チェンナイでは待機時間があったりして、なかなか映画館に行けなかったのですが、かろうじで2本見ることができました。どちらもまずまず見応えがあったので、ちょっとご紹介しておきましょう。
『Vidaamuyarchi(忍耐力)』
監督:マギル・ティルメーニー
主演:アジット・クマール、クリシュナンクリシュナン、アルジュン・サルジャー
珍しい、旧ソ連領の国々が舞台のサスペンス・アクション映画です。ジョージア(グルジア)のトビリシで外資系の会社に勤務していたチェンナイ出身のアルジュン(アジット・クマール)は、トビリシで生まれ育ったカーヤル(トリシャー)と出会い、仕事でアゼルバイジャンのバクーに移ったあとも交際を続け、劇的なプロポーズを経て3年後に結婚します。その後カーヤルは妊娠しますが、残念なことに流産してしまいます。年齢もだいぶ上なので、カーヤルは再度の妊娠は望めないだろう、と医師から言われますが、二人はその後愛情深い結婚生活を続けていました。ですがそれから9年後、カーヤルはアルジュンとの生活を終わりにしたい、と言い出します。トビリシの両親の元に帰りたい、というカーヤルをアルジュンは送っていくことにし、最後となるであろう二人の長いドライブが始まります。ところが、途中で車が故障、立ち往生していると大型トレーラーが通りかかり、乗っていたインド人運転手と同乗の妻が降りて手伝ってくれることに。運転手ラクシト(アルジュン・サルジャー)は急ぎの荷物を運んでいると言い、その前にガソリンスタンドでカーヤルと顔を合わせていた妻ディーピカー(レジーナ・カサンドラ)は、取りあえず近くのドライブインまで行って救援を頼んでくる、とカーヤルを誘ってトレーラーに乗せ、車とアルジュンを残して去って行きます。その後、車が動くようになり、急ぎアルジュンはドライブインまで行きますが、3人の姿は見えず、うさんくさい店主は「そんな奴らは来なかった」とけんもほろろ。客たちも冷たい視線を注ぎ、アルジュンは混乱してしまいます。外に出ると、遠くにさっきのトレーラーが見え、アルジュンはあわててあとを追うのですが...。
このあとは、ラクシト一味の悪の顔が暴かれていき、警察も巻き込んだアルジュンの戦いが描かれるのですが、セリフの細部がわからず、ついて行くのがちょっと難しい映画でした。現地中央アジアの俳優たちも多数出演、とはいえみんなあやしげな人に描かれていて、警察官を除くと気の毒な描かれ方という感じ。気の毒と言えば、かつては二枚目ヒーローだったアルジュン、現在ではアルジュン・サルジャーが悪のボスというのも、ああ、お気の毒、と思ってしまいます。シャンカル監督の『Mudhalvan(州首相)』(1999)とか、カッコいいヒーロー役をいっぱい演じていた彼ももう62歳だそうで、まだ現役活躍中なだけいい、という感じでしょうか。
それはさておき、本作『Vidaamuyarchi』の魅力は、何と言っても若いアジット・クマールが見られること。ここ2、3年、白髪に白髭、というのがトレードマークになってきたアジット・クマールですが、きれいに髭を剃り、ヘアダイをして颯爽と現れるアラフォー姿は本当にステキで、見ている方は倒れそうになってしまいます。アジット・クマールはまだ53歳、ボリウッドの3人のカーンより若いのですから、もっと若作りしての役をやってもいいのでは、と思いますが。ヴィジャイは50歳で政界に行ってしまうので、アジット・クマールにはもっと活躍してもらわねば、というところです。とりあえず本作は好評上映中で、現在興収は12億ルピー強。でも、製作費がこの倍ぐらいかかっているので、ヒットとなるかどうか、というところ。最後に予告編を付けておきます。
Vidaamuyarchi Trailer | Ajith Kumar | Trisha | Arjun | Magizh Thirumeni | Anirudh | Subaskaran| Lyca
もう1本は、見たかったナーガ・チャイタニヤ主演のテルグ語映画『Thandel』。ナーガ・チャイタニヤとサイー・パッラヴィーの主演という演技力のある俳優を揃えた上、今はやりの「実話を元にした作品」ということで、大いに期待したのでした。
『Thandel(船長、リーダー)』
監督:チャンドゥ・モンデティ
主演:ナーガ・チャイタニヤ、サイー・パッラヴィー、プラカーシュ・ベーラーワーディー
ラージュー(ナーガ・チャイタニヤ)はアーンドラ・プラデーシュ州の小さな漁村に住む漁師。村の漁民はグループを組み、小さな漁船で長期間漁に出ては母港に戻る、という生活を続けていました。ラージューにはサティヤー(サイー・パッラヴィー)という恋人がおり、出漁中もしょっちゅう携帯で連絡を取っていました。村には二人がデートの場としている小さな灯台があり、ラージューが出漁している間、サティヤーはいつもその足下にあるシヴァ神の像にラージューたちの無事を祈るのでした。ある時、ラージューたちはグジャラート州に出向き、船に乗り込むことになります。列車でデカン高原を横断し、西側の海岸に行く、ということで、村では女たちが総出で見送ることに。ところが操業中嵐に遭ったラージューたちの船は、気がついて見るとパキスタン領に入り込んでおり、パキスタン海軍に拿捕されることになってしまいました。パキスタンの拘置所に入れられた彼らは、インドを敵視する他の囚人たちから辱めを受けたり、襲撃されたりと、つらい目に遭います。一方、拿捕のニュースが入った村は大騒ぎとなり、インド政府を動かすため、女性たちがデリーまで陳情に行ったりと、サティヤーを含む女性たちは手を尽くすのですが、そんな中、サティヤーに結婚話が持ち上がります....。
冒頭のラージューとサティヤーの恋愛模様をたっぷりと見せ、続いてパキスタンでの苦労話、女性たちの戦いを描いて最後はハッピーエンド、となるのですが、最後の漁民解放時のエピソードはなかなか見応えがあったものの、前半のチョコレートに砂糖をまぶしたような恋愛ぶりが何とも甘ったるく、こんないい俳優2人を使って何やってんの、という感じでした。『サーホー』(2019)や『ただ空高く舞え』(2020)の名脇役プラカーシュ・ベーラーワーディーがパキスタンの刑務所長として、いい味を出していますが、この人、カンナダ語映画から出発して、実にいろんな言語の映画に出ているんですね。パキスタンのムスリム顔とはちょっと違う感じがして、最初はもっと面長の眼光鋭い俳優をキャスティングすればよかったのに、と思いましたが、解放シーンの名判官ぶりには拍手パチパチ。ナーガ・チャイタニヤよりも魅力的でした(笑)。最後に予告編を付けておきます。
Thandel - Official Trailer | Naga Chaitanya, Sai Pallavi | Chandoo Mondeti | Devi Sri Prasad
<オマケ>
上に名前を引用したヴィジャイですが、彼の顔が出ている政党ポスターがチェンナイ市中に貼ってありました。ウーバーオートで通り過ぎる時にあわてて撮ったので、「なんじゃこりゃ」写真ですが、ちょっと付けておきます。