据えて『優雅な世界』(2007)や『観相師ーかんそうしー』(2012)という、個性的な作品を撮ってきた人。『THE KING ザ・キング』にも発揮されている個性豊かな演出を、ぜひ劇場でお楽しみ下さい。公開は1週間後です!

韓国映画『ザ・キング』日本オリジナル予告動画解禁!



 

ニューデリーに来ています

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インドのニューデリーに来ています。日本と違って、暑い! 例年なら、3月初めと言えばまだ朝晩は寒いぐらいなのに、今年はなぜかもう気温が上昇中。確かに、ホーリー祭が終わると気温が上がってそのまま4、5月の酷暑に突入、というのがいつものパターンではありますが、3月2日にホーリー祭が終わったとはいえ、例年よりすごく早いホーリー祭なので、律儀に夏に移行しなくてもいいのに、という感じ。カーディガンやセーターを入れてきたこの荷物をどうしてくれる、です。

泊まっているのは、今回訪ねる年若い友人たちの家がある、ラージパト・ナガルの安いホテル。この地区は南側にリングロードと呼ばれる環7か環8かという幹線道路が走っていて、ホテルはリングロードに沿った引き込み道路に面しています。カロン・ホテルという名前なのですが、建物の1階にあるファブ・インディアのインテリア店の方が目立つため、探すのがちょっと大変でした。この地区だけではないと思いますが、こういう下駄履きホテルはニューデリーに多いようです。何せ土地が高いので、カロン・ホテルもフロントはファブ・インディアの脇を入った突き当たりにあり、ホテルの部屋に行くのはいったん外に出て戻り、建物の脇から入ってエレベーターに乗らないといけない、という、なかなか大変なシステムです。

部屋自体は広いし、家具もうまく配置されていて快適なのですが、いろんな説明がなくて、最初戸惑いました。冷房の入れ方、ギーザー(湯沸かし器)の存在、冷蔵庫の動かし方、テレビのつけ方など、あれこれやってみてやっとわかる、という次第です。インド人なら、自明のことなのかなあ。まあ、インド人なら、いちいちボーイさんを呼んでやらせるのだろうけど。30室ぐらいの小さなホテルなのですが、結構埋まっているようでした。


このリングロード沿いを少し歩いて散歩してみると、ハルディーラームという有名なスナック・チェーンの店も発見。このハルディーラームはショッピングモールのフードコートなどにもよく入っていて、大体100ルピー(170円)前後でいろんなスナックが食べられる、とても庶民的な店です。映画『クイーン』や『ダンガル きっと、つよくなる』を思い出して、パーニー・プーリーをオーダーしてみました。小さなボール状の揚げパンのてっぺんを破り、ジャガイモのスパイス炒めを入れて、それを青汁みたいなスパイス風味のお汁にどっぷり浸けて口に運ぶ、というものです。お皿に載った揚げパンを想像していたら、揚げパンはちゃんと袋入りで作ってあるという、こんなのが出てきました。


『ダンガル きっと、つよくなる』だと、中学生のギータとバビータがスパルタ・パパから「レスリング選手になろうと思ったら揚げ物やスパイシーなものは禁止だ。パーニー・プーリーもこれが食べ納めだぞ」と言われて、早朝の道で複雑な思いを抱きながら食べる、というシーンに出てきます。日本にも輸入したら流行る...前に、プーリーが運ぶ途中で壊れて、パーニー(水)を入れられなくなってますね、きっと。そんなことを考えながら、おしくいただきました。さくっとした揚げパンと、スパイスの効いたお汁のコンビネーションが何とも言えずおいしいです。


久しぶりのデリーでちょっとウロウロしてみたら、上のようなスローガンが目に入りました。「木を1本、必ず植えましょう」と書いてあります。モーディー首相の意を受けた活動なのでは、と思いますが、こういうスローガン社会は1970年代半ば、私が初めてインドに来た頃のインディラ-・ガーンディー政権の時代を思い出させます。窮屈な時代がまた戻ってきた感じです。


今日のアカデミー賞授賞式では、「逝ける映画人を偲んで」のコーナーでシュリデヴィとシャシ・カプールが紹介されていましたが、街を歩いていると、ある本屋さんのウィンドウにシュリデヴィのDVDがディスプレイしてありました。左上から下への流れで、『Chandni(チャーンドニー)』(1989)、『Lamhe(ひととき)』(1991)、『Sadma(ショック)』(1982)~タミル語の原題訳『三日月』として日本でも「大インド映画祭1988」で上映、『Chaalbaaz(すばしっこい人)』(1989)~『ドタバタ・ツインズ』のタイトルでテレビで放映済み、そして『Khuda Gawah(神に誓って)』(1992)です。これで『Mr.インディア』(1987)があればベスト・セレクションですね。その右の方に『Tiger Zinda Hai(タイガーは生きている)』(2017)のタイトルも見えますが、昨年12月末に公開された作品がもうソフトに! インド映画界、いろいろ問題を抱えているようです...。

