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第20回東京フィルメックス:受賞作一覧

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11月30日、第20回東京フィルメックスの各賞の受賞作品が発表されました。 

第20回東京フィルメッククス コンペティション受賞結果
 最優秀作品賞:『気球』(2019/中国)
         監督:ペマツェテン

 審査員特別賞:『春江水暖』(2019/中国)
         監督:グー・シャオカン

 

 
 スペシャル・メンション(2作品):
   『昨夜、あなたが微笑んでいた』(2019/カンボジア、フランス)
     監督:二アン・カヴィッチ

   

   『つつんで、ひらいて』(2019/日本)
     監督:広瀬奈々子


 観客賞:『静かな雨』(2019/日本)
      監督:中川龍太郎


学生審査員賞:『昨夜、あなたが微笑んでいた』(2019/カンボジア、フランス)
         監督:二アン・カヴィッチ

 

 皆さん、おめでとうございます! それと、Day 1の記事の中でフィルメックスのメイン・スポンサー交替について言及したのですが、今回のメインのスポーンサーはシマフィルムと共に、コネクションズもその任を担っていたのでした。言葉足らずですみません。なお、スポンサーについての詳しい事情は、斉藤敦子さんのブログ「新・シネマに包まれて」でディレクターの市山尚三さんが語っておられるので、こちらをぜひご参照下さい。これを読んで、シマフィルムは京都で出町座という映画館も経営していることを知りました。出町座のファンは私の友人にも何人かいて、私も一度は行ってみたい映画館となっています。シマフィルムさん、コネクションズさん、来年もぜひ、フィルメックスのスポンサーとして支援して下さいますように。

まだアップしていないQ&Aなどがあるので、今週いっぱい、アトランダムにフィルメックスの記事も載せていきます。「十日の菊、六日のあやめ」っぽくなりますが(お若い読者の皆さん、この例え知ってます?)、お許し下さい。



第20回東京フィルメックス:Day 5(下)

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11月27日(水)に見た作品の続きです。『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013)に続くシンガポールの監督アンソニー・チェンの作品『熱帯雨』なのですが、驚いたことに、『イロイロ』で母子役を演じたヨー・ヤンヤンとコー・ジアルーが再び主役として登場します。その理由も詳しく語ってくれた、チェン監督のQ&Aもとても興味深かった作品でした。

『熱帯雨』

 2019/ シンガポール、台湾/中国語、英語、福建語/103分/英語題:Wet Season/原題:熱帯雨
 監督:アンソニー・チェン(陳哲芸)
 主演:ヨー・ヤンヤン(楊雁雁)、クリストファー・リー(李銘順)、コー・ジアルー(許家楽)、ヤー・シービン(楊世彬)


マレーシア出身で、シンガポールの陽光中学(日本の中・高にあたる)で中国語を教えているリン(阿玲/ヨー・ヤンヤン)は、シンガポール人の夫アンドリュー(クリストファー・リー)とその父(ヤー・シービン)との3人暮らし。子供がほしいため不妊治療をしているのですが、最近はアンドリューが必ずしも協力的と言えなくなってきたこともあって、毎回不調に終わっています。義父はほぼ寝たきりと言ってよく、ヘルパーを頼んでいるものの、食事の世話から下の世話まで、すべてリンの肩にかかってきます。勤務先の男子校では生徒の中国語の成績が思わしくなく、7~8人の生徒に放課後補講をすることになりますが、「中国語なんか勉強しても将来の役に立たない」と全員思っているようで、ある時用ができてリンが席を外し、戻ってみると、ウェイルン(偉龍/コー・ジアルー)以外の生徒はみんな帰ってしまっていました。帰途、ウェイルンを家に送ったりしているうちに、リンとウェイルンの心はだんだんと近づいて行きますが...。


教師と生徒のいわば「禁断の恋」が描かれるわけですが、リンの方は不妊治療、義父の介護、実家の問題(弟もシンガポールに働きに来ているのですが、果物店で働く肉体労働者で、身分や収入が不安定)等々で肉体と神経をすり減らし、一方生徒のウェイルンの方も、父母がいつも「出張」で不在のため、マンションで一人遺棄されたような生活をしている、という、崖っぷちの魂があい寄る、という感じで二人は接近していきます。まるで雨期そのもののような沈んだ人間描写が続きますが、その中で一瞬陽光が差すようなできごとも描かれていきます。たとえば、諸般の事情から、リンがウェイルンを自宅に連れて来ざるを得ず、義父の面倒を見ながらウェイルンの中国語指導をするのですが、リンが食事の用意をする間に義父がそっとウェイルンに漢字を教えてやるシーンや、伝統武術の大会に出たウェイルンをリンと義父が応援に行くシーンなどは、見ている者の心を一気に暖かくしてくれるシーンでした。ウェイルンの伝統武術演技は、最初に練習風景が登場した時から場の空気を一変させる効果を持ち、絶妙な使われ方となっています。


それにしても、『イロイロ ぬくもりの記憶』での、妊娠中の不機嫌な母親を演じたヨー・ヤンヤンと、こう言っては何ですがかわいげのない顔をした小学生の息子役のコー・ジアルーが、こんな形で再びコンビを組もうとは、思いもよりませんでした。ヨー・ヤンヤンはほっそりと痩せて、セミロングの髪も『イロイロ』のパーマ頭とは違うため、別人のようです。コー・ジアルーはまだハンサムとは言えませんが、大人っぽいいい顔になっており、伝統武術の演技シーンでは内村航平のように格好いいところを見せてくれます。クリストファー・リーは多くの作品でイケメン主人公を演じてきたシンガポール人俳優ですが、本作では中年太りが出始めた不実な夫を演じていて、これまた別人のようでした。義父役のヤー・シービンはあとのQ&Aでも質問が出るぐらいの素晴らしい演技で、「アー」とか「ウー」だけでひと言も意味のあるセリフを発しないのですが、いつもテレビで武侠映画を見ているという設定も面白く、一番印象に残る出演者でした。そうそう、ウェイルンは「ジャッキー・チェン命!」男子、という設定で、このあたり、ついインド映画の『燃えよスーリヤ!!』を思い出してしまいました。


Q&Aに登場したアンソニー・チェン監督、相変わらずの好感度大スマイル顔です。通訳は、シンガポール映画にも詳しい松下由美さんです。

監督:こんにちは、皆さん。アンソニー・チェンです。フィルメックスに戻ってこられて嬉しいです。僕は10年前に「タレント・キャンパス」でこちらに参加し、それから6年前には監督第一作『イロイロ』を上映していただいて、観客賞をいただきました。そして今、第2作の『熱帯雨』を見ていただけて嬉しいです。楽しんで下さったことを願っています。


市山:10年前、「タレント・キャンパス」で監督がプレゼンした『イロイロ』がカンヌで上映されて新人監督賞も受賞し、と、いうところですね。2作目を皆さんも待望していらしたと思うんですが、僕も会うたびに「いつできるんだ」と言ってました。でも、時間がかかっただけにこんな素晴らしい映画で戻っていただけて、私も感謝しています。時間がいつもなくなるので、場内の方からすぐ質問を受けたいと思います。

Q1(男性):今回の作品もすごくやさしくて、人の心に寄り添うような描き方で感動しました。前回の『イロイロ』と同じキャストの方を使って、今回も本作を作ったことには何か理由があるのでしょうか?

監督:同じ俳優をキャスティングすることは、全然考えていませんでした。実際に、1年間かかって、他の女優さんを探したんです。それに以前、『イロイロ』の時は8千人の子供たちのオーディションをして、少年役にコー・ジアルーを発見したのですが、今回も前回と同じキャスティング・ディレクターだったので、これまで演技をしたことのない少年をと頼みました。それであちこちの中学校に行って探し、8ヶ月間毎週のように週末にワークショップを繰り返したんですが、これという少年は見つかりませんでした。本当に困ってしまっていたところ、あるテレビ局のインスタグラムを見ていて、テレビドラマで中学校の制服を着て出演している少年を見つけました。学園もののドラマで、「この子どうだろう? いいんじゃない?」とプロデューサーに見せたところ、プロデューサーが調べてくれて、何と、『イロイロ』のコー・ジアルーだということが判明したんです(笑)。


『イロイロ』の時はまだ小さくて、成長した姿がわからなかったのですが、早速話を進めました。彼はワークショップに来てくれて、数ヶ月経った後でやっぱり彼に決めよう、ということになったわけです。彼の起用を決めた時点で、ヨー・ヤンヤンは起用しないと決めていました。前作では、母と息子だったわけですからね。それで、シンガポールとマレーシアのあらゆる女優さん、テレビ俳優に舞台俳優とみんなチェックしましたが、ピッタリの人がどうしても見つからなかったんです。それでヨー・ヤンヤンに電話して、「今、映画を撮ろうとしていて、脚本がもう完成し、間もなく撮影に入ル予定なんだ。君に合っている役ではないと思うんだけど読んでみて」と言ったんです。その後いくつかシーンを演じてもらって、「よし、一緒にやろう」ということになりました。そんなわけで、1年半の間別の主演者を探した結果、元のこの2人に行き着いたわけです。


Q2(男性):今の質問から発展させてなんですが、中で武術が出てきますね。あれは役者さんにある程度の素養があってあそこまでの形になっているのでしょうか? とても綺麗なカンフーというか武術でしたよね。

監督:コー・ジアルーを今回起用すると決めた時、彼が武術部に所属しているという設定にして脚本を書きました。というのは、私が彼と初めて会ったのは彼が10歳の時ですが、彼はすでに6歳の時から武術を習っていたんです。当時は学校で訓練を受け、大会にも出ていたのですが、その後一時やめていました。それでまず、彼に体重を減らしてもらい、それから武術のコーチについて特訓を受けてもらいました。シンガポールの国家チームのコーチにお願いして、週に3日か4日、8ヶ月間彼を鍛えてもらい、金メダルを取ってもおかしくないレベルに上げてもらったんです。


Q3(男性):生徒と先生の恋、ということで微妙な内容だったと思いますが、この演技を引き出すためには、事前に打ち合わせをしたとか、時系列で撮ったとか、そういう演出上の工夫があったら教えて下さい。

監督:時系列ではとても撮れませんでした。予算も日数も限られているのに、ものすごくたくさん撮るべき場面がありましたからね。それにシンガポールはいろいろ制約が多いので、撮影するのが元々難しいんです。それで、前作『イロイロ』もそうだったんですが、本作も入念にリハーサルを重ねました。


ただセックスシーンは、何度リハーサルを重ねてもなかなか納得のいく出来にならず、当日になってもまだ満足できない状態でした。もともとコー・ジアルーはとても才能に恵まれているので、何でも容易にやり遂げてしまうんです。そのせいか油断しているところがあって、彼は唯一、現場に脚本を持ってこない俳優でした。しかしながら、彼が唯一、セリフを忘れない俳優でもあったんです。そんな彼もセックスシーンを撮影する当日は腰が引けてて、困難を感じているな、とこちらにもわかりました。撮る時も最後までリハーサルを重ねて、私が「どうも何か違うんだよね」と言うと彼は怒ってしまい、「僕ができないんだから、監督、自分でやったら」(笑)とケンカのようになり、「もう家に帰る!」と言い出しました。私も、「僕ができるんだったら自分でやるよ」(笑)と言い返し、「でも、僕は年を取り過ぎてるからダメだ」と言ったりしていました。「君ならできるから」となぐさめたりしていたんですが、服を全部脱いでしまうと案外簡単にいくものなんですね。リハーサルの時は服を着てやっていたわけですが、何も着ていない状態だと、とにかく早く済ませてしまいたい、という気持ちが先に立って、パッとやってしまえたんでしょうね。

Q4(女性):夫の父親役の方の存在感がとても印象に残ったのですが、あの俳優さんは実際にお体に障害があるのか、それとも演技としてああやったのでしょうか。それと、お尻まで見せてしまうということにあの俳優さんは納得してやられたのか、教えて下さい。

監督:あの人は、60年代から活躍しているベテランの舞台俳優です。今でも年に3、4本芝居に出演している有名な人で、現在71歳です。彼はとても健康な人なので、病院に行って脳梗塞を患った老年の患者さんと会ってもらい、その人たちがどういう動きをし、どんな風にものを食べ、ベッドから車椅子にどうやって移るのか、といったことを観察してもらいました。

(あるネット記事に、コー・ジアルーと上記で話題になっている俳優ヤー・シービンのステキなツーショット写真が使ってありましたので、興味のある方はこちらをどうぞ)


Q5(男性):主人公の女性教師がマレーシアの出身というのは、最初からそうなっていたのでしょうか。それとも、ヨー・ヤンヤンさんがキャストに決まってからそうなったのでしょうか。

監督:最初から脚本がそうなっていました。これは案外知られていないんですが、シンガポールの中国語の先生は、半数以上がマレーシアから来た人たちなんです。シンガポールは英語で用が足りる国です。書類等も全部英語だし、友人たちと話す時も英語を使う。私も、家で両親と話すのも英語、という環境で育ちました。シンガポールの人口の7割以上は華人ですが、中国語のレベルは非常に低いんです。ですのでマレーシアから、時には中国から、中国語の教師を輸入しなくてはいけないわけです。私が見るところ、シンガポールは中華的な伝統、文化を持っているのに、子供たちは中国語を話せなくなってきていると思います。学校でも中国語が軽んじられているという様子が本作でも描いてありますが、中国語の成績がどんなによかったとしても、オックスフィード大やケンブリッジ大には入れないんですよね。


市山:残念ながら時間が来ました。この作品、日本での配給がまだ決まっていないんですが、何となく配給されそうな気がします。ぜひとも皆さんに、応援していただければと思います。


監督:あ、皆さんの写真を撮らせて下さい。


この大きな口は? 会場の拍手が大きくて&マイクがなくて、この時監督が何を言ったのかは聞こえずじまい。『熱帯雨』は先日の台湾金馬奨でヨー・ヤンヤンが主演女優賞を獲得したほか、11月21日から始まった第30回シンガポール国際映画祭のオープニングを飾るなど、高い評価を受けつつあります。日本での公開も、ぜひ実現してほしいですね。

『燃えよスーリヤ!!』が燃え上がる!<3>カワイイ出演者たち

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前回、こちらで『燃えよスーリヤ!!』の出演者の皆さんをご紹介しましたが、大事なペアを忘れていました。お子様時代のスーリヤとスプリ(フルネームはスプリヤー)です。インド映画の子役はもうホントにかわいい子が多いのですが、『燃えよスーリヤ!!』のおチビちゃん2人も例外ではありません。それでは、順にご紹介していきましょう。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

サルタージ・カッカル(少年時代のスーリヤ役)

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

残念ながら、生年月日は発見できず。すでに演技経験豊富で、2017年にパンジャービー語映画『Big Daddy(ビッグ・ダディ)』に主役で出演。

Big Daddy Poster

そして続いて同年、サルマーン・カーン主演作『Tiger Zinda Hai(タイガーは生きている)』に出演したのですが、これが何とサルマーン・カーンとカトリーナ・カイフの息子役というむちゃくちゃいい役でした。日本でもこのシリーズの前作『タイガー 伝説のスパイ』(2012)が公開されていますが、あのラストで逃亡したタイガーとゾヤが家庭を作り、息子もできている、という設定が5年後の作品『Tiger Zinda Hai』なんですね。というわけで、サルタージ・カッカル君はインドでは「タイガーの息子」として知られています。おそらく、この映画を見たヴァーサン・バーラー監督がキャスティングしたのだろうと思われます。『燃えよスーリヤ!!』では演技度胸も満点、結構難しい役、問題児というか問題ありまくり少年を上手に演じています。サルタージ君はちゃんとインスタグラムのページも持っていて、シャー・ルク・カーンとのツーショットなど、カワイイ素顔の写真がいっぱいアップされています!

