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Channel: アジア映画巡礼
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サッチャル・ジャズ・アンサンブルのプライベート・コンサート

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ドキュメンタリー映画『ソング・オブ・ラホール』の主人公たちが来日しました。こちらで以前ご紹介した『ソング・オブ・ラホール』は、パキスタンのパンジャーブ地方の町ラホールで、古典音楽とジャズを合体させたユニークな演奏活動を繰り広げているサッチャル・ジャズ・アンサンブルがニューヨークに招かれ、著名なウィントン・マルサリスのグループとセッションするまでを描いたドキュメンタリーです。ところが劇映画以上にハラハラ、ドキドキさせてくれて、最後には感動の嵐!という展開に、登場人物すべてが身内のように思えてきてしまうからあーら不思議。というわけで、配給さんから「急遽来日が決まったのですが、招聘費用が不足しています。ぜひクラウド・ファンディングにご協力を」という要請が来た時も、私始め皆さんが「それは大変!」とばかりこぞってカンパしたのだと思います。目標額150万円のところ、何と2,118,500円も集まったのだとか。すごいですねー。

このクラウド・ファンディングはカンパ額も選べますが、その見返りも選べるようになっていて、私は「プライベート・コンサートご招待」というのを選んだら、9月1日にご招待メールが送られてきました。9月4日(日)19:45開演@北沢タウンホールです。実はその前夜、9月3日(土)には彼らは東京JAZZの舞台に出演、野外でしたが会場に詰めかけた大勢のお客様と共に大盛り上がりしたそうです。また、『ソング・オブ・ラホール』上映中の劇場でも舞台挨拶に登場し、大入りの客席を沸かせたとか。そして、じっくりと彼らの演奏を聞ける最後の機会が、4日夜のプライベート・コンサートでした。300人入る会場はぎっしり満員。整理番号順に入場した人たちは席を確保すると、舞台に置いてある彼らの楽器を興味深そうに見てはパチリ。そんなことをしていると、メンバーが舞台に姿を現し始めました。


今回の来日メンバーは、まず、サッチャル・ジャズ・アンサンブルの団長とでも言うべき創設者のイッザト・マジード(左写真)。そして指揮者のニジャート・アリー(右写真)。


演奏の柱となるのが、シタール奏者のナフィース・アフマド・ハーン(左写真)と、映画でお馴染みのパーカッションの2人、タブラのバッルー・ハーンとドーラクのナジャフ・アリーです(右写真左から)。


そして、指揮者と対称的に舞台の上手に立ち、ずっと立ったまま演奏を続けるので、まるでアンサンブルの二本柱のようなギターのアサド・アリー。この人を見ると、つい「ロッケンロール!」と言いたくなる私です。


アサド・アリーの前には、新顔のシャヘナーイーのモホスィン・ラザーが座っています。ソバージュの長髪で、何だかインドの行者みたいですね。


実は来日直前になって、バーンスリー奏者バーキル・アッバースが心臓発作を起こしたことを知らせるメールが来た時にはびっくりしましたが、病院にすぐかつぎこまれて命に別状はないとのことなので一安心。バーンスリーとシタールが”華”なのでさて、どうなることやらと思っていましたが、3日のステージを見た人からシャヘナーイーが加わっていたと聞いて、ビスミッラー・カーン(ハーン)みたいなお年上の方を想像していたのでした。そしたら、こんなイケメンのお兄ちゃんでした。


このほか、新顔はパーカッションのアリー・シャーイバ(左写真)とピアノのダーニシュ・アリー(右写真)。ダーニシュ・アリーは指揮者のニジャート・アリーの弟だそうです。私の位置からは顔しか見えないことが多かったのですが、映画のアメリカ人ピアニストと同じくらい、表情豊かでした。


どんな曲目が演奏されたのかは、プライベート・コンサートなのでお伝えできませんが、途中日本人のシターリスト、ヨシダダイキチさん(下写真左端)も加わり、白熱した演奏が続きました。ヨシダさんは、何とシュジャート・カーン(私は38年前に来日した彼に、「インド通信」でインタビューしたことがあるのです)のお弟子さんだそうで、その縁者が映画にも出ているご縁から出演となったそうです。


演奏が終わった時、ヨシダさんがシタールのナフィース・アフマド・ハーンの足にちょっと触れてご挨拶し、下がって行かれたのが印象的でした。「ウスタード(師匠)」クラスへの礼儀ですが、見ていて気持ちよかったです。今回の演奏の核は、先にも書いたようにこのナフィース・アフマド・ハーンのシタールと、バッルー・ハーンのタブラ。

いやもう、どっちも歌う歌う、時にはタイマン張ってんのか(すみません、品が悪くて)と思うようなぶつかり合いで、こちらも座席からお尻が浮くような気分になります。特に、バッルー・ハーンは司令塔でもあるようで、隣のドーラクのナジャフ・アリーと言葉を交わしたり、笑い合ったり、曲がビシッと決まった時はハイタッチもどきの握手をしたり。


あまりに表情豊かなので、ここでバッルー・ハーン三連発。この四方八方に気を放つバッルー・ハーンをやわらかく受け止めているのが、ナジャフ・アリーなのでした。


指揮のニジャート・アリーは、我関せず、とばかり楽しげに手を振って指揮をしています。


そう言えば、映画で「これが楽譜?!」とニューヨークのジャズメンを驚かせたニジャート・アリーの楽譜は今回も健在で、彼の手元と、ギターのアサド・アリーの手元で活躍していました。


一番若いので大丈夫かな-、とつい思ってしまうシャヘナーイーのモホスィン・ラザーは、やはり緊張しているように見えましたが、シャヘナーイーの音が出始めると全く異質なまっすぐ進む音であたりを押さえてしまい、リズミカルな部分も落ち着いてこなして、なかなかのものでした。


パーカッションのアリー・シャーイバも、まるでITのオフィスワーカーみたいな外見に似合わず、器用なところを見せてくれます。最初グングルー(踊りの足鈴)のようなものを振っていたかと思えば、いろんなリズム楽器を次々持ち替えて演奏、思わず「それは何?」と聞きに行きたくなりました。


ピアノのダーニシュ・アリーの表情2つ。彼のピアノソロはほんの少ししかなかったのですが、もっと聴いてみたくなる、柔らかい音でした。というわけでラストの看板曲まで突っ走り、会場中をサッチャル・マジックで包んでくれて、演奏は終わりました。もちろん、客席はスタンディング・オベーション。それに応えて彼らもアンコール演奏をしてくれようとしたのですが、会場の使用時間がもうギリギリで、残念ながらアンコールはなし。インドやパキスタンなら、「よーし、乗りに乗ってるから、一晩中やるぞ~」の世界だったんですけどね。


最後に名残惜しそうに手を振って、彼らは舞台から去って行きました。最高のプライベート・コンサートでした。

Photo by アジコさん(ASIAN CROSSING)

最後に、「ASIAN CROSSING」のアジコさんからご提供いただいた画像を付けておきます。私の位置からはこのお二人が正面では撮れなかったので、とても嬉しいです。今度はぜひ、健康を回復したバーンスリー奏者のバーキル・アッバースと一緒に来日して下さいね。この素敵なコンサートをセッティングして下さった、『ソング・オブ・ラホール』関係者の皆様に感謝します。『ソング・オブ・ラホール』の公式サイトはこちら、まだまだ絶賛上映中ですので、まだご覧になっていない方ももう一度ご覧になりたい方も、ぜひ劇場にお出かけ下さい。

 


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