Quantcast
Channel: アジア映画巡礼
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2389

見ました『チェンナイ・エクスプレス』

$
0
0

見て参りました、『チェンナイ・エクスプレス』。タイ語と英語字幕付きのヒンディー語版上映でした。主演は言わずと知れたシャー・ルク・カーンとディーピカー・パードゥコーン。なぜかビリングではディーピカーの方が先でしたが、これは自社レッド・チリーズ製作ということで、シャー・ルクが譲ったのかも知れません。とはいえ、ディーピカーたんの活躍ぶりはシャー・ルクよりも印象に残るぐらいで、彼女の映画と言っても差し支えありません。

あと、もう一つの主役は、過去のインド映画の数々。インド映画ではすぐ過去の作品が引用される、というのは、皆様も『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』でご体験済みだと思いますが、『チェンナイ・エクスプレス』もそれ以上に激しい引用ぶり。シャー・ルクの過去の主演作『ラ・ワン』『神がカップルを作り給うた(Rab Ne Bana Di Jodi)』『賭ける男』等々から、ラジニカーントの『ムトゥ 踊るマハラジャ』や『チャンドラムキ』(長いのでサブタイトルはパス)などなどなど、ものすごい引用ぶりです。きっと、インド人観客のツボにはまりまくることでしょう。

お話はムンバイから始まります。ラーフル(シャー・ルク・カーン)のナレーションで進行していくのですが、まずはラーフルが8歳の時両親を事故でなくし、その後は祖父母に育てられたことが語られます。祖父はお菓子チェーンの創業者で、ヒンディー語で言えば「ミターイーワーラー(甘い物を作る人)」として大成功をおさめた人物。クリケットが何よりも好きなこの祖父、100歳のお誕生日に有名クリケット選手サチン・テーンドゥルカル(「スーラジ ザ・ライジングスター」のサミール選手のモデルですね)がセンチュリー(1試合で100点獲得すること)を達成しようとした矢先、99点でアウトになるのを見て、そのまま昇天してしまいます。

祖母は、祖父の遺灰の半分はベナレスからガンジス河に、残りの半分をタミル・ナードゥ州のラーメーシュワラム(「ラーマーヤナ」で、ラーマがシーターを救うためにランカー島に向かう時、ここから橋をかけたと言われている場所)から海に流してほしいと言い、ラーフルはムンバイ発のチェンナイ・エクスプレスに乗って、タミル・ナードゥ州へ向かうことに。でも、本当はラーフルは友人たちとつるんでゴアに行く予定で、途中のカリャーン駅で降りて友人の車に合流することになっていました。第一、チェンナイ・エクスプレスはラーメーシュワラムには行かないのです。しかも、ゴアとラーメーシュワラムは繋がっている、という勝手な論理で、ラーフルはゴアで祖父の遺灰を流すつもりでいたのでした。その罰があたったのかどうか、ラーフルはチェンナイ・エクスプレスに乗ったとたん、トラブルに巻き込まれます....♪アイヤイヤイヤ〜、チェンナイ・エクスプレス〜♪

トラブルの元は、『シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦』でした。と書くと何のこっちゃ?と思われると思いますが、チェンナイ・エクスプレスがカリャーン駅に着いて友人と会ったものの、祖父の遺灰を忘れて取りに戻ったラーフルは、動き出した列車からホームに降りようとします。その時デッキに立ったラーフルが見たのは、ホームを必死で駆けてくる美女ミーナー(ディーピカー・パードゥコーン)の姿でした。しかも、『DDLJ』のカージョル走りで列車を追いかけてくるのです! つい手を差し出すラーフル。彼女がうまくデッキに上がり、ふとまたラーフルがホームを見ると、今度はむくつけき男性が必死で列車を追いかけてくる! ついついまた『DDLJ』してしまうラーフル。こうして都合4人の男を列車にすくい上げて降りようとしたら、もうホームは消えていました。当たり前です〜。

