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アジアのドキュメンタリー映画上映会@京都&東京

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来年1月半ばに、京都と東京で「ビジュアル・ドキュメンタリー・プロジェクト2014」の上映会が行われます。えー、年末で立て込んでおりますため、手抜き足抜き蹄抜き(by馬さん&羊さん)で、スキャンしたチラシを貼り付けておきます。

情報、読めますでしょうか? ネットで確認なさる方は、こちら、またはこちらをご覧下さい。チラシには各作品の上映時間が載っていないのですが、全体で上映時間が約2時間なので、それぞれ20分程度の作品ではと思われます。東南アジアのドキュメンタリー映画がまとまって見られる貴重な機会なので、平日ではありますがぜひいらしてみて下さい。

馬さんと羊さんも蹄を抜かれていい迷惑ですが、両者が引き継ぎをするまでにはまだ数日ありますので、あと1,2本記事をアップしたいと思っています。今日でお仕事納めの皆様も、大掃除に買い出しに、はたまたアジア映画の鑑賞にとがんばって下さいね!

 


2014年のインド映画@日本

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皆様のお知恵&情報収集能力を拝借したいと思います。年に1、2度「日本で上映されたインド映画」のリストを更新しているのですが、だんだん上映本数が多くなってきて、自分の記憶に自信が持てなくなりました。というわけで、下のリストで「この映画が抜けてるぞ~」というものがありましたら、ぜひコメントでご教示いただければと思います。

年号のあとの「a、b、c…」は識別記号です。タイトルが『 』囲みのものは一般公開、「 」のものは映画祭上映です。「再映」は「映画祭上映→一般公開」などの場合を指し、日本初上映ではない、ということを表しています。 

 

2014a 『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』AGENT VINOD(Hindi/2013)~2月8日公開
2014b 『神さまがくれた娘』DEIVA THIRUMAGAL(Tamil/2011)<一般公開>※再映~2月15日公開
2014c 『デリーに行こう』CHALO DILLI(Hindi/2011)※再映~2月15日公開
2014d 「バードシャー テルグの皇帝」BAADSHAH(Telugu/2013)<大阪アジアン映画祭2014>
2014e 「フックレー/ないない尽くしの男たち」FUKREY(Hindi/2013)<第6回沖縄国際映画祭>
2014f 『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』STUDENT OF THE YEAR(Hindi/2012)~5月3日公開


2014g 『マダム・イン・ニューヨーク』ENGLISH VINGLISH(Hindi/2012)<一般公開>※再映~6月28日公開
2014h 『ダバング 大胆不敵』DABANGG(Hindi/2010)<一般公開>~7月26日公開
2014i 『あなたがいてこそ』MARYADA RAMANNA(Telugu/2010)<一般公開>~7月26日公開
2014j 『めぐり逢わせのお弁当』DABBA/THE LUNCHBOX(Hindi/2013)<一般公開>~8月9日公開
2014k 『バードシャー テルグの皇帝』BAADSHAH(Telugu/2013)<一般公開>※再映~8月9日公開
2014l 『バルフィ!人生に唄えば』BARFI !(Hindi/2012)<一般公開>※再映~8月22日公開
2014m 「シッダルタ」SIDDHARTH(Hindi/2013)<アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014>
2014n 「Liar's Dice(ライアーズ・ダイス)」LIAR'S DICE(Hindi/2013)<なら国際映画祭2014>
2014o 「PAPILIO BUDDHA」PAPILIO BUDDHA(Malayalam/2013)<同上>
2014p 「ラーンジャナー」RAANJHANA(Hindi/2013)<インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン=IFFJ>
2014q 「マドラス・カフェ」MADRAS CAFE(Hindi/2013)<同上>
2014r 「若さは向こう見ず」YEH JAWAANI HAI DEEWANI(Hindi/2013)<同上>
2014s 「ラームが村にやってくる」RAMAIYA WASTAVAIYA(Hindi/2013)<同上>
2014t 「”ロミオ”・ラージクマール」R・・・RAJKUMAR(Hindi/2013)<同上>
2014u 「友情」YAARIYAN(Hindi/2014)<同上>
2014v 「ラーギニMMS-2」RAAGINI MMS-2(Hindi/2014)<同上>
2014w 「弾む心を道連れに」LEKAR HUM DEEWANA DIL(Hindi/2014)<同上>
2014x 「略奪者」LOOTERA(Hindi/2013)<同上>
2014y 「うそつきは警官の始まり」PHATA POSTER NIKHLA HERO(Hindi/2013)<同上>
2014z 「結婚の裏側」SHAADI KE SIDE EFFECTS(Hindi/2014)<同上>
2014za「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ムンバイ2」ONCE UPON A TIME IN MUMBAI DOBAARA(Hindi/2013)<同上>
2014zb「ヒーローはつらいよ」MAIN TERA HERO(Hindi/2014)<同上>
2014zc「ロバ男」PIED PIPER(Hindi/2013)<同上>
2014zd「チェイス!」DHOOM 3(Hindi/2013)<第27回東京国際映画祭>
2014ze「オプーのうた~『大地のうた』その後」SONG OF APU/APUR PANCHALI(Bengali/2013)<同上>


2014zf『きっと、うまくいく』3 IDIOTS(Hindi/2009)<一般公開>※再映<ボリウッド・フェスティバル2014>~10月25日公開
2014zg『チェンナイ・エクスプレス~愛と勇気のヒーロー参上~』CHENNAI EXPRESS(Hindi/2013)<一般公開><同上>~10月26日公開
2014zh『クリッシュ』KRRISH(Hindi/2013)<一般公開><同上>~10月27日公開
2014zi『チェイス!』DHOOM 3(Hindi/2013)<一般公開>※再映~12月5日公開

©Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.

『チェイス!』は角川シネマ新宿等でまだまだ上映中。こちらで上映館をご確認の上、新春第1弾としてぜひお運び下さい。

余談ですが、『マダム・イン・ニューヨーク』と『ダバング 大胆不敵』の提供元ビオスコープの社長が、ご自身のブログ「ボリウッド映画を買ってみました」でcinetamaを登場させて下さってます。「もっとひんぱんにブログ更新せんとあきませんやん!」と文句を言ったのはその通りで、さらに、「このブログを本にまとめて下さいよ~」とも以前言ったことがあります。社長はごくフツーのできるサラリーマンだったのですが、インド映画の神が乗り移り(笑)、「日本でインド映画を公開するのだ!」と脱サラ、『マダム・イン・ニューヨーク』と『ダバング 大胆不敵』を個人で買い付けてしまったのでした。

ご承知のように『マダム・イン・ニューヨーク』は大当たり。その陰には、社長ご夫妻の「素人が映画配給に参入!」ストーリーの面白さによる宣伝効果もあったのですが、その一部は「ボリウッド映画を買ってみました」にも載せられています。これは、今後インド映画を買おうと考える配給会社や個人の参考になる、と思い、ぜひ本にまとめていただきたいと思っている次第です。ウェブの記事は広く拡散しますが、年月を経て記録として残るかといえばはなはだ心許ないのです。ぜひぜひ、記録として本の形で残しておいていただきたいものです。

『マダム・イン・ニューヨーク』のシュリデヴィやら、『チェイス!』のアーミル・カーンやら、大物スターの来日も実現したインド映画@日本2014。来年も楽しい出会いがいっぱいあることを祈っています。来年はこちらのインド映画をどうぞヨロシク!

 

『女神は二度微笑む』の迷宮<2>本年のトリはヴィディヤー・バーラン

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さて、2014年もあと少しになりました。まだベランダ側の窓ふきをしていないのですが(^^)、ついこちらに心が向いてしまい....。誰が読んで下さるんでしょうと思いつつも、来年日本でブレイクしてもらいたいインド人俳優No.1であるヴィディヤー・バーランに、本年のブログのトリを飾ってもらいます。

考えてみれば、ヴィディヤー・バーランの主演映画は日本では映画祭上映されただけで、一般公開はまったくされていません。来年2月21日(土)公開の『女神は二度微笑む』(2012)が2012年9月のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で『カハーニー/物語』というタイトルで上映され、また本年10月のインディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)でライト・コメディ『結婚の裏側』(2014)が上映されたのみです。


ただ、カメオ出演、ゲスト出演作では公開作品もあり、例えば『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)では映画賞パーティーの歌のシーンに出演、黒いミニのドレスでシャー・ルク・カーンとハグしています。また、なぜか『女神は二度微笑む』と同日公開となった『フェラーリの運ぶ夢』(2012)でも、以前にも書いたようにソング&ダンスシーンにゲスト出演しています。さらに、本年のIFFJで上映された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ムンバイ2』(2013)も、ソング&ダンスシーンに文字通り一瞬だけ出演。そうそう、日本での上映版ではカットされていたのではと思いますが(記憶があいまい...)、『秘剣ウルミ バスコ ダ ガマに挑んだ男』(2011)でも悩ましい踊りを披露していました。アイテムガールとしても人気者ですねー。


ヴィディヤー・バーランのフィルモグラフィーを並べると、以下のようになります。※印はゲストやカメオ出演で、声優の作品は落としてあります。


2003 Bharo Theko(お元気で/ベンガル語映画)
2005 Parineeta(既婚婦人)
2006 Lage Raho Munna Bhai(その調子で、ムンナー・バーイー)
2007 Guru(グル)
2007 Salaam-E-Ishq(愛の挨拶)
2007 Eklavya: The Royal Guard(王宮の衛士エークラヴィヤ)
2007 Heyy Babyy(ヘイ・ベイビー)
2007 Bhool Bhulaiyaa(迷い道)~タミル語映画『チャンドラムキ』のリメイク
2007 Om Shanti Om『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』※
2008 Halla Bol(叫び声を挙げろ)
2008 Kismat Konnection(運命のコネクション)
2009 Paa(パパ)
2010 Ishqiya(エロティック)
2011 No One Killed Jessica(誰もジェシカを殺さなかった)
2011 Urmi『秘剣ウルミ バスコ ダ ガマに挑んだ男』※
2011 Thank You(サンキュー)※
2011 Dum Maaro Dum(一服つけて)※
2011 The Dirty Picture(下卑た映画)
2012 Kahaani『女神は二度微笑む』
2012 Ferrari Ki Sawaari『フェラーリの運ぶ夢』※
2013 Bombay Talkies(ボンベイ・トーキーズ)※
2013 Ghanchakkar(クレイジー)
2013 Once Upon a Time in Mumbai Dobaara!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ムンバイ2』※
2014 Shaadi Ke Side Effects『結婚の裏側』
2014 Bobby Jasoos(探偵ボビー)


素晴らしい演技を見せてくれる作品はたくさんありますが、必見なのはまず『Parineeta』(2005)と『The Dirty Picture』(2011)。強い意志を内に秘めたベンガル女性と、自分の肉体を武器に南インド映画界でのしあがっていく女優、というようにキャラクターは真逆ですが、女性の強靱さを存分に見せてくれてうならされます。この『The Dirty Picture』の成功以降、アイテムガールとしての出演依頼が増えたようです。

そして、『Ishqiya』(2010)もまた、ヴィディヤー・バーランの演技力にノックダウンされる作品です。あと、小粒の作品ながら、『Kismat Konnection』(2008)と『Bobby Jasoos』(2014)もなかなか楽しく見られます。特に『Bobby Jasoos』の方は、30歳の独身女性がハイデラーバードの下町で探偵として自立していく、という話で、女性の自分捜しは海外で、という風潮が強い昨今のボリウッド映画界に足蹴をくらわせていて、主人公ボビーに拍手したくなります。日本で公開されるとしたら、邦題は『こじらせ女子探偵ボビー』にしてみたい(笑)。ヴィディヤー・バーランの変装七変化も見られる、ファンにとってはマストの作品です。


そんな中でも、ダントツに彼女が魅力的で美しいのが『女神は二度微笑む』。最初の登場シーンは大きなお腹をしていて、「これがヒロイン?」とびっくりしますが、その彼女がだんだんと美しい女神のように見えてくるからあら不思議。ユーモアもあり、子供にもすぐ懐かれる、魅力的なキャラクターです。


しかし、時々大胆すぎる一面が覗くようになり、「え?」と思っているうちに怒濤のラストへ。実に巧みな脚本、そして巧みな演技です。二度見ても面白く、三度目にヴィディヤー・バーランの演技だけに集中して見てもまた面白いという本作。ハリウッドがリメイクしようとしているのも納得ですね。


詳しいストーリーやヴィディヤー・バーランのプロフィールはこちらの公式サイトをどうぞ。南西インドのケーララ州で生まれ、北西インドのムンバイで育ったヴィディヤー・バーラン。ベンガルの雰囲気の中に置いてもしっくりとくる、全インド的女優と言えそうです。来年の2月21日(土)には、ぜひ彼女の演技を目撃して下さいね。では、どうぞよいお年を。


 

2015年インド映画公開情報追加

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謹賀新年、恭喜發財。お年賀状をたくさんいただきました。ありがとうございます。

お世話になっている日活さんからは、こんなお年賀状が届きました。嬉しいです~♪


『チェイス!』(公式サイト)はお正月にピッタリのド派手な映画。あんなサーカスが実際にあるのなら、和服を着て見に行きたい! あのサーカスの観客たち、皆さん正装でしたものね。『ミルカ』(公式サイト)は1月30日(金)公開で、こちらは期待値がどんどん高まっています。『チェイス!』同様、『ミルカ』も筋肉LOVEの方が異常に盛り上がっておられるようで...。でも、本格派ドラマ作品ですので、感動したい方、泣きたい方にもオススメです。

三池監督の『極道大戦争』も見てみたいですね~。しかも主演が市原隼人! さらに彼と対決するのが、インドネシア映画『ザ・レイド』のマッド・ドッグを演じたヤヤン・ルビアン!! 三池監督が大好きな『チェイス!』のヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督にも見せてあげたいです。

そして、『マダム・イン・ニューヨーク』でお世話になった彩プロさんからもお年賀状をいただきました。ありがとうございます。


右下を拡大しましょう。

おお、これ、インド映画なんです。Wikiの紹介ページと予告編をご覧下さい。未見なのですが、障害のあるヒロインが恋に破れ、ニューヨーク大に留学することで自立していく、というお話のようです。カクテルのマルガリータを飲みたいと思った彼女が、「マルガリータちょうだい、ストロー付けてね」と注文する言葉がタイトルになっています。ストーリーと予告編からは、少々『クイーン』(2014)との共通点が多い感じがしますが、違う展開、違うテイストを期待したいと思います。

