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『エージェント・ヴィノッド』レポート

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行ってきました、シネマート六本木。『エージェント・ヴィノッド』朝の回です。地下鉄を降りたら小雪がちらついていて、ちょっとあせりました。

早めに到着しすぎてまだシャッターが閉まっていたのですが、皆さんお早いお出ましで、オープンの10時にはすでに10数人の列が。この時間だと、皆さん『エージェント・ヴィノッド』をご覧になるのですよね....。待っている列の横に、『エージェント・ヴィノッド』のインド版ポスターがディスプレイしてありました(実は、わが家からアクセスエーさんにお嫁に行きました)。

『きっと、うまくいく』のポスターもしっかりありましたよ。土・日・祝のみ上映の『きっと、うまくいく』は、『エージェント・ヴィノッド』朝の回終了後5分で始まるのですが、何と予告編なしで始まっちゃうそうなので、これではハシゴは難しいかもしれませんねー。秒殺でトイレに行ける方は、次の土・日にトライしてみて下さい。

今日はダブルヘッダーで、『項羽と劉邦 鴻門の会』(原題:王的盛宴)のチケットをまず買い、『エージェント・ヴィノッド』の方は関係者枠で入れていただくことに。招待券の半券をいただいたのですが、ちゃんと来場プレゼントも下さいました。大和製菓の「やまとの味カレー*味一番*」。えびせん状のこんなお菓子の小袋です。よく見つけてらっしゃいますねー、アクセスエーさん。

ロビーには、『エージェント・ヴィノッド』と共に、15日(土)から公開される『神さまがくれた娘』のポスターも。上映前には予告編もしっかりかかっていましたが、うまい編集なのに、画像がいまひとつ鮮明でなくて残念。本編はきれいですので、安心してご覧下さい。

また、拙ブログの記事もプリントされてパネルになっていました。使用許可をちゃんと取って下さってます。きれいなデザインのタイトルを付けて下さったのと、写真が美麗に出ていて嬉しかったのとで、大きな写真を付けました。この記事と、この記事です。

この右側に写っている記事は、アジア映画の評論では定評ある紀平重成氏の「キネマ随想」。こちらでご覧いただけます。とても素敵な紹介をして下さっており、「見終った後、体の動きがいつもよりシャープになったのではないかと思うほど作品に“同期”している自分に驚かされる」というような表現もあったりして、いつもながら感心してしまいます。

あともうひとつ、ブログに素敵な紹介をして下さったのが、国際ジャーナリストの浅井信雄さん。アクセスエーさんから教えていただきました。こちらが浅井さんのブログですが、実は浅井さんは東京外国語大学ヒンディー語科の卒業生で、読売新聞記者時代にカイロやニューデリーにも赴任なさっていた方。インドだけでなくアラブ世界にも詳しい方なので、『エージェント・ヴィノッド』は結構ツボだったようです。

この浅井さんのブログを読んでそうそうと思ったのが、映画の中で重要な役割をするのが詩集「ルバイヤート」だということ。日本でも翻訳が出ている、オマル・ハイヤームによるペルシア語の詩集です。詳しく知りたい方は、こちらの解説をどうぞ。「ルバーイー(四行詩)」(元はアラビア語の単語)の複数形「ルバイヤート(正しくはルバーイヤート)」という本のタイトルからもわかるように、四行詩が集めてあります。

 

上は、映画の中に登場する「ルバイヤート」の本です(真ん中の、男の手が掴んでいる本。よく見ると英語版の表紙でした)。何と、中身が替えられて、爆弾の起爆装置になっているんですね〜。詳しく知りたい方は、ぜひ映画をご覧になって下さい。

ところで、『項羽と劉邦』の方はどうだったって? うううううう…、呉彦祖(ダニエル・ウー)の声がまったくの別人声で、残念でしたです、ハイ。(それだけ〜〜〜?) 

<追伸>

「インド映画通信」のソニアさんのツイッターをチェックしていたら、大阪アジアン映画祭のインド映画上映作品決定のニュースが。映画祭の公式サイトを見ると、特別招待部門に、テルグ語映画『バードシャー テルグの皇帝(Baadshah)』とヒンディー語映画『走れミルカ、走れ(Bhaag Milkha Baag)』が入っています。ほかにもフィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア映画などなど、面白そうな作品が今年も満載ですので、ぜひチェックしてみて下さいね。

 


インドのビザと悪戦苦闘

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3月にまたインドに行くのですが、今日はそのためのビザを取りにインドビザ申請センターに行ってきました。インドのビザの申請方法は確か一昨年末から変更になり、まずWeb申請をやってから、プリントアウトした申請書をビザ申請センターに提出する、という形になりました。昨年はそれを知らなかったがために、ビザ発給が間に合うかどうかというギリギリのところになってしまい、寿命が2、3年縮みました。いろんな方のお力を借りて無事行けたからよかったものの、それに懲りて今年は早めに申請することにしました。

2013年の旅より。チェンナイの寺院の門(ゴープラム)と、その門前町で売っているゴーバル(牛糞)。儀式の燃料になります。

毎年コロコロと変わるインドのこと、また様式等が違っているかも、とセンターのサイトを詳しく読み、例もしっかりと見てから入力し、まずはWeb申請に成功。昨年の様式とは、やっぱり一部が違っていました。でもって、プリントアウトしたものを持ち、今日ビザ申請センターに提出に行ったのですが....。

チェンナイ、Tナガルにあるサリー屋クマーラン・ストア。Tナガルにはサリー屋さんがいーっぱい集まっています。

茗荷谷から歩いて5分ほどの所、お茶の水女子大の前にあるインドビザ申請センター。入って「番号札を取る所は?」とキョロキョロしていたら、インド人職員の方に声を掛けられました。どうも私の顔を憶えて下さっているらしく、「最近、インド映画はどう?」なんていうお話をしてから、「書類見せて下さい。よく間違いがあるからね」とのこと。いやー、私の書類は大丈夫だって、などど思っていたら、窓口に入ってすぐ出て来て、「ここ、間違ってるよ。手書きで訂正はできないから、もう一度書類を作り直して来て下さい」。 ええー!!

ムンバイの海上ハイウェイ「シー・リンク」。高速料金を取られますが、渋滞の市内を避けられて助かります。

間違っていたのは、パスポートの「Place of Issue」の欄。昨年は、日本のパスポートだということがわかればいいのよね、と「Japan」と入れてそれでOKだったのですが、今年はパスポートの最後のページに書いてある数字が示す発行地を書かないといけない、とのことで、住んでいる市パスポート申請をした県の名前を入れるよう指示されました。(帰宅後調べてみると、アメリカのビザ申請も同じようなことを要求されるとか。それで、その番号がどこの地名を示すのかは外務省のHPにある、とか出ているのですが、そのリストが見あたりません....)

ムンバイの街角を走るランビール・カプール、じゃなかった、ペプシの車。どこまでも追っかけしたくなりますね。

うう、もう一度出直すのか....とガックリしていると、その職員の方が、「インターネット・カフェに行って打ち直してきたら? 茗荷谷の駅前にもあるし、このビルの4階にもあるよ」と教えて下さったのです。で、とりあえず同じビルの4階をトライしてみることにしました。ただ、下には何の案内板もないので、1階の守衛さんに尋ねてみたところ、「インターネット・カフェ? ハハハ、そんなもんじゃないけどね。4階のエレベーターの向かいにあるよ」と教えてもらい、おそるおそる行ってみました。

ムンバイの街角の寺院。老若男女を問わず、みんなよくお参りに来ています。

そこは小さな部屋で、壁際にパソコンが5台並んでいます。誰も職員らしき人がいなかったので、呼んでみると奥からフィリピン人らしい若い女性が出てきました。で、パソコンを使わせてもらえることになり、使用料金は30分で840円、1時間で...(金額を忘れましたが、30分の倍よりは割安だったと思います)と説明されて、インド・ビザのサイトを開けてくれました。どうやらここは、下のビザ申請センターでハネられた人のみを対象とした、インターネット・カフェのようです。

ムンバイの丘の上にある寺院への入口。

すでに書類は手元にあるので、1箇所だけ訂正してチャカチャカ書き込み、30分以内に終了。でも、お隣の方は一度入力したのが消えたとかで、時間がだいぶかかっていそうでした。そう言えば、私の前に使っていた人も千円以上のお支払いをしていたなあ。私の右隣にあとから座った外国人男性はさすがに早く、15分ほどで作成し終わって席を立って行きました。私もプリントアウトしてもらい、お支払いをして「サラマット・ポ(ありがとう)」と言って(反応してくれたので、やっぱりフィリピン女性だったようです)、すぐ下のビザ申請センターへ。目ざとくみつけてくれた例の職員の方に手渡すと、5分ほどで名前を呼ばれて代金を支払い、申請が無事できました。やれやれ〜〜〜。

ムンバイ、グラントロードのドリームランド・シネマ。このちょっと先にボリウッド映画のポスター屋さんがあります。右は、その近くで見つけたボージプリー語映画のポスター。

これからインドのビザを申請なさる方は、よく気をつけて下さいね〜。インド映画の紹介をやっていると、たまーにこんないいこともありますが、小心なA型日本人は職権乱用(?)をさせたみたいで気が引けたのでした...。

 

『神さまがくれた娘』こぼれ話

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『神さまがくれた娘』が、いよいよこの土曜日、15日から公開となります。A5判のこんな上品なパンフレットも出来上がりました。劇場においでになった折には、ぜひお買い求め下さいませ。

このパンフレットや、『神さまがくれた娘』の公式サイトにもキャストのプロフィールが掲載されているのですが、その内容にちょっと補足をしたいと思います。かなり蛇足気味の補足ですが、お許しを。

ヴィクラム(Vikram) クリシュナ役

 

(C)AP International All Rights Reserved.

ヴィクラム主演作予告編6連発!
 『サーミ(Saamy/神)』(2003)
 『アンニヤン(Anniyan/別人)』(2005)

 『ラーヴァン(Raavan)』(2010)
 『ラーヴァナン(Raavanan)』(2010) 
  『ターンダヴァム(Thaandavam)』(2012)

  『デヴィッド(David)』(2013) 

『神さまがくれた娘』と合わせて、まさに「七つの顔を持つ男」ですねー。本作と同じA.L.ヴィジャイ監督と組んで作った次の作品が『ターンダヴァム』。大阪アジアン映画祭で2人が来日してくれた2012年3月に撮っていたのが、この作品のようです。ヒロイン役のアヌシュカーのほか、ナーセル、サンダーナムらキャストも重なっています。
 
ベイビー・サーラー(Baby Sarah) ニラー役

 

(C)AP International All Rights Reserved.

「2006年ムンバイ生まれ。1歳半から子役として、マクドナルド、マギースープなど多数のCMに出演」とのことなので、サーラーちゃんの出演CF3連発!
       CFその1  持ち家ローン       CFその2 マギースープ     CFその3 貴金属店       

もっとかわいいサーラーちゃんの姿は、劇場でたっぷりご覧下さい。

アヌシュカー(Anushka) 弁護士アヌラーダー・ラグナーダン(アヌ)役(右端)

(C)AP International All Rights Reserved.

アヌシュカー・シェーッティー(Anushka Shetty)という名前でクレジットされることもあります。2009年3月にハイダラーバードに行った時、彼女主演の『アルンダティ(Arundhati)』(2009)が大ヒット中で、いろんな人から「見ろ」と勧められました。「自らの過去に秘められた数奇な運命と闘う女性」と公式サイトの紹介文にありますが、ラジニカーント主演の『チャンドラムキ』(2005)に通じるような、いやそれ以上におどろおどろしい作品でした。共演はソーヌー・スードで、2人とも大熱演。予告編はこちら。『神さまがくれた娘』を見てファンになった方は、ぜひ『アルンダティ』も見てみて下さいね。

 

アマラー・ポール(Amala Paul) 事務局長シュヴェータ・ラージェンドラン役

彼女も、タミル、テルグ、マラヤーラムと南インド諸言語の映画に出まくっているので、南インド映画ファンの皆さんにはお馴染みですね。公式サイトの紹介文には、「最新作『タライヴァー(Talaivaa)』(2013)では、人気スター、ヴィジャイと組んで大ヒットを記録」とありますが、この『タライヴァー(リーダー)』もA.L.ヴィジャイ監督の作品です。予告編はこちら。前にも書いたのですが、『タライヴァー』にも、サンダーナムを始め『神さまがくれた娘』の出演者がたくさん顔を出しています。『神さま〜』がヒットしたら、こちらの公開の可能性も???

