やっと『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画』の画像を手に入れました。さあ、張り切って、打ち上げまでの秒読みを開始するぞ、というところです。まずは映画のデータと映画の背景&あらすじからどうぞ。
『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画』 公式サイト
2019年/インド/ヒンディー語/130分/原題:Mission Mangal/字幕:井出裕子
監督:ジャガン・シャクティ
出演:アクシャイ・クマール、ヴィディヤ・バラン(ヴィディヤー・バーラン)、タープスィー・パンヌー、ソーナークシー・シンハー、クリティ・クルハーリー(キールティ・クルハーリー)、シャルマン・ジョシ(ジョーシー)
配給:アット エンタテインメント
※1月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
© 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE
LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.
インドがアメリカやロシアと並んで宇宙開発に熱心であり、実績も積んでいることを知る人は少ないかも知れません。ですが、1960年代から開発に着手し、今や自力でロケットも人工衛星も製造できるという「宇宙大国」の一つであり、すでに月と火星に向けて探査ロケットを飛ばしているのがインドなのです。何せインドは、理科系頭脳の優秀さと多さを誇る国。それに加えて、宇宙開発の様々なアイテムは軍事転用もできるとあって、軍事力増強に熱心なインドとしては早くから取り組んでいたわけです。詳しくお知りになりたい方は、日本版Wikiのこちらのページ「インドの宇宙開発」をざっと読んでみて下さいね。まだ有人飛行ロケットを飛ばすまでには至っていませんが、宇宙飛行士はすでに存在していて、1984年に当時のソ連の宇宙船ソユーズに乗って打ち上げられ、宇宙に11日間滞在したラーケーシュ・シャルマーがインド人宇宙飛行士第1号です。2、3年前には彼の伝記映画製作が発表され、シャー・ルク・カーンがこの宇宙飛行士を演じる、というので結構話題になった時期がありました。本作『ミッション・マンガル』もその頃に着想されたのでは、と思われますが、2018年夏にはタミル語のSF映画『Tik Tik Tik(チク・タク・チク)』が公開されたりとミニ宇宙映画ブームが起きつつある中で、本作は2019年8月15日(インドの独立記念日です)に公開され、同年の興収第7位となるヒット映画となったのでした。
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本作は、ベンガルール(旧名バンガロール)にあるインド宇宙研究機構(ISRO)を舞台に、火星探査機「マンガルヤーン」がロケットに搭載され、2013年11月5日に見事というかやっとのことで打ち上げられるまでを描いています。物語の始まりは2010年のロケット打ち上げ失敗からで、この時は火星探査が目的ではありませんでした。ロケットを使って打ち上げるのは、いわゆる「人工衛星」(軍事衛星や通信・放送衛星、気象などの観測衛星等々使用目的は多岐にわたる)がほとんどなのですが、インドが使っているロケットは現在2系統あり、先に使用開始した「PSLV(Polar Satellite Launch Vehicle)」と、後発の「GSLV(Geosynchronou Satellite Launch Vehicle)」が活躍しています。2010年はGSLVロケットのロシア製第3段をインド製に交換しての打ち上げでしたが、失敗に終わったとWiki「インドの宇宙開発」には述べられています。その失敗から冷や飯食い的立場に追い込まれた主人公の二人が、二軍選手的な若手や年輩研究者を配された「崖っぷちチーム」で、火星探査ロケットの打ち上げに挑むのが本作のストーリーです。『ミッション・マンガル』の「マンガル(Mangal)」とは「火星」のことで、前述の「マンガルヤーン(Mangal)」は「マンガル」+「ヤーン(運搬手段、乗り物、宇宙船)」というネーミングです。本作には月探査ロケットも登場するのですが、そちらのネーミングは「チャンドラヤーン」、つまり「チャンドラ(月)」+「ヤーン」となっています。
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2010年、打ち上げられた直後にロケットは不具合を起こし、責任者ラケーシュ・ダワン(アクシャイ・クマール)は自爆指示を出して作戦を停止させます。部下でチーム長のタラ・シンデ(ヴィディヤ・バラン)は、事前チェックで小さな不調が報告されながら、それを無視した自分のミスだと申し出ますが、ラケーシュは自らの責任だとして会見に臨み、上司であるISRO所長(ヴィクラム・ゴーカレー)やニューデリーでの聴聞会での委員による叱責も甘んじて受けます。ラケーシュはNASA出身のデサイ(ダリップ・タヒル<正しくはダリープ・ターヒル>)にその地位を奪われ、タラと共に火星探査計画部門へと追いやられます。そこは古びた建物で設備も貧弱、そして配置されてきたメンバーは、高度な知識や技能を持った科学者たちの希望リストを提出したにも関わらず、若手や引退間近の科学者たちでした。
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そのメンバーは、航行・通信専門のクリティカ(タープスィー・パンヌー)、ジェット推進専門のエカ(ソーナークシー・シンハー)、船体設計専門のヴァルシャー(ニティヤー・メネン<正しくはニティヤ・メーナン>)、自律システム専門のネハ(クリティ<正しくはキールティ>・クルハーリー)という女性4人と、男性のパルメーシュワル(シャルマン・ジョシ<ジョーシー>)にアナント・アイアンガー<正しくはアイエンガル>(H.G.ダッタトレーヤ)でした。彼らはそれぞれに家庭の事情などもかかえており、一丸となって火星探査ロケット開発に邁進する、という雰囲気ではありませんでした。もちろん、リーダー格のタラにも家庭の問題があり、口うるさい夫(サンジャイ・カプール)や近頃挙動がおかしい息子なども抱えていたのですが、楽天的なラケーシュの影響もあって、タラはいつも前向きでした。そして、彼らのアイディアや工夫によって、火星探査ロケットの開発が軌道に乗り、2013年秋には打ち上げが目前に迫ってきます...。
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実はこれ、実際のISROに存在したチームの働きを元にした、実録映画なのです。女性メンバーが半数以上を占めるなど日本では考えられないことで、インドの女性研究者は優秀であり、現場では差別が少ないのだ、ということがまず衝撃的でした。姑から出産を強く望まれていたり、浮気した夫に離婚されてしまったり、怪我をした軍人の夫に付き添わなくてはならなかったりと、女性としての問題も抱えているのですが、それらと折り合いをつけながらロケット開発に取り組んでいく姿は、女性としてとっても魅力的です。独身で、この職場をNASAに行くためのステップとしてしか考えていないエカは一番の現代っ子女性ですが、チームの魅力に目覚めていくところなど、見ていて共感してしまいます。女性陣に比べて男性陣は少々影が薄く、実際にはもっと別のキャラだったのでは、という考えもよぎるものの、最後に現れる実在のメンバーを見ると、かなり事実に忠実に描かれているようです。メンバーそれぞれの個性が、本作の一番の魅力と言っていいでしょう。
そして、さらなる見どころは火星と地球の関係です。何それ、と言われそうですが、「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」と理科で習った「地・火」、つまり地球と火星の関係が本作でよくわかって、とても楽しかったのでした。探査機ロケットをどのように飛ばすべきか、という疑問に答えてくれるのが、インド版Wikiにある「Mars Orbiter Mission(火星探査計画)」という項目です。日本語版もあるのですが、すごく簡略化されているので、英語版の方をどうぞ。動く天体図が面白いです。これらで事前予習していくと、内容がさらによくわかると思います。最後に予告編を付けておきますので、新春の公開をどうぞお楽しみに!
映画『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』予告編