監督のショナリ・ボーズ(正しくは”ボース”)はこれが2作目の女性監督。カルキ・ケクラン(フランス語読みなのでしょうか? インドではKalki Kochilinは”カルキ・コーチリン”と発音されているのですが)は『デーウD』(2009)でデビュー、他に『人生は一度だけ』(2011)、『シャンハイ』(2012)や『若さは向こう見ず』(2013)にも出演しています。両親はフランス人なのですが、カルキはインドで生まれで、30年間インドに住み続けている女優です。

今年の楽しみがまた増えましたね。詳しいことがわかりましたら、またブログにアップしますので。

 

インド映画ソフト化作品

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よしだ まさしさんよりご要望がありました、ソフト化されたインド映画の一覧は以下の通りです。リストは映画の製作年順になっていますので、ソフト発売された順番とは違っています。

インド映画ソフト発売作品(映画の製作年順)   V:ビデオ/D:DVD/B:ブルーレイ

V/D「大地のうた」PATHER PANCHALI(Bengali/1955)
   D「55年夫妻」MR. & MRS. 55(Hindi/1955)
V/D「大河のうた」APARAJITO(Bengali/1956)
   D「渇き」PYAASA(Hindi/1957)
V/D「大樹のうた」APUR SANSAR(Bengali/1959)
   D「紙の花」KAGAZ KE PHOOL(Hindi/1959)
V   「サラーム・ボンベイ!」SALAAM BOMBAY!(Hindi/1989)
V   「アンジャリ」ANJALI(Tamil/1990)
V/D「ダラパティ 踊るゴッドファーザー」DALAPATHI(Tamil/1991)
   D「ダルマドゥライ 踊る!鋼の男」DHARMADURAI(Tamil/1991)
V   「愛しのヘナ」HENNA(Hindi/1992)
V   「ラジュー出世する」RAJU BAN GAYA GENTLEMAN(Hindi/1992)
V/D「アシュラ」ANJAAM(Hindi/1993)
V   「ヤジャマン 踊るパラダイス」YAJAMAN(Tamil/1993)
V   「女盗賊プーラン」BANDIT QUEEN(Hindi/1994)
V/D「バーシャ! 踊る夕陽のビッグボス」BADSHHA(Tamil/1994)
   D「ヴィーラ 踊るONE MORE NIGHT!」VEERA(Tamil/1994)
   D「カランとアルジュン」KARAN ARJUN(Hindi/1994)
V   「インディラ」INDIRA(Tamil/1995)
V/D「ムトゥ 踊るマハラジャ」MUTHU(Tamil/1995)
V/D「ボンベイ」BOMBAY(Tamil/1995)
   D「インドの仕置き人」HINDUSTANI(Hindi/1996)
V/D「カーマスートラ 愛の教科書」KAMA SUTRA(English/1996)
V   「デザート・フォース」BORDER(Hindi/1997)
   D「コイラ~愛と復讐の炎~」KOYLA(Hindi/1997)
   D「ジュダーイ~欲望の代償~」JUDAAI(Hindi/1997)
   D「ヴィラサット~愛と宿命の決断~」VIRASAT(Hindi/1997)
V/D「アルナーチャラム 踊るスーパースター」ARUNACHALAM(Tamil/1997)
V   「ボンベイtoナゴヤ」BOMBAY TO NAGOYA(Hindi/1997)
V   「ディル・セ 心から」DIL SE(Hindi/1998)
V/D「ジーンズ 世界は2人のために」JEANS(Tamil/1998)
V/D「ミモラ 心のままに」HUM DIL DE CHUKE SANAM(Hindi/1999)
V/D「ストーミー・ナイト」KAUN(Hindi/1999)
V/D「パダヤッパ」PADAYAPPA(Tamil/1999)
V/D「ザ・テロリスト 少女戦士マッリ(マッリの種)」THE TERROROST/MALLI(Tamil/1999)
V/D「アルターフ~復讐の名のもとに~」MISSION KASHMIR(Hindi/2000)
V/D「ラガーン」LAGAAN(Hindi/2001)
   D「家族の四季 愛すれど遠く離れて」KABHI KHUSHI KABHIE GHAM...(Hindi/2001)
V/D「モンスーン・ウェディング」MONSOON WEDDING(English・Hindi/2001)
   D「ガダル~憎しみを超えた絆~」GADAR(Hindi/2001)
   D「たとえ明日が来なくても」KAL HO NAA HO(Hindi/2003)
   D「レッドマウンテン」LOC-KARGIL(Hindi/2003)
   D「チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター」CHANDRAMUKHI(Tamil/2005)
   D「DON 過去を消された男」DON(Hindi/2006)
D/B「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」OM SHANTI OM(Hindi/2007)
   D「ボス その男シヴァージ」SIVAJI  THE BOSS(Tamil/2007)
   D「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ ~印度から中国へ~」CHANDNI CHAWK TO CHINA(Hindi/2009)
D/B「きっと、うまくいく」3 IDIOTS(Hindi/2009)
   D「スタローンinハリウッド・トラブル」KHAMBAKT ISHQ(Hindi/2009)
   D「アラジン 不思議なランプと魔人リングマスター」ALADIN (Hindi/2009)
   D「マイネーム・イズ・ハーン」MY NAME IS KHAN(Hindi/2010)
   D「スピーシー・オブ・コブラ」HISSS(Hindi/2010)
   D「ロボット」ROBOT(Hindi/2010)
B   「ロボット(完全版)」ENDHIRAN THE ROBOT(Tamil/2010)
   D「あなたがいてこそ」MARYADA RAMANNA(Telugu/2010)
   D「プリンス」PRINCE(Hindi/2010)
D/B「ラ・ワン」RA.ONE(Hindi/2011)
     D「闇の帝王DON ベルリン強奪作戦」DON 2(Hindi/2011)
     D「神さまがくれた娘」DEIVA THIRUMAGAL(Tamil/2011)
   D「タイガー 伝説のスパイ」EK THA TIGER(Hindi/2012)
     D「命ある限り」JAB TAK HAI JAAN(Hindi/2012)
     D「スタンリーのお弁当箱」STANLEY KA DABBA(Hindi/2012)
     D「マッキー」MAKKHI(Hindi/2012)Only Hindi version
D/B「マダム・イン・ニューヨーク」ENGLISH VINGLISH (Hindi/2012)
   D「スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!」STUDENT OF THE YEAR (Hindi/2012)
   D「エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ」AGENT VINOD (Hindi/2012)
   D「チェンナイ・エクスプレス~愛と勇気のヒーロー参上~」CHENNAI EXPRESS (Hindi/2013)
   D「バードシャー テルグの皇帝」BAADSHAH(Telugu/2013)

上記に加えて「クリッシュ」が1月に、そして「めぐり逢わせのお弁当」が3月に発売予定です。また、「ダバング 大胆不敵」のソフト発売も、時期は未定ですが予定されています。詳しい情報をお知りになりたい方は、「それぞれのタイトル+DVD」を入れてググってみてくださいね。

また、このほかちょっとアヤシいインド映画もありまして(「ダム999」とか)、リストに入れてない作品もありますが、落ちている作品がありましたらぜひご指摘下さい。「ダム999」(2011)はインド・UAE・シンガポール合作で、インドでロケされていますし、監督もインド人なので、やっぱり入れるべきでしょうねえ...(と思いながら渋っている私...)。


アジア映画初詣は『天空からの招待状』へどうぞ

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昨日、神社仏閣巡り初詣に張り切りすぎて、筋肉痛を起こしているcinetamaです。近所にある神社やお寺などを7箇所巡るのですが、この周辺はアップダウンが激しく、結構いい運動になります。そして最後は、メインの神社の甘酒お振るまいで締めて...というのが毎年の初詣。ところが昨日は、元日の悪天候の余波で人出が多かったせいか、待ち時間が長かった上甘酒は早々になくなっており、私が行った時には日本酒ちょっぴりのお振るまいになっていました。それも残念、おみくじが「小吉」だったのも残念でどっと疲れが出たのですが、まあ、「今年の運はあとでボチボチ使いなはれ」という神様の思し召しのようです。

さて、本年の映画初詣は皆さんどちらでしたか? 私の場合この3日間家ではいっぱいDVDを見たものの、スクリーン開きは1月6日になる予定です。でも、すでに空想映画初詣を『天空からの招待状』で済ませました。この作品には、台湾が日本の植民地だった時代に日本一だった山、「新高山(にいたかやま)」こと「玉山(ユイシャン)」が登場するのです。というわけで、富士山を見に行く感覚で下のシーンを思い出しながら、初夢の床に入りました。

玉山の頂上で歌う原住民の人々(C)Taiwan Aerial Imaging, Inc

新高山はまた、太平洋戦争の記憶がまだ残る頃に生まれたベビー・ブーマー世代やそれ以前の世代には、忘れられない名前です。それは、太平洋戦争の開戦日を告げる暗号電報にこの山の名前が使われたから。「ニイタカヤマノボレ一二〇八」というのが電文だったのですが、それによって真珠湾の奇襲攻撃日が12月8日(ハワイ時間は12月7日)となったのでした。驚いたのは、昨年ある大学で台湾映画の講義をしていて、植民地時代のことに触れ、「新高山って知ってる?」と尋ねたら、「ニイタカヤマノボレ」を口にした学生がいたこと。受講生は法学部の学生なのですが、時々こういうしっかりと大人の知識を持った学生がいて、頼もしいなあと思わせられてしまいます。

そんなこともあったので、『天空からの招待状』で新高山こと玉山を目にした時は、ちょっとジーンとしてしまったのでした。なお、玉山について詳しく知りたい方は、こちらのWikiをどうぞ。この映画では玉山以外にも、雪をかぶった雪山山脈など、たくさんの美しい山々が出てきます。

雪山山脈(C)Taiwan Aerial Imaging, Inc.

それから、『天空からの招待状』を上映中のシネマート六本木には、もう一つ嬉しいものが出現しています。映画の中に登場する主要な場所を示した、パネルとジオラマです。


おお~、こういうのがほしかったんですよ! 壁のパネル写真を見て風景を確認し、下の台湾島模型を見て場所を確認する―地形のつながりもわかって、とても勉強になります。聞くところによると、壁のパネルは配給会社アクセスエーの皆さんが制作、そして下の模型はシネマート六本木のスタッフの皆さんによる手作りだそうです。いやいや、とても素人制作とは思えない、立派なジオラマでした。「お手を触れないで下さいね」とナレーター西島秀俊さんの写真を利用した注意書きには、周囲に白い雲が飛んでいるなど、とっても芸が細かいです。


そばの掲示板には、歌を歌っている林慶台(リン・チンタイ)さんの記事や、様々な紹介記事も貼られています。シネマート六本木にいらした時には、ぜひお見逃しなく。チケット売り場の対面の壁に設置されています。『天空からの招待状』の公式サイトはこちら、シネマート六本木のサイトはこちらです。シネマート六本木では、西島秀俊ナレーション版だけでなく、呉念真(ウー・ニエンジェン)の原語字幕版も上映されています。劇場のサイトで上映時間をご確認の上、お出かけ下さい。

さて、2015年はどんなアジア映画に出会えるでしょうか。すでに試写を見せていただいたり、試写状をいただいているのは次の作品です。

『激戦 ハート・オブ・ファイト』 1月24日(土)公開
 2013/香港=中国/北京語・広東語/116分
 監督:林超賢(ダンテ・ラム)/主演:張家輝(ニック・チョン)、彭于晏(エディ・ポン)
『スペシャルID 特殊身分』 2月21日(土)公開
 2013/中国=香港/北京語・広東語/99分
 監督:霍耀良(クラレンス・フォク)/主演:甄子丹(ドニー・イエン)、安志杰(アンディ・オン)
『薄氷の殺人』 1月10日(土)公開
 2014/中国=香港/北京語/106分
 監督:■亦男(ディアオ・イーナン)/主演:廖凡(リャオ・ファン)、桂綸[金美](グイ・ルンメイ)
『ミルカ』 1月30日(金)公開
 2013/インド/ヒンディー語・パンジャービー語/153分
 監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラー/主演:ファルハーン・アクタル
『愛のタリオ』 2月7日(土)公開
 2014/韓国/韓国語/112分
 監督:イム・ビルソン/主演:チョン・ウソン、イ・ソム
『マッハ!無限大』 2月14日(土)公開
 2013/タイ/タイ語/103分
 監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ/主演:トニー・ジャー、ジージャー・ヤーニン
『女神は二度微笑む』 2月21日(土)公開
 2012/インド/ヒンディー語・ベンガル語/123分
 監督:スジョイ・ゴーシュ/主演:ヴィディヤー・バーラン
『フェラーリの運ぶ夢』 2月21日(土)公開
 2012/インド/ヒンディー語/139分
 監督:ラジェシュ・マブスカル/主演:シャルマン・ジョシ
『君に泳げ!』 2月28日(土)公開
 2013/韓国/韓国語/118分
 監督:チョ・ヨンソン/主演:イ・ジョンソク、ソ・イングク
『唐山大地震』 3月14日(土)公開
 2010/中国/中国語/135分
 監督:馮小剛(フォン・シャオガン)/主演:徐帆(シュイ・ファン)、張静初(チャン・チンチュー)
『妻への旅路』 3月公開
 2014/中国/北京語/110分
 監督:張芸謀(チャン・イーモウ)/主演:陳道明(チェン・ダオミン)、鞏俐(コン・リー)

弱小ライターのcinetamaの所には来ない試写状もありますので、公開作はもっと多いはず。「キネマ旬報」の2月下旬号が出ましたら、また全貌をお伝えしますのでそれまでお待ち下さいね。


韓国映画2014観客動員トップ11

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今日から皆様ご出勤ですね。お疲れ様です~。そして各国の映画界では、そろそろ2014年の興行収入ベスト10が出てくる時期となりました。お正月の間にいろいろネットサーフィンをしていて、韓国映画興行成績がアップされているサイト「K-MANIA」を発見。2000年からのデータがアップされているという、とても有り難いサイトです。

その2014年のデータを引用させていただいたのですが、日本語タイトル訳がちょっとあやしいところもあり、一般的に知られているタイトル訳に直したりしています。動員数300万人以上で切ったため、11位までのリストとなっていますので、それ以外の作品についてお知りになりたい方は、上記サイトをご訪問下さいね。