 

サチン・ケーデーカル(Sachin Khedekar)    シュヴェータと亡きバーヌの父ラージェンドラン役

最後に、公式サイトにはプロフィールが載っていないキャストを1人ご紹介。サチン・ケーデーカルはその姓からもわかるように、マハーラーシュトラ州出身の男優です。これまで、マラーティー語やヒンディー語の映画約80本に出演。多くは脇役ですが、タッブーと共演した『存在(Asthitva)』(2000)や、シャーム・ベネガル監督の『スバス・チャンドラ・ボース 忘れられた英雄(Netaji Subhas Chandra Bose: The Forgotten HeroまたはBose: The Forgotten Hero )』(2005)のように、主役級の作品もあります。『スバス・チャンドラ・ボース』の予告編はこちら

日本で上映された作品では、東京国際映画祭の『火の道』(2012)で悪人に味方する州の大臣を演じ、リティク・ローシャン演じるヴィジャイに痛めつけられていました...。
最近はボリウッドの脇役俳優が南インド映画に出演するのが当たり前になってきましたが、噂によるとペイがとってもいいんだそうです。サチン・ケーデーカルのような名優を南インド映画専属にしないよう、ボリウッド映画もがんばってほしいですね。

では、こちらで劇場をご確認の上、上に挙げた俳優たちの名演技をスクリーンでお楽しみ下さいね〜。 

 

雪にもめげず『デリーに行こう!』

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本日も首都圏、すごい雪です。「週末雪国」がすっかり定着してしまいました。とはいえ、私が住んでいる神奈川県東部では朝から横殴りの雪だったものの、用事があって行った江戸川区はほんの粉雪で、道路の状態も雨とほとんど変わりません。南関東の海岸寄りの方が、降雪量が多かったのでしょうか。

というわけで、先週に続いて雪の週末なんですが、これが狙ったようにインド映画の公開日なんですね〜。昨日お伝えした『神さまがくれた娘』@シネマート六本木&ユーロスペースのほか、『デリーに行こう!』もオーディトリウム渋谷にて明日から公開です。「”チャロー・ディッリー”デークネー・ケー・リエー・チャロー・シブヤ」(『デリーに行こう!』を見に渋谷に行こう!)

『デリーに行こう!』というタイトル、結構旅人魂をくすぐっているようで、旅好きの人、インド好きの人からは、「面白そうなんで、見に行きます!」という反応が次々と来ています。我々日本人はどちらかと言うと、潔癖でデキる女性ミヒカ(ラーラ・ダッタ)に近い感覚でこの映画に突入するため、彼女の反応にいちいちシンクロしてしまいます。でも、その反応がやがて...。グッとくるラストのために、ハンカチをお忘れなく。

さて、それでは劇中で、がさつ男マヌ(ヴィナイ・パタック)が口癖のように言うセリフを予習しておきましょう。

Kaun si badi baat ho gayi(コウン・シー・バリー・バート・ホー・ガイー)
意味:それがどうした、たいしたことない

こちらのクリップの最初と最後で聞けます。「何? 雪だって? コウン・シー・バリー・バート・ホー・ガイー。チャロー、オーディトリウム渋谷!」と言われそうですね。さて、映画の中でマヌはこのセリフを何回言うでしょう? 将来DVDが出たら数えてみたいです....。

『デリーに行こう!』の公式サイトはこちらです。上映劇場、中部地方を中心に増えています。オーディトリウム渋谷の上映は一部変則的ですので、いらっしゃる時は注意して下さいね。ではでは、シネマート六本木と、オーディトリウム渋谷&ユーロスペースで、インド映画ダブルヘッダーをお楽しみ下さい〜。

 

モンゴルのホーミーを聞いてみませんか

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友人が自宅1Fをギャラリーに改装し、昨年末から活動を始めました。ギャラリーの名前は「ディープダーン(Deepdan)」、最寄り駅は京王井の頭線池の上駅です。「ディープダーン」とは「お灯明を上げる」というような意味で、それからもおわかりのように、友人はインドととっても縁が深い人です。「ディープダーン」のHPはこちらですが、貸しギャラリーでもあるので、アジア関係の展示をなさりたい方はぜひコンタクトを取ってみて下さい。

ディープダーンから今日届いたお知らせは、梅木秀徳さんという方の、ホーミーのライブ。ホーミーというのはモンゴル独特の歌唱法で、それはそれは迫力があります。詳しく知りたい方は、こちらのウィキのサイトや、こちらの動画をどうぞ。しかし、これをあのギャラリーで聞いたら、声に酔ってしまうのではないかしら....。とりあえず、いただいたお知らせをコピペしておきます。定員枠が小さいので、ご予約はどうぞお早めに。

梅木 秀徳 LIVE 「モンゴルからの風、アルタイの山々への祈り」

ウメキ・ヒデノリ/プロフェッショナル・ホーミー歌手   
馬頭琴演奏家・口琴(こうきん)奏者 (モンゴル・ホーミー協会認定)

 4/6  (日)15時から (開場は14時半/終演17時10分頃)
 4/12(土)18時から (開場は17時半/終演20時10分頃)

 会費 前売り3300円
     当日3500円   スーテイツァイ(モンゴルミルクティー)付き
  両日とも定員15名(限定)/前売りで満席の場合は当日の受付は承れません.
  お早めにお申し込み下さいませ。
  会場 GALLERY DEEPDAN
     東京都世田谷区北沢1-32-17

お申し込み/お問い合わせ
 Gallery Deepdan :090-8519-8294 info@deepdan.com

演奏予定曲目
 「ジョノン・ハル」-モンゴルの駿馬-「モンゴル・ホーミーのメドレー」
 「アルタイ山讃歌」「スーホの白い馬」「万馬の轟き(ばんばのとどろき)」
 「アルタイの英雄叙事詩」「ウレムジーンチャナル-最高の美しさ-」
 口琴演奏-悠久の大地-
 ほか多数演奏

《 梅木秀徳 プロフィール 》
1977年岩手県陸前高田市生まれ。98年子どもの頃から憧れていた
モンゴルに初めて渡り、伝統楽器馬頭琴を手にしたことをきっかけに、
モンゴルの音楽のとりこになる。モンゴルのホーミー指導の第一人者オ
ドスレン氏に素質を認められ、同氏の指導の下、ホーミーを修得。
モンゴルホーミー協会からプロフェショナルホーミー歌手の認定を受ける。
2012年にモンゴルで紀元前の発掘口琴に出会い、インスピレーションを得て、
口琴奏者としてのデビューも決意。遊牧騎馬民族の音楽世界の発展に
貢献するべく活動し、日本と大陸を渡り続けている。
モンゴル・ホブド県開催ホーミー・フェスティバル)・特別賞受賞

梅木さんの短い動画もこちらにアップされていました。この画像では弦楽器を演奏しながらホーミーを歌っておられるようですが、当日は上記のように口琴の演奏もある模様。口琴はアイヌ語では「ムックリ」、英語では「Jew's Harp」などども呼ばれる、唇に当てて演奏する小さな楽器です。

そう言えば、昔、直川礼緒さんが主宰してらした「口琴ジャーナル」なんていうのを楽しみにして読んでいたことがあったのですが、直川さんのお話だと、台湾の原住民族の中には口琴を使って会話する人たちもいるそうです。でも直川さん、台湾の街中で「口琴」と書いた看板を見つけ、喜び勇んで駆け寄ったら、何とハーモニカを売っているお店だったとか。そう、中国語で「口琴」とはハーモニカを指すんですね〜。直川さんが主宰する日本口琴協会のHPはこちらです。興味のある方は覗いてみて下さい。

モンゴルや内モンゴル共和国は行ったことがなく、画像が何もないので、モンゴルっぽい絵柄のイランのミニアチュールを付けました。1978年にイランに行った時に買った絵はがきの一部です。ティムール朝とかのものでしょうか。

♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪

ところで、今日『神さまがくれた娘』と『デリーに行こう!』の初日にいらした皆様、足の便は大丈夫でしたか? 私の住んでいる川崎市は、午前0時過ぎに東急東横線元住吉で起きた事故のため、東横線がストップしたのを受けてか道路が大渋滞。雪の影響による高速閉鎖等もあるのでしょうが、新聞の朝刊も夕刊もいまだに販売店に届いていないという状態で、今日は新聞なしの1日となりました。というわけで、羽生結弦くん金メダルのニュースは、明日知ることになります(笑)、って、ホントは午前4時頃までテレビ見てたんですけどね。モンゴロイドの顔立ちをした3人(カナダのパトリック・チャンのルーツは香港人、カザフスタンのデニス・テンのルーツは高麗人)が表彰台を占めるなんて初めてでは、とちょっと感慨深かったです....。

 

インド映画@渋谷

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昨日より、東急渋谷本店近くのKINOHOUSEで、インド映画2本が公開されています。2Fのオーディトリウム渋谷では『デリーに行こう!』、そして3Fのユーロスペースでは『神さまがくれた娘』が上映中なのです。実は本日、オーディトリウム渋谷の支配人さんの結婚披露パーティーが1Fのカフェであり、それに出席しがてら、2つの映画館を覗いて来ました。

まず2Fのオーディトリウム渋谷では、ちょうど『デリーに行こう!』の入れ替え時間とあってロビーは賑やか。配給会社Thati Media Corporationの社長スレーシュ・ターティーさんを中心に、関係者の方々がポーズを取って下さいました。

ターティーさんは、最終回の始まる前舞台に出て、なぜこの映画を公開することになったのかを観客に向けて説明。「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパンで上映した時、結構お客さんが来て反応がよかったから。それに、大スターが出ていないので上映権料が安かったんです」正直な方ですね〜。「本当は日本の配給会社が手がけて下さるといいのですが、どこも引き受けて下さらないので自分で配給しました。今後も続けてインド映画を紹介したいので、ぜひFBやツイッターで宣伝して下さい」新婚ほやほやのオーディトリウム渋谷支配人によると、「スレーシュさん、日々挨拶が上手になっていってます」とのことです。聞きに来てあげて下さいね〜。

続いて、3Fのユーロスペースへ。こちらは上映中とあって、ロビーには次の回を待つ方が2人だけ。

奥の方の掲示板には、劇場スタッフの手作りと思われるパネルが貼ってありました。なかなかいい味出してますね〜。

そしてさらに目を引くのが、パネルの右下のチラシ。何と、『ダバング 大胆不敵』のチラシがもうできていました。まずは、両面をアップで付けておきます。

監督名の表記は「アビナーヴ・スィン・カシュヤップ」になってますが、間違ってるがな〜。「Abhinav」は「アビナウ(またはアビナヴ)」で音引きは入りません。もうひとつ、出演者の表記にも間違いがあって、「アヌパム・カー」は正しくは「アヌパム・ケール」。他は正確な表記になっているのに、変ですねー。カッチョいいイラストが泣きますよ〜。

そして注目はこの裏面。以前お知らせしたテルグ語映画2本は、「インド映画祭」というくくりで公開されるようです。このうちの『バードシャー テルグの皇帝』は、大阪アジアン映画祭で先行上映されるというのも先日お伝えした通り。しかーし、ここにも間違いがっ! 「NTRの息子NTRジュニアが大活躍!」 NTRことN.T.ラーマラーオ(1923−1996)の息子だとすると、1983年生まれのジュニアは60歳の時の子供? ちがーう、ジュニアはNTRの孫なんですよ〜。

もう、配給のオムロさんってば、と思って最後を見たら、配給は『ダバング 大胆不敵』と同じ太秦になっていて、オムロは「宣伝協力」となっています。というわけで、『神さまがくれた娘』の配給会社太秦が、合わせて4本のインド映画を公開する、ということになるようです。今後太秦さんにがんばってもらうためにも、『神さまがくれた娘』にもぜひ足をお運び下さいね〜〜。

 

 

悩ましいインド映画人名表記

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一昨日のブログ記事でつい吠えてしまった(笑)、『ダバング 大胆不敵』のキャスト&スタッフ人名表記。「ここが変です〜」とご連絡すると、提供元のビオスコープさん、配給の太秦さん共に、すぐさま次のチラシ等からは訂正して下さることに。「アヌパム・カー」もちゃんと「アヌパム・ケール」と直ることになりました。アヌパム・ケールの顔がパッと浮かばない方のために、顔写真を付けておきましょう。

Photo by R.T. Chawla

ビオスコープさんのお話では、当初は当然「アヌパム・ケール」と思っていたところ、以下のような理由から、日本ではむしろ「アヌパム・カー」が定着したと考えるべきではないか、ということで「アヌパム・カー」になさったのだそうです。

?確認した時点でWikiでの表現が「アヌパム・カー」になっていたこと。(現在は併記されている) ?昨年の話題作『世界にひとつのプレイブック』での表記が全て「アヌパム・カー」だったこと。 ?その前のウディ・アレン作品『恋のロンドン狂想曲』も「アヌパム・カー」となっていた。 

そうなんですねー、アヌパム・ケールはIMDbを見てみると、1982年のデビュー以降すでに365本(!)もの作品に出演しているのですが、ここ10年ぐらい、とみに英米圏の映画やTVドラマへの出演が増えています。従って、英語読み(?)のカタカナ表記が露出することが多いのですねー。しかし、英語読み、とは言っても、確かに「her」は「ハー」ではありますが、歌手兼女優の「Cher」は「シャー」ではなく「シェーア」というような発音で、日本では「シェール」と表記していますし、「Kher」を「カー」と読むのが正しいとは言えません。