 

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited 


リーヴァー(リヴァー?)・アローラー(少女時代のスプリ役)

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

2010年2月1日デリー生まれ。「Riva」という名前はあまり聞いたことがなく、「リーヴァー」なのか「リヴァー」なのか不明です。映画デビューは2011年のランビール・カプールとナルギス・ファークリー主演作『Rockstar』とのことなので、赤ん坊役で映画初出演だったわけですね。子役としてのキャリアはシュリーデーヴィの遺作『Mom(ママ)』(2018)からのようで、この時は下の娘を演じたのでは、と思います。『燃えよスーリヤ!!』以後はテレビドラマに出たりしたあと、先日日本でもDVD発売となった『URI サージカル・ストライク』(2019)に出演。主人公ヴィッキー・コウシャルの姪の役を演じました。1月にインドで見た時には気づかなかったのですが、今見直してみると、『URI』での役は空手の緑帯を持ってるカラテ少女、という設定になっています。これも、『燃えよスーリヤ!!』の影響でこんな設定になったのかも知れません。

余談ですが、『URI』の中で兵士たちが「Jai Hind!(ジャイ・ヒンド!/インド万歳!)」と叫ぶシーンが出てくるのですが、そこの字幕が「ジャイ・ハインド!」になっています。先日インド映画講座で受講者の方が教えて下さって、半信半疑で見てみたところ、あちゃーの字幕になっていました。「Jai Hind」と書いてあれば、「Hind」は固有名詞だと判断できますし、せめて辞書を引いて下されば...と残念です。ついでにその時同じ受講生の方から、「Hindustan」は「ヒンドスタン」か「ヒンドゥスタン」のどちらにすべきかと聞かれて、「ヒンドスタン」の方がいいとお答えしたのですが、ヒンディー語表記を正確に書けば「ヒンドゥスターン」なので後者の方がいいかも、と判断が揺れてきました。

閑話休題。リヴァーちゃんはその後も、サルマーン・カーンの主演作『Bharat(バーラト)』に出演していたりと、順調に子役の道を歩んでいます。そのうち大人の役をやるようになって、ヒロイン役で出てくるかも知れませんね。では、お子様時代と、大人になってのスーリヤ(アビマニュ・ダサーニー)それにスプリ(ラーディカー・マダン)の比較画像を付けておきましょう。 

写真クレジットはいずれも©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

『燃えよスーリヤ!!』の公式サイトはこちらです。公開は12月27日(金)から。大掃除を早めに済ませて、劇場(おお、全国の公開劇場がどんどん増えてる!)に見に行きましょう! あるいは、「燃えよ幸運!!」で初詣の方がいいかな? 2019年の厄落としにも、2020年の招福開運にも効きそうな、パワフルな作品です!


『マニカルニカ』で明ける2020年<1>「マニカルニカ」と「ラクシュミー」

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12月に突入してもう2週目、どんどん2020年が近づいてきています。その2020年新春、1月3日(金)に公開されるのが、インドの歴史映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』です。以前こちらでご紹介したように、正確に言えば「ジャーンシーの王妃」なのですが、日本公開ではあえて「女王」にしてあります。今日はいただいてあるメイン画像をアップし、ストーリー等をご紹介しておきます。まずは映画の基本データをどうぞ。

 

『マニカルニカ ジャーンシーの女王』

2019年/インド/ヒンディー語・英語/148分/原題:Manikarnika: The Queen of Jhansi/字幕:藤井美佳
 監督:ラーダ・クリシュナ・ジャガルラームディ
 主演:カンガナー・ラーナーウト
 出演:ジーシュ・セーングプタ、スレーシュ・オベロイ、アトゥル・クルカルニー
 配給:ツイン
※2020年1月3日(金)より新宿ピカデリーにて2週間限定ロードショー

(ヨコ位置だったティーザーチラシ。こちらもステキです) 

マニカルニカが生まれたのは1828年11月19日、インド中部の町ヴァラナシ(ヴァーラーナシー、ヴァナーラス、ベナレスとも。あるいはカーシーとも呼ばれる、ガンジス河畔の聖地)においてでした。父親はバラモン階級の僧侶で、映画の冒頭に赤ん坊の名付けのシーンが出てきます。ヴァラナシには沐浴等のためにたくさんのガートと呼ばれる川岸があるのですが、それぞれ名前が付いていて、マニカルニカというガートもあります。マニカルニカとは、「マニ(宝石)」と「カルニカー(耳飾り)」からなり、「宝石の付いた耳飾り」という意味です。そしてこの赤ん坊は、「マニカルニカ」と名付けられて大きくなるのですが、この子の生まれる少し前のインドは、こんな勢力図になっていました。中央にマラーター同盟(連合)が大きな勢力を誇り、中央部の北のデリーを中心にムガル帝国が、その東にはアワド王国、さらにその東のベンガル地方一帯はイギリスが押さえている、という形です。

(ネットにアップされた地図より)

しかし、マラーター同盟は、第一次から第三次に至るマラーター戦争(その時々で戦いの様相が違うため、詳しくはこちらのWikiをご覧下さい)を通じて次第に弱体化し、宰相バージーラーオ2世がイギリス相手に戦った第三次マラーター戦争による敗北で、1818年にはほぼ解体されてしまいます。そして、バージーラーオ2世はカーンプルに近いビトゥールという町に追放されて、イギリスから年金を支給される年金生活者(!)になるのです。映画でも、バージーラーオ2世(スレーシュ・オベロイ)が年金支給が遅れがちだとクレームの手紙を送るシーンが出てきますが、彼は10代のマニカルニカ(カンガナー・ラーナーウト)を実の娘のようにかわいがっており、マニカルニカは、バージーラーオ2世の養子ナーナー・サーヒブ(ヴィクラム・コーチャル)を兄と呼んで育ちます。彼女はナーナーと共に、師タンティヤ(ターンティヤー、またはターティヤー)・トーペー(アトゥル・クルカルニカ)から武術を習って育ちますが、こうなるとバラモンの娘と言うよりは、クシャトリヤ(武士階級)の娘、という感じですね。

ジャーンシー藩王国の大臣ディクシト(ディークシト/クルブーシャン・カルバンダー)はマニカルニカを見て気に入り、体の弱い藩王ガンガーダル・ラーオ(ジーシュ・セーングプタ)の妻に、と縁談をまとめます。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

マニカルニカのお輿入れは1842年の5月で、その時ガンガーダル・ラーオは新妻に「ラクシュミー」という名前を与えます。ラクシュミーはヴィシュヌ神の妃であり、美と富と幸運の女神の名前ですが、インドでは秋にラクシュミー女神を祭るお祭りが盛大に行われるように、インドで一番人気のある女神と言っても差し支えありません。そして人々は、女性に対する敬称「バーイー」(兄弟のbhaiではなく、baiという綴りです)を付けて、マニカルニカを「ラクシュミー・バーイー」と呼び習わしました。私もこの映画を見るまでは、ラクシュミー・バーイーという名前でしか知らなかったのです。

そんな幸運な名前になったのに、その後のラクシュミーは男児を出産したもののすぐに亡くすという不幸に見舞われ、やがて親戚から男児を養子に迎え、ダーモーダル・ラーオと命名したと思ったら、今度は夫が亡くなってしまいます。1853年のことでした。映画では、夫の母親から未亡人としての格好をするようにと言われたのをはねのけ、ダーモーダルの後見人として「国母」的存在になる決心をするラクシュミーの姿が描かれます。

しかしながら、イギリスは「養子は跡継ぎとは認めない」としてジャーンシーを併合、1954年3月にラクシュミーは城を明け渡し、ジャーンシーの市中で暮らしますが、イギリスに対してジャーンシー藩王国の存続を訴え続けました。そして城明け渡しから3年後、1957年3月に、かつては「セポイ(シパーヒー=兵士)の反乱」と呼ばれた「インド大反乱」が起きるのです。詳しくはこちらのWikiを見ていただきたいのですが、ジャーンシーでの反乱が始まったのが同年の6月で、兵士たちがラクシュミー・バーイーを指揮官とするのは少しあとになってからのようです。しかし、いったんジャーンシーの反乱軍を指揮するとなった時、ラクシュミー・バーイーは素晴らしい手腕を発揮したそうで、上の画像にある女性だけの軍隊の組織もその成果の一つでした。こうして1958年6月18日にグワーリヤル近郊での戦いで戦死するまで、ラクシュミー・バーイーの戦いは続きます。

Rani of jhansi.jpg

今回私がいろいろと参考にしたのは、長崎暢子著「インド大反乱 一八五七年」(中公新書、1981年初版)という本で、その最後の方、「反乱のジャンヌ・ダルク、ラクシュミー・バーイー」(P.209)から始まる10ページに彼女に関する詳しい記述が出ています。その中に、「とりわけイギリス軍を驚かせたのは、女性兵士の姿であった。看護兵としてばかりでなく、砲手、弾薬運び、通常兵士としても彼女たちは戦っていた。この特徴ある女性軍も、ラクシュミー・バーイー自身の行動と同様に、インド民族運動に大きく影響する。第二次世界大戦中、スバース・チャンドラ・ボースはジャーンシーのラーニー連隊という女性正規軍を結成したほどであった」(P.217)と書かれていますが、映画ではその女性軍の結成も上手にエピソード化され、「史実は公的資料を参照、歴史家の考証を受けた」という映画冒頭の断り書きが伊達ではないことを証明しています。

こんな風に、歴史劇としても見応えのある『マニカルニカ ジャーンシーの女王』。さすが、『バーフバリ』二部作の原案者であり、S.S.ラージャマウリ監督の父でもあるK.V.ヴィジャエーンドラ・プラサードが脚本を書いただけのことはあります。短い公開期間ではありますが、ぜひお見逃しなく。公式サイトはこちらです。最後に、予告編を付けておきます。

インド史上最も有名な”戦う王妃”映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』予告編

 

スペース・アーナンディ/インド映画連続講座第Ⅳ期<2>「衣服を知る!」開催日追加

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以前にもお知らせした「スペース・アーナンディ/インド映画連続講座」第Ⅳ期<2>「衣服を知る!」の開催日が増えました。今週の土曜日が1回目で、2回目を1月18日(土)に予定していたのですが、さらにご要望があったため、2月15日(土)にも3回目を追加開催することにしたものです。以下にご案内を載せておきます。

スペース・アーナンディ/インド映画連続講座第Ⅳ期
「映画で知る! インド人の生活」
<第2回>衣服を知る!~衣服のTPOと意味

 スペース・アーナンディでは、毎年1つのテーマで行う「インド映画連続講座」を開催中ですが、第Ⅳ期は「映画で知る! インド人の生活」と題して、現在のインドの生活がよくわかるパートを映画から拾ってみようと思います。映画はフィクションですが、多くが現実をもとに作られており、今のインド人のライフスタイルや考え方が映画に色濃く反映されています。実際には「お邪魔しま~す」とずかずか入り込むのが難しい場所でも、映画なら見せてくれるシーンも多く、インド人の生活の一端を知るには、映画は最適のツールです。
 今回取り上げるのは「衣服」。インド人は今でも、民族衣装をよく着ます。それはどんな時に? 着るのはどんな人が? そしてどんな民族衣装を? インドでも、都会では男女ともに洋服が日常着になりつつありますが、それでも民族衣装を着る割合の高い場所や場合も多く、映画の中にもそれが反映されています。また、ある記号性を持った衣服--例えば、イスラーム教徒男性のイスラム帽、女性のブルカー、そして男性がまとうサリーなど、何か意味を表すものもあります。結婚衣装も、宗教や地方で様々に違いがあるなど衣服は実に雄弁です。それがわかる実例を様々な作品から取り上げて見ていく予定ですが、衣服の知識は、次にインド映画をご覧になる時の大きな助けになることと思います。
 なお、メインの講座と抱き合わせで開催してきた「映画で学ぶヒンディー語塾」では、実際に映画で使われた会話を学びます。ほんの1、2分の会話ですが、今回は『PK/ピーケイ』から。ヒンディー語が初めての方でも大丈夫、カタカナ書きが付いているので、その通り読めば意味が通じてしまいます。30分間の濃密なヒンディー語学習体験をどうぞ。

 日時:2019年 12月14日(土) 15:00~17:30 ~予約受付中、残席わずか
    2020年1月18日(土) 15:00~17:30 ~満席、キャンセル待ち
         2月15日(土) 15:00~17:30 ~予約受付中
 場所:スペース・アーナンディ(東急田園都市線高津駅<渋谷から各停18分>下車1分)
 定員:20名
 講座料:¥2,500(含む資料&テキスト代)
 講師:松岡 環(まつおか たまき)
ご予約は、スペース・アーナンディのHP「受講申し込み」からどうぞ。ご予約下さった方には、ご予約確認と共に、スペース・アーナンディの地図をメール送付致します。床におザブトンをひいて座っていただく形になりますので、楽な服装でお越し下さい(申し訳ないのですが、スペースの関係上イス席はご用意できません。悪しからずご了承下さい)。
皆様とお目にかかれるのを楽しみにしております。(松岡 環)

[講師紹介]
1949年兵庫県生まれ。大阪外大(現大阪大)でヒンディー語を学び、1976年からインド映画の紹介と研究を開始。1980年代にインド映画祭を何度か開催したほか、様々なインド映画の上映に協力している。『ムトゥ踊るマハラジャ』『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』『きっと、うまくいく』『パッドマン 5億人の女性を救った男』など、インド映画の字幕も多数担当。著書に、「アジア・映画の都/香港~インド・ムービーロード」「インド映画完全ガイド」等。

今週土曜日の回では、クリスマス・プレゼントも考慮中。ボリウッド映画ポスターやプレス、「衣服」にちなんだ小物などをご用意する予定ですので、ご予約下さった方は楽しみになさっていて下さい。1月と2月は、お年玉配布予定です。皆様のお越しをお待ちしています! なお、この講座は3月はお休みで、4月からまた再開する予定です。年明けには4月の予定をアップしますので、しばらくお待ちくださいね。


キタ━(゚∀゚)━!  インド語映画『SUMO』の予告編がアップされました!