第1位 『鳴梁(ミョンリャン)』 17,611,849人 予告編
 監督:キム・ハンミン
 主演:チェ・ミンシク、リュ・スンリョン、チョ・ジンウン、チン・グ
 ※豊臣秀吉の朝鮮出兵の戦いで日本軍を破った李舜臣(イ・スンシン)将軍の物語。タイトルは対戦があった海峡の名前から。

 

第2位 『海賊;海に行った山賊』 8,665,652人 予告編
 監督:イ・ソクフン
 主演:キム・ナムギル、ソン・イエジン

 

第3位 『怪しい彼女』 8,658,002人 日本公式サイト 
 監督:ファン・ドンヒョク
 主演:イ・ムニ、シム・ウンギョン、ソン・ドンイル、イ・ジヌク
 ※日本でも大ヒット。ただ今下高井戸シネマで1月9日(金)まで上映中。


第4位 『弁護人』 5,688,905人 予告編
 監督:ヤン・ウソク
 主演:ソン・ガンホ、キム・ヨンエ、オ・ダルス
 ※故人となった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の青年時代の活躍を描く。

 

第5位 『国際市場』 4,869,243人 予告編
 監督:ユン・ジェギュン
 主演:ファン・ジョンミン、キム・ユンジン、オ・ダルス、チョン・ジニョン
 ※現在上映継続中。

 

第6位 『群島(群盗?):民乱の時代』 4,774,751人 予告編
 監督:ユン・ジョンビン
 主演:ハ・ジョンウ、カン・ドンウォン、イ・ギョンヨン

 

第7位 『タチャ-神の手-』 4,015,364人 日本公式サイト 
 監督:カン・ヒョンチョル
 主演:T.O.P.、シン・セギョン、ユ・ヘジン、キム・ユンソク
 ※1月23日(金)より公開予定。前作『タチャ イカサマ師』(2006)のチェ・ドンフン監督作品ではないのですね。残念~。


第8位 『王の涙 イ・サンの決断』 3,849,456人 日本公式サイト 
 監督:イ・ジェギュ
 主演:ヒョンビン、チョン・ジェヨン、チョ・ジョンソク、ハン・ジミン
 ※現在TOHOシネマズシャンテほかにて公開中。


第9位 『あなた、あの川を渡らないで』 3,732,439人 
 監督:チン・モヨン
 ※低予算映画興収記録をうち立てたドキュメンタリー映画。現在も上映中。


第10位 『神の一手』 3,566,824人 予告編
 監督:チョ・ボムグ
 主演:チョン・ウソン、イ・ボムス、アン・ソンギ

 

第11位 『最後まで行く』 3,448,583人 予告編
 監督:キム・ソンフン
 主演:イ・ソンギュン、チョ・ジンウン、シン・ジョングン

すでに日本でも公開された作品や、公開が決まっている作品もありますね。日本での公開がすんなりとは行かないかも知れない『鳴梁』のような作品もありますが、何とか全部日本語字幕で見たいものです。


ミルカ萌え:その3~ミルカと日本

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インド映画『ミルカ』の公開日1月30日(金)まで、あと3週間余りとなりました。公式サイトはこちらです。こちらで劇場を確認して、公開に向けた助走体勢に入って下さいね(笑)。

実は『ミルカ』の主人公であるアスリート、ミルカ・シンは、日本とも浅からぬ因縁があり、この映画の中にも日本が登場します。


まず、彼が日本で初めて陸上競技に出場したのが1958年の東京開催アジア大会。映画では、ミルカ(ファルハーン・アクタル)のライバルとなるパキスタン選手、アブドゥル・カーリク(パキスタンでの発音では「ハーリク」)が100m走に出場するシーンから始まり、それを見学していたミルカが、レース後にアブドゥル・カーリク(デーウ・ギル)とそのコーチ、ジャーヴェード(ナワーズ・シャー)に引き会わされるシーンが出てきます。

この100m走で選手の1人に扮して走っているのが武井壮さんで、昭和30年代に合わせたレトロな髪型がよく似合っています。誰の提案か知りませんが、時代考証的にちょっと感心したシーンでした。アジア大会の100mでは、アブドゥル・カーリクに続いて日本人の潮喬平選手が0.1秒差で2位に入っており、この銀メダルを獲った潮選手がモデルとなっているようです。

100m走終了後パキスタンのコーチから皮肉を言われたミルカはそれを胸にたたみ、次の200m走のレースではアブドゥル・カーリクを僅差で破って勝利し、パキスタン側をくやしがらせます。さらにミルカは400m走でも2位のフィリピン人選手に1.5秒の差を付けて1位となり、合計2つの金メダルを獲得するのです。映画の中では400m走の方は登場しませんが、ミルカ・シンにとって、東京開催のアジア大会は忘れられない大会となったはずです。

この時のアジア大会のメダル獲得者一覧はこちらです。なお、アブドゥル・カーリクとミルカは、のちにパキスタンのラーホールで開催されたインド・パキスタン親善陸上競技大会で、またもや対決することになります。下の写真の、トップがミルカ、その次がアブドゥル・カーリクです。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

さらにもう一度、ミルカ・シンは走るために東京にやって来ます。1964年の東京オリンピック出場なのですが、この時は400m走、4×100mリレー、4×400mリレーにエントリーしたものの、出場は4×100mリレーのみで、しかも予選落ちしてしまいました。残念ながら、アスリートとしてのピークはもう過ぎていたのでしょう。映画では1960年までしか描かれていないので、東京オリンピックの競技シーンは出て来ません。

あと、ミルカと日本との間には、間接的なご縁もあったりします。その一つは、息子ジーヴ・ミルカ・シンを通じてです。「ジーブ・ミルカ・シン」と表記されたりする息子さんは、著名なプロゴルファー。日本ツアーでも優勝しており、ゴルフ・ファンにはお馴染みの人です。こちらに日本版Wikiの紹介サイトがあり、また、日本ゴルフツアーの公式サイトにもこんな記述が載っています。この息子さん、武井壮さんともかすかな因縁があるそうで、こちらで武井さんが語っています。

『ミルカ』の映画化にあたっては、息子さんがラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督と実在のミルカ・シンとの橋渡しをしてくれ、ぜひ映画化を承諾するようお父さんを説得してくれたのだとか。いい息子さんですねー。ゴルフ好きの方も、たくさん見に来て下さるといいのに、と思っています。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

さらにもう一つ、ミルカ・シンと日本との間には隠れた因縁があります。上の写真は、パキスタンから列車で逃れてきた少年ミルカが収容される、難民キャンプでの1シーンです。この難民キャンプはニューデリーの中心街から少し東南に行ったプラーナー・キラー(Purana Qila/”古い城”の意味)にあったのですが、実はここには太平洋戦争当時、日本人の収容キャンプがあったのでした。

1941年に太平洋戦争が始まった時、当時イギリス領マラヤやシンガポールなどにいた日本人は、敵性国民とされてインドまで運ばれ、収容所に入れられました。その上陸後の収容所となったのが、デリーのプラーナー・キラーでした。その後収容者はラージャスターンのデーオーリーに移されますが、その収容所跡が、1947年のインド・パキスタン分離独立時にはパキスタンからの難民のキャンプとなったのです。松本脩作先生のこちらの論文によれば、太平洋戦争開戦当初にプラーナー・キラーに集められた日本人は約3000人だったそうです。

インド・パキスタンの分離独立によって、国境を越えての移動を余儀なくされた人は1000万人以上と言われているので、プラーナー・キラーの難民キャンプには何十万人という人がいたに違いありません。住居は仮設のテントで、食糧配給もままならない様子は、映画の中でも描写されています。日本人収容所の場合は、食べ物はきちんと配給されたものの住居は非常にお粗末だったそうで、『ミルカ』の難民キャンプシーンを見るたびに、私は昔マレーシア在住の日本人の方から聞いた収容所キャンプのお話を思い出してしまうのでした。


上の写真は、39年前(!)、1976年1月に撮ったプラーナー・キラーの一部です(プリントが退色してしまってますねー)。ここには動物園があり、そこにいるホワイトタイガーを見に行ったのですが、こういった遺跡に囲まれた野原の中の動物園でした。現在はこの当時よりもっと整備されて、美しい遺跡公園となっているようですが、私が行った頃はまだ映画の中に出てくるような崩れた遺跡の感じが残っていました。今回の『ミルカ』では、プラーナー・キラーではなく、ニューデリー南部にあるトゥグラカーバード城砦遺跡でロケが行われたようです。 

ところで、『ミルカ』の宣伝を担当しているスキップ陸上部の皆さんからも、お年賀状をいただきました。ありがとうございます。スキップ陸上部の皆さん、宣伝さらにがんばって下さいね。

ツイッターには、「駅伝の合間に『ミルカ』のCM入れればいいのに」というご意見もあがっていて、なるほど~~~と思ってしまいましたが、駅伝大好き人間の私にとって、『ミルカ』は走るアスリートの美しさも見せてくれる、まさに「萌え~」的作品です。ファルハーン・アクタル、神野大地君に負けないで3000m超の高地ラダックを走っています! ぜひ、観戦に来て下さいね。

 


平井堅「ソレデモツクイ」「おんなじさみもち」?in Hindi

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少し前から話題になっている平井堅のニューアルバムを買ってみました。CDとPVのDVDというディスク2枚組なんですが、PVのほうにメイキングも入っていると知って、心が動いたのです。で、買ってびっくり玉手箱、ジャケットにあるヒンディー語の表記が違っている!

ソレデモシタイ/おんなじさみしさ(初回生産限定盤)(DVD付)

 

クリエーター情報なし

アリオラジャパン

 

左上が「ソレデモシタイ」をヒンディー語の文字、つまりデーヴァナーガリー文字で書いたものですが、最後の「shitai」が「shati(+|が1本多い)i」になっています。いわば、「シタイ」を「ツクイ」と書くようなもの。字の基本形はなぞっているけど、全然違う音&文字になっていますね。

また、右下の「おんなじさみしさ」も「samishisa」が「samishasi(+|が1本多い)」になってしまっています。こちらは、「さみしさ」を「さみもち」とか「さみつち」と書くような感じでしょうか。あいやー、誰が元の文字を書いたんでしょう? インドロケの時にインド人の誰かに書いてもらって、それがデザイナーさんに回り、デザイナーさんがヒンディー語フォントをあやつってまさに見よう見まねで仕上げてしまった、というところでしょうか。せっかくの素敵なインドロケPVにミソがついてしまいましたね。

すでに誰かが指摘しているはず、と思ってググってみたら、アルカカットさんのクレームがツイッターにアップされていました。今後、ヒンディー語はわからないけれどデザインとしてヒンディー語フォントを使おう、と思っておられる方は、「利休にたずねよ」ならぬ「アルカカットさんにたずねよ」ですねー。

デリーのフマーユーン廟等各所で撮影された「ソレデモシタイ」のPV、平井堅が一番はじけていてとっても素敵です。昔から「インド人顔」と言われていたらしい平井堅、本領発揮というところですね。YouTubeの映像はこちらです。ちょっと上から目線でモノを言わせてもらうと、ボリウッドの一流振付師&カメラマンに頼んだら、もっと洗練された映像ができていたと思いますよ~。特に、この歌の2分50秒ぐらいのところのマネっこシーンとかね。

メイキングもいろいろ面白かったです。平井堅がインド映画を見ていることがわかったり(言い間違えた映画題名に訂正が出る律儀な編集に拍手!)、街の子供たちの反応が写っていたり......。さらにいろいろインド映画を研究して、今度はムンバイロケを敢行して下さいね!

 

香港映画2014年興収トップ10

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昨年の香港映画ヒット作が出そろいました。こちらのサイトがソースなのですが、前段の解説によると、香港映画の上映本数は51本で、2013年の43本よりも増加しました。全体の興行収入も少しですがアップ、映画が支持されていることがわかります。1位の『金鶏SSS』は4130万HKドルなので、1HKドル=約15円として約6億2千万円の興収です。洋画も入れた全体では第6位ですが、まずまずの健闘ぶりと言えましょう。今年もがんばってほしいものです、香港映画。

1.『金鶏SSS』 4130万HKドル
   監督:鄒凱光(マット・チョウ)
   主演:呉君如(サンドラ・ン)、張家輝(ニック・チョン)


2.『ヴェガスからマカオへ』 3360万HKドル 映画祭サイト
   監督:王晶(ウォン・チン)
   主演:周潤發(チョウ・ユンファ)、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)


3.『西遊記之大鬧天宮』 2560万HKドル
   監督:鄭保瑞(ソイ・チェン)
   主演:甄子丹(ドニー・イエン)、周潤發(チョウ・ユンファ)、郭富城(アーロン・クォック)


4.『窃聽風雲3』 2390万HKドル
   監督:麥兆輝(アラン・マック)、荘文強(フェリックス・チョン)
   主演:劉青雲(ラウ・チンワン)、古天楽(ルイス・クー)、呉彦祖(ダニエル・ウー)


5.『ミッドナイト・アフター』 2130万HKドル 映画祭サイト
   監督:陳果(フルーツ・チャン)
   主演:黄又南(ウォン・ヤウナム)、任達華(サイモン・ヤム)、林雪(ラム・シュー)


6.『ファイアー・レスキュー』 2040万HKドル
   監督:郭子健(デレク・クォック)
   主演:謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、余文楽(ショーン・ユー)


7.『六福喜事』 1820万HKドル
   監督:谷徳昭(ヴィンセント・コク)
   主演:黄百鳴(レイモンド・ウォン)、曾志偉(エリック・ツァン)、呉君如(サンドラ・ン)


8.『クリミナル・アフェア 魔警』 1740万HKドル 劇場サイト
   監督:林超賢(ダンテ・ラム)
   主演:呉彦祖(ダニエル・ウー)、張家輝(ニック・チョン)


9.『臨時同居/失戀急譲』 1650万HKドル
   監督:卓韻芝(ヴィンチ・チョク)
   主演:張家輝(ニック・チョン)、鄭秀文(サミー・チェン)


10.『豪情3D』 1610万HKドル
    監督:李公楽(リー・コンロク)
    主演:杜汶澤(チャップマン・トー)、何超儀(ジョシー・ホー)


コメディー作品はなかなか日本では公開されませんね~。『西遊記之大鬧天宮』はぜひ大スクリーンで見たいのですが、もう公開が決まっているのかしら? 2月5日発売の「キネマ旬報:決算号」をチェックしてみることにしましょう。

 


