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『あなたがいてこそ』もヨ・ロ・シ・ク

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『ダバング 大胆不敵』、皆様の絶大なご支持により、昨日無事に初日が開いたようです。わが家でも、目下ささやかに『ダバング』祭り中。


こんなん貼ってたら祇園さんより暑いわ〜、というか、かなり暑苦しいです(笑)。

全紙大ポスター、インドで買えば1枚30〜50ルピー(51〜85円)。持って帰るのが大変ですが、これからムンバイに行くのでポスター屋さんに行ってみたい、という方は、こちらとかこちらをご参照下さい。ここに書いたポスター屋さんはちょこちょこ場所が変わるので、見つからなかったら近所の店で聞いてみて下さいね。なお、ポスター屋さんのある場所は下町、ハッキリ言うと場末なので、いらっしゃる時はよーく気をつけて。

さてさて、昨日は『ダバング 大胆不敵』と共に、テルグ語映画『あなたがいてこそ』も初日を迎えました。南インドはアーンドラ・プラデーシュ州ハイダラーバードを中心に作られているテルグ語映画。ここのところ、年間製作本数は第1位をキープしています。吹き替え版も数に入ってはいるのですが、一昨年度(2012.4.1-2013.3.31)は334本、昨年度(2013.4.1-2014.3.31)は349本。どちらもヒンディー語映画に80本ぐらい差を付けています。

『あなたがいてこそ』は以前こちらでご紹介したとおりですが、もう一度基本データを付けておきましょう。『マッキー』(2012)のS.S.ラージャマウリ監督作なので、とても出来のいい作品です。S.S.ラージャマウリ監督、まさしくグローバル・スタンダード娯楽作が作れる、テルグ語映画の匠ですね。

『あなたがいてこそ』 公式サイト 

(2010/インド/テルグ語/125分/原題:Maryada Ramanna) 
  監督:S.S.ラージャマウリ
  主演:スニール、サローニ、ナジニードゥ、スプリート、ヴェーヌゴーパール、ブラフマージー
  提供:マクザム、アジア映画社、アジアヴォックス
     配給:太秦
  宣伝協力:オムロ

※7月26日(土)よりシネマート六本木にて公開中、8月2日(土)よりシネマート心斎橋にて公開予定

ところが、テルグ語映画界のビジネス感覚は、いまいちどころか、いまに、いまさんぐらいグローバル・スタンダードに及ばず。せっかくいい映画作ってるんだから、海外にもしっかり出せるビジネスを目指しましょうね。文句は以前にも書いたので、今日はその証拠となる場面写真のスライドショーを。まず、こちらのソング&ダンスシーン「ラーエ・ラーエ」をご覧になってからどうぞ。

これ以外に素晴らしいシーンがい〜っぱいある『あなたがいてこそ』。アーンドラ・プラデーシュ州の雄大な景観も見ものです。大画面でぜひお楽しみ下さい! 



『ダバング 大胆不敵』&テルグ語映画にハートを撃ち抜かれた人へ

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『ダバング 大胆不敵』が日本の夏を異常に暑くしています。わが家もあまりに暑いので、昨日写真でアップした3枚の現地版ポスターの真ん中をはずしたら、今日はちょっと涼しくなりました。やれやれ、やっぱりチュルブル・パンデーが猛暑日の根源だったか。

その熱いマグマのような『ダバング 大胆不敵』と、同日に公開されたテルグ語映画『あなたがいてこそ』にハートを撃ち抜かれた人が、現在続出しています。そんな方にとって、「待ってました!」のイベントが開かれますので、ちょっとお知らせを。以前にもご案内したのですが、8月6日(水)の夜に開催される「マサラムービーナイト第二弾:大胆不敵にスーパースターを大特集!」です。主宰者側から詳しいご案内をいただいたので、早速そのままアップしてしまいましょう。下は、前回の「マサラムービーナイト」の様子です。


阿佐ヶ谷ロフトA マサラムービーナイト第二弾!

大胆不敵にスーパースターを大特集!

阿佐ヶ谷インド映画イベント第二弾!この夏、待ちに待った『ダバング大胆不敵』が日本上陸! 映画の見所や裏話はもちろん、主役のサルマーンを筆頭にボリウッドスターを大特集!今回も豪華ゲストによるここでしか聞けないインド映画トーク! イベント後半ではボリウッドを飛び出して、インド映画界のスーパースター達にも注目!8月に公開を控えたハチャメチャなテルグ語映画『バードシャーテルグの皇帝』特集として、テルグ映画の魅力やスターもご紹介! ゲストにはPeriplo さんこと南インド日曜評論家、安宅直子さんをお呼びいたします。さらに不思議なインド映画の謎が解ける!?ハチャメチャなインド映画を解説するコーナーも! カレーとお酒を飲みながら、インド映画を語り尽くします!

※持ち込みクラッカーは音だけのもののみ

出演者
 すぎたカズト(ナマステボリウッド主宰)
 サラーム海上(よろずエキゾ風物ライター)
 アルカカット(これでインディア/バハードゥルシャー勝)
 安宅直子(南インド映画日曜評論家)

開催日時
 2014 年8 月6 日(水)
 18:30 会場/19:30開演

開催場所
 阿佐ヶ谷ロフトA

チケット価格
 前売り2000 円/当日券2500 円
 前売り券はeplus にて発売中

協力

 太秦株式会社
 ※当日は「阿佐谷七夕まつり」開催中の為、JR 阿佐ヶ谷駅から阿佐ヶ谷ロフトA まで大変混雑が予想されます。時間に余裕を持ってご来場下さい。

問い合わせ
 阿佐ヶ谷ロフトA  杉並区阿佐ヶ谷南1-36-16-B1
 TEL:03-5929-3445

イベント会社の方のお話によると、『ダバング 大胆不敵』と『マダム・イン・ニューヨーク』を買ってしまった元”普通のサラリーマン”大向敦さんの飛び入り出演もあるかも、だそうです(まだ交渉中?)。「ボリウッド映画を買ってみました」のブログでファンも多い大向さん、実はお話もとってもお上手です。サラリーマン時代に身につけた、セールストークが生きている??

また今回は、テルグ語映画に詳しい(詳しすぎる!)安宅直子さんも初参加、ものすごく豊富なお話が聞けそうですね。皆様お馴染みの、「プリヤンカー・チョープラーのためなら死んでもいい」サラーム海上さん、「ナマステ・ボリウッド」の編集長でボリウッド・スターの話なら1週間ぐらいぶっ続けでできるすぎたカズトさん、アルカカットさんこと最近インド映画のカリスマ解説者になりつつある....あれ、もしかして本名出しちゃダメかな? 『ダバング 大胆不敵』のパンフにも寄稿しているTさんと、濃ゆ〜〜〜いメンバーが勢揃い。これを聞き逃す手はありません。阿佐ヶ谷七夕まつりと一緒に、インド映画まつりもぜひ楽しんできて下さい。


『バードシャー テルグの皇帝』(上写真)のご紹介もせねば、と思いつつ、遅れていてすみません。8月9日(土)公開なので、もうちょびっとお待ち下さいませ〜(汗)。

なお、「キネマ旬報」8月下旬号にも、インド映画の特集が掲載される予定です。『バルフィ!人生に唄えば』のアヌラーグ・バス監督のインタビュー、マサラ上映についての紹介、インド映画スター名鑑など、こちらも盛りだくさんの予定。8月5日(火)に発売ですので、これを持って阿佐ヶ谷でのイベントに駆けつけましょう!



 

「イラン 平和と友好の映画祭」in広島&東京

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ペルシャ語の通訳、ショーレ・ゴルパリアンさんから、標記の映画祭の開催を教えて頂きました。広島では8月2日(土)〜8日(金)@八丁座、東京では8月8日(金)&9日(土)@赤坂区民ホールで開催されます。イラン・イスラム共和国大使館文化部からのプレス・リリースをショーレさんが送ってきて下さったので、そのまま貼り付けます。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

イラン 平和と友好の映画祭

 アジアの西と東に位置するイランと日本の人々の間には、文化的・歴史的共通点が数多くあります。歴史のなかで、戦争を経験した両国民は、平和と友好の世界が築かれることを強く願っています。
 映画は、その国の国民の願いを反映すると同時に、ほかの国の人々に、その想いを伝えることができる芸術です。近年、イラン映画は目覚ましい発展をとげ、世界の人々から高い評価を得ています。
 このたび、イラン・イラク戦争の被害者とともに、イラン映画界を代表する監督や俳優が来日する運びとなりました。 来日を記念し、 イラン・イスラム共和国大使館は、近年の著名な映画作品のいくつかを、下記の通り上映します。
 今回選んだ作品のなかでは、イランの人々が経験した戦争という悲劇と、平和を求める心が描かれています。上映会を通して、イランと日本の人々の友好がさらに深まることを願います。
 映画、そしてペルシャ文化に関心のある方々に、ご来場頂き、監督・俳優と一緒にご鑑賞頂ければ、嬉しく思います。それぞれの作品の上映後には、監督あるいは俳優とのQ&Aセッション(通訳つき)がございます。

主催:在京イラン・イスラム共和国大使館

場所:東京都港区赤坂区民ホール 会場案内
(東京都赤坂4-18-13 赤坂コミュニティぷらざ内3階)
 地下鉄 銀座線・丸の内線: 赤坂見附駅下車 A出口徒歩10分
 地下鉄 大江戸線・銀座線・半蔵門線 :青山一丁目駅下車 4番出口徒歩10分)

入場料:無料

問い合わせ先:イラン・イスラム共和国大使館
       E-mail: cultural@iranembassyjp.org
       Tel: 03-3446-8011 (内線: 159,120) Fax: 03-3446-9002

*座席数に限りがありますので、参加を希望される方は、Eメールにて、参加希望日(金曜日のみ、土曜日のみ、あるいは両日)、ご氏名とご所属、参加人数をお知らせ下さい。(満席でご出席いただけない場合のみ返信いたします。)

<上映日程>

8月8日(金曜日)
 13:30 開場
 14:30−15:30 オープニングセレモニー(臨時代理大使より監督や俳優の紹介)
 15:30−17:04 上映『塹壕(ざんごう)143』(Track 143)
       監督:ナルゲス・アービヤール
       イラン/94分/フィクション/2014年/日本語字幕
       過酷な戦場の中の志願兵。行方不明の息子を待ち続ける母親に、
       大きな試練が待ち受ける。
 17:04−17:20 アービヤール監督とのQ&Aセッション
 17:20−17:30 休憩
17:30−19:02 上映『独りぼっち』(All Alone)
       監督:エッサン・アブディープール
       イラン/92分/フィクション/2014年/日本語字幕
       イラン南部の原子力発電所の近くの村に住む少年。ロシア人の少年との
       友情が、刻々と変化する状況のなか、翻弄されていく。
 19:02−19:20 アブディープール監督とのQ&Aセッション
 19:20−19:30 休憩
 19:30−21:00 上映『夜行バス』(Night Bus)
       監督:キューマルス・プールアハマド
       イラン/90分/フィクション/2007年/日本語字幕
       志願兵の少年は、何人ものイラク人捕虜の移送を任される。その間に
       さまざまな問題に直面するが、彼に協力してくれる人はだれもおらず、
       たった一人で任務を遂行することになるが・・。
 21:00−21:15 プールアハマド監督とのQ&Aセッション

8月9日(土曜日)
 17:45−19:00 上映『報われた沈黙』(The Consequence of Silence)
       監督:マジヤール・ミーリー
       イラン/75分/フィクション/2006年/日本語字幕
       バスの切符販売をしている復員兵。ある日彼は、テレビで殉教した
       戦友の様子を目にし、その父親のもとを訪れる。真実を知りたい父
       親は復員兵を連れ、亡き息子のことを知る何人もの戦友のところへ
       行くが・・。
 19:00−19:20 俳優 パルヴィーズ・パラストゥーイーさんとのQ&Aセッション
 19:00−19:30 休憩
 19:30−20:36 上映『季節の記憶』
       監督:モスタファ・ラザーグキャリーミ
       イラン/66分/ドキュメンタリー/2014年/日本語字幕
       毒ガスで傷つけられた兵士・民間人を治療したオーストリアの医師
       とその仲間。20年後に語られる生々しい証言。
 20:36−20:45 ラザーグキャリーミ監督とのQ&Aセッション


上は広島の映画祭のチラシです。広島での上映の詳細はこちらをどうぞ。今年製作の作品が半分を占める貴重な映画祭。イラン映画ファンだけでなく、アジア映画ファンの皆様、ぜひお運び下さい。


『めぐり逢わせのお弁当』リテーシュ・バトラ監督来日会見記

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『めぐり逢わせのお弁当』のリテーシュ・バトラ監督が今週前半に来日しました。7月28日(月)〜30日(水)の間、インタビュー取材を受けたり、テレビやラジオへの出演、そしてこのブログでもお知らせしたティーチインへの登場など、盛りだくさんなスケジュールをこなしました。今回は正式のインタビューと共に、その前にちょっとだけお目に掛かる機会があったため、両方の印象や発言を構成して、まとめてみることにします。


実際に会ってみると、とても物静かな、しかしながらしっかりと自分らしさを持っている印象を受けるリテーシュ・バトラ監督。作品からもわかるように、食べることにも興味津々で、ある席では出てきた居酒屋風日本料理のすべてに挑戦していました。そういう冒険心にも富んだ、柔軟な精神の持ち主でもあるようです。ですが、1979年生まれの彼が作った『めぐり逢わせのお弁当』には、どちらかというと古風なムンバイの風景と、古風な主人公たちが登場します。そこにはどうやら、リテーシュ・バトラ監督自身のノスタルジアも作用しているようです。

 

まず、主人公サージャン(イルファーン・カーン)のオフィスが、まるで1980・90年代のオフィスのように雑然としているのに驚かされます。あれはセットなのでしょうか?