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今年の6月頃、インド映画『SUMO』のロケに参加なさった皆さん、お待たせしました~! 昨日YouTubeに予告編がアップされました。タミル語映画です。今年初めから何度か日本にロケ隊がやって来ていましたが、そのうち6月半ばには日本人エキストラを多数集めて、相撲の取り組み場面を撮ったりした作品です。まずは、予告編をどうぞ。

Sumo - Trailer (Tamil) | Shiva, Priya Anand, Yogi Babu, VTV Ganesh | S. P. Hosimin

予告編なので短いフッテージですが、あなたのお顔は写っていましたか? カメラマンはこの方、『世界はリズムで満ちている』(2018)等の監督としても有名なラージーヴ・メーナンです。


彼からストーリー等も聞いてはいたのですが、うーん、何だかちょっと違う気が。すもうレスラー、あまり賢そうに描かれていませんね。演じているのは田代良徳(たしろ よしのり)という、元大相撲力士の俳優さんです。現役時代のしこ名は「東桜山」。こちらにプロフィールがあります。

上は予告編宣伝用のポスターですが、来年のタミル正月「ポンがル」に合わせて公開されるとのことで、Wiki『Sumo』によると公開予定日は1月14日(火)とか。インド側の主演は、下のポスターにあるようにコメディを得意とするシヴァと、それからプリヤ・アーナンド、コメディアンのヨーギー・バーブらです。あと、『燃えよスーリヤ!!』のじいちゃん役マヘーシュ・マーンジュレーカルや、チャンキー・パーンデーらボリウッド俳優の名前も出演者リストに挙がっているのですが、どんな役で出るのでしょうか、楽しみです。

 インド人にも、日本人にも楽しめる作品になっているといいですね。来年の公開時、どこか(インドのアタミルナードゥ州のほか、もしかしたらシンガポールでもやるかも)でご覧になった方は、ぜひコメントをお寄せ下さい。


ドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』に1万5千分の1から御礼を

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珍しく、日本映画、しかもドキュメンタリー映画のご紹介です。先頃の東京フィルメックスでもコンペ部門に選ばれて上映され、スペシャル・メンションを獲得した広瀬奈々子監督のドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』。映画祭の時にこちらでもちょっとご紹介したように、長きにわたって本の装幀を手がけている菊池信義さんが主人公です。

(C)2019「つつんで、ひらいて」製作委員会

1943年生まれの菊池さんは、1977年に装幀者(「装幀家」という言い方を好まず、「装幀者」と名乗っておられるそうです)として独立し、以後、いろんな本の装幀を担当してきました。これまでに装幀した本は約1万5千冊。単純に計算して1年に357冊、つまりは年中無休で1日1冊仕上げる! あらためてすごい方だなあ、と思います。実は、広瀬奈々子監督のお父様も装幀をお仕事になさっていたそうで、それで菊池さんを撮ってみたい、と思ったとか。本当は、このドキュメンタリー映画が広瀬監督の監督第1作になるはずだったとかで、劇映画『夜明け』の方が先に世に出ましたが、そんなみずみずしさもたっぷりとたたえた、秀作ドキュメンタリーです。今回は、映画の基本データと、それからフィルメックスでの上映後の広瀬監督Q&Aをアップして、この愛おしい映画をご紹介します。

(C)2019「つつんで、ひらいて」製作委員会 

『つつんで、ひらいて』 公式サイト
 2019/日本/日本語/94分/英語題:Book-Paper-Scissor/ドキュメンタリー
 監督・編集・撮影:広瀬奈々子
 出演:菊地信義 水戸部功 古井由吉 ほか
 製作:バンダイナムコアーツ、AOI Pro.、マジックアワー、エネット、分福
 企画・制作:分福
 配給・宣伝:マジックアワー
※12月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

<以下、11月24日の東京フィルメックス上映時に行われたQ&Aです>


市山フィルメックス・ディレクター(以下「市山」):ではまずはひと言ご挨拶を。

広瀬監督(以下「監督」):昨年は『夜明け』という映画で参加させていただいて、これが2作目になります。本日はよろしくお願いします。


市山:昨年、広瀬監督のデビュー作『夜明け』を上映しまして、スペシャル・メンションも受賞しました。今年ドキュメンタリーを撮られて、拝見したところ素晴らしい映画だったので、2年連続で来ていただきました。最初に僕の方から、一つ質問させていただきます。この作品は本の装幀という、我々も今まであまり気にしないでいたことに、こんなに手間というか、すごい時間といろんな事を費やされているのを見て素晴らしいと思ったんですが、こんな題材をなぜ撮ろうと思われたんですか?

監督:実は、『夜明け』よりも先にこの作品を撮り始めまして、このドキュメンタリーを私のデビュー作にしようと思っていました。元々は私の父が装幀家でして、もう11年ぐらい前に亡くなったんですが、あらためて装幀ってどういう仕事だったのかな、と知りたくなりました。実家の本棚には菊池さんの本があって、それまでにも名前は聞いたことがあったんですが、その本がふと目に入って読んでみたら非常に面白かったんです。筑摩書房から出ている「装幀談義」という本だったんですが、ただただ、この本はどういう紙でできていて、どういう字が使われています、という事だけなのに、装幀の仕事というものがとてもよくわかりました。それまでは装幀のことがよくわかってなくて、本のカバーをデザインする仕事だ、ぐらいに思っていたので、こんなに中身の重層的なところまでデザインしていて、あらゆるところまでやる仕事なんだ、というのがわかって、すごく興味がわきました。何よりも、アーティストであろうとするよりもあくまで裏方に徹する、そういう職人的な姿勢に非常に引かれて、菊池さんにお会いしてみました。


市山:では、前から知り合いだったのではなく、その時に初めて?

監督:はい、初めてお会いしました。映画の中にも出てくる喫茶店で、初めてお会いしたんです。

市山:その時に簡単にOKが?

監督:いえ、その時はですね、僕は映像は嫌いなんです、と言われて(笑)。ソッコー拒否ですね。でも、もう一度会うことになって、3ヶ月後だったかに会わせてもらったんですが、その時はまた全然態度が違って、いいことみつけた、って(笑)。僕の頭に小さなカメラを取り付けよう、と言い出して、おかしな人だな、と思ったんですけど(笑)。完全に演出家の気持ちになっていらしたようで、そんな風におっしゃっていましたね。


Q1(女性):ナレーションがなくて、必要なことだけが字幕で入っていますが、こういう形にしたのは?

監督:本来であればディレクターの声とかも排除すべきかな、と思ったんですが、あえて自分の声も入れて、その会話の中で見せていくような作りにしました。それで第三者を入れるのは考えにくかったのと、できるだけ、本を読むような読後感の作品にしたかったので、ナレーションという選択肢は排除しました。


Q2(男性):2つお伺いしたいです。一つは、菊池信義さんは装幀家として大家だと思うし、アーティスト的な人でもあるので、美術家的な人を撮ることについての映画監督としての緊張感、難しさというか、当然映画を見るだろう菊池さんの評価とかを意識した緊張感のようなものがありましたか? もう一つは、装幀という本に関することを映像として見せることの難しさはありましたか?

監督:おっしゃったように、菊池さんという人は演出家という側面があって、なかなか撮らせてもらえない人だったんです。私が、こういうシーンを撮りたいんですけど、とお願いすると、いや、それはちょっと違うんじゃないか、もうちょっと別のアイディアを考えてみてくれ、と言われてしまうことが多かったので、そういう緊張感は常にありました。ずっと、できあがるまでありましたね。だから、もう本当に、共作と言っていいと思います。菊池さんに見ていただいたあとは、そんなに多くを語られはしなかったんですが、僕は今第4期に入っている、というような言い方をしていて、これまでの自分の装幀家人生を振り返って、これからは第4期らしいんですけれども、非常に前向きでしたね。銀座の事務所はたたまれて、今は鎌倉のご自宅で作業をしているんですが、すごくやる気に満ちていて、これからはやりたい仕事しかやらない、と言っていました。この映画の宣伝活動とかもひっくるめて、何か全部自分のものにしているような印象を受けるんですよね。非常に生き生きしていて、しっかり世の中に認知してもらえるように、逆にこの映画が利用されているような、そんな印象を受けます。


もう一つの質問ですが(と、質問者に確認して)、菊池さんが装幀をする上で一番大切にしているのが触感、手ざわりだと思うんですが、それを映画で表現するのはすごく難しいことなので、できるだけ五感を刺激する紙の音だったりとか、そういう部分に気を配りました。あと、別撮りですね。本を撮る時には私ではなくて別のカメラマンにお願いしているんですけれども、どういう角度で照明を当てたらどういう風に紙の質感が出るとか、どういう風に活版の凹凸とかが出るとか、そういうことはかなり慎重にやって、時間を掛けて撮りました。

Q3(アップリンク浅井社長):エンディングクレジットは、菊池さんが書体を組んだんですか?

監督:いや、実はですね、あれはお弟子さんの水戸部功さんが、手書きも含めてデザインして下さいました。

Q3(続き):結構エンディングクレジットで、ロゴで企業名が読み取れなかったんですけど、何かロゴに入れない事情があったんでしょうか?

監督:基本的には、ご協力いただいた会社の方には、ロゴもしくは会社の正式名称を入れさせて下さいというお願いをして、向こうが希望するものを入れている、という形になっています。


Q4(女性):今回のドキュメンタリーは、音楽がすごく暖かい気持ちにさせてくれるというか、印象に残ったんですが、音に関することのお話をうかがいたです。

監督:難しいですね、どういう言い方をしたらいいんでしょう...。本もそうだと思いますけど、やっぱり紙であることに五感が刺激されると思いますし、映画も劇場に来ることによって五感を刺激されて、映画鑑賞という体験になっていくと思うんですが、やっぱりその時に音というのはテレビで見るのとは全然違う感覚をもたらすものだと思うので、かなり気を遣っています。でも今回は、基本的に自主映画のような形で撮り始めたので、自分でカメラを回して、ほぼカメラマイクの音なんですよね。なので結構限界もあって、ポスプロで一生懸命整音をしていった、という形でした。


音楽は、菊池さん自身がタンゴがお好きでよく聞かれていたので、そこからイメージを発想させて管楽器が合うんじゃないかと思いました。最初実はbiobiopatataさんのことは知らなくて、別の方にお願いしていたんですが、そのバンドのライブを聴きに行った時、前座でbiobiopatataさんが演奏していたんですね。で、圧倒的にそれがよくって、何と言っても手作り感があり、すごく菊池さんが目に浮かんだんです。この人にお願いするしかないな、と思って、予定を変更してbiobiopatataにお願いすることになりました。そんな経緯です。


Q5(外国人男性):エイゴデイイデスカ? 素晴らしい映画をありがとうございました。おそらく途中で、次世代の水戸部さんに引き継いでいただきたいという思いがありながらも、ある意味そこで終わりにしたいということも考えられていて、そこに引き裂かれているような印象を受けたのですが、それについてどう思われますか?

監督:そうですね、水戸部さんに引き継ぐという意思がどれぐらいあるのかちょっとわからないんですけど、自分でやめると言いながら、やめる意思がそんなにない人なのかなと私は思っていて。少しずつ作品の数も減らしていると思いますし、体力的にもどういう風に自分のキャリアを終わらせていくか、ということを視野に入れているとは思うんですけれども、あくまで自分の作品は自分の作品、水戸部さんは水戸部さんの作品、という風に捉えていると思います。今後は自宅に仕事場を移して、神保さん(東京事務所でアシスタントとして、コンピュータ処理作業等を長年やってきた方)との関係も今は解消していると思いますけど、菊池さんがデザインしたものを今は基本的には水戸部さんがデータ化して納品する、という形になってるみたいです。なので、関係がちょっと特殊なんですけど、アシスタントのような形を取りながらも、作家としては独立し合っている関係なのかな、と思います。 


市山:この映画は、12月14日(土)からイメージフォーラムで公開するので、ぜひとも皆さんのお知り合いの方にお薦めいただければと思います。どうもありがとうございました。(大きな拍手) 

★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

菊池さんは今、映画に登場した銀座の事務所からは撤収して鎌倉のご自宅にベースを移し、お弟子さんの水戸部功さんの事務所を東京の拠点にしながら、お仕事を続けておられます。先週の日曜日、12月8日の毎日新聞日曜版に、「匠の技 手作業のブックデザイン 装幀家 菊池信義さん」という大きな紹介記事が出ていて、本作『つつんで、ひらいて』の公開でさらなる注目を浴びていらっしゃるんだな、と思いました。また、昨日届いた友人の出版社木犀社の通信にも、「小社創業以来32年、ほぼすべての本の装幀をしていただいている菊池信義さんの仕事ぶりを三年間にわたって撮影した『つつんで、ひらいて』。」という一文があって、本作のことが紹介されていました。松本市にある木犀社は、関宏子さんと遠藤真広さんというお二人による出版社で、西岡直樹さんの名著「インド花綴り」等を出しています。こんな風に「菊池信義さんネットワーク」があちこちで発見されて、この映画の内容がいよいよ身近なものになりました。


最後に、「菊池信義さんネットワーク」の末端に私自身もいることをお伝えしておきたいと思います。そうなんです、拙著の1冊目、「アジア・映画の都」(1997)の装幀も菊池さんにやっていただいたのです。私が希望したのではなく、出版社めこんの担当者が依頼してくれたのですが、今回『つつんで、ひらいて』を見ていて、自分の本は菊池さんの装幀としてはちょっと異端に属するのでは、という気がしてきていました。でも、今回、この紹介を書くのでじっくりと見直したところ、表紙のタイトルが傾いだ四角に入っていたり、サブタイトルと著者名の字に少しだけ赤がかぶせてあったりと、これはやはり菊池さんしか思いつかないデザインだろう、という確信も持てて、1万5千分の1になった幸福感を味わっています。中のページでも、ノンブル(ページ数の数字)がちょっと変わった位置に振ってあり、これは出版当時めこんの担当者が、「すごくしゃれてるんだけど、版組にお金がかかって(泣)」と言っていました。32年前の「アジア映画巡礼」の出発地点を記したこの本は、私にとってとても思い出深い1冊です。菊池さん、その節はありがとうございました。

(C)2019「つつんで、ひらいて」製作委員会 

面白い装幀の秘密が見られ、文化に関わる人間の仕事とはどういうものか、ということがよくわかるドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』。あなたもぜひ劇場でご覧になってみて下さい。本日が初日だったわけですが、こちらのツイートを見ていると、劇場用パンフも素晴らしいようなので、買いに行こうと思います。出版文化を高みに引き上げてくれる菊池信義さんのお仕事に、そしてそれを我々に伝えてくれる広瀬奈々子監督の映像に、おいしいコーヒーで乾杯!!