「アヌパム・カー」という表記は、多分2003年に公開された『ベッカムに恋して』(2002)から日本で使われるようになったのでは、と思います。それ以前に1999年に『シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦』 (1995/下はそのロビーカード)が公開されており、そこでは正しく「アヌパム・ケール」と表記されていたのですが、この映画は世間的認知度が低いままに終わったため、この表記は定着しなかったんですね。で、その後アヌパム・ケール出演作が公開されると、『ベッカムに恋して』の表記が参照され続けてきたのではと思います。梁朝偉(トニー・レオン)主演の『ラスト・コーション』の時も、「アヌパム・カー」となっていたので配給会社にはチラと言ったのですが、もうプレスも出来ていてダメだった憶えがあります。

というわけで、一度間違いが定着するとなかなか訂正ができなくなります。間違いが起きる原因は、主として次の3つではと思います。

1.英語読み、あるいは英語読みだと配給会社が考える表記にしてしまう。ヨーロッパ系の人名だと調べたりする人も、アジア系だとその手間をかけないことが多いので、「アヌパム・カー」始め、「シェカール・カプール」(正:シェーカル・カプール)、「アスガー・ファルハディ」(正:アスガル・ファルハーディー)などが流布してしまっています。

2.2つあって迷った時は、ネットを検索して数の多い方にしてしまう。「アヌパム・ケール」2,480、「アヌパム・カー」6,520、これは「アヌパム・カー」が正しい、となってしまうのですね。ネットでの多数決に頼ると、真実を見誤ること多し。確か、『ロボット』の監督名の誤記「シャンカール」(正:シャンカル)も、これでミスったのではなかったかと...。

3.自分の耳を過信する。慣れない外国語の音は、特に耳があまりよくない日本人には聞き分けられないと思うのに、「こう聞こえた」と譲らない人がいます。その犠牲が『ミモラ 心のままに』 (1999)という題名です。劇中の歌「ニンブーラー(小さいレモン)」が配給会社の人には「ミモラ」と聞こえたのだとかで、提供元が激しく抗議するも、却下。こうして、一生後ろ指さされる羽目に(笑)。

あと、インドの専門家の間でも、表記のゆれがあります。「si」と「shi」の区別を特に明確にせず、両方とも「シ」で表記してしまう派(私もそうです)と、厳密に「スィ」と「シ」に書き分ける派。これは、「zi」と「ji」を両方とも「ジ」にするか、「ズィ」と「ジ」にするか、ということにも関わってきます。私は、アルカカットさんこと高倉嘉男さんが「これでインディア」にまとめられた「カタカナ表記」(素晴らしいお仕事です〜)をよく参照させてもらっているのですが、「スィ」表記も含めていくつかの点では意見を異にします。

それから、最近は私も「音引きは落としてもOK」派になってしまったのですが、そうすると、自分が書く時にすごくストレスが溜まることがわかりました。「プリヤンカー・チョプラ」(by「ボリウッド4」)はやっぱり「プリヤンカー・チョープラー」と書きたい! ああ、まったくもって、人名表記は悩ましいです....。

とりあえず「アヌパム・ケール」は、『ダバング 大胆不敵』を大ヒットさせてこちらを定着させてしまいましょう! サルマーン・カーンも、『ミモラ』のリベンジを果たしてねっ!!

 

   

『エージェント・ヴィノッド』上映期間延長!

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皆様の熱いご支持で延びました、『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』上映@シネマート六本木。当初は2週間の上映予定で、明後日、2月21日(金)には上映終了のはずだったのですが、ひとまず2月28日(金)まで上映が延長されることになりました。というわけで、今週末も見られますよ〜『エージェント・ヴィノッド』。

配給会社アクセスエーさんから今ご連絡があったもので、劇場のサイトには2月28日(金)までの予定が出ています。「2週連続の大雪の影響や、まずまずの動員状況を鑑みて劇場さんにプッシュ、ご判断いただきました」とのことで、アクセスエーさんのご努力とシネマート六本木のご英断にも感謝!です。

この2週間、見に行く時間が作れなかった、という皆さん、今週末は雪も降らないようなので(笑)、ぜひ六本木までお出かけ下さいませ。『神さまがくれた娘』とのダブルヘッダーも可能です。『神さまがくれた娘』 → 『きっと、うまくいく』 → 『エージェント・ヴィノッド』のトリプルヘッダーも可能です(実際にやった方はチョー尊敬してしまいます。速攻トイレ術も含めて、神業クラスになりますね〜)。シネマート六本木の『エージェント・ヴィノッド』特設サイトはこちらです。

ところで、『エージェント・ヴィノッド』のDVDはもうご注文になりましたか? 発売は3月5日なのですが、ちょっと前倒しでチラ見させていただきました。するとこれが、いろいろスグレモノのDVDなんですねー。

まず、本編の他に「ミュージッククリップ」というチャプターがあり、そこをクリックすると次の5曲のタイトルがずらーっと出てきます。お好きな曲を選ぶことも、あるいは5曲連続演奏を選択することもできます。これはインド版のソフトをそのまま取ったものでしょうか、音楽シーンが続けて楽しめて嬉しいですねー。

1.Govind Bolo Gopal Bolo(ゴーヴィンドと唱えよ、ゴーパールと唱えよ)
  〜オープニング・タイトルソング。「ゴーヴィンド」も「ゴーパール」もクリシュナ神の別名です。サビは「♪ ゴーヴィンド・ボーロー、ゴーパール・ボーロー、ボーロー・ハリ・ハリ(ゴーヴィンドの名を唱えよ、ゴーパールの名を唱えよ、神の名を唱えよ)」

2.I Will Do The Talking Tonight〜サンクト・ペテルブルクのクラブで歌われるアイテム・ソング。トルコの歌「カーティビム(下級役人)」がフィーチャーされています。

3.Raabta(関係、縁)〜ラトビアのリガの安ホテルで、盲目の女性歌手がピアノを弾きながら歌う曲。サビは「♪ クッチュ・トー・ハイ、トゥジュ・セー・ラーブター(何かあるのよ、あなたとは縁が)」

4.Dil Mera Muft Ka(私の心は無料なの)〜パキスタンの結婚式で歌われるカッワーリー・ソング。サビは「♪ ディル・メーラー、ムフト・カー(私の心は、タダであげるわ)」

5.Pungi(ヘビ笛)〜エンディング・タイトルで流れる、監視カメラ・ダンス曲。サビは「♪ オー・メーリー・ジャーン(おお僕の愛しい人)×2、メーレー・コー・マジュヌー・バナー・カル(僕を恋の虜にして)、カハーン・チャル・ディー(どこに行ってしまったんだ)×2、ピャール・キー・プンギー・バジャー・カル(恋心を打ち砕いて)」

あと、「でか字幕」が選択できるのも、アクセスエーさんのDVDの特徴です。読みやすいですよー、でか字幕。

エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ [DVD] クリエーター情報なし アメイジングD.C.

まだ注文なさってない方は、ぜひ上記からどうぞ。ご注文済みの全国の皆様は、あと2週間、楽しみにしてお待ち下さいませ〜〜〜。 

 

 


第6回沖縄国際映画祭のアジア映画

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少し前に、今年の沖縄国際映画祭のラインアップが発表されました。インド映画、今年も入っています。以下、映画祭の概要とアジア映画のラインアップです。 

第6回沖縄国際映画祭 公式サイト

  期間:2014年3月20日(木)〜24日(月).
 会場:沖縄コンベンションセンターおよび周辺地区(沖縄県宜野湾市)、桜坂劇場および国際通り周辺(沖縄県那覇市)、沖縄県北谷町、沖縄市、浦添市、今帰仁村、他沖縄県内 各所.
 主催:沖縄国際映画祭実行委員会.
 運営担当:(株)よしもとラフ&ピース

<コンペティション:Laugh部門>

『フックレー/ないない尽くしの男たち』 予告編

  2013年/インド/ヒンディー語/原題:Fukrey
  監督:ムリグディープ・シン・ランバー
 出演:プルキト・サムラート、アリー・ファザル、マンジョート・シン、ヴァルン・シャルマ、パンカジ・トリパシー、リチャ・チャッダー、ヴィシャーカー・シン

※インド映画お得意のバディもので、『きっと、うまくいく』の自殺してしまう学生ロボ役のアリー・ファザル、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』にも出ているマンジョート・シンらが出演しています。『走れミルカ、走れ』主演のファルハーン・アクタルとリテーシュ・シドワーニーの会社エクセル・エンターテインメントの作品です。ところで、パンカジ・「トリパシー」は正しくは「トリパーティー」ですので。『血の抗争』で主人公をつけねらっていたコワもてのおじさんです。こういう個性的な俳優陣で、思わぬスマッシュヒットとなりました。

<コンペティション:Peace部門>

『怪しい彼女』 予告編

 2014年/韓国
  監督:ファン・ドンヒョク
 出演:シム・ウンギョン、ナ・ムニ、ジニョン、イ・ジヌク、ソン・ドンイル、ファン・ジョンミン、パク・インファン

『ミスターGO!』     予告編
  
 2013年/韓国
  監督:キム・ヨンファ
 出演:リンリン、シュー・チャオ、ソン・ドンイル、キム・ガンウ、オダギリジョー

※こちらは5月24日(土)より公開が予定されていて、本日でっかいゴリラの試写状をいただきました。予告編もすでに日本語吹き替え版ができています。拙ブログでの過去の紹介はこちら。3D版が大迫力なので、そちらでご覧になることをオススメします。沖縄も3D版かしら?

私はこの期間はまた花粉症逃亡してしまいますが、沖縄にお出かけの方は楽しんできて下さいね〜。

 

 

香港でも『The Lunchbox』公開

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 失礼しました、外出する前にパソコンを終了する時間違えて、うっかりと下書きをアップしてしまいました....。帰宅後落ち着いてからパソコンを開いて「汗! アセ!!」状態に。目になさった方は、あれはなかったことにして下さいまし。

というわけで、日本で今年公開される作品のうち、『The Lunchbox』も香港で間もなく公開されます。香港題名は『美味情書』、つまり「おいしいラブレター」「味な恋文」といったところです。香港版予告編はこちらですが、国際版の予告編を使ってあります。この予告編では「3月6日公開」となっているものの、3月1日から先行上映しているところもある模様。ちょっと変則的な上映となるようです。

 

肝心の日本での公開情報がまだ流れてきませんが、それに先だっていろいろ情報を流しておこうと思います。今日は2つほどおせっかい情報を。

?ムンバイのお弁当配達人〜お弁当は、というか正確にはお弁当箱ですが、「ダッバー」と呼ばれます。そこから、お弁当配達人は「ダッバーワーラー」と呼ばれます。「〜ワーラー」は「〜をする人、〜を扱う人」といったような意味です。他には、「リクシャーワーラー(人力車や三輪タクシーの運転手)」などがよく知られていますね。そのダッバーワーラーの集荷&配達拠点を、2010年にムンバイに行った時偶然カメラにおさめました。確か、メトロという映画館の近くだったと思います。今もそこを使っているかどうかは不明ですが、4年前はこんな感じでした。

ちょっと脱線しますが、「〜ワーラー」というのは、パールシー(拝火教徒)の名前にもよくあります。私の知人の映画史家の名前は「フィローズ・ラングーンワーラー」。何代か前に、ラングーン(現ヤンゴン)と関係のある人がいて、それを姓にしたみたいです。それから、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』に登場するパールシー教徒の学生の姓は、「ソーダボトルオープナーワーラー(Sodabottleopenerwala)」。「ソーダ瓶栓抜きの人」というわけです。栓抜きを作って儲けた人がご先祖、とかなのかも知れません。パールシーの人は職業を姓にすることが多く、「パイロット」さんや「ローヤー(Lawyer)」さんもいたりします。

?劇中で使われる『サージャン 愛しい人』 (1991)の曲~YouTubeにはこんなべるがもさんの日本語字幕付き労作もアップされています(残念ながら、字幕がよく見えません....)が、それを見て、昔この歌を訳したことがあるのを思い出しました。実は『サージャン 愛しい人』は、1996年にNHKテレビで放映されているのです。その時に下訳等少しお手伝いしたものがうまく残っていたので、ちょっと原語歌詞との対訳を作ってみました。元歌はこちらです。