「サージャンのオフィスはコンピュータもない古めかしいオフィスですが、実はあれは実在する、政府の保険部門のオフィスなんです。少し書類の数を増やしてもらいましたが、あとはそのままです。インドは過去のものと現在とが混在しているんですよ」 

”サージャン(愛しい人)”という名前にも、やはり少し古い世代のテイストが反映されているようです。

「キリスト教徒がファーストネームにヒンドゥー教徒の名前を付ける、というのは、僕の父親世代の頃にはよくありました。それも、普通のヒンドゥー教徒なら付けないような、ちょっと変わった名前を選ぶんです。確かに、映画『サージャン 愛しい人』(1991)はヒットしたし、曲も有名ですが、それを使おうと思いついたのは、主人公の名前を決めたあとでした」

映画の中ではサージャンが、妻が好きだったテレビドラマ「これが人生(Ye Jo Hai Zindagi)」(1984/上写真はベータ版ビデオ)をビデオで見るシーンがあります。

「あのシットコム・ドラマも、小さい頃にずっと見ていたものです。当時のビデオデッキはフロントローディングではなく、テープを入れるところがガチャッと上にあがる、という方式でした。ですから映画でも、フロントローディングのビデオデッキはどうもしっくりこなくて、あのビデオデッキを小道具係にわざわざ捜してきてもらいました。古いので、テープを出し入れするたびに壊れないかと、小道具係がヒヤヒヤしていました。他には、「私たち(Hum Log)」(1984)というようなドラマも懐かしいですね」

 (C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

イルファーン・カーンのキャスティングは前から頭にあったようですが、撮影ではどうだったのでしょう。

「彼に当て書きしたようなキャラクターですからね、引き受けてもらえてホッとしました。信頼してもらっている、と責任を感じましたし、彼が出演してくれるというだけで出資も見込めます。
イルファーン・カーンはサージャンの役を演じるにあたって、幼い頃一緒に住んでいたおじさんを思い出したと言っていました。そのおじさんがよく着ていたワイシャツや、使っていたカバンなどを提案してくれ、映画の中で使っています」

 

 (C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

ヒロインであるイラ(ニムラト・カウル)の服装も、今どきの若い女性にしては地味すぎます。

「あれも、古風な女性というのを演出するためです。イラのキャスティングは大変で、ずいぶん難航しました。
イラという女性は、一人でアパートにいる時間がすごく長いのです。それを見た観客に、彼女と寄り添って時間を過ごしたい、と思わせないといけないのですが、ひとりぼっちでコンクリートの箱の中、というとまるで囚人のようなイメージになってしまう。イラは、囚われた被害者、と観客の目に映るのではなく、彼女が一歩踏み出す時に、やっぱり、と感じさせるような何かを持っていないといけない。そういうことが表現できる人を捜すのが大変でした」

 

イラのパートはサージャンのパートとはまったく別に撮ったのだそうですが、ロケ場所となったマンションでもちょっとした苦労があったのだとか。

「あのアパートのオーナーは、グジャラート州出身のヴェジタリアンの人でした。住人もすべてヴェジタリアンなので、撮影には貸すけれど、肉や魚は絶対に調理してはいけない、と言われたのです。そのため、あのアパートのシーンでの料理は、すべてヴェジタリアンの料理です。私を始めとして、撮影のスタッフも全員ヴェジタリアンにならざるを得ず、2週間の間毎日ヴェジタリアン料理を食べていました」

 

料理と言えば、もう1人の主人公とも言えるサージャンの後任アスラム・シャイク(ナワーズッディーン・シッディーキー/下写真左)は、少々変なキャラクターです。帰宅後、妻のために料理を作るというので、通勤電車の中で野菜を刻んだりするのです。

「電車の中で野菜を刻んでいる人はよく見かけますよ。主に女性ですけどね。通勤時間が長いので、1時間半とか2時間かかるわけです。家に帰ってすぐ料理に取りかかれるよう、そうやって野菜を刻んでいる人を私も見かけたことがあります。
シャイクのキャラクターで面白いのは、妻が料理が下手で、シャイク自身が料理をしている、しかし腕前はたいしてよくない、というところですね。反対にイラの方はとても料理が上手なわけで、たまたまサージャンの人生にこの2人の料理に関わるキャラクターが現れる、というのは面白いな、と思いながら脚本を書いていました」

 

 (C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

そのシャイクにナワーズッディーン・シッディーキーを選んだのはどうしてでしょう? ひょっとして、イルファーン・カーンと彼が共演したアミト・クマール監督作品『バイパス(The Bypass)』(2003)を見てのキャスティングでしょうか?

「いいえ、違います。『バイパス』の話は他の人からも聞かれましたが、私がナワーズッディーン・シッディーキーを選んだのは『ピープリー村より(ライブ放送)(Peepli(Live))』(2010)を見たからです。コメディで知られている俳優ではないのですが、ユーモラスな役もできる人だと確信しました。そして、コメディだけではない、深さや切なさも表現できる人だと思い、そういった役柄を演じるのを見てみたいと思ったのです。ですから、シャイク役もほぼ当て書きでした」

 

お弁当配達人、ダッバーワーラーもノスタルジーを感じさせる職業ですね。

「こういう大規模なお弁当配達システムはムンバイだけですが、インドのどの地域でも、お弁当を出前する、というシステムはあると思います。
ムンバイのダッバーワーラーたちは、郊外に約5,000人がコミュニティを作って暮らしています。125年もの間続いているシステムですが、月収は8.000ルピー(約14,000円)ぐらい、それにきつい肉体労働でもあるので、彼ら自身は子供たちに跡を継がせたくない、と思っている人が多いようです。
朝の集荷と配達は時間に追われ、息つく暇もありません。その代わり、きつい労働が終わった帰途の電車の中ではリラックスするのか、空のお弁当箱の脇で映画の中に見られるような宗教歌をみんなで歌います。今回映画の中で使ったのは、彼らが好んで歌う歌です」


映画の中で何度か流れる歌は、大阪大学でヒンディー語を教えている小磯千尋先生に教えてもらったところによると、「♪ ニャノーバー・マウリー、ニャノーバー・マウリー、トゥカーラーム ♪」と繰り返しているそうで、これは「ニャーネーシュヴァルは母も同然とトゥカーラームは申します」というような意味だとか。ダッバーワーラーたちはヒンドゥー教徒のワールカリー派で、ワールカリー派(またはヴァールカリー派)に関しては、小磯先生の論文や、金沢大学の井田克往先生の論文に説明が出ています。トゥカーラームの生涯は映画にもなっていて、『聖人トゥカーラーム(Sant Tukaram)』(1936/下写真)はマラーティー語映画の名作です。

 

National Film Archive of India

彼らが運ぶお弁当箱の中に手紙を潜ませる、というのも、メールやSMS、SNSの時代には古風なやり方ですね。

「ダッバーワーラーの人たちは正直者だ、という定評があります。ですからかつては、お弁当の中に現金を入れて届けてもらったりもしていました。また、朝ケンカをした奥さんに対し、映画のチケットを空のお弁当の中に忍ばせておく、ということもやったりとかね。それを知っていたので、今回手紙を入れてみようと思ったわけです。
実はこの作品は、うまくいっていない結婚をおいしいお料理によって修復しようと考える女性の話、というのを最初に思いついたのです。そして、結果的に修復するのは自分の結婚ではなく、他人の人生になる、ということを考えていたらサージャンのキャラクターが生まれ、サージャンからまたシャイクのキャラクターが生まれました。どのキャラクターもノスタルジアを感じさせるキャラクターなので、イラとサージャンが連絡を取り合うとすれば手紙だろう、ということになりました」

 

それにしても、とても緻密な脚本で、細部にまで神経が行き届いています。どんな背景から、こういう上質な脚本が生まれたのでしょう。

「小さい時から物語を語る、というのが好きだったんです。映画監督になる、なんていうことは全然考えていなかったんですが、とにかくいっぱい物語を作っていました。それで、学校新聞や雑誌に寄稿していたんです。
大学時代には演劇の脚本を書いたこともありましたが、その後20代半ばで映画学校に入るにあたって、短編映画の脚本を書かなくてはいけなくなって。それで取り組んでみたら、脚本という形態にすっかり惚れ込んでしまいました。僕の場合、脚本の段階で演出とかを細かく書き込んでしまうのです。ですから、これを自分以外の人に監督してほしくないな、と思い、自分で監督するようになりました」

 

これまで公開された作品とは一味違う、とても繊細なインド映画『めぐり逢わせのお弁当』。さらに詳しい監督インタビューは、一緒にインタビューをさせてもらった「アジアン・クロッシング」のサイトに来週早々掲載される予定です。

いよいよ公開まであと1週間となった『めぐり逢わせのお弁当』。公式サイト公式FBをご参照の上、ぜひ足をお運び下さいね。

<追伸>夏目深雪さんによる、もっと深いリテーシュ・バトラ監督インタビューがこちらに。こちらもぜひご覧下さい!

 


『バードシャー テルグの皇帝』見参まであと1週間!!

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『バードシャー テルグの皇帝』、いよいよ8月9日(土)から公開です。以前ちょこっとご紹介した時のこちらの記事もご参照いただければと思いますが、あらためて正式にご紹介しておきましょう。まずは基本データをどうぞ。

 

『バードシャー テルグの皇帝』 公式サイト 

(2013/インド/テルグ語/164分/原題:Baadshah) 
  監督:シュリーヌ・ヴァイトラ
  主演:NTRジュニア、カージャル・アグルワール、ムケーシュ・リシ、スハーシニ・マニラトナム、アディティヤ、チャンドラ・モーハン、ケリー・ドルジー、アーシシュ・ヴィデャールティー、ナブディープ
  提供:マクザム、アジア映画社、アジアヴォックス
    配給:太秦
  宣伝協力:オムロ

※8月9日(土)シネマート新宿、ほか全国順次公開

オープニングタイトルがまずすごいです。「NTRジュニアは映画界の宝石」という意味でしょうか。これは見てのお楽しみ。

映画の冒頭、インド国内の爆破テロ事件などが取り上げられ、その背後にいるのがアジアをまたにかけたインド・マフィアのボス、サードゥ・バーイ(ケリー・ドルジー)である、というナレーション(マヘーシュ・バーブー)が入ります。そしていよいよ物語がスタートするのですが、最初の舞台は香港。ええ、香港です。香港と書いてあるし(笑)、香港の地下鉄のマークもでかでかと建物に付いていますから、香港なんです(笑)。そこに囚われているのはバードシャー(NTRジュニア)。彼の父ダンラージ(ムケーシュ・リシ)がサードゥ・バーイの仲間クレイジー・ロバート(アーシシュ・ヴィデャールティー)に捉えられたのを助けようと乗り込んできたのですが、反対に囚われてしまったのです。優雅にバイオリンを弾くロバートは、何かというと芝居がかった仕草をする男。そのロバートがバードシャーの父を殺そうとした時、バードシャーのパワーが爆発! 一味をボコボコにやっつけて、バードシャーは父と共に脱出します。悔しそうに見送るロバート(下写真中央)。


続いて舞台はイタリアのミラノへ。ここでソーシャル・ワーカーとして働くジャーナキ(カージャル・アグルワール)は広場でカンパ集めをしている時に、キレッキレのダンスを披露するラーマ・ラーオことバードシャーと出会います。その後風光明媚なアルプス山中でラーマ・ラーオと再会したジャーナキは、彼が自殺志向者であると勘違いして大騒ぎ。あれやこれやのうちに、ジャーナキはラーマ・ラーオを意識するようになっていきます。しかし、ジャーナキにはインドに、婚約者である警部アーディ(ナブディープ)がいました。ジャーナキの一族は警官が多く、父シンハ(ナーサル)は州の警察長官だったのでした。

バードシャーの父ダンラージはサードゥ・バーイの手下として、マカオでカジノを経営していました。その父と共に、香港のマフィアを次々と倒していくバードシャー。(この辺り、後ろの景色はタイなので、ちょっとわけがわからなくなってますが、カッコよくバードシャーが登場し、敵がやっつけられればいいのです。モウマンタイ、無問題)

やがて、結婚のためにインドに戻ったジャーナキと一緒に、ラーマ・ラーオも結婚コンサルタントという触れ込みでインドに戻ります。母(スハーシニ・マニラトナム)とも再会したラーマ・ラーオは、今度はジャーナキの一族のあれこれに巻き込まれます。ジャーナキのたくさんいる叔父や叔母にも振り回されながら、ラーマ・ラーオは叔父の一人パドマナーバ(ブラフマーナンダム)を利用して、うまく自分の目的を果たそうとします。実は、ジャーナキの婚約者アーディはサードゥ・バーイと結託する悪徳警官だったのです。バードシャーとサードゥ・バーイとの、最後の戦いが迫っていました....。


とにかく、何でもアリの作品です。それも、どちらかというと闇鍋状態(笑)。アクションとコメディを律儀に(!)交互に入れ込み、その合間に見応えのあるダンスシーンや映画ネタパロディも山ほど盛り込み、お色気シーンも抜かりなく差し込み....と、1本の映画にしておくのが惜しいぐらいのサービス精神大盤振る舞いです。ですので、ストーリーが途中で「?」となることもしばしば。いいのです、その時、その時を楽しむのが、こういうスター映画を見るコツです。

ジュニアNTRのスターオーラはすごいものがあり、演出もそれを全開させるべくがんばっているのですが、意外に好感度大なのがコメディ・シーン。この人、いい人路線のほんわかコメディで売ってもいいのでは、と惹きつけられました。


映画ネタは、テルグ語映画を知る人なら涙チョチョギレもののNTRのものから、警官ネタで『ダバング 大胆不敵』も登場するなど、こちらもサービス精神旺盛すぎる結果となっています。ジュニアNTRの祖父である、NTRことN(ナンダムリ).T(タラーカ).ラーマ・ラーオ(1923-1996)は映画の最初にも写真が出てきますが、こんな方でした(下左)。1986年、ハイダラーバードで開催されたインド国際映画祭でのスナップです(Photo by Hitoshi Motoyoshi)。隣に、ジュニアの写真を並べておきましょう。祖父と孫、似てるでしょうか?