御礼ブログ4周年&『ミルカ』原作本「ミルカ・シン 我が人生のレース」

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おかげさまで、ブログを始めてから丸4年になりました。最初の記事「由零開始」は東日本大震災の2ヶ月前にアップ、その後3月に入ってインド旅行に行っている時に、あの大震災が起きたのでした。

ブログを始めたばかりの頃は、まだ旅行にPCを持って行ってなかったので(インドでの盗難を過度に恐れていたのです)、旅行中は携帯電話から投稿していました。また、日本出発前に予約投稿記事を何本か書いておいて、それの合間を縫って携帯投稿をするようにしていました。

その予約投稿記事の一つが、2011年3月26日から公開が予定されていた中国映画『唐山大地震-想い続けた32年-』(2010)の紹介記事。予定投稿日が3月13日で、旅先からは取り消せず、そのままアップされてしまいました。3月11日にムンバイで東日本大震災を知ってすぐ、携帯からお見舞いの記事を投稿したのですが、映画紹介記事が読む人の心を傷つけないかしら、と旅行中ずっと心配だったのを思い出します。

その因縁の映画『唐山大地震』は、あらためてこの3月14日(土)から全国ロードショーされることになっています。私も、あの時を思い出しながら再度試写を拝見して、あらたに紹介記事を書こうと思っています。4周年を迎えて、いろんな意味で仕切り直しですね。


また、今年は阪神・淡路大震災からも20年という節目にあたります。実は1995年1月17日も私はインドを旅行中で、チェンナイで大震災発生を知ったのでした。cinetamaがインドに行っているときは、大地震に注意して下さいね、というのは冗談ですが、この時は実家からも近かったので、青くなってすぐ国際電話をかけました。実家はたいした被害もなく、また神戸にいた親戚たちも無事だったのですが、友人のお店「あしゅん」で働いていたスタッフの1人が亡くなったりと、1月17日はやはり胸しめつけられる日になっています。

毎年、ブログ記念日が来るたびに思い出される悲しい思い出ですが、その一方でブログを読んで下さっている皆さんの励ましやらご教示やらを思い出すのが、本日の恒例でもあります。1年間、いろいろとありがとうございました。2015年1月13日現在、のべ訪問者数は603,178人、トータル閲覧数は1,943,885PVとなっています。毎日の訪問者数は400~600、PVは2,000前後というところです。来年度からは出講している大学が2つ減るので、特に前期は時間ができると思います。がんばって、ブログ記事をアップしていこうと思っていますので、また1年、どうぞよろしくお願いします。


ところで今読んでいるのは、上の本、数日前にインドから届いたミルカ・シンの自伝「ミルカ・シン 我が人生のレース」(2013)です。映画『ミルカ』の公開に合わせて出版されたようで、表紙に見られるような主演男優ファルハーン・アクタルの推薦文や、監督ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラの序文も収録されています。

とても平易な英文で書かれており、映画を見たあとで読むと、あのエピソード、本当はこうだったのか、とか、映画に描かれていなかったこんな苦労があったのか、とか、いろいろ感慨深いです。映画の中で、ミルカ・シン(ファルハーン・アクタル)と同じ地区に住む娘(ソナム・カプール)との恋が登場するのですが、てっきりフィクションだと思っていたら本当にあった話だとわかり、びっくりしました。親に隠れてデートしたものの、彼女の帰りが遅くなって親にばれ、激怒した親はすぐさま彼女の結婚話をまとめてしまう、という、映画よりもさらに短絡的な結末となっています。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

それにしても、映画『ミルカ』の脚本はよくできています。原作を読むとよけいに、脚色力というか映像化力というか、すぐれた映像化の力を感じます。淡々と語られる壮絶な人生の物語を、いかに映画的に描いていくかというセンスが半端ではありません。脚本を書いたのは、『ミルカ』の作詞も担当したりしているプラスーン・ジョーシー。この人は広告業界の「グル(師匠)」と呼ばれており、アーミル・カーンを起用したコカコーラのCFでつとに有名な人です。一方で作家としても仕事をしており、近年は映画の脚本家、作詞家としても名を知られるようになってきました。

プラスーン・ジョーシーとラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督とは仲良しらしく、監督の前作であるドキュメンタリー映画『ボリウッド:究極のラブストーリー』(2011/同年の東京国際映画祭で上映ずみ)でもコメンテーターの1人としてプラスーン・ジョーシーが登場、達者な弁舌で語っていました。この『ボリウッド:究極のラブストーリー』もインド映画ファンにとってはよだれものの作品で、『ミルカ』がヒットしたらDVD発売時のボーナストラックとして収録して下さらないかしら、と密かに日活さんに念力を送っています。予告編はこちらとかこちらですが、いやもう、ボリウッドの歴史と名シーンが満載の、目くるめくようなドキュメンタリー映画なのです。すごいわ~、メーラ監督。

上記の予告編その2には、メーラ監督と共同監督であるジェフ・ジンバリストも出演しています。これで、メーラ監督の顔を覚えて下さいね(その理由はそのうち明らかに...)。『ミルカ』、公開まで2週間となりましたが、ここに来て様々なイベントが企画され、その中にはビッグサプライズもある模様。ぜひ、公式サイト公式ツイッターをこまめにチェックして下さいね~。

 

ミルカ萌え:その4~来日したメーラ監督と武井壮さんの舞台挨拶

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1月15日(木)夜、新宿の安田生命ホールで『ミルカ』の試写会があり、日本に着いたばかりのラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督が登場しました。上映前のご挨拶で、司会は八雲ふみねさん、通訳は『チェイス!』の時もアーミル・カーンの通訳を担当していらした野村佳子さんです。


セーターにジーンズ、そしてマフラーというラフな格好で登場したメーラ監督、しばらく言葉を探しているのか、言いよどんでいる感じが伝わってきます。

「アリガトウ。とても素敵な気分で、今鳥肌が立っています。今日は私にとって、大変重要な日となりました。

この映画が私にとって特別な映画で、その完成した映画見ていただくから、というだけではありません。それと共に、日本は私にとって特別な場所なんです。30年前、私は自分の仕事のキャリアを日本でスタートさせました。日本車がインドに入ってくるようになった頃、私は広告会社で働いていました。22歳だった私はマツダに乞われて来日したのですが、日本の状況を知るために工場でしばらく働き、また広島のガソリンスタンドでも少しの間働きました。さらに、東京の広告代理店、電通だったんですが、そこでも仕事をしました。3ヶ月ほどだけでしたが、小さな広告の仕事を担当したのです。こうして、私の人生の初仕事は日本で、ということになったわけですが、その後の私の仕事に、日本での経験は大いに役立ってくれました。

25年ぶり、いや28年ぶりですね、ここに戻ってこれて、まるでわが家に戻ったような気分です」


続いて司会者からは、「この映画の主人公ミルカ・シンは実在のアスリートですが、彼の人生を映画化しようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?」という質問が。

「お答えするのは容易ではありませんね。これは単なるスポーツ選手の映画ではありません。

我が家の子供たちは、息子が13歳、娘が16歳です。友だちもいっぱいいて、家に遊びに来たります。息子はスカッシュと乗馬をやっているんですが、よく靴のこととか栄養のこと、ラケットのこととかで文句を言っています。体育館が寒すぎるとか、かと思うと暑いから練習に行かないとか、いろんなことを言うわけです。

インドは現在発展途上です。とても歴史のある国で、古くからの豊かな伝統文化を持っています。ですが、まだ新しい国家とも言え、独立して65年にしかなりません。独立後4、50年は貧しい国だったんですが、最近になって皆一生懸命働き、発展しつつあります。

この映画の主人公は、ミルカ・シンです。インドとパキスタンがイギリスから分離独立した時は、すんなりといったわけではなく、多くの血が流され、争いがたくさん起こりました。その時に、最もつらい目に遭ったのは女性と子供です。今の世の中でも、南アフリカとか、中東とか、どこでも女性と子供が一番苦しんでいます。同じように、ユダヤ人のゲットーとかでも女性と子供が一番苦しい目に遭いました。インド・パキスタンの分離独立時も同じでした。

12歳だったミルカ・シンも、父や母、姉妹に3人の兄弟、従兄たちが殺されるのを目撃しました。小さな少年なのに、住む家もなく食べる物もなく、靴もなかったんです。そこから出発して、ミルカはチャンピオンになります。インド新記録を打ち立て、200mと400mでアジア最速の男になるのです。さらに、英連邦競技会の記録も破り、世界記録も更新する。

もし、このミルカにできたのなら、私の息子やその友人たちもできるはずです。我々は自分たちが手に入れてない物について、不平を述べ立てる。でも、本当に必要なのは精神力なんです。人にはいい時もあれば悪い時もある。国家も同じで、国の歴史の中でもひどい運命に見舞われる時もある。そういうつらい時にこそ、それぞれの人間性が現れるのではないかと思います。今の時代、そのようなメッセージが求められている、だから、この作品がヒットしたのではないかと思います」


司会者の「ライバル選手役には、外国からゲストを募ったと聞きましたが、これは監督のご希望だったのでしょうか?」という質問には、次のような答えが。

「ミルカ・シンは実在のアスリートですから、それは重要なポイントでした。レースのシーンを撮る時は、実際のアスリートを使うことが必要とされたのです。

東京でのアジア大会、英連邦競技会、ローマ・オリンピックなどでは、世界中のアスリートを起用する必要があったので、我々はいろいろリサーチをしました。メルボルン・オリンピックも、ミルカにとっては重要なシーンですしね。ですので、大学でのトップ成績の人、今後チャンピオンになるであろう人などを、世界中の国から集めました。それで、ああいった長いカットに耐えられるシーンができたのです。短くカットを切って、つないでいく必要はありませんでした」


ということで、日本選手役で特別出演をした武井壮さんが拍手の中にこやかに登場、監督とガッツリ握手。司会者が、「武井さんとの撮影のこと、憶えていらっしゃいますか?」と監督に尋ねました。


「デリーのスタジアムで撮影をしていた時、インド人選手やオーストラリアからの選手などが集まっていたんですが、彼は撮影の1日前にやってきました。レース・シーンの前に、準備運動としてみんなにカメラのジャンプをしてもらったのですが、彼はこ~んなに(と腕を肩の辺りまで上げる)ジャンプしたんですよ(笑)。ですので私は、もうちょっとスローダウンしていいよ、と彼に言いました」

この暴露には、武井さんも「そうでしたねえ~」と大笑い。

監督は続けます。

「素晴らしい思い出になってます。彼はその1日、すごく楽しませてくれました。我々が何を撮りたいのか理解してくれ、しっかりと責任を果たしてくれたんです。自分が走るだけでなく、他の出演者をリードしてくれて、他のランナーもそれらしく見えるように気を遣ってくれました。とてもありがたく思っています」


ここで武井さんが司会者にうながされて、わざわざインドまで撮影に行った経緯を話してくれました。

「まだ僕がテレビに出る前だったんで、まったくヒマな頃だったんですね。仕事がなかった頃で、ちょうど今僕のマネージメントをお願いしているマネージャーと出会った頃でした。全然仕事がなくて、どうしようかと悩んでいたんですが、その頃FBに、この『ミルカ』の出演者を探している、という記事が載っていたんです。

それは日本陸連の方が載せていたんですけれど、そこにあった条件は、リアルなアスリートで、英語が理解できて、1人でインドに来られて、撮影に2週間参加できる人、というものでした。そしたらそこにいろんな陸上選手とかが、”それなら武井壮さんがいい”と書き込んでいたんですよ(笑)。それで僕の所へ陸連の方、元400mハードルの世界選手権にも出場した山崎選手から連絡が来て、エントリーしてみないか、ということで、自分のプロフィールを送ったら、ぜひ来て下さい、という連絡が映画の製作会社から来て、インド行きのチケットが送られてきたんです」


「こりゃー、何かご縁があるのだろうな、と思いまして、で、1人で。その頃は貯金も1円もなくて、借金生活とかしていたんですが、今のマネージャーから1万円借りてインドに渡りました。でも、その1万円も両替するのを忘れてしまって。インドでは両替できないんですよ(注:到着時に空港で両替するのを忘れ、市内では簡単には両替できなかった、ということらしい)。

それで1円もない(注:現地通貨だから”1ルピーもない”ですね)ので、インドに着いた初日にマーケットに行って、コブラの笛を吹いているおじさんの横で新聞紙を広げ、逆立ちしてクネクネ踊っていたら、コブラより稼いでしまった、というわけで(爆笑)。そのおかげで撮影を乗り切りまして、この出演に至ったという、そんな経緯なんです。

まさかね、こんな登壇させていただいて、当時遠くで見ていた監督とこんな風に一緒にお話しさせていただくなんて。本当に光栄で、すごい巡り合わせだったな、と思っています。人生は最高に面白いですね」


ここで司会者から、「完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?」と聞かれた武井さん、また熱く語ってくれます。


「僕、この映画を先月だったかな(注:ホントは10月です)、試写で見させていただいて、衝撃を受けました。インド映画を劇場で見るというのは初めてだったんですよ。DVDを見たことはあったんですが(注:『きっと、うまくいく』『チェイス!』等をご覧になっているそうです)、劇場で見た時にはそのパワー、エネルギーみたいなものに圧倒されました。自分も出てるんですけど、そんなこと関係なくて。

僕は今タレントとして活動してますけど、毎日成長しないといけません。毎日自分の人生を大きくしていかないと、どんどん新しい若手がやってきて、自分の話はあきられてしまって、いつかはいなくなってしまうと思うんだけど、僕らはそういうエネルギーを毎日積み重ねないといけないと思ってるんですね。でもこの作品は、それに向かっていくパワーを容易に与えてくれるというか。僕が今まで見た映画の中でナンバーワンに近いぐらいの、自分のやる気をかき立ててくれ、モチベーションを上げてくれた映画になりました。ホントに、自分が出たというひいき目抜きに、すごいパワフルな、エネジーあふれる映画ですので、ぜひ皆さん楽しんでいただきたいと思います」


まさに、武井壮さんの独壇場です。(ちょっと、後でロビーで撮らせていただいた正面のお写真も付けておきましょう)

司会者の「タレントとして活躍なさる前に、俳優としてもキャリアをスタートしてらした、ということですね。この作品がきっかけで、海外からもオファーが来る可能性があるかも知れませんね」というコメントに対しては――

武井さん「この『ミルカ』に至っては私の無名時代で、ライバル役のアスリートという感じで出させていただいた、もう、エキストラと言っても過言ではない役柄だと思うんですけれど。でも、重要な、大事なシーンに出させていただいているので、皆さんにも、あ、武井壮だ、とわかっていただけると思います。