 


『Padman(ナプキン・マン)』は今一歩でした

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アクシャイ・クマール主演作、『Padman(ナプキン・マン)』を見てきました。アクシャイ・クマールの主演作はここ数年、必ずと言っていいほど興収ベスト10にランクインするヒット作となっており、昨年も『Toilet: Ek Prem Katha(トイレ:ある愛情物語)』と『Jolly L.L.B.2(法学士ジョリー)』が共にヒット、アクシャイ・クマールの存在の大きさを知らしめました。いずれも、笑いと共に社会的な視点がちょっと入っているのが観客を引きつける要素となっています。というわけで、実在の人物をモデルにした『Padman(ナプキン・マン)』も期待値が高く、当初『Padmawat(パドマーワト)』と公開日が同じになっていたところ、『パドマーワト』のサンジャイ・リーラー・バンサーリー監督がアクシャイ・クマールに頼み込み、公開日を延期してもらったほど。というわけで、3月に入ってもまだ上映中なのでした。


主人公のラクシュミーカーント・チョウハーン(アクシャイ・クマール)は、何でも工夫して作ってしまう町の発明家。地方都市インドールに住み、美しい嫁ガーヤトリー(ラーディカー・アープテー)をもらったばかりです。「ラクシュミー」と呼ばれている彼には、年老いた母と二人の妹がおり、もう一人の妹はすでに嫁いでいて子供もできていました。ラクシュミーはガーヤトリーを自転車に乗せて出かける時、横座りする彼女が「お尻が痛いわ」と言えば座席に横向きの椅子座席を取り付けるなど、すぐに自分で工夫するくせがありました。そんなある日、ラクシュミーはガーヤトリーが生理の時に汚れた布を使って生理の始末をしていることに気づきます。彼はナプキンを買い与えようとしましたが、一袋が55ルピーもするため、ガーヤトリーは恐れをなして「そんな高価なもの、使えないわ」と拒絶します。それでは自分で工夫してナプキンを作り、安くあげれば妻も使ってくれるだろう、と、ラクシュミーはナプキン作りに夢中になりますが、封建的な人々は生理を不浄のものととらえ、生理期間中は女性を別の部屋で寝かせるなどの扱いをしているほど。男なのにナプキンを作ろうとするばかりか、それを広めようとするラクシュミーは奇異の目で見られ、ガーヤトリーも彼の情熱を理解してくれません...。


劇中ではラクシュミーがナプキンを工夫していくシーンが何度か出てくるのですが、正直言って、そのやり方では清潔度とかの問題が出てくるのでは、とはらはらしてしまいました。その後、小さいながら工場を作って機械化し、ちゃんとパックした製品ができるようになるものの、そこに至るまでの描写が少々乱暴で、それでは奥さんも引くよなあ、と思ってしまいます。それと、妻役のラーディカー・アープテーもぴったり役にはまっているとは言いがたく、『トイレ:ある愛情物語』のブーミ・ペードネーカルのような化学反応は起こせずじまい。ただ、最後にユニセフに招かれてニューヨークに行ったラクシュミーが演説するシーンは、ブロークンな英語でこちらの胸に迫ってくるシーンとなっており、ここだけは拍手パチパチしたくなりました。後半、ラクシュミーを信じて彼の活動を支えていく女性パリーを、ソーナム・カプールが演じています。最後に予告編もどうぞ。

PADMAN Official Trailer | Akshay Kumar | Sonam Kapoor | Radhika Apte | 9th Feb 2018


プネーでのミッション(インポッシブル?)

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プネーに移動してきました。実は、今回の旅の最大の目的は、プネ-の国立映画資料館(National Film Archive of India=NFAI)で映画のスチールを手に入れることでした。将来のインド映画本出版を見越して、インドに来られるうちにできるだけたくさん映画の素材を集めておこう、というわけです。NFAIはLaw College Roadという通りに面しており、この道に沿って名前の由来となったロー・カレッジや映画大学に当たる国立映画・TV研究所(Film and Television Institute of India)などがあります。このロー・カレッジ・ロード、去年下見に来た時のレポートにも書いたように、昔はのどかな通りだったのが、今はこんな交通量の多い通りになってしまいました。夕方のラッシュ時の様子です。


NFAIは今、古い建物を改修中で、その近くのプラバート・ロードの入り口が便利だったのですが、そこは閉鎖されてしまい、このうるさいロー・カレッジ・ロードの入り口しか使えなくなってしまいました。入るとすぐの建物は、下は上映やイベントをやる劇場、上階が図書室や職員の仕事部屋となっています。