Periploさんに教えて頂いたのですが、ジャーナキとアーディの結婚を祝うシーンで出てくる様々なパフォーマンスは、最初のジャーナキの父のもの(これはカマラハーサン主演『サーガラ・サンガマム』から)を除いて、奥様がたが踊るシーンはNTRの映画からだとか。お祖父ちゃんの代わりに、ジュニアNTRが踊っている、というわけですね。元ネタはこちらとか、こちらとか、こちらとからしいです。(Periploさん、ありがとうございました!)うーん、これは、ご主人連中がアセるはずですね....。

Photo by R.T. Chawla

ついでですが、脇役のムケーシュ・リシ(上左)とアーシシュ・ヴィデャールティー(同右)の昔の顔もご紹介。15年前ぐらに、盛んにボリウッド映画に出ていた当時のものです。南インド映画では、ヒロインにカージャル・アグルワールのように北インド出身者がよく起用されるのですが、テルグ語映画では悪役も北インド出身、となるところが面白いところです。上記二人の他、ケリー・ドルジーもそうです。ギャラがとってもいいそうで、テルグ語映画界が潤っているのがわかりますね。なお、アーシシュ・ヴィデャールティーは、『バルフィ!人生に唄えば』にもジルミルの父親役で出演しています。

最後に、テルグ語映画2本のパンフレットもご紹介しましょう。


『ダバング 大胆不敵』と同じく横長パンフです。こちらもなかなか素敵なデザインですねー。中身も充実していて、テルグ語映画に詳しい山田桂子先生の解説も載っています。ご鑑賞のお供にぜひお求め下さい。700円です。

暑さがまだまだ続くようなので、よけいに熱くなるテルグ語映画を見て、地上の暑さを吹っ飛ばして下さいね。皆様、よい夏休みをお過ごし下さい〜。

 

アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014年招待作品ラインアップ

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アジアフォーカス・福岡国際映画祭が今年もやって来ます。今年の日程は、9月12日(金)〜21日(日)。公式サイトには少し前から作品名がアップされ、映像も一部見ることができていましたが、本日プレス情報をいろいろいただいたので、現時点でわかる限りの情報と共にアップします。なお、監督&主演はこちらで調べたものなので、間違いや表記違いがあるかも知れません。もう少ししたら公式サイトが整備されると思いますので、そちらでご確認下さいね。

アジアフォーカス・福岡国際映画祭 2014 公式招待作品一覧

『私は彼ではない』 I'm not him
 2013年/トルコ/ギリシャ/フランス
 監督:Tayfun Pirselimoglu
 主演:Erean Kesal, Maryam Zaree

 

『兄弟』 Brother
 2013年/フランス/グルジア

 

『予兆の森で』 Fish & Cat
 2013年/イラン
 監督:Shahran Mokri

 

『絵の中の池』 The Painting Pool/Hoze Naghashi
 2013年/イラン
 監督:Maziar Miri
 主演:Shahab Hosseini、Negar Javaherian

 

『ひとり』 Little Brother
 2013年/カザフスタン
 監督:Seric Aprymov
 主演:Almat Galym、Alisher Aprymov

 

『シッダルタ』 Siddharth
 2013年/インド/カナダ
 監督:リチー・メーヘター
 主演:ラージェーシュ・タイラング、タニシュター・チャタルジー

<ちょっとひとこと>ニューデリー南部でチャック修理屋として町を流して歩くマヘンダル。12才の息子シッダルタをルディヤーナーの工場に短期の労働に行かせ、ディワーリー(秋祭り)の日に戻るのを待ったが、シッダルタは帰宅しない。やがていろんな事実が明らかになっていき、マヘンダルと妻は不安な日々を過ごすことになる....。リアルなタッチでインドの現実を描く社会派作品。  

『タイムライン』 Timeline
 2014年/タイ
 監督:ノンシー・ニミブット
 主演:チラーユ・タンシースック、チャリンポーン・チュンキアット、ピヤティダー・ウォラムシック、ノパチャイ・チャイナーン

 

『ジャングル・スクール』 The Jungle School/Sokola Rimba
 2013年/インドネシア
 監督:リリ・リザ
 主演:Prisia Nasution

『サピ』 Possession
 2013年/フィリピン
 監督:ブリランテ・メンドーサ
 主演:Ruby Ruiz、Baron Geisler

<ちょっとひとこと>スチールがうまくアップできず、ポスターを入れました。これからもわかるように、テレビ局が舞台となっている作品です。やらせや裏取引、そして「悪魔つき」の取材でのトラブルなど、醜悪なマスコミの裏面が描かれていきます。『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』(2009)、『ばあさん』(2009)、『囚われ人』(2012)などでお馴染みの、ブリランテ・メンドーサ監督の力作です。

『ロマンス狂想曲』 Apolitical Romance/對面的女孩殺過來
 2013年/台湾
 監督:謝駿毅
 主演:張書豪、黄[王路]

<当ブログ記事2013.8.24より>
タイトルの元ネタは、リッチー・レンが歌って10数年前にヒットした「對面的女孩看過來」ですね。これは、なかなか面白かったです。
台北の28歳の公務員(張書豪)は、上司に提出する企画書をまとめるに際し、中国大陸の人間との交流が不可欠と言われて、台北の食堂で知り合った中国人の旅行者の女の子(黄[王路])を家に連れ帰ることに。彼女は祖母に頼まれて、祖母のかつての恋人を捜しに台湾にやってきたのでした。こうして、政治的背景も違えば性格も違う2人が、人捜しを始めるのですが...。中国と台湾の違う点などで大いに笑わせてくれ、家族関係でホロリとさせるなど、上手な映画で引き込まれました。豪快な中国大陸のお姉ちゃんが面白いキャラで、続編が見たくなる映画でした。

『ブラインド・マッサージ』 Blind Massage/推拿
 2014年/中国/フランス
 監督:婁[火華](ロウ・イエ)
 主演:郭暁冬、秦昊

 

『山猪温泉』 The Boar King
 2014年/台湾
 監督:郭珍弟
 主演:陸奕静、蔡振南、太保、呉念真

 

『慶州』 Gyeongiu
 2014年/韓国
 監督:チャン・リュル
 主演:パク・ヘイル、シン・ミナ、キム・テフン、シン・ソユル

 

<ちょっとひとこと>こちらもスチールがなかったので、ポスターを入れました。

『神の眼の下に』 Godʼ s Eye View
 2013年/韓国/カンボジア 

『福福荘の福ちゃん』 Fuku-chan of FukuFuku Flats
 2014年/日本
 監督:藤田容介
 主演:大島美幸、水川あさみ、荒川良々

本年も力作、傑作揃いです。今年は、どんなゲストが来るでしょうね。9月は福岡でアジア映画三昧しましょう!

 

韓国映画も熱い!<1>『マルティニークからの祈り』

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以前にもお伝えしましたが、この夏の終わりから秋にかけて、韓国映画が続々と公開されます。今日はその中から、チョン・ドヨンの熱演が光る異色作品『マルティニークからの祈り』をご紹介したいと思います。では、まずは基本データをどうぞ。


『マルティニークからの祈り』 公式サイト

 2013年/韓国映画/カラー/韓国語・フランス語・英語/131分
 監督:パン・ウンジン
 出演:チョン・ドヨン、コ・ス
 配給:CJ Entertainment Japan
 宣伝:樂舎

※8月29日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー

©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

物語はソウルから始まります。小さな自動車整備会社を始め、共働きでがんばるジョンベ(コ・ス)とジョンヨン(チョン・ドヨン)夫妻。幼い娘ヘリン(カン・ジウ)もいて、それなりに幸せな生活でした。夫ジョンベは人が良くて少々頼りないため、友人や後輩に何か頼まれるとイヤとは言えない性格なのですが、ある日それが裏目に出る事件が起きてしまいます。連帯保証人になっていた友人が6億ウォン(約6000万円)の負債を抱えて自殺してしまい、ジョンベにも2億ウォンの返済義務が生じることになってしまったのです。住んでいた家を引き払い、狭い部屋に引っ越して仕事を探し、何とか返済しようとしますが、一家は生活費にさえ困窮する毎日でした。

そんな時、ジョンベの後輩ムンドがおいしい話を持ってきます。南米のスリナムで採れる金の原石をフランスまで運んでくれれば、高額の謝礼が手に入る、というのです。「万一バレても、罰金を払えば問題ないから」ジョンベは乗り気になりますが、その運び屋は女性にしかできない、とのこと。ジョンヨンを危険な目に遭わせたくないジョンベでしたが、ジョンヨンは夫の気持ちを考えて、志願してフランスへと向かいます。

ところが、フランスのオルリー空港で、フランス語はもちろん英語もろくに話せず、おどおどした態度のジョンヨンは怪しまれてしまいます。さらに、ジョンヨンの荷物に麻薬犬が反応。別室に連れて行かれたジョンヨンが見せられたのは、スーツケースに詰まったコカインでした。ジョンヨンは即刻逮捕され、韓国語でしか抗弁できない彼女はそのまま拘束され続けます。そして収監3ヶ月後には、フランスの海外県であるマルティニークの刑務所へと移送。そこでは、さらなる苦しみが彼女を待っていました。

©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

一方、ソウルのジョンベはジョンヨンの逮捕を聞き、また彼女と一緒にいたムンドのガールフレンドは国外追放されたことを耳にし、怒りに燃えます。警察に乗り込んでそのガールフレンドと面会したジョンベは、ムンドが違法なネズミ講で指名手配中だったことを教えられ絶句。ムンドの証言さえあれば、ジョンヨンは何も知らずに利用されたことが証明できると、ジョンベは逃亡中のムンドを探し始めます。さらに、ジョンヨンの救済を求めて外務省にも掛け合いますが、まったく相手にされません。フランスの韓国大使館も、ジョンヨンの事件は知っていたものの、「祖国に迷惑を掛ける犯罪者」と何もしませんでした。

マルティニークとソウルで焦燥の日々を過ごすジョンヨンとジョンベ。彼らに一筋の光が見え始めたのは、ジョンベの後輩がネットにこの事件を投稿し、ネットユーザーたちが反応したため、テレビ局が取材に動き始めた時でした。やがて、テレビ局取材班と共にマルティニークに行ったジョンベは、やっとのことでジョンヨンと再会します....。

©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

マルティニーク、と聞いて、ああ、あそこ、と場所がわかる日本人は少ないでしょう。マルティニークはカリブ海に浮かぶ島で、フランス領、というか、フランスの海外県となっている所です。カリブ海ではキューバ、ジャマイカ、そしてハイチとドミニカ共和国がある島やプエルトリコが知られていますが、これら西側の島が大アンティール諸島と呼ばれるのに対し、東側の小さな島々は小アンティール諸島と呼ばれます。その小アンティール諸島の真ん中あたり、ドミニカ国(ドミニカ共和国とは別)の南にあるのがマルティニーク島なのです。さらに詳しくは、こちらのウィキをどうぞ。

最初、この映画の話を聞いた時は、なぜフランス本土で犯した犯罪なのにマルティニークの刑務所に収監されるのだろう、と思ったのですが、フランス国内の女子刑務所がいっぱいだった、とかそういう理由だったのでしょうか。実はこのストーリーは実話に即していて、2004年10月に韓国人主婦がオルリー空港で麻薬所持で逮捕され、その後マルティニークの刑務所に入れられて、結局765日後に釈放される、という事件があったのでした。

その間、フランスの韓国大使館や韓国外務省は何もせず、本作の中で描かれているように、彼女の釈放を阻害するようなことばかりしたのだとか。前述したテレビ局が夫と共に取材に行き、2006年に「追跡60分」という番組にまとめて放送したのがきっかけで社会問題化し、やっと彼女の釈放へとつながっていったとのことです。

©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

その主人公の姿を見事に再現したのがチョン・ドヨン。韓国のどこにでもいそうな主婦が苛酷な環境に投げ込まれ、それでも生き抜いていく姿を迫真の演技で見せてくれます。また、夫役のコ・スも、頼りなさを全身に漂わせるダメ夫から、妻への愛を支えにたくましくなり、政治の理不尽さに怒るまでになる男の姿をこちらも誠実に演じてくれます。事実という基盤があったにせよ、主演の2人と周囲の俳優たちの演技で、厚みのあるドラマとなりました。

マルティニーク・ロケではありませんが、ドミニカ共和国でのロケが精彩を放っています。監督は女優出身であり、これまで『オーロラ姫』(2005)と『容疑者X 天才数学者のアリバイ』(2012)を監督したパン・ウンジン。骨太の演出で、最後まで観客を惹きつけて放しません。

 

©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

海外旅行に出る前には、利用する航空会社から必ず、 

次のことをお確かめください:
1.自分の荷物である
2.自分自身で荷造りをした
3.誰かの代わりに、依頼された物を持ち運んでいない
4.自分で荷造りを終えてから、誰もその荷物を空けて中に物を入れたりしていない

といった注意がやって来ます。いつも何気なく読み流しているのですが、それはこんな事件が背景にあったからこそ。知らないうちに犯罪に加担することになる怖さも、十分に教えてくれた力作でした。

 


『めぐり逢わせのお弁当』『バルフィ!人生に唄えば』&『きっと、うまくいく』がテレビで勢揃い?

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インド映画関係者の方から、「王様のブランチ」でのインド映画紹介のお知らせが届きました。

8月9日(土)「王様のブランチ」映画コーナー特集

10:30a.m.〜11:00a.m.ごろ(生放送なので時間がずれることもあります。また、当日の都合次第で、放送されない場合もあります。その点悪しからずご了承下さい)

『めぐり逢わせのお弁当』『バルフィ!人生に唄えば』の紹介。

『バルフィ!人生に唄えば』ランビール・カプール(右)とプリヤンカー・チョープラー(左)

(C)UTV Software Communications Ltd.