『燃えよスーリヤ!!』が燃え上がる!<4>ジミー警備保障の懲りない面々

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ここのところ、『燃えよスーリヤ!!』について書かせていただくことが続いています。そのたびに、試写でいただいたプレスを隅々まで参照し、お借りしている映像を見直したりしているのですが、この映画、何度見てもその都度発見があって、と~っても面白いです。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

昨夜もある原稿を仕上げる中で、「ヴァーサン・バーラー監督は本作の出演者に対し、『ドラゴン危機一発』(1971)、『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)、『ドラゴンへの道』(1972)、『燃えよドラゴン』(1973)、『プロジェクトA』(1983)、『サンダーアーム/龍兄虎弟』(1986)、『プロジェクト・イーグル』(1991)等を”見ておくべき作品”に指定したそうだ」とか書いていて、前半4作のブルース・リー作品はもちろんだけど、後半3作のジャッキー・チェン作品もいいセレクションだなあ、と感心しました。『プロジェクトA』の数々のギャグシーンと時計台落ち、そして『サンダーアーム/龍兄虎弟』のアラン・タム紅館コンサート場面は、特に忘れがたい名シーンですね。後者の、コンサートで「午夜騎士(ミッドナイト・ライダー)」が歌われるシーンと、パリのファッションショー銃撃シーンとの切り返しで構成される場面は、長らく私の「香港映画ベストシーン」でした。あの映画で初めて腐乳を知ったんだったけ、とかいろいろ思い出します。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

で、『プロジェクト・イーグル』は前の2作ほどにはインパクトがないのになんで? と思ってよく考えたら、そうだ、砂漠でジャッキーがヒロインたちに、ベストに偽装した水タンクからチューブで水を吸わせるシーンがあったんだ! と気づきました。そうか、それからの発想が、じいちゃん(マヘーシュ・マーンジュレーカル)がスーリヤ(アビマニュ・ダサーニー)に装着させる水タンクのリュックとチューブなのか。ヴァーサン・バーラー監督のオタク度、ここに極まれり、ですね。じいちゃんの「スーリヤ、水を絶えず飲んでいろ」という水信仰も、何か元ネタがあるのでしょうか? 本作をご覧になっておわかりになった方は、ぜひコメントで教えて下さい。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

あと、どこかのシーンで一瞬「小城故事」のメロディーが流れた気がするんですが、空耳だったのかなあ。あ、ありました、54分ぐらいのところ、スーリヤの父の再婚相手と一緒に、一家がチャイニーズ・レストランで食事するシーンです。ご存じの方も多いようにテレサ・テンの持ち歌なのですが、元々同名の台湾映画の主題歌で、その李行(リー・シン)監督の名作『小城故事』(1979)のヒロイン役は林鳳嬌(ジョアン・リン)、つまりジャッキー・チェンの奥さんなのです。そこまで知っていてこの曲をBGMに使ったとしたら、ヴァーサン・バーラー監督、そのオタク度たるや畏るべし、ですね。どっちだろう、監督に聞いてみたいものです。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

おっといけない、今日は本作のたくさんある見どころのうち、後半の見どころを担う悪の側、ジミー警備保障に雇われている警備員の皆さんを紹介しようと思っていたのでした。ジミー警備保障(ジミー・セキュリティ)は、空手マニの双子の兄弟ジミー(両方とも演じるのはグルシャン・デーヴァイヤー)が経営するガードマン会社で、立派なビルのワンフロアを占めています。警備員の制服が、日本のSE●OMやA●SOKのようにカッコよくないのでちょっと違和感があるかと思いますが、あのダークグリーンの制服は、インドの映画ファンには見慣れたものです。映画スターには必ず警備員、ガードマンが付いており、シャー・ルク・カーンやアーミル・カーンのような大物となると、ガタイのいいダークグリーンのおじさんが常時3人ぐらいは付き従っているのが普通です。本作を見て、こういう警備会社から派遣されてくるのか、と納得しました。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

本作ではラスト近く、スーリヤが空手マニを促し、ジミーが奪ったマニのロケットを取り戻すべく、ジミー警備保障に乗り込みます。ところが、ジミーは自宅で優雅なお風呂タイム中。警備員が持ってきたスマホの中の入浴中ジミーと対峙しているうちに、マニは思わずクシャミをしてしまい、それが引き金になってマニ&スーリヤVs.警備員たちの闘いが始まる、というえらくひねった戦闘開始シーンなのですが、そこに登場する警備員たちが実に個性的なのです。一番個性的なのが武器庫を預かる老人で、セリフがいちいち面白い! 白いヒゲのおじいちゃんが出てきたら、要注目です。特に、拳銃をくれ、というガンマンとのやり取りはよく考えてあって笑えますが、一部にちょっと不明な点も(次に映像を見る時の課題にしましょう)。それにしても、インドでは民間の警備会社が、こういう武器庫を持っているんですかね?

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

もう一人の注目すべき人物はコーヒー運びのボーイで、制服の色が違い、上の写真のようなカーキ色です。ところが、その場の雰囲気に染まってしまったのか、自分も警備員であるかのように振るまい始めます。そして、次の日の闘いにも参画してしまうのですが、写真からもわかるように小柄なボーイで、顔つきからしてネパール人のようにも思われます。ほかにも、電信柱みたいに背の高い警備員(『死亡遊戯』のアブドゥル・ジャバーのパロディかも)やら、糖尿病の警備員やら、いろんなキャラクターの警備員が登場して、クライマックスの前半を盛り上げてくれます。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

クライマックスの後半は、ジミー警備保障が火事になり、スーリヤやマニ、スプリがビルから逃走、じいちゃんの手引きで取り壊し予定の元の住居に潜り込んで一夜を明かしたあとの場面になります。ここを突き止めたジミー率いる警備会社の面々が襲撃をかけてくるのですが、ジミーがやけに正々堂々と闘う方に傾いてしまい、「百人組手」的な方法で決着を付けようとする、というシーンが展開されます。どの警備員も達者な脚技を見せたりして、クライマックスにふさわしいアクションシーンが見られるのですが、ピカイチなのが下写真の真ん中の人物、「サムライ」(プラティーク・パルマール)です。プレスにある江戸木純さんの文によると、プラティーク・パルマールは「格闘技オタク」だそうで、これまでもいろんな作品に出ているようです。サムライとスーリヤの一騎打ちは、ジミーをジャッジにしたポイント制で、壮絶な闘いが繰り広げられます。


その結末がどうなるかは、映画をご覧いただいてのお楽しみ、ということで、今、どんどんYouTubeにアップされている『燃えよスーリヤ!!』本編映像から、<カンフーヒーローに、俺はなる!編>と、<空手マニVS悪党ジミー編>を付けておきましょう。

映画『燃えよスーリヤ!!』12/27(金)公開/本編映像<カンフーヒーローに、俺はなる!編>


映画『燃えよスーリヤ!!』12/27(金)公開/本編映像<空手マニVS悪党ジミー編>


え? いいシーンをこんなにアップしちゃっていいのか? ですか? いいんです、まーだまだ、すごいシーンがいっぱいありますから。残念なのは、ジミー警備保障の警備員の皆さんを逐一画像付きでご紹介できないことで、せめて武器庫番のおじいちゃんと、お茶係のボーイの顔写真はほしかった、と思ってしまいます。その代わり、と言っては何ですが、スーリヤのケッサクな「痛くない!」ポスターが公開されていますので、その中の1枚を付けておきましょう。


全部で20枚ぐらいあるので、ご覧になりたい方はこちらのサイトをどうぞ。『燃えよスーリヤ!!』公式サイトはこちらです。公開まであと10日、さあ、カウントダウンだ、スーリヤ!!

 


インド映画ソフトの発売予定いろいろ

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久しぶりにインド映画のソフト発売をチェックしてみたら、いろんな作品が出てきました。日本での公開作のほか、DVDスルーらしき作品もありますので、ちょっとリストアップしておきましょう。DVDの画像はすべて、Amazonのサイトからお借りしました。


あなたの名前を呼べたなら [DVD] 

『あなたの名前を呼べたなら』DVD 発売予定日:2020年2月5日
 2018年/インド、フランス/ヒンディー語、英語、マラーティー語/99分/原題:Sir
 監督:ロヘナ・ゲラ
 出演:ティロタマ・ショーム、ヴィヴェーク・ゴーンバル
 販売元:アルバトロス


ラクシュミー 女神転聖 [DVD]

『ラクシュミー 女神転聖』DVD 発売予定日:2020年2月5日
 2016年/インド/ヒンドゥー語ヒンディー語、英語/108分/原題:?
 監督:パラム・ギル
 出演:ニハリカ・ライザダ、ラジャット・バルメチャ、ルーシー・ピンダー、オム・プリ
 販売元:アメイジングD.C.

※この作品は、こちらのWikiの作品と思われます。Amazonの情報の中には原題がなく、邦題があまりにもかけ離れているのですが、監督名や出演者名から、『Waarrior Savitri』と推測できます。う~ん、しかしなぜこんな作品が?? それにしても、原題「サーヴィトリー」から邦題「ラクシュミー」とは、属性が違いすぎる...。実際に映画を見てみると、その謎が解けるかも知れませんね。特別に予告編を付けておきます。

Waarrior Savitri - Official Trailer | Niharica Raizada | Lucy Pinder | Om Puri | Hindi Movie 2016

 

ホテル・ムンバイ [DVD]

『ホテル・ムンバイ』Blu-ray/DVD 発売予定日:2020年3月3日
 2018年/オーストラリア、アメリカ、インド/英語、ヒンディー語、ウルドゥ語、パンジャービー語、マラーティー語/123分/原題:Hotel Mumbai
 監督:アンソニー・マラス
 出演:デヴ・パテル、アーミー・ハマー、ナザニン・ボニアディ、アヌパム・カー(ケール)
 販売元:Happinet


シークレット・スーパースター [DVD]

『シークレット・スーパースター』Blu-ray/DVD 発売予定日:2020年4月8日
 2017年/インド/ヒンディー語/150分/原題:Secret Superstar
 監督:アドヴェイト・チャンダン
 出演:ザイラー・ワシーム、アーミル・カーン
 販売元:TCエンタテインメント


ヒンディー・ミディアム [DVD]

『ヒンディー・ミディアム』DVD 発売予定日:2020年4月8日
 2017年/インド/ヒンディー語/132分/原題:Hindi Medium
 監督:サケート・チョードリー
 出演:イルファーン・カーン、サバー・カマル
 販売元:TCエンタテインメント

来年はインド映画の公開作も月一ぐらいで続きますので、インド映画ファンにとってまたまた嬉しい悲鳴の1年になりそうです。お楽しみに~。


『マニカルニカ』で明ける2020年<2>ラクシュミー・バーイーのファッションに注目!

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2020年も、もう来週に迫りました。今週、12月27日(金)に公開となる『燃えよスーリヤ!!』に続いて、1月3日(金)には『マニカルニカ ジャーンシーの女王』が公開となるため、ここのところ両作品関連の執筆等でガチ仕事状態でした。それも今朝の送稿で終わり、やっと皆様に『マニカルニカ』のステキなファッションについてご紹介できます。えー、歴史映画なのにファッション? と思われるかも知れませんが、この映画、血なまぐさい戦闘シーンもあるのに、主人公のマニカルニカ、結婚後はラクシュミー・バーイーとなるヒロインのファッションが素晴らしいのです。まずは、順を追って見て行きましょう。その前に、映画の基本データをどうぞ。


『マニカルニカ ジャーンシーの女王』 公式サイト
2019年/インド/ヒンディー語・英語/148分/原題:Manikarnika: The Queen of Jhansi
 監督:ラーダ・クリシュナ・ジャガルラームディ
 主演:カンガナー・ラーナーウト
 出演:ジーシュ・セーングプタ、スレーシュ・オベロイ、アトゥル・クルカルニー
 配給:ツイン
※2020年1月3日(金)より新宿ピカデリーにて2週間限定ロードショー

この物語は、実在の女性でジャーンシー藩王国の王妃となり、夫が亡くなったあと養子を擁立して自分が国を統治する覚悟をしていたところ、イギリスから「養子は後継者として認めん」と言われ、藩王国を併合されてしまった幼名マニカルニカ、結婚後はラクシュミー・バーイーと呼ばれた女性の一代記です。演じるのは、コケティッシュな女性や一風変わった女性を演じることが多いカンガナー・ラーナーウト。雄々しい女性とはイメージが違うのでちょっと戸惑うのですが、それをファッションでうまく補ってあります。3つの時代に分けて、見て行きましょう。

1.マニカルニカ時代

「マニ」とは宝石のこと、「カル二カ」は耳飾りで、いかにも美しく、かわいい女性に似合う名前です。ところが、バラモン僧侶である父よりも、マラーター同盟のトップであった宰相バージーラーオ2世に可愛がられて育ったマヌ(マニカルニカの愛称/カンガナー・ラーナーウト)は、剣や弓矢の腕も確か、乗馬も得意です。そんな彼女のファッションは、ハーフサリー(南インドの未婚女性が着る、短いブラウスとロングスカート、長いスカーフの3点セット)に似たスタイルの衣裳で、ロングスカートの代わりに男性のドーティー(1枚の布を腰に回して前で結び、端を股にくぐらせて後ろに持って行き、お尻の所に入れる)風の着方をした腰布を付けています。初登場シーンの少し灰色がかったブルーの衣裳は、結んでいない天然パーマの髪とよく似合っていてステキです。ほかにも、剣の稽古をする時の白い上着(ワンピース風で丈が長く、絞った上半身にフレアースカート状の下部が美しい)とズボンの組み合わせなど、華美ではないけれど若々しいファッションが印象的です。画像がなくて残念です~。


2.王妃ラクシュミー・バーイー時代

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

ここはどうしても、豪華な結婚衣裳の画像がほしかったので、劇場で発売予定のパンフレット(簡単な作りですが中身は濃い!って書いた自分が言うな、ですが、インドの当時の歴史も確認できますのでぜひお求め下さい。400円と格安です)から、画像をスキャンさせていただきました。この時代は、豪華なサリーとアクセサリーが目を奪います。夫である藩王ガンガーダル・ラーオ(ジーシュ・セーングプタ)が存命中の、緑や赤の華やかなサリー、夫が亡くなってからの白や落ち着いた色のサリー等々、アクセサリーも含め、つぶさに見たいファッションです。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

また、夫の藩王ファッションも見事のひと言。ベンガル人俳優ジーシュ・セーングプタはノーブルな顔立ちで、貫禄もあり、幼さの残るラクシュミー・バーイーとの対比がなかなかいい感じです。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)


3.戦うラクシュミー・バーイー時代

ここのファッションこそ、現代のインドの伝統ドレスに取り入れたいものが多く、惹きつけられます。典型的なのは、近隣のグワーリヤルの王家に説得に行くシーンのこの姿。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

現代のサルワール・カミーズやクルター・パジャーマー(長い上着とズボン、そしてロングスカーフの3点セットの衣裳)に通じる感覚で、戦闘服のためスカーフこそしていませんが、男性と同じくターバンを被っています。このターバン、「マダム用戦闘ターバン」とでも呼びたいような優雅かつ実質的なデザインで、この直前の戦闘シーンでも被って戦います。最初にアップしたチラシの画像もご参照下さい。そのほか、サリー姿も動きやすい着方になっていて、下の女子だけの軍隊を訓練するシーンとかで確認することができます。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

チラシの画像は戦闘のさなか、幼い王国の継承者ダーモーダルを守りながら戦うラクシュミー・バーイーですが、この一見無骨な戦闘服も、細工を施した革の腕カヴァーや胴着など、とても凝っています。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

今回『マニカルニカ』で衣裳デザインを担当したのは、著名女性デザイナーとしても知られるニーター・ルッラー。彼女が注目されたのは、『デーウダース』(2002)で、アイシュワリヤー・ラーイとマードゥリー・ディークシトの豪華なサリーの数々をデザインしてからで、今までに300本を超す映画の衣裳デザインを担当しているとか。これまでにも、同じ歴史ドラマ『ジョーダーとアクバル』(2008)で国家映画賞の衣裳デザイン賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。インドでもファッションに関心を寄せた人が多いのか、画像をいろいろ集めたこちらのサイトには、本作のファッション一覧のような作りの写真も多く含まれています。