俳優になりたいからと思って出てるわけではなく、今もタレントになりたい、コメディアンになりたいとか思って出ているわけではなくて、武井壮として、自分が幸せだと思って過ごせる面積を増やしていきたい、という思いが一番なんですよ。生きてると意外と、今日つまんねーなとか、こんな仕事面白くねーなとか、思ったりしてたんですよね、昔は。だけどそれって、僕がその物事の楽しみを感じる力が弱いだけで、僕がもっと能力が高くていろんなことができて、いろんな人に喜んでもらえる人間でいたならば、地球のどこに明日落とされてても、楽しいなって言える自分でいると思うんですよ。

それが僕の目標なんで、この映画に出させていただいたことでインドを始めいろんな国で上映されて、これがきっかけで、もしまたインド映画に呼んでいただけるようなことがあれば、それはまた僕の力になります。どんどんどんどん、俳優としてではありませんが、武井壮としていろんな作品に出させていただきたいなと思っております」


(これも、映画上映開始後にロビーで撮らせていただいた写真です。弁舌も表情もさわやかな方でした)

ここで、司会者の方が武井さんに、「最後になりますので、映画の見どころはホントにたくさんあると思うんですが、お客様にもう一言いただければと思います」と振ります。

「そうですね。本当に日本に暮らしていると、不便なことはまるでなくて、世界で一番平和で豊かな国というか。世界40カ国ぐらいお仕事で回っていますけど、日本は最高に便利な国だと思っています。だけど、どんな国に行っても、毎日を楽しいなって言ってる人が一番少ないのは日本じゃないかっていう、ちょっとした自信のなさに襲われるんですね。でもこの映画からは、本当に、何もないところから自分の足一つで世界のトップに立つ男が生まれますし、その姿を目の当たりにすると、それが全部実話ですから、その物語から自分の人生をより楽しく、より色濃いものにしていきたいという気持ちが生まれます。そんな気持ちを手に入れることが簡単にできる素晴らしい映画だと、僕、思っています。必ず皆さんのこれからの人生の毎日にプラスになってくれると思いますので、ぜひ皆さん、存分にお楽しみいただければありがたいと思います。ありがとうございました」


続いて司会者の方が、「監督からも一言メッセージを」と促します。

「特にメッセージとかはないのですが、今日時間を作って下さってこの映画を見に来て下さった皆さんに御礼を申し上げたいと思います。明日からは、この映画は皆さんの映画となります。そのような気分で、楽しんでいただければと思います」


そしてここで、監督から武井壮さんへのプレゼントが登場。『ミルカ』のインド公開版ポスターの初版刷りで、その上にミルカ・シンがサイン、「2011.11.28 愛を込めて」と入っています。これまでずっと監督の壁(お宅なのか、それとも事務所なのか)にかかっていたそうなのですが、今回来日するにあたって、武井さんに何か特別な物をプレゼントしたい、ということで持ってきて下さったそうです。喜んだ武井さん、またまたトークが始まります。


「このミルカ・シンさんとはまたちょっと僕、別のストーリーがありまして。僕がまだテレビに出る前、30歳ぐらいの頃に、日本のプロゴルファーで市原建彦選手という方がいるんですけれど、彼のコーチ、トレーニングコーチをしてたんですね。市原選手は若い頃、ジュニアの頃は世界最強だったんですよ。世界ジュニアチャンピオンで、今同世代で戦っている選手の中では最強と言われている選手だったんですが、日本でスランプになっちゃいまして、その選手が僕の所にトレーニングしてほしいということで来たんです。

それで僕と一緒にトレーニングを1年か2年やりまして、その次の年に読売オープンという九州で行われた試合で優勝するんですけれども、その時はプレーオフで勝ったんですね。そのプレーオフをした相手というのが、このミルカ・シン選手の息子さんの、ジーヴ・ミルカ・シンというインドの選手だったんですよ。僕は彼が有名なインドの陸上選手ミルカ・シンの息子だとは知っていたんですね。ミルカ・シン選手の名前も知った上で、この映画のオファーをFB上でいただいて、ホントに衝撃を受けて、何かご縁があるなと。一緒に作り上げた選手が戦ったライバル、そのお父さんの自伝の映画に私が出させていただくなんていうのは、ご縁があるなと思って出たんですが、そこがスタートとなりました。

インドに撮影に行った時に、アクシャルダム寺院というところに行ったんですね。発音が正しいかどうかわからないんですが、そのお寺はすごい美しくて、全部が彫刻でできているんですよ。境内から中まで、すべて動物だったり人だったりの彫刻でできているんです。ホントに奇跡の産物みたいなお寺で、その中に僕、入った時に、いろんなお願い事をしたんです。自分の持っている力をいろんな人に見てもらえて、世界中で楽しい時間を過ごせるようになるように、とお願いしたら、ちょっと体が浮き上がったような感覚を得たんですよ。それで手のひらに乗っかっているような気分になって、ふわ~としてお祈りして帰ってきたんですね。

その帰ってきたあとに、僕は初めてテレビに出ることになったフジテレビの深夜番組「うもれびと」の出演がすぐ決まりまして、そこから以来1日も休みがないという状態が続いて、今日に至ります。ホントに僕の、なんて言ったらいいんですかね、今の道につながる最初のご縁になったような作品です。一生の思い出になると思いますので、このチャンスをいただいた監督には、本当に感謝しておりますし、一生私の支えになる記念として、これをいただきたいと思います。ありがとうございます」

(こちらも、映画上映開始後にロビーにて。プレゼントにもらった『ミルカ』のポスターを抱えて)

拍手の後武井さんは、「舞台挨拶長くなっちゃってすみませんね。早く映画を見せろ、と思ってらっしゃるでしょうね。そろそろ終わりますんで」とナイスフォロー。予定はここまでで15分のはずが、とっくに30分をオーバーしてました。しかし、こういう気配りもきちんとできる方で、感心してしまいます。いい人が『ミルカ』に出演してくれましたねー。

というわけで、長い舞台挨拶が終わって最後の記念撮影。この時は、「観客の皆様もどうぞいくらでもお撮り下さい」とお許しが出て、皆さんスマホをかまえてパチリパチリ。盛大な拍手に送られて、ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督と武井さんは退場していきました。そして、いよいよ『ミルカ』の上映開始。終了時には大きな拍手も起きて、思い出深い試写会となったのでした。

これをまとめたり、監督のインタビューをしているうちに、早くも武井さんはツイートするなど大活躍。『ミルカ』は1月30日(金)からの公開です。公式サイトで劇場をチェックして、2週間後に備えて下さいね。


 

グレゴリ青山さん新刊「スケオタデイズ 戦慄のフィギュア底なし沼」

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グレゴリ青山さんから、目に眩しい新刊本「スケオタデイズ 戦慄のフィギュア底なし沼」を頂戴しました。ありがとうございます! まずは、帯付きの表紙カヴァー表裏。あ、アッコちゃんが特別出演!!


それから、帯を解いた(って、何かイヤラシっぽい^^)カヴァーの表。

スキャンしたせいでうまく出ていないのですが、このカヴァーの紙が何とキラキラ輝く材質なのです。ちょっと調べてみたら、スノーホワイトというネーミングが出てきました。これかな? まさに、アイススケートのリンクみたいな紙で、もうこれだけでスケオタ、つまりフィギュアスケート・オタクはノックダウン。私は単なる「フィギュアスケート好き」に過ぎませんが、この紙を見ただけで、村主章枝の眉根を寄せた表情から、本郷理華のながーい手足までが目の前を通り過ぎて行きました。

中身は、スケオタ道まっしぐらのグレゴリさんと友人レーコちゃんを軸に、名選手が多数出演してフィギュアスケートの魅力をたっぷりと見せてくれるほか、真のスケオタとはどのような人たちなのか、という描写がこれでもか、これでもかと出てきます。スケオタ度のものさしがインド映画なのがグレゴリさんらしいですが、ここまでスケオタの深みにハマっておられようとは。フィギュアスケート愛を語る時は、我が家でやりましょうね。何のことかわからない皆さんは、ぜひこの本をお求め下さい。

前にグレゴリさんに教えていただいたのですが、アイスダンスのペアとかでは、ボリウッド映画音楽で滑っている人がたくさんいます。一番有名なのはこちらのデービス・ホワイト組(アメリカ)で、『バンティーとバブリー』および『デーウダース』からのもの。グレゴリさんのこの本にも出てきます。あと、『ミモラ』の曲を使ったこちらは、衣装はインド風ではないものの、やはりうまく曲に乗せて素晴らしいスケーティングを見せてくれます。そのほか、ロシアや中国のスケーターたちも山ほどボリウッド音楽を使っていて、見ていると飽きません(でも、画質があまりよくない....)。そのうち、日本人選手で『チェイス!』の曲とか使ってくれる人が現れないものか...。

それから、鈴木明子さんのことをググっていてブログを見つけたのですが、そのタイトルが「Shantiな日々」。ふりがなは「シャンティー」になってますが、これって、あの「シャンティ(静けさ)」からなんでしょうか? 鈴木明子さん、じつはシャンティプリヤだったのね~。

というわけで、グレゴリ青山ファンの方とフィギュアスケート・ファンの方は、即お求め下さいませ。超・超充実の中身です。

それで、グレゴリさんにお礼のメールをと思ったのですが、この間からパソコンを換えたもので、メールアドレスを探すのがひと苦労。ひとまず、ブログ上にて御礼を申し上げておきます。本当に、いつもありがとうございます!

本に挟まれていた注文票にも、グレゴリさんのマンガが使われていました。ユズとダイスケもご覧下さいませ~~~。

「現代アジア映画の作家たち」@フィルムセンター

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フィルムセンターから、「現代アジア映画の作家たち」のご案内をいただきました。2月17日(火)から約1か月間にわたって行われる特集上映で、福岡市総合図書館の所蔵フィルムを使い、ベトナムのダン・ニャット・ミン監督、インドネシアのリリ・リザ監督、イランのアスガー・ファルハディ監督、インドのマニラトナム監督、パキスタンのショエーブ・マンスール監督、トルコのレイス・チェリッキ監督、そして香港のアン・ホイ監督の作品、合計24本が上映されます。

詳細はフィルムセンターのHPにアップされたチラシを見ていただくとして、とりあえずタイトルだけご紹介しておきましょう。下にチラシの画像も付けておきます。郵送していただいたために折り線が入っていますがお許しを。表紙写真は、上段左から『きのう、平和の夢を見た』(ベトナム、2009年)、『永遠探しの3日間』(インドネシア、2006年)、『火祭り』(イラン、2006年)、『男人四十』(香港、2001年)、『神に誓って』(パキスタン、2007年)、『ボンベイ』(インド、1995年)、『頑固者たちの物語』(トルコ=ドイツ、2004年)です。ジャッキー張學友のアップ、懐かしいですね~。

 

「現代アジア映画の巨匠たち」
2015年2月17日(火)~3月15日(日)

主催:東京国立近代美術館フィルムセンター、福岡市総合図書館

会場:フィルムセンター大ホール
定員:310名(各回入替制)
料金:一般520円/高校・大学生・シニア310円/小・中学生100円/障害者(付添者は原則1名まで)、キャンパスメンバーズは無料
発券:2階受付にて開映30分前より発売(当日券のみ) 

★開映後の入場はできません。
★2-3月の休館日:月曜日、3月31日(火)

ダン・ニャット・ミン監督(ベトナム)

ベトナム映画の先駆者的存在である巨匠ダン・ニャット・ミン監督。今回は1938年生まれである彼の、四半世紀以上にわたる作品群を見ることができます。(原語タイトルが不明のため、英語タイトルを付けてあります。IMDbには原語タイトルで載っているのですが、どれがどれなのか特定できず...)

1.『射程内の街』(A Town Within Rach:1982年・79分・35mm・白黒)
2.『十月になれば』(How I Long for October:1984年・85分・35mm・白黒)
3.『河の女』(The Girl on the River:1987年・94分・35mm・カラー)
4.『グァバの季節』(Guava House:2000年・103分・35mm・カラー)
5.『きのう、平和の夢を見た』(Don't Burn:2009年・105分・35mm・カラー)

 

リリ・リザ監督(インドネシア)

1999年に4人の監督によるオムニバス映画『Kuldesak(袋小路)』でデビュー。続いて2000年にミュージカル映画でもある『Petualangan Sherina(シェリナの冒険)』が大ヒット、続く『エリアナ、エリアナ』(2002)も注目されて、一躍インドネシア映画の新時代を牽引する監督と目されるようになったリリ・リザ監督。脚本家、プロデューサーとしても活躍中の44歳です。

6.『GIE』(Gie:2005年・147分・35mm・カラー)
7.『永遠探しの3日間』(3 Hari Untuk Selamanya:2006年・104分・35mm・カラー)
8.『虹の兵士たち』(Laskar Pelangi:2008年・125分・35mm・カラー)
9.『夢追いかけて』(Sang Pemimpi:2009年・127分・35mm・カラー)

 

アスガー・ファルハディ監督(イラン)
『別離』(2011)で一挙に名を知られるようになったアスガー・ファルハディ監督の、初期の作品が見られます。『砂塵にさまよう』では、すでにこの頃からストーリーテリングが上手かったのだ!と発見させてくれるなど、ファルハディ・ファンには発見がいくつもある作品群です。

10.『砂塵にさまよう』(Raghs dar ghobar :2003年・95分・35mm・カラー)
11.『美しい都市(まち)』(Shahr-e-Ziba:2004年・102分・35mm・カラー)
12.『火祭り』(Chaharshanbe-soori :2006年・104分・35mm・カラー)

 

マニラトナム監督(インド)

日本で一番よく知られている南インドの監督と言えばこの人。タミル語映画の巨匠ですが、その作品はヒンディー語にも吹き替えられてインド全土で公開されています。日本版ソフトが『ダラパティ 踊るゴッドファーザー 』(1991)、『ボンベイ』(1995)と『Dil Se 心から』(1998)しか出ていないのが惜しいです。

13.『ロージャー』(Roja:1992年・140分・35mm・カラー)
14.『ボンベイ』(Bombay:1995年・142分・35mm・カラー)
15.『ザ・デュオ』(Iruvar:1997年・166分・35mm・カラー)
16.『頬にキス』(Kannathil Muthamittal:2002年・136分・35mm・カラー)

 

ショエーブ・マンスール監督(パキスタン)