『めぐり逢わせのお弁当』のイルファーン・カーン

(C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

その時に、『きっと、うまくいく』も参考作品として登場するようです。

『きっと、うまくいく』の左から、シャルマン・ジョーシー、アーミル・カーン、R.マーダヴァン

ⓒVinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

どんな特集になるのでしょうね。楽しみです〜。お見逃しなく!



『めぐり逢わせのお弁当』<その3>シャイク

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『めぐり逢わせのお弁当』、いよいよ明日から公開です。これまでに、主人公の2人、サージャン(イルファーン・カーン)とイラ(ニムラト・カウル)をご紹介してきましたが、今日はサブ主人公とでも言うべき人物、アスラム・シャイク(ナワーズッディーン・シッディーキー)の登場です。字幕に倣って、シャイクと呼ぶことにしましょう。


シャイクは名前からもわかるように、ムスリム、つまりイスラーム教徒です。ただ、彼は自分のことをサージャンに「孤児だ」と紹介しています。そして、「この名前も自分でつけた」とも。そこにどういう事情があったのでしょうか? 自分で名前をつける、ということは、物心ついてから、ということになります。それまでは仮の名前があったのでしょうか....という風に、よくよく考えるとかなり謎の人物です。

とはいえ、キャラクターとしては典型的なB型のインド人になっています。まず、サージャンの後任ということで、責任者のシュロフによって引き合わされた時、「退職のご感想はいかがですか? 職場の同僚の皆さんはさぞかし惜しんでらっしゃるでしょうね」とか、よく回る舌でおべんちゃらを言います。バザールにわんさかいる、口のうまい商売人、といった感じです。それに対し、サージャンの方は適当に返事をしたものの、「コイツ、俺とは合わんな」と思ったことは明白で、徹底的にシャイクを避ける作戦に出ます。

初対面の日は、仕事の引き継ぎに関して、「じゃ、4時45分に来てくれ」とシャイクに言ったサージャンでしたが、4時45分きっかりにシャイクがデスクに来なかったので、さっさと帰ってしまいます。シャイクはその時サージャンの席の近くで別の人と話していて、サージャンが声を掛けさえすればすぐに飛んで来たと思うのですが、自分の方を見ていなかったのをこれ幸いとサージャンは退出してしまうのです。人が悪いですね、サージャン。サージャンが乗る帰りの電車の中では、物乞いの子供たちが『インドのラージャー(Raja Hindustani)』(1996)の歌を歌っており、その歌詞が「他郷の人よ、行かないで、私を置いて行かないで、約束を守ってちょうだい」というのですから、シャイクの代弁をしているようで思わず笑ってしまいます。


それでもシャイクはあの手この手で辛抱強くサージャンに働きかけます。ところが、このシャイクとのやり取りの一方で、サージャンはお弁当を通じて次第にイラとも距離を縮めていたところだったため、シャイク無視作戦は続いていくのです。そしてついに、シャイクがキレます。このキレ方がちょっとだだっ子みたいでとてもほほえましいのですが、その時の捨てぜりふがこれでした。

「僕は孤児でした。名前も自分でつけました。これまで何でも独学でやってきたし、仕事だって独学で憶えますよ。Thank you very much, sir」

そして、ここからサージャンとシャイクの関係が変わっていくのですが、それに寄与したのが、イラのお弁当と手紙だった、というわけです。このあたりの人の心の機微を見事に描きだした名優3人の演技、じっくりとお楽しみ下さい。

この後もシャイクは、いろんなインド的小人物ぶりを発揮して見せてくれます。嘘はつくし、ちゃっかりしてるし、すぐ格言めいたことを言うし。でも、シャイクが「母がよく言っていた」(「君は孤児では?」とツッこまれます)という、「時には間違った電車でも、正しい目的地に運んでくれる(Kabhi-kabhi galat train bhi sahi jagah pahunch jati)」は、サージャンに感銘を与えます。また、シャイクと愛する妻メヘルニサの姿は、サージャンを一歩前に進ませる刺激ともなります。イラのお弁当が作用して、サージャンのシャイクに対する態度を変えさせたように、シャイクの存在もまた、触媒のように作用してサージャンのイラに対する気持ちを変えていくのです。本当に上手な脚本ですね。


シャイク役のナワーズッディーン・シッディーキーは今年ちょうど40歳。シャイクの役はもうちょっと若い設定にしてあるような感じを受けたので、どうして彼を起用したのかずっと不思議でした。監督インタビューの時に、リテーシュ・バトラ監督が『ピープリー村より(生中継)(Peepli[Live])』(アジクロのアジコさんの訳をいただきました)(2010)を見てナワーズッディーン・シッディーキーの起用を決めた、と聞いて納得。あの作品で彼が演じた地方のジャーナリスト青年は、30歳そこそこ、という感じでとても若々しかったのです。

ナワーズッディーン・シッディーキーが人々の印象に残ったのは、まずは大阪アジアン映画祭でも上映された『デーウD』(2009)から。この歌のシーンです。エルヴィスみたいな格好でのエグいパフォーマンス。「誰だ、これ?」という感じでした。そして、『ピープリー村より(生中継)』に続き、彼を一躍スターに押し上げたのが、アジアフォーカス・福岡国際映画祭でも上映された『カハーニー/物語』(2012)。強面のカーン警視はハマり役と言ってもよく、ヒロインのヴィディヤー・バーランと渡り合うシーンはすごい迫力でした。

続いて、これもアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『血の抗争』(2012)の1・2部では、2部の主役を演じるまでに。アーミル・カーンと共演した『捜査(Talaash)』(2012)の演技も評価されましたし、主役を演じたオムニバス映画『ボンベイ・トーキーズ(Bombay Talkies)』(2013)と『モンスーン銃撃戦(Monsoon Shootout)』(2013)は共にカンヌ国際映画祭に出品と、大スターの仲間入りをしてしまったナワーズッディーン・シッディーキー。現在インドで公開中&大ヒット街道ばく進中のサルマーン・カーン主演作『キック(Kick)』(2014)でも、重要な役を演じているようです。

今後は日本でも、映画祭での上映以外にもナワーズッディーン・シッディーキーの出演作がいろいろ見られるかも知れません。『めぐり逢わせのお弁当』で、この顔とお馴染みになっておいて下さいね。では、明日8月9日(土)は映画館へ! 公式サイト公式FBもご参照の上、極上のおいしさを醸し出す本作をゆっくりとお楽しみ下さい。

 

 

バンコクで『キック』!

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バンコクに来ています。バンコクは日本よりずっと涼しくて、夕方などは爽やかなぐらい。1日中冷房の中にいた身には、外の少しの暑さがかえってありがたいです。


冷房の中にいた、ということはつまり、昼間はずっとシネコンで映画を見ていたのでした。ターミナル21というショッピングモールにあるSFシネマシティ系のシネコン(左)と、エカマイのメジャー・シネプレックス系シネコン(右)で見たのですが、1本はハリウッド映画『嵐の中へ(Into The Storm)』(2014)だったので、こちらのご紹介はパス。オクラホマ州を襲うトルネード(竜巻)を描いたもので、CGがすごい迫力でした。それが時間つぶしで、お目当ては15時35分から1日1回だけ上映しているサルマーン・カーン主演作『キック(Kick)』。インドでは7月25日に公開され、現在もヒット中で、Wikiによると製作費10億ルピー(約17億円)で現在の興収が全世界で35億4240万ルピーというのですから、ブロックバスター級のスーパーヒットです。


監督は、製作者として名高いサージド・ナーディヤードワーラー。プロデューサーとしてはすでに20年のキャリアがありますが、監督作品は初めてです。脚本には、サージド・ナーディヤードワーラーと共にラジャト・アローラー、キース・ゴメスという名前がクレジットされ、さらには人気作家チェータン・バガト(『きっと、うまくいく』の元ネタになった小説の著者。他にも彼の著作はたくさん映画化されています)の名前も入っています。その上予告編を見ると、『チェイス!』(2013)にも、そしてリティク・ローシャン主演の仮面のヒーローもの『クリシュ3』(2013)にも似ているような...。これは期待が高まります。

調べてみると、『キック』は2009年のテルグ語映画『キック』のリメイクでした。テルグ語版の主演はラヴィ・テージャーと、『バルフィ!人生に唄えば』のイリヤーナー・デクルーズ。オリジナル版では最初の舞台がマレーシアのクアラルンプルになっていたりと、今回の『キック』とは少し違っているようです。


さて、今回の『キック』はポーランドのワルシャワからお話が始まります。インドの文化担当官である父(ソウラブ・シュクラー)、祖母、妹と共にワルシャワに住んでいるサーイナー(ジャクリーン・フェルナンデズ)は精神科医。父始め家族はみんな、早く結婚しろとサーイナーにうるさく言い、父はサーイナーの見合い相手までセッティングしてしまいました。その相手とは、仕事でワルシャワにやってくるデリーの刑事ヒマーンシュ(ランディープ・フダー)。空港に彼を迎えに行かされたサーイナーは、電車で市内へ移動する間に、お互いに忘れられない人物のことを語り合います。

サーイナーの忘れられない人は、デリーで出会ったデーヴィー・ラール・シン(サルマーン・カーン)でした。サーイナーは友人の結婚式のためにデリーに行ったのですが、友人は親の反対を押し切って駆け落ち婚をしようとし、それを八面六臂の活躍で成功させたのがデーヴィーだったのです。最初は変な自動車の運転手として現れたデーヴィーを、この教養のない乱暴者、という目で見ていたサーイナーでしたが、本当は彼は知識も教養もある男であることを知って驚きます。ただ、デーヴィーは常に「キック(人生の刺激)」を求めていたので、どんな職業にも満足できずすぐにやめてしまうため、常にプー太郎だったのです。父(ミトゥン・チャクラボルティー)と二人して酔っぱらうデーヴィーにあきれるサーイナーでしたが、やがて彼に惹かれていきます。でも、結局は仕事をやめてしまうデーヴィーにサーイナーは愛想を尽かし、彼と別れてワルシャワへ戻ってきたのでした。

一方、ヒマーンシュの忘れられない人物は、泥棒のデヴィル(サルマーン・カーン)。ヒマーンシュが逮捕しようとしてできなかった大泥棒です。デヴィルは大金持ちや政治家から大金を盗み出し、その場に自分のマスクを置いてくるのですが、デヴィルに狙われた人々は必ずある男と関係がありました。その男とは、内務大臣の甥で、チャリティ活動もしているシヴ(ナワーズッディーン・シッディーキー)。ヒマーンシュはデヴィルがワルシャワに現れるという情報を掴んでやってきたのですが、シヴもまた、叔父の大臣と共にワルシャワ訪問にやってきます....。

今回の『キック』はかなり楽しめました(今年初めのサルマーン・カーン主演作『ジャイ・ホー』はイマイチでしたからねー)。途中まで、デーヴィーとデヴィルが同一人物なのか、それとも別人なのか、はたまた....というサスペンスでぐぐっと引っぱってくれます。アクションシーンも見応えがあり、特にワルシャワで撮られたカーチェイスは手に汗握りました。そんなにワルシャワの街を壊していいのか、ちょっと心配になるぐらいでした。(あれ、ホントに壊してるよね??)

デリーでのアクションシーンでは、自動車の後ろ半分+オートバイという変な乗り物が大活躍。そこには『ダバング 大胆不敵』の着メロ下っ端ギャング(憶えてますか、あの面白い顔の人)と共に、”チュルブル・パンデー”も特別出演、大いに笑わせてくれます。

アクションシーン以外では、デリーのシーンはド派手に、ワルシャワのシーンは格調高く、とメリハリも効いていて楽しめるのですが、残念ながらというかやはりというか、脚本が大ざっぱすぎてだんだんと意気消沈してきます。つぎはぎだらけのようなエピソードの積み重ねやら、途中から突然シヴが現れる不自然さなど、脚本のまずさは致命的で、『チェイス!』のように緊迫感が持続する作りにはなっていません。

そして、本来なら演技のうまいランディープ・フーダーやナワーズッディーン・シッディーキーも、かなりもったいない使い方をされています。サルマーン・カーンを目立たせるように、編集段階で彼らのシーンが相当削られたのかも。

あと、『チェイス!』が連想される、という指摘はインドの記事にも出ていましたが、父親役のミトゥン・チャクラボルティーとのシーンは、アクシャイ・クマール主演の『チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ』(2009)を思い出させてしまいます。こんな風に、デジャヴ感があちこちに漂うのもちょっと残念です。


ただ、本作には大きな魅力があります。それは、ヒロインのジャクリーン・フェルナンデズ。ワルシャワのシーンでは、灰色や黒などモノトーンの服にメガネ、というストイックな姿で現れるのですが、メガネ越しのその目力にはクラクラ来てしまいます。元モデルだけあってスタイルも抜群で、デリーでのガーグラー・チョーリー姿や、ソング&ダンスシーンで黒のワンピースを脱いで赤いレースの服姿になって踊るシーンは見応え十分。ダンスもうまく、サルマーン・カーンはいいから彼女だけ見せて、と言いたくなるこんなシーンも。「金曜日の夜に(Jumme Ki Raat)」という歌ですが、本編ではもっとたっぷりとジャクリーン・フェルナンデズの踊りが見られます。

踊りと言えば、ナルギス・ファクリーが特別出演してる歌「恋人がいなかったら(Yaar Naa Mile)」もとっても魅力的。ナルギス・ファクリー、こんなにセクシーでダンスがうまかったとは! こちらです。


ジャクリーン・フェルナンデズ(上の写真はWikiより)はスリランカ出身。お父さんはスリランカ人で、お母さんがマレーシアとカナダのハーフなのだとか。ミス・スリランカに選ばれたあとモデルとなり、その後日本でもDVD化されている『アラジン 不思議なランプと魔人リングマスター』(2009)でデビュー。2011年の『殺人2(Murder 2)』では、イムラーン・ハーシュミー相手に不思議な存在感を見せてくれました。そして、『キック』でいよいよ人気女優の仲間入り、というわけです。彼女をメインにした映画を作っても面白いのでは、と思わせられるほど、魅力に溢れていました。

明日はタイ映画を2本ほど見たいと思っています。今回はあまり動き回らず、映画を見ることに専念する予定です。そうそう、タイの国歌演奏フィルムはまだ上映が続いており、全員起立も守られています。国歌演奏フィルムは映画館のチェーン毎に作られているのですが、SFの方のは国王のご病気を考慮してか、ちょっと沈んだ調子のものでした。

 

 

意外に面白かった『エンターテインメント』

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バンコクではインド映画の上映が増えている感じがします。昔、つまり1980年代、90年代は、タイ語吹き替え版のインド映画が中心街をはずれた映画館で何本か上映されていたのですが、2000年代に入るとあまり見かけなくなりました。たまに、Rama?という映画館とか、アソーク通りをずっと南に行った所にあるショッピングモールの映画館で、B級のインド映画が上映されている、といった程度になってしまったのです。

それが、昨年の『チェンナイ・エクスプレス』の中心街シネコン進出以来、様子が違ってきました。今年は、インド本国とほぼ同時公開でサルマーン・カーン主演作『キック』が上映され、インドで8月8日公開のアクシャイ・クマール主演作『エンターテインメント(Entertainment)』の公開も本日から始まりました。何だか、ボリウッド映画は本国と同時公開、という形が定着したようなのです。しかも、『キック』は英語字幕だけだったのが、『エンターテインメント』は英語とタイ語の字幕付き。パラゴンやセントラル・プラザといった中心街のシネコンではありませんが、アソーク通りからスカイトレインで3つめの駅エカマイのメジャーシネプレックスですから、便利な場所だと言えます。はてさて、タイにもインド映画ブームが再び(いや、三たび目か四たび目かも)起きているのでしょうか?