私はアールティーさんというシニア職員のいる部屋で、パソコンを占領してスチール画像のチェックをさせてもらいました。アールティーさんとは前からの顔なじみというか、最初に来た1983年だったかにはデーヴィー・カネーさんという年配の女性がいてお世話になったのですが、そのあとも何回か訪れるうちに、アールティーさんとも顔合わせをしていたようです。去年来た時、「あなた、前にも来たわよね」と言って、親切に画像の取得方法を教えて下さったのでした。下がアールティーさん@1階のホール前です。


彼女の部屋には、若手の職員が3、4人、常に仕事をしていて、いろんな資料の整理をしています。どの人も映画好きで、彼らの口ずさむ歌に、「あ~、それは『バージーラーオ・マスターニー』ね」とかつい反応してしまう私です。大体朝10時頃から本格的に仕事を始め、夕方6時になると終了、という毎日のようでした。タイトルチェックの間には、日本から持ってきたストローベリー味キットカットと、彼女たちのおやつのぶどうを交換したりして、ついでにチャーイもおごってもらうという、ありがたい仕事部屋でした。


右側のお兄さんに一番お世話になったのですが、右手にあるパソコンを開けると、グーグルに検索ソフトが入っていて、そこに映画のタイトルを入れれば該当するタイトル一覧が出てきます。関連する映画のタイトルも一緒に出てきたりするので、どれが目的の映画かを見定め、そのタイトルのそばにある<more>をクリックすると、スタッフ・キャスト表、ストーリーなどのデータと共に、アップロードされている資料項目が出てきます。確か、「negatives(昔、ネガ保存していた時代のものがポジデータで保存されている)」「posters」「photographs」「newspaper clippings」「script」...と、7つか8つの項目が並んでいたと思います。で、最初の3項目をチェックして、ほしい画像を選ぶ、というわけです。この選択の時にありがたい処置をして下さるのが、今回感心したところで、パソコンの中に私専用のフォルダーを作ってくれ、そこにどんどん画像をコピペしていけばいいのです。とりあえずドラッグしていっぱい取り込んでおいて、あとで消すこともできますし、アイコンが画像そのものなので同じような画像が重なってないかチェックできて、とても便利でした。

しかし、今回チェックした作品は200本強。朝から晩まで、丸1日かかりました。その中にはチェックしたけど探し出せなかったものや、出てきたけど画像がなかったものもあり、結局最終的に100本ほどの映画の画像(合計約600枚)をフォルダーに貼り付けました。画像がある/ないの傾向は以下の通りです。

1.最近の映画の画像は収蔵されていない。例外もあるが、最近10年の作品はないものと考えていい、というか、10年ぐらい経たないと製作会社からNAFIには素材が提供されない模様(そもそも、提供されているのか、提供を依頼しているのか、というのも不明)。
2.南インドの映画はタイトルとしては出てくるものの、画像は皆無、という作品がほとんど。新聞の切り抜き等だけの資料で、タイトルが登録されている、といった作品が多く、特にインド国際映画祭で上映されたような作品以外、つまり一般の娯楽作は、タイトルさえアップされていないものが多い。
3.北インドの作品も、娯楽作品は著名作品しかタイトルが登録されていない印象。
4.タイトルを正確に入れないと、該当項目が出てこない。その「正確さ」も、製作会社の使っているローマナイズではなく、NAFIの表記に合致していないとヒットしてこない(これで何度か泣いた)。Yahoo!やGoogleのように、あいまい検索でも見つけてくれるソフトにしてほしい。
5.画像は、理想的な状態とは言いがたいものがほとんど。現在日本で、宣伝の時に提供を受けるきれいなスチールではなく、印刷物やロビーカードからのカメラコピーが主体なので、黒い枠はあるは、すり切れたあとはあるは、ピンぼけはあるはで、使う時にトリミングが必要なものも多い。それでも、NAFIのクレジットを入れれば出版物等に使える、という点がメリット。日本での配給会社は、原則的に映画が公開されたあとは宣伝活動として認められないため画像を使わせてくれず、「インド映画完全ガイド」のように画像を使えたのは、「発売されたソフトを紹介する」という口実があったから許可してもらえたもの。それも、配給期間が終わってしまうと使えないため、モノクロページの作品紹介には画像のないものがある。

というわけで、今回、なるべくたくさんの画像をいただくようにしたのでした。


この画像選びの作業も大変でしたが、さらなる大変な作業がこのあとに待ち受けています。NAFIから画像を取得するためには、弁護士に依頼してbond(証書)を作成しないといけないのです。上が、できあがった証書のコピーです。本物は500ルピーの所やスタンプが赤色になっています(余談ながら、コピー屋さんに証書を出して「コピーを1部」と依頼すると、オリジナルとまったく同じように仕立て上げてくれたのにはびっくりしました。ホッチキスをはずしてコピーを取っていたようにも思えなかったけど...。コピー代は何と5ルピー=約9円でした)。証書はまず、友人が紹介してくれた弁護士のチェートナーさんがこの500ルピーの印紙というか台紙を手に入れて作成してくれ、さらに、国立の機関向けには上級弁護士が証明をする必要がある、というので、彼女のシニアのラクシュミーさんという弁護士さんの所に行って、丸いスタンプを押して証明してもらった、というわけです。