2007年『神に誓って』で世界中から注目されたショエーブ・マンスール監督。イスラーム教原理主義者やアメリカの9.11など、今日的なテーマが満載です。イスラーム世界における女性像を描いた『BOL~声をあげる~』も注目作。

17.『神に誓って』(Khuda Key Liye:2007年・168分・35mm・カラー)
18.『BOL ~声をあげる~』(Bol :2011年・153分・35mm・カラー)

 

レイス・チェリッキ監督(トルコ)

2012年の東京国際映画祭などで上映された『沈黙の夜』(2012)の監督です。あの、力強くて滑稽で、荒々しくも繊細な作風はどうやって作られたのか―監督第1作からの軌跡が追えます。

19.『そこに光を』(Isiklar sönmesin :1996年・84分・35mm・カラー)
20.『グッバイ・トゥモロー』(Hosçakal yarin :1998年・115分・35mm・カラー)
21.『頑固者たちの物語』(Inat hikayeleri :2004年・91分・35mm・カラー)
22.『難民キャンプ』(Mülteci :2008年・107分・35mm・カラー)

 

アン・ホイ監督(香港)

コンスタントに良質な作品を作り続ける許鞍華(アン・ホイ)監督。『桃(タオ)さんのしあわせ』(2011)に続く作品『黄金時代』(2014)の公開が待ち遠しいですが、どこか買って下さったでしょうか。今回はあまり知られていない2作品で、特にオススメは『生きていく日々』。主演女優の鮑起静(パウ・ヘイチン)と息子役の梁進龍(ジュノ・リョン)君がとってもチャーミングです。

23.『男人四十』(男人四十:2007年・103分・35mm・カラー)
24.『生きていく日々』(天水ワイ的日與夜:2007年・90分・HDCAM・カラー)


1ヶ月間、アジア映画の世界をお楽しみ下さい。財布にもやさしい上映会です(笑)。


ミルカ萌え:その5~萌え萌えの出演者たち

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『ミルカ』公開まであと400m、じゃなかった、あと4日です。レースは1月30日(金)開始です。走者の皆さん、劇場へダッシュする瞬発力はキープ済みでしょうか。とはいえ、今は事前に座席指定もできてしまうので、ゆっくりと劇場入りできますね。私は日比谷か新宿か川崎か、どちら方向へランするかいまだに考慮中。やっぱり、エレベーターの扉が『ミルカ』仕様という日比谷にするかな~。劇場情報はこちらでどうぞ。

『ミルカ』のここまでの宣伝はもっぱら体育会系に流れていますが、ここでちょっとボリウッド系に引き戻したいと思います。というのもこの映画の出演者の面々は、とても魅力的な俳優ばかりなのです。公式サイトにあるキャストのプロフィールは、私がたたき台をゴーストライティングしたのですが(マスコミ試写用プレスと公式サイトの編集者の方がスグレモノで、細かく事実などをチェックして加筆修正して下さってこれになりました)、ちょっと書き逃したこともあり、それも加えて本日ご紹介したいと思います。

ミルカ・シン役:ファルハーン・アクタル Farhan Akhtar

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

この人は、2008年の特集上映<ボリウッド・ベスト>で上映された『DON 過去を消された男』(2006)の監督として、日本に初登場します。でも、ボリウッド映画ファンには、彼の監督デビュー作『Dil Chahta Hai(心が望んでる)』(2001)で有名な人だったんですね。

『心が望んでる』は、実に衝撃的な作品でした。それまでインドの俳優たちは演技していることが見え見えだったのですが、この作品ではまったくの自然体。アーミル・カーン、サイフ・アリー・カーン、アクシャイ・カンナーというトップ男優3人を使って、こんなヘタレな映画を作るとは。ちなみに、ここでの「ヘタレ」は褒め言葉で、いかにもの不自然な演技や展開からはほど遠い、肩の力の抜けた作品、という意味です。その新人監督が著名な脚本家であり、作詞家・詩人でもあるジャーヴェド・アクタルの息子と知って何となく納得できたものの、すごい新人監督が出てきたものだ、と思いました。

ところがそれから数年たって、ファルハーン・アクタル監督が作り上げてきたのは何と!かつての大ヒット娯楽映画『Don(ドン)』(1978)のリメイクである『DON 過去を消された男』(2006)。旧作は父ジャーヴェード・アクタルと、サルマーン・カーンの父サリーム・カーンの共同脚本で、主演はアミターブ・バッチャンでした。そして今度の作品の主演はシャー・ルク・カーンと、これまた娯楽大作モード満載。ところが古い革袋に入ったこの新酒は、前作とはまったく違うテイストで、特にラストのどんでん返しは観客をうならせることになります。いやー、すごい才能の監督だわ~、と感服したのでした。

 ところがところが、ファルハーン・アクタルは再びボリウッド映画ファンにうっちゃりをくらわせます。何と!!!!!俳優としてデビューしてしまうのです。デビュー作は2008年の『Rock On!!(ロック・オン)』ですが、その翌年2009年に作られた『チャンスをつかめ!』がその年の東京国際映画祭で上映されることになり、その字幕を担当したことでこちらの作品を先に目にすることになりました。

『チャンスをつかめ!』はファルハーンの姉ゾーヤー・アクタルの監督デビュー作で、ファルハーンは俳優デビューを夢見る青年を演じます。その登場人物の姿がなぜか彼自身に重なり、監督よりも俳優になりたかったんだなこの人、と字幕を作りながら彼の演技をじっくりと観察しました。すると、それまで「全然ハンサムじゃない」と思っていた顔が、味わい深い演技者の顔に見えてきたからあら不思議。ちょっとハスキーな声も、時々つっかえるような台詞回しも、等身大の若者を演じるのにはピッタリです。俳優としても意外と才能あるかも、と思いはしたのですが、やはり監督としての才能を伸ばしてほしい、とこの頃は思っていました。

しかしファルハーンは、以後も『Karthik Calling Karthik(カールティクがカールティクに電話する)』(2010)、姉の監督作『人生は一度だけ』(2011)と俳優業を優先させていきます。スペインにバチェラー旅行に行く3人組を描いた『人生は一度だけ』では、ファルハーン演じる青年がスペイン在住の別れた父を訪ねるシーンが(ハッキリ言うとそのシーンだけが)見ものでしたし、サイコ・サスペンスの『カールティクがカールティクに電話する』でも、ディーピカー・パードゥコーン相手に難しい役を好演、挑戦しがいのある役を演じるのが楽しくて仕方がないようでした。これらと並行して、監督第4作目の『闇の帝王DON  ベルリン強奪作戦』(2011)を作るのですが、水準以上の娯楽大作ではあったものの、前作『DON』ほど心血を注いでいないな、と思わせられました。この頃、彼の心はすでに演技することに占められていたのかも知れません。

そして、次に来た『ミルカ』では、もう心血どころか、髪の毛も筋肉も汗も注ぎに注いだ最高の演技を見せてくれます。外見上のなりきり度だけでなく、内面の葛藤を演じる表現力も格段にアップした、ファルハーン・アクタル、一世一代の名演技と言えるでしょう。ぜひスクリーンで見て、ご確認下さい。

 

軍隊の教練担当教官ヴィーラパンディアン役:プラカーシュ・ラージ Prakash Raj

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

すでに日本にも数多くのファンが存在する、南インド映画界の大物俳優です。俳優のほか、監督、プロデューサーとしても活躍している人で、今回調べてまだ49歳とわかってびっくりしました。出身はカルナータカ州のベンガルールで、私が初めて彼を認識した作品は、カンナダ語映画『Nagamandala(蛇の化身)』(1997)。デビューしたのは1993年で、『ボンベイ』(1995)などにも出演していたのですが、全然気がつきませんでした。

彼が全インド的に知られるようになったのは、『ボンベイ』のマニラトナム監督がタミル・ナードゥ政界の歴史を描いた『ザ・デュオ』(1997)を世に出してから。M.G.ラーマチャンドランがモデルとなったモーハンラール演ずる主役の同志であり、のちに彼から離反する作家(M.カルナニディがモデル)を演じて、国家映画賞などを受賞しました。現在までに、すでに約230本の作品に出演しています。

ボリウッド映画にも特に悪役としてよく出演しており、タミル語版とヒンディー語版両方がヒットした『Singham(シンガム)』(2010/11)などでボリウッド映画ファンにはおなじみです。『ミルカ』のインターナショナル版では出番がちょっと少なくなっていますが、南インドなまりのヒンディー語で部下に命令し、踊りも見せてくれる大サービス。印象的な口ひげと共に、この顔(写真上の左)をご記憶下さい。

 

軍隊での陸上コーチ、グルデーウ・シン役:パワン・マルホトラ Pawan Malhotra

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

この人は、ファルハーン・アクタルの監督作『DON 過去を消された男』(2006)で、ドン(シャー・ルク・カーン)の右腕ナーラングを演じました。今回紹介を書くにあたって、『ドン』の出演者だと識別できたのですが、ご面相がまったく違っていて唖然。ナーラングはドンの叔父貴分みたいな、しゃれたギャグ幹部という感じだったのに、このコーチはひげ面のシク教徒(写真上の左)。しかも、ひげを押さえるためにハンカチで歯痛の時みたいな格好をして登場するし、紋切り型の挨拶をして相手のスポーツ担当大臣ワードワを失笑させるし。見事に、田舎くさくてとことん誠実な軍人に化け切っており、目からウロコでした。

パワン・マルホトラはパーニーパットの戦いで有名なパーニーパットに生まれ、デリー大学文学部を卒業したエリートです。その後演劇を経験したあと映画俳優になるのですが、そのせいか初期には芸術系の作品に出演していました。それは公式サイトにも書いたのですが、その後気になっていろいろ調べているうちに、日本で上映された作品にも出ていることがわかってびっくり仰天。えー、あの青年がそうだったのか!!と今でも興奮が収まりません。

 そのうちの1本は、1989年の第3回東京国際映画祭のコンペで上映された『ボンベイのサリム』(1989)。監督はサイード・アクタル・ミルザーで、ボンベイ下町のチンピラ青年たちを描いたものでした。下がプレスの写真なのですが、真ん中がパワン・マルホトラ、そして右側は、後年『ラガーン』(2001)を監督することになるアーシュトーシュ・ゴーワーリーカルです。

もう1本は、1990年の湘南カンヌ国際映画祭(カンヌ国際映画祭の監督週間に倣って、世界各地の映画作家の作品を上映)で上映された『虎男』(1990)。こちらはベンガル語映画界の気鋭ブッダデーブ・ダスグプタ監督の作品で、この映画祭で上映されたあとNHKでも放映されました。全身に色を塗った上、かぶり物をかぶって虎に扮し、農村を回って虎を演じてみせる男の悲哀が描かれた作品でした。ヒンディー語の作品で、確か小磯千尋さんが字幕を担当したはず。あの虎男が23年後にはこんな素敵なおっさんになっているとは。ググってみるとネットで『虎男』に言及している方もあったりするので、そういう方にぜひ『ミルカ』を見てもらいたいです。虎男のおっさんぶり、ステキですよ~。



ミルカの姉イシュリ役:ディヴィヤ・ダッタ Divya Dutta

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

『スタンリーのお弁当箱』(2011)を見た人なら、学校におけるスタンリー君の唯一の味方と言っていい、美人でやさしいロージー先生を憶えているはずです。ロージー先生を演じたディヴィヤ・ダッタが『ミルカ』でも、彼の最大の理解者として登場します。彼女はシャー・ルク・カーン主演作『Veer-Zaara(ヴィールとザーラー)』(2004)、シャーム・ベネガル監督の『ようこそサッジャンプルへ』(2008)、ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督の『デリー6』(2009)などにも出演、いずれも印象的な演技を見せています。私のオススメは、アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『ようこそサッジャンプルへ』のすっとんきょうな女の子ヴィンディヤーです。

 

ミルカの恋人ビーロー役:ソナム・カプール Sonam Kapoor

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

これから活躍しそうな女優さんのNo.1で、目下主演作が目白押し。日本で上映されたのはラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督の『デリー6』(2009)と、沖縄国際映画祭で上映された『I Hate Luv Storys』(2010)、そしてインディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパンで上映された『ラーンジャナー』(2013)だけなのですが、今後何か公開される作品が出てくるかも知れません。とはいえ、演技力、俳優としての魅力もまだまだ開花してない感があり、お父さんのアニル・カプールに肩を並べる女優になるには、もっともっとがんばってほしいところ。従弟のアルジュン・カプール(アニル・カプールの兄でシュリデヴィの夫ボニー・カプールの最初の結婚でできた息子。同じ1985年生まれですが、ソナムの方が17日早く生まれています)の方が人気急上昇中なので、負けずにがんばって下さいね。


このほか、ネルー首相役にはダリープ・ターヒル(『ゴアの恋歌』『ラ・ワン』など)、スポーツ担当大臣ワードワ役にはK.K.ライナー(『ゴアの恋歌』『デリー6』など)、パキスタンの陸上選手アブドゥル・カーリクのコーチであるジャヴェード役にはナワーブ・シャー(『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』)と、どこかで見た顔がいっぱい。ボリウッド映画ファンには嬉しい『ミルカ』ですので、お友達やご家族を誘って初日にぜひお出かけ下さい。公式サイトはこちらです。

 

 


香港映画が目白押しの春

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香港の財神カレンダーがわが家の壁面を飾っていますが、それを見ると今年のお正月は2月19日(木)です。香港はその日から22日(日)まで4連休。今頃は「賀歳片」と呼ばれるお正月映画のラインアップが発表されている頃でしょうか。

日本でもそれに合わせたわけではないでしょうが、1月から3月にかけて、香港映画の公開が続きます。のちほど詳しくご紹介する作品もあるのですが、まずはわかっている作品を並べてみました。

『激戦 ハート・オブ・ファイト』 公式サイト 


2013年/香港・中国/118分/原題:激戦
 監督:林超賢(ダンテ・ラム)
 出演:張家輝(ニック・チョン)、彭于晏(エディ・ポン)、安志杰(アンディ・オン)、高捷(ジャック・カオ)
 配給:カルチャー・パブリッシャーズ、ブロードメディア・スタジオ
 宣伝:フリーマン・オフィス
2015年1月24日(土)より、新宿武蔵野館、シネリーブル梅田ほかにて公開中&全国順次ロードショー