実は、『エンターテインメント』は見に行くかどうかちょっと迷いました。というのも、インド版Yahoo! Moviesの評では星が1つと2分の1(トホホ...)。『キック』が3つと2分の1だったのに、期待した結果があれかー、というわけで、2つ星に満たない作品などゴミかも...と足取りも重く見に行ったのでした。

ところが、これが爆笑につぐ爆笑の面白いコメディでした。まあ、映画評論家なら1.5星をつけるのもわかるくだらなさなのですが、セリフで笑わせ、演技で笑わせと、十分チケット代の元は取らせてもらえます。そうそう、タイの映画館は土日は大体180バーツ(約600円)なのですが、インド映画は2本とも300バーツ(約1,000円)。これで面白くなかったら暴れてやる(笑)という感じですが、今日は映画館も満員に近く、約80名の観客と共に大笑いしてきました。観客はやはり、在タイのインド人ばかりでしたが、私がジロジロ見られなかったので、タイ人も見に来ているという状況なのだと思います。


『エンタテインメント』(予告編はこちら)は、インドのムンバイからお話が始まります。登場するのは、仕事をいくつも掛け持ちしている男アキル・ローカンデー(アクシャイ・クマール)。病気の父の入院費がかさむためで、恋人のサークシー(タマンナー)ともなかなか会えません。ところが、父の病気は楽するための仮病で、しかも彼はアキルの本当の父でなかったことがわかったからさあ大変。アキルは母の遺品をいろいろ調べて、自分の父親はバンコクにいる億万長者のパンナーラール・ジョーフリー(ダリープ・ターヒル)だと突き止めます。

サークシーの父(ミトゥン・チャクラボルティー)に「娘は金持ちにしか嫁入りさせん」と言われたこともあって、アキルは親友のジュグヌー(クルシュナ)と共にバンコクへ向かおうとしますが、その時パンナーラールが死亡した、というニュースが伝えられます。バンコクに行ったアキルを待っていたのは、弁護士ハビーブッラー(ジョニー・リーヴァル)による「遺産はすべて愛犬”エンターテインメント”に遺贈された」という説明でした。おまけにその遺産を狙って、パンナーラールの親戚で悪党のカラン(プラカーシュ・ラージ)とアルジュン(ソーヌー・スード)兄弟も暗躍、ややこしいことになり始めます。アキルはバンコクにやってきたサークシーの力も借りながら、カランとアルジュンを退けようとしますが....。


まず、セリフが面白いのです、この映画。最初にアキルが通販テレビのやらせモデルやクリケットの雇われ審判などの仕事をやって、もらった報酬が少ない、と文句を言うところでは、雇い主との応酬がいちいち笑わせます。「うるさい!文句を言うとお前の尻を蹴飛ばすぞ」「蹴飛ばすなんて、あんたロバかい?」といった具合に、相手の言葉の揚げ足を取って「あんた○○かい?」がエンエン続くのです。

続いて笑わせてくれるのが、アキルの親友ジュグヌー。ものすごい映画オタクという設定で、どんなセリフも映画スターの名前を入れ込んでしゃべるのです、この男。たとえば、わかりやすく日本語に置き換えてしまうと、「出生届を見るなら、役所広司は駅の北川景子にあるから速水もこみちに行ってこい」てなぐあい。一体全編通じて何人の名前が出て来たやら。インド人の名前は一般名詞に通じるものも多い(ex.「シャクティ(力)・クマール」とか。「アーミル・カーン」は「アミール・カーン」と言い換えられて「アミール(金持ちの)」に使われていましたし、「オーム・プリー」は「プーリー(一杯の、完璧な)」で、「アビシェーク・バッチャン」は「アビー(今、すぐ)」で使われていました)ことは事実ですが、それにしても感心するような脚本というかセリフ台本でした。

インドの娯楽映画では、脚本家とは別にdialogue writer、セリフ作家がいていろいろ工夫をこらしますが、本作では監督のサージド=ファルハード兄弟自身がセリフを書いています。この2人組、監督は今回が初めてであるものの、脚本家としては2008年の『戻ってきたインチキ(Golmaal Returns)』以来数々のヒット作を書いている売れっ子で、『チェンナイ・エクスプレス(Chennai Express)』(2013)も彼らの手になるものでした。あの作品も、映画オタク魂全開の脚本でしたねー。


セリフの他に、もう一つの笑いの萌え〜!ポイントは、カランとアルジュンを演じたプラカーシュ・ラージとソーヌー・スード。『カランとアルジュン』はサルマーン・カーンとシャー・ルク・カーンが共演した1995年の作品で、日本でも映画祭上映されている生まれ変わりの復讐譚です。この映画を徹底的にパロりながら、大物俳優2人がアホをやるのですが、それがとってもカッコイイのです。特に、ソーヌー・スードのファッションの数々は、まるでモード雑誌から抜け出したよう。粋なベストをいろいろ着こなして登場し、ブーツなど小物も凝っていて、まさに目の正月です。ファンの方はお見逃しなく。

あと、予告編を見て香港映画ファンの方は「あれっ?」と思われたように、ジャッキー・チェンやら周星馳(チャウ・シンチー)やらのネタがパクられています。この手の映画も好きなんでしょうね、監督のお二人。というわけで、いろんな点で楽しめる作品でした。


あと、昨日の『キック』上映時も思ったのですが、ボリウッド映画の予告編もたくさん上映されていて、これはやはりタイでもインド映画ブームが戻ってきた、と言えるようです。上映されていた予告編は次の作品です。公開予定日はインド本国での日付になっています。

『シンガム再見参(Shingham Returns)』(8月15日公開/ローヒト・シェーッティー監督/アジャイ・デーウガン、カリーナー・カプール、アモール・グプテー) 予告編


ヒット作『シンガム』(2011)の続編。元々はスーリヤ主演のタミル語映画だったのですが、すっかりアジャイ・デーウガンのマハーラーシュトラ版シンガムが定着しました。今回の悪役は、『スタンリーのお弁当箱』(2011)の監督であり、劇中でいやしんぼ先生を演じていたアモール・グプテー。こっちの方が儲かるようになるのでは、というハマリ役です。

『ラージャー・ナトワルラール(Raja Natwarlal)』(8月29日公開/クナール・デーシュムク監督/イムラーン・ハーシュミー、パレーシュ・ラワル) 予告編

詐欺師ラージャーの物語。「ナトワルラール」はアミターブ・バッチャンの昔の作品『ミスター・ナトワルラール(Mr. Natwarlal)』(1982)から?

『メアリー・コム(Mary Kom)』(9月5日公開/オムング・クマール監督/プリヤンカー・チョープラー) 予告編

実在の女性ボクサーで、マニプール州出身のメアリー・コムが主人公。ママさんボクサーでもあるそうで、プリヤンカー・チョープラーがまた挑戦的な役柄に挑んでいます。脚本の出来がよければ、ビオスコープ様いかがですか? Eros社の配給で、Viacom 18とサンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の会社の製作です。

『美しく(Khoobsurat)』(9月19日公開/シャーシャンク・ゴーシュ監督/ソーナム・カプール、ファワード・アフザル・ハーン) 予告編


パキスタン人の歌手・俳優である、ファワード・アフザル・ハーンの出演で話題を呼んでいるロマンチック・コメディ。ファワード・アフザル・ハーンはアジアフォーカス・福岡国際映画祭でも上映された『神に誓って』(2008)でイスラーム教原理主義者となっていく弟を演じた俳優です。

これからは、シンガポールと並んで、バンコクもインド映画ファンには狙い目かも知れません。ホテル代はシンガポールに比べて安いし、いいですよ〜、バンコク。

<追加>もう1本予告編で見たのを忘れていました。

『ファニーを捜して(Finding Fanny)』(9月12日公開/ホーミー・アドジャーニヤー監督/ディーピカー・パードゥコーン、アルジュン・カプール、ナスィールッディーン・シャー、ディンプル・カパーディヤー) 予告編

 

ゴアのある村に住む老人が、昔の恋人ステファニー(ファニー)を捜す旅に。それに同行する老若男女4人も加わって、珍道中が始まります。『カクテル』(2012)のホーミー・アドジャーニヤー監督の3作目で、セリフはほぼ全編英語です。 


ハリウッド映画@タイ

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タイでは以前から、ハリウッド映画が絶対的な人気を誇っています。今回はそのあたりもちょっと調べたくて、先日の『Into The Storm』に続き、今日は『The Expendables 3』を見ることにしました。日本では『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』というタイトルで、11月1日に公開される予定の作品です。見に行ったシネコンは、伊勢丹などが入っているセントラル・ワールドの中にあるSF系の映画館で、料金は200バーツ(約660円)でした。本当を言うとタイ映画を見に行ったのですが、昨日で上映が終わっていました。残念! でも他の映画館でやっているので、明日はそちらに出張ることにします。


『エクスぺ3』(以下、長いのでこれで省略)を見たあとWikiで調べたところ、この作品、ロンドンで8月4日にプレミア上映された後、全米公開は8月15日と出ています。タイ公開は全米公開よりも早い!? しかも、しっかりタイ語字幕も付いています。IMDbで調べてみると、こんな風に各国のプレミアも日がずれている上、全米公開よりも前に公開される国もいっぱいあることがわかりました。タイは、アジアでは最も早い国なのかも知れませんね。


実は私はハリウッド映画はほとんど見てなくて、ジェット・リーが出演しているというのにこの「エクスペンダブルズ」シリーズもまったく見ていません。予告編はチェックしていたりするため、大体の出演者や筋はわかるのですが、『エクスぺ3』はこのシリーズで最も豪華な面子による作品ではないかと思います。最初何の予備知識もなく見たので、「あれ? ハリソン・フォードに似た人が。でも、老人すぎるし、きっとよく似た俳優に違いない」「この顔は、アントニオ・バンデラス?? こんな軽い性格の役をする人だっけ?」「こ、この悪役の顔はメル・ギブソン!?」というような驚きがいっぱいありました。冒頭で登場するひげ面のソマリア人かエチオピア人と思える人も、どこかで見た顔だなあ、と思っていたら最後のクレジットでウェズリー・スナイプスとわかるなど(私の知識はその程度)、決して「無駄に」という修飾語は使いませんが、豪華すぎる面子の作品でした。

しかしながら、観客数は広いホールに10人ほど。今日8月11日(月)は、明日12日のシリキット王妃誕生日兼母の日と日曜日に挟まれて、タイでは休日になっており、映画館には人が溢れていたのですが、どうもタイ人のお好みには合わなかったようです。私は結構面白く、アクションシーンはもちろん、メンバーの新旧交代ドラマとかを見たんですけどねー。スタローンやシュワちゃんのミエの切り方は、ラジニやサルマーンとも通じる所があって、安心して見ていられます。

『Into The Storm』『エクスぺ3』のほか、今タイで公開中のハリウッド映画は、明日からの公開も含めると『Hercules(ヘラクレス)』『Guardians of Galaxy(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)』『Swelter』『22 Jump Street』『Ninja Turtles 5』など。アメリカで今ヒット中の作品もあります。こうしてみると、タイはハリウッド映画にとって重要なマーケットの1つと言えそうです。そうそう、今回の滞在では、中国語圏映画と韓国映画を1本も見かけませんでした。韓国映画、タイでの人気が衰えてるのかしら?