こんな楽しみ方もある『マニカルニカ』。美しい映像を大画面でぜひご鑑賞下さい。最後に予告編を付けておきます。

映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』予告編

 

 

ベトナム映画の薫風が吹く:『サイゴン・クチュール』&『ソン・ランの響き』

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ここ10年ほど、目立ってきたのがベトナム・ブーム。ベトナム料理店も増えました。私が好きなお店は有楽町の「ベトナム・アリス」で、あそこのパクチーと水菜のサラダは毎日でも食べたいぐらい。デパ地下にもベトナム料理コーナーがあったりして、今やタイ料理と互角ぐらいの浸透度になってきましたね。ほかにも、ラタン(籐)家具とか小物とか、ベトナムのグッズもよく見かけるようになりました。そしてついにフリーペーパーも出現、「日越文化通信/ロータス・タイム」というこんなかわいい雑誌です。裏表紙のベトナム航空の宣伝も素朴なかわいさがあるので、一緒にスキャンしておきましょう。「ロータス・タイム」はこちらでご覧になれますので、ぜひアクセスしてみて下さい。


このベトナム・ブームを押し上げているのが、続々と公開されるベトナム映画。ちょっと前まではベトナム映画=トラン・アン・ユン監督作品だったのですが、その後映画祭等の場でいろんな作品が上映されるようになり、特にアルゴ・ピクチャーズが積極的に新作を紹介し始めてからは、ぐっと作品の幅が広がりました。今回は、そんなアルゴ・ピクチャーズが「ムービー・アクト・プロジェクト」の名前で配給、宣伝等に関わった2作品のご紹介です。


『サイゴン・クチュール』 公式サイト
 2017年/ベトナム/ベトナム語/100分/原題:Cô Ba Sài Gòn/英語題名:Tailor
 監督:チャン・ビュー・ロック、グエン・ケイ
 出演:ニン・ズーン・ラン・ゴック、ゴー・タイン・ヴァン、ホン・ヴァン
 配給:ムービー・アクト・プロジェクト
 特別協賛:松竹株式会社
※12月21日(土)より新宿K's Cinemaほかでロードショー中

(C)STUDIO68

1969年のサイゴン。現在はホーチミン市と名前を変えていますが、当時は南北に分かれていたベトナムの南ベトナム、つまりアメリカ(1969年は大統領がジョンソンからニクソンに代わった年)に後押しされたグエン・バン・チュー大統領のベトナム共和国の旗色が、だんだんと悪くなってきていた頃でした。でもサイゴンの町は、太平洋戦争前の植民地時代の宗主国フランスの文化と、アメリカ文化の両方の影響を受け、繁栄を謳歌していたのです。そんな時代の最先端を行き、ファッショナブルで美しい容姿から3年連続ミス・サイゴンに選ばれたのは、9代続くアオザイの仕立屋の娘ニュイ(ニン・ズーン・ラン・ゴック)。でもニュイはアオザイをバカにしていて、西洋風ファッションのデザイナーを目指していました。そんなある日、店に目を引く豪華なアオザイが登場、ついそれを着てみたニュイは、胸元を飾る翡翠の光に運ばれて、何と現代の2017年にタイムスリップしてしまいます。高層ビルや走り回る車を見て、「こんなの、私のサイゴンじゃない!」と悲鳴をあげるニュイ。ところがさらに悲劇だったのは、48年後の自分自身との対面。だらしなく太った中年女、これが私? しかも、母は亡くなり、仕立屋は閉店。衝撃から立ち直ったニュイは、運命を変えるべく現代ファッションの世界に飛び込んでいきますが...。

(C)STUDIO68

ご紹介が公開日より後になってしまったのですが、とーっても面白い&興味深い映画なので、ベトナム好きの方はもちろん、ファッション好き、カワイイもの好き、歴史好き、SF好き(珍しい、タイムスリップものの掟破り作品です)...いろんな人を魅了する作品になっています。私はベトナム戦争世代(大学時代がちょうど1975年のサイゴン陥落の少し前で、学内で「ベトナム戦争反対! 北爆をやめろ!」とかやっていた)なので、冒頭の1960年代のドキュメンタリーに捉えられたサイゴンがとても興味深かったです。今回の画像では、アオザイ姿の写真であまりいいのがなかったのですが、ニュイの母親役のゴ・タイン・バン始め、美しいアオザイ姿もいっぱい拝めます。アオザイの仕立て風景もあり、「そこがポイントなのね!」という発見も。

(C)STUDIO68

ゴ・タイン・バン(上写真のメガネ美女)は本作では、大人しいけれど芯の強い母親役ですが、ご存じの方もいらっしゃるように、ベトナムを代表する女優ベロニカ・グゥとして『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)にも出演しています。また、アクション映画『The Rebel 反逆者』(2007)や『ソード・オブ・デスティニー』(2016)、歴代興収記録を打ち立てたという報道も見られた『ハイ・フォン』(2019)等では、戦うヒロインとして華麗なアクションも披露。『フェアリー・オブ・キングダム』(2016)では出演と共に監督も、というすごい才能の持ち主です。本作ではプロデューサーとしても活躍していますが、やはり『フェアリー・オブ・キングダム』に出演し、ゴ・タイン・バンと悪者母娘を演じたニン・ズーン・ラン・ゴックとは息がピッタリ合ったところを見せ、本作を見応えのある作品に仕上げています。アクション女優とはまた違った、ゴ・タイン・バンの魅力を堪能して下さい。最後に楽しい主題歌のプロモ映像を付けておきますので、アオザイの優雅なデザインをお楽しみ下さい。

Cô Ba Sài Gòn OST - Đông Nhi | Nhạc Phim Chính Thức



『ソン・ランの響き』 公式サイト
 2018年/ベトナム/ベトナム語/102分/原題:Song Lang
 監督・脚本:レオン・レ
 出演:リアン・ビン・ファット、アイザック、スアン・ヒエップ
 提供:パンドラ 
 配給協力:ミカタ・エンタテインメント 
 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
※2020年2月22日(土)より新宿K's Cinema他ロードショー

(C)2019 STUDIO68

1980年代のホーチミン市(旧サイゴン)。ユン(リアン・ビン・ファット)は高利貸しを行う女性ズーのもとで、取り立て屋として働いていました。その情け容赦のない取り立てぶりは有名で、カイルオン劇団の座長のもとに取り立てに出向いた時には、返せないという座長に対し、舞台衣裳を重ねた上に油を撒いて火を付けようとするという非道ぶり。見かねた座員のリン・フン(アイザック)は、自分の金鎖と時計をはずしてユンに差し出しますが、ユンは腕時計を受け取らずにそのまま去って行きました。リン・フンは花形役者として、人気の出し物「ミー・チャウとチョン・トゥイー」のチョン・トゥイーを演じていましたが、ある時食堂で男たちにからまれ、ケンカになってしまいます。リン・フンをかばったのが、たまたま食事に来ていたユンで、ユンは気を失ったリン・フンを自宅に連れ帰ります。芝居には穴をあけてしまったものの、ユンの自宅で彼の素顔を知ることになったリン・フンは、ユンの父が芝居の一座で楽器ソン・ランを奏でていたと知って親近感を覚えます。父の形見のソン・ランを取り出し、父の書いた詞を歌ってくれるようリン・フンに頼むユン。こうして二人の心は近づいていくのですが...。

(C)2019 STUDIO68

南北ベトナムの統一が実現したのは1976年。サイゴンからホーチミン市に改名されたのは1975年のサイゴン陥落後すぐとのことですが、それから数年後のホーチミン市はまだ”敗戦気分”が漂っていたようです。北ベトナム(ベトナム民主共和国)と南ベトナムでゲリラ活動をしていたベトナム解放民族戦線が勝利し、国が統一されてベトナム社会主義共和国ができるわけですが、元の南ベトナム(ベトナム共和国)に属していた人々には閉塞感があったのでしょう。さらに、伝統的大衆演劇の世界や裏社会的な世界に属していたとすると、新しい時代に取り残される鬱屈感も漂っていたに違いありません。

(C)2019 STUDIO68

リン・フンの一座は「カイルオン(改良)」と呼ばれる、古典演劇に改良を加えた大衆演劇を演じていますが、感じとしては京劇や粤劇などの中国古典演劇とは少し肌合いが違っていて、台湾でよく演じられる歌仔戯(コアヒ)に近いようです。劇中で演じられているのは「ミー・チャウとチョン・トゥイー」で、漢字で書くと「媚珠と仲始」らしく、紀元前210年の安陽王(アンズオン)の時代に起きた、安陽王の娘媚珠と隣国の王子仲始との悲恋物語を描いたものだとか。私がカイルオンの名前を知ったのはもう30年以上前ですが、実際に見たのは本作が初めてです。その節回しも不思議な音階で、歌仔戯とはまた違う、ベトナムで独自に発展した大衆演劇をじっくりと見られるありがたい作品でした。

(C)2019 STUDIO68

タイトルにもなっているソン・ランは弦楽器なのですが、漢字で書くと「雙郎」になるらしく、「2人の男」を表す言葉でもあるとか。確かにユンとリン・フンの間には、友情というより愛情と表現した方がぴったりするような感情が漂います。特にユン側からのベクトルが強いようで、本作に関する香港のサイトに載った映画評を見ると、本作を『さらばわが愛 覇王別記』になぞらえて論じているものが目立ちます。監督のレオン・レ(下の写真は2018年10月の東京国際映画祭(TIFF)会場で写したもの)にはそこまで踏み込む意図はなかったようですが、深読みもできてしまう作品ではあります。

昨年のTIFFでご覧にならなかった方は、ぜひ劇場でご覧下さい。昨年のTIFFではユンを演じたリアン・ビン・ファットも来日しましたので、彼の写真も付けておきます。結構映画の感じとは違うので、見比べてみて下さいね。

今後もアクションからコメディ、しっとりしたドラマまで、上映が続きそうなベトナム映画。2020年は、日本におけるアジア映画上映に薫風が吹く気配です。


『燃えよスーリヤ!!』が燃え上がる!<5>みんなで歌おう🎼ラッパン・ラッピ・ラップ🎼

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『燃えよスーリヤ!!』、いよいよ明日から公開です。ミルクボーイの「コーンフレーク」で笑っている場合ではありません。劇場では美麗&凝りに凝ったパンフレットも皆様をお待ちしています。私も書かせていただいたので早めに頂戴したのですが、画像満載、それもカットアウトが40点近く使ってあり、集中線も多用、怒りマーク、涙マーク等も使い放題という超労作です。編集さん、デザイナーさん、生きてますかぁ~。

判型がプレスのA4からB5になったので、裏表紙が「映画秘宝」みたいじゃなくなってしまったのが残念ですが(いや、「映画秘宝」が休刊で無くなってしまうのがもっと残念ですが)、これはインド映画ファンだけでなく、中華系アクション・ファン、ドラゴンファンの方にも必携の1冊です。忘れずにお求め下さいね。

そしてこのブログでは、皆様がご覧になったあと絶対歌いたくなるエンドロールの主題歌「ラッパン・ラッピ・ラップ」の歌詞をアップしておきました。下の特別ミュージックビデオを見ながら、映画を思い出して一緒に歌って下さい。(歌詞が速くて結構難度が高いので、舌をかまないようにご用心)

インド映画『燃えよスーリヤ!!』特別ミュージックビデオ

 

歌 ♫ Rappan Rapi Rap ♫

ア・ア・イ・イ・ウ・ウ・エ
Aaa..ee..uuu..aee 

オ・エ・イ・ア・ホーター・テー
Oo..ae..ee aa hota te 

キス・メーン・ティキー・ゴーリー・ティー、ヴェー
Kisme tikhi goli thi, ve
どこに容赦のない銃弾があったんだ 

ターキ・ティーキー・ターキー・テー
Taki thiki thaki the..

 

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited 

ダルター・トー・マィン・シェール・セー・ビー・ナヒーン、レー
Darta to main sher se bhi nahi re
オレは虎だって恐くない 

パル・コックローチ・ケー・アーゲー・キャー・カレーン
Par crockroach ke aage kya kare..
だがゴキブリの前じゃどうすりゃいい 

トゥー・ミスター・インディア・ナヒーン、ナヒーン
Tu Mr. India nahi nahi..
お前はミスター・インディア*じゃない、ない (*1987年の同名映画の透明人間ヒーロー)

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ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

トゥ・ア・ギャラクシー・ファー・ファー・アウェイ
To a glaxy far far away
銀河まで遠く 遠くに 

ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

アージャー・メーリー・スペース・シップ・メーン・バイト・ジャー・レー
Aaja meri space ship mein baith ja re
来いよ オレの宇宙船に座ってくれ 

ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

バック・トゥ・ザ・フューチャー、ウ・ア・エ
Back to the future uuu..aaa..aee
バック・トゥ・ザ・フューチャーさ 

ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

クードーン・スペース・ペー
Kudon space pe..
飛び込もう 宇宙へ

 

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

アンデーローン・ラートーン・メーン・スンサーン・ラーホーン・パル
Andheron raton mein sunsan rahon par
暗い夜に人気のない道で 

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

ユー・ビー・レディー・ウィズ・アーンコーン・カー・レーザー
You be ready with aakhon ka lazor
備えていろ 目のビーム光線を 

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

アプネー・フリーズ・メーン・トゥー・ドラゴンズ・ザマー・カル
Apne freeze mein tu dragons zama kar
自分の冷蔵庫にはドラゴンたちを集めておけ 

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

イェ-・バンダン・トー・ピャール・カー・バンダン・ハィ
Ye bandhan to pyaar ka bandhan hai…
この結び付きは愛の絆だ*(*『カランとアルジュン』(1995)の歌からイタダキのフレーズ)

 

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パープ・コー・ザ(ジャ)ラー・ザ(ジャ)ラー・ケー・ラーク・カル・ドゥーンガー
Paap ko zala zala ke raakh kar doonga
罪人を燃やして灰にしてやる 

ティース・コー・キラー・キラー・ケー・サート・カル・ドゥーンガー
30 ko khila khila ke 60 kar doonga
30をもて遊んで60にしてやる 

ティース・カビー・シーダー・サート・ナヒーン・ホーター
30 kabi seedha saath 60 nahi hoota
30はすんなりと60になるもんか 

サーティー・フォーティー・フィフティー・シックスティー
30, 40, 50, 60..