※ご紹介が公開後になってすみません。一昨年シンガポールで見た時にこちらでご紹介した作品です。その時は少々酷評してしまったのですが、その後日本語字幕で見直すととても味のある作品でした。東京国際映画祭でも上映されましたが、これを見るとインド映画『Mary Kom(メアリー・コム)』なんか、ファイトシーンの作り方が下手だなあ、とため息が出ます。香港映画に学ぼうね~、ボリウッドの皆さん。

余談ですが、つい先頃インドを訪問したオバマ大統領が、「インドには誇るべき人々がいる、たとえばミルカ・シン、メアリー・コム、シャー・ルク・カーン、そしてカイラーシュ・サティヤールティー(昨年のノーベル平和賞受賞者)とか」と言及しました。ひょっとして、大統領は事前準備として『ミルカ』と『メアリー・コム』の2本の映画を見ていたのでは? なお、シャー・ルク・カーンへの言及の時は、『DDLJ』の台詞の一部を引用したそうで、さすが大統領、わかっていらっしゃる! という感じでした。


『クリミナル・アフェア 魔警』 予告編 


2014年/中国・香港/111分/原題:魔警 
 監督:林超賢(ダンテ・ラム)
 出演:張家輝(ニック・チョン)、呉彦祖(ダニエル・ウー)
 提供:日活
 配給・宣伝:フリーマン・オフィス
2015年2月14日(土)より、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー


『スペシャルID 特殊身分』 公式サイト 


2013年/中国=香港/99分/原題:特殊身份 SPECIAL ID
 監督:霍耀良(クラレンス・フォク)
 出演:甄子丹(ドニー・イェン)、安志杰(アンディ・オン)、景甜(ジン・ティエン)、鄭中基(ロナルド・チェン)
 提供:『スペシャルID 特殊身分』フィルムパートナーズ
 配給:彩プロ
2015年月日(土)より、全国順次公開

※後日詳しくご紹介します。いやはや、ガチのケンカ上等アクションの面白いこと! ジン・ティエン小姐もすんごいアクション見せてくれます。


<2015春の香港・中国エンターテインメント映画まつり>劇場サイト

『アイスマン』 現地版予告編


2014年/中国・香港/104分/原題:冰封:重生之門 ICEMAN 3D
 監督:羅永昌(ロー・ウィンチョン)
 出演:甄子丹(ドニー・イェン)、王宝強(ワン・パオチャン)、黄聖依(ホアン・ジェンイー/エヴァ・ホアン)、任達華(サイモン・ヤム)
 配給:ツイン
2015年3月7日(土)より、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

※時空を超えてよみがえる剣士....ってありがちな題材ですが、本作はアクション監督が谷垣健治さんで、雪景色シーンを日本でロケした模様。そのあたりが一番見どころかも。ところで原題を調べると、「冰封」だったり「冰封俠」だったりするんですが、香港版と大陸版の違いかしら?


『ドラゴン・フォー3 秘密の特殊捜査官/最後の戦い』 現地版予告編

2014年/中国・香港/104分/原題:四大名捕之大結局 THE FOUR 3
 製作・監督・脚本:陳嘉上(ゴードン・チャン)
 出演:超(ドン・チャオ)、劉亦菲(リウ・イーフェイ)、鄒兆龍(コリン・チョウ)
 配給:ツイン
2015年3月7日(土)より、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

※人気劇画「四大名捕」の映画化シリーズ最終作です。今度はどんなアクションが見られるでしょうね。余談ながら、ウィンドウズ8.1にしたら「」の字がちゃんと出てきてすっごい便利。8.1に対する文句、少し控えようと思います^^。


『ゴッド・ギャンブラー ―レジェンド―』 現地版予告編

2014年/中国・香港/94分/原題:賭城風雲 FROM VEGAS TO MACAU
 監督・脚本:王晶(バリー・ウォン)
 出演:周潤發(チョウ・ユンファ)、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、杜汶澤(チャップマン・トー)
 配給:ツイン
2015年3月7日(土)より、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

※昨年の<したまちコメディ映画祭in台東>で『ヴェガスからマカオへ』と題されて上映された本作、タイトルも新たにお目見えです。う~ん「レジェンド」ですかー。チョウ・ユンファは葛西なみ、ということですね。すでに『賭城風雲Ⅱ』も、チョウ・ユンファ&張家輝(ニック・チョン)&余文樂(ショーン・ユー)で作られている人気シリーズです。まずは、「Ⅰ」からどうぞ。


来日スターとかがいないのは残念ですが、香港映画も話題作は確実に日本で公開されますね。もう現地版VCD(いまだに出ていてDVDよりも安いんです)を旅行のたびに買ってくるのはやめようかな....。


『ミルカ』萌え~<その6>明日から公開:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督インタビュー(上)

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インド映画『ミルカ』、いよいよ明日から公開です。先日来日したラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督にインタビューさせていただきましたので、その詳細をお伝えしたいと思います。


Q:最初にミルカ・シンのパンジャービー語で書かれた自伝「空飛ぶシク教徒 ミルカ・シン」を読んで、この映画の製作を思い立った、と聞きましたが、監督はその中の何に惹かれたのでしょうか。

監督:この本はパンジャービー語、つまりグルムキー文字で書かれていたので、私は読めませんでした。でも、写真がたくさんついていたので、それを目にしたのです。その後友人のお父さんがパンジャービー語が読めたので、一晩かかって読んだあと、内容を話して聞かせてくれました。それでミルカ・シンの少年時代のことや、競技生活のことなど、書かれている内容がわかり、すごい、と思ったのです。
私はもっと知りたいと思って、友人であるスポーツ記者に電話をしました。
「ミルカ・シンと会ってみたいんだけど、アレンジしてくれるかな?」
「いいよ。よく知ってるから任せてくれ」
彼が電話をしてくれて、3日後にはミルカ・シンの家がある北インドのチャンディーがルを訪ねていました。朝のフライトで行き、夕方のフライトで帰ってきたのですが、向こうではミルカ・シンとずっと話をしました。そして会った3日後には、この映画を作ろうと決めていたのです。
ミルカ・シンに映画製作の許可を願い出たところ、彼の元にはそういう申し出がいくつか来ていたにもかかわらず、快く承諾してくれました。その時彼が申し出た映画化の権利料は、たったの1ルピーでした。そこで私は、1960年発行の1ルピー札を渡したのです。物語は1960年から始まりますからね(笑)。
私がなぜ彼の伝記を映画化したいか、という理由を彼に話したのですが、それは彼が偉大なアスリートでたくさんの輝かしい記録を残しているからではなく、余人ができない足跡を残したからなのです。私は、すべての人の中にミルカ・シンを見ました。主婦であろうと、弁護士であろうと、医者であろうと、教師であろうと、どんな人の中にもミルカ・シンがいるのです。
ミルカ・シンは私の気持ちをわかってくれ、とても親切に接してくれました。彼の息子、ジーヴ・ミルカ・シンもとても親切で、「ラケーシュさんに製作許可をあげたら?」と父親に口添えしてくれました。それも、たったの1ルピーで、ですよ。
私も、そうやってキープした資金をすべて映画製作に使うのは申し訳なくて、自分の監督としてのギャラは受け取らないことにしました。ですので、私はノーギャラです。
映画で利益が上がったため、興行収入から1千万ルピー(約1900万円)をミルカ・シンに取ってもらいました。それが2ヶ月前のことになります。


Q:自伝とインタビューに基づいて映画のストーリーは作られていったのだと思いますが、脚本家のプラスーン・ジョーシーとはどのような作業がなされていったのでしょうか。

監督:2人で話し合って、脚本を作っていきました。プラスーン・ジョーシーは、それまで脚本を書いたことはありませんでした。いつも作詞を担当してくれていたんですが、今度は脚本を書いてみないか、まずは台詞を書いてみたら、と勧めたのです。で、その台詞を元に、私が脚本を書きました。私はいつも自分で脚本を、最低限撮影台本を自分で書きます。
この映画は、何と言えばいいか、私にとって最も映画的な過程をたどった作品でした。たとえば、映画のうち1時間10分は台詞がないのです。子供時代のつらい経験のシーンや、難民キャンプでのシーンは、台詞はほんの少しだけです。さらに、映画の最後20分はレースシーンなので、台詞は2つだけです。というわけでこの映画は、撮影が終わって編集テーブルに乗ってから作られていく作品だ、と思うようになりました。ですから完璧な脚本を書きあげて撮影に入る、ということは困難なのです。我々は撮影台本を元に、臨機応変に撮影をしていきました。確固たるストーリーはすでにあるわけですから、難しくはありませんでした。
チャンディーガルにミルカ・シンに会いに行った後、私は2つのシーンを書き上げました。一つは、冒頭のローマ・オリンピックのシーン。今でも憶えていますが、2ページ半にわたる分量のシーンでした。ミルカ・シンは振り返り、自分の子供時代を目にします。暗い子供時代、つまり父親が殺害されるシーンを目にするわけです。
もう一つは映画のラストシーンです。ミルカ・シンは勝利のあと競技場をランニングします。その時彼が横を見ると、子供時代の自分が一緒に走っている、というシーンです。
この2つのシーンを書き上げてプラスーン・ジョーシーに渡し、「さあ、この2つのシーンの間を埋めてくれ」と言いました(笑)。
「これが始まりで、これがエンド。そこに私の物語がある。彼は恐怖から逃げるために走り、その彼は今恐怖を克服して走っている。子供時代の彼は叫び、今子供時代の彼は微笑んでいる。これが始まりと終わりだ」
プラスーンは大きな仕事をしてくれたと思いますね。
もう1人、偉大な仕事をしてくれたのが、編集のP.S.バールティーです。詳しくストーリーを辿って、たくさんの解釈をほどこしてくれました。映画はこういう共同作業で成り立っています。
今回は、基本の素材自体が非常に強力なものでした。飛行機の中のシーンにしろ、姉とのエピソードにしろ、すでに本に書かれて存在しています。我々がなすべきことは、それを映画に翻訳することだけでした。幸運にも手にした強力な素材を、映画的な言葉に移し替えていくのが我々の仕事でした。


Q:そういえば、監督は飛行機のシーンでカメオ出演してらっしゃいましたね。パイロット役でしたが、あれはどういう経緯で実現したのでしょう?

監督:あれは私じゃありませんよ(笑)。私はほら、ヒゲを生やしているでしょう? あのパイロットにはヒゲがなかったし。私は関知していません(爆笑)。

Q:(あらあら、こんなユーモラスな面もあるとは。監督のお人柄は人を引きつけるようです)カメラマンのビノード・プラダーン(カリンポン出身のネパール系インド人で、『アルターフ 復讐の名のもとに』(2000)や『デーウダース』(2002)など著名な監督との仕事も多くこなしている撮影監督)とも『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』以来ずっとタッグを組んでいますね。

監督:ビノード・プラダーンとは3本一緒に仕事をしていますね。私がまだ広告業界にいた頃に知り合ったから、ずっと昔でもう10数年前になりますか。長い間彼と一緒にやりたいと思っていて、『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』でやっと実現しました。
その前に1本撮りたい映画があったんですが、それがテロリズムに関する作品でね。ある国ではテロリストとされる人間が、別の国では自由を求める活動家とみなされている、という内容で、パキスタンの活動家が主人公でした。インドから見るとテロリストになるわけで、誰もそんなストーリーは受け入れられないとして、映画にすることはできませんでした。私は、これは人間の物語なんだ、こちら側から見るとテロリストでも、向こう側では自由を求める活動家になる主人公なんだ、と説明したのですが。
結局このストーリーを撮ろうとして、3~4年の間いろいろやってみたものの、映画にはできませんでした。そんな時ビノード・プラダーンと出会い、一緒に映画を撮ることになったのです。それが『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』ですね。

Q:『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』でアーミル・カーンらが演じる主人公たちも、自由を求める若者である反面、大臣を暗殺したりするテロリストとも言えますが。

監督:いや、彼らはあくまでも学生です。あれは学生についての映画を作りたい、と思ってできた作品です。自分のカレッジ時代の体験に基づいていているんですね。
1977年のインドは非常事態宣言下にあって、暗い時代でした。私がカレッジに入ったのは1980年で、その頃はちょっと事態が変化していました。汚職官僚や国を裏切った政治家が告発されたりして、世の中が変わり始めていたのです。でも、カレッジは居心地よい空間で、車だ、バイクだ、アパートだ、というような話ばかり。その後監督になってみて、友人たちからもそんな話をいろいろ耳にしたので、あの映画を作ってみたのです。
あと、私は空軍関係の高校で勉強したのですが、その時ロシアの戦闘機ミグが学校に置いてありました。中の機器とかはなくて、外側だけだったんですが、学習に使われていました。あとになってわかったのですが、防衛省でミグ戦闘機を巡る大きな汚職事件があって、ある男は200億ルピーもの賄賂を取っていたとか。その戦闘機はまったくの不良品で「空飛ぶ棺桶」と呼ばれており、それが原因で起こった事故で、200人もの若いパイロットが亡くなっています。この事件は腹に据えかねたので、映画の中で描いたわけです。

(つづく。下は監督にサインしていただいた現地版ポスター)


『ミルカ』萌え~<その7>雪の初日

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本日公開の『ミルカ』、雪降る中を日比谷のTOHOシネマズシャンテまで、初日初回を見に行ってきました。この雪ですが、朝起きたときはあまりたいしたことがなく、路面も濡れているだけだったので「楽勝!」と思っていたら、出かける準備に入った9時ごろには横殴りに降り出し、路面もうっすら白くなっていて大慌て。とりあえず家を出ました。寒いよう~~~(><)。


ところがお目当ての日比谷に着いてみると、我が家周辺よりは積雪も少なく、降る雪もすでに雨まじり。そんな中、TOHOシネマズシャンテに急ぎます。すると、1F入口のチケット売り場の前には、日活さん、東宝東和さん、宣伝担当のスキップさんなど関係者の皆さんがずら~り。おお、大手さんの場合、初日初回はこういう勢ぞろいをなさるんですね。初めて見る光景に舞い上がってしまい、写真を撮るのも忘れてしまいました。

というわけで、下は終了後に撮った写真ですが、1Fのエレベーター扉は嬉しい『ミルカ』特別仕様です。公式ツイッターで知ってから、これをカメラに収めるのが夢だったんです~。誰か一緒だったら、ツーショットを撮ってもらえたのに。