明日はシリキット王妃のお誕生日なので、ショッピングモールや大きなビルなどにはこういうお祝いコーナーができています。母の日でもあるのですが、タイでは赤いカーネーションよりも白いジャスミンの花が母性の象徴として使われるとか。


セントラル・ワールド付近の十字路は、5月の軍事クーデター事件の時、人々が長い間占拠したりした場所です。でも今は平穏が戻り、渋滞も戻ってタイの日常が続いています。

 

タイ映画は3本見ました@バンコク

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シリキット王妃のお誕生日&母の日のバンコク。三連休最終日なので、ショッピングモールなどはすごい混みようです。お母さんを中心に、家族全員で外出、という姿が目立ちます。

今日は、スクンヴィット地区の中心線となるアソーク通りをずーっと南下した、ラーマ?世通りにあるセントラル・プラザというショッピングモールに行きました。ここもメジャー・シネプレックス系の大きなシネコンがあり、9つのスクリーンでハリウッド映画を中心にいろんな作品を時間代わりで上映しています。インド映画『エンタテインメント』も上映していたのでハッと思い出したのですが、一昨日の記事に書いた、インド映画をよく上映していたシネコンはここでした。数年前は新聞の映画広告だけが頼りで、「お、○○を上映してる!」とそれを持って勇んでインド映画を見に行ったら、「今日はその映画はやっていない」とかよく言われたものでした....。


今日はここでタイ映画2本を見てきたので、先日見た1本と合わせて、3本のタイ映画をご紹介しようと思います。なお、タイ映画にはいずれも英語字幕が付きます。数年前はまだ字幕のあるなしにバラツキがありましたが、ここ2、3年はいちいち「英語字幕付きですか?」と聞かなくてもよくなりました。

3本のタイ映画は次の通りです。なお、タイトル訳や人名表記は「タイ映画ライブラリー」というサイトの、こちらこちらを参照させていただきました。

『傷あと』(原題:Phlae-Kao/監督:パンテーワノップ・テーワクン/主演:チャイヤポーン・チューリア、ダーウィカー・ホーネー、シンチャイ・プレーンパーニット(シンチャイ・ホンタイ)) 予告編


1977年にチュート・ソンシー監督、ソラポーン・チャトリ主演で作られた同名作品のリメイク。「タイ映画ライブラリー」の解説によると、それ以前にも1940年、1954年と2回映画化されているとか。1930年代のバンコク郊外バーン・カピの農村を舞台に、クワンとリアムの悲恋を描きます。クワンの父とリアムの母がもともとは恋人同士だったのに、村の有力者であるリアムの父に仲を引き裂かれて嫁にさせられた、というところが悲劇の根っことなり、互いに想い合いながら結ばれないクワンとリアムを描きます。リアムは村にやってきた金持ちの息子によってバンコクへ連れ去られ、バンコクではさらに、金持ちの夫人の亡くなった娘にそっくりというので彼女の養女にさせられて海外へ....と、これでもかこれでもかの障害が2人を阻みます。

1977年作品を見たのはもう30年ぐらい前でしたが、のびやかな農村の描写が記憶に残っています。今回の作品は時代色を出そうとカラリングなどが施してあり、そのほか演技も含めてちょっと作り物感が...。チュート・ソンシー監督は2006年に亡くなり、映画の最初にも「チュート・ソンシーに捧げる」という献辞があるものの、2014年版ならそれなりに新しい意味合いを持たせたりと、単なるリメイクを超えてほしかったのですが....。リアム役のダーウィカー・ホーネーは、秋に公開される『愛しのゴースト』でも主人公のナークを演じているほか、クワン役のチャイヤポーン・チューリアは甘いマスク+たくましい肉体で将来性◎。



『水泳選手たち』(原題:Fak-Wai-Nai-Kai-Thur/英語題名:The Swimmers/監督:ソーポン・サックダーピシット/主演:タナポップ・リーラットタカチョーン、チュターウット・パタラカムポーン、スパットサラー・タナチャート) 予告編


高校の水泳部を舞台にしたホラー映画。パースとタムは親友でもあり、ライバルでもある水泳部員。パースは、タムがつきあい始めたアイスにだんだん惹かれていき、やがて彼女と秘かに恋人同士になります。ところが、ある晩アイスは飛び込み板の一番上からプールに身を投げて自殺。アイスは妊娠していたという噂が流れ、まだ彼女と肉体関係がなかったタムは、一体誰が、と怒りに燃えます。一方、パースは新しい恋人ミントとつきあい始めますが、徐々に自分のお腹の中に胎児がいるような妄想に襲われて、水泳もできなくなっていきます....。

18禁になっているだけあって、非常にエグいシーンが何度も出てきます。ところが、私が見た時は、お子さんたちも数人ホールの中に。あるシーンでは私も目をつぶってしまったほどで、お子さんたちのトラウマにならなければいいのですが。今日も、シネコンのロビーにしつらえられた飾り物の前で、記念撮影するお子さんたちがいましたが、あなたたち、これから見るんじゃないよね? やめといた方がいいと思うぞ....。かなり趣味のよくないホラー映画でした。



『魔女の秘密』(原題:Kwam-Rub-Nang-Maan-Rai/監督:オンアート・チアムチャルーンポンクン/主演:ピーチャヤー・ワタナモントリー、ティーラデート・メーターワラーユット) 予告編


クラブで逆ナンした素敵な男性と結婚しようと、ライバルをけ落としていく女性のお話。若い女性の観客がケラケラ笑って見ているなど、反応はよかったのですが、実にくだらないストーリーで、こちらは退屈してしまいました....。

夏休みだというのに、いい作品がなかなかありませんねー、タイ映画。少し前まで『キング・ナレスワン5』を上映していたみたいなのですが、見られなくて残念。プリンス・チャトリ監督、これでラストですよね?

今回タイで見た映画中、ベストはこの作品です。毎回、SF系のシネコンで映画を見るたびに流れたCF。ツッコみどころもあるのですが、最後のコピーも秀逸です。YouTubeには「スペイン語字幕」とありますが、英語字幕が出てきますので、一度ご覧になってみて下さい。出演した赤ちゃんに主演女優賞、パパとママに助演男女優賞を献呈したい!


『バルフィ!人生に唄えば』のプリヤンカー・チョープラーのこと

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『メアリー・コム(Mary Kom)』のプリヤンカー・チョープラーの姿が脳裏から消えません。旅先ですが、『バルフィ!人生に唄えば』のジルミルちゃんのご紹介ついでに、プリヤンカー・チョープラーのことをちょっとご紹介したいと思います。

(C)UTV Software Communications Ltd.

『メアリー・コム』のお話は最後にするとして、『バルフィ!人生に唄えば』のジルミルにはすっかり欺されました。予告編をシンガポールの映画館で見た時、「これ、誰?」と全然わからなかったのです。子供の出演者だとばかり思っていて、「新人かしら?」と考えたりしていました。くるくる天パーの髪型(えー、戦前によく洋画を見ていた亡き母は”テンプルちゃん”と言っていました)や子供服デザインのスカート、白いソックスにストラップの付いた靴など、外見を見事に変えていただけではなく、その表情もしぐさも、12、3歳の女の子そのものだったのです。精神的な障害を持つ女の子、という設定も上手に表現されており、「子供ながらすごい演技力がある。将来名女優になるかも」などと思ったのでした。あとでわかって、文字通り仰天しました。

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「ジルミル(Jhilmil)」という名前もステキです。「キラキラする、輝く、閃光」といったような意味で、彼女を可愛がっていた祖父がつけたのでしょうか、音の響きもとてもいいですね。最初に聞いた時から、「チルチル・ミチル」の名前が二重写しになる感じです。実はデリーの地下鉄には、同じ名前の駅があります。レッドラインのカシミーリーゲート駅から東へ6つ目の駅で、いつか一度行ってみようと狙っています。

ジルミルの祖父はダージリンの大金持ちで、亡くなった時に財産の大部分をジルミル名義の信託にしたことから、ジルミルは誘拐事件に巻き込まれていきます。その背景には、ジルミルの両親が彼女の存在をうとましく思っているという事実がありました。遺産はジルミルに持って行かれてしまい、自分たちには信託から毎月の生活費しかやってこない。ハイソな生活を楽しみたい両親にとって、ジルミルは邪魔な存在だったのですね。

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ジルミルがなついていたのは、遠くの村から働きに来ていた乳母。インド東部州地域のどこかから、という設定のようで、父親に回顧された乳母を、のちにジルミルとバルフィが訪ねて行くことになります。ジルミルを乳母の元に送り届け、バルフィはこれで自分の役目は終わった、と思っていたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。そのあと、ジルミルとバルフィの人生第2章がコルカタで始まるのです....。

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コルカタでのジルミルは、だんだんと大人の女性になっていく、という面が描かれていきます。そこはちょっと微妙な演出なのですが、そこまでのプリヤンカー・チョープラーはもう素晴らしいのひと言。ぜひ、皆さんご自身の目で確かめて下さいね。

プリヤンカー・チョープラーは1982年7月18生まれ。2000年にミス・インドのタイトルを獲得、ミス・ワールドの大会に出て、見事こちらのタイトルも射止めます。世界一の美女になり、ボリウッドがほおっておくはずはなく、映画界入り。ここで、2002年のデビュー作以降の女優としての成長記録(?)を、代表作をピックアップしながら見てみましょう。特にことわってないのは、ヒンディー語の映画です。

2002年 『タミル人(Thamizhan)』(タミル語/監督:マジート/主演:ヴィジャイ)〜YouTubeに英語字幕付きで全編がアップされています。デビュー作、単に可愛い女の子、という感じですね。

2003年 『ヒーロー:あるスパイの恋物語(The Hero:Love Story of a Spy)』(監督:アニル・シャルマー/主演:サニー・デオル)〜いまひとつヒットしませんでしたが、モダンな大人の女性という彼女のイメージが早くも出来上がっています。これもYouTubeに全編が。

2003年 『スタイル(Andaaz)』(監督:ラージ・カンワル/主演:アクシャイ・クマール)〜フィルムフェア誌賞の新人女優賞獲得。歌のシーンはこちらとか。この頃はまだ、アブナイシーンの導入時には雷が鳴っていたのですね(笑)。

2006年 『DON 過去を消された男』(監督:ファルハーン・アクタル/主演:シャー・ルク・カーン)〜日本版DVDも出ています。かなり激しいアクションにも挑戦。歌のシーンはこちらとか。

2008年 『ファッション(Fashion)』(監督:マドゥル・バンダールカル/共演:カングナー・ラーナーウト)〜国家映画賞とフィルムフェア誌賞の主演女優賞を獲得。印象的な演技のシーンはこちらとか。押しも押されぬ一人前の女優に成長した、という感じでした。

2009年 『悪党(Kaminey)』(監督:ヴィシャール・バールドワージ/主演:シャーヒド・カプール)〜このあたりから、下町の貧しい娘ながら、芯のと鼻っ柱の強い女性を演じるようになり、それがまたハマり役になります。その系列ではほかに、『火の道』(2012)など。『悪党(カミーネー)』の予告編と印象的な歌はこちら

2009年 『あなたの誕生星座は何?(What's Your Raashee?)』(監督:アーシュトーシュ・ゴーワーリーカル/共演:ハルマン・バウェージャー)〜12通りの女の子を演じ分けた演技力はさすが。予告編でご覧下さい。

2011年 『7つの殺人の赦し(7 Khoon Maaf)』(監督:ヴィシャール・バールドワージ/共演:イルファーン・カーンら)〜ラスキン・ボンド原作の映画化で、7人の夫を持った女性を演じて見せたのですが、ちょっとすべりました。予告編はこちら

2012年 『バルフィ!人生に唄えば』〜いよいよ8月22日(土)より公開です! 公式サイト公式FB、チェックしてみて下さいね。

2014年 『メアリー・コム(Mary Kom)』(監督:オムング・クマール)〜実在のボクサー役に挑戦。予告編はこちら。再びプリヤンカー・チョープラーの演技力と身体能力が花開くでしょうか? 今インドのネットでは、「この作品でプリヤンカー・チョープラーが主演を演じるのは是か非か」という質問が話題を呼んでいます。メアリー・コムは東部インドマニプール州の人だったので、顔立ちはモンゴロイドであるため、インド・アーリア系の顔立ちのプリヤンカー・チョープラーが演じるのはおかしいのでは、ということから出てきた質問です。でも、東部インドの州出身者の女性たちは、「そんなの関係ないわ」「プリヤンカーはいい女優よ。どんな演技をしているのか見てから言ったら?」とか、「そんな質問ナンセンス」といったツイートを返しています。さて、結果はどうなるでしょう?

(C)UTV Software Communications Ltd.