ラクシュミーさんがこんな風にスタンプを押し、割り印のような形にして、私のサインも入れてやっと完成です。上の方に、映画題名と、それぞれカラーのスチールとモノクロのスチールの枚数を書いた表が見えると思います。これは最終ページで、その前にもリストは続いており、前書き部分も併せて全ページにこういう割り印をしていきます。いやー、法律ありきのインド社会、貴重な経験をしました。チェートナーさんは、彼女を紹介してくれた私の友人とは姉妹みたいな間柄だから、と言って、印紙代の500ルピーしか取らずでやって下さり、ラクシュミーさんの手数料は200ルピーというこれまたお安いものでした。これで明日、やっとお金を払って、自分のUSBにダウンロードさせてもらえます。カラーは1枚60ルピー、モノクロは35ルピーなので、合計結構な額になりますね。さあ、元を取るために、さらなる仕事しなくっちゃ。


帰り道、NAFIの近くにある庶民的な食堂というかカフェに行ってみました。お夕飯は野菜のトーストサンドとラッシー。それに仕事が終わったお祝いにクルフィー(インド式アイスクリーム)をデザートに注文。


ここのウェイターさんは気が利いていて、飲み込みが早く、行動もきびきびしていて感心したので、お顔をぱちり。うちのホテルのスタッフに、爪の垢を煎じて飲ませたいなあ。


ホテルの愚痴はまたのちほど。今日も、昨日ランドリーを依頼した絹のサルワール・カミーズが戻ってきたのですが、指定したドライクリーニングでなくて水洗いされてしまい、絹が縮んでしまったので一悶着ありました。洗濯代を無料にし、明日夕方までに回復を試みる、ということになったのですが、さあ、どうなりますか。明日はハウスキーピングのスタッフから、「このミッション、インポッシブルでした」と言われそうです...。


ミッション・コンプリーティッド

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プネ-でのお仕事が終わりました。本日、NFAI(National Film Archive of India/国立映画資料館)に行って代金を払い、持参したUSBに私のファイルを落とし込んでもらって、約600枚のスチールが手に入りました。その過程で、昨日はモノクロのコピーしかアップできなかった申請用の証書が登場したので、写真を撮りました。


いかにも、お役所の書類、という感じでしょ? これが作れたのも、お二人の女性弁護士のおかげです。お世話になったチェートナーさんとラクシュミーさん、そしてチェートナーさんを紹介してくれたCさん、ありがとうございました。取得できたスチールは、昨日も書いたように満足のいくものばかりではありません。例えば、1954年に日本で上映されたヒンディー語映画の『アーン』(1952)の場合はこれ。トリミングすれば使えるかも、と思い、こんなスチールも加えました。

Courtesy NFAI

このほか、前に書いたようなロビーカードや映画のリーフレット、ポスターの写真も多いです。もしかしたら、回顧上映が日本でもできるかも、と思って取った、シュリデヴィ主演作『チャーンドニー』(1989)のポスター画像2つを付けておきます。

Courtesy NFAI

でも、古い映画の画像はよく揃っていて、というか、現存するフィルムからいっぱい画像が焼いてあって、この際、紙焼き画像を持っているものも取り直してきました。下は、パールシー演劇から映画に移行したことが証明できるのでは、と思って取った1938年の作品『Bharat Mata(インドの母)』のスチールです。

Courtesy NFAI

2、3年先に南アジアの文学に関するシリーズ本が出版される予定で、その中の1冊「映画から語る文学(仮題)」に使えるようなスチールを、というのも今回のミッションだったのですが、半分ぐらいは集められたと思います。

なかったのは最近の作品で、アールティーさんに尋ねたところ、資料はすでに収集してあるのだとか。でも、それをデジタル化するためには予算が必要で、そういう予算は5~10年毎についてくるのが常であるため、新しい作品はその時まで眠ったままになるそうです。誰か、大金持ちが寄付して、毎年デジタル化ができるようになればいいのに。画像資料は映画製作会社から提供を受けるのではなく、それ専門の業者がいてそこから購入するそうで、だからポスターとかロビーカード、パンフレット(インドでは内輪の試写の時に配られるだけで、一般の観客は手に入れることはできない)が主になるのですね。宣材として使われるデジタル画像を収蔵できたら、いろんな意味で便利だと思うのですが、まあ、それぞれにやり方、考え方が違うので、仕方ありません。


