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<香港国際映画再報告:4>人を喰ったクルディスタン映画

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えー、<3>からだいぶ間が空いてしまいましたが、どうしてもご紹介しておきたい作品があるので、<香港国際映画祭報告>の4回目です。

作品のタイトルは『わが愛しき唐辛子の地(My Sweet Pepper Land)』、あるいは『わがピーマンの地』とも訳せます。そして製作国は、フランス、ドイツ、クルディスタン。ええっー、クルディスタンって、いつ独立国になったの? うむむ、イラクの中のクルド人自治区、クルディスタンのことでしょうか? この「?」と、それから主演がアスガル・ファルハディ監督の『彼女が消えた浜辺』(2009)や、アフガニスタン映画『悲しみを聴く石』(2012)のゴルシフテ・ファラハニーということで見始めたのでした。

物語は、男が泣きながら処刑場へと引き立てられていくシーンから始まります。そこに、「2003年4月、クルディスタンは独立した。フセインの時代は終わった」というセリフが入ります。どうやら、独立直後の混乱の中で裁判が行われたらしく、判事や有識者など寄せ集めの陪審員が男に死刑という判決を下したものの、絞首刑の縄が切れて刑が執行できないなど、ドタバタが続きます。陪審員の1人だったバランはあきれてしまい、さっさと帰省することに。

自宅に戻ったバランは年老いた母から見合いを勧められ、次々と女性と引き合わされたりします。こりゃたまらん、とバランは僻地の農村での警官という仕事を見つけ、その村へと赴任していきます。村は有力者の老人アーガーが支配しており、密輸で稼いだ金力と手下たちの暴力とで誰も逆らえないようになっていました。さらに、少女たちによるゲリラ隊がおり、アーガーの一団と対立していました。助手と共に赴任したバランは、徐々に村の実態を掴んでいきます。

そんな折、バランはこの村の小学校の教師ゴヴェンドと出会います。彼女はたった1人で小学校内の宿舎に住み、子供たちに勉強を教えているのでした。彼女の趣味は、不思議な楽器を弾くこと。大きな石のようなこの楽器は、中が空洞になっていて、彼女が奏でるとやさしいメロディーが生み出されていきます。

ところが、アーガーは女が学校の先生をしていることが許せず、何とか彼女を追い出そうとします。また、バランも捕まえた密輸団のメンバーをアーガーによって無罪にされてしまうなど、徐々にアーガー一味との対決の構図ができていきます。さらに、医薬品をほしがっている少女ゲリラたちのためにバランは尽力しますが、薬をアーガー一味に奪われたりして、緊張はついに頂点に。その上、町にいるゴヴェンドの婚約者や親戚が彼女を連れ戻そうと村にやってきます。ですがその頃には、バランとゴヴェンドは互いに恋に落ちていたのでした....。

西部劇+黒社会もの+恋愛映画、とでも言えばいいでしょうか。ネタばれ承知で書くと、最後のクライマックスでバランとゴヴェンドは見事ベッドインして結ばれてしまい、さらに思いがけない展開でアーガー一味は退治されて、絵に描いたようなめでたし、めでたしになります。そーゆーラストなの?と、こちらはいっぱい喰わされた気分。何とも人を喰った映画なのですが、随所に才気が感じられて、とても楽しめました。

監督は、イラクのクルディスタン出身のヒネル・サリーム(Hiner Saleem)。1964年3月生まれだそうなので、もう50歳ですね。17歳の時にイラクを出てイタリアに渡り、そこで高校、大学教育を終え、その後フランスに移住。今もフランス在住だそうです。クルド人地域に関する映画は湾岸戦争後から撮り始め、1997年に第1作が完成、翌年のヴェネチア国際映画祭でお披露目されました。その後も『ウォッカ・レモン(Vodka Lemon)』(2003)などを作っており、本作は8作目にあたります。

全編クルド語のこの映画、不思議な魅力に溢れた作品だったので、もう一度日本語字幕でじっくりと見てみたい気分です。昨年のカンヌ国際映画祭にも出品されたそうなので、どこかの配給会社さんが....買ってないだろうな〜。映画祭上映に望みを託しましょう。

予告編はこちらです。お、予告編をYouTubeで探していたら、あの楽器が出てきました。こちらの映像で、楽器の名前はハング・ドラム(Hang Drum)と言うのだそうです。予告編にも出てきますので、やさしい音を楽しんでみて下さいね。