『バルフィ!人生に唄えば』では、西ベンガル州の美しい風景も見どころのひとつ。ジルミルとバルフィの純粋な愛の交歓と共に、ダージリンやコルカタの風景もお楽しみ下さいね。

 

 

 

まったくインドの警官ってば...の『シンガム再見参』

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シンガポールで夜遊び中です。本日8月15日は日本の終戦記念日であると共に、インドの独立記念日ということもあって、シンガポールのインド人街リトル・インディアは何となく祝祭気分。


そんな皆さんと一緒に、リトル・インディアの中にあるゴールデンヴィレッジ(GV)のシネコンで、『シンガム再見参(Singham Returns)』を見てきました。2011年にタミル語映画『シンガム(Singham)』(2010)のリメイクとして作られた、同名の作品の続編です。本日より公開で、GVでは夜8時半から1回だけの上映、ということで、一番前と二番目の10席ほどを残して満員でした。私も上映1時間程前に行ったら、もう前から二番目の席しか残っていず、仕方なくそこへ。でも、ここのシネコンは見やすくて、十分に楽しむことができました。


監督は前作に引き続き、『チェンナイ・エクスプレス(Chennai Express)』(2013)のローヒト・シェーッティー。ヒロインは前作のカージャル・アグルワール(『バードシャー テルグの皇帝』のヒロインですね)に代わって、カリーナー・カプール・カーン(サイフ・アリー・カーンとの結婚後、こちらを正式に使うことにしたようです)です。シンガムの父親役などは前作と一緒ですが、違っている顔ぶれも。敵役は、前の記事にも書いたように、『スタンリーのお弁当箱』(2011)の監督兼出演、アモール・グプテーです。予告編でも、その怪演ぶりが見られます。


警部のバージーラーオ・シンガム(アジャイ・デーウガン)が先生と仰いで尊敬する政治家グルジー(アヌパム・ケール)が、総選挙を前に若い候補者たちを紹介していました。州首相でもある党首(マヘーシュ・マーンジュレーカル)もそれを見守っていますが、意気軒昂なグルジーを苦々しく思っている人々もいました。エセ聖者のバーバー(アモール・グプテー)と、彼の背後にいる政治家(ザーキル・フセイン)で、彼らはグルジーの候補者たちに立候補を取り下げさせ、さらにはグルジーを亡き者にしようとたくらんでいました。バーバーへの献金はすべて裏で蓄えられ、選挙運動中の票の買収に使われるのです。

一方、グルジーの所の候補者の一人で、シンガムの幼なじみの友人は、妹アヴニー(カリーナー・カプール・カーン)とシンガムを結婚させようと考えていました。ところが、アヴニーは自分のヘアサロン・チェーンを大きくすることをめざしており、結婚なんて、と兄の言葉を無視。シンガムもまた、結婚の意思はありませんでした。ところが、グルジーが殺され、シンガムは先生を守れなかったと警察に辞表を出します。そして二人して故郷の村に帰ってみるとアヴィニーの心境に変化が...。

しかしシンガムは、警官が一人、札束がぎっしりと積まれた救急車の運転席で死んでいるのを発見された事件を追い、それを調べるために帰省していたのでした。シンガムと部下のダヤー(ダヤーナンド・シェーッティー)が謎を解き明かすべく行動を開始すると、意外な事実がわかってきます....。

先ほどYahoo!Indiaの映画評を読んで大いに同感したのですが、そこにもあるように、まずアモール・グプテーの悪役が面白いキャラになっています。バーバーとかスワーミーとか呼ばれる聖者が悪人だった、というのはこれまでも結構あるパターンですが、なんとこの聖者様、プライベート時間になるとTシャツにバミューダ・パンツとか、とんでもない格好になってビールを飲んだりするのです。ここが一番笑いのツボでした。

それと、カリーナー・カプール・カーンのアホっぽい役、これも久しぶりに見ましたが、『家族の四季』(2001)の「プー」を彷彿させる快調さです。シリアスなシンガムとのコンビも笑わせてくれ、トップ女優の貫禄を見せつけてくれました。結婚して人気も下火かと思ったのですが、地下鉄の駅にはこんな広告もあって、やはりセレブ度は一番のよう。


そして、何と言っても魅力的なのは、アジャイ・デーウガンのバージーラーオ・シンガム。最初の登場シーンでは、シンガポールのシネコンでは珍しく場内大歓声となっていました。

前作ではまだ駆け出し警部のような雰囲気があったのですが、今回は幹部的な存在で、多くの部下を従えて登場。特に、自分よりも大柄なダヤー警部に命令し、それをダヤー警部が忠実に実行するシーンなどは、その貫禄に惚れ惚れしてしまいます。マハーラーシュトラ州の人間、ということで、「俺はマラーター(マハーラーシュトラの人間)だ」と見栄を切ったり、マラーティー語でつぶやいたりするところなんか、マハーラーシュトラ州の人にはたまらないだろうなあと思います。シンガムのキメ台詞は、マラーティー語の「Aata Majhi Satakli(俺ぁ頭に来てんだよ!)」。ここでも場内にどよめきが。お客さん、ノリがいいですね。マサラ上映に負けていません。


『ダバング 大胆不敵』(2010)でもそうでしたが、ガタイのいい男優にはカーキ色の警察官の制服がとてもよく似合います。特にアジャイ・デーウガンは強面の顔のせいか、制帽をかぶるとさらにステキ。今回の山場では、警官たちが大挙してこの制服の上着を脱ぐ、というシーンが出てきて、それも圧巻の見どころとなっています。ただ、ラストは『ダバング 大胆不敵』の悪徳警官を思い出させるようなラストで、「まったく、インドの警官ってばぁ」と、そこだけが非常に残念でしたです。ローヒト・シェーッティー監督、キミはいつもラストの着地がアカンのが問題やわ〜。

その後味の悪さを消すように、映画のエンディング・タイトルにはこんなソング&ダンスシーンが流れます。さっきのキメ台詞「Aata Majhi Satakli(俺ぁ頭に来てんだよ!)」をフィーチャーしているで、歌手のヨー・ヨー・ハニー・シンと共にリトル・シンガムが大挙出演しています。どこかで聞いたメロディーだと思ったら、『チェンナイ・エクスプレス』の「ルンギー・ダンス」にそっくり。やっぱりローヒト・シェーッティー監督ですねー。Yahoo!の映画評が星3.5であるのも納得の、楽しめる作品でした。

 


スーリヤとサマンサの『怖いもの知らず』

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久しぶりにスーリヤの映画を見ました。タミル語映画『怖いもの知らず(Anjaan)』です。実は今泊まっているホテルは、リトル・インディアの入口にあたる所にある安ホテル(でも1泊1万円。シンガポールと香港はホテル代がホントに高いです−涙)で、目の前がレックスというインドのタミル語映画専門の映画館です。着いた日は木曜日だったので、5本のタミル語映画を3つのスクリーンで時間替わり上映しており、これはたくさん見られるぞ、とホクホクしていたのでした。


ところが昨日8月15日(金)から、上映作品は『怖いもの知らず』1本だけになってしまいました。3つのホールで1日10回以上上映があるわけですが、全部『怖いもの知らず』なのです。インド本国でも、独立記念日の8月15日に公開、というわけで、レックスもこの週末は『怖いもの知らず』一色となったようです。う〜ん、残念。ダヌシュやシッダールトの主演作があったのになあ(泣−でも、看板は変わらず、なので、上の写真にダヌシュがいたりします)。でもまあスーリヤも好きなので、一番大きなスクリーンのRex1でやる時を狙って行ってみることに。本日は土曜日ということもあって、数百席のうち半分程が埋まっていました。


今回の相手役はサマンサ・ルス・プラブ。そうです、『マッキー』(2012)のヒロインですね。ちょっとふくよかになっていました。監督はN.リングサーミ。そして撮影監督がサントーシュ・シヴァンという豪華版です。以前はタミル語映画には字幕が付かなかったシンガポール上映ですが、ここのところちゃんと英語字幕が付くようになってありがたいです。歌のシーンもきちんと字幕が出てきます。予告編はこちらをどうぞ。


ストーリーは、脚が悪くて松葉杖をついている男クリシュナ(スーリヤ)が、南インドから汽車でムンバイにやって来るところから始まります。彼が捜すのは、兄弟のラージュー(スーリヤ)。あちこち訪ねて回っているうちに、クリシュナはラージューが”ラージュー・バーイー(ラージュー親分)”と呼ばれていたアンダーグラウンドのドンだったことを知ります。そして、仲間内の抗争で命を落としたことも聞かされます....。

ラージューはチャンドルー(ヴィドュト・ジャームワール)と2人でギャング団を組織し、のし上がって行っていました。怖い物知らずのラージューは腕っ節も強かったのですが、その得意技は誘拐。ところが、警察長官の娘ジーヴァー(サマンサ・ルス・プラブ)を誘拐し、捕らえられていた手下を解放させようとした時には、予想外の展開に。ジーヴァーがラージューに恋してしまったのです。やがて、ラージューも彼女を憎からず思うようになります。

チャンドルーが「2人だけで楽しく過ごして来いよ。その間連絡しなくていいから」と言った言葉に従って、ラージューとジーヴァーが海辺で楽しんでいた時、チャンドルーは手下の裏切りに遭い、イムラーン・バーイー(マノージュ・ラージパーイー)によって殺されてしまいます。そして、復讐だ!と飛び出したラージューもまた、手下の手によって撃たれ、橋から川へと落ちていったのでした。

その話を聞いたクリシュナが取った行動は...。


スーリヤの魅力が全開の作品ですが、特にメガネを掛けて不自由な足をかばって歩くクリシュナから、ひげ面のラージューへと変わる姿が「一粒で二度おいしい」感を与えてくれます。踊りのキレも相変わらずで、自分のスタイルを持ったスターだなあ、としみじみ思わせられます。ただ、今回の役柄は非情なドン、ということで、ラストも「それはないんじゃないの?」になっていたのが残念ポイント。最近のタミル語映画はもう、敵を問答無用で殺しまくり、がフツーになってきた感じです。

もう1人魅力的なのが、チャンドルーを演じたヴィドュト・ジャームワール。Wikiを調べてみると、俳優デビューは何と『スタンリーのお弁当箱』(2011)だそうで、ロージー先生の恋人役だったとか。学校へバイクで送ってきた人ですね。彼が注目を集めたのは、2013年の映画『コマンドー(Commando)』で、この予告編にもあるように、ムキムキ肉体でのアクションがすごかったのでした。タイ映画『マッハ!』を意識しているのがモロわかりですが、ヴィドュト・ジャームワールはインドのトニー・ジャーにはなれずじまい。でも『怖いもの知らず』では、『コマンドー』の時の2倍ぐらいハンサムになっていますので、そのうちイケメンのアクション・スターとして人気が出るかも知れません。

あと、残念ポイントどころかブーイングしたかったのが、飲酒と喫煙シーンに出てくるマーク付き警告。ウッディ・アレンが怒って自分の作品の上映を断ったのがわかるぐらい、左下隅に大きく、かつしつこく出てきます。ヒンディー語映画は薄く文字が出てくるだけなので、それほど気にはならないのですが、こうも目立つ出方だと集中力をそがれます。タミル語映画だけこうなのかしら?


ところでこれを書いている今、シンガポールのテレビではボリウッド映画『カハーニー/物語』(2012)のタミル語リメイク作品を放映中。いくつか設定が変えてありますが、ナワーズッディーン・シッディーキーが演じた人物の名前「カーン」がそのまま使われていたり、殺し屋も似た男にしてあったりと、8割方オリジナルに忠実なリメイクです(と思ったら、ラストが違ってた!)。ヴィディヤー・バーランが演じた役はナヤンタラ(『チャンドラムキ』のヒロイン役の彼女です)が演じ、タイトルはヒロインの名前を取って『アナーミカ(Anamika)』(2014)となっています。今年の5月公開された作品なのに、早くもテレビ放映されるとは。シンガポール、やっぱりインド映画ファンにとっては天国に一番近い場所ですね。

そうそう、テレビ放映でも、しっかりと「タバコは健康に悪いです」のタバコ禁止マーク&警告文が出てきました。元の映画のデータに入っているのでしょうね。さて、日本でこういうタミル語映画が上映されることがあれば、この警告はどうなるのでしょう???


テルグ語映画も見ました@シンガポール

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シンガポールは1965年8月9日にマレーシアと分かれて独立しましたが、今日はその独立記念日大会が行われました。夕方から夜にかけてのテレビは、どの局もリー・シェンロン首相の演説を一斉に放送。英語とマレー語、そして中国語も混じった演説をちょっと聞いてみると、原稿読み上げではなく、ユーモアもまぶしながら親しみやすい口調で好感が持てます。具体的な内容を説明していくプレゼンの仕方にも、こちらをぐっと惹きつける魅力があり、どこかの首相とは全然違うなあ、と感心させられました。舞台の真ん中に設置された大きなスクリーンに、関連する映像を写しながらの講演は、まるで大学の研究者か、企業のリーダーか、といった感じです。父リー・クワンユーの独裁者的イメージを払拭し、ソフトなイメージで今後のシンガポールを引っぱっていく所存のようでした。

シンガポールは経済も堅調のようで、物価もじりじりと上がっています。映画料金も、土・日&祝日は12.5シンガポールドル(約1,000円)。平日は8.5ドル(約700円)で見られ、またシニアは4.5ドル(約370円)で見られるので、時間のある人はその時間帯に見に行きなさい、ということですね。なお、インド映画はシネコンでの上映は12.5ドルですが、インド映画専門館では別の料金体系になっていて、15ドル(約1,250円)と高い値段が設定されています。これは、様々な経費をカバーするためなんでしょうね。


今日はそのインド映画専門館、ショウ・タワーにあるボンベイ・トーキーズに行きました。毎回お世話になる映画館ですが、タイですでに見た『キック』と『エンターテインメント』、そして一昨日シネコンで見た『シンガム再見参』がメインの上映作品なので、今日まで見に来る機会がなかったのです。


ボリウッド映画3本に混じって1日1回だけ上映されているのは、珍しくテルグ語映画でした。『走れ、ラージャー、走れ(Run Raja Run)』(2014)はインドでは8月1日に公開された作品です。こちらのカーヴェリ川長治さんのブログに詳しい紹介があるので、作品に関する情報はこちらでゲットしていただければ、と思います。というのもですね、つまらなくて途中かなり長い間寝てしまったのです、スミマセン。テルグ語映画でも英語字幕がちゃんと付いているのはありがたかったのですが、主人公ラージャー役のシャルワーナンドが全然好みではなく、ストーリーも導入部は面白かったものの、30分ぐらいするとダレてきてもうダメ...というわけで沈没したのでした。


ざっくりストーリーを書くと、ラージャーはいろんな女性にアタックしても、成功したためしがない男。父親の八百屋を手伝いながら、毎日ぶらぶらと過ごしています。そんな彼の車、タタのナノ(これがなかなかいい感じでした)にウェディング・ドレス姿の女の子が乗り込んできたところから話が転がっていくのですが、彼女はプリヤー(シーラト・カプール)といい、警察幹部ディリープ・クマールの娘でした。ディリープ・クマールは最近頻発している著名人の誘拐事件を追っていましたが、映画スターのお面を被って誘拐とブラック・マネーの暴露を行っていたのは、実はラージャーたちでした。その背景には、10数年前のある事件があったのです....。


この映画スターのお面が笑わせてくれます。『バードシャー テルグの皇帝』のNTRジュニアにマヘーシュバーブーら、テルグ語映画各ファミリーのプリンスのお面に、最後にはラジニカーントお面も登場と、そのアイディアに脱帽です。シャルワーナンド、ずっとお面をかぶっていてくれたらよかったのに、と思ってしまいました(笑)。


