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9月1日(火)は『マルガリータで乾杯を!』の日です

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あいち国際女性映画祭の開幕も、いよいよ来週となりました。9月1日(火)のオープニングを飾るのは、インド映画『マルガリータで乾杯を!(Margarita, with a Straw)』(2014)です。映画祭の公式サイトはこちらです。主演のカルキ・コーチリンと、ショナリ・ボース監督がゲストとして来日するので、すでに映画祭参加を決めてらっしゃる方も多いことでしょう。この機会に、本作の見どころなどをご紹介しておこうと思います。

 

『マルガリータで乾杯を!』 公式サイト

2014年/インド/ヒンディー語・英語/100分/原題:Margarita, with a Straw

監督:ショナリ・ボース
主演:カルキ・コーチリン、レーヴァティ、サヤーニー・グプター
配給:彩プロ
宣伝:ミラクルヴォイス

※10月、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー


(C)All Rights Reserved c Copyright 2014 by Viacom18 Media Private Limited

and Ishaan Talkies

主人公のライラ(カルキ・コーチリン)は名門デリー大学の学生。体が不自由で電動車椅子を使っているため、毎朝母(レーヴァティ)がバンに乗せ、父(クルジート・シン)や中学生の弟(マルハール・クショー)を送りがてら、ライラを大学に送っていきます。大学では、同じく車椅子を使う男子学生ドゥルヴ(フセイン・ダラール)とふざけあい、憧れのヴォーカリスト、ニマ(テンジン・ダラ)がいるバンドを覗くなど、ライラは青春を謳歌しています。でも、ライラの作詞した曲でニマのバンドがコンテストで優勝した時に、「作詞したのが障がいを持つ女子学生だったからこのバンドに賞を与えました」と審査員に言われたり、ニマに告ったら避けられたりと、心傷つくこともたびたび。失恋したライラに母は、「ニューヨーク大に留学しなさい」と言いますが、そこには母の切ない思いやりが隠れていたのでした....。

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まず驚くのは、ライラの家族。お父さん(右から二人目)はシク教徒なのですが、お母さん(中央)はヒンドゥー教徒。お父さんはターバンとヒゲからシク教徒とわかりますが、息子、つまりライラの弟(右)にはシク教徒になれと強要していないようで、弟は髪の毛をのばしていません。お母さんがヒンドゥー教徒なのは、シュバンギニという名前、そしてマンガルスートラ(黒と金色のビーズからなる、婚姻の印のネックレス)をしていることからわかりますが、お母さんはライラに自分のことを「アーイー(母さん)」と呼ばせていて、これはつまりマハーラーシュトラ州出身だということになります。お父さんはシク教徒ですし、セリフからもパンジャーブ州の出身だとわかりますが、このご夫婦は、異なる宗教間で、かつ異なる出身地の人同士で結婚した、ということになります。インドではまだまれな、先進的家族なのです。

こういう自由な雰囲気の家庭のせいか、障がい者であるライラもしっかりと自分自身を持っていますし、普通の女の子のように性衝動にも突き動かされたりします。ニューヨークに行ってからはバイセクシュアルにも目覚め、盲目の女子学生ハヌム(サヤーニー・グプター/上写真左から二人目)との同居も経験します。インド映画としては、驚くほどに先鋭的な内容なのです。

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その一方で、家族愛がじっくりと描かれます。大きな部分を占めるのはライラに対する母の愛なのですが、その母の尻に敷かれているようでいながら、家族を根底で支えている父の穏やかな愛にも打たれます。また、ラスト近くで弟が見せる姉への愛情表現は、それまでの生意気な顔がまるで違った人に見えるぐらい、見ている者の心に響きます。インド映画に描かれる家族は、愛情表現過多だったり、反対に憎み合っていたりと、かなりドラマチックになりがちですが、本作の家族は淡々としていながら、力強い芯を感じるものになっています。

本作の主人公のキャラクターは、監督が障がい者である従妹からインスパイアされたもので、それだけにリアリティに溢れ、見ている者を驚かせます。カルキ・コーチリンの過剰になりすぎない演技が素晴らしく、観客(多分、外国の観客でしょう)の中には彼女を本当の障がい者だと思った人もいたとか。これまで日本で公開されたり上映されたりした彼女の作品、『デーウD』(2009)、『人生は一度だけ』(2011)、『シャンハイ』(2012)、『若さは向こう見ず』(2013)でも輝いていたカルキですが、本作では観客の心をがっつりと掴んで放しません。


そのカルキとならんでチャーミングなのが、母親を演じるレーヴァティ。タミル語映画で美人女優として長い間活躍してきた人で、最近はヒンディー語映画への出演も増えてきています。監督もする才女ですが、2002年のインド国際映画祭の時に会った彼女は知的な雰囲気の人ながらとても気さくで、写真撮影にも気軽に応じてくれました。今回プレスに書いた拙文で、間違って日本での上映作を『沈黙のラーガ』(1986)のみと書いてしまったのですが、同じくマニラトナム監督作品で、彼女が出演した『アンジャリ』(1990)や『ザ・デュオ』(1997)も上映ずみです。

また、この誤りを指摘して下さった方によると、レーヴァティの監督作『フィル・ミーレンゲー/また会いましょう(Phir Milenge)』(2004)も上映されたことがあるそうです。調べてみると2005年に、エイズをテーマとした上映会の中で紹介されたようで、投影字幕での上映だったらしいです。「ミーレンゲー」は正しくは「ミレーンゲー」ですが、こちらのサイトなどを見ると寺田正廣さんという映画ライターの方のご尽力で実現した上映のようです。レーヴァティも、ぜひ一度来日してほしいですね。

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では、あいち国際女性映画祭では、ショナリ・ボース監督&カルキ・コーチリンとの出会いを楽しんできて下さいね。映画をご覧になってのコメントなども、またぜひお寄せ下さい。行けなかった方は、10月の公開を楽しみにして待ちましょう!

 

 


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