 


メーデーの夜は『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』でマサラ・ナイト

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以前にもお知らせしましたが、5月1日(木)夜に阿佐ヶ谷ロフトでインド映画関連のイベントがあります。

  

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

『マサラスタイルでボリウッドNo.1 !!〜カレーに紙吹雪が入らないよう注意!〜』

 【司会】 宮村礼子(アンプラグド)
 【ゲスト】すぎたカズト・サラーム海上・松岡環・アルカカット
5/3(土)より公開のボリウッド映画『スチューデント・オブ・ザ・イヤー狙え!No.1!!』を記念して、マサラスタイルでインド映画を語り尽くしましょう...

OPEN 18:30 / START 19:30

前売¥2,000 / 当日¥2,500(共に飲食代別)

阿佐ヶ谷ロフトアクセス

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

内容は今いろいろと打ち合わせ中ですが、第一部(19:30〜20:30)はすぎたカズト&サラーム海上でDJ風に、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー狙え!No.1!!』の見どころや裏話、ゴシップ(!)などをご紹介します。第二部(20:40〜21:40)は松岡環&アルカカットのコンビで、この作品から見えるインドのあれこれをご紹介する予定です。インドのゲイ事情、なんていう、ちょっとドッキリのお話もある予定。もちろん、お話の合間に、『スチューデント』以外のゴキゲンな映像もいっぱいお見せしようと、今みんなで画策中です。

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

そして、第三部(21:50〜22:30)では、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』のダンスシーンをみんなで踊ってしまおう!というわけで、まず振り付けレッスンがありま〜す。上のどの曲なのかは不明ですが、一番初めの「♪ディスコ・ディワーネー」の「The Disco Song」が踊りやすいのでは、と思います。この振り、クセになりそうでしょ? 

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

というわけで、ほとんど真夜中近くまで踊りまくれるイベントです。アビことアビマニュ(シッダールト・マルホートラ/左)やロハン(ヴァルン・ダワン/右)のようにラフな服装でもかまいませんし、さらに上の写真のシャナーヤ(アーリアー・バット)のようなキメキメのドレス姿もOK。もちろん、インド衣裳なら大歓迎です。ぜひこのイベントで、インド映画を楽しみ尽くして下さいね。お待ちしています〜。

 

『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』初日記念:編集者ディーパーさんインタビュー

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本日5月3日(土)からいよいよ、渋谷シネマライズにて、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』が公開となりました。公式サイトはこちらです。劇場のサイトはこちらで、上映時間、マサラ上映のご案内など、詳しく出ていますのでご参照下さい。

 

本作の監督はボリウッド映画界のセレブにして人気者のカラン・ジョーハルですが、彼の絶大なる信頼を得て、『マイ・ネーム・イズ・ハーン』 (2010)に続いて編集を担当しているのがディーパー・バーティヤー。以前、『スタンリーのお弁当箱』でアモール・グプテー監督とその息子で主演のパルソー君にインタビューした時、パルソー君ママであるディーパー・バーティヤーにもちらと登場してもらいましたが、3月にインドに行った時に機会をつかまえて、アモール・グプテー監督の事務所でインタビューをお願いしました。

 

Q:大学で映画学のコースを選択なさったそうですね。 

ディーパー:昔から映画を見るのは好きだったんですが、映画を自分の研究対象として自覚したのは、大学卒業後に大学院に入ってからです。広報、広告、映画学のうちどれかのコースを取らなくてはいけなかったんですが、私は映画学を選び、古典的な作品や名作とそこで初めて接しました。それまでは、アミターブ・バッチャンやリシ・カプールらの娯楽作品を見ていたわけですね。ジャン・ルノワールや黒澤明などの優れた映画に接してみて、まるでそれらの作品が自分を迎え入れてくれるように感じ、もう映画の世界以外には自分の居場所が考えられなくなりました。この時に見た作品にはいろいろ影響を受けましたね。『大地のうた』とか『羅生門』とか、そういう作品を見るたびに自分が自由になっていく感覚を味わいました。 

Q:その後編集という仕事を選ばれたのはどうしてですか? 