上映スクリーンはキャパ201名のシャンテ2。シャンテになってから行ったのは初めてだったのですが、映画評論家の小野耕世さんがほめていらしたように、ここはとても作品が見やすいホールでした。雪が響いたのか観客数は多くなかったものの、満員でも快適に作品が鑑賞できるホールだと思います。というわけで、2時間33分、大画面でたっぷり映画を楽しみました。鑑賞回数はもう軽く10回を超えているのですが、毎回新たな発見があって飽きません。今日は特に、CG使いの場面をあれこれチェックしてしまいました。(CG使いの話、日曜日にアップする予定の「監督インタビュー(下)」で触れていますので、後日ご覧になってみて下さい)下のような競技シーン@スタジアムにもCGが使われていたりします。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

観客の皆さんは熱心に見入ってらっしゃいましたが、エンドクレジットが出るとすぐホールをあとになさった方が数名出ました。これは、トイレに直行なさったのでは、と思います。こういう寒い日、途中に休憩が入らないのはつらいですね~。

パンフレットも買いました。紙が『チェイス!』の時より薄いのですが、内容豊富な、映画鑑賞の手引きになる1冊です。エッセイ寄稿は映画評論家の北川れい子さんと、国立民族学博物館の三尾稔先生。三尾先生の解説がわかりやすいです。パンフ代金は700円、今後の資料にもなりますのでぜひどうぞ。


ところで、本日バッグの中に忍ばせて行ったのは、「ミルカ」のチョコレート。綴りは「Milka」なので、映画の「Milkha」とはちょっと違うのですが、牛さんも描かれているし、勝手に『ミルカ』応援グッズに採用してしまいました。本当はシネコンには外部の食べ物を持ち込んではいけないのですが、長丁場でちょうど昼食時にかかる『ミルカ』、途中でお腹がすいたらそっと食べられる物を、というわけで、「Zinda(生きていくなら)」の歌が力強く流れる中、気兼ねしいしい「ミルカ」チョコを口に運びました。


昨日も使った監督のサイン入りインド版ポスターに、「ミルカ」チョコを持たせてみました(笑)。通販でも買えますが、種類を問わなければ池袋のパルコにあるお店で買えます。上映中の映画館でも売ってくれればいいのにな~。

明日はお天気も回復、また、引き続き晴れが予想されている明後日の日曜日は映画ファンサービスデーで料金が安くなります。『ミルカ』公式サイトの劇場案内をご確認のうえ、ぜひ劇場へダッシュして下さいませ~。


 

インド映画公開情報『インド・オブ・ザ・デッド』

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先日来ツイッターで話題になっているインドのゾンビ映画、近日公開のご案内ハガキが届きました。題名は『インド・オブ・ザ・デッド』、いやはや、人を喰った題名ですねー、って、ホントに人を喰ってしまう系のお話なんで、まあぴったりと言えばぴったりです。勘三郎とクドカンの「大江戸りびんぐでっど」をつい思い出してしまいました。一昨年のインディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパンで上映された時は、『ゴー・ゴア・ゴーン』という原題カタカナ表記のタイトルでしたね。

ということで、マスコミ関係の方でご興味がおありの方は、マジックアワーさんまでご連絡ください。なお、すでに公式サイトができており、予告編もアップされていますので、ボリウッド映画ファンの皆様はこちらをご覧ください。ヒンディー語のカタカナ表記はもちろん、スタッフ&キャスト紹介などもしっかりと詳しく書かれているので、信頼が置けます。ひょっとして、「ナマボリ」さんがゴーストライティングなさったのかしら? クナール・ケームーとソーハー・アリー・カーンの結婚にも触れられているなど、情報も最新のものです。ぜひ公式サイトを覗いてみて下さいね。

私はこの映画、冒頭部分の3バカトリオじゃなかった、3人のサブ主人公の会話に唖然としました。どんな字幕がついているのでしょうねー。DVDを拝見したら、またご紹介しようと思います。

 

『ミルカ』萌え~<その8>ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督インタビュー(下)

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1月29日にアップしたインタビューの続きです。


 Q:監督の奥様は、さっきもお名前が挙がった編集担当のP.S.バールティーさんですね。個人的な興味で申し訳ないのですが(笑)、お二人の出会いはどこでだったのでしょう?

 監督:彼女と出会ったのはずっと前です。広告業界にいた頃でした。彼女はある広告制作会社で働いており、私の方はまだ定職がなくて、ムンバイで仕事を探している時でした。結婚したあと7年間は、彼女が働いて一家の生活を支えてくれました。私はCFを作りたいと思っていたのですが、誰も声をかけてくれなくて、ずっと仕事がなかったのです。ですから、彼女の給料が唯一の収入源でした。

まあ今でも、生活費は彼女に頼っていると言えるかも知れませんね。だって私は、持っているお金を全部映画製作のために使ってしまいますから(笑)。彼女はとてもステキな女性です。私の映画に対してもいいセンスを発揮してくれて、編集を担当してくれています。


Q:『ミルカ』のインターナショナル版は、本当にとても細かい、丁寧な編集がなされています。ここが1秒切ってあるかと思えば、別の所は2秒カットされている、という風に、細部まで神経が行き届いた編集です。3時間9分のインド公開版と比べると、冗長さが消え、愛国主義が薄まっただけでなく、別物のように生まれかわった感じです。

監督:そうなんです、こちらのインターナショナル版の方が、適切なヴァージョンだと思いますね。映画が完成すると、出資者や共同製作者が公開を急がせるんです。すぐにでも公開して、少しでも資金を回収したいと思うんですね。それが何よりも優先されます。

しかしながら私が思うに、できあがった作品は1、2ヶ月置いておいて、再編集を何度もやってみることで、作品で本当に表現したいことがはっきりと見えてくるのではないでしょうか。フィルターをくぐらせるというか、言いたいことをいっぱい詰め込んだ作品を、時間を置くことでフィルターにかけていき、本当に言いたいことを抽出していく。でも、映画の公開が迫っている時は、そんな贅沢な時間などとても持てません。

『ミルカ』は公開から6~8ヶ月置いた時点で再編集したので、不要なものを捨て、取り出すべきものを明確につなぎ合わせることができました。このヴァージョンで、インドでももう一度公開しようと考えているところです。

『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』も、2時間46分のものを2時間20分に再編集する予定です。この映画は大ヒットした作品ですが、それでもあえて短縮ヴァージョンを作ってみたい。人からは、「何で今さら短縮版を?」と言われていますけどね。

『デリー6』の時は、全撮影が終わってから6ヶ月後に、再度撮り直しをしました。最初の部分を変えて、新しいヴァージョンを作ったのです。自分が本当に満足できるものを作ろうとするのは大変ですが、映画が当たろうと当たるまいと、これが満足のいく作品だと証明する機会は残されているわけです。理解を深めて、よりよいものを作りたくなるのはごく普通の成り行きだと思いますけどね

 

 Q:主役にファルハーン・アクタルを起用なさったのはどうしてですか? ミルカ・シンとルックスが似ていたからでしょうか?

 監督:いやいや、ルックスはずいぶん違いますよ。ファルハーンが出演した『Rock On!(ロック・オン)』(2008)とか『人生は一度だけ』(2011)を見てご覧なさい。彼が演じているのは、あけっぴろげで、ギターを弾いて歌ったり、ダンスしたりしている青年でしょ。

彼を起用したのは今考えると、ファルハーンの眼でしょうか。物語にふさわしい、強い眼差しをしていますよね。

私はずっと前から、ファルハーンはいい俳優になれると思ってました。だから、まだ彼が俳優としてデビューする前に、『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』(2006)の役をオファーしたことがあるんです。その時彼は、「ええっ? 僕は演技なんてできないよ」と言ったんですが、「いつか演技をすることになるから、憶えておいて」と言っておきました。そうしたら、俳優に転身した、というわけです。それから7年たって、彼は私の映画で演技してくれることになったわけですが、「ほらね、7年前に僕の言うことを聞いてくれてたらよかったんだよ」と言ってやりました(笑)。

 

Q:ファルハーン・アクタルはシク教徒に扮するために髪も伸ばさないといけなかったし、アスリートとしての体も作らなくてはいけなかったので、長い準備期間が必要だったのでは、と思います。オファーなさったのは撮影に入る何ヶ月ぐらい前ですか?

監督:8ヶ月前ぐらいだと思いますよ。その8ヶ月間、彼にはほかのことはしないで、役作りに集中してもらいました。髪を伸ばし、体を変え、走り方を習得してもらったんです。もちろん彼は走れたわけですが、それをアスリートの走りにするために、技術的な諸点を身につけてもらいました。彼には複数のコーチやトレーナーを付けて、十分に準備してから撮影に入ってもらったんです。

撮影は2ヶ月間続き、それからいったん撮影をストップして4ヶ月間休みを取りました。その間に、ファルハーンには元に戻ってもらったのです。つまり、最初に作り込まれたアスリートとして映画に登場してもらい、4ヶ月後には、まだ何もやっていない普通の状態の青年としての演技してもらいました。

というわけで、長い長い期間、おおよそ18ヶ月間かかった撮影で、それをスクリーンで見てもらっているわけです。大変な仕事だった、と口で言うのは簡単ですが、ファルハーンのこの映画に対する献身は偉大だった、と言うしかありませんね。

18ヶ月間、ファルハーンは他の仕事をまったくしませんでした。彼は監督、俳優のほかに脚本家でもあるのですが、ものを書くことも一切しなかった。というのも私が、「君はアスリートにならなくちゃいけない。この役は、君が演技してできるものではない、ミルカ・シンになり切らないとダメだ」と言ったからで、彼は役になり切ってくれました。素晴らしかったですね。ハードワークのお手本です。

 

Q:ファルハーン・アクタルだけでなく、脇役の俳優さんたちも皆さん素晴らしかったですね。軍隊コーチ役のパワン・マルホトラやお父さん役のアート・マリクはどのようにキャスティングなさったのですか?

監督:まず脚本を書き上げ、その後キャスティングに入ります。第1候補、第2候補、第3候補という風に選んでいき、順番に交渉するわけです。コーチのグルデーウ・シンも、ミルカの父親も、ミルカの姉もそうやって選んでいきました。コーチ役のパワン・マルホトラがまずOKをくれ、それから姉役のディヴィヤ・ダッタが承諾し、さらにビーロー役のソナム・カプールも承諾してくれました。

父親役のアート・マリクの場合は、ちょっと特異なケースですね。彼はこれまで、インド映画には出たことがなかったのです。ずっとイギリスで仕事をしてきた俳優ですから、ヒンディー語も全然知らなかった。でも、私は彼の『トゥルー・ライズ』(1994)や『インドへの道』(1984)、『シティ・オブ・ジョイ』(1992)などの演技に引かれていました。いずれも、素晴らしい演技を見せてくれましたからね。

今回の作品は、登場人物全員が、主演のファルハーンも含めて、リアルに見えないといけない。映画館に行った観客が、画面に自分の好きな俳優を見ることになったら失敗です。好きな俳優が出ている、と観客が意識したとたん、ミルカ・シンにコーチ、父や姉の存在感が消えてしまう。ですから今回は、「アンチキャスト」、つまり普通に行っているキャスティングの逆を行かないとダメ、ということになりました。

とはいえそれは楽しい作業で、頭で考えて選ぶのではなく、本能で選んでいくというキャスティングでした。成功している俳優だから、といった基準ではなく、役柄にピッタリかどうか、という点だけで選ぶんです。それが結果的にうまくいきましたね。キャスティングの最終責任は私にあるのですが、これを統括してくれたのは妻のバーラティーでした。で、彼女がまとめてくれたものに私が最終決定を下す、という手順でした。

 

Q:スタジアムの撮影がいろいろあってあって大変だったと思いますが、全部インドで撮られたのですか? 武井壮さんも、東京アジア大会のシーンをインドで撮影した、と言ってらっしゃいましたが。

監督:そうです。パンジャーブ州のスタジアムと、デリーのスタジアムで撮りました。昔のグラウンドは、今のものとはまったく違っているんです。今のスタジアムは全天候型グラウンドですが、当時は土のグラウンドでした。これをシンダー舗装と言います。当時の土のグラウンドを再現するのは非常に大変でしたから、そういう古いシンダー舗装のグラウンドが残るスタジアムを探しました。パンジャーブ州とかあちこち探して、一つだけデリー郊外に残っているのを見つけたのです。

ですが、スタジアム自体はもうボロボロ状態でした。そこで、我々はグラウンドでのシーンをそのスタジアムで撮って、それをコンピューターで、他の場所で撮った観客がいるシーンと合成したのです。スタジアムにたくさん人がいるシーンを撮って、それをいろんなテクニックを使用しながらコピーしていく。こうして、スタジアムに何十万人という人が集っているシーンが完成したわけです。ただ、競技シーンは常にカメラが動いていきますから、背景となる客席の合成は、普通の合成に比べるとかなり難しい。完成したものがリアルに見えるよう、慎重に作業をしていったのですが、すごい技術ですね。

映画を撮り終えてから丸1年は、こういったポスト・プロダクション作業にかかりきりでした。しかし、もっとも大変だったのは、こういった技術面のことではなくて、資金集めでした。技術面では、今は何でも揃っていますからね。

技術面の参考にするのに、世界中の映画をたくさん見ました。最近のハリウッド映画で、『インビクタス/負けざる者たち』という、モーガン・フリーマンとマット・デイモンが主演した作品があります。南アフリカが舞台で、ネルソン・マンデラが登場するラグビーの話です。この映画がスタジアムシーンを工夫してい撮っている、というので、そのテクニックを詳しく調べて、インドではどう実現できるか考えたりもしました。

とにかく我々は、常に製作費と戦っていましたね。何せお金がない上に、とても難しい作品なのですから。有名スターを使ったラブストーリーなどではないこういう作品は、本当に大変でした。ぜひ、たくさんの方に見ていただきたいと思っています。

Q:長時間ありがとうございました。

 


監督からは、プレゼントを頂戴しました。『Rang De Basanti(愛国の黄色に染めて)』の最近出たDVD(本編とメイキング・ドキュメンタリー『Ru Ba Ru(面と向かって)』の2枚セット)と、撮影用脚本(ヒンディー語&英語対訳)本です。アーミル・カーン、シャルマン・ジョーシー、R.マーダヴァンの『きっと、うまくいく』トリオが出演しているこの映画の、新ヴァージョンも見てみたいですねー。

『ミルカ』の公式サイトはこちらです。公式ツイッターには、皆様の感想がいろいろとリツイートされています。お、何やら監督のサイン入りプレゼントのお知らせが。ぜひのぞいてみて下さいね。

 


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