 

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

ギブリ・バブリ・ブブリ・バブリ・ビバ・ブブラ
Gibri babri bubri babri biba bubla 

ビッグ・トラブル・リトル・チャイン・イン・カラテ・チョップ
Big trouble little chain in karaate chop
大きなトラブルとわずかの平安があるのが空手チョップ 

エンター・ザ・ドラゴンズ・フォー・フュー・ドラー・モア
Enter the dragons for few dollar more
『燃えよドラゴン』になるのもはした金のため 

メーレー・パース・チュッター・ナヒーン・ナヒーン・ナヒーン
Mere pass chutta nahi..nahi..nahi…
オレの懐には小銭がない、ない、ない

 

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ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

モーグリ・コー・シェール・カーン・セー・バチャーネー
Mogli ko sher khan se bachane
モーグリをシア・カーン*から助けるため (*『ジャングルブック』日本版の名前表記)

ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

ドラゴン・ステージ・メーン・ハラー・ケー・ディカー・レー
Dragon stage mein hara ke dikha re
ドラゴンをステージで負かしてみせろ 

ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

アーエー・バレー・キーレー・バットマン・コー・カーネー
Aaye bade keede batman ko khaane
来たぞ 大きなウジ虫バットマンを喰うために 

ウレー・ウレー・チャレー・チャレー
Ude ude chale chale
飛べ飛べ 行け行け 

ヘーマー・レーカー・ジャヤー・スシュマー(女性の名前)
Hema Rekha Jaya Sushma…

 

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited 

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

アンデーローン・ラートーン・メーン・スンサーン・ラーホーン・パル
Andheron raton mein sunsan rahon par
暗い夜に人気のない道で 

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

ユー・ビー・レディー・ウィズ・アーンコーン・カー・レーザー
You be ready with aakhon ka lazor
備えていろ 目のビーム光線を

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

アプネー・フリーズ・メーン・トゥー・ドラゴンズ・ザマー・カル
Apne freeze mein tu dragons zama kar
自分の冷蔵庫にはドラゴンたちを集めておけ 

ラッパン・ラッピ・ラップ
Rappan rapi rap 

イェ-・バンダン・トー・ピャール・カー・バンダン・ハィ
Ye bandhan to pyaar ka bandhan hai…
この結び付きは愛の絆だ

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

劇場でキミを待ってるよっ!」

<追記>

タイミングよく「BANGER!!!」が記事を出して下さいました。ありがとうございます~♥。あと「ガジェット通信」にも、本作に関連して「インド映画インタビュー」記事を載せていただきました。こちらも、ありがとうございました~♥♥。

宿題フィルメックス(上):ロウ・イエ監督『シャドウプレイ』

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1ヶ月遅れですが、第20回東京フィルメックス上映作品のQ&A記録を追加しておきます。本当は終了後1週間以内にやるはずが、こんなに遅くなってしまいました。まあ、宿題提出するだけマシと思っていただければ、というところです。今回は、オープニング・フィルムとなったロウ・イエ監督作品『シャドウプレイ』についてです。

 

『シャドウプレイ』
 2018/中国/中国語/125分/英語題:Shadow Play/原題:風中有朵雨做的雲
 監督:ロウ・イエ(婁燁)
 主演:ジン・ポーラン(井柏然)、ソン・ジア(宋佳)、チン・ハオ(秦昊)、ミシェル・チェン(陳妍希)、マー・スーチュン(馬思純)
 配給・宣伝:アップリンク
※2020年2月下旬よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかで公開予定

公式サイトもまだできていないようですが、フィルメックスではティーザーチラシが配られていましたので、2月公開は確かだと思います。舞台となるのは広州市。ストーリーは以前の記事を見ていただくとして、そこに書いた「異様な光景」というのがこれです。中国語版Wiki「洗村」の写真をお借りしました。


高層ビルに囲まれた、開発から取り残された一区画「洗村」。ここの住民に立ち退きを説得しようとやってきた建設委員会のトップ、タンがビルから落ちて亡くなり、その事件を調べていた若い刑事ヤン(ジン・ポーラン)が、タンの妻リン(ソン・ジア)とそのかつての恋人ジャン(チン・ハオ)、タンの娘ヌオ(マー・スーチュン)などを調べていくうちに、様々なことがわかってくる、という物語です。頻繁に過去にフラッシュバックし、時には過去の台湾へも飛ぶかと思うと、ハメられて殺人犯人にされたヤンが香港に逃れたりと、時空を超えて物語が展開していきます。こんなめまぐるしい物語を、ロウ・イエ監督はなぜ作ったのでしょうか。Q&Aでその一端を明らかにしてもらいましょう。聞き手は、フィルメックスのディレクター市山尚三さん、通訳は樋口(渋谷)裕子さんです。

市山:第1回フィルメックスの最優秀作品『ふたりの人魚』(2000)の監督ロウ・イエさんを、この20回という節目の時にお迎えできるのを非常に嬉しく思っています。

監督:皆さん、こんばんは。今日は見ていただいてありがとうございます。僕もフィルメックスに戻ってくることができて、とても嬉しいです。


市山:とてもお忙しい中を来ていただきました。最初にひとつだけ、私の方からお聞きしますが、この映画の出発点というか、実際に起きた事件だと聞いているのですが、そのあたりの背景をお話いただけたらと思います。

監督:このシェン(洗)村というところは広州市内の中心部にあるのですが、このような場所は10箇所ぐらいあります。それらは当時、まだ開発が進んでいませんでした。このシェン村を選んだのは、ビジネス街に囲まれた村であったということで、ロケーション的に特別な場所だったからです。高層ビルが建っている横に、昔の村がまだ残っているというロケーションにより、作品を作る発想を得ました。もしこのシェン村というロケーションに出会わなかったら、この映画は撮らなかったと思います。すべての仕事は、まずシェン村ありき、だったわけです。


Q1(男性):事件がリアルで、事実に即して作られているからだと思うのですが、ちょいちょい娯楽的というかエンターテインメント的な派手な見せ場が織り込まれています。リアルな物語の中に娯楽要素を入れたのは、アクションシーンとかそういったものが監督としてもお好きだったからですか?

監督:この物語は元々社会的な事件を基礎としていますが、人間関係の描き方は我々が独自に作り上げたものです。このシェン村は非常に複雑な場所で、周辺との関係、政府との関係、実業家、官僚などが入り乱れて、様々なことがこのシェン村に凝縮されているわけです。いわば、中国の生きた標本という感じです。そういうところにジャンル映画を持ち込むことによって、個人的なことを描けるかも知れない、と思いました。このような社会的事件を背景としながらも、人と人との関係、人間をしっかりと描くこと、それが僕の目標でした。


ロケに行った時、シェン村から周囲のオフィス街まで歩いてみると約5分なんですが、その5分の間に30年前の中国から一挙に現代の中国に来られるという、非常に不思議な感覚を抱きました。映画を通して、この時代のスピードの速さというものやその落差、異なる年代の物語が同じ場所で起きているという不思議な感覚を示そうと思いました。そのような場所に生きる人々にとっては、大きな影響があったことを映画で描きたかったのです。


Q2(男性):作品の中で、中国の通俗的な流行歌がとても効果的に使われているのが注目されます。この映画の中では、すごく重要な歌が2つ出てくると思います、一つは、「夜」という、おめでたい仮面パーティーで歌われている歌なんですが、全然おめでたい歌ではありません。どちらかというと、不吉な面を予想させるような使い方で、すごく面白いと思いました。また、エンドクレジットで使われている「一場遊戯一場夢」も、この映画のテーマというかメッセージのようなものが含まれていると思います。後ろには、サクセスストーリーが流れていく、でもその裏側では欲望にまみれた非常に暗い、夢の背景が流れていく。この2つの曲の使い方がとてもよかったと思いますが、わからないことが一つあります。この映画のタイトル「風中有朵雨做的雲」は元々歌の題だと思うのですが、その歌自体はこの映画の中に登場しない。おまけに、このタイトルが示しているものが何かと言うことも、ちょっとわかりにくい。ぜひ、そこのところを監督にお聞きしたいです。

監督:最後のご質問からお答えしますが、「風中有朵雨做的雲=風の中にある雨でできた一片の雲」というのがこの映画のタイトルの意味です。もう一つのエンディングの曲「一場遊戯一場夢」は、「ひとときのゲーム、ひとときの夢」という意味なんですが、自分としてはこの2曲の中で「一場遊戯一場夢」の方が好きです。それでそちらを映画の題名にしようとしたんですが、電影局から「そのタイトルはよくない」と言われて変えたんです。ただ、歌が映画を決定的にするかというと、そうではないと思います。映画の内容と関係はありますが、映画の方がさらに重要な意味を持っていると思います。ご質問下さった方は、中国の歌謡界の事情にとても通じていらっしゃいますね。この2曲は素敵な曲ですが、「一場遊戯一場夢」は夢に関する歌で、また「夜」の方も、夢を歌った歌なんです。暗闇の夢の中に入る、というような歌なんですが、夢というのは決して美しい夢ではなかった、ということです。


Q3(男性):全体の構成に関してなんですが、脚本におけるいろんな時間の設計であったりとか、編集においてはアクション的な映像であったり、監視カメラの映像、手持ちカメラの映像とか、これと時間のカットの組み合わせは、どのように組み立てられたんでしょうか?

監督:脚本段階では、時空間の処理は過去と未来を交互に語っていく、という案でした。でも作っていく、撮影していくのと同時進行で脚本を書いていき、編集の時も、変更をどんどん積み重ねていきました。ですので、過去と現在という時空間の処理は、いろんなところで行われていきました。撮り方について言うと、できるだけドキュメンタリー風に撮りたいと思い、それで手持ちカメラ、監視カメラを使ったわけです。中でも手持ちカメラは、非常に今日らしい撮り方だと思います。今では誰でもが1台持っていますからね。


市山:時間がないのでこの辺で。この作品は、来年公開される予定です。それから、この後にTOHOシネマズで上映される『夢の裏側~ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』は、メイキングとかももちろん入っているんですが、様々な背景も見られてすごく面白い作品です。まだ若干席が余っているとのことなので、ぜひご覧いただければと思います。また、25日の『ふたりの人魚』の上映では、ロウ・イエ監督のQ&Aも予定しています。これもぜひともお見逃しなきよう、お越しいただければと思います。

監督:皆さん、映画を見に来て下さって、どうもありがとうございました。フィルメックスにも御礼を申し上げます。(大きな拍手)


 

『プレーム兄貴、王になる』チラシが届きました!

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2月21日(金)公開のインド映画『プレーム兄貴、王になる』のチラシ等をいただきました。宣伝を担当するシネブリッジの方が送って下さったものです。公開情報は前々から知っていたのですが、詳細情報やチラシ等をどちらにお願いしていいのかわからず、このブログでのご紹介が遅くなってすみません。シネブリッジさん、そして間をつないで下さったAさん、ありがとうございました! 

まずは、チラシの両面からご紹介しましょう。

予告編もアップされています。

痛快アニキが歌って踊る!サルマン・カーン主演/インド映画『プレーム兄貴、王になる』予告編

公式サイトはこちらです。早くも、劇場がどんどん決まってきているようです。ご案内によると、1月に入って試写があるとのことで、詳しいストーリー等はまた試写を拝見してからご紹介しますが、この映画のポイントは、「伝統ある映画製作会社ラージャシュリーの作品である」ということ。ラージャシュリー(Rajshri/ラージシュリー、ラージュシュリーという表記でもOK)社は1947年にボンベイ(現ムンバイ)で設立された映画製作と配給を業務とする会社で、創設者はターラーチャンド・バルジャーツヤー(Tarachand Barjatya/バルジャートヤーという表記でもOK。今回の作品では「バルジャーティヤー」と表記されてしまいましたので、作品紹介時はこちらを使います)。下左の画像は、映画百年を記念して発行された6シート計50枚組のインド映画史著名人切手をスキャンしたもので、ターラーチャンド・バルジャーツヤーの晩年の写真が使われています。右はラジャシュリー社のトレードマークで、中の絵は学問や芸術の女神サラスワティーです。

 Rajshri.png

ラージャシュリー社は1962年から映画を世に出し始め、第1作『Aarti(アールティー)』はミーナークマーリー、アショーク・クマール、プラディープ・クマールという当時のスターを使ってヒット作となったほか、フィルムフェア賞にノミネートされるなど、質的にも高く評価されました。続く『Dosti(友情)』(1964)はスターも出ていないのに主題歌の力もあって大ヒット、その後もいくつものヒット作を出して、「良心的な作品を作ってヒットさせる会社」として知られていきます。1970年代半ばには、『Geet Gata Chal(歌歌いつつ行け)』(1975)や『Chitchor(心盗人)』(1976)などが人気となり、大型娯楽映画に対抗する「スモーリーズ(小品佳作主義)」の作品としてもてはやされました。

ところが、1980年代に入ると、娯楽映画の主流がセックスやバイオレンスを含む(と言っても、厳しい検定制度のあるインド映画では全然たいしたことはなかったのですが)作品になってしまい、ラージャシュリー社は落ち目になってしまいます。それを救ったのが、サルマーン・カーン主演作の『Maine Pyar Kiya(私は愛を知った)』(1989)でした。当時、純愛映画なんか流行るものか、と言われていたのに、その前年のアーミル・カーン主演作『Qayamat Se Qayamat Tak(破滅から破滅へ)』(1988)のヒットからの流れもあって、『Maine Pyar Kiya』は超のつく大ヒット、数々の伝説を生みます。サルマーン・カーンの相手役バーギャシュリー(『燃えよスーリヤ!!』の主演アビマニュ・ダサーニーのママです)がこれ一作で引退してしまった(でも、のちに復帰)こともあって、映画史上に燦然と輝く作品となったのです。


「この作品が当たらなかったら、わが社は映画製作をやめよう」とまで思っていたという当時のラージャシュリー社ですが、この頃経営を行っていたのはターラーチャンドの二人の息子ラージクマール・バルジャーツヤーとカマルクマール・バルジャーツヤーで、ラージクマールの息子スーラジを監督に起用したことも大冒険というか、大きな賭けだったのでした。その後、スーラジ・バルジャーツヤー監督&サルマーン・カーン主演作は、ラージャシュリー社の幸運のシンボルとなり、『Hum Aapke Hain Koun...!/私はあなたの何?』(1994)も「結婚式記録ビデオ」という悪口を言われながら、ロングランの大ヒットとなります。ですが、続く『Hum Saath Saath Hain/我々は一緒にいる』(1999)で、サルマーン・カーンやサイフ・アリー・カーンら主演俳優がロケ先で野生の希少動物を狩って食べるという事件を起こしてしまい、以後、しばらくの間サルマーン・カーンの起用は差し控えられます。そして16年経った2015年に、この『プレーム兄貴、王になる』で久しぶりにスーラジ・バルジャーツヤー監督とサルマーン・カーンのコンビが復活したのですから、観客も大喜び。公開時には歴代興行収入第6位となるヒットを記録したのでした(現在は、歴代興収第17位)。

というわけで、上の一番下のようなポスターも作られた本作ですが、原題の意味はインド人にもわかりにくいようで、質問がネットに上がったりしています。各単語の意味は、「Prem/プレーム(愛/主人公の名前)」「Ratan/ラタン=ラトナ(宝石)」「Dhan/ダヌ(財産)」「Paayo/パーヨー(得た、か、得なさい、か不明)」という感じなのですが、ディワーリー祭の時期に公開されていますので、おめでたい単語をゴロよく並べた、ということなのかも知れません。祝祭気分でぜひお楽しみ下さい。