ディーパー:卒業後は、しばらくゴーヴィンド・ニハラーニー監督(注:カメラマンから出発した、芸術映画系の監督)のもとで働いていたんです。監督助手の仕事をしていたんですが、ある時そこに新しい編集システムが導入されました。ところが、編集担当者がとてもルーズで、勝手に休んだりして、編集が全然進まなかったんです。そしたらニハラーニー監督から、「君、編集をやってくれないか」と言われて。編集なんてやったこともないので、とりあえず1日編集室にこもってみました。私が編集したものを見た監督は、「いいじゃないか。君は編集者になるべきだよ」と言ってくれたんです。ですので、編集の才能を発見したのは私自身ではなくて、ニハラーニー監督なんですね。 

Q:それで、編集者としての最初の作品が、ゴーヴィンド・ニハラーニー監督の『1084号囚人の母(Hazaar Chaurasi Ki Maa)』(1998)になったわけですね。ニハラーニー監督はどんな人ですか? 

ディーパー:素晴らしい人です。いつもスタッフ全員を家族のように遇してくれます。1日の撮影が終わると、全員を彼の車で家まで送ってくれるんです。こんな業界なのに、まるでみんなを子供のように守ってくれる、やさしくて心の広い人ですね。私は彼のお陰で一人前になれたと思っています。 

Q:編集者としてデビューして以降はどうでした? 

ディーパー:『1084号囚人の母』の次は、同じくニハラーニー監督の映画『タクシャク神(Takshak)』(1999)、それから彼のテレビ映画やもう1本の映画も担当しました。この4本が、私のキャリアの出発点と言えますね。

 

Q:続いて、ジャヌー・バルア監督の『私はガンディーを殺していない』(2006)の編集を手がけてらっしゃいますね。 

ディーパー:そうです。ニハラーニー監督との仕事のあと、自分の編集は感覚だけでやっているのでは、と思うようになったんです。正式に編集を勉強したわけでもないし、もっと技術を身につけないと、と思って、自分自身を訓練する必要性に駆られました。本をたくさん読んで、映画もいっぱい見て研究しました。いろんな訓練を自分に課して、やっと編集とは何かがわかったように思います。ちょうどその頃息子も生まれて(注:パルソー君は2001年生まれ)、その後に仕事を再開したのです。

Q:それから、『地上の星(Taare Zameen Par)』(2007)、『ロック・オン!(Rock On!)』(2008)と続きますね。

ディーパー:『地上の星』は、メインストリーム映画(注:商業映画の主流作品)への第1歩となりました。1人の大スターを中心に映画を作っていくという、メインストリーム映画のやり方を初めて体験することになったわけです。でも、その次の『ロック・オン!』もそうですが、『チェンナイ・エクスプレス(Chennai Express)』(2013)のような作品とはちょっと違っています。『チェンナイ・エクスプレス』のような作品のオファーもいっぱい来るのですが、それとは違った、もっと自分に近しい文法の映画というか、そういうものの方が自分には向いているみたいです。あまりにも商業主義的すぎる作品よりは、何か意味のある内容を持つ映画の方が、私は愛情を込めて編集することができるんです。『ロック・オン!』のアビシェーク・カプール監督作品などは、まさにそうですね。

 Q:そして次に、『マイ・ネーム・イズ・ハーン』(2010)でカラン・ジョーハル監督からお呼びがかかったわけですね?

ディーパー:(笑って)その通りです。『ロック・オン!』を見て私の編集が気に入ったそうなんですが、カラン・ジョーハル監督の作品はメイン・ストリームの王道作品じゃないですか。豪華絢爛な映画、という感じで、そんなのとてもできないわ、と思いました。でも、カランは、『マイ・ネーム・イズ・ハーン』ではこれまでの作品とは違ったものを目指していたんです。それを聞いて納得しましたし、9.11事件で多くのイスラム教徒がつらい目にあったことも知っていたので、この作品は絶対に作られるべき重要な作品だと思いました。

 それで一緒に仕事をし始めてみると、カランがとても素敵な人だということがわかったんです。本当に驚くべき人で、もうすっかり彼という人物に惚れ込みました。この人のためなら何でもやろう、と思いますし、一緒に仕事をするのがすごく楽しいんです。『マイ・ネーム・イズ・ハーン』でも全面的に任せてくれて、充実した仕事ができました。

 

Q:編集者として映画に関わる時は、どの辺りから参加なさるのですか?

ディーパー:製作の、かなり早い時点から加わります。実際には、撮影が始まる前からですね。脚本を読んで、アクションシーンが長すぎるとか、脇の話が効いていないとか、いろんな意見を言います。いったん撮影が始まってしまうと