場内はテルグの人が100人ほど。場内の注意喚起フィルムもテルグ語バージョンでした。今回は、さすがに目立ってしまい、ジロジロとよく見られました。チケットを買う時も、売り場のお兄さんから「テルグ語映画だよ。ボリウッド映画じゃないよ。いいの?」としつこく念を押されました。このお兄さんはパンジャービーだそうで、写真を撮ろうとしたら、ポーズを決めてくれたノリのいい人でした。チケット発売の窓口の女性は華人です。


シンガポールのインド映画はこれでほぼ見尽くしたと思うのですが、あとゴールデン・マイル・タワーにあるゴールデン・スルタンという映画館もチェックしてみないといけません。ネットでは全然情報が見つからないため、まだやっているのかどうかちょっと不安ではありますが、明日にでも行ってみようと思います。もうちょっといろんな作品を上映してくれたらいいのに、というのが正直なところですが、シンガポール在住の人は1週間に1本ぐらいしか見ないわけで、まあこんなものでしょう。

最後に、一昨日もちょっと載せた地下鉄の駅を埋めるカリーナー・カプール・カーンの広告写真です。目の保養がわりにどうぞ。リトル・インディア地区にある駅だけのようですが、ジュエリーのお店の広告、力が入っています。


シンガポールではDVDも高くなり、1枚千円以上ばかり。やっぱりインド映画は、当たり前ですが、見るのも買うのもインドが一番ですね〜。

<追記>

テルグ語映画でも、禁酒禁煙マーク付き警告が左下に出てきましたが、タミル語映画よりずっと小さなものでした。



いろいろな国の映画@シンガポール

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シンガポールでは、インド映画以外にもいろんな国の映画を見ました。残念ながらシンガポール映画はなく、これまでほぼ毎年、夏休みといえばジャック・ネオ監督作のコメディか、ロイストン・タン監督作の音楽ものかが上映されていたのを考えると、今年はちょっと寂しいです。では、見た順番に作品を簡単にご紹介しましょう。 

『Soekarno: Indonesia Merdeka(スカルノ:インドネシア独立)』  予告編 
  2013年12月11日現地公開/インドネシア映画
 監督:ハヌン・ブラマントヨ
 主演:アリオ・バユ、ルクマン・サルディ


インドネシア独立運動の指導者であり、初代大統領となったスカルノの半生を描きます。病弱で名前を「スカルノ」と変えた少年時代から始まり、当時インドネシアの統治者であったオランダ人の女の子を好きになったティーン時代、そしてのちに副大統領となるハッタらとの独立運動を詳しく描いていきます。その中で、妻子がいるのに教師時代に教え子と恋愛関係になり、第二夫人としたことなども描かれ、英雄としてよりも人間スカルノを描こうとしている感じを受けました。ただ、1941年の太平洋戦争開始後やってきた日本軍の描写は、予算がなかったためか日本人俳優をほとんど使わずといういまひとつの出来。その後、1945年8月17日に独立を宣言するところで映画は終わるのですが、何となくハッタの方が魅力的な人物に描かれている気もして、スカルノをどう捉えるかがやはり難しかったのかしら、と思ってしまいました。 

『人間中毒』 予告編  
 2014年/韓国映画
 監督:キム・デウ
 主演:ソン・スンホン、イム・ジヨン、オン・ジュワン、チョ・ヨジョン

ソン・スンホンが大胆なベッドシーンを演じた、というので話題になった作品。上官の娘を妻にしたベトナム戦争帰りの将校が、部下の妻に惹かれていき、やがて彼女と関係を持ってしまう、というストーリーです。1969年という時代の再現にかなり力が注がれており、当時の軍官舎に住む将校夫人たちのファッションや髪型なども見どころのひとつとなっています。ベトナム戦争のトラウマに苦しみ、妻に頭の上がらない男、そして中国系韓国人という出自ゆえに貧しい少女時代を送り、雇われていた家の女主人に気に入られて息子の嫁にさせられた女。この2人が出会ってしまった、ということなのですが、彼女のエキセントリックな行動にはちょっと共感できないものが....。 

『分手100次(100回目の別れ)』 予告編  
 2014年8月1日現地公開/香港映画
 監督:鄭丹瑞
 主演:鄭伊健(イーキン・チェン)、周秀[女那](クリッシー・チャウ)


8年間同棲を続けているカップルが直面する危機を描きます。香港人の好きそうな物語なのですが、カフェを開きながら、お客さんそっちのけでカフェで大げんかするこのオーナーたちってどうよ? という感じで、勘弁してよ〜映画でした。久しぶりのイーキンだったのに、いいところがなくて残念です。クリッシー・チャウもモデル出身とのことですが、魅力がまったく感じられず矢印ぐぐっと下向きに。 

『白髪魔女伝之明月天國』 予告編 
 2014年7月31日現地公開/中国映画
 監督:張之亮(ジェイコブ・チャン)
 出演:范冰冰(ファン・ビンビン)、黄暁明(ホアン・シャオミン)、趙文卓(チウ・マンチョク)、王学兵(ワン・シュエビン)、葉童(イップ・トン)


『白髪魔女傳』と言えば、張國榮(レスリー・チャン)と林青霞(ブリジット・リン)の1994年の作品ですが、今回は中国の美男美女が演じます。最初ポスターを見た時はてっきりリー・ビンビンだと思っていたら、ファン・ビンビンの方でした。ファン・ビンビン、美しいだけでなくアクションもしっかりこなしていて、ちょっと見直しました。イップ・トンが白髪魔女の師匠役で特別出演しているほか、最近気になる王学兵も出ていて、まずはしっかりした作りの時代劇になっています。残念なのはファンタジー部分のCGが「あ〜あ」なことで、徐克(ツイ・ハーク)も製作に加わっているのにどうしたの、とまさに画竜点睛を欠く思いでした。ラストにレスリーの歌が流れるという嬉しい反則ワザもあり、それをフィーチャーしたMVも見られます。日本でもどこかがお買いになるのでは、と期待していましょう。

例年に比べると、韓国映画も中国・香港・台湾映画も少ない感じがするシンガポール。今年はシンガポールも、ハリウッド映画とインド映画の夏、なのでしょうか。そうそう、今日最後に見た『白髪魔女傳之明月天國』はこれまでのGVとは違ってショウ・ブラザーズの映画館だったのですが、珍しい予告編に出会いました。ついに出現!という感じの、シラット(マレーシアやインドネシアの伝統武術)の女性ファイターを描く『Yasmine(ヤスミン)』の予告編です。公式サイトを見てみると、製作会社はブルネイの会社だとか。ということは、初のブルネイ映画となるのでしょうか? 見てみたいです!!

 


『HAPPY NEW YEAR』

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ちょっと小ネタを。シャー・ルク・カーン&ディーピカー・パードゥコーン主演、ファラー・カーン監督作品『HAPPY NEW YEAR』の予告編が発表され、日本のインド映画ファンの間でも話題になっていますが、その予告編発表セレモニーの映像が流れてきました。まず、予告編はこちらです。


「世の中には2種類の人間がいる。勝者と敗者だ。だが人生は、どんな敗者にも勝者になる機会を必ず与えてくれる。この物語は、世界で一番でっかい盗みの話だ」というシャー・ルク・カーンのナレーションで始まる予告編。6人の敗者に扮するのは、シャー・ルク・カーン、ディーピカー・パードゥコーン、アビシェーク・バッチャン、ボーマン・イーラーニー、ソーヌー・スード、そしてヴィヴァーン・シャー(ナスィールッディーン・シャーの次男だそうです)。彼らやファラー・カーン監督、音楽のヴィシャール=シェーカルらが勢揃いしたセレモニーは、動く映像でも見られますが字幕なしなので、こちらのスライドショーをどうぞ。

舞台はドバイ。ダンス・コンテストを隠れ蓑にシャー・ルクら6人がどんな盗みのテクニックを見せてくれるのか、『10人の泥棒たち』には勝てるのか(笑)。公開予定日は10月24日、ディワーリーに合わせてですね。その頃またバンコクに行けないかなあ。東京国際映画祭もあるしムリかも....。

なお、上の個人宛シャー・ルクのサイン入りポスターの謎は、こちらでご納得下さいませ。やっぱりこれで2014年の運を95%ぐらい使い果たしたらしく、運気は低空飛行中。この映画を見て、敗者から勝者になりたいものです。


 

タミル語映画2本も追加の@シンガポール

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ホテルの目の前に映画館があるのはいいですね。上映替わりの時間に走って戻ってトイレに行けるし、なーんて考えていたら甘かったです。やっぱりシンガポールとはいえインド映画を上映する映画館はインド世界テリトリー。オーマイガーッ!の出来事が必ず起きます。

先日の記事ではタミル語映画『怖いもの知らず(Anjaan)』一色、と書いた映画館レックスでしたが、週日が始まると他の映画の上映が戻ってきました。相変わらず一番大きいホールRex 1(キャパ約500人だそう)と小ホールRex 2 & 3(いずれもキャパ80人)の片方では1日4回『怖いもの知らず』を上映していますが、Rex 3で2本タミル語映画をやってくれ始めたのです。というわけで、2本続けて見てきました。Rex 3はこんな感じです。


『冷たい心(Jigarthanda)』 予告編


 2014年8月1日現地公開/タミル語映画
 監督:カールティク・スッバラージ
 主演:シッダールト、ラクシュミー・メーナン、ボビー・シンハ


日本ロケにも来てくれたシッダールトですが、この『冷たい心』はちょっと変わった役柄で面白かったです。彼の役柄は映画監督志望青年カールティク。いろいろいきさつがあってある大物プロデューサーが映画を撮らせてくれることになったものの、「『ゴッドファーザー』みたいなマフィア映画かギャング映画を撮れ」と言われ、何よりも実物をリサーチしなければ、とマドゥライにやって来ます。というのも、マドゥライのドンであるセートゥがジャーナリストを焼き殺した、という新聞記事を読んだからです。カールティクと友人はあの手この手でリサーチし、ついには手下の一人に隠しマイクをこっそりと持たせる、というようなことまでやってしまい、彼らの行動がセートゥにバレてしまいます。

ところが、「あなたの半生を映画にしようとしている」と聞いたとたん、セートゥは大乗り気に。あろうことか、自分が主演を務める、とまで言い出します。さて、このお話の結末やいかに???

少々ストーリーを最後の方まで書いてしまいましたが、以前こちらに書いたように、マドゥライはタミルナードゥ州のコルシカみたいな所らしいです。原題になっている「冷たい心」もマドゥライ独特のコールドドリンクだそうで、「マドゥライもの」の1作ですね。マフィアたちの怖い姿を描きながら、一転して映画好きの人のいい一面を見せるなど、とても上手な脚本になっています。それにしても、セートゥと敵対する男が、家では『タイタニック』を見ながら妻と2人、ディカプリオとケイト・ウィンスレットのお面を被っていちゃいちゃしている、というシーンが出てきたり、日本のAVが大変な事件を引き起こすなど、映画がらみの笑えるシーンもたくさんあります。監督はきっとシネフィルなんですね。それにしても、タミル語映画もテルグ語映画も、なぜか紙のお面が大流行(笑)。

人を殺すシーンが多いのは困りものですが、「映画が王様の国」インドがよくわかる作品で、セートゥ役のボビー・シンハの好演もあって、とても楽しめました。

ただ、 上映の冒頭、音声状態が悪く、セリフの方のサウンドトラックがこもった音になってよく聞こえない状態に。観客は私を入れて5人だったのですが(なぜか5人とも同じ列に座っていた。シンガポールの人は真面目ですねー。移動すりゃいいのに)、その中の20歳すぎのお兄さんがすぐ飛び出して係の人にご注進。映写技師は画像を途中で止めて調整したものの、またその状態に戻ったりして、結局画像をストップさせること3回にも及びました。最後の方でも音が時々あやしいことがあり、DCPなのかBDなのかわかりませんが、観客を疲れさせてくれた上映でした。

『失業中の大卒男(Velaiyilla Pattathari)』 予告編


 2014年7月18日現地公開/タミル語映画
 監督:ヴェールラージ
 主演:ダヌシュ、アマラ・ポール

続いて見たのがダヌシュとアマラ・ポール(『神さまがくれた娘』のシュヴェータ役)の『失業中の大卒男』。結構情けない主人公で、2歳下の弟はすでに就職、車を買ったりしているのに、足こぎスクーターでトロトロ職探しをするかたわら、家事を手伝っているという設定になっています。隣に越してきたのがアマラ・ポールで、こちらは歯医者さんで月収何十万ルピー。前半はダメ男ぶりと彼の恋が描かれ、後半はある経緯から建築会社に就職した主人公が、数々の妨害にも負けず団地を完成させるまでを描きます。恋に家庭ドラマ、お仕事ドラマにアクションまで盛り込んで、もちろんダヌシュの上手な踊りもあり、と、少し調子はユルいのですが、こちらも楽しめる作品でした。


個人的には、ダヌシュの飛び蹴りが相変わらず冴えていることに大満足。2003年にダヌシュの『男の子、女の子(Thiruda Thirudi)』を見たのもシンガポールでしたが、あの時もブルース・リーばりの足技に惚れ惚れしたものでした。今回は、上のポスターのように上半身裸になって戦うシーンもあり、まさにインドのブルース・リーそのもの。予告編でも飛び蹴りが見られますので、ぜひご堪能下さい。ダヌシュ、何か日本に紹介できそうな作品に出てくれるといいんですが、現在R.バルキ監督(『マダム・イン・ニューヨーク』のガウリ・シンデー監督の夫)によるヒンディー語映画『シャミターブ(Shamitabh)』が製作中なので、それに期待することにしましょう。しかし、バルキ監督作品だと、飛び蹴りはナシかも知れませんね....。


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