宿題フィルメックス<下>:グー・シャオガン監督作『春江水暖』

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宿題提出の後半は、フィルメックスで人気が高かった中国映画『春江水暖』です。ストーリー等はこちらでご紹介しましたが、フィルメックスの紹介文には、「杭州の富陽の美しい自然を背景に、一つの家族の変遷を悠然と描いたグー・シャオガン監督のデビュー作。絵巻物を鑑賞しているかのような横移動のカメラワークが鮮烈な印象を残す」と書かれています。まさに悠々たる川の流れのような作風で、これを作ったグー・シャオガン(願暁剛)監督が1988年生まれの31歳とはとても信じられません。この作品に魅了された人も多く、中国語圏映画に詳しいライターの浦川留さんも、ブログで「極私的マイベスト2019」の1本に選んでいらっしゃいます。杭州市富陽区は昔の名前を富春と言ったそうで、そこを描いた有名な絵巻物が元代の1350年頃に書かれた「富春山居圖」なのだとか。それもあって、絵巻物への連想がなされたようです。 


『春江水暖』
 2019/中国/中国語/154分/英語題:Dwelling in the Fuchun Mountains/原題:春江水暖
 監督:グー・シャオガン(願暁剛)
 主演:チェン・ヨウファ(銭有法)、ワン・ホンチュエン(王風娟)、スン・チャンジェン(孫章建)


11月24日の上映後に行われた、グー・シャオガン監督のQ&Aは以下の通りです。司会はフィルメックス・ディレクターの市山尚三さんです。


市山:先に僕の方から、彼とどこで出会ったか、というお話をしてご紹介に代えたいと思います。去年のカンヌ映画祭に行った時に、中国のある財団が若手監督を10人ぐらいを招いて、毎日ワークショップをやっている、というのがあったんです。それに是枝監督、ジャ・ジャンクー監督と3人で参加したことがあったんですが、そのワークショップのパーティーの時に彼と会ったんです。彼は派遣されてきた若手監督の1人としてそこに来ていたんですが、パーティー会場で「ちょっとこれを見てほしい」と言われて、まだ製作途中のこの作品の一部をパソコンで見せてもらいました。パーティー会場はうるさいものですから、外へ出てロビーに行ったりして見たんですが、それはある長回しのシーンで、これはすごい、と思いました。それで「一体いつできるんですか」と聞いたら、「これからまだまだ撮影があります」というので、「でき上がったら絶対見せて下さい」と言ったのが最初の出会いでした。するとその翌年のカンヌ映画祭では批評家週間に選ばれていて、そこで完成した作品を見たら素晴らしかったため、「ぜひともフィルメックスで上映して紹介させてほしい」と言いました。それまでは全然、監督の名前とかも聞いたことがなくて、初めてそこで会って、すごい作品だと驚いたのですが、こうしてお迎えすることができて嬉しく思っています。では、ひと言ご挨拶から。


監督:コンニチハ。まず、本日映画を見に来て下さった皆様、ありがとうございます。それから、市山さんがこの作品をフィルメックスに招待して下さったことにとても感謝しています。僕は初めて日本に来たんですが、今まで日本の映画やアニメをたくさん見てきました。とても日本に親しみを持っていましたので、日本に来られたことに感動しています。観客の皆さん、見て下さって本当にありがとうございました。

市山:では、ご質問のある方。

Q1(男性):この映画の魅力は圧倒的なカメラワークだと思うんですけど、僕には登場人物たちの、とても個性的でリアルな存在感が素晴らしかったです。このキャスティングについては、どういったことで決定されたのかお聞かせ下さい。

監督:この映画の出演者は、僕の親戚を使いました。劇中の4人兄弟のうち、一番上の兄夫婦は僕の伯父さんと伯母さんです。3番目と4番目の二人は、僕の父の弟、つまり叔父さんです。二番目のキャラクターについては、実際にうちに魚を届けてくれていた漁師の人を使っています。脚本を書く段階で彼らに当て書きして書いて、その後実際にその人たちに出演してもらいました。実際の人物を使って撮影したのには、2つの理由があります。まず一つは、僕の初監督作品なので、自分の知り合いを使うことで製作費を節約できるということ、二つ目は、この映画は時代の風景を切り取ることと、市井の人々の雰囲気を伝えることがとても重要だと思ったからです。最初のレストランのシーンに出てくるように、リアルなものを描きたいと思いました。


Q2(男性):初監督作品ということで、影響を受けた映画監督とか、好きな映画監督、あるいは映画以外にどういうものから影響を受けたのか、ということと、あとこのサウンドトラックの音楽はどなたが作ったのか教えて下さい。

監督:この映画の前提としては、今見ていただいたような物語を撮りたいと思ったわけです。それで、いかにストーリーを通して現代の街の変化、時代の変化を描くかということを考えました。その時ヒントになったのが、タイトルにもなっている「富春山居圖」で、そこからヒントを得ました。「富春山居圖」は中国の伝統的な絵巻物なんですが、映画を絵巻のように描けばいいのではないか、ということを思いついたんです。影響を受けた監督についてなんですが、台湾ニューウェーブのホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督とエドワード・ヤン(楊徳昌)監督です。ホウ・シャオシェン監督の作品の個性は、たとえば詩であったり散文であったり、中国の伝統的な文人の視点でもって世界や物語を組み立てていっている、ということだと考えています。そういう文人的な視点と絵画を融合して、作品を撮りたいと思っていました。


音楽に関しては、ドウ・ウェイ(竇唯)という中国の歌手に協力してもらいました。彼は中国のトップスターであるのですが、最近はニューオーケストラと言いますか、芸術的に何か突破したような作風に変化してきています。最近の彼の作風というのは、まるで西洋のオーケストラのように、第1章、第2章、第3章ととても抽象化されてきています。長い作品だと1曲40分だったり、あるいは上下2枚のアルバムに分かれていて、60分ずつの作品があったりします。彼の音楽は、中国の伝統的な古典文化と現代文化とが融合しているように感じられます。形式的ではないスタイルですし、国際的な視野があったり、現代的な要素も含まれています。中国伝統文化をいかに現代に持ってくるか、というのが、僕たちの映画の目指したところでもありました。この映画は撮影に丸2年かかっているのですが、一番難しかったのはやはり、古典をいかに現代に持ってくるかという点で、その点ドウ・ウェイの音楽は大きな示唆を与えてくれました。彼の音楽は、とても自然に、かつ軽やかに古典と現代を融合しているので、それに大変影響を受けました。


Q3(男性):最初は長いな、と思ったのですが、2時間30分、引き込まれて拝見しました。最初に、なぜこの長さになったのかうかがいたいのですが、あと、2時間30分たったあとで「第1巻 完」と出てきたので(笑)、第2巻はどうなるんだろうと気になりました。まあウォン・カーウァイ(王家衛)監督の『欲望の翼』みたいに、第2巻がなくて終わっちゃうのかな、という気もするのですが、そのあたりを教えて下さい。

監督:まず最初のご質問ですが、元の脚本では5時間あったんです。その原因は、春夏秋冬すべてを描こうと思ったからです。1年目は全部は撮り切れなかったんですが、それは資金の問題からでした。その後2年目で製作会社と宣伝会社がついてくれたものの、会社側の希望として、3時間以内の作品にしてくれ、と言われました。それは、中国の映画市場ではやはり、長すぎる映画は回転率が悪くなるので上映できないからです。僕たちはそれに対して「努力します」と返事して、結果的に2時間半の映画にまとめることができました。やはり会社からアドバイスされたように、中国の市場を考えてのことです。元々の映画は、この5時間の脚本を3時間以内に縮めたものに比べると、もう少し脇役の話だったり、枝葉のストーリーが織り混ざっているものでした。ただ、中国の映画館では150分以上の作品は回転率が悪くなりますし、公開およびセールスにとってあまりよくないので、最終的に2時間半の映画となったわけです。


第2巻、第3巻、というか続編に関しては、絶対に撮りたいし、今すぐにでも撮りたいと思っています。こういった続き物という形に関しては、最初からそうしようと思っていたわけではなく、第1巻を撮っていく中で考えられてきたものです。この映画を撮ることは美学の探究でもあり、僕と僕のチーム、スタッフたちは最初からこういう映画にしようと考えていたわけではなく、撮りながらいろいろ変化していったのです。それは、内容的にもそうですし、僕たちの映画、芸術に対する考え方も変わっていきました。僕としては、このあとも自分のチーム、この映画のスタッフたちと一緒に続けていきたいと思っています。もっと自分たちがプロフェッショナルとしてやっていきたいということも踏まえて、引き続き第2巻、第3巻を撮っていきたいと思っています。

この映画の冒頭に詩を、「富春江の水が東シナ海に流れ込む」といったような詩を入れたのですが、これは南宋の時代を想起させるものです。南宋と言えば最も有名なのが、「清明上河圖」というとても長い、歴史的な絵巻物です。僕たちはこの映画のことを、映画作品ではなくて1枚の絵巻物のように考えています。ですので、これは10年で1つのシリーズといいますか、1つの作品を作り上げるという構想が今出ていますし、その10年を通して、杭州の時代的変化を描いていきたいと思っています。第1巻、2巻、3巻...とそのあとに続く作品が、まるで南宋時代の「清明上河圖」のように長い巻物として見られるようになったらいいと思っています。それはもしかしたら、10年後、20年後、50年後、過去の人にすればとても意義と価値があるものになるのではないかと思いますし、また未来の人が見れば、とても面白い、時代を記録したものになるのではないかと考えています。


市山:もう時間なので、この辺で。最後に監督、ひと言。

監督:さっきはちょっと緊張していたのですが、市山さんが僕たちの出会ったきっかけを語って下さいました。実は僕と僕のスタッフの間では、市山さんにあだ名を付けていたんです。そのあだ名は「野菜買いのおじさん」というもので、野菜市場に出向いて毎朝自宅で食べる野菜を買っていく人、というものです(笑)。市山さんは、いろんな映画祭でお見かけします。どの映画祭に行ってもうろついてらっしゃるのをお見かけしますし、どのスタッフとも交わったり特に交流したりすることもなく、映画を見ては次のスクリーンに向かう、ということをしていらして、とてもカワイイ、チョーかわいいと思っていました(爆笑)。


市山:ありがとうございました。光栄です(笑)。はい、もっといろいろお話ししたいのですが、時間がなくて申し訳ありません。(大きな拍手)

というわけで、やっとフィルメックスで気になっていたQ&Aをアップすることができました。グー・シャオガン監督はお話が長いので、右腕が腱鞘炎気味ですが、これで安心して2020年を迎えることができます。皆様も、どうぞよいお年をお迎え下さい! 出年再見!!



2019年インド映画興収トップ10

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2020年が明けました。私のお正月は旧暦なので、ご挨拶はその時まで持ち越しとして、恒例の各国映画興収トップ10をネットから探したデータでお伝えしましょう。1番手はインド映画です。参考にしたのは、Wikiのこちらこちらです。南インドのタミル語映画では、興収が確定していないものがあり、最高興収を基準にして順位付けしてあります。なお、1ルピーは約1.5円です。

War official poster.jpgSaaho poster.jpg

2019年インド映画国内興行収入トップ10(2019.12.31現在)

1.『War(戦い)』 47億4790万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:シッダールト・アーナンド
  主演:リティク・ローシャン、タイガー・シュロフ

War Trailer | Hrithik Roshan | Tiger Shroff | Vaani Kapoor | 4K | New Movie Trailer 2019


2.『サーホー』 43億3060万ルピー
  言語:テルグ語、タミル語
  監督:スジート
  主演:プラバース、シュラッダー・カプール
 ※日本公開:2019年春

Saaho Trailer : Telugu | Prabhas | Shraddha Kapoor | Sujeeth | #SaahoTrailer | UV Creations


3.『Kabir Singh(カビール・シン)』 37億9020万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:サンディープ・バンガー
  主演:シャーヒド・カプール

Kabir Singh – Official Trailer | Shahid Kapoor, Kiara Advani | Sandeep Reddy Vanga | 21st June 2019


4.『URI/サージカル・ストライク』 34億2060万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:アーディティヤ・ダル
  主演:ヴィッキー・コウシャル、パレーシュ・ラワル
 ※日本版DVD発売済み

映画 『URI サージカル・ストライク』 公式予告


5.『Bharat(バーラト)』 32億5580万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:アリー・アッバース・ザファル
  主演:サルマーン・カーン、
 ※韓国映画『国際市場で会いましょう』のリメイク

BHARAT | Official Trailer | Salman Khan | Katrina Kaif | Movie Releasing On 5 June 2019


6.『Bigil(ホイッスル)』 28億5000万~30億ルピー
  言語:タミル語
  監督:アトリー・クマール
  主演:ヴィジャイ、ナヤンターラ

Bigil - Official Trailer | Thalapathy Vijay, Nayanthara | A.R Rahman | Atlee | AGS


7.『Mission Mangal(火星探査計画)』 29億0020万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:ジャガン・シャクティ
  主演:アクシャイ・クマール、ヴィディヤー・バーラン

Mission Mangal | Official Trailer | Akshay | Vidya | Sonakshi | Taapsee | Dir: Jagan Shakti | 15 Aug


8.『Houseful 4(満員 4)』 27億9130万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:ファルハード・サームジー
  主演:アクシャイ・クマール、リテーシュ・デーシュムク

Housefull 4 |Official Trailer|Akshay|Riteish|Bobby|Kriti S|Pooja|Kriti K|Sajid N|Farhad| Oct 25


9.『ペーッタ』  22億~25億ルピー
  言語:タミル語
  監督:カールティク・スッバラージ
  主演:ラジニカーント、
 ※インディアン・ムービー・ウィーク2019で上映

Petta - Official Trailer [Tamil] | Superstar Rajinikanth | Sun Pictures | Karthik Subbaraj | Anirudh


10.『ガリーボーイ』 23億8160万ルピー
  言語:ヒンディー語
  監督:ゾーヤー・アクタル
  主演:ランヴィール・シン、アーリアー・バット
 ※日本公開:2019年10月18日

『ガリーボーイ』予告編


これが現在のところの2019年インド映画興収トップ10なのですが、実は昨年はハリウッド映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』 がインドでもヒットし、36億5500万ルピーという興収を挙げています。それに続く洋画第2位は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の22億2690万ルピーなので、トップ10に入るのは『アベンジャーズ/エンドゲーム』だけですが、20位までに設定するとあと2、3本入ってきそうな感じです。この先、ますますハリウッド映画の公開が増えるかも知れません。2020年は、質も娯楽性も高いインド映画がいっぱい作られることを願っています。


 नव वर्ष की शुभकामनाएं!