今日は仕事を終えた後、この間もご挨拶したNFAIの所長、Prakash Magdum(プラカーシュ・マグドゥム)さんに会いました。ご自分で「私は官僚なんでね」と言ってらっしゃいましたが、友人のナスリーン・ムンニー・カビールとも親しいようなので、映画にも理解の深い人のようです。NFAIの公式ツイッターのようになっている、マグドゥムさんのサイトです。


実は今日から、NFAIも協賛団体になっている女性映画祭(Woman's Film Festival)がNFAIのホールを使って開催されるので、その壇上に上がるため下にいらしていたのですが、この女性映画祭は、昨年のプネ-行き記事の中でご紹介したプラチさんらが中心になって組織しているものなのでした。午後5時からオープニング・セレモニーがあり、たくさんのゲストが壇上に並んで、ランプ点灯式や記念品贈呈、スピーチなどが次々と続きます。


一番のメインゲストは、女優のニーナー・クルカルニーさんで、真ん中の黄色いサリーの人がそうです。ヒンディー語とマラーティー語映画で活躍している女優さん、とのことでしたが、私は彼女の出演作を思い出せず、失礼してしまいました。


プラチさんも今日はサリー姿で、最後の方でご挨拶。当然と言えば当然なのですが、ほぼすべてがマラーティー語で進行し、内容が理解できなかったのと、会場の冷房がきつくてこのままでは風邪を引く予感がしたのとで、セレモニーが終わる段階で失礼してしまいました。


興味のある方はこちらをチェックしてみて下さいね。上映作品は以前の欧米作品が多いようですが、シュリデヴィ追悼上映として、タミル語の『三日月』も上映されるようです。あと、日本でも公開されたマラヤーラム語映画『チャーリー』(2015)も入っていますね。会場は7割ぐらいの入りで、男女半々という感じでした。


私の方は、今日の昼間マラーティー語映画『Amhi Doghi(私たち2人)』を近所の小さなシネコンで見てきました。小さい時に母を亡くし、弁護士の父や使用人に大事に育てられたサーヴィトリー(プリヤー・バパト)が、高校生になって父が連れてきた再婚相手アムラー(ムクター・バルヴェー)に反発しつつも、最後には姉妹のように暮らしていく、という物語です。女性のプラティマー・ジョーシー監督作品なので期待したのですが、脚本があまり緻密ではなく、特に後半サーヴィトリーが社会人になってからの展開がいまひとつで、底の浅い作品になってしまった感じです。しかしながらムクター・バルヴェーの演技はすばらしく、教育も受けていない女性なのに、しっかりと自分を持っている人物を押さえた演技で演じていて、引き込まれました。ミッションも終了したので、明日からはもっといろいろ映画が見られます。


そうそう、あとはホテルの不満を書こうと思っていたのですが、なぜか今日は肩すかしで、上の写真のラミー・グランド・ホテルは平穏無事でした。ここは新しくできたホテルのようで、5つ星ホテルにも劣らないしつらえです。


しかしながら、スタッフの皆さんが何かというと「Have a nice stay !」と繰り返したり、朝食のビュッフェでも「お味はいかがですか?」とフィードバックのチェックが何度も入ったりと、ほおっておいてほしい私としては、うるさくてかなわないホテルなのでした。


さらに部屋のデザインでは「あかんがな~」が目立ち、スタッフの仕事ぶりも昨日ちょっと書いたようでずさんで、スタッフ訓練で教えてもらったのは声かけだけ? と言いたくなるのでした。部屋のデザインのまずさは、まず、窓に紗のカーテンがついていないため、昼間なのに厚いカーテンをあけられないこと。全面ガラスなので、通りの向こうから丸見えです。よほど、紗のベッドカバーでも買ってきてつるそうか、と思いました。

続いて、衣装タンスとその横にあるスーツケース・ラックには、スライドのドアが付いているのが「ブッブー!」です。一見賢そうに見えるのですが、最初にスーツケースから中身を衣装タンスに移そうとすると、このスライド・ドアではすごく不便で、結局スーツケースをベッドの上に広げて衣装ダンスに入れていく、ということになりました。鏡のついているのがスライド・ドアで、今は衣装タンスが閉まっている形です。


あとは、やたらとスイッチが多いこと。インドの場合、どのホテルでもコンセントのOn/Offのためのスイッチがすぐそばに付いているのが普通なのですが、このホテルではちょっと離れたところに付いていたりするため、「どれがコンセントのスイッチだ!?」と湯沸かしポットが使えるまでひと騒動。すぐ脇に付けてあるコンセントもあるので、よけいに混乱します。デザイナーさん、こんなことしちゃ駄目よ。