仕方なく友人たちとは次に停まる駅での待ち合わせに変更したのですが、目の前の美女と4人の野獣男はどうやら何かワケがありそう。彼らはタミル語で話していて、ミーナーと4人は険悪な雰囲気なのです。野獣男とトラブって携帯を捨てられてしまったラーフルは、ミーナーだけがヒンディー語がわかることから、歌を歌っているふりをして彼女からいろいろ聞き出します。ミーナーはタミル・ナードゥ州の地方の村に君臨するドン(サティヤラージ)の一人娘で、父親が決めた結婚を嫌い逃げてきたものの、親戚の男たちに見つかって連れ戻されるところなのでした。仕方なく彼ら一行に従うラーフルでしたが、村に着いて父親の前に出たミーナーが「私はこの人が好き。お父さんの決めたタンガバッリ(ニキティン・ディール)とは結婚しないわ」と言ったことから、ラーフルはますますトラブルの渦中へと引き込まれることに....♪アイヤイヤイヤー、チェンナイ・エクスプレス♪

この先の筋は皆さんなら大体ご想像がつくと思いますが、『DDLJ』と同じく「父親が娘の手を放す」までが描かれる作品です。『DDLJ』の合間に『ムトゥ』の丸めた手紙シーンが再現されたりもして、最初に出てきたラジニカーントへの謝辞もなるほどとうなずける作り方です。ラジニSirはエンドクレジットのソング&ダンスシーン「Thalaiva」でもバリバリに引用されていて、南インドの観客をも喜ばせることになりそうです。

とまあ楽しい映画ではあるのですが、他作品の引用に忙しく、肝心の筋やひねりが今ひとつ。ラスト近くで、「そうだ、そこからもうひとひねりだ!」と思った山場も、単純なアクションシーンで片づけられてしまい、それでいいのか、ローヒト・シェーッティー監督、と胸ぐらをつかんでゆさぶりたい気分でした。これまで『インチキ(Golmaal)』シリーズや、『シンガム(Singham)』 (2011)、『話せよバッチャン(Bol Bachchan)』 (2012)等のコメディーやアクション作品をヒットさせてきたローヒト・シェーッティー監督ですが、シャー・ルク・カーン作品は今までのレシピだけじゃダメなのよ〜、ちゅーことがわかってなかったみたいです。もっと脚本を練ればよかったのにねー、♪アイヤイヤイヤー、チェンナイ・エクスプレス♪

とはいえ、見どころもいろいろと。本作で素晴らしかったのは、まずシャー・ルク・カーンの若さ。目玉となるアイテムソング「1 2 3 4 Get on the Dance Floor」での踊りっぷりは、とても40代後半とは思えません。アクション・シーンもお約束の血まみれになりながら、結構激しいものを見せてくれます。

一方ディーピカーたんは、はじけた南インドのお姉ちゃんを活き活きと演じていてハマり役。そのかたわらエモーショナルな部分もしっかりと担っていて、途中グッとくるシーンがこちらなどにも。シャー・ルクにもこういうシーンがほしかったです〜、ローヒト・シェーッティー監督。ただのお調子者だけじゃ、ファンは満足できないのよっ!

そして本作最大の拾い物(?)は、ミーナーの結婚相手を演じたニキティン・ディール。シャー・ルクよりも20?ぐらい背が高く、しかも超マッチョなガタイのお兄さんです。調べてみるとこれまでにも『ジョーダーとアクバル(Jodha Akbar)』などにも出ていたらしいのですが、全然憶えなし。今回の大抜擢で、一挙に注目を浴びるに違いありません。本来なら悪役のはずなのですが、顔が実に正義漢の面まがえで、「水滸伝」なら九紋龍史進でも演じさせたい雰囲気の人です。一生懸命ワルに見せているのですが、「ミーナー、この人と結婚してしまえば? きっと幸せにしてくれるよ〜」と言いたくなってしまい、映画としてはミスキャストかも。父親は有名なテレビ俳優パンカジ・ディール(「マハーバーラタ」のカルナ役など)で、祖父も映画製作者というニキティン・ディール、今後の活躍が楽しみです。

というわけで、私の付けた点数は75点。インドでは大ヒットになると思いますが、さて、日本ではどちらかがお買いになるでしょうか? 時間は2時間21分とちょい短か目です。お買い上げの場合は、ここに付けたポスター・イメージの数々をぜひ日本でもお使いいただければと思います。写真版のポスターはどうもないようで、すぐ上に貼り付けたイメージはどこかが勝手に作ったもののよう。日本にも、シャー・ルクとディーピカーたんがルンギー姿で並んでいるこのポスターが躍る日が来るといいですね。

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2389

Trending Articles