 

インドでは、ネズミ(↗)はガネーシャ神の乗り物とされています。ですのでガネーシャ神の足下には、小さなネズミが一緒に描かれることが多いのです。鼠年の今年は、ガネーシャ神のお恵みもいっぱいありそうです。皆様にとって、どうぞよいお年になりますように。

(上の絵はインドのご祝儀袋より。下絵と、あとで描いた金線がズレているのはご愛敬)

『マニカルニカ』で明ける2020年<3>『マニカルニカ』と『バーフバリ』&『バジュランギおじさん』&FGO

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いよいよ明日1月3日(金)から、『マニカルニカ ジャーンシーの女王』公開です。新宿ピカデリーでは1日3回上映ですが、明日の一番行きやすい14:20~の回はすでに「残席わずか=あと4席(22時30分時点)」となっています。しかし、最初の回が8:50~だなんて、そりゃいくらインド映画ファンとはいえ、お正月から朝6時起きはつらいよねー。最後の回は20:10~なので、次の日が休日ならこの回でもOKかと思いますが、「男はつらいよ」じゃなくて、「インド映画はつらいよ@日本」状態はまだまだ続きそうです。でも、他の劇場でも上映中で、川崎チネチッタでは1日2回上映ながら、『燃えよスーリヤ!!』とのダブルヘッダーも可能。公式サイト劇場情報をチェックして、お正月休みの間にぜひ楽しんで下さいね。

そしてYouTubeには、『マニカルニカ ジャーンシーの女王』の脚本家K.V.ヴィジャエーンドラ・プラサード(作品によってV.ヴィジャエーンドラ・プラサード、あるいはヴィジャエーンドラ・プラサードとも)のメッセージがアップされていました。内容を聞くと、クリスマス前に収録されたもののようで、日本到着まで時間がかかってしまったようです。アップされた日が12月27日となっているため、年末にかかって日本語字幕が付けられなかった模様。下に画像と、メッセージの大体の訳を書いておきますので、とても素敵な『バーフバリ』生みの親からのメッセージをお楽しみ下さい。

『マニカルニカ ジャーンシ―の女王』K.V.ヴィジャエーンドラ・プラサードからのビデオコメント

「私はヴィジャエーンドラ・プラサードです。皆さんは映画『バーフバリ』で私のことを知っていて下さるかと思います。あの映画の監督、S.S.ラージャマウリは私の息子です。息子が話してくれたのですが、日本に行った時には本当に素晴らしいおもてなしを受けたとか。『バーフバリ』をご覧になり、気に入って下さった日本のファンの皆さんに、心から感謝する次第です。そしてこのたび、私が脚本を書いた映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』が公開されますが、これは非常に感動的な物語です。大英帝国の仕打ちと戦った女性の物語で、出演者とスタッフが心を込め、一生懸命作り上げた作品です。日本では1月に公開されますので、せひ劇場に足を運んでご覧になって下さい。では、日本のファンの皆さん、楽しいクリスマスとよいお年をお迎え下さいますように」

K.V.ヴィジャエーンドラ・プラサードさん、声も口跡も素敵なので、映画に出ていただきたいぐらいですね。そうそう、この方は昨年早々にヒットした、『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(2015)の脚本も担当していましたっけ。まさしく、ヒット・メーカーという感じの方で、『マニカルニカ ジャーンシーの女王』の脚本も実に上手に作ってあります。そのあたりも、じっくりとお楽しみ下さい。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

あと、タイミングよくまた映画紹介サイト「BANGER!!!」が記事をアップして下さいました。こちらです。歴史上の事実なのでネタバレとか関係なく、映画のストーリーとその背景を少々詳しく書いておきました。インド人なら誰でも知っているマニカルニカ(結婚前の名前)=ラクシュミー・バーイー(結婚後の名前)の話ではありますが、日本人の我々には馴染みがないですものね。

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しかし、てな話を年末に配給会社の方としていたら、何と!ゲームキャラに「ラクシュミー・バーイー」が存在するんだそうです。「FGO(FateGrandOrder)」という有名なゲームだそうで、例えばネット上にはこちらこちらで「ラクシュミー・バーイー」のゲームキャラが紹介されています。名前や地名の音引きも正確だし、歴史的な事実もちゃんと押さえてあるし、このゲームの制作者はすごいですね。「ヒンドゥー語」などとデータに書くインド映画ソフト制作会社に、爪の垢を煎じて飲ませたいです。

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インドでは、最近歴史映画が増えている気がします。一つには実録映画ブームというか、実際に起こった出来事に基づく作品が増えたことで、現代を描く作品でも『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)や『SANJU/サンジュ』(2018)のように、実在の人物の伝記映画的作品が何本も作られてヒットしており、歴史上の人物にもそれが広がっていっている、という現象があります。ただ、歴史上の出来事、特に近代となる前の18世紀以前の出来事を映画化するには莫大な製作費がかかり、誰でもができるわけではありませんが、著名な監督らが挑戦しているケースがいくつもあります。歴史映画が増えたもう一つの理由は、モーディー政権下でちょっといびつな「愛国心」が鼓舞されている現在、それをよしとする風潮に迎合すれば映画のヒットは間違いなく、この機に歴史映画を、ということで企画されているのでは、と思われます。ただ、失敗作となって大赤字、という作品も結構あり、ついこの間公開されたばかりのアーシュトーシュ・ゴーワリカル監督作『Panipat(パーニーパト)』も、製作費の半分ぐらいしか興収が上がっていません。

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そんな歴史映画の中で、一時的にせよ興収トップ10にランクインし、100カロール・クラブ(10億ルピー超えの興収をあげた作品は、ヒット作としてこう呼ばれる。「カロール(Crore)」は1千万を表す単位)入りを果たした『マニカルニカ ジャーンシーの女王』はなかなかのものです。どんな作品なのか、ぜひご自分の目で確かめてみて下さいね。最後に予告編を付けておきます。

映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』予告編  

 

シネ始めは『マニカルニカ』と『燃えよスーリヤ!!』

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三が日が駅伝三昧と初詣三昧で過ぎ、今日から少しだけお仕事モードにスイッチ・オン。初詣は神社とお寺を合わせて11箇所回ったので(うちの周辺は昔の農村地帯のせいか、ありがたそーな神社やお寺が多い)、今年の懸案事項もクリアされて「万事如意」となるか、と期待しています。で、まずはお仕事始めに行ってきました『マニカルニカ ジャーンシーの女王』と『燃えよスーリヤ!!』@川崎チネチッタ。どちらの作品もパンフ執筆等のためにすでに5~6回見ているのですが、やはりスクリーンで見たい。特に、『マニカルニカ』@チネチッタは大スクリーンなので絶対見たい! これまでの経験では、DVDで見ていて気がつかなかったことや物が、大スクリーン鑑賞で発見されるケースがよくあるのです。

ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

『マニカルニカ』では、宮廷部分の美しさを大スクリーンで堪能しました。この作品の衣裳に関しては以前ちょっと書いたのですが、美術全般もすごく凝っています。一部にCGも使われているとは思うものの、かなりの部分が実際のお城等でロケされており、大画面で見るとその迫力がさらに迫ってきます。調べてみると、ラージャスターン州のアーメール・フォートナーハルガル・フォートジャイガル・フォートなどでロケされたことがわかりました。歴史の好きな方は事前にここのリンクから英語版Wikiをご覧になって、それから『マニカルニカ』を見てみて下さいね。チネチッタ午後2時半からの回は、大きなホールだったせいか4割ほどの入りでした。


ⒸEsselvisionproduction(p) (LTD)

一方、『燃えよスーリヤ!!』は午後6時20分からの回で、こちらはキャパは小さかったのですが、スクリーンはでっかくて大満足。お客様が30人ぐらいだったのは残念ですが、公開版は一部字幕が直されていたりしていて、マスコミ試写をやっている間に再検討なさったんだな、と関係者の皆さんのご努力に頭が下がりました。以前このブログで、『燃えよスーリヤ!!』の主題歌とも言うべき「ラッパン・ラッピ・ラップ」をご紹介した時の歌詞にも出てきたのですが、ハリウッド映画なのにインドで珍しくヒットした作品、『ジャングル・ブック』(2016)の主人公の名前「モーグリ」が台詞にも出てくるシーンがあります。それが「ターザン」に代わっていました。まあ、どちらにしても、ちょっとわかりにくい例えではありましたが。というわけで、充実のシネマ始めだったのでした。

 

2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

チネチッタ、明日もダブルヘッダーが可能ですので、お正月休み最終日、よかったらトライしてみて下さい。

2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

『燃えよスーリヤ!!』はYoutubeにいろいろメイキング画像がアップされていますが、その中から「インタビュー<スーリヤ篇>」と「インタビュー<スプリ篇>」を貼り付けておきます。あのアクションのすごさを大画面で見てきたあとでは、どちらも涙なしには見られません...。

映画『燃えよスーリヤ!!』12/27(金)公開/インタビュー<スーリヤ篇>


映画『燃えよスーリヤ!!』12/27(金)公開/インタビュー<スプリ篇>

 

スプリ役のラーディカー・マダン、確かアクションはまったくやったことがないはず、なのにすごいなあ、と思っていたら、1日4時間、毎日特訓で鍛えてもらって臨んだんですね。えらいっ! 皆さんもぜひ、スーリヤとスプリの華麗なアクションを大画面でご覧になって下さいね~。


2019年中国映画興収トップ15

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昨年の中国では、10億元(約15億5千万円)を超える興行収入を上げた映画が15本出ました。そのうちの10本が中国映画(含む香港製作映画)で、昨年に比べると本数も増え、興収もアップと、中国映画界は右肩上がりの成長を続けているようです。日本でも映画祭上映されているものが多いので、すでにご覧になった方もいらっしゃることでしょう。予告編を付けておきますので、未見の方はさわりを楽しんで下さい。 

2019年中国国内興行成績トップ15
(アジア映画以外は監督&キャスト名、予告編を省略/1元=15.5円) 

1.『ナタ~魔童降臨~(那吒之魔童降世)』 49億7267万元
   監督:餃子(ジャオズ)
   声優:呂艶婷(ルー・ヤンティン)、澣墨(モー・ハン)
   日本上映:2019東京・中国映画週間

《哪吒之魔童降世》发布终极预告【预告片先知 | 20190725】

 

2.『流転の地球(流浪地球)』 46億4391万元
   監督:郭帆(フラント・グォ)
   主演:屈楚䔥(チュー・チューシャオ)、呉京(ウー・ジン)、李光浩(リー・グアンジェ)
   日本上映:2019東京・中国映画週間

 流浪地球 (The Wandering Earth)「預告片」


3.『アベンジャーズ/エンドゲーム』 42億4111万元
   日本公開:2019年4月26日

4.『我和我的祖国(私と私の祖国)』 29億8997万元
   監督:陳凱歌(チェン・カイコー)、張一白(チャン・イーバイ)、管虎(グアン・フー)、徐峥(シュー・ジエン)、寧浩(ニン・ハオ)、文牧野(ウェン・ムーイェ)~オムニバス映画
   主演:黄渤(ホアン・ボー)、張譯(チャン・イー)
   日本特別上映:2019年11月4日

我和我的祖國 慶祝中華人民共和國70周年華辰 電影預告  

 

5.『高度一万メートルの奇跡(中国機長)』 28億6906万元
   監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ)
   主演:張涵予(チャン・ハンユー)、欧豪(オウ・ハオ)、杜江(ドゥー・ジアン)
   日本上映:2019東京・中国映画週間

Chinese Movie “The Captain” trailer Full Version(English Sub) 2019 中国机长 预告片+花絮 完整超长版

 

6.『瘋狂的外星人(クレイジー・エイリアン)』 22億0202万元
   監督:寧浩(ニン・ハオ)
   主演:黄渤(ホアン・ボー)、沈騰(シェン・トン)、徐峥(シュー・ジエン)

《疯狂的外星人》首款预告来了 宁浩执导 黄渤 沈腾主演

 

7.『ペガサス/飛馳人生(飛馳人生)』 17億1356万元
   監督:韓寒(ハン・ハン)
   主演:沈騰(シェン・トン)、黄景瑜(ホアン・ジンユー)
   日本上映:中国映画祭「電影2019」

映画『ペガサス/飛馳人生』予告編(ドラマ編)

 

8.『烈火英雄~戦士達に贈る物語~(烈火英雄)』 16億9099万元
   監督:陳国輝(チェン・グオフェイ)
   主演:黄暁明(ホアン・シャオミン)、杜江(ドゥ-・ジャン)、譚卓(タン・ジュオ)
   日本上映:2019東京・中国映画週間

《烈火英雄》“有我必胜”终极预告(黄晓明/杜江/谭卓/杨紫/欧豪 )【预告片先知 | 20190719】

 

9.『少年的你(少年の君)』 15億4490万元
   監督:曽国祥(デレク・ツァン)
   主演:周冬雨(ジョウ・ドンユー)、易烊千玺(ジャクソン・イー)、周冬雨(ジョウ・ドンユー)、尹昉(インファン)

《少年的你》终极预告(易烊千玺 / 周冬雨)【预告片先知 | 20191028】

 

10.『ワイルド・スピード スーパーコンボ』 14億3003万元
    日本公開:2019年8月2日

11.『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』 14億1097万元
    日本上映/公開:2019年6月28日

12.『掃毒2:天地対決(ホワイト・ストーム2)』 12億9550万元
    監督:邱礼濤(ハーマン・ヤウ)
    主演:劉徳華(アンディ・ラウ)、古天楽(ルイス・クー) 

《掃毒2天地對決 The White Storm 2 Drug Lords》- 正式預告 Regular Trailer

 

13.『バンブルビー』 11億4170万元
    日本公開:2019年3月22日

14.『攀登者(クライマーズ)』 10億8247万元
    監督:李仁港(ダニエル・リー)
    主演:呉京(ウー・ジン)、章子怡(チャン・ツィイー)、井柏然(ジン・ポーラン)

THE CLIMBERS- Official Trailer《攀登者》国际版预告片 (吴京 / 章子怡 / 张译 / 井柏然 / 胡歌 主演)【预告片先知 | 20190923】

 


15.『キャプテン・マーベル』 10億3326万元
    日本公開:2019年3月15日

 

『サーホー』公開日決定!

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本日の「読売新聞」夕刊2面に「インド映画の流儀④」という短いエッセイが掲載されていると思います。そこに、配給会社ツインさんのお許しを得て、インド映画『サーホー』の公開時期を「3月」と書きました。

で、いつも拙ブログを覗いて下さる方には出欠大サービス! 公開は3月27日(金)となりましたぁ!!!!!!!! すでに、字幕翻訳藤井美佳さん、テルグ語監修山田桂子さんという『バーフバリ』の黄金コンビによる素晴らしい字幕が完成していますので、間もなくマスコミ試写が始まることと思います。現在、『サーホー』宣伝チームの皆さんが総力挙げて宣伝素材を作成中ですので、マスコミの皆様、ライターの皆様、ファンの皆様、ガンガンご宣伝をお願いします! かなり入り組んだサスペンス作品で、しかも間にどっかんどっかんとレベルの高いソング&ダンスシーンが入るため、歯ごたえバリバリの作品となっています。また、「プラバース・プロモーション映像」と言ってもいいぐらい、プラバースが魅力的に撮られているため、ファンの方はよだれを拭く大判タオルを忘れずにご持参下さい。では、最後にソング&ダンスシーンを一つ付けておきましょう。カメオ出演のジャクリーン・フェルナンデスとからむ1曲です。

Saaho: Bad Boy Full Video Song | Prabhas, Jacqueline Fernandez | Badshah, Neeti Mohan


なお、邦題は『サーホー』です。この間、「2019年インド映画興収トップ10」の時使ったんですが、どなたからもツッコミがなかった...。「サーホー」も、「ジャイ・ホー」と同じように日本で定着するといいですね。


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