あと、上の写真に写っているパソコンを置いているデスクの椅子が低く、お掃除スタッフに「高くするにはどうすればいいの?」と聞いたらフィックスされている、とのこと。幸い枕が4個あるので、そのうち1つをその時も置いていたのですが、スタッフが「もう1個乗せるといいのでは?」と言ってくれ、それから枕を2つ重ねた上におしりを置いて、この記事も書いています(それでもまだ低くて肩が凝る)。このお掃除スタッフ君はなかなか気が利いていて、今日も昼に一時戻ってメールを打とうとしたらちょうどお掃除中だったのですが、「マダム、どうぞ」とすぐ椅子に枕2つ置いてくれて、思わずチップをあげてしまいました。


こういう気の利いたスタッフにもたまに出くわすのですが、上のように朝食時のレストランにはたくさんのスタッフがいて、次々と「マダム、コーヒーは?」「あとでね」、5分後別のスタッフが「コーヒーをお持ちしましょうか?」「食後でいいのよ」、さらにビュッフェで食べ物を取って戻ったら、「コーヒーですか紅茶ですか?」「だ~か~ら~、食べ終わったらオーダーする、って言ったでしょ!」ということになります。ところが、今朝はこの悪口を書こうとしているのがわかったのか(笑)、スタッフの人数も少ない上、皆さんとても静か。まあ、明日はどうなっているかわかりませんが、洗濯を間違えて縮んだカミーズも必死でアイロンをあてて伸ばしてくれたのが約束通り戻ってきたので、アゴダのサイトには悪口を書かないでおきましょう。一流ホテルになるのって、本当に大変ですね。 


プネ-の映画ネタ~"Da-bangg Tour"がやって来る!

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プネ-の映画館を検索していると、こんな宣伝が目に入りました。

3月24日(土)6時30分から、プネ-のBalewadiという所にこのご一行様がやって来る、とのこと。今、サルマーン・カーンとソーナークシー・シンハー主演の『ダバング3』が撮影されているのですが、特にその宣伝というわけではなく、サルマーンの代名詞として「ダバング」が冠せられているようです。サルマーンとソーナークシーのほか、カトリーナ・カイフ、プラブデーヴァまで出演とは豪華ですね。情報元はこちらです。あら、残念、あと2週間、ここに来るのが遅ければよかったのに、と思ってチケット代を見たら、こ、こんなにするの!でした。座席表と、その下に各ゾーンのチケット代を付けておきます。各ゾーンの名前は、サルマーン・カーンのヒット作のタイトルになっていて、おおよそ新しい映画順のネーミングです。


『タイガー』        Rs. 25,000(約42,500円)
『スルターン』       Rs. 15,000(約25,500円)
『ジャイ・ホー』     Rs. 10,000(約17,000円)
『ウォンテッド』     Rs. 5,000(約 8,500円)
『レディ』              Rs. 2,500(約 4,250円)
『テーレー・ナーム』Rs. 1,500(約 2,550円)
『ボディガード』      Rs. 15,000(約25,500円)

スターが身近に感じられる席は『スルターン』あたりまで。とすると、インドでは庶民の月収ぐらいではありませんか。とはいえ、ニューリッチ層なら出せない額ではなく、富裕層なら一家4人分ぐらいぽんと出せそうな額ではあります。チケットの売れ行きが気になりますね。サルマーン・カーンのファンの方、プネ-まで飛ぶかどうか、ちょっと悩んでみて下さい。

ところで今回は「バッタリ遭遇」率の高い旅のようで、デリーの本屋では研究者のSさんに遭遇、そしてこのホテルでは今朝朝食を食べようとしていると、突然声をかけて下さる方が。何と、昨年「インド通信」にもプネ-のことを書いて下さった研究者のOさんでした。Oさんのエッセイはとても面白く、古いプネ-の町の様子がよくわかって、出てくる地名などにも興奮しながら読んだのでしたが、今日は実地にいろいろと町歩きの術を教えていただきました。Oさんのオススメはプネ-駅の南一帯に広がる地区のうち、ラクシュミー・ロードあたり。繊維関係の店が多くあり、またバイク屋が軒を連ねる一帯もあるとか。さらに大通りから少し中に入ると、売春をする女の人たちが門口に立つような所もあるとかで、Oさんは昔滞在していらした頃、くまなく歩き回られたようです。というわけで、グーグルマップ(日本語版は地名表記がめちゃめちゃで、直したい思いにいつも駆られる)を見ながらお話を聞いたのですが、そこにあった映画館の名前「シュリークリシュナ・シアター(Shree Krishna Theatre)」を目印に行ってみることにしました。


上がオートリキシャの運転手さんがたどり着いてくれたシュリークリシュナ映画館ですが、ご覧のように今は閉鎖されています。このホラー映画の看板は何の作品でしょうね。おそらく、10年近く前に営業停止したのでは、と思われます。プネ-にシネコン文化の波が来たのと期を同じくして、町中のこういう小さな映画館はバタバタと閉館したに違いありません。