 

mera dil bhi kitna pagal hai, ye pyar jo tum se karta hai - 2
僕の心はもう夢中  君に恋してしまってる

par saamne jab tum aate ho - 2, kuch bhi kehne se darta hai
なのに君と向かい合うと  何も言えなくなってしまう

o mere saajan, o mere saajan, saajan saajan, mere saajan
ああ 僕の愛しい人  愛しい人よ 愛しい人

mera dil bhi kitna pagal hai, ye pyar jo tum se karta hai - 2
僕の心はもう夢中  君に恋してしまってる


kitna isko samajhata hun, kitna isko behlata hun -2
どんなに説き聞かせても どんなになだめても

naadaan hai kuch na samajhata hai, din raat ye aahen bharta hai
心はもう言うことを聞かない 一日中ため息ばかり


mera dil bhi kitna pagal hai, ye pyar jo tum se karta hai - 2
私の心はもう夢中  あなたに恋してしまってる

par saamne jab tum aate ho - 2, kuch bhi kehne se darta hai
なのにあなたと向かい合うと 何も言えなくなってしまう

o mere saajan, o mere saajan, saajan saajan, mere saajan
ああ 私の愛しい人  愛しい人よ 愛しい人

mera dil bhi kitna pagal hai, ye pyar jo tum se karta hai - 2
私の心はもう夢中  あなたに恋してしまってる


har pal mujhko tadpata hai, mujhe saari raat jagata hai -2
いつも落ち着かなくて 夜も全然眠れない

is baat ki tumko khabar nahi, ye sirf tumhi pe marta hai
あなたは知らないでしょう 私の心にはあなただけ


mera dil bhi kitna pagal hai, ye pyar jo tum se karta hai - 2
僕の心はもう夢中  君に恋してしまってる

mera dil bhi kitna pagal hai, ye pyar jo tum se karta hai - 2
私の心はもう夢中  あなたに恋してしまってる

par saamne jab tum aate ho
なのに君と向かい合うと

par saamne jab tum aate ho
なのにあなたと向かい合うと

kuch bhi kehne se darta hai
何も言えなくなってしまう

o mere saajan, o mere saajan, saajan saajan, mere saajan
ああ 僕の愛しい人  愛しい人よ 愛しい人

 

下訳なので、かなり固いですねー。『The Lunchbox』では、イルファーン・カーン演じる主人公の名が「サージャン・フェルナンデス」となっており、それでこの歌が選ばれたようです。上に付けた写真2枚は、当時街角で売っていたポストカード。左から、サンジャイ・ダット、マードゥリー・ディークシト、そしてサルマーン・カーンです。今はこういうポスカはまったくなくなってしまって、とっても残念です...。 


 

インド映画情報あれこれ

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今週も首都圏では3本の上映が続くインド映画。3月には大阪と沖縄で映画祭がありますが、インド映画のイベントや変更の情報が入ってきました。

★『神さまがくれた娘』トークイベントのお知らせ 公式サイト

 日時:3月2日(日)午前10時の回上映終了後、12時30分よりスタート
 場所:渋谷ユーロスペース
 ゲスト:ショーレ・ゴルパリアン(映画プロデューサー)
 聞き手:松岡環(アジア映画研究者/本作字幕翻訳者)

(C)AP International All Rights Reserved.

ショーレ・ゴルパリアンさんは、イラン映画の字幕監修や来日イラン映画人の通訳として有名な方で、イラン人監督が日本で撮影する時にはプロデューサーやコーディネーターとして全面協力するなど、「日本におけるイラン映画の母」と呼ばれている方です。そのショーレさんが惚れ込んだのが、何とインド映画『神さまがくれた娘』。大阪アジアン映画祭では、ゲストとして来日したA.L.ヴィジャイ監督と父親役の男優ヴィクラムの通訳も務めました。そんなショーレさんが、私生活でも親交のあるヴィクラムやヴィジャイ監督のお話、そして撮影の裏話などを語って下さいます。短時間ですが、濃〜いトークになると思いますので、ぜひお聞き逃しなく。

 (C)AP International All Rights Reserved.

★『デリーに行こう!』上映延長決定 劇場サイト

オーディトリウム渋谷で上映中の『デリーに行こう!』の上映が、3月20日(木)まで延長されることが決定しました。現在予定されている3週目からの上映時間は下記の通りですが、おいでになる時は上記劇場サイトで念のためご確認の上お出かけ下さい。
 3月1日(土)〜7日(金) 14:45〜/17:05〜
 3月8日(土)〜14日(金) 14:45〜
  3月15日(土)〜20日(木) 13:00〜

 

★大阪アジアン映画祭『走れミルカ、走れ』上映中止

2月15日に「[緊急!!] 『走れミルカ、走れ』の全上映につきまして、諸事情により一時販売を見合わせております。今後の状況につきましては、決定次第、ご案内をさせていただきます」との案内が事務局から流されましたが、昨日付で、「『走れミルカ、走れ』の上映について、やむをえない事情により上映を中止することとなりました。発表までに時間がかかりご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。チケットの払い戻しなど詳細についてはこちらをご覧ください」との事務局からのお詫びがアップされました。リンクが張られた「こちら」に書いてある「その後発生した当映画祭では解決し難い事情」って何なんでしょうねー。

代わりの作品としては、韓国映画『友へ チング2』(監督:クァク・キョンテク)が上映されるとのことです。この映画は、チャン・ドンゴン、ユ・オソンらが主演し、2001年に大ヒットした『友へ チング』の続編で、今回の主演はチュ・ジンモ、ユ・オソン、キム・ウビン。韓国映画ファンの方には朗報ですね。こちらは東京テアトルと日活の配給で今年中の公開も決定していますが、きっと映画祭の要請に応えて快く出品を承諾して下さったのでしょうね。一日も早く見たい方は、大阪へGO!

 

北朝鮮を知るための2本のドキュメンタリー

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北朝鮮がまたミサイル発射か?とニュースで伝えられていますが、北朝鮮、つまり朝鮮民主主義人民共和国を知ることのできるドキュメンタリー映画が2本公開されます。『北朝鮮強制収容所に生まれて』 (2012年/ドイツ)と『シネマパラダイス★ピョンヤン』 (2012/シンガポール)です。かなりテイストの異なる2本ですが、北朝鮮の一面をよく伝えてくれているので、一緒にご紹介しましょう。

 『北朝鮮強制収容所に生まれて』 劇場紹介サイト

 2012年/ドイツ/106分
 監督:マルク・ヴィーゼ
 提供:マクザム
 配給:パンドラ
※3月1日(土)〜ユーロスペース2(東京)。名古屋シネマスコーレ、大阪シネ・ヌーヴォにても順次公開予定

こちらは、北朝鮮の政治犯を収容している14号管理所で生まれ、のちに脱北して韓国に渡ったシン・ドンヒョク青年が主人公で、彼の話をワシントン・ポスト紙で読んだドイツ人のドキュメンタリー映画監督マルク・ヴィーゼが長期にわたってインタビューし、完成させました。シン・ドンヒョクは収容者同士の表彰結婚(いわば、従順な収容者に対するご褒美結婚)で1982年11月19日に誕生、その後2005年1月2日に14号管理所を脱出するまでの22年間を、ずっと外の世界を知らないで過ごします。そんな彼が2006年に韓国に落ち着いたあと、2009年から断続的にマルク・ヴィーゼ監督の問いに答えた映像が本作の中心となっています。

収容所時代の話は、悲惨というか凄絶というか、まさに想像を絶します。一部アニメーションで再現されているのですが、シン・ドンヒョクが自身の母と兄を当局に密告し、その2人が処刑されてしまうエピソードなど、心が冷えるような事実が語られていきます。シン・ドンヒョクが2人を密告したのは、母が隠し持っていた食糧を兄に与え、不満を言うのを聞いてしまったからでした。恒常的な飢えにさいなまれていたシン・ドンヒョクには、この母と兄の裏切りが許せなかったのだろうと思いますが、それよりも彼が2人を密告したのは、「互いに監視し合い、奇妙な振る舞いがあったら即座に報告しなくてはならない」といった当局の教育が、骨の髄までしみ込んでいたからだと思います。肉親の感情など持ち合わせていない彼は、何の疑いも持たずに即報告してしまったのです。

そういった非人間的な生活を生まれた時から22年続けた彼が、今自由になって、どのように生きているのか。それは、過去の様々なものを引きずりながら重圧に耐えて生きている姿であり、「自由万歳!」といった雰囲気はまったく伝わってきません。これほどまでに人間を破壊してしまう北朝鮮とは何という存在なのだろう、と思わせられてしまいます。マルク・ヴィーゼ監督は、さらに収容所の管理者側にいた人々で、脱北した人たちにもインタビューを重ね、今もこの地球上に存在する非人間的な機構に迫っていきます。

シン・ドンヒョク青年の体験は、以下のような2冊の本としても出版されていますが、本人の口から語られるこのドキュメンタリーは、より深刻な印象を与えてくれるに違いありません。

 

収容所に生まれた僕は愛を知らない 申 東赫 ベストセラーズ

 

北朝鮮 14号管理所からの脱出 ブレイン ハーデン,申 東赫 白水社


『シネマパラダイス★ピョンヤン』 公式サイト

 2012/シンガポール/朝鮮語/日本語&英語字幕/93分
 監督:ジェイムス・ロン、リン・リー
 配給:33 BLOCKS

※3月8日(土)〜シアター・イメージフォーラム(東京)、3月15日(土)〜シネマスコーレ(名古屋)、4月12日(土)〜シネ・ヌーヴォ(大阪)にて公開

『シネマ・パラダイス★ピョンヤン』は、シンガポールの若い映像作家ジェイムス・ロンとリン・リーが、2008年にピョンヤン国際映画祭に招待されたのがきっかけて制作が始まった作品です。2人は北朝鮮を映画に撮ろうと考え、撮影許可を求めます。その先に待っていたのは、山ほどの交渉と制約、そして、一握りの協力者だったとか。こうして彼らは、ピョンヤンでの北朝鮮映画製作の現場と、映画人の卵を養成するピョンヤン演劇映画大学での撮影を開始します。

開始する、と言っても、演劇映画大学での撮影は毎回NG(校舎が粗末だから?)。代わって外の公園で、教授が学生たちに演技指導をするシーンなどの撮影が許可されますが、いずれも揃って優等生らしき学生たちは、公式見解といった発言しか口にしてくれません。1人の女子大生の自宅撮影が許可されましたが、これまた模範的な富裕家庭という印象で、立派なリビング・ダイニングや、ピアノのある居間など、「これがホントに一般家庭?」と疑いたくなるような映像ばかり。途中、停電するシーンがあり、そこだけはプチ・リアル北朝鮮という感じでしたが。

戦争アクション映画を撮影中の監督の指導など、確かに北朝鮮らしさは垣間見られるのですが、いまひとつドキュメンタリー映画としては腰が引けているというか、胸に迫る映像がありません。確かに、当局の条件が「1.外出する際は、必ず案内員が同行する、2.撮影したものは、その日毎に検閲に出す」だというのですから、制約でがんじがらめ、という状態だったのでしょう。というわけで、こちらのドキュメンタリーは、作品の裏を読んでいく、という楽しみも与えてくれます。

なかなか断片的にしか伝えられない北朝鮮の姿、この機会に、2作まとめてぜひご覧下さい。

 

『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』チラシできました

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次に公開が控えているインド映画、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』のチラシを送っていただきました。アンプラグドさん、ありがとうございます。表は前にもご紹介したデザインと一緒ですが、裏面が見えるよう、大きなサイズでアップしてみます。

あら、3週間限定ロードショーなんですか? それはちょっと残念ですね〜。でも、大画面で見るとよけいにソング&ダンス・シーンが際立つ作品なので、皆様お見逃しなきよう劇場へお出かけ下さい。

ところで、以前どなたかがコメントでアーリアー・バットの新作『ハイウェイ(Highway)』について言及して下さったのですが、2月21日に公開されて、なかなか健闘しています。監督は、2007年の『私たちが出会った時(Jab We Met)』で注目され、その後『今どきの恋愛(Love Aaj Kal)』 (2009)や『ロックスター(Rockstar)』 (2011)といったヒット作品を世に出したイムティアーズ・アリー。映画評を見てみると、「『ハイウェイ』はイムティアーズ・アリー監督の最高傑作」なんていうほめ言葉もあったりして、見てみたいと思わせられます。

予告編はこちらですが、アーリアー・バットの演技が光っています。また、彼女はA.R.ラフマーン作曲の歌も歌っており、それも話題に。その歌を吹き込んでいるメイキング・シーンはこちらです。共演のランディープ・フーダーも注目されていますが、モデル出身の彼は『モンスーン・ウェディング』で親族の1人ラーフルを演じていました。というわけで、『スチューデント』3人組のうち、いち早くトップへの道を駆け上がっているのはアーリアー・バットかも。

さらには、今日はアーリアー・バットからメディアに対して「婚約式を執り行います」という招待状が配られ、これもトップニュースに。こちらは4月18日に公開予定の『2つの州(2 States)』のプロモーションで、公開前のプレス会見への招待状でした。『2つの州』での相手役は、アルジュン・カプール。どうやら北インド出身の花婿と、南インド出身の花嫁の物語のようです。立て続けに主演作が公開されるアーリアー・バットの人気、ただいま急上昇中です!

