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週末はタミル語映画三昧~『OK Darling』@TIFF+タミル語映画2本@イオンシネマ市川妙典

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東京国際映画祭の上映作品『OK Darling』の字幕がやっと終わりました。今回の字幕制作会社は初めてお仕事をご一緒する所だったのですが、非常に丁寧にやって下さったものの、スポッティングの取り方で私と見解を異にしたため、ちょっと手間取ってしまいました。この瑞々しい作品を皆さんがどう見て下さるか、今ドキドキしながら10月25日(日)の初上映を待っているところです。TIFFの公式サイトで時間、場所をご確認の上、ぜひお出かけ下さい。 

『OK Darling』

OK Kanmani - Trailer 1 | Mani Ratnam, A R Rahman

2015年/インド/タミル語/132分/原題:O Kadhal Kanmani
監督:マニラトナム
音楽:A.R.ラフマーン
主演:ドゥルカル・サルマーン、ニティヤー・メーナン、プラカーシュ・ラージ、リーラー・サムソン

主題歌と言える「Mental Manadihil」の映像が一部、YouTubeにアップされていました。

OK Kanmani - Mental Manadhil One Minute Video Song | Mani Ratnam, A.R.Rahman

サビの部分のタミル語歌詞をローマナイズしたものを付けておきますね。 

♪ Mana mana mana mental manadhil
 Laka laka laka pollaa vayadhil
 Taka taka taka kottum isaiyil
 Ok en kanmani madiyil

さて、私の訳は? このほかにも、A.R.ラフマーン作曲による、美しい曲がいくつも入っています。


そのラフマーンを取り上げたドキュメンタリー映画『ジャイ・ホー~A.R.ラフマーンの音世界』もTIFFで上映されます。初お目見えは10月24日(土)。こちらもTIFF公式サイトでぜひご確認の上、会場にお運び下さい。


♪  ♪  ♪  ♪  ♪

そして、今週末はさらに、南インド映画上映会でもタミル語映画が2本上映されます。いつものようにPeriploさんからいただいた情報です。数日前にいただいていたのに、掲載が遅くなってすみません。 

『10 Endrathukulla(10数える前に)』

10 Enradhukulla.jpg

2015年/タミル語/149分/英語字幕
 監督:ヴィジャイ・ミルトン
 主演:ヴィクラム、サマンサ、パスパティ、ラーフル・デーヴ、アビマンニュ・シン

■日時:2015年10月24日(土)午後2:00~
■会場:千葉県市川市、イオンシネマ市川妙典 アクセス
■料金:大人2,400円
■主催:CelluloidJapan HP 


Periploさんの詳しい解説サイトはこちら。 予約方法なども解説してありますので、ぜひ見てみて下さい。ヴィジャイ・ミルトン監督は、私の大好きな映画『Goli Soda(ラムネ)』(2014)の監督で、カメラマンとして長く活躍してきた人です。今度の作品は、娯楽大作という感じ。『神さまがくれた娘』(2011)のヴィクラムと、『マッキー』(2012)のサマンサ・ルス・プラブの共演、見ものですね。(「インド映画完全ガイド」ができてから、日本公開作の製作年を調べるのがとっても楽になりました。自画自賛♡)

10 Endrathukulla - Official Trailer | Vikram, Samantha | D. Imman | Vijay Milton

そして、もう1本はこちらです。

『Naanum Rowdy Dhaan(俺様だってラウディーだぜ)』

Naanum Rowdydhaan Promotional Poster.jpg

2015年/タミル語/150分/英語字幕
 監督:ヴィグネーシュ・シヴァン
 主演:ヴィジャイ・セードゥパティ、ナヤンターラ、パールティバン、ラーディカー、サラトクマール

■日時:2015年10月25日(日)午後2:00~
■会場:千葉県市川市、イオンシネマ市川妙典
■料金:大人2,300円
■主催:SpaceBox HP

Naanum Rowdy Thaan

Periploさんの詳しい解説サイトはこちら。「ラウディー」ですが、英語の意味する「乱暴な、ケンカ好きの」で使われているのか、それとも、ボリウッド映画『Rowdy Rathore』の主人公のことを指しているのか、どちらでしょうね。主演のヴィジャイ・セードゥパティは、「インド映画完全ガイド」の中で、「『ピザ』で脚光を浴び、その後も話題作での怪演ぶりが著しいヴィジャイ・セードゥパティも今注目すべき俳優のひとり」(深尾淳一「タミル語映画のいま」、P.125)と書かれている男優。少々ヒーロー顔からははずれたご面相ですが、どんな活躍をするのか見てみたいですね。

Naanum Rowdy Dhaan - Official Teaser | Vijay Sethupathi,Nayanthara | Anirudh | Vignesh Shivan

では、今週末はタミル語映画三昧、ということで、皆様楽しんで下さいね。



『マルガリータで乾杯を!』カルキ・ケクラン・インタビュー(上)

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いよいよ今週土曜日、10月24日から、インド映画『マルガリータで乾杯を!』が公開されます。詳しい公開情報は公式サイトをご覧いただきたく思いますが、現在発売中の「キネマ旬報」P.110には、ショナリ・ボース監督(下写真)へのインタビューが掲載されています。

 

そのボース監督の前日にインタビューさせてもらったのが、主人公の脳性マヒの女子大生ライラを演じたカルキ・ケクラン。今回は2回にわたって、彼女とのインタビューをお伝えしましょう。カルキは1984年1月10日インドのポンディシェリー生まれ。両親はフランス人で、南インドで大きくなった人です。

Q:イギリスで演劇の勉強をして、俳優として活動なさっていたのに、なぜインドに戻って俳優になろうと思われたのですか? 

カルキ:私はインドで生まれたので、インドが私の故郷なの。兄や両親もインドに住んでいるし、故郷のインドに戻って働くというのはごく自然の成り行きだったのよ。 

Q:お生まれは南インドで、タミル語圏で成長なさったんですよね? 

カルキ:そう。南インドのタミル語の地域で大きくなりました。 

Q:タミル語映画界ではなくて、どうしてヒンディー語映画界で活躍なさるようになったのですか?

カルキ:それは偶然そうなったの。特にボリウッドで働こうと思っていたわけではなく、それまで訓練を受けていた舞台俳優の仕事がしたいと思って探していたら、ムンバイのある劇団で仕事がみつかったんです。アトゥル・クマール(Atul Kumar)の劇団で、「カンパニー・シアター(Company Theatre)」という、そのものズバリの名前の劇団よ。その後も、いろんなオーディションを次々と受けたの。映画のオーディションもあれば、テレビのオーディションもあったりして、それで徐々に映画界で働くようになったわけ。でも、その頃は誰も、私がタミル語を話せるとは知らなかったのよ。タミル語映画界からオファーが来るようになったのは最近、ここ2年ぐらいね。とはいえ、まだ興味を引かれる作品がなくて。 

Q:最初の出演作は『デーヴD』(2009)でしたね。あの作品はとてもユニークでしたが、最初に映画にお出になってどうでしたか? 

カルキ:仕事が来たのが嬉しくて興奮した、というのが正直なところ。最初の映画って、ただただ「ワォ」という感じでしょ? 私にとって大変だったのは、それがヒンディー語の映画だったこと。その頃はまだ、南インド出身の私のヒンディー語はひどいものだったので、2ヶ月間にわたって、家庭教師にヒンディー語を特訓してもらいました。
それから、カメラの前で演技するのも初めての経験だったので、知らないことばかりだった。ロングショットならそれがどう写るのか、ということを理解するために、膨大なエネルギーを使う必要があったわ。
もちろん、脚本も気に入ったし、役柄も気に入ったんだけどね。古典的な物語である「デーヴダース」を現代的に解釈する、という、大変オリジナルな試みでしょ。幸運だったのは、監督のアヌラーグ・カシャプが私を生かすキャラクターを考えてくれたこと。憶えているでしょ、私が映画の中で、タミル語、フランス語、英語をしゃべる娼婦、という設定になっていたこと。 

Q:新しい解釈の「デーヴダース」ですが、あなたの役チャンダーは、以前のヴァイジャヤンティマーラーやマードゥリー・ディークシトが演じた娼婦チャンドラムキと重なるところがあって、オーソドックスな面も見えて面白かったです。 

カルキ:そうなのよ、あの役はヴァイジャヤンティマーラーやマードゥリーといったボリウッドの大女優がやってきた役でしょ。でも私が言われたのは、彼女たちと同じじゃダメだ、ということだった。この映画を『デーヴダース』だと思っちゃいけない、今のインドのお話なんだ、と言われたの。だから以前の映画をまねしたりしなかったし、映画自体もラストが全面的に変えてあるでしょ。『デーヴダース』のお話は、最後に主人公のデーヴダースが死ぬけれど、『デーヴD』では希望を持たせるラストになっているわ。 

Q:ラストシーンは、グル・ダットの『渇き』みたいでしたね。 

カルキ:私の大好きな映画! 『渇き』は大好きなヒンディー語映画の1本よ。『デーヴD』でも、最後は二人で去っていく形でしょ。 

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and Ishaan Talkies

Q:『マルガリータで乾杯を!』は脚本を読んですぐに「やりたい!」とおっしゃったそうですが、どこに一番惹かれましたか? 

カルキ:それは、脚本を読み終わると同時に疑問がいっぱい出てきたこと、かしら。もし私が何でも知っていたら驚きもしなかったと思うけど、こういう分野は私にとって未知の分野だったの。障がいについては知っていたけれど、障がい者の性の問題についての映画なんて、聞いたことがなかったし、考えたこともなかった。だからこそ、私にはすごいインパクトがあったのよ。私はこんなに疑問だらけなのに、劇中の人物はそれを何も疑問に思っていない。これって、とても興奮するような、これまでにないユニークなテーマじゃない、と思ったわけ。 

Q:準備段階で、監督とはどういう話をしましたか? 

カルキ:すごくたくさん話をしたわ。まず、障がいのある人を正確に描かないといけないということがあった。監督の従妹のマリニは障がい者なので、私は彼女と一緒に長い時間を過ごしたの。彼女は素晴らしい人で、私を自分の生活の中に受け入れてくれた。彼女の日常を辿らせてくれて、家に一緒に住まわせてくれた。私たちは一緒に出かけてお酒を飲んだり、映画を見たりしたわ。彼女の職場にも行ったし、彼女が身体療法士や発声療法士の所に行くのにも付いていった。
だから、外で彼女がどういう風に見られて、どういう風に扱われるのかということもよくわかった。彼女は自宅にいる時のくつろぎを、外では得られていない。いくら周囲の人が理解があってもね。彼女はADAPTという障がい者センターで働いていて、同僚はみんな障がい者だから問題は起こらない。でも、インドでは、外で障がい者を見かけるというのはまれなの。街は段差がいっぱいあるし、障がい者にはやさしくない。こういうことは頭ではわかっていたし、本もいっぱい読んで、筋肉の動きとかも理解してたんだけどね。
本当に、実際にやってみないと何事もわからないのよね。訓練は1日おきにあって、肉体の動きがどうなっているのか、とかがわかるようになってきた。そして、マリニが何よりも私に教えてくれたの。ある日私たちは車椅子に乗って、揃って外出した。最後にさようなら、と言ったらマリニは、「1日が終わればあなたは車椅子から立ち上がり、歩いて行ける。それが私とあなたの違いね」と言ったの。
それを聞いて私は、ずっと車椅子生活を続けてみることにした。ズルを一切しないで、四六時中ライラになること。それをやってみて、映画にとても役立ったわ。フラストレーションも感じたしね。だって、ほとんどの人が私を本当の障がい者だと思って見るし、そのように扱おうとしたんだから。 

Q:マリニさんはどういう女性でした? 

カルキ:彼女はライラそのものだったわ。とっても明るくて、いたずら好きで、生きる楽しさを知っている人。絶えず前に向かって進む人ね。恋に憧れを抱いてて、ミルズ&ブーン社のロマンス小説なんかよく読んでいるの。そして、障がいを持つ女性の性行動について書いたりもしている。とても情熱的だけど、同時にシャイでもある。
彼女は人が自分をどのように見るのかがよくわかっていて、それにいらだつこともあるけれど、同時にとても謙虚なの。協調性があって、いつも接する人をリラックスさせようとしてくれる。彼女に接する人がちょっと神経質になっていると、冗談を言ったりして和ませようとしてくれる、そういう人なの。 

Q:障がい者としての演技は、彼女をかなり参考にしたのですか? 

カルキ:大部分はね。でも、彼女をまねしたり、コピーしたりはしなかった。というのは、障がい者の人って、みんなそれぞれに違っているの。同じ人なんて絶対にいない。ライラを作り上げる時、マリニの障がいとか話し方や動き方は参考にはしたけれど、それはマリニのコピーではないわ。私は障がい者の人をたくさん見て、ライラを作り上げた。でも、マリニの態度というか、どういう風に微笑むかとか、笑うのかとか、そういうのはまさにマリニよ。
とはいっても、私はマリニを丸々コピーしたわけではなく、私なりの習慣--いや、習慣じゃないわね、身体的動きとでも言うか、う~ん、説明しにくい...。あなたがもしミュージシャンだとしたら、いちいち考えて演奏したりしないでしょ? それはもう身体の一部になっていて、体が記憶している。そういうやり方にしていったの。何度もやるうちに、体が憶えていくわけね。だから、撮影が終わってから出かけた時に、無意識にコップをこんな風に(と、ライラがやるようにコップに手をかぶせて持つしぐさ)持ってしまってたの(笑)。自分の生活の一部になってしまってたのね。 


Q:ライラという女性のキャラクターに関してはどう思われますか? ほんとにフツーの女の子みたいで、恋もするし、振られたらもう大学にいたくない、とわがまま言うし。 

カルキ:それがこの映画の脚本が素敵なところよね。普通障がい者が主人公の映画と言ったら、主人公のキャラクターは天使みたいで完璧な人、と決まっている。どの主人公もすごい人ばかり。障がい者で有名な人、ホーキング博士やクリスティ・ブラウン(『マイ・レフトフット』の主人公)の映画がそうよね。私たちはごくごく普通の障がい者が主人公の映画って、見たことがない。
だから、この映画は見てるととても新鮮に感じると思う。ライラは完璧じゃないし、いたずら好きで、ずうずうしくて、気まぐれだから、しばらく見てるうちに観客は彼女の障がいを忘れてしまう。普通の十代の女の子と、彼女の感情の動きを見ているつもりになってしまうのよ。そこがこの映画のいいところなの。
つまり、障がい者だって、ほかの人と同じように見るべきなのよ。だって、私たちも、みんなそれぞれ不自由なところを持っているわけでしょ。人それぞれに限界があるんだし、生きていく上でそれにどう対していくか、というのは同じじゃない?

※(下)に続く。


 

<TokyoDocs5周年上映会:COLORS OF ASIA>にアジアの映画監督が登壇!

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今日&明日のイベントだというのに、お知らせするのが遅すぎなんですが、ちょっと告知を。現在ポレポレ東中野で開催中の<TokyoDocs5周年上映会:COLORS OF ASIA>では、日本、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドのドキュメンタリー作品が上映中です。詳しくは下のチラシをご覧いただければ、と思いますが、本日と明日には、日本のドキュメンタリー映画制作会社とコラボを行ったアジアの監督たちが登壇します。

10月22日(木) 20:30~
上映作品『少女たちの子守歌』(2015/ベトナム・日本/30分)
    『日陰の人生よ さようなら』(2015/マレーシア・日本/30分)
トーク:ハー・トゥク・バン(ベトナム)
    ノルハヤティ・カプラウィ(マレーシア) 

10月23日(金) 20:30~
上映作品『日曜日のシンデレラ』(2015/フィリピン・日本/30分)
    『秘伝のレシピを守れ』(2015/インド・日本/30分)
トーク:デクスター・デラ・ベニア(フィリピン)
    デブ・バッタチャリャ(インド)


デブ・バッタチャリャ監督の『秘伝のレシピを守れ』は、被差別カーストのダリトが食べてきたパン「ランダニロティ」の話だとか。面白そうですね~。(「ランダニ」の綴りがわからないので、どなたかご教示下さい。「ロティ=ローティー」はパンのことです)

上映の詳細は、ポレポレ東中野のHPをどうぞ。おお、池谷薫監督のチベット問題を扱った秀作ドキュメンタリー映画『ルンタ』も上映中ですね。


© Ren Universe 2015

『ルンタ』をご覧になっていない方は、2つのプログラムを続けてぜひどうぞ~。

 

『マルガリータで乾杯を!』カルキ・ケクラン・インタビュー(下)

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本日より、第28回東京国際映画祭が始まりました。明日からはTIFF上映作品の紹介となるこのブログですが、その前に昨日の続き、『マルガリータで乾杯を!』の主演カルキ・ケクランのインタビューです。


Q:ライラの家庭はとてもユニークですね。父親はパンジャーブ州の人でシク教徒、母親はマハーラーシュトラ州の人でヒンドゥー教徒。弟がいるのですが、シク教徒の格好はしていない。さらに、ライラはインド北東部アッサム州出身のバンドのボーカリストを好きになるし、この映画はすべて「バリアを越える」という意識で作られているように思われます。そういう「バリアを越える」ことを意識しながら演技をなさいましたか?

カルキ:うーん、意識していたとは言えないわ。もちろん、そういうことは脚本を読んだ段階で知っていたけどね。ショナリ(・ボース)は社会的な視点をしっかり持った監督なの。政治社会学を学んで、特にあらゆるマイノリティの問題に関しては詳しいわ。だから、脚本にもそういったことを盛り込んでいる。でも私が演技している時は、そういう頭で理解するような観点では演じていなかったと思う。家族とは感情面で繋がった関係でいたから、父親はシク教徒で、母はヒンドゥー教徒、なんて意識はしてなかった。あなたは私の父であなたは私の母、ごく普通の家庭、と思って演技してた。もちろん、世界中の他の家庭とまったく同じじゃないけど、さっきのようなことは演技中には全然意識しなかったわ。

Q:劇中ではベッドシーンなど大胆なシーンもあったりしましたが、特に難しかったのはどのシーンでしたか?

カルキ:(笑って)全部難しかったわ、フフフ。確かに、ベッドシーンは大変だった。頭では完璧に理解できていて、ベッドシーンは絶対に見せる必要がある、障がい者がセックスをするなんて普通の人は想像もできない、そんな側面はすっぽり抜け落ちてるんだから、提示しなくちゃ、とわかってはいた。でもね、いざやるとなると、その場で10人ぐらいの人が見ているわけよ(ハッハッハと大笑い)。全裸になって、文字通りハダカになってやらなくちゃならないのよ。
一つ、笑ってしまうエピソードを教えるわ。ウィリアム・モーズリーが演じたジャレットとのベッドシーンの時だけど、私が服を脱いだら助監督の1人がショナリにそっと耳打ちしているのが聞こえたの。「カルキは肌の色が白すぎる」そこでメイクの人が私の胸をドーランで塗ったの(笑)。まあそんな大変だったシーンもあったけど、ラッキーだったのは監督もカメラマンも女性だったということね。女性スタッフだったことで、私も割とリラックスしてできたわ。多分モーズリーもそうだったと思うけど(笑)。

Q:インドでは全くカットされないで上映されたのですか?

カルキ:そうよ。ジャレットとのベッドシーンが8秒だけカットされたけど、それ以外はカットなしだった。私とハヌムのシーンもそのままよ。

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 and Ishaan Talkies

Q:観客の反応はどうでした? アーミル・カーンの賞賛ツイートとか批評家の反応は知っているのですが、ごくごく一般の観客はどうだったのでしょう?

カルキ:ボリウッド映画界からはすごくいい反応が返ってきたわ。でも公開に際しては、我々はとっても心配していたの。同性愛に関して抗議行動が起こるに違いない、と思ったし。だって、同性愛はインドでは違法なんですものね。

Q:え、違法なんですか!?

カルキ:そうなの、また違法になってしまったのよ。合法だったのは2年間だけ。その2年間だけ、あなたは同性愛者でいられたわけよ(笑)。ひっくり返されたのはモーディー政権になる前ね。右翼からすごい圧力がかかって、政府がまた非合法にしてしまったわけ。
だから観客の反応を心配していたんだけど、公開の時にあちこちの映画館に行って反応を見てたら、驚かされることばかりだった。観客は映画に圧倒されてたの。若い人も多くて、中には親や祖父母と一緒に見に来てた人もいた。幅広い世代が一緒に見に来てくれていたの。映画の中では家族の心の絆が描かれているので、世代のギャップを感じている人などはライラと母親の関係を見て、その対立とかからもいろいろと感じるところがあったみたい。子供の方は親から自立したい、現代的な生活がしたいと思っている。一方母親の方は子供を庇護の元におきたいと思っていて、子供に対して危惧を抱いている。たくさんの人が家庭問題を抱えているので、映画にすごく共感し、それ以外の部分も受け入れてくれたのだと思う。
映画は当初、1週間で上映終わり、と思われていたんだけど、5週間も上映されたのよ。

Q:すごいですねー。インド中で公開されたのですか?

カルキ:そう、インド全国の250スクリーンで公開されたの。

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 and Ishaan Talkies

Q:インド映画界全体に対して、カルキさんはどういう印象を持ってらっしゃいますか?

カルキ:ボリウッド映画界は今、とてもエキサイティングだと思うわ。変化もめまぐるしいし、いろんなことが起きているから。これまでのイメージは、定型化した映画、メインストリームの大作映画でしょうけど、それ以外にインディーズ系の作品がここ10年ぐらいの間にたくさん作られるようになった。
特にヒンディー語以外の映画では、そういうインディペンデント作品で素晴らしいものが出てきてるわ。例えば、私が見た中で最高の作品の一つに挙げられる、マラーティー語映画の『裁き』とかね。日本でも上映されるんでしょ?(注:アジアフォーカス・福岡国際映画祭2015で上映)プロデューサーが友人なので、そんな話を聞いたわ。この映画はとても美しい映画で、こういう真実の映画、真実の出来事の映画を見られるなんて素晴らしいと思う。
バランスの取れた映画作りが進んでる、なんていいじゃない? 私も、商業映画にも出るし、そういったインディーズ系の作品にも出演している。できれば両者に出続けたいわ。私にとってはいい時代ね。

Q:『若さは向こう見ず』(2013)のようなゴージャスな作品と共に、『シャンハイ』(2012)のような作品にもお出になる、というわけですね。今後どういった作品に出演していきたいですか? 一緒に仕事をしたい監督はいますか?

カルキ:私はあらゆる種類の映画に出てみたいわ。俳優としては、自分が挑戦できる役をやってみたいし、少々怖じ気づくような役を、自分の背中を押してやってみたい。
監督は、インド人監督ならヴィシャール・バールドワージね。彼の作品は本当に大好きなの。彼こそインディーズ系と商業作品の両方を撮っている人でしょ。強力なプロットを立てる力があるし、同時に音楽的にも優れた作品を作るのよね。音楽監督としてたくさんの作品を手がけていて、彼の曲も大好きなの。彼はシェークスピア作品が好きで、「ハムレット」「マクベス」「オセロ」を翻案してインド映画にしているわ。ホントに彼の作品って素晴らしいの。
あと、新人監督とも仕事をしてみたい。『Udaan(飛翔)』や『略奪者』のヴィクラマーディティヤ・モートワーニー、アーミル・カーン主演作『Talaash(捜査)』を撮った女性監督リーマー・カーグティーとか。
聞きたいのはインド人監督とのことよね?(笑)。世界中の監督で言うと、ラース・フォン・トリアー、スディーブン・ソダーバーグ、マーチン・スコセッシ、スピルバーグ...(アハハと笑いながら)わかるでしょ? あと、ミシェル・ゴンドリーとか。日本の監督は知らないんだけど、北野武監督の『菊次郎の夏』とかはよかったわ。

Q:日本映画は結構ご覧になってるんですか?

カルキ:黒澤明監督の作品はいろいろ、演技の勉強をしている時に見たわ。でも、現代の作品って、ほとんど見ていないわね。時間があったら、DVDを選んで買って帰りたいわ。

Q:あと、ご自分が目標にしている女優さんとかはいますか?

カルキ:タッブーよ、知ってる?(もちろん!) 彼女は目を見張るようなすごい女優なの。仕事を自覚的に選んでるし、タッブーが出ている映画に行けば、絶対いい作品に当たる。それから、メリル・ストリープも大好き。ジュリエット・ビノシュも好き。あと、スミター・パーティルの演技も好きだったわ。美しい女優だったけど、若くして亡くなってしまって残念ね。


Q:インドの女性問題についてよく発言してらっしゃいますが、今のインド女性が置かれている状況について、何か考えておられることはありますか?

カルキ:ちょっと考えさせてね...。私、新聞を開くのが怖いの。だって、いろんな事件が載っているんだもの。女性に対する犯罪がたくさん報道されているでしょ。女性にとってレイプ被害に遭ったという記事が載ると結婚もできなくなるから、以前は報道すらされなかったの。その点では、報道されるようになったのは評価できると思う。
やるべきことはたくさんあるけど、特に大都市の人々の自覚を促すことが大事ね。男性のあからさまな視線とか態度に対して、きちんと戦わないとダメ。今は、こういう問題に関して討論をする人々や場が増えたこと、それから、ドキュメンタリー作品とかが出てきたことなどが評価できるわね。素晴らしいドキュメンタリー作品も作られていて、例えば二シャー・アフージャーの『The World Before Her』は、現在のインドにおける女性の状況をしっかりと捉えているわ。

Q:日本にもカルキさんのファンができつつあるんですが、そのファンに対して『マルガリータで乾杯を!』をこんな風に見て下さい、というメッセージがありましたらぜひ。

カルキ:この映画を鏡にして、あなた自身を見て下さい、ということかな。この映画は、あなたについての映画、あなた自身を愛するための映画なんです。この映画のメッセージは、あなたがどんな人でもあなた自身を受け入れなさい、というものなの。この世界で生きて行くことは、すごいプレッシャーにさらされること。特に10代の人たち、子供と大人の中間にいる人たちにとってはそうだと思う。世の中に適応し、何者かになっていかなくてはいけないプレッシャーがある。そういう時に大事なのは、自分の内なる声に耳をかたむけること、自分を評価すること、自分のオリジナリティを大切にすること。だから、この映画はあなた自身の鏡となりうる作品なのよ。

Q:日本にいらしてみて、どんな印象を持たれました?

カルキ:オオ、ワアオ! 他のどんな文化とも違うわね。これまでに経験したことのない文化の国だわ。
一つには奥ゆかしさ、みんなとっても丁寧じゃない? それから、細部に対してこだわるところ。例えば、ホテルの部屋のベッドに折り鶴が置いてあるとか、トークの時のマイク、普通置くと大きな音がするでしょ、それを避けるために刺繍した布が机上に置いてあるとか。それがすごいなあって思ったわ。細部にまで神経が行き届いているのよね。
それにもちろん、お寿司はインドで食べるよりはるかにおいしかったし(笑)、本当に日本食って大好きよ。とても健康的で、動物性タンパク質が使ってないでしょ。だからみんな長生きなのね。今回はすごく楽しい時間を過ごさせてもらったわ。

Q:また来て下さいね。

カルキ:もちろんよ!

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

あなたも、カルキ・ケクランのライラとぜひ出会って下さい。10月24日(土)から公開の『マルガリータで乾杯を!』の詳細は、公式サイトでどうぞ。予告編も見られます。


第28回東京国際映画祭:私のDAY 1

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本日より、東京国際映画祭(TIFF)に出勤です。本日は何と、つるつると5本も見てしまいました。初日からこんなに飛ばすと、あとでバテそうですが、いずれも面白い作品で、寝落ちゼロの楽しい映画祭初日となりました。簡単に、見た作品と遭遇したゲストのご紹介をしておきます。 

『民族の師 チョクロアミノト』
インドネシア/2015年/インドネシア語/160分/原題:Guru Bangsa Tjokroaminoto
 監督:ガリン・ヌグロホ
 主演:レザ・ラハディアン、チェルシー・イスラン、タンタ・ギンティン

 

とっても骨格のしっかりした、見応えのある作品でした。後半では若き日のスカルノ大統領も登場する、インドネシア独立闘争の初期を描いた作品です。驚いたのは、パキスタン建国の父ジンナーが設立した全インド・ムスリム連盟のことが登場するのは、主人公たちがイスラームをバックボーンとした団体を結成することからもわかるとして、ガンジーの非暴力闘争や、タゴールの詩なども登場するという、インドの植民地闘争への言及の多さ。インド好きの人が見ると、感銘を受けるのでは、と思います。

 

チョクロアミノト一家の使用人として、インドネシア映画界の大物女優クリスティン・ハキムが出演しているのですが、見終わってホールの外に出たらその彼女がいてびっくり。試写をご覧になっていた元岩波ホールの大竹洋子さんを待っていたようで、仲良く記念撮影しておられました。クリスティン・ハキムはこの映画のプロデューサーでもあります。


『ぼくの桃色の夢』
中国/2015年/中国語/100分/原題:我的青春期
 監督:郝杰(ハオ・ジエ)
 主演:包貝尔(バオ・ベイアル)、孫怡(スン・イー)、(ワン・ポン)

 

東京FILMeXでお馴染みのハオ・ジエ監督の新作です。先にご紹介した現地ポスターそのままの内容で、いわば台湾映画『あの頃、君を追いかけた』(2011)の中国版、といったところ。でも、マドンナ役が楚々とした美人なのに対し、主人公の少年の高校以降があまりにも.....で、あまり入り込めませんでした。さらに、これまでのハオ・ジエ監督作品に見られた、地方の本音が鋭い社会批評となっている部分が弱くて、毒気が少ないのも物足りず。まあ、笑える要素は満載で、途中主人公の通う中学校に悪ガキ4人組が転校してくるところでは、流れるBGMに大笑いしてしまいました。香港電影迷なら、きっとツボりますよ~。

 

いつもと違って、プレス上映のあとに同じ場所で記者会見が行われたのですが、次の作品が押していた私は失礼してしまいました。でも、廊下で会った主演女優のスン・イーは、劇中のマドンナに輪をかけた美女で、ちょっとクラクラ。となりの丸坊主の人が、ひょっとして主演男優のバオ・ベイアル??? 

『キッド・クラフ~少年パッキャオ』
フィリピン/2015年/フィリピノ語/108分/原題:Kid Kulafu
 監督:ポール・ソリアーノ
 主演:ブーボイ・ビリャー、アレサンドラ・デ・ローシ、セーサル・モンタノ

 

実在のボクサー、マニー・パッキャオの半生を描いた作品で、『ホセ・リサール』(1998)等に出演した二枚目俳優セーサル・モンタノ(以前は確かセサール・モンタノ)がパッキャオの叔父役で出演。甥がデビューした時のリングネームに、自分が愛飲している酒の名前「クラフ」をつけるという、いいかげんな男を演じています。途中で出番がなくなり、最後に一瞬また出演、というのは、ほかの映画と掛け持ちしていたから、とかかも。

 

『百日草』
台湾/2015年/中国語/96分/原題:百日告別
 監督:林書宇(トム・リン)
 主演:林嘉欣(カリーナ・ラム)、石頭/石錦航(シー・チンハン)、馬志翔(マー・ジーシアン)

ピアノ教師だった妻を亡くした男と、同じ事故で婚約者を亡くした女性のそれぞれの物語が進行。仏教施設で二人は出会っているのですが、二人はお互いにそれぞれが事故の当事者だったことを知らないまま。初七日、四十九日、百か日等の説明が画面に現れ、二人の苦悩が描かれるのですが、納得できない部分があって、私にはいまひとつでした。行くはずだった新婚旅行のルートをカリーナ・ラムが一人で辿る場所として、沖縄が登場します。 

『風の中の家族』
台湾/2015年/中国語/126分/原題:風中家族
 監督:王童(ワン・トン)
 主演:楊佑寧(トニー・ヤン)、郭采潔(アンバー・クオ)、郭碧婷(ヘイデン・クオ)、胡宇威(ジョージ・フー)

 

こちらも、さすがワン・トン監督の作品、という感じで、感覚は古いものの、中国大陸での国共内戦の敗退により、台湾に逃げてきた国民党兵士の物語をきっちりと見せてくれる作品でした。トニー・ヤン始め、ヘイデン・クオらが時代の移り変わりを上手に表現、丁寧な時代考証とあいまって、庶民レベルの戦後台湾史を画面に蘇らせてくれます。個人的には、ワン・トン監督や侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の作品でお馴染みの張世(チャン・スー)が麺屋台の客で出演していて嬉しかったものの、おじさんになっていて少しだけがっかり。子役の少年が個性的でかわいかったです~。



 

<TUFS-Cinemaインド映画上映>プログラム決定!

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前に短い告知の告知(?)を出した、インド映画上映@東京外国語大学(Tokyo University of Foreign Studies=TUFS)の詳細が決まりました。すみません~、時間がないので、チラシ画像の裏表をアップします。


詳細は、公式FBでもご確認いただけます。今から土曜日の予定に入れておいて下さいね!


 

第28回東京国際映画祭:私のDAY 2

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TIFF出勤2日目。電車の乗降口も、六本木駅の出口に近いところにちゃんと乗れるようになりました。ヒルズに近い出口から出ると、例年のようにポスター街道となっています。


地上というか、ヒルズの中庭にもポスターの掲示板があります。でも、昨年から経費節減で、お祭り気分を煽るアイテムは控えめになりました。


さて、そんな中本日は、TIFFで上映されるインド映画2本をDVDで一歩先に見ることに。それと、プレス上映で中国映画を1本見ました。 

『ジャイ・ホー~A.R.ラフマーンの音世界』
2015年/インド/ドキュメンタリー/英語・ヒンディー語・タミル語/分/原題:JAI HO- A Film on A.R. Rahman
監督:ウメーシュ・アグルワール
本人出演:A.R.ラフマーン、アンドリュー・ロイド・ウェバー、ダニー・ボイル、シェーカル・カプール、マニラトナム、K.バーラチャンデル、アルカー・ヤーグニク、ハリハラン、ラーム・ゴーパール・ヴァルマー、アーシュトーシュ・ゴーワーリーカル、スバーシュ・ガイー、ラージクマール・サントーシー、グルザール、ジャーヴェード・アクタル、ラフマーンの母&姉、など


世界的には、イギリス映画『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)でアカデミー賞の作曲賞を受賞した作曲家として、そしてインドでは、マニラトナム監督作品『ロージャー』(1992)以降、数え切れないヒット音楽を世に出している作曲家として知られるA.R.ラフマーンを追ったドキュメンタリー映画です。上にコメントを寄せているビッグネームの人々を書き出してみましたが、彼らの話も面白いものの、ラフマーン自身の語りが軽やかで引き込まれます。いっそのこと、全編彼の語りだけで進行してもよかったのでは、と思うぐらい。

Chinna Chinna Aasai Song | Roja Tamil Movie HD | Arvind Swamy | Madhubala | AR Rahman | Maniratnam

映画のクリップは、上に付けた『ロージャー』に始まって、『ボンベイ』(1995)、『Rangeela(ギンギラ)』(1995)、『ディル・セ 心から』(1998)、『Taal(リズム)』(1999)、『Pukar(呼び声)』(2000)、『ラガーン』(2001)、『Jodha Akbar(ジョーダーとアクバル)』(2008)などが登場します。そして、彼のLAの自宅や、チェンナイにある専用スタジオ、映画音楽を作曲する専用ブースなど、貴重なシーンもいっぱい登場。コンサート映像もあり、インド映画ファンなら胸が高鳴る内容となっています。ついでに、A.R.ラフマーンの公式サイトを付けておきましょう。そうでした、中井貴一が出演した中国(+香港&アメリカ)映画『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』(2003)の音楽もラフマーンの作曲でした...。

『If Only』
2015年/インド/英語・ヒンディー語/106分/原題:Kaash/英語題名:If Only
監督:イシャーン・ナーイル
クリエイティブ・プロデューサー:シミト・アミーン、イルファーン・カーン、ミーラー・ナーイル
主演:ニディ・スニール、カーヴャ・トレーハン、ヴァルン・ミトラ、カルキ・ケクラン


今回DVDを見て、初めてヒンディー語題名が『Kaash(カーシュ、~ならよかったのに、の意味)』であることを知りました。物語は、まだ芽の出ない女優サミーラ(ニディ・スニール/上写真右)と別れ、一人アフマダーバードにやってきたカメラマンのアーディル(ヴァルン・ミトラ)を軸として展開します。アーディルはネットで知り合ったアフマダーバード在住の女性クシャーリ(カーヴャ・レーハン/上写真左)に案内してもらって、カッチ地方へと旅に出ます。旅先で知り合ったヒッピー風旅行者のエリザベス(カルキ・ケクラン)とそのケーララ人のボーイフレンドとも交わりながらアーディルは旅をするのですが、甦る記憶はサミーラとのこと。別れたはずのサミーラから電話がかかってきて、アーディルの心は揺れていきます...。

見る前はハイソな若者たちの恋模様を描いた倦怠感溢れる作品では、と思っていたのですが、これがなかなか。時に俗っぽい描写はあるものの、クシャーリとその親友の女性ラッキー(シカー・タルサーニアー)のキャラがとても魅力的で、映画に厚みとリアリティを与えています。肌の色が黒いコンプレックスを持ち、自分を売り込むための様々なストレスに耐えているサミーラ、そして飄々としたエルスベスという4人の女性が存在感を放ち、面白いアンサンブルの作品となりました。『サラーム・ボンベイ!』(1988)などの監督ミーラー・ナーイルの甥だというイシャーン・ナーイル監督、ミーラー始めイルファーン・カーン、シミト・アミーンらのバックアップを受けて、新感覚のインド映画をまた1本誕生させました。

あと1本はプレス試写で見たこの作品でした。 

『少年バビロン』
中国/2015年/中国語/100分/原題:少年巴比倫
 監督:相国強(シアン・グオチアン)
 主演:(トン・ツージエン)、(リー・モン)、(シャン・ティエロン)


ステキなタイトルに惹かれて見てみたら...。何だか収拾がつかなくなってしまった感のある映画で、いまひとつ楽しめませんでした。1990年代の青春を、路小路(ルー・シャオルー)という工場勤務の青年と、その工場の医師である白藍(バイ・ラン)の恋を軸に描くストーリーなのですが、寓意だか何だかよくわからないエピソードがバラバラと詰め込まれ、とっちらかった印象に。それにしても、「マドンナの存在に喚起されたノスタルジー」路線の中国映画、多いですねー。

少年巴比倫線上看

さて、今日は早く寝て明日に備えます~。


第28回東京国際映画祭:私のDAY 3

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本日は早起きして、午前9時30分前に新宿のバルト9へ。実は映画祭のパスを持っている人は、チケットに余裕があれば劇場上映作品も見られるのです。そのチケット交換が始まるのが9時30分なので、がんばって早めに行ったのでした。この日の目的作品は、11時50分からのインド映画『OK Darling』と、続く15時30分からの中国映画『少年班』。『OK Darling』は字幕の確認のためで、『少年班』は孫紅雷(スン・ホンレイ)のため(笑)。この2本終了後は六本木へと向かい、インド映画『If Only』を字幕付きで見直したのですが、新宿バルト9から大江戸線の駅が遠く、さらに大江戸線六本木駅からもヒルズは遠く...というわけで、しんどい移動になりました。

新宿ピカデリーの前から六本木行きのシャトルバスが30分おきに出ている、というお知らせもあったものの、出発時間は不明で、そんなの待ってたら日が暮れそう。会場が分かれるのは観客にとってもいいことだと思うので歓迎なのですが、地下鉄ですぐ移動できる所が望ましいです~。 

『OK Darling』
2015年/インド/タミル語/132分/原題:O Kadhal Kanmani
 監督:マニラトナム
 音楽:A.R.ラフマーン
 主演:ドゥルカル・サルマーン、ニティヤー・メーナン、プラカーシュ・ラージ、リーラー・サムソン


字幕は、オープニングタイトルと投影字幕が重なりそうだった2箇所を、字幕制作会社の方が上手に直して下さっていてホッ。オープニングのゲーム・アニメは、見ていたインド映画ファンを驚かせたのでは、と思います。ゲーム制作者と建築家のタマゴの恋、二人とも結婚には信頼を置いていず、すぐに海外に行くこともあって同棲を望み、それを年長者に堂々と切り出す、といったところが新しい、マニラトナム監督作品です。劇場の大音響で聞く歌はすごい迫力手したし、最後には拍手も出たのですが、映画進行中の客席のうねりが今ひとつ、という感じでした。う~ん、日本公開にまで到るのは難しいかなあ....。

『少年班』
2015年/中国/中国語/110分/原題:少年班
 監督:肖洋(シャオ・ヤン)
 主演:孫紅雷(スン・ホンレイ)、周冬雨(チョウ・トンユイ)、董子健(トン・ツージエン)


スン・ホンレイの能面演技が私の好みにピッタリで、靴下にまでアイロンを掛ける几帳面キャラが好もしかったです。1998年、スン・ホンレイ演じる教師が全国を回って集めてきた天才少年少女たちを鍛え上げ、世界的な数学コンテストに参加させようとする、というのがストーリーです。その天才少年たちが何ともユニークで面白いのですが、そこから調子に乗って荒唐無稽的世界が登場してしまうのは、ちょっといただけませんでした。マドンナも登場するし、中国映画の青春もののステレオタイプにはまってしまっている感もあり、ちと残念。『少年バビロン』の主演だったトン・ツージエンがまたも登場してましたが、おでこのこの人、ノスタルジーを感じさせる顔なのかも。

The Ark Of Mr.Chow.jpg

『If Only』
2015年/インド/英語・ヒンディー語/106分/原題:Kaash/英語題名:If Only
 監督:イシャーン・ナーイル
 クリエイティブ・プロデューサー:シミト・アミーン、イルファーン・カーン、ミーラー・ナーイル
 主演:ニディ・スニール、カーヴャ・トレーハン、ヴァルン・ミトラ、カルキ・ケクラン


ストーリー等は昨日の記事をご覧いただくとして、字幕付きで見てさらに面白さを再確認しました。女子キャラがいずれも個性的で、真ん中にいる主人公の男性カメラマンの軟弱さがそれをうまく受け止めています。で、ちょうどエンドタイトルの所で、入り口から「僕はこの映画の監督です」という声が。みんな思わず拍手してしまいました。


外に出ると、イシャーン・ナーイル監督が主演男優のヴァルン・ミトラと共に人々に取り囲まれていました。


ヴァルン・ミトラ、かなりのイケメンです。明日も上映とQ&Aセッションがありますので、この顔を見たい方はぜひ。


 


南インド映画上映会のお知らせ

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ここのところ立て続けに行われている南インド映画の上映会。何だか主催者団体がそれぞれ対抗意識メラメラで回数を競っているのでは、という恐れがなきにしもあらず。インドの人って、意地を張りすぎて自滅する、ということがままあるので、気をつけて下さいね~。今回も、Periploさんからいただいた情報です。

『Ennu Ninte Moideen(君のモイディーンより)』


(2015年/マラヤーラム語/167分/英語字幕)
 監督:R.S.ヴィマル
 主演:プリトヴィラージ、パールヴァティ・メーノーン、サーイクマール、レナ


■日時:2015年11月1日(日)午後2:00~
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza アクセス
■料金:大人1,800円
■主催:CelluloidJapan HP

Periploさんの詳しいご紹介はこちら。1960~70年代が舞台の、ノスタルジックな物語のようです。プリトヴィラージは、ちょっと古風な作品によく似合う人ですね~。

Ennu Ninte Moideen Official Trailer HD Prithviraj Sukumaran RS Vimal YouTube


『Rudramadevi(ルドラマデーヴィ)』


(2015年/テルグ語/158分/字幕の有無は未定)
 監督:グナシェーカル
 主演:アヌシュカー・シェッティ、ラーナー・ダッグバーティ、アッル・アルジュン、ニティヤ・メーノーン、キャサリン・トリーサ、プラカーシュ・ラージ

Rudrama Devi Poster.jpg

■日時:2015年10月31日(土)、開始時刻未定
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza アクセス
■料金:未定
■主催:indoeiga.com HP

カーヴェリ川長治さんのレビューはこちら。アヌシュカー・シェッティとラーナー・ダッグバーティが主演する時代劇、というと『Baahubali(バーフバリ)』とかぶりますねー。予告編を見ると、ちょっとCGがチャチっぽいんですが、さて、迫力勝負はどちらに軍配が? 『OK Darling』のニティヤー・メーナン(ニティヤ・メーノーン)が出ているので、時代劇の彼女をちょっと見てみたいです。

RUDRAMADEVI -Official Theatrical Trailer (HIndi)


『Thoonga Vanam(眠らない密林)』


(2015年/タミル語/128分/英語字幕)
 監督:ラージェーシュM.セルヴァ
 主演:カマル・ハーサン、トリシャー、プラカーシュ・ラージ、キショール、アーシャ・シャラト

Thoongaavanamfilm.png

■日時:2015年11月14日(土)午後2:00~
■会場:千葉県市川市、イオンシネマ市川妙典 アクセス
■料金:大人2,400円
■主催:CelluloidJapan HP

カマルハーサンもそうですが、プラカーシュ・ラージも出まくりですねー。てか、プラカーシュ・ラージの出る作品にはハズレなし、ということで、在日インド人の皆さんがそれを基準に選んでいるのでしょうか? 本作ではどうも悪役のようですね。

Thoongaavanam - Official Trailer - #1 | Kamal Haasan | Ghibran | Rajesh M Selva  

ただ、こういった上映会で一度でも上映されてしまうと、日本の配給会社は買い付け&公開に二の足を踏むので、公開されて日本の多くのファンにも見てもらいたい作品は、できれば温存して日本の配給会社にきちんと売り込んで下さいね、現地の映画製作会社の皆様。 


第28回東京国際映画祭:私のDAY 4 & 5

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月&火曜日はお仕事のある日なので、TIFF出勤は半日勤務に。しかも、月曜日は柏市から、火曜日は町田市から六本木に出勤。町田市からは小田急線で新宿まで出て、コメントで教えていただいた丸ノ内線→日比谷線を乗り継いだらとっても楽でした。よしださん、ありがとうございました! というわけで、この2日間に見た映画のご報告です。

『スナップ』
タイ/2015年/タイ語/97分/原題:สยามยุทธ
 監督:コンデート・ジャトゥランラッサミー
 主演:トーニー・ラークケーン、ワラントーン・バオニン


昨年のTIFFで『タン・ウォン 願掛けのダンス』が上映されたコンデート・ジャトゥランラッサミー監督の新作。『タン・ウォン』からは技術的にも内容的にも格段の進歩を遂げており、コンペに選ばれるのも納得です。ただ、もう少しメリハリがほしかったのと、軍事クーデターなどの政治的状況に時折言及されるものの、単なるストーリーの背景だけに終わっているため、作品としての奥行きに欠ける印象が否めません。主人公たちは、高校時代の同級生カップルの結婚式に合わせて帰省し、物語が進行していくのですが、この同級生カップルが成立したいきさつや、二人の本音が一番面白かったです。


『グランドマザー』
フランス・フィリピン/2009年/タガログ語/110分/原題:Lola
 監督:ブリランテ・メンドーサ
 主演:アニタ・リンダ、ルスティカ・カルピオ、タニヤ・ゴメス


アジアフォーカス・福岡国際映画祭で『ばあさん』のタイトルで上映された作品です。最初、香港国際映画祭で見た時は、二人の「ローラ=おばあちゃん」の尊厳がよく描かれている、と思ったのですが、今回見直してみると、二人のずるさや身勝手さもしっかりと描かれていて、さすがメンドーサ監督、とあらためて感心しました。

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『告別』
中国/2015年/中国語・モンゴル語/95分/原題:告別
 監督:デグナー(徳格娜)
 主演:トゥメン、アリア、デグナー


内モンゴル出身の女性監督の作品ですが、いまひとつ映画の意図がわかりませんでした。お父さん、そんな死に方ではかわいそうなんじゃ...。

『The Kids』
台湾/2015年/中国語・台湾語/90分/原題:小孩
 監督:于瑋珊(サニー・ユイ)
 主演:巫建和(ウー・チェンホー)、温貞菱(ウェン・チェンリン)、柯宇綸(クー・ユールン)、高盟傑、楊、洪群鈞


ハイティーンで赤ん坊が生まれてしまうカップルを演じる、主演の二人がとても魅力的な作品でした。二人とも、昨年のTIFFで上映され、先日公開となった『共犯』(2014)に出演していたのですが、ウー・チェンホーの方は別人かと思う変身ぶり。いい俳優になりそうです。ウェン・チェンリンも大人かと思うと少女の顔がのぞいたりと、不思議な魅力を持った女優で、この先が楽しみです。張作驥(チャン・ツォーチ)映画の常連だった高盟傑がバイト先の店主に扮して、よきおっちゃんぶりを見せてくれます。

『父のタラップ車』
トルコ/2015年/トルコ語/105分/原題:Merdiven Baba
 監督:ハサン・トルガ・プラット
 主演:ハジュ・アリ・コヌック、エスラ・デルマンジュオウル


トルコ版「わらしべ長者」ならぬ、「タラップ車長者」のお話。空港の清掃員で、給料の少なさを妻からも嘆かれている男が、職員への払い下げのタラップ車を手に入れたとたん、たちまち人気者になりお金も稼げるようになる、という一種おとぎ話的な作品でした。庶民にはウケそうですね。


TIFFも半分が過ぎ、コンペの賞の行方も気になるところです。あと3日、がんばって残ったアジア映画作品を見ようと思いますが、皆さんもTIFF公式サイトをご確認の上、劇場に足をお運び下さいね。

 


第28回東京国際映画祭:私のDay 6

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今日は『ジャイ・ホー』の日でした。『ジャイ・ホー~A.R.ラフマーンの音世界』の上映が夜にあったのと、その前にこの映画コーディネートをしたKさんに誘われ、日本に着いたばかりのウメーシュ・アグルワール監督をホテルに訪ねて、その後何時間がご一緒したのです。映画上映時のお話はあとにして、まずウメーシュ・アグルワール監督の素顔をちょっとお伝えしましょう。

『ジャイ・ホー』については、英語字幕付きDVDで見たのでその簡単な感想をDay 2レポートで書いたのですが、その時びっくりしたのは、ラフマーンが自然体で実によくしゃべっていること。聞くところによると、ラフマーンはもの静かな人で、あまりインタビューとかも受けないということだったので、彼にこれだけしゃべらせたウメーシュ・アグルワール監督ってどんな人なのかしら、と好奇心いっぱいだったのでした。会ってみるとアグルワール監督はこれまた静かに話す人で、「オレが、オレ様が」タイプが多いインド人監督とは対極にある人。何でも、大学で政治学を学んだあと映像制作現場に入り、テレビやドキュメンタリーを中心にスキルを積んできたとか。


で、驚かされたのは、アグルワール監督から昼食のご招待を受けたこと。実はアグルワール監督はベジタリアンで、この日は一緒に遅い昼食を取る予定だったため、「どこのレストランに行こうか、野菜天ぷらならOKかしら、でも、出汁や醤油のかつおのうま味がイヤというベジタリアンもいるし...」と、Kさんやもう一人のお仲間Mさんと頭を悩ませていたのでした。ところがロビーで会ったアグルワール監督は、「よかったら、部屋で一緒にインドから持参した料理を食べませんか?」と誘って下さり、お邪魔してみるとタッパーとアルミホイルの山が! すでに食べたあとの写真ですが、こんな感じです。


弟さんご一家とニューデリーのディフェンス・コロニーにお住まいのアグルワール監督、その弟さんのお嫁さんがいっぱいお料理を持たせてくれたそうで、この日はポテトのクミン炒め(右)、オクラのカレー(左)、それから青菜を炒めたカレーを、三角形のパラーター(パン)と共にいただきました。ちゃんと使い捨て紙皿やナプキンも用意されていて、弟嫁さんのおいしい家庭料理を堪能させていただきました。ホテルの部屋に、電子レンジを貸し出してあげたい...。なお、アグルワール監督ご自身は独身だそうです。

で、その後六本木に移動し、私は別の作品を見たあと、夜9時10分からの上映に臨んだのでした。


大画面、大音量で見た『ジャイ・ホー』は、DVDで見た時よりも格段の迫力で迫って来、もっと長くラフマーンのコンサート・シーンなどを見ていたいと思わせられました。惜しかったのは、字幕の方が「母なる大地に捧ぐ」の歌詞を誤訳してまるで母の日ソングのようになってしまっていたことで、映画の題名などはきちんと調べてあったのに、とかなり残念でした。「Vande Mataram」というタイトルでインド好きならピンと来るのですが、母国への敬愛を歌った歌なのです。英語字幕が「Mother!」となっていたので、それがいけなかったのでしょうね。

遅い時間にもかかわらず、広いスクリーン9には結構お客様が入っていて、アグルワール監督も嬉しかったと思います。終了後Q&Aがあり、通訳の松下由美さんと共にアグルワール監督が登壇、30分にわたって司会者や会場からの質問に答えました。


監督:まず、A.R.ラフマーンから、皆様へのメッセージを預かってきています。「この作品がTIFFに選ばれて嬉しいです。いつか日本の皆さんの前で、僕のライブができる日が来るのを楽しみにしています」(会場拍手)

Q:この映画の企画が立てられたのはいつですか? そして、どのくらいの時間をご本人と過ごされたのですか?

監督:ラフマーンが『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーをもらった時、インドでもすごく話題になったんですね。その中で、彼が9才の時父親を亡くしたこと、その後高校を中退して、一家を支えるために働かねばならなかった、ということを知りました。彼の努力に驚かされ、映画化してみたいと思ったのです。あまりインタビューとかを受けない人だと言われていたので、映画の提案をスポンサーとなる政府機関にした時、果たして受けてくれるのかと心配する声が出ましたが、「ともかくやってみるから」ということでスタートしました。

Q:最初ラフマーンはやはり辞退したのではありませんか?

監督:彼と話をするだけで4ヶ月かかりました。ずっとメールを送っていて、夜中に仕事をする人だからと聞いて、返事を一晩中待っていたこともありました。でも全然連絡が来なかったのですが、そんな時弟が、「チェンナイの彼の所に行って、返事をもらうまで動かない、と言ってみたら?」と提案してくれました。それで、チェンナイに行き、ラフマーンのお姉さんに会って話をし、彼女の紹介でやっと本人に会えたのですが、実際に会うともう5分後にはOKがもらえていました(笑)。それまで何ヶ月もかかったのが、たったの5分で、なんですよ。

Q:実際に会ってラフマーンに対するイメージが変わりましたか?

監督:気むずかしい人かと思いましたが、気持ちのきれいな、精神世界に生きている人、という感じの人でした。最初OKをもらった時に、「自分はこのあと2ヶ月間忙しいので、その間に他の人にインタビューしてもらえる?」と言われ、そのための口添えもしてくれました。ラフマーン自身のインタビューは主として彼のもう一つの家があるロサンゼルスで行い,夜型の人なので、仕事が終わったあとの毎朝6時から11時までをインタビューに当てました。毎朝5時45分に自宅に行くと、彼自身がドアを開けてくれ、インタビューを開始する、という日々でした。


(その後会場からの質問に移ったのですが、ちょっと質問をセレクトしてお伝えします。ごめんなさい)

Q:ラフマーンさんは普段どんな音楽を聴いていますか?

監督:いろんな音楽を聴いていますね。映画を見る時は音声をミュートにして、字幕を読みながら見ています。「音楽は、自分で想像しながら付けるんだ」と言っていました。技術面では常に最高のスタッフを使い、どんな人と一緒にした仕事なのか、毎回きちんとクレジットに出しています。最高のチームで音楽を作る人です。

Q:ラフマーンの奥さんへのインタビューがありませんが、断られたのですか?

監督:奥さんはラフマーン以上にシャイな人なんです。ラフマーン自身がインタビューに答えてくれただけでも、とてもラッキーだったと思います。

Q:ご家族はインドにいらっしゃるのですか?

監督:そうです。ラフマーンは世界中を飛び回っているので、その合間にチェンナイの自宅に戻ったり、世界のどこかで家族と会ったりしています。

Q:ラフマーンが改宗したことが出てきますが。

監督:ラフマーンは元々ヒンドゥー教徒として生まれ、父も映画界で仕事をしていました。母はとても信心深い人だったのですが、夫が原因不明の病気になり、ラフマーンが9才の時に亡くなってしまって、生活も困窮します。そういった状況に追い込まれて、母の宗教心に迷いが生じ、いろんな宗教に助けを求めた結果、イスラーム教の方がより心の平安が保てる、ということで、イスラーム教に改宗したのです。ラフマーンの話ですと、自分が改宗して1日5回のお祈りをするようになって、自分の内面をみつめることができるようになった、とのことです。自分がとても清浄で、スピリチュアルな存在になった、困難に遭遇してもそれを乗り越える力ができた、と言っていました。

♪  ♪  ♪  ♪  ♪

そういった、ムスリム(イスラーム教徒)としての側面も、『ジャイ・ホー』では描かれています。公開作品としては難しいかも知れませんが、この優れたドキュメンタリー映画に興味を持たれた配給会社の方、テレビ局の方は、ぜひTIFF事務局までご連絡下さい。予告編はこちらです。

 

第28回東京国際映画祭:私のDay 7

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昨日、今日と、コンペ作品の西アジア映画を続けて見ました。今年からプレス&IDカード所持者向け試写では、上映後に同じ会場にゲストが登場、笠井アナウンサーが司会してのQ&Aが行われる、というスタイルになり、別会場を設定しての記者会見はなくなりました。便利と言えば便利なのですが、スクリーン前が狭くてゲストにもスタッフにもお気の毒。それと、間近で写真が撮れるいい機会なのに、ストロボがどうも禁止みたいで、私のボロカメラではいろいろやっても満足のいく写真が撮れず、それにもがっくり。今度、仕事料が入ったら軽くて性能のいいカメラを買おうと思います(と、毎年言っている気が...)。

では、2作品の簡単なご紹介とQ&Aのこちらも簡単なレポートを。

 

『カランダールの雪』
トルコ・ハンガリー/2015年/トルコ語/139分/原題:Kalandar Soğuğu
 監督:ムスタファ・カラ
 主演:ハイダル・シシマン、ヌライ・イェシルアラズ、ハニファ・カラ

 

オープニングタイトルの前に、暗闇が写り、懐中電灯の光の中で岩盤を削っている男の姿が浮かび上がります。この人はどこかに閉じ込められて脱出しようとしているのか、それとも、何か目的があってこの岩盤を削り取ろうとしているのか--下に付けた予告編(?)の冒頭にも出てくる緊張をはらむこのシーンで、観客はぐっと映画の中に引き込まれます。

それが主人公のメフメット(ハイダル・シシマン)で、鉱石を捜して険しい山に登り、鉱脈がありそうな所のサンプルを取っては、麓の精錬工場に売り込むという作業が続きます。貧しい彼の家には、年老いた母親と妻、ミドルティーンの長男と、障がいを持つ幼い次男がいます。山中の一軒家であるこの家は、家畜を飼い、わずかな畑を作り、時にはカタツムリを獲って売るなどして、かつかつの生活をしています。メフメットはうまくいかない鉱脈捜しを一時やめて、祭りの時に開かれる闘牛で勝って現金を手に入れようと、雄牛ポイラズの訓練を重ねるのですが....。

ラストは寓意に満ちたハッピーエンドとも言える終わり方なのですが、そこに到るメフメット一家の苦闘を、映画は1年にわたって描いていきます。トルコの黒海に近い地域、とのことですが、冬山に轟く雷鳴や、小屋と言ってもいいような家を押しつぶさんばかりの雪、山中であっという間に周囲を包む霧など、四季折々の自然も苛酷で、見ていてだんだん肩が重くなってくる感じがします。とはいえ、最後まで緊張感を保って見ていられるのは、その自然の中での人間の営みがきっちりと描かれているから。子役の二人や祖母も存在感に溢れ、特にダウン症の男の子が演じている次男は、時折ハッとするような表情を見せてくれます。監督の演出の底力を感じさせてくれる作品でした。

COLD OF KALANDAR

<ゲスト>
監督:ムスタファ・カラ
プロデューサー:ネルミン・アイテキン
脚本:ビラル・セルト
主演:ハイダル・シシマン


右から上の通りの皆さんですが、プロデュ-サーが若い女性でちょっとびっくり。あれだけの大作を作るのは大変だったでしょうに。時間的にも2時間半近い作品なのですが、それと共に撮影期間も長期にわたっているはずで、統括は相当の力技を必要としたのでは、と思います。

監督:本作では、以前私が知っていた人のキャラクターを再現してみました。主人公をこれほどの情熱に駆り立てるものは何か、彼の関心はどこにあるのか、家族との葛藤はどうなのか、どんな形で自己証明をしているのか、といった、次々に出てくる疑問に答を出していたら、ストーリーが出来上がりました。


Q:主演のハイダル・シシマンさんにうかがいたいのですが、厳しい自然の中、いいことは最後まで起きない、という状況の中で、主人公を演じてみてどうでしたか。

ハイダル・シシマン:メフメットの自然との闘いは、勝つか負けるかのどちらかです。その中で彼の情熱を表さなければいけないと思いました。自然と希望とが衝突し、最後には希望が勝つ。メフメットが持っている希望が、私自身にも大きな影響を与えてくれました。撮影現場ではメフメットになり切っていたので、撮影が終わってもしばらくはメフメットから離れられませんでした。


Q:題名にもなっている「カランダール」ですが、これは祭りの名前とかで、その時に闘牛がある、ということですか?

脚本:カランダールはある季節の名称です。とても寒い夜の名前で、この地域に住む人々にとっては、ある慣習を表す言葉にもなっています。


Q:撮影が大変だったと思いますが、エンドロールにヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督らの名前が出ていたのは、何か協力があったということでしょうか?

監督:あそこに名前を挙げた監督たちは、トルコ国内のみならず、世界的にも知られている重要な監督たちです。物語の構想段階から始まって、撮影が終わったあとに到るまで、彼らは様々な面でサポートしてくれました。撮影の困難さについては、それを話すだけで一つの物語ができてしまうぐらい、たくさんありました。ご覧になったように、映画には4つの季節が描かれています。そこにある人々の生活、小さな生き物たちの営み、といった細部に到るまで、撮影のたびに同じものを作らないといけなかったのです。でも、映画の中の現実性を観客にキャッチしてもらうには、自然のルールの中に我々自身が入っていき、一体となって映画に描かれる必要がある。こういったことから、物質的にも経済的にもすごく大変な作品となりました。

 

 

『ガールズ・ハウス』
イラン/2015年/ペルシャ語/80分/原題:Khane-ye Dokhtar(?)/Khane Dokhtar(?)
 監督:シャーラム・シャー・ホセイニ
 主演:ハメッド・ベーダッド、ラーナ・アザディワル、ババック・キャリミ

 

こちらの作品は、友人サミラの結婚式を明日に控え、二人の若い女性、バハールとパリサがその支度のためにショッピングをするシーンから始まります。二人は大学生で、「学生さんなら負けておいてあげるよ」という店主とやり取りしながら、楽しそうにおしゃれな靴を選んでいきます。途中で花嫁サミラに電話したり、彼女の妹セターレとバッタリ会ったりして、遅くなって学生寮に戻ってきたところに電話が入ります。それは、サミラの突然の死を知らせる電話で、明日の結婚式は中止になった、という連絡でした。二人はサミラの突然の死に納得できず、彼女の家を訪ねたり、墓地へ行ってみたり、そこで出会った花婿マンスールと話して、死の真相を探ろうとするのですが....。

前半は、サミラの死に関するサスペンスが追求されていき、後半で時間が巻き戻されて、彼女の死(実は自殺)に到った経緯が解き明かされていきます。幸不幸の入り交じり方がちょっとあざとい感じもしますが、上の写真が象徴するサミラが受けたショックが最後には明らかになり、ある意味すっきりした終わり方となります。そんなショックなことをなぜ結婚式の前日に? という疑問も残るものの、まだまだ保守性の残る現代イランの側面を伝える作品、とも言えそうです。

<ゲスト>
監督:シャーラム・シャー・ホセイニ
主演:ハメッド・ベーダッド

おしゃれなホセイニ監督(右)と、マンスール役を演じた俳優ハメッド・ベーダッドです。ハメッド・ベーダッドはイランでは人気のある俳優なのだとか。IMDbを見てみると、29本の出演作がクレジットされています。1973年マシュハドの生まれ、とありますから、もう40才を過ぎているんですね。通訳は、皆様お馴染み、ショーレ・ゴルパリアンさんです。

Q:この映画では、古い因習に対する抗議が見て取れますが。

監督:本作はそういう因習を批判する映画でもありますが、疑問を呈する形で、答を出していない映画とも言えます。映画を見る人それぞれに、判断を任せているのです。


Q:マンスールは高卒、かたやサミラは大学生。またサミラは「自由に生きる」という詩が好きだったりしますが、一方で式場を男女別に分けることにしたりと、保守的な面もあります。また、サミラの妹は出かけた時にボーイフレンドとデートしたりもする。そんなサミラは、マンスールの母に強制されたことがショックだったのでしょうか? タイトルの「ガールズ・ハウス(原題:ハーネ・イェ・ドフタル=娘の部屋)」の意味するところは?

監督:多分、長い時間をかけて説明しないとわかってもらえないかと思います。ただ、イランは社会的にレベルが違う人でも結婚できる、という点は誇っていいと思いますよ。日本では嫁姑関係が厳しい、というのを、私は日本の映画から学びました。本作でも、花嫁に対する婚家の姑の厳しい目、というのが問題の一つになっています。

主演俳優:確かに、本作では女性が大学卒で男性が高卒ですが、男性の場合は家族を養うことを学歴よりも優先させる場合があります。長男は高校を終えたら働いて、家族の女性に学ぶ機会を与える、ということもあるんです。

監督:タイトルが意味するものですが、映画の中では観客に「ガールズ・ハウスとは何か」という説明はしていません。これは、彼女自身の内面にあるテリトリー、スペースといった意味合いがあります。自分の中にある「ガールズ・ハウス」に入る時は、ノックして入ってきてほしい、そいう意味のあるタイトルなんです。


Q:自殺がどう描かれるのかは、国によって違うと思います。今回の作品では、サミラが自殺したことにより父は家を売ろうとする、というのが出てきますが、それは自殺がまずいから、ということですか?

監督:イランでは、家族、宗教、人間関係、そして思いやりがとても大切です。自殺はもちろん宗教上でも罪となりますが、人間関係から見ても非常に罪深いことになってしまいます。だから、サミラの家族はそれを隠そうとするのです。しかしながら、自殺したことを隠し、葬式もせずに逃げるように去って行く、というのはもっと悪いと思いますね。


Q:ハメッド・ベーダッドさんにうかがいたいのですが、マンスールを演じながら、個人的にはこの映画についてどのように思っていましたか?

主演俳優:ある役を演じる時は、その中に自分を入れ込んで演じています。物語が持つメッセージを、演技の中に入れて演じるように心がけているのです。自殺はイスラーム教では悪いことと考えられていますが、これは人間にとって死はいつか訪れるものなので、こちらから死ぬのは間違い、ということからです。本作では、サミラの死に対して、父親が冷たすぎる気がします。死んですぐ、家を売りたいと言ったりしますが、本当のお父さんなのか疑りたいぐらいです。母親が再婚した相手とかではないか、と思ったりしました。

監督:いや、本当の父親だよ。

ショーレ・ゴルパリアン:では、その論争はまた外で、ということで(笑)。


YouTubeに予告編が挙がっていましたので、付けておきます。

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最終日、31日(土)の受賞結果に注目しましょう!

 

第28回東京国際映画祭:私のDay 8

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今日は私の東京国際映画祭最後の出勤日でした。今日も1本見たのですが、いまひとつの作品だったので、昨日見た素晴らしい映画について書いてみようと思います。

『河』


中国/2015年/チベット語/94分/原題:河
 監督:ソンタルジャ(松太加)
 主演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテン

ソンタルジャ監督は、ペマ・ツェテン監督『オールド・ドッグ(老狗)』(2011)の撮影監督で、その後『陽に灼けた道(太陽総在左辺)』(2011)で監督としてデビュー、本作は長編第2作目となります。

冒頭、草原を走る2人乗りのバイクが登場し、後ろの席に座った酔っぱらいが歌をがなります。「♪生きているうちに馬に乗っておけ ♪生きているうちに酒を飲んでおけ」その後2人はバイクを止めて一休みするのですが、酔っ払いの方がバイクを運転して走り出してしまい、見事にコケて顔に大きな擦り傷をこしらえる羽目に。この男が主人公のグル・ツェテン。彼には妊娠中の妻と、幼い娘ヤンチェン・ラモがいます。また、遠く離れた所に父親が住んでいるのですが、父親はかつて家を捨てて出家してしまったため、グル・ツェテンは今でもわだかまりを抱いていて、病気だと聞いてもなかなか素直に見舞いには行けません。

娘のヤンチェン・ラモは、近所の男の子たちにいじめられたりしながらも、母の言いつけをよく聞いて、しっかりと行動する女の子に育っています。母に言いつけられて、父と一緒に祖父のもとへ見舞いに行った時も、見舞いをぐずる父を叱咤します。結局はヤンチェン・ラモ1人で祖父の住居を訪ねることになるのですが、涙を流して喜んだ祖父の様子をあとできちんと父に伝えるのです。父はその見舞いへの途中川にはまり、妻が見舞いに持たせてくれたツァンパとバターを水浸しにしたことなどでさらにフラストレーションが溜まり、帰宅後例年より早く牧草地へ移動することを決めてしまいます。

牧草地では案の定、雪に見舞われたり、狼の被害に遭ったりと、トラブルが頻発します。そして、母の胎内に弟か妹がいることを知ったヤンチェン・ラモは、「お父さんが宝珠を拾ってきたから赤ちゃんができたのよ」という母の言葉に、父親の宝珠を隠してしまうことを思いつきます。そうすれば、赤ん坊がわが家にやって来ないと思ったヤンチェン・ラモでしたが...。


とにかく、このヤンチェン・ラモちゃんが素晴らしいのです。上のポスターでおわかりのように、周迅(ジョウ・シュン)か安達祐実か、という顔をしたかわいい女の子なのですが、大人びた表情はすでに一人前の女優。映画をぐいぐいと引っ張っていきます。チベット映画は、ダメな男+しっかり者の妻+毅然たる老人、という組み合わせが多いのですが、本作ではこれに存在感溢れる幼女が加わって、とても見応えのある作品となりました。「河」と言うより「川」がラストにも登場して、人々の間にあったわだかまりを解いていきます。ベルリン国際映画祭や上海国際映画祭で受賞しているのもうなずける作品で、ぜひ公開してもらいたいものです。

皆さんは、どの映画が一番お気に入りでしたか? 明日はいよいよ、各種コンペの受賞作品の発表となります。



<TUFS Cinema インド映画特集>詳細

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先日の告知ではチラシを貼り付けた上記の映画上映、その後開始時刻の変更もありましたので、あらためてお知らせをアップします。 

<TUFS Cinema インド映画特集> 

『カーンチワラム サリーを織る人』


 2008年/タミル語/117分/日本語・英語字幕付き
 監督:プリヤダルシャン
 主演:プラカーシュ・ラージ、シュリヤ・レッティ
11月28日(土) 14:00~  解説:杉本良男(国立民族学博物館・教授)
※「インド通信」読者の皆様、第445号P.3「催し物ガイド」には”11月23日(月祝)”となっていますが、これは誤りです。上映はすべて土曜日ですので、お間違いなく。また、開始時間がその日によって違いますので、こちらも注意して下さいね。

 

(c)Percept PictureCompany/Four Flames Pictures

「カーンチワラム」とは、サリー産地で有名なタミルナードゥ州カーンチープラムで織られるサリーの呼び名のようです。カーンチワラム・サリーの数々は、こんなショッピングサイトで見ることができます。ベナレス・サリーと並んで有名なカーンチワラム・サリーですが、独立直後の産地での実態を描いたのがこの作品で、2007年度のインド国家映画賞最優秀作品賞を受賞しています。監督のプリヤダルシャンは日本でもDVDが出ている『ヴィラサット~会いと宿命の決断』(1997)などで知られる監督で、1984年に南インドのマラヤーラム語映画でデビュー、その後ヒンディー語映画界に進出し、南インド映画の翻案作品でたくさんのヒットを飛ばしている監督です。主演は、『ミルカ』にも出演しているプラカーシュ・ラージ。予告編を付けておきます。

 Tamil Movie Kanchivaram Trailer


『ミルカ』

Bhaag Milkha Bhaag poster.jpg

 2013年/ヒンディー語/153分/原題:Bhaag Milkha Bhaag/日本語字幕付き
 監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
 主演:ファルハーン・アクタル、ソナム・カプール
12月5日(土) 16:00~  解説:萬宮健策(東京外国語大学・准教授)

(c)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

本年1月に公開されたのですが、上映がすぐ終わってしまい、残念な思いをした方もあったのでは、と思います。「インド映画完全ガイド」でも、P.44&45で紹介していますので、ご参照下さいね。

パキスタン領となった故郷の村から虐殺を逃れて逃げて(バーグ)来た少年が、やがて生活のために軍隊に入り、その走る(バーグ)力を見いだされて短距離走者となるお話で、ミルカ・シンという実在のアスリートの半生を描いています。スポ根ものであるのに加え、インド・パキスタンの歴史がわかる作品でもあり、日本でのアジア大会も登場するというおまけ付き。アジア大会シーンには、タレントの武井壮が出演していますのでお見逃しなく。

実はこれ、私が字幕を担当した作品で、どのシーンを見ても思い出深いです。ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督が来日した時は取材もさせてもらい、その時のインタビュー記事がこちらこちらに。日本版予告編を付けておきますね。

映画『ミルカ』予告編  


『シャモルおじさん灯りを消す』

Shyamal Uncle Turns Off the Lights (2012) Poster

 2012年/ベンガル語/65分/原題:Shyamal Uncle Turns off the Lights/日本語・英語字幕付き
 監督:シュモン・ゴーシュ
 主演:シャモル・ボッタチャルジョ
12月12日(土) 14:00~  解説:臼田雅之(東海大学・名誉教授/国際ベンガル学会日本委員会会長)


(c)Arindam Ghosh

本作は短い作品ながら、なかなか味わい深い作品だとのこと。私も未見なので、ぜひ見に行きたいです。監督のシュモン・ゴーシュは1972年生まれ。2006年に監督デビューしたあと6本の作品を世に出しているのですが、そのかたわらというか本職はというか、フロリダ・アトランティック大学で経済学を教える准教授でもあります。コーネル大で経済学の博士号を取っているのですが、どんなきっかけで映画製作を? といつかインタビューしてみたいです。

シュモン・ゴーシュ監督の新作『Kadambari(カドンボリ)』の予告編がステキなので、こちらも見てみたい気が。『女神は二度微笑む』のラナ役ポロムブロト・チョトッパダエがタゴール役で出ていますね。

なお、『シャモルおじさん灯りを消す』が上映される12月12日(土)と、その次の日12月13日(日)には、東京外国語大学のキャンパスで国際ベンガル学会第4回大会が開催されます。その大会に関してはこちらのサイトをどうぞ。


『ファンドリー』


 2013年/マラーティー語/103分/原題:Fandry/日本語・英語字幕付き
 監督:ナグラージ・マンジュレ
 主演:ソムナート・アウガデ、サンジャイ・チョウドリ
1月23日(土) 16:00~  解説:松尾瑞穂(国立民族学博物館・准教授)

 

(c)Holy Basil Productions Pvt. Ltd.

こちらも、簡単な紹介が「インド映画完全ガイド」P.117にあります。現在はダリト(「抑圧された者」の意味)と呼ばれる被差別カースト(チラシの「不可蝕民」はカッコ書きにする配慮がほしかったです)の少年が主人公で、「ファンドリー」とは「豚追い人」という意味だとか。ナグラージ・マンジュレ監督は1978年生まれで、本作が長編映画第1作なのですが、各地の映画祭で次々と賞を受賞し、一挙に注目される監督となりました。本作には、俳優としても出演しているようです。これもぜひ見てみたい作品です。インド版予告編をどうぞ。

Fandry | Marathi Movie | Official Trailer (HD Quality)

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

場所はいずれも、東京外国語大学(アクセス)アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール。入場は無料で、先着順となりますが、定員501名とのことなので、並んだりなさらなくても大丈夫かと思います。問い合わせ先は以下の通りです。上映当日は土曜日なので問い合わせができません。ご注意下さいね。 

[お問い合わせ]
東京外国語大学 総務企画課広報係
183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
TEL:042-330-5150(土日祝をのぞく9:00~17:00)


 

秋の二重丸オススメ韓国映画<その1>『尚衣院-サンイウォン-』

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TIFFが終わってやっと一息、これまで見られなかった作品の試写等にせっせと出かけています。また、宣伝会社から提供していただいたDVDもせっせと見ているのですが、そんな中に素晴らしい韓国映画が3本ありましたので、続けてご紹介したいと思います。第1弾は、今週末から公開される時代劇『尚衣院-サンイウォン-』。まずは、基本データからどうぞ。 

『尚衣院-サンイウォン-』 公式サイト

© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

2014年/韓国/127分/原題:상의원 

 監督:イ・ウォンソク
 主演:ハン・ソッキュ、コ・ス、パク・シネ、ユ・ヨンソク
 配給:クロックワークス
 宣伝:ポイント・セット

※11月7日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国ロードショー

 © 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

舞台となるのは、朝鮮王朝の時代に宮廷の衣服や装飾品、インテリアなどの制作を担った部署「尚衣院(サンイウォン)」。現在そこを取り仕切るのは、御針長と呼ばれているチョ・ドルソク(ハン・ソッキュ)で、若き王(ユ・ヨンソク)の信頼も厚く、間もなく両班(ヤンバン)の地位が与えられることが決まっていました。その頃巷では、妓楼を根城に新趣向の衣服を作ってみせる若い仕立師イ・ゴンジン(コ・ス)が人々の噂に。親しい官吏(マ・ドンソク)の頼みで、官服の邪魔な袖を切って行動しやすくしてやったり、個性的な官服を作ってやったりしているうちに、その噂はドルソクの耳にも届きます。

そんな時、王妃(パク・シネ)のそば仕えが誤って王の衣装を燃やしてしまう事故が起き、その衣装の修復のためにゴンジンは尚衣院に呼ばれます。短時間で見事に衣装を直したゴンジンは、その後王の狩衣や王妃の衣装などを次々と作っていくことに。ドルソクは彼の才能やデザイン画を描くという手法に感嘆すると共に、嫉妬にもかられますが、ゴンジンは「刺繍なら御針長のあなたが一番だ」とドルソクから学ぶ姿勢を見せます。一時は打ち解けるかに見えた2人でしたが、王宮の複雑な事情がやがて2人を引き裂いて行き....。

© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

まず目を奪われるのは、尚衣院の見事なセットと登場するきらびやかな衣装の数々。上の写真のように色とりどりの絹糸が並ぶ棚や、20人ほどのお針子が作業をする沈下式の部屋、そして染め物を行う庭など、観客を朝鮮王朝宮廷工房のまっただ中に放り込んでくれるかのようなセットが何とも魅力的です。さらに目を奪うのが、そこに登場する王妃の衣装の素晴らしさ。品があり、かつ斬新なそれは、ゴンジンが当時の三宅一生か高田賢三か、という存在であったことを十分に納得させてくれます。

© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

超絶デザインの一つが上写真の王妃の衣装で、ルイ王朝時代の宮廷服かと思うような膨らんだチマに、ボディフィットしたタンウィ(唐衣)チョゴリという、とても現代的な感覚のドレスです。

© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

また、ドルソクとゴンジンとの競い合いの裏で進行するもう一つの重要なストーリーは、若き王と王妃との間に横たわる溝のお話。実は、兄王が死去したあとを継いで王位に就いた若き王は、幼い頃から皇太子である兄にいつも虐げられてきた上、現在の王妃も、兄が「そろそろ弟も身を固める頃だ。私の花嫁候補から1人を選んでめあわせましょう」といわば下賜した妻であったことから、そのわだかまりが残ってずっと夫婦関係が結べないでいたのでした。

© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

上写真のゴンジンの作った衣装をまとう王妃の美しさ、気高さに一度はほぐれた王の心でしたが、王妃とゴンジンの間を誤解し、さらに仲はこじれることに。このあたりのストーリーの膨らませ方も非常にうまく、重厚さと軽妙さをバランスよく配した演出も含めて、イ・ウォンソク監督、とても2作目とは思えない腕の冴えです。

© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

そして、その演出を支えているのが、各俳優の見事な演技力。中でも目を見張らせてくれるのは、時代劇初体験というコ・スのハマリ役ぶりで、これまでの作品では見せたことのない魅力とオーラが輝いています。王妃役のパク・シネも表情を含めた演技が見事で、2人が密室で採寸を行うシーンは、緊迫感とエロティシズムが支配する名場面となっています。


© 2014 WAW PICTURES All Rights Reserved.

いつもながらうまいハン・ソッキュは言わずもがな。本作では、たたき上げのお針子から両班にまで出世する男の器の小ささをうまく見せ、コ・スの存在感を引き立てています。

衣装だけでも約1億円かかったという本作。実に見応えがありますので、大画面でぜひどうぞ。映画の魅力の一端がわかる、主題歌のミュージックビデオを付けておきます。

映画「尚衣院」主題歌「風よ吹け」ミュージックビデオ公開

 


『マルガリータで乾杯を!』で新しいラストシーンを確認

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シネスイッチ銀座で、『マルガリータで乾杯を!』を見てきました。すでにマスコミ試写も含め、何度か見ているのですが、ラストが変わったというか完全版になったのを確認したかったのと、シネスイッチ銀座のパンフレットがほしかったのです。


ラストシーン、確かにライラが「チュッ!」とするシーンが加わっていました。海外に権利を売るエージェント、どうしてカットしてしまってたんでしょうね。このシーンがあると、ライラの幸福感がダメ押しされる、という感じです。この時のライラ、誰を待っていたんでしょうね?

(C)All Rights Reserved c Copyright 2014 by Viacom18 Media Private Limited

  and Ishaan Talkies

今回見直してみて、あれ、こんな所にドゥルブ(上写真右)がいる、とか、これはひょっとしてバンド・ヴォーカリストのニマでは、とか、細かいところでいろいろ発見がありました。ニマはアッサム州から来ている大学生という設定ですが、モンゴロイド系の顔立ちで、彼にライラが惚れてしまう、というところも、この映画の新しさを感じるポイントです。ショナリ・ボース監督の、インドにおけるマイノリティへの視点が表現された部分だと思います。

そのニマが歌う(実際に歌っている歌手はジョイ・ボルア)「ドゥソクテ(Dusokute)」は、この映画の中の歌でもピカイチです。映画の中ではカットされたシーンも入っているこちらのクリップをどうぞ。

Dusokute - Margarita With A Straw | Joi Barua | Prasoon Joshi | Kalki Koechlin

冒頭の部分だけですが、歌詞とその逐語訳を付けたものを書いておきます。「♪ドゥソクテ~♪」のところだけでも、どうぞご一緒に。 

ピャール・ホー・ガヤー、コーイー・シャク
Pyar  ho gaya,    koyi shaq
恋   してしまった   何か 疑いが 

アイム・イン・ラブ、エニー・シャク
I am in love in(any?) shaq
恋をしている 何か 疑いが 

コーイー・クッチュ・ビー・ボーレー、パンク・マインネー・コーレー
Koyi   kuch bhi  bole,   pankh  maine  khole
誰かが  何か 言っても   翼を   僕は 開いた 

コーイー・シャク
Koyi shaq
何か 疑いが 

ピーケー・トゥン・   ハイ・ハワー
Peeke  tun     hai  hawa
飲んで チリンという音 ~だ 風は 

ヤー・ルムジュム・   ハイ・ハワー
Ya    rum-jhum  hai  hawa
それとも 鈴の音    ~だ 風は 

マインネー・モゥサム・ピヤー、プーラー・プーラー・ジヤー
Main ne  mausam  piya,   pura pura  jiya
僕は   季節を 飲み込んだ  十分に 生きた 

ハイ・コーイー・シャク
Hai  koyi  shaq
ある 何か 疑いが 

ダルカン・バリー、   サーンス・チャリー、  アエ・ジンダギー
Dhadkan   badhi,  saans  chadhi,  aye zindagi
胸の鼓動が  高まる 息が はき出される  おお 人生 

ドゥソクテー、ドゥソクテー
Dusokute, dusokute
君の瞳に 君の瞳に 

ディマー・ディマー・クワーブ・ウラー・コーイー・サートーン・ラング
Dhima dhima  khwab  udaa   koyi saaton rang
ゆるやかに   夢が   飛び交う   七色をした 

ドゥソクテー、ドゥソクテー
Dusokute,  dusokute
君の瞳に 君の瞳に 

ナヤー・ナヤー・ラグター・サーラー・ジャハーン・テーレー・サング
Naya naya   lagta   sara jahan    tere sang
新しく    感じる    全世界が    君といると

この歌詞の字幕が素晴らしく、それがシネスイッチ銀座の『マルガリータで乾杯を!』パンフレットに載っている、というので、買いに行ったのでした。石田泰子さんのステキな字幕訳、パンフレットの最後の方のページでぜひご確認下さい。

まだご覧になっていない方は、劇場でぜひご覧下さいね。『マルガリータで乾杯を!』の公式サイトはこちらです。

 


秋の二重丸オススメ韓国映画<その2>『技術者たち』

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ご覧になって損はない、オススメ韓国映画第2弾です。これが、私の大好きなダマシ(欺し/騙し)系作品で、おまけにキム・ウビンの実にチャーミングな演技付き。英語タイトルを「The Con Artists(ペテン師たち)」という本作は、『技術者たち』という韓国語題名を直訳した地味な邦題がはがゆくなるぐらい、冴えた作品でした。まずは基本データをどうぞ、なんですが、チラシのヴィジュアルがとっても格好いいので、メイン画像の前にそれをアップしておきます。

 

『技術者たち』 公式サイト

2014年/韓国/116分/原題:기술자들

 

© 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

監督:キム・ホンソン
主演:キム・ウビン、イ・ヒョヌ、コ・チャンソク、キム・ヨンチョル、チョ・ユニ
配給:クロックワークス
宣伝:ポイント・セット
※11月28日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国ロードショー

© 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

主人公は、超絶金庫破りワザを持つ詐欺師ジヒョク(キム・ウビン)。ジヒョクの片腕とも言えるのが、人材確保のベテランであり、印刷技術にも詳しい髭面中年男グイン(コ・チャンソク)。二人は宝石店の金庫からダイヤを盗み出すため、天才ハッカーのジョンベ(イ・ヒョヌ)を仲間に引き入れ、ダマシと金庫破りのテクニックを駆使して、見事ダイヤを盗み出します。

そんな3人に目を付けたのが、財界の大物であり、裏社会で強大な力を持つチョ社長(キム・ヨンチョル)。チョ社長は仁川(インチョン)税関に隠匿されている現金1,500億ウォンの存在をかぎつけ、それをジヒョクらに盗み出させるべく、ジヒョクがある事情から見守っている女性ウナ(チョ・ユニ)を誘拐してジヒョクらに犯行を迫りました。こうして史上最高額の現金強奪作戦が開始されるのですが、ジヒョクの立てた計画とは....。

© 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

宝石強奪作戦もなかなかの見ものなのですが、クライマックスのインチョン税関現金強奪作戦が何ともダイナミック。随所にダマシのテクニックが駆使され、よくぞこれだけ面白い脚本が練り上げられたものよ、と拍手したくなります。脚本家としてキム・ヤンジュンという名前が「輝国山人の韓国映画」サイトでは挙がっているのですが、この人については詳しくはわからずじまい。また、キム・ホンソン監督も、『技術者たち』が『共謀者』(2012)に続く第2作目とは思えないほど、テンポのいい演出で観客を引き込んでいきます。冒頭から中盤にかけて、ちょっともたつくところがあったりしますが、後半は一気に見せてくれ、ハラハラ、ドキドキ、そしてカイカーン!をたっぷりと味わわせてくれて最高でした。カイカーン!に到る伏線の張り方もうまく、ラストでは、「やられた!」と大満足。

© 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

そして、前述のようにキム・ウビンがうまいのです。『チング 永遠の絆』(2013)を見た時は、モデル体型でアクション等はなかなか見栄えがするものの、表情が硬くていまひとつ魅力的に見えなかったのですが、本作では表情も台詞回しも格段に進歩し、堂々たる演技を見せてくれます。特に、やわらかい笑顔やウィンクは、もう反則もの。ファンがどっと増えることでしょう。こういう、頭が切れて身体能力も高いキャラは、ピッタリだったのかも知れません。これからのさらなる成長が楽しみですね。

© 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

あと、『シークレット・ミッション』(2013)でかわいい高校生姿を見せてくれたイ・ヒョヌもがんばっています。ある意味カギを握る天才ハッカー役なので、彼の言動にご注目下さい。そしておじさん組では、コ・チャンソクと共に、チョ社長を演じる大物俳優キム・ヨンチョルがさすがの存在感を発揮しています。イ・ビョンホン主演の『甘い人生』(2005)で演じたボス役と重なる役どころで、この人の貫禄なくしては、主人公3人組の活躍も輝いてきません。チョ社長の片腕兼用心棒のイ室長には、イケメンのイム・ジュファン、チョ社長を追う刑事にはシン・スンファン(この人は次にご紹介する『ベテラン』にも出ています)と、脇も個性的な俳優で固められています。

© 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

日本ではまず心配ないのですが、エンドロールにもお客に帰らせない工夫がなされていて、豪華ゲストが特別出演。超有名俳優が2人も出てくるので、「え、そっくりさん??」と一瞬目を疑いましたが、本当に最後の最後まで楽しめます。ぜひ皆さんも、韓国のコン・アーティストたちにコロリと欺されてみて下さい。続編が見たくなる快作です。

 


Happy Diwali &南インド映画上映会のお知らせ

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本日は、インドのヒンドゥー教徒にとって最大のお祭りディワーリー(Diwali)の日です。それを祝って、まずは公開されたばかりの予告編をどうぞ。何の予告編かって? 12月18日から公開予定のシャー・ルク・カーン主演作『Dilwale(心広き人、勇者)』です。「ディワーリー(Diwali)」と「ディルワーレー(Dilwale)」がちょっと似ているので、思いつきました(笑)。

1年以上ぶりのシャー・ルク・カーン主演作の監督は、『チェンナイ・エクスプレス』のローヒト・シェーッティー、共演は、カージョル、ヴァルン・ダワン、そして『Heropanti(ヒーロー気分)』のヒロイン役だったクリティ・サノンです。

Dilwale Trailer | Kajol, Shah Rukh Khan, Varun Dhawan, Kriti Sanon | A Rohit Shetty Film

CGがいっぱい使ってありますが、シャー・ルクとカージョルがとても若く見えるのもそのせいでしょうか? どんなお話なんでしょうねー。楽しみです。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

そして、この週末の日本では、南インド映画の上映会が目白押し。14日(土)のタミル語映画『Thoonga Vanam(眠らない密林)』の上映はこちらの記事でお伝えしましたが、翌15日(土)は場所を埼玉のSKIPシティに変えて、何とダブルヘッダーです。まさに、お祭り気分の2日間ですね。今回も情報提供はPeriploさんです。 

『Vedalam(妖魔)』

Ajith Kumars Vedalam First Look Poster 

(2015年/タミル語/152分/英語字幕)
 監督:シヴァ
 主演:アジット・クマール、シュルティ・ハーサン、ラクシュミー・メーノーン 

■日時:2015年11月15日(日)午後1:00~
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza アクセス
■料金:大人2,400円
■主催:Indoeiga.com HP

Vedalam (aka) Vedhalam photos stills & imagesVedalam New posters was last modified: October 10th, 2015 by Nandini A

Periploさんのご紹介ページはこちら。何と、”ラジニカーント主演作『バーシャ! 踊る夕陽のビッグボス』(1994)に似ている”説があるそうです。インドでも昨日公開されたはずなので、そろそろ全貌がわかってくる頃でしょう。予告編を付けておきます。

 Vedalam Official Teaser | Ajith, Shruti Hassan | Anirudh , Siva

何だか、このアジット・クマールがマイクを持ってしゃべっているところとか、廊下にスワットチームが控えているところとか、インドネシア映画『ザ・レイド』(2011)に雰囲気が似てるんですけど。イタダキでしょうか?

続いて、2本目の上映作品です。

『Akhil(アキル)』

 

(2015年/テルグ語/130分/英語字幕)
 監督:V.V.ヴィナーヤク
 主演:アキル・アッキネーニ、サイェーシャ・サイガル、マヘーシュ・マーンジュレーカル 

■日時:2015年11月15日(日)午後5:00~
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza (アクセスは上に同じ)
■料金:大人1,800円
■主催:Indoeiga.com

Periploさんのご紹介ページはこちら。そこにもありますが、タイトルと同じ名前の主演男優アキル・アッキネーニは、著名俳優ナーガールジュナと美人女優だったアムラーの次男です。まだ21才で、子役やカメオ出演を経て、本作が本格的俳優デビュー作品となります。パパと違って細面のちょっとなよっとした感じですが、下の予告編を見てみると、アクションもダンスもなかなかです。あれ、この予告編、ご本人がアップしていますね-。Youtuberなのかしら?

Akhil Release Trailer

テルグ語映画の俳優には、この人やマヘーシュ・バーブーみたいな優男メンも多く、日本人の好みに合うかも。別の予告編も発見したので、こちらも付けておきます。

Akhil Theatrical Trailer || Akhil Akkineni, Sayyeshaa Saigal || VV Vinayak , Nithin

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

では、この1年も、皆様にとってよいお年となりますように。そうなんです、特に北インドのヒンドゥー教徒にとっては、ディワーリーが新しい年の幕開けともなるのです。北インドの人たちはきっと明日から、下の映画を見に押し寄せることでしょう。

Prem Ratan Dhan Payo Official Trailer | Salman Khan & Sonam Kapoor | Sooraj Barjatya | Diwali 2015

昨年は、シャー・ルク・カーン主演作『Happy New Year』がディワーリー映画でしたが、今年はサルマーン・カーン主演作の『Prem Ratan Dhan Payo(プレームが宝の富を手に入れた/愛の宝石の財産を得た)』がディワーリー映画となりました。16年ぶりのスーラジ・バルジャーツヤー監督&ラージュシュリー社と、サルマーン・カーンのタグ。さて、このファミリードラマで久々のケミストリーは働くか???



池谷薫監督作『ルンタ』ダルムサラ国際映画祭に参加

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以前、拙ブログでご紹介した池谷薫監督によるチベット問題を扱ったドキュメンタリー映画『ルンタ』が、先日インドのダルムサラ国際映画祭で上映されました。以前の拙ブログの紹介記事はこちらですが、この作品は、チベットで起きているこんな事実を知らなかった、ということと、それを伝えようとするダルムサラ在住の日本人中原一博さんという方の存在を知った、ということで、二重に衝撃的な作品だったのでした。

実はこの時、衝撃のあまり当初長々と紹介記事を書いてしまって、あとで池谷監督にアップを知らせたら、「そこまで詳しく紹介されると、映画を見る人の発見を奪うことになるから」と困惑され、書き直しをしたのでした。それぐらい、力があって興味深いドキュメンタリー作品なのです。皆様はもうご覧になってますでしょうか?

© Ren Universe 2015

その『ルンタ』が、11月5日から8日まで開催されたインドのダルムサラ国際映画祭で上映作品に選ばれ、インド映画の話題作『Masaan(火葬場/英語題名:Fly Away Solo)』や『Titli(蝶)』と共に上映されたのです。映画祭の公式サイトはこちらですが、昨日池谷監督から映画祭のレポートが配信されてきましたので、皆様にもお伝えしたく思い、ブログにアップした次第です。スチール写真はcinetamaが選んで勝手に付けたものですが、文中に出てくる中原一博さんの写真も下に付けておきます。

© Ren Universe 2015

では、池谷監督のレポートをどうぞ。

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先日、ダラムサラ国際映画祭に参加して、大勢のチベット人に『ルンタ』をご覧いただくことができました。11月7日の上映は500席の会場がほぼ満席となり、僕も中原一博さんもここで上映できる喜びを噛みしめました。
インド北部の町ダラムサラは『ルンタ』前半の舞台であり、ダライ・ラマ14世と8000人を超える亡命チベット人が暮らしています。中原さんはこの町に30年間住み続け、建築家、NGO代表として故郷を失ったチベット人たちの支援を続けてきました。
上映中はチベット人の囁きや笑い声やすすり泣きが聞こえてきて、他のどの場所にもない不思議な雰囲気を味わいました。僕の隣の老婆は焼身者の写真が映し出される度にお経を唱えていましたし、厳しい拷問に耐え抜いた元尼僧や海外メディアの前で決死の抗議行動を行った青年僧の証言も、チベット人に囲まれて観ると、からだの芯から熱くなるような感動を覚えました。

© Ren Universe 2015
そして、ルンタが風にはためき、少年の馬が疾走し、チベットの大草原が広がると、静かなよめきが起きました。スクリーンを見つめるチベット人たちの顔に笑顔が広がるのを見て、僕も中原さんもチベットを旅して本当によかったと思いました。エンドロールが流れると会場は万雷の拍手に包まれ、それがいつまでもやみません。中原さんの安堵の表情が何よりもダラムサラでの成功を物語っていました。
上映後は大勢のチベット人に囲まれ、口々に感謝の言葉をかけてもらいました。強く印象に残ったのは『ルンタ』をぜひ世界で上映してほしいと懇願されたこと。ニューヨークやトロントなどチベット人が多く住む街では、きっと彼らが協力を惜しまないだろうとも。新たな宿題を渡されたようで気が引き締まる思いがしました。

© Ren Universe 2015   最後にもうひとつ嬉しいご報告です。ご好評いただいたポレポレ東中野での上映は本日(11/13)をもって終了しますが、11/21(土)より1週間、京王線沿線の下高井戸シネマにて上映されます。上映時間は連日16:10。初日の上映後には僕が舞台挨拶させていただきます。ポレポレ最終日の今日も18:00の回上映後に感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。その他、全国の劇場情報はこちらをご覧ください。   ルンタの願いをもっと多くの人へ、そして世界へ届けたいと思っています。   感謝を込めて   池谷 薫
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まだ『ルンタ』をご覧になっていない方は、この機会にぜひどうぞ。予告編がすぐ見られる公式サイトはこちらです。  

こんな時こそ『わたしはマララ』を

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フランスで痛ましいテロ事件が起き、IS(イスラム国)が犯行声明を出しました。自分とは考えの違う相手を暴力でねじ伏せようというのは、どんな場合でも非常に卑劣なやり方です。これはISだけでなく、シリア空爆を行っているアメリカやフランスに対しても言えることなのですが、それと比べても今回のテロは、「自分たちが敵とみなす国にいるだけで殲滅されるべき存在となる」という考えのもと、多くの一般市民を巻き込み犠牲にする形で実行されており、さらに卑劣なテロと言えます。

フランスでのテロ事件では、1月に起きたシャルリー・エブド襲撃事件が思い出されますが、同じくテロで言論を封じ込めようとしたのが、2012年にパキスタンで起きたマララ・ユスフザイさん襲撃事件。女子教育の必要性を主張していた15才の中学生マララ・ユスフザイさんが、下校途中パキスタン・ターリバーン運動(TTP)に襲撃され、瀕死の重傷を負ったのです。その後マララさんは一命を取りとめ、イギリスに移って治療を受けて、現在もイギリスで生活をしています。そのマララさんを取り上げたドキュメンタリー映画『わたしはマララ』が、12月に日本でも公開されることになりました。

昨年はノーベル平和賞も受賞して、さらに世界中から注目されるようになったマララさん。その素顔がよくわかる、ドキュメンタリー映画の秀作ですが、それと共にテロとの戦いについてもいろんな示唆に富む作品となっています。では、まずは基本データをどうぞ。(以下、敬称略)

© 2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

『わたしはマララ』 公式サイト

2015年/アメリカ/英語(一部パシュトー語)/88分/ドキュメンタリー映画/原題:He Named Me Malala
 監督:デイヴィス・グッゲンハイム
 出演:マララ・ユスフザイとその家族
 配給:20世紀フォックス映画
 宣伝:樂舎
※12月11日(金)より TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー

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映画は、静かな声だけのインタビューから始まります。アメリカのゴア元副大統領の環境問題に関する講演を追ったドキュメンタリー映画『不都合な真実』(2006)の監督デイヴィス・グッゲンハイムが、マララにいろいろ尋ねているのです。

この映画は当初劇映画として企画されたのですが、製作側が事前調査のためマララとその家族に会ったところ、彼らにすっかり魅了されてしまい、マララ自身を登場させる作品として、グッゲンハイム監督によるドキュメンタリー映画という形になったのだとか。グッゲンハイム監督はまずカメラを入れないで、録音だけの長時間インタビューというか話し合いをし、マララとその家族の心を解きほぐしていったのです。このグッゲンハイム監督の控えめなアプローチが見事に効果を発揮し、マララとその家族が素顔を見せて語ってくれる優れた記録になっています。

マララは、パキスタン西北部に住むパシュトウーン族の出身です。パシュトウーン人はアフガニスタンからパキスタンにかけて居住している民族で、インドではパターン人とも呼ばれています。彼らは、イギリスがアフガニスタンを手中に収めようとして起こした第二次アフガン戦争(1878-1881)でも勇敢に戦ったのですが、その中で、「奴隷として100年生きるより、獅子として1日を生きたい」と叫んで彼らの士気を鼓舞した若き女性の話が半ば伝説のように伝えられてきました。その女性の名は、マイワンドのマラライ(またはマララ)。マララの名前は、この「マラライ(マララ)」から取って名付けられたものです。教育者であったマララの父ジアウディン・ユスフザイが名付けたもので、それが英語の原題にもなっています。

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映画では、このマラライのエピソードがアニメで描かれるほか、特に前半は家庭や学校といった日常生活でのマララの姿が捉えられ、2人の弟による「姉ちゃんてばねー」といった楽しいバクロ話があったりします。また、父から見たマララ、そして少ししか登場しませんが、母の語りも収録されています。現在イギリスで暮らすマララ一家はほとんどが英語での会話ですが、時には母語のパシュトー語での会話も録音されていて、一家の暮らしぶりと彼らの考え方がよくわかります。

こういったごく当たり前のハイティーン少女マララなのですが、その後襲撃された時の話や映像、そばにいて負傷した友人の話などが登場し、いかに大きな苦難を通ってきた少女であるかがわかってきます。特に回復直後のリハビリの様子は、これまであまり知られていなかっただけにショックでした。

また、パキスタンのマララ一家が住む町にターリバーンがやってきて、人々を取り込み、恐怖支配を敷いていく様もリアルに語られます。ラジオというメディアを巧みに使ったTTPの戦略など背筋が寒くなりますが、そういったターリバーン支配地域の庶民の証言としても貴重なドキュメンタリーです。

© 2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved

そして、みんながよく知る国連での演説や、ノーベル平和賞の受賞、アフリカやシリアでの活動など、マララの活躍が描かれていきます。昨年のノーベル平和賞は、マララとインドの社会活動家カイラーシュ・サティヤールティーが受賞しましたが、これはインドとパキスタンの関係に配慮した人選と思われる決定でした。このように、現在でもマララのまわりでは様々な緊張が続いているのです。淡々と描かれていく作品ですが、マララに関する理解がぐっと深まり、彼女の言葉や行動を通して、今の世界がよく見えてくる作品ともなっています。

それにしても感心するのは、マララがしっかりと自分の考えを持ち、行動していること。私も常日頃、マララと同世代の大学生たちに接しているのですが、この映画を見て、日本の若者たちももっと考え深い人になってほしいと思わずにはいられませんでした。自分が同年代だった時は、「もの知らず」と呼ぶのがピッタリの状況だったので強いことは言えないのですが、スマホの奴隷と化している彼らを見ていると、もったいないなあ、と思ってしまいます。教育の機会を求めて闘っている人たちがいる一方で、贅沢な教育の機会が与えられているのに、それを生かそうとしない人たちがいる。そんな矛盾も考えさせられた、『わたしはマララ』でした。


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