でも、まだ建物が残っているので、上写真のように、ここはチケットを売る窓口だったのだな、とかがわかります。グーグル・マップにはまだほかにも映画館の名前が点在しており、もう少し滞在が長ければそれぞれの劇場を回って、近くの人にも話を聞いたりして調査ができるのに、と後ろ髪を引かれる思いでした。

この映画館にたどり着くまでに、オートリキシャの運転手さんはあちこちを走って人に道を聞いてくれたのですが、この映画館から南に、ラクシュミー・ロードを渡って行ったあたりは、家の門口や商店の脇などに、女の人が2、3人ずつ立ったり座ったりしている地区がありました。まだ午前中なのに、訪れる人があるのですね。土曜日だからかな? 上の写真は、繊維関係のお店のうちインテリア製品を売るお店が軒を連ねている地区と、バイク屋さんがずらっとならぶ地区です。こうしてラクシュミー通りをプネ-市郵便局を中心に歩いてみたのですが、この郵便局は初日に切手を買おうと思ってホテルで教えてもらってやってきたものの、長蛇の列に恐れをなして退散したところでした。


あとで調べてみると、GPO(General Post Office)は別にあるようで、ホテルのフロントに聞いたのが失敗の元。グーグル・マップの方が、よほど頼りになります。で、今度はここから、郊外にあるショッピングモールに行ってみることにしました。シーズンズ・モールという、駅から北東に行ったところにあるモールです。

旧市街から離れたこのあたりでは、今大規模住宅の建設が真っ最中で、それに従い、商店やしゃれたレストラン、時には5つ星ホテルもこのあたり一帯に建設が進んでいます。この「マガルパッター・シティ」という大規模住宅も、右手に見える立派なゲートの中に団地というか上のようなマンション群が入っており、車を持った人のみが住める地区です。そして、こういう地区の中心にショッピングモールができてる、という形で、ムンバイの北方と似た発展形式をたどっているようでした。なお、ここはマガル氏という人が持っていた広大な土地に建設したので、こういう名前が付いたそうです。こちらのWikiを見ると、企業が入っている建物もあるほか病院や公園も整備されており、これだけで一つの町、という感じです。


マガルパッター・シティからすぐのシーズンズ・モールにあるシネコン、シネポリスで見たのはこの作品、『Sonu Ke Titu Ki Sweety(ソーヌーのティートゥーのスウィーティー)』でした。このタイトル、アヌシュカー・シャルマーの主演作でヴィシャール・バールドワージ監督作『Matru Ki Bijlee Ka Mandola(マトルゥーの(娘)ビジュリーの(恋人)マンドーラー)』(2013)のパクリですね。


物語はこんな感じです。ソーヌー(カールティク・アールヤン)という目端の利く青年には、ちょっとトロいけど人のいい親友ティートゥー(サニー・シン・ニッジャル)がいて、何かあるとソーヌーに泣きついてきます。そのティートゥーに結婚話が持ち上がり、相手のスウィーティー(ヌスラト・バルチャー)を見たソーヌーはひっかかるものを覚えます。案の定、スウィーティーは天使の笑顔と悪魔の知恵を持つ、したたかな女性だったのでした...。ということで、シットコムみたいな会話とドタバタ中心の映画でした。えーっと、白状すると爆睡してしまいました、私的にはつまらなかったもので...。でも、とんちんかんなやりとりや、ちょっと皮肉の効いたセリフが観客にはうけていて、結構ヒットしているようです。主演の男優2人は過去にもいくつかの作品で共演していて、コンビとしても定着しているため、そのあたりのファンも多いのかも知れません。


さて、明日も映画が見られるかな。プネーは映画料金160ルピー(約270円)とムンバイに比べると格段に安いため、なるべくここで見ておこうと思います。


小品ながら面白かった『Dil Jungalee』と『3 Storeys』

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本日は日曜日。お店はほとんど閉まっているし、みんなカップルや家族連れのお出かけ姿で、休日気分がみなぎっています。見たい作品『3 Storeys(三階建て)』をやっている映画館を探していたら、なつかしいマンガラーという映画館の名前を発見、シネコンになって生き残っているようです。というわけで、オートリキシャに乗って行ってみることにしました。場所も昔のままで、川を渡る橋の手前から下に降り、河岸の道路に行く途中にある映画館です。

建物も昔のままで、確かアミターブ・バッチャンの主演作『Parvarish(養育)』をここで見て、その時撮った建物の写真を「インドの映画館」としてよくあちこちに使った覚えがあるのですが、今、『Parvarish』の製作年を見てみたら何と1977年。その頃からインド映画の聖地として、プネーに来ていたとは、と、自分で自分に感心してしまいました。そういえば、最初に来た時は映画研究所(のちに映画・TV研究所)をアポなしで「見学させて下さい」と訪ね、門前払いを喰ったのでした。その後1982年暮れに、翌年のインド映画祭の作品を選んだりするために来たのですが、その時に撮った別の映画の写真だったのかなあ。帰ったら、確認してみます。


今日は右手の看板の2作品、『Dil Jungalee(心は野蛮人)』と『3 Storeys(3階建て)』をここで見ます。チケット売り場もきれいになっていましたが、何だか普通のシネコンとは違う感じです。


中は4つのスクリーンに分かれていて、手前のロビーにスクリーン1の出入り口があり、その左手を上がったところにスクリーン2と3、そして、外から入ってまっすぐ奥に行った所にスクリーン4がある、という形になっています。スクリーン4と2で見たのですが、座席の状況など見ると、カップホルダーは付いているもののかなり古いのです。これは、一時代前のシネコン、という感じです。西欧型のシネコンが入っている前、インドでは複合映画館というか、大きな建物に複数の映画館が入る形式のシネコンが各地にあり、今もチェンナイのアビラーミやムンバイのG7(Gで始まる映画館の集合体)だな、と思いましたが、1980年代にこういう複合館にしたのかも知れません。プネーの映画館調査、してみたいなあ。

Dil Juunglee New Poster.jpg

最初に見た『Dil Jungalee(心は野蛮人)』は、実は見始めたとたん「出ようか」と思いかけた作品で、大金持ちの娘とその友人たちが彼女の部屋で家出の準備をしているシーンから始まります。漫画チックなキャラのヒロインはコロことコロリ・ナーイル(タープシー・パンヌー)で、ロンドンをベースにする大実業家ナーイル氏の一人娘でした。ただ、父親の期待にはまったく応えられない娘で、アメリカで学ばせても途中で帰ってきてしまい、今はある大学の語学コースの教師として働いています。20歳も過ぎたのに、巻き毛の人形みたいな子供っぽさ全開のコロでしたが、彼女を好きになったのが語学コースの学生スミート(サーキーブ・サリーム)。俳優になりたいという夢を追求するスミートは、体を鍛え英語を習い、ボリウッドへ進出することを目指しています。ボリウッドにいるエージェントからはオーディションの日が告げられ、その日ムンバイに来るように、と連絡が入ります。スミートはこの際、コロにお金を持ち出させて車でムンバイに向かおうとしますが、コロの運転ミスで車はおしゃかになり、同乗していたコロの2人の友人やスミートの友人と共に、一行はジャングルをさまよう羽目に。やっと村に着き、いっそここで結婚式を挙げてしまおうかと思ったスミートとコロでしたが、結局2人は別れることになったのでした。

それから7年、ひょんなことでコロとスミートはロンドンで再会しますが、コロには理想的なフィアンセが、スミートには恋人がいたのでした...。

最初の30分ぐらいはどうしようもない作品だな、と思って見ていたものの、だんだんと年月を経たラブストーリーの新種、といった感じにお話が展開していき、ついつい続けて見させられました。主人公の2人がうまく、特にタープシー・パンヌーはいつもの大人の女性やアクション女優といった顔とは全く違う顔を見せてくれて、驚いてしまいました。サーキーブ・サリームはあとで調べたら前の出演作も1本見ていたのですが、なかなかいい味を出していて、役柄にぴったりでした。予告編を付けておきます。

Dil Juunglee Trailer | Taapsee Pannu | Saqib Saleem | Releasing on 9th March

もう1本の『3 Storeys(3階建て)』は、集合住宅に入っている人を次々に主人公にしていく、グランドホテル形式の映画だろうな、と思っているとその通りで、ゴア出身の老婦人で、家を貸したがっている女性の物語、夫からDVを受けている小学生の男の子の母親の話、イスラーム教徒の小さな雑貨店の息子とヒンドゥー教徒の未亡人の娘の恋...といった具合に、深刻な物語が展開していきます。

3 Storeys Poster

そこに1階に住む娼婦が語り手として登場し、それぞれの過去や現在が交錯して、この3階建てのアパートにいろんな物語が巻き起こる、という作品です。しかしながら、ラストが上手なオチになっていて、とても後味のいい作品になっていました。アルジュン・ムケルジーという監督は新人のようですが、Althea Delmas Kaushal(アルテア・デルマス・コゥシャル、と読むのでしょうか?)という脚本家も若い人らしく、過去の映画を参考にしながら新しい物語を紡いだという感じで感心しました。『きっと、うまくいく』のシャルマン・ジョーシーも出ていて、あと娼婦役でリチャー・チャッダーが出ています。ほかは地味なキャストなのですが、味のある作品でした。予告編を付けておきます。

3 Storeys Official Trailer | Richa | Renuka Shahane | Pulkit | Masumeh | Sharman | Ankit | Aisha

日本の映画祭でも上映されるといいですが、ちょっと新味に欠けるかしら。トライしてみましょう。


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