  

 

ショーレ・ゴルパリアンさん、『神さまがくれた娘』を語る

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『神さまがくれた娘』のトークイベント@渋谷ユーロスペースで、ショーレ・ゴルパリアンさんのお話をうかがってきました。

ショーレ・ゴルパリアンさんは、イラン映画の字幕翻訳や監修、そして来日したイラン映画人の通訳として知られています。1979年に来日し、イラン大使秘書や貿易会社の仕事を経て、1991年から通訳・翻訳の仕事を開始したショーレさんは、近年はイランの映画監督が日本で映画を撮る時の、コーディネーターやプロデューサー的役割も務めてらっしゃいます。『ライク・サムワン・イン・ラブ』 (2012)のアッバース・キアロスタミ監督、『CUT』 (2011)のアミール・ナデリ監督ら、お世話になったイラン映画人は数知れず。下は、2013年の東京フィルメックスでモフセン・マフマルバフ監督の通訳を務めるショーレさんですが、彼女は「日本におけるイラン映画の母」と言われたりもしています。

そのショーレさんが、『神さまがくれた娘』を大阪アジアン映画祭に紹介したのだ、と聞いた時は、一体どういうコネクションが、ととても不思議でした。そのあたりをうかがってみたいと思って、今日のトークを配給会社太秦からお願いしてもらったのですが、本番前の打ち合わせでは出るは出るは、秘蔵エピソードがいっぱい出てきました。本番のトークは15分と短かったため、打ち合わせでのお話もまじえながら、ショーレさんと『神さまがくれた娘』やインド映画の関わりをまとめてみました。

★イランでのインド映画

「イランでは、昔からインド映画がよく上映されてきました。娯楽映画といえばインド映画という感じで、特に泣かせる作品が多かったインド映画は、ちょっと低俗なもの、というイメージもあったんですね。だから、”インド映画みたいだ”という表現は、”俗っぽい、くだらない作品だ”という意味になったりします。
でも私はインド映画が大好きで、よく見に行っていたんですね。私の母は学校の教頭をしていたので、インド映画なんて見ちゃダメ、と言われていたのですが、父方の叔母がくだけた人で、その叔母とよく見に行っていました。
インド映画の中で、イランで一番人気があったのは『サンガム(Sangam/合流点)』(1964/ヒンディー語/監督・主演:ラージ・カプール)です。イラン人はほとんど全員が見てると思うし、私も2、3回見ました。すごい人気だったんですよ。

イスラーム革命後は、インド映画は映画館ではなかなか上映できなくなりました。サリー姿だとお腹の所が見えるでしょ? あれが検閲に引っかかるんですね。でも、バザールに行くと、インド映画の海賊版コピーがいっぱい並んでいます。ある時、マニラトナム監督がファジル国際映画祭の審査員でイランに来て、奥様のスハーシニをバザールに案内したことがありました。イラン映画のソフトが買いたい、ということで連れて行ったら、インド映画のソフトがずらーっと並んでいたので、彼女もその友人もびっくりしていましたよ」

私も1977年12月にイランに行った時、テヘランのハーフェズという映画館でインド映画を見たのですが、ペルシャ語吹き替え版で、歌のシーンだけがヒンディー語という形での上映でした。下の写真は、その時に見た『サギナー』(1974/主演:ディリープ・クマール、サーイラー・バーヌー)の看板です。

★ヴィクラムとの出会い

「私はマニラトナム監督の『ボンベイ』 (1995)を見て彼が大好きになって、彼とも連絡を取り合うようになりました。そして、2010年の釜山国際映画祭(BIFF)で、マニラトナム監督の『ラーヴァン』 (ヒンディー語)と『ラーヴァナン』 (タミル語)が上映された時、私もBIFFのコーディネーターの1人なので行ってたんですね。
その時はマニラトナム監督のほか、アビシェーク・バッチャンとアイシュワリヤー・ラーイ、そしてヴィクラムがゲストとして来ていました。アビシェークとアイシュワリヤーは、いかにも大スターです、という感じで会場にやって来るのですが、ヴィクラムはそれほど背も高くないし、普通の人と変わらない地味な感じでした。アビシェークとアイシュワリヤーは1日か2日で帰ってしまい、その後ヴィクラムと話す機会があって、私がまだ『ラーヴァン』しか見ていない、と言うと、『ラーヴァナン』もぜひ見てほしい、とDVDを渡してくれました。

帰国後そのDVDを見てびっくりしました。『ラーヴァン』もさすがマニラトナム監督の映画、と思ったんですが、『ラーヴァナン』を見たら『ラーヴァン』なんてもう話にならない! ヴィクラムの演技がすごいんです。圧倒されました。それで早速ヴィクラムに連絡して、それからメル友になりました」

★『神さまがくれた娘』

「そんなヴィクラムが、ある時、”これからちょっと大変な作品と取り組むから、しばらくメールできない”と言ってきたんです。その作品が、『神さまがくれた娘』でした。
精神的な障害者を演じる、というので、彼はそういった人たちのいる施設に行ったり、それから心理学者である奥さんの助けを借りたりと、かなり詳しくリサーチしていたんですが、特に障害のある子供たちの動作や行動がとても参考になったそうです。ヴィクラムが演じたのは、6歳の子供の心を持った大人、ということなので、成人の障害者とはちょっと違う表現になったわけですね。
主人公クリシュナのあの髪型や、トレードマークであるチョッキ姿も、ヴィクラムが考案したそうです。クリシュナのセリフも特に台本があったわけではなく、ヴィクラムが考えてA.L.ヴィジャイ監督がOKを出す、という形で撮られました。やっぱりヴィクラムの方が大スターなので、若いヴィジャイ監督は彼を尊重しつつ作ったのでしょう。

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これは素晴らしい作品になる、と思っていたら、ヴィジャイ監督が早速、最初のラフカット版の映像を送ってきてくれました。それを見た時、本当にいい映画だなあ、と思ったのですが、ちょっと不要だと思えるシーンもありました。それで、ヴィジャイ監督に電話してこう言ったんです−−”ヴィクラムが雨の中でアヌと踊るシーンと、ホテルでの笑いを取るためのドタバタのシーンは要らないと思います。それをカットしてくれたら、BIFFに推薦しましょう。”
立派なインド人監督に向かって、ほんとに、何てことを言ったんでしょうね(笑)。でも、ヴィジャイ監督はすぐに、僕もそう思います、カットします、と言ってくれたんですよ。インドで公開するためには必要だとプロデューサーに言われてああいうシーンを入れたけれど、監督自身も、ない方がいい作品になる、と思っていたんですね。
それで、2011年のBIFFのオープン・シネマで上映されたんですが、3,000人入る野外劇場が満員になりました。見終わったあと感激した観客がどっとヴィジャイ監督の所に押し寄せて、なかなか監督を放してくれず、監督はその日帰国のために飛行機に乗る予定だったのですが、それに遅れそうになったぐらいです。
その後、2012年の大阪アジアン映画祭で上映されて、グランプリとABC賞をダブル受賞したのはご存じの通りです」

『神さまがくれた娘』のカットされたシーンは、YouTubeで見ることができます。歌のシーンはこちら、ホテルでのコメディ・シーンはこちらの20分ぐらいからです。

★大阪アジアン映画祭で

大阪アジアン映画祭では、ショーレさんはゲストトして来日したヴィジャイ監督とヴィクラムの舞台挨拶の通訳を務めると共に、1日お二人を京都観光に案内しました。

「ヴィジャイ監督は、いつもヴィクラムのことを”ヴィクラム・サー”と呼んで敬意を表していましたね。普通は監督の方が偉いわけですが、ヴィジャイ監督は1979年生まれでまだ若いので、ずっと”ヴィクラム・サー”と呼んでいました。
困ったのは、ヴィジャイ監督が完璧なベジタリアンだったことです。お蕎麦なら大丈夫かとお蕎麦屋さんに入ったのですが、ヴィクラムと私はおいしく食べたものの、ヴィジャイ監督はダシの魚の匂いがする、と言ってまったく食べずにオレンジジュースだけ飲んでいました。
帰途、京都駅まで来た時にインド料理店を見つけたので、ここなら大丈夫と思って入ろうとしたら、午後4時だったので店は休憩中。店の中に人影は見えるのですが、ドアの外から”入れて、お願い”というジェスチャーをしても、”4時だから休憩中”というしぐさをして開けてくれないんですね。ヴィジャイ監督が顔をくっつけるようにして頼んだんですが、やっぱり”ダメ”と手を振られて。
ところが、次にヴィクラムが顔を見せたら、お店の人がびっくりして大騒ぎになったんです。ちょうどタミル・ナードゥ出身の人だったとかで、もう舞い上がって、厨房からも人が飛び出してきたりと大変でした(笑)。それで、ヴィジャイ監督はおいしいインド料理にありつけたんですが、ヴィクラムの方はお腹がいっぱいで眠くなったのか、うつらうつらしていました(笑)。それにしても、ヴィクラムはすごい大スターなんだなあ、とあらためて感じさせられました。
でも、ヴィクラムはヴィジャイ監督が先に帰ったあとも残っていてくれて、授賞式にも出てくれましたし、本当にいい人です」

(C)AP International All Rights Reserved.

★今、ヴィクラムとヴィジャイ監督、そしてベイビー・サーラーは?

「ヴィクラムとは昨年のBIFFでも会ったのですが、別人のように痩せていました。今撮っているシャンカル監督の映画(『Ai』)のために、25キロ体重を落としたそうです。頬がすっかりこけて、すぐそばにいたのにヴィクラムとは気が付かないほどでした。(こちらのニュースに写真が) 

ヴィジャイ監督が今撮っているのは『Saivam』という作品で、それに主演しているのが『神さまがくれた娘』のニラーを演じたベイビー・サーラーなんですね。映画のストーリーは、サーラー演じる女の子の家で鶏を飼っていて、皆がとても可愛がっている。で、ある時願い事があって一家が寺院に行ったら、お坊さんから、”神様に願いを叶えてもらうためには、一番大切なものを捧げないといけない”と言われ、それなら鶏を、となります。ところが女の子は、それは大変!と鶏を隠してしまう。そして...といったものです。

今度もタミル語の映画なんですが、北インドのヒロインがチェンナイに仕事に来ると、まず知り合いの監督とか共演者とかに「今回もよろしくお願いします」という電話を掛けるのが習慣になっているそうです。で、サーラーもチェンナイに来ると、きちんと電話を掛けるんだそうで、あんなに小さいのにもうプロ意識がちゃんとあるんですね。
『神さまがくれた娘』の時も、小さかったのでいつも誰かに抱かれていることが多かったんですが、レッドカーペットの前に来ると”降ろして”と言って、堂々とカーペットの上を進んで行ったんだそうです。一人前の女優ですね。
でも、この前サーラーがチェンナイに来てヴィクラムに電話を掛けてきた時は、最初”アッパー(パパ)!”と叫んでしまって、そばにいたお母さんがあわてて受話器を奪い、”すみません、娘が失礼なことを”と謝ったりしたそうです。そういう子供らしいところもあって、可愛いですね。そうそう、『神さまがくれた娘』には、サーラーの弟も出演しているんですよ。生まれたばかりのニラー役の赤ちゃん、あれが弟です」

(C)AP International All Rights Reserved.

『神さまがくれた娘』の成績がよければ、ヴィクラムやサーラーちゃんの次作も日本で配給が決まるかも知れません。好きな作品となったら、自分から「私に紹介させて下さい!」と言ってしまうというショーレさん。その情熱のお陰で、『神さまがくれた娘』は日本にやってきました。ショーレさんの幅広い活動は、「アジア映画で<世界>を見る」(作品社)に収録されているインタビューでも知ることができます。

アジア映画で〈世界〉を見る――越境する映画、グローバルな文化 石坂 健治,市山 尚三,空族,ショーレ・ゴルパリアン,諏訪 敦彦,中沢 けい,夏目 深雪,野崎 歓,野中 恵子,萩野 亮,福間 健二,松岡 環,森山 直人,四方田 犬彦,渡邉 大輔,宇田川 幸洋,金子 遊 作品社

 ショーレさん、どうもありがとうございました! 「イラン映画の母」だけでなく、「インド映画の母」としても、今後たくさんの作品を日本に紹介して下さいね!

 

インド映画公開情報、なぜ「情報解禁」まで待つのか

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少し前のことですが、私がいつも愛読している「インド映画通信」のソニアさんのツイッターに、こんなつぶやきがアップされていました。

「公式などで”情報解禁”とかあるけど、秘密にしておく理由は何なのかなあ。正式な契約結んでないからとか、上映館が決まってないからとか? 噂が流れるということはほぼ上映決定に近いのだから、作品名くらい出して、でも公開はいつになるか未定とかしてくれたら心穏やかになれるのに。ポシャったらそれはそれで諦めるし。業界の事情がまったくわからないから素人意見なのだけど、作品の公開って箝口令を敷くほどの機密情報なのだろうか?」

共感なさる方は多いと思います。ソニアさん自身はきちんと”解禁”まで待って下さる方で、だから「インド映画通信」は信頼できるのですが、やはり時にはこういう不満も出てくるのだなあ、と思って読みました。

別のサイトでは、本ブログがなかなか「○○が公開されます!」とハッキリ書かないものだから、「もったいぶってる」と非難されたこともあります。というわけで、どうして本ブログは配給会社が「情報解禁!」と言うまで、あるいはどこかに正式に発表されるまで、「○○が公開されます!」と書かないのか、という言い訳をちょっとしておこうと思います。

この点に関して私が慎重になっているのには、過去に起きた次のような「事件」の影響があります。(一部、仮名やあいまいな表現になっていることをお許し下さい)

事件<その1>は、今をさかのぼること15年前の1999年に起こった『ヤジャマン』事件。『ムトゥ 踊るマハラジャ』が大ヒットした1998年中に勃発し、翌年炎上してしまった事件です。

『ムトゥ』 (1995)を配給したA社は、次回配給作に同じラジニ&ミーナの以前の作品『ヤジャマン』 (1993)を予定していたのですが、業界で先輩格に当たるB社に聞かれてそれを洩らしたばっかりに、権利の二重売り事件が発生してしまったのです。その時は、A社が権利を買ったエージェントが元の製作会社への通告をまだ済ませていなかったことが、不幸な結果を招いてしまいました。A社から、「『ムトゥ』の次は『ヤジャマン』」という話を聞いていたB社がチェンナイに行き、『ヤジャマン』の製作会社に行ったところ、「『ヤジャマン』の権利? 日本にはまだ売れてないよ」と言われ、B社はその場で上映権を買ってしまったのです。

こうして、日本では2社が権利を有するという結果になり、A社が『ヤジャマン 踊るマハラジャ2』という題で劇場公開を予定していた1日前に、B社が『ヤジャマン 踊るパラダイス』という題でビデオをリリースする、という異常事態となりました。インド側製作会社がどっちかにお金を返せばよかったのに、と当時思ったりしたのですが、どちらも正式契約なので違約金とかが発生するため、ほっかぶりをしたのかも知れません。

 VS.

悪いことにこの事件は日本の大手新聞や雑誌でも報道され、「インド映画は権利関係にずさんで信用できない」という情報が映画配給業界にパッと広まりました。こうして、業界のインド映画熱は一気に冷めてしまったのです。そして、この事件はいまだに業界の人々の記憶に刻み込まれていて、ここ2、3年の間でも何度業界の方から言われたか知れません。10数年経っても人々の記憶から消えないぐらい、最悪の事件だったのです。

事件<その2>は、これも同じ頃に起きた小さな出来事ですが、ある映画祭が舞台になっています。当時の事務局の方がふと洩らされたのですが、「C社さんには困ってるんです」とのこと。C社はインドとコネクションを持つ会社なのですが、事務局がセレクションをしてほぼ固まった段階で情報を聞き出し、映画祭で上映されるインド映画の上映権を先回りして買ってしまう、ということをやったのです。

この時のC社は、たまたま上映作品が大衆受けする作品であり、字幕も映画祭が付けてくれるならそれを流用できる、と思って即買いに走ったのではないかと思います。でも、もし悪意のある会社なら、「うちが権利を持っているから上映料を寄こせ。払わないと映画祭での上映を許可しない」と言ったりする可能性もあるわけで、映画祭側としては、「どうせ買うなら映画祭上映後にしてほしかった」と思ったのではないでしょうか。私もそれを聞いた時には、「マナー違反では? 日本の配給会社とはちょっと違う会社なので、日本の常識は通じないのかしら?」と思ったものです。

それがあって以降、自分が映画祭の字幕を担当しても、正式発表があるまでは、ごく個人的な場以外では極力言わないようにしてきました。特にネット時代になってからは、よけいに気をつけています。

それから、もうひとつ心配なのは、インド映画のヒット作は「事件」が起きる火種を常に内包している、という点です。それは、いくつかの言語ヴァージョンがあることで、それぞれの言語ヴァージョンによって権利保持者が違っていたりすることがあるのです。

例えば、マニ・ラトナム監督は、近年はタミル語版とヒンディー語版を出演者を代えたりして別々に撮るようになりましたが、以前はタミル語で製作し、ヒンディー語に吹き替える形で全国上映を可能にしていました。『ロージャー』 (1992)や『ボンベイ』 (1995)は元々タミル語で作られ、ヒンディー語に吹き替えられて全国でヒットしたわけです。

異なる言語のヴァージョンがある時、インド国内の配給業者はどちらかのヴァージョンを選んで、それぞれの権利元から買うことになります。インドでは字幕上映は一般的ではなく、観客は音声で理解して映画を見るため、どちらの言語なら地元の観客が理解できるかを考えて買うわけです。両方の言語ヴァージョンを一緒に買うことは、まずありません。製作会社は早く製作費を回収したいがために、オリジナル言語以外のヴァージョンの上映権や、テレビ放映権などは早々と他会社に売ってしまい、あとはそれぞれの目的に合わせて、配給業者やテレビ局が権利元から買う仕組みになっています。

海外では、シンガポールやマレーシアのようにどちらの言語の話者もいる場所では、両方のヴァージョンを買って上映することもあるようですが、他の国ではどちらかの言語を選んで買うのが普通です。例えば日本の観客にとっては、どちらの言語のヴァージョンであろうと日本語字幕がついていればノープロブレム。オリジナルの言語にこだわるインド映画ファン以外は、音声は全く関係ないと言っていいのです。極端な話、日本語吹き替え版の上映だってあり得るわけですから。

例えば上記『ボンベイ』を例に取れば、オリジナルのタミル語版の上映権をD社が買ったとします。それを知らず、ヒンディー語吹き替え版の方がよいと判断したE社がヒンディー語版の上映権を買ったとすると、同じ作品の権利を持つ所が日本に2社存在してしまうことになります。これは権利の二重売りとかではなく、インドではまったく違うものとして存在しているので、違うものを買ったどちらにも正当な権利があることになってしまうのです....。

ここに悪意がからめば、いくらでも事件は勃発することになります。再び例えばで恐縮ですが、F社が『ドゥーム3』を買い付けてそれが洩れたとします。F社に対抗するG社は、F社が買ったのがヒンディー語版の権利のみ、という情報を掴むと、すぐさま『ドゥーム3』のタミル語吹き替え版の権利を買い付け、F社に先駆けて公開してしまう....。日本の配給会社は紳士的なので、こういうことはまずありませんが、インド映画が大々的に儲かるようになるとどんな所が参入してくるかわかりません。なお、『ドゥーム3』を例に挙げたのはヒンディー語版予告編タミル語版予告編があったからで、他意はありません。

 

なお、過去のインド映画@日本のトラブルとして、配給には素人の人が参入したために起きた<事件>もあります。”情報解禁”テーマとはちょっとずれるのですが、ついでなので書いておきます。

これは、1998年の東京国際映画祭でのことで、そこで上映されるマニラトナム監督作品が決まり、アナウンスされたところ、某社が「うちがすでに権利を買っている」と映画祭事務局にクレームをつけてきたのです。普通は映画祭側がインドの製作会社に出品を依頼した時点でわかるはずなのですが、その情報が共有されていなかったようで、映画配給が専門ではない某社から事務局へのクレームとなりました。普通の配給会社ですと、「この作品は実はわが社がすでに契約を済ませているんですよ。映画祭で上映して下さるのはありがたいので、ちょっとご挨拶がてら責任者の方にお会いしたいのですが」というような言い方をするのでしょうが、その某社の担当者は、まさにクレームというか抗議するといった言い方だったらしく、映画祭事務局内部で問題になりました。

で、検討会議が持たれたところ、当時の事務局の責任者だった方が、「そんなにゴタゴタするインド映画なんか、やめてしまえ!」とおっしゃったとかで(あくまで伝聞です。私もその場にいたわけではありませんので念のため)、それを聞いた映画関係者からあっという間に業界内部に伝わり、映画祭でその作品は上映されたものの、以後、主だった配給会社はインド映画から遠ざかってしまったのです。これも、前述の事件<その1>と共に、『ムトゥ』以降にインド映画の配給が急速に落ち込む原因になりました。

こんなことが過去にあったため、それを知っている配給会社は、インド映画の場合特に不用意に情報を漏らさないよう、気をつけているのでしょう。いろんな条件が整った時点で、「わが社は責任をもってこの作品を配給し、公開します」と告知するのが情報解禁。それまでの契約締結や素材入手、公開劇場決めなどのご苦労も、インド映画の場合は他国の作品以上に大変です。それを乗り越えての”情報解禁”アナウンスは、配給会社にとって特別な意味を持つものに違いありません。というわけで、やはり本ブログは、配給会社の情報解禁のご判断に合わせて作品の公開情報をアップしていこうと思います。

     


アスガー・ファルハディ監督作『ある過去の行方』

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昨日はocnのサーバがダウンしてしまい、朝からメールが送れず参ってしまいました。結局7時間ぐらいダウンしていたようです。インターネットは繋がったので、故障情報などを知ることができて助かりましたが、もろいネット社会を思い知りました。

そんなわけで、本当は昨日アップしようと思っていたアスガー・ファルハディ監督の『ある過去の行方』の紹介を1日持ち越すことになり、実は旅先で書いています。今年も恒例の「花粉症逃亡中」です。では、まずは映画の基本データをどうぞ。

『ある過去の行方』 公式サイト     © Memento Films Production – France 3 Cinéma – Bim Distribuzione – Alvy Distribution – CN3 Productions 2013   2013年/フランス・イタリア/フランス語・ペルシャ語/130分/原題:Le Passe(+アクサン)  監督・脚本:アスガー・ファルハディ 
 出演:ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モッサファ  配給:ドマ、スターサンズ 
2014年4月19日(土)より Bunkamura ル・シネマ、新宿シネマカリテほか全国順次公開   『ある過去の行方』は、1人のイラン人男性がパリの空港に着くところから始まります。迎えに来ていた女性は、その男性アーマド(アリ・モッサファ)のフランス人妻で薬剤師のマリー=アンヌ(ベレニス・ベジョ)。アーマドは4年前にテヘランに戻ったのですが、今回はマリー=アンヌの希望で正式に離婚するためにパリへとやって来たのでした。     © Memento Films Production – France 3 Cinéma – Bim Distribuzione – Alvy Distribution – CN3 Productions 2013

マリー=アンヌが離婚を望んでいるのは、新しいお相手ができたから。アーマドとの結婚前にもマリー=アンヌは2人の男性と結婚生活を送っており、それぞれとの間に娘がいました。上の娘リュシー(ポリーヌ・ビュルレ)はもう高校生、下の娘レアは小学生で、アーマドになついていたレアはアーマドとの再会を喜びます。ところが家にはもう1人、小学生の男の子フアゥドがおり、フアゥドがマリー=アンヌの現在の恋人サミール(タハール・ラヒム)の息子と知ったアーマドは、2人がすでに実質的な結婚生活を営んでいることを知ってしまいます。

© Memento Films Production – France 3 Cinéma – Bim Distribuzione – Alvy Distribution – CN3 Productions 2013

ところが、長女リュシーは、マリー=アンヌとサミールの結婚に反発していました。それは年頃の女の子の潔癖性から、というわけではなく、サミールには現在昏睡状態になっている妻がおり、その妻の死を待って母がサミールと結婚しようとしている、ということからでした。母には反抗心しか見せないリュシーに対し、アーマドは昔なじみのイラン料理店に彼女を連れて行って、話を聞こうとします。

© Memento Films Production – France 3 Cinéma – Bim Distribuzione – Alvy Distribution – CN3 Productions 2013

リュシーの話から、衝撃的な事実がいろいろわかってきます。サミールは下町でクリーニング店を営んでおり、女性従業員を使って自身は配達に出るなどしているうちに、立ち寄った薬屋で薬剤師のマリー=アンヌと出会ったのでした。そして、サミールの妻が昏睡状態に陥ったのは自殺をしようとしたからで、その引き金になったのが、マリー=アンヌとの関係がわかったためだった....。一体誰がサミールとマリー=アンヌの関係を妻に知らせたのか。アーマドは一歩一歩真相に近づいていきますが....。 

© Memento Films Production – France 3 Cinéma – Bim Distribuzione – Alvy Distribution – CN3 Productions 2013

前作『別離』(2011)が世界中で高い評価を受けたアスガー・ファルハディ監督作品の特徴は、比較的閉じられた空間で舞台劇のように進行する緊迫したセリフ劇と、その底に潜むサスペンス。サスペンスのプロットが最高に巧みだったのが『別離』で、イスラーム法まで引用しての解決方法には、見る側としてはまったく全面降伏でした。

本作『ある過去の行方』でも、中盤からサスペンスがぐっと頭をもたげてきます。ただ、本作はそれに到るまでの人間関係の描き方が素晴らしく、前半3分の1ぐらいでもうどっぷりと、アスガー・ファルハディ監督の世界に浸ってしまえます。多かれ少なかれ登場人物全員が持つ閉塞感が見る者に迫ってきて、心が揺すぶられるのです。特に、大人の世界に巻き込まれた子供たちの、フアゥドを始めとする3人の演技は心に残ります。

 © Memento Films Production – France 3 Cinéma – Bim Distribuzione – Alvy Distribution – CN3 Productions 2013

ですのでサスペンスの謎解きは少し色あせてしまい、無理に犯人捜しをしなくても、と思えてしまうのですが、やはり監督は「解決」、つまり「過去の決着」という部分を入れたかったのでしょう。謎が解けてもそれでハッピーエンドになるわけではない、という苦味もふくめて、「過去」が壊していく「いま」を監督は描きたかったのかも知れません。

『ある過去の行方』によってアスガー・ファルハディ監督は、イランを舞台にしなくても優れた作品が作れることを証明して見せました。本作はほぼ全編フランス語で、一部イラン料理店で交わされる会話がペルシャ語となっています。先日お会いしたショーレ・ゴルパリアンさんのお話では、ペルシャ語でなかっためイランでは前作『別離』ほどはヒットしなかったとのことですが、イランの観客はアスガー・ファルハディ監督の軸足がイランから離れたことを敏感に感じたのではとも思います。

今後はグローバルな活躍が期待できそうなアスガー・ファルハディ監督。この先まだまだ面白い作品を見せてくれそうですので、その意味でも映画好きの方には『ある過去の行方』は見逃せない1本です。

<ネタばれ注意>

いろいろ検索していたら、映画会社のサイトに本作の英語訳脚本(撮影脚本)がアップされているのを発見しました。アスガー・ファルハディ監督を研究なさる方には助けになるかも、と思って、こちらをお知らせしておきます。 


4年ぶりのデリー

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4年ぶりにデリーにやって来ました。インドへは毎年来るものの、映画関係の用事があるムンバイとチェンナイだけ回るというのが定番だったのですが、今年は久しぶりにデリーに来てたくさんの友人、知人と会っています。デリーは空港も新しくなっていて驚きましたが、入国エリアにペプシの自販機があるのにもびっくり。1本50ルピー(80円強)もしますが、買っている人がいました。でも、ガチャン、と落ちてきたのに、その缶が邪魔になって取り出し口の扉が上に開かず、四苦八苦してらっしゃいました。やっぱり、インドですね〜。

デリーで泊まったのは、地下鉄ムールチャンド駅のすぐ前にあるヴィクラム・ホテル。1泊8千円弱ですが、とてもきれいな部屋で広さも十分、バスタブまでありました。おまけに豪華朝食付き。昔からあるホテルのようなのですが、これまでデリーでのホテル捜しに苦労しただけに、どうしてここが見つからなかったんだろう、と不思議です。早速、お気に入り印を付けました。インターネット使用料金が24時間で612ルピー(約1,000円)とちょっと高いですが、オススメです。

ホテルの前庭にはいろんなお花が咲いていて、門の所にはきれいなダリアが。ダリアってヒンディー語で何て言うんだろう、と門番さんに尋ねたら、苦笑しながら「知りません」。確かに、インドの人に花の名前や木の名前を聞いてもムダでした。帰ってくる答えは、「花(プール)です」「木(ペール)です」ですもんね。

ホテルの隣には、寺院がありました。ビルの1階だけが寺院になっている、という面白い作りです。おまけに、中にはラクシュミー&ナーラーヤン、ラームとシーターとラクシュマン+ハヌマーン、シヴァ一族といったヒンドゥーの神々に加えて、初代サイババ、シク教の始祖グル・ナーナクまで祀ってあります。シンディーの人々が建てた寺院とのことでしたが、近所の人たちが入れ替わり立ち替わりお参りにきていました。

デリーは地下鉄が整備され、とっても便利になりました。地下鉄の駅は清潔で、日本よりもきれいなぐらい。地下駅ハウズカース駅と、高架のムールチャンド駅です。

スイカやパスモのようなカードもできています。旅行者は窓口で行き先を告げてチケットというかトークンを買うのですが、料金も安くて、30ルピー(約50円)以下ですべて収まってしまいます。一度、イエローラインを南端から北端まで1時間余り乗りましたが、それでも29ルピー。一部が高架になっていて、高架鉄ちゃんの私としては、一度全線を乗り倒したい気分でした。そうそう、地下鉄の各駅ではセキュリティ・チェックがあるのが、日本や他の国とは違うところでしょうか。

いくつかの駅では、駅前にオートリキシャ(三輪タクシー)のほかにサイクルリキシャ(自転車人力車)が停まっていて、これで近くの家まで送ってくれるようになっています。オートリキシャは最近はタイ語からの借用語で「トゥクトゥク」とも呼ばれており、背中に『タイガー 伝説のスパイ』を背負った運転手さんがいたりしました。

今回のデリー訪問の目玉は、以前「インド映画通信」さんで絶賛されていた「Kingdom of Dreams」のショー。デリーの南グルガオンにあり、地下鉄イエローラインの南端駅フダー・シティ・センターからオートで5分ほど。すごい建物に度肝を抜かれますが、その前に設置されていたアトラクションもまた度肝を抜くものでした。真ん中のボール状の所に人が乗っていて、それがゴムのようなワイヤーで放り上げられるのです。コワ〜〜〜;;;

こちらはショーをやっている劇場の建物です。ほかに、フードコートや商店が入っている建物(2枚目)もあり、また奥の方では別の建物の工事中でした。日曜日だったせいか、たくさんの人が来ていました。

しかしこのショー、結構入場料がお高いのです。下の写真が料金一覧なんですが、見えるでしょうか。金額を拡大してみました。 

我々は1,999ルピー(約3,400円)のシルバー席だったのですが、そこでもよく見えて、十分でした。その3列後ろぐらいにどでかいソファー席があり、そこがどうやらダイヤモンド席らしく、4,999ルピー(約8,500円)払った方々が座っていました。日本の物価に換算すると3万円ぐらいの感じでしょうか、皆さんお金持ちですねえ。

ショーの演目は、上の左側の「ジュームルー」でした。歌手になりたい青年ボーラーが、テレビ番組「インディアン・アイドル」みたいなリアリティ・ショーに出て勝ち上がっていく、というもので、前半は父親との葛藤や、あるベテラン歌手と出会う話など、結構複雑なストーリーの中に歌と踊りのシーンが入ってきます。後半は、リアリティ・ショーの現場が多く再現されて、見応えのある場面がたくさん登場しました。ワイヤーで人間が空中を飛んだり、スクリーンをうまく背景に使ってイリュージョンっぽくしてみたり、本物の火を使ったり、客席まで舞台にしてしまったりと、見ていて楽しいミュージカルでした。

ただ、セリフが全部ヒンディー語であるため、わからない人には前半がかなり退屈ではないかと思うこと(つまり、外人観光客向きではない)と、この作品はキショール・クマールへのオマージュと言っている割には、ただ彼の歌を使っているだけで、しかも観客が聞いていて思わず身を乗り出すような歌ばかりとは言えないこと(つまり、インド人も熱狂できない)など、不満もいくつかありました。せめて、誰か有名俳優とかが出ているといいんですけどねー。日曜日だったこの日も空席が目立っていたので、経営者側としても危機感を持っているのではと思います。もっと施設を増やしてテーマパークのようにして、ショーはその一部、といった形に将来はしていくのかも知れません。

さて、そんなデリー滞在、おいしい物もいっぱい食べました。上は、友人宅でご馳走してもらった配達のチベット料理。中華風で、とてもおいしかったです。

その他、私の好きなアイスクリームでは、いちじくアイスにインド風アイスのクルフィー。いちじくアイスはIndian International Centreで食べたのですが、インド中でここ以外には見たことがない、という珍品(もし、ほかにもあったら教えて下さい)。Fig & Honey Ice Creamと言いますので、IICにいらっしゃる機会があったらぜひお試し下さいね。

クルフィーはムールチャンド駅下の屋台が並んでいる所で食べました。いわば、インド風アイスキャンディーですね。こちらは衛生的観点から言うとお勧めしていいのかどうかわかりませんが、お腹に自信のある方はどうぞ。というわけで、インドの旅はまだまだ「続く」です(どこかで聞いたセリフだ....)。

 

 

『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』繋がり@ムンバイ

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ムンバイはどんどん気温が上がっていて暑いです。昼間は32、3度ある感じで、渋滞でタクシーに座っていると、オーブンで温められている焼き豚の気分です。お肌もどんどん焼けていきます....。

ムンバイでは、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』(2013)の編集を担当したディーパー・バーティアーさんにインタビューするのが大きな目的の一つでした。というわけで、今回はいつもの定宿であるシティ中心部のウェストエンド・ホテルをやめて、国内線空港に近いカールという地区のオリエンタル・レジデンシー・ホテルに泊まっています。名前はすごいのですが、こぢんまりしたビジネスホテルです。

でも、部屋は十分な広さで清潔かつ機能的、付いている朝食も豪華(上写真)で、Wifiもよく繋がり、従業員の態度も合格点というスグレモノのホテルです。おまけに、朝刊は上のような手作り紙袋に入って配達されるなど、ちょっとした心遣いが嬉しいホテルでもあります。ホテルの場所の説明が難しいのが難点ですが、北部地区でお仕事をなさる場合はお勧めできます。北部地区は映画人の住まいや事務所も多く、今日はディーパーさんに会うために、カールに隣接するバンドラ地区のとある事務所に行ってきました。インタビューは後日まとめて掲載しますが、その時撮った写真がこれです。

そう、隣りに写っているのは、『スタンリーのお弁当箱』 (2011)のアモール・グプテー監督です。ディーパーさんはグプテー監督夫人、つまりスタンリーを演じたパルソー君(正しい発音は「パルトー」君)のお母さんなんですね。そして同時に、カラン・ジョーハル監督の『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』や『マイ・ネーム・イズ・ハーン』 (2010)の編集を担当した、凄腕編集者でもあります。

グプテー監督の事務所の1室が彼女の編集室にもなっていて、上の写真にちらと写っているのがグプテー監督の新作『ハワー・ハワーイー(Hawa Hawai)』の1シーンです。村から出てきた男の子(パルソー君)がインラインスケートに魅せられ、手作りでスケートを作ってしまい、「ハワー・ハワーイー(疾風)」号と名付ける、というお話だとか。「ハワー・ハワーイー」はインド映画好きの方にはすぐピンと来たと思いますが、アニル・カプールとシュリデヴィが主演した『Mr.インディア』 (1985)の中で出てくる歌の歌詞なのです。こちらがその歌のシーンで、ミーラー・ナーイル監督の『サラーム・ボンベイ!』 (1989)でも使われていたためご存じの方も多いと思います。シュリデヴィ、『English Vinglish』の彼女とは別人28号ですね。そんなお話も、またインタビュー記事の中でお伝えします。

彼女とのアポ取り等でなかなか映画を見るヒマがないのですが、昨日はジュフーのPVR(上写真)でやっと1本、見たかった『ハイウェイ』を見ました。イムティアーズ・アリー監督作で、主演は『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』のアーリアー・バットと、モデル出身のランディープ・フーダー。残念ながら遅れて入ったため、冒頭20分ぐらいを見逃してしまったのですが、ストーリーはこんな感じです。

大金持ちの娘ヴィーラー(アーリアー・バット)が婚約者といるところを誘拐され、マハービール(ランディープ・フーダー)を頭とする数人のならず者にトラックに乗せられて、ハイウェイを運ばれていく。彼女の父が政府とも繋がりがある実力者だったため、ならず者たちはひたすら逃げるしかない羽目に陥ってしまう。だが、その逃亡の旅でヴィーラーは初めて自由を味わい、これまでの閉塞感に満ちた金持ち世界には戻りたくないと思い始める。マハービールと次第に心を通わせ合ったヴィーラーは、山奥の村で自分の望んでいた生活を見つけるが....。

アーリアー・バットとランディープ・フーダーの演技は素晴らしく、目を見張らされます。しかしながら、緊迫したロードムービーの最後がおままごとのような生活になってしまうなど、映画としてはいま一歩魅力に欠ける作品でした。ヴィーラーの過去のトラウマも、『モンスーン・ウェディング』とほぼ同じでデジャブ感ありあり。すごく期待していただけに残念でした。予告編はこちらです。

このほか、現在は『バラ色サリーのギャングたち(Gulabi Gang)』、『クイーン(Queen)』、『Total Siyappa』などが公開されています。さて、明日からはがんばって見なければ。 

 

ネットトラブルで...

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前の記事で今滞在中のホテルをほめたら、直後にトラブルが。それまでもWifiでのインターネット接続がうまくいかない時があったのですが、一昨日夜から昨日深夜(インドとは時差があるので、日本時間の本日午前3時頃)までネットが全然使えなくなってしまいました。最初は理由がわからず、昨日朝は廊下のルータをいじってみたり、下に降りてフロントでパソコンをつないでもらったり。結局夜もダメでまたフロントにパソコンを持ち込んだら、「プロバイダー側のトラブルでインターネットが使えなくなってます」とやっと判明した次第。私の無駄な努力とウロウロした数時間を返しておくれ!

というわけで、まとまらない記事ですがこの間の旅日記などを。

昨日はバンドラに転居した友人というか元教え子のお宅を訪問しました。待ち合わせたのが、ムンバイの最も古い映画撮影所の一つであるマハブーブ・スタジオの前。中の写真を撮ろうとしたら、ガードマンの青年が「ダメ!」と言うので、「外からでもダメ?」とかやり取りし、「素早く撮っちゃえばいいよ」と言われて撮ったのがこれ。左に写っているのがその青年ガードマンさんです。

元生徒のSさんが迎えに来てくれて、家まで行く途中彼女が「あ、シャー・ルク・バス!」と言って教えてくれたのがこちらです。

シャー・ルク・カーンの控え室になっているもので、以前マニーシャー・コイララのインタビューに同席した時も、こういう大型バスに乗っていました。その時は確か、「トレーラー」と呼んでいたような記憶が....。シャー・ルク・バスはマニーシャーのバスよりも一段と大きく、真っ黒で不気味な感じ。スモークガラスで中は全然見えないようになっています。でも、中にシャー・ルクがいるかも知れないので、もしムンバイとかどこかで見かけたら、窓に向かって手を振りましょうね。

で、Sさんのお宅でおいしい冷製パスタとヒヨコ豆のサラダをいただいて、その後モノレールに乗りに行きました。インド初のモノレールが、ムンバイの北部チェーンブールとワダーラーの間に完成したのです。ところがまだ遊園地のモノレールという感じで、朝7時から午後3時までの運転しかやっていません。このモノレールの話は後日交通関係でまとめて書くことにして、最終運転のモノレールに乗れてラッキーだったものの、終点ワダーラーの駅前は何もない原っぱ。タクシーもめったに来ず、やっと来たタクシーに乗せてもらって、行きたい方向とは別の所へ。そこはガンディー・マーケットと言う一大ファッション市場で、こういった豪華キラキラなサルワール・カミーズやサリーなどを売る店が所狭しと並んでいる所でした。

イスラーム教徒のお客が多いようで、皆さん賑やかに品定めしていました。続いて、やっと本来の目的地であるダーダルの映画館へ。地図にはフェイムというシネコンチェーンの名が書いてあったのですが、アイノックスが買収したのか、アイノックスになっていました。1館だけの映画館ですが、時間替わりで3本上映しています。その中の『クイーン(Queen)』を見るのが目的でした。

 

チケットを買ったあと1時間ほど時間があったので、その辺をウロウロ。ファッション関係のお店と、飾り物関係のお店が並んでいるエリアでした。子供服は、少年ビーム(Chhota Bheem)キャラが人気のようです。ドラえもんもパクられていますねー。

午後5時半から見た『クイーン』は、なかなかよく出来た映画でした。ヒロインのラーニー(カングナー・ラーナーウト)はデリーに住む24歳の女性。2日後に結婚式を控えて、家中が大騒ぎです。彼女のお相手はヴィジャイ(ラージクマール・ラーオ)。家同士がよく知っていて、ラーニーの父親が経営する菓子店で初めて会ったヴィジャイはラーニーを追いかけ、結婚にまでこぎつけたのでした。ところが、式の2日前にヴィジャイから呼び出されたラーニーが告げられたのは、「君とは結婚できない。君は僕に合わない」というヴィジャイの冷たい言葉でした。

部屋に閉じこもるラーニーを心配する両親や祖母、そして弟。明くる日ラーニーは両親に、「ハネムーンで予定していたパリとアムステルダムに行くわ」と告げます。以前から行きたかったパリ、そしてヴィジャイが望んだアムステルダムへと、ラーニーは旅立ちます。保守的な家庭で、外出するのも女友だちか、あるいは弟と一緒でなければ許されなかったラーニーにとっては、初めての一人旅でした。

 

ラーニーはパリで、ホテルの従業員ヴィジャイラクシュミー(リサ・ヘイドン)と出会います。インド人とのハーフの彼女は、一人息子を愛しながらも、とても自由な生活をしています。その解放されたライフスタイルに、徐々に影響されていくラーニー。そして、アムステルダムへ移動した彼女は、ドミトリーで男3人と同居する羽目になります。ロシアから来たアレキサンダー、黒人系フランス人のティム、そして日本人で背の低いタカ。最初は彼らを毛嫌いしていたラーニーでしたが、次第に仲良くなり、親友となっていきます。ところがその時、ラーニーがパリから嫌味でヴィジャイに送ったセクシードレス姿の写真を見て、ヴィジャイが彼女を追いかけてアムステルダムまでやって来てしまいます。さあ、ラーニーは元のさやに収まるのでしょうか....。

内気で保守的だったラーニーが、ヨーロッパでいろんな人と出会い、まさに自分の人生のラーニー=クイーンとなっていくまでのお話です。ちょっと『English Vinglish』を思い出させるような、女性の自立を描いた作品でした。インド女性が自立するには、欧米という舞台と外国人男性が登場しないとダメなの? と皮肉の一つもいいたくなりますが、それでもラーニーに思わず感情移入して見てしまう、上手な作りの映画でした。

監督はこれが2本目のヴィカース・バフル。元々プロデューサーですが、欧米の作品をよく研究している感じが見て取れます。ソング&ダンス・シーンは一切なく、地味目の作品ではあるものの、セックスに関するあからさまな表現が出てくる所がサービスになっているようです。そのためのアムステルダムなのでしょう。

日本人として面白かったのは、タカのキャラクター。インド人が思い描く日本人らしくするためか、極端に背の低い俳優を選んであります。そして、陽気でちょっと滑稽なキャラになってます。タカを演じたのはジェフリー・ホーという俳優で、中国系の人かと思われますが(シンガポール人とかなのかも知れません)、「マジ?」とか日本語のセリフもいっぱい出てきます。そして、このタカもつらい過去を背負っているという設定で、そこは思わずホロリとしてしまいました。

今回は最初から見られたので、マハーラーシュトラ州ではまだ残っている、というか90年代の右翼政党が強かった時代に復活した国歌演奏フィルムにも遭遇。デリーでのチェックはできませんでしたが、今度の総選挙でBJPが勝利すればまた復活させる州も出てくるかも知れません。1970年代の初め頃までは全国で見られたらしい国歌演奏フィルムですが、できればない方が映画好きの身としてはありがたいです....。

 

 

ムンバイの乗り物(鉄道編)

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今回ムンバイで泊まったホテルは、カール・ロード(Khar Road)駅のすぐ近く。歩いて10分ほどの所です。この駅はムンバイ中心部のチャーチゲート(Churchgate)駅と北の郊外とを結ぶ西部鉄道(Western Railway)路線の駅です。ムンバイ中心部にはチャーチゲート駅と共にもう一つ大きな駅チャトラパティ・シヴァージ・ターミナス(Chhatrapati Shivaji Ternimus/C.S.T.)駅があり、こちらは中部鉄道(Central Railway)の駅となります。東京の駅にたとえると、チャーチゲート駅は新宿駅、C.S.T.は上野駅という感じでしょうか。

ローカルな駅の風景はこんな感じです。駅名ボードはダーダル駅のものです。

カール・ロード駅からチャーチゲート駅までは主要駅のダーダル駅やボンベイ・セントラル駅を通って、各停で約50分。料金は非常に安く、普通車で10ルピー(17円)。下の写真がチケットです。これでも昔から見ると高くなっているのですが、タクシーで行くとこの20倍は取られるので、車を持たない人はみんな電車通勤です。車を持っていても、すごい渋滞が常にあるのがムンバイの道路なので、電車通勤をしている人は多いようです。女性専用車両があるため、女性も安心して乗れます。下2枚目が、そのサインボード。男性の方は乗らないよう気をつけて下さいね。

女性専用車両は先頭車両のほか、途中に2カ所、車両の4分の3ぐらいを区切って女性専用としてある所があります。残り部分に男性は乗って来られますが、下の2枚目の写真のように仕切りがあるので、電車が動いている時はこちらに侵入することはできません。反対に言えば、もし夜遅くなどで女性専用部分に自分1人だった場合、発車直後に男性が乗り込んで来たりする(近郊路線の列車はドアがないのです、というか、閉まらないので、動いていても飛び乗れます)と逃げ場がないわけです。というわけで、いくら女性専用車両とはいえ、他の人がいない場合はむしろ男性のたくさん乗っている車両に行った方が安全だ、というのがムンバイに長く住むSさんの話でした。

でも昼間の女性専用車両はファッション・チェックもでき、華やいでいていいものです。きれいな色のブルカー(イスラーム教徒女性の体を覆うガウン)を着ている人もいますし、まったくの洋装の人もいます。デリーに比べると、ムンバイはサルワール・カミーズなどのインド伝統衣装姿の人が多いようです。お母さんと一緒の通学の子供たちもよく見かけます。

女性専用車両を目指して、物売りも乗ってきます。この女の子はビンディー(額に貼るシール。クムクムとも言う)売りで、私が写真を撮ったら、「写真撮られちゃった!」とはにかんでいるところです。お礼に1つ買いました。10ルピー(17円)で、街中と変わりません。

車内アナウンスもあり、女性の声で「次は○○駅です」と、マラーティー語(ムンバイのあるマハーラーシュトラ州の公用語)、ヒンディー語、英語で繰り返されます。昔はそんなものなくて、必死で駅名を読み取り、地図と首っ引きで確認し、自分の降りる駅まで緊張の連続でした。そう言えば、車内もぐんときれいになったような。吊り輪がピカピカです。チャーチゲート駅は昔のままでしたが、ベンチが金属製になってきれいになっているなど、ここにも進歩がありました。

 

この日はシティで1日映画関係のお買い物。まず、もう40年近く通っている、D.N.ロード近くにある本屋ストランド・ブックストール(Strand Bookstall)へ。ここで映画関係の本を揃えてもらい、日本に発送してもらいます。相変わらず送料が高くて、本代の倍ぐらいに....。

 

それから、アブドゥル・ラフマーン通りの映画スターブロマイドなどを売っているお店へ。S.T.ブックワーラー(S.T. Bookwala)とヒーロー(Hiroo)という2軒があって、今回は珍しくヒーローにもブロマイドが置いてあり、早速ゲット。ほかには「少年ビーム」のぷくぷくシールなど。ここはホールセールなので、とても安いのです。今年もどこかでインド映画のお話をする機会があれば、こういう物をプレゼントにする予定です。

ちょうど16日がホーリー祭だったので、色粉が山と売っていました。屋台の傍らでは、少年がせっせと袋詰めをしてます。

続いて、これらの紙物を送るためにG.P.O.(General Post Office)へ。郵便局の前には顔なじみで友人と言っていいパーセルワーラー(小包作り)のサジャルさん(左)がいて、段ボール箱を捜してきてくれて全部詰め込み、手際よく小包にしてくれます。細身でメガネをかけたお友達も協力して、たちまち布地をかぶせた小包ができあがりました。インドでは、布でくるまないと郵便局で受け付けてくれないのです。手数料はお気持ち、ということで、100ルピー(170円)も払えばもう十分です。

その後、サジャルさんが局内まで運んでくれ、航空小包の差し出し口へ。列ができていても、顔を利かせてのスピード処理が可能です。11キロで送料3,000ルピー弱(約5,000円)。これでも、本屋さんが使っているクーリエの半額ぐらいです。ムンバイのG.P.O.は古い建物でなかなか風情があります。手前に写っているのは、飾ってあったG.P.O.の模型です。

そして、最後はポスター屋さん。ラージューさんの店舗マンシーが表通りに戻っていました。ポスター屋さんの場所については、以前に書いたこちらこちらをご参照下さい。この日はマンシーのラージューさんも、ガンディー・フィルムのガンディーさんも不在で会えませんでした。さらに残念ながら、ほしかった『チェンナイ・エクスプレス』のポスターはどちらの店でも手に入らず。ガンディーさんのお店ではロビーカードがあるというので見せてもらったら、「5枚一組で500ルピー」とのこと。私「そんなに高いの? 要らないわ」ガンディーさんの助手「いくらなら買う?」「300ルピーなら何とか」(助手さん、ガンディーさんに電話して確認)「350ルピーならいいって」「じゃ、買ってもいいかな〜」というわけで買ったのがこれです。なお、ポスターはいずれも1枚40ルピー(約70円)でした。昨年より10ルピー値上がりです。

使用済みなので角がいたんでたりしますが、まあしょうがない。左下隅に印刷されている言葉が、「READY STEADY PO!」なのがいいですねー("Po!"はタミル語で"Go!")。

しかし、どうやって持って帰ろう? 1箇所丸めればスーツケースに何とか入れられそうですが、またエクセス・バッゲージを取られますねー。インド国内線はどこもチェックイン荷物の制限が15キロになってしまい、デリー→ムンバイではキロあたり250ルピー(約420円)×7キロ分取られてしまいました。ポスターも20枚ぐらい買ったので、これは持ち込み手荷物にして...と、そろそろ体力が衰えてきた私としては、インドの旅は苛酷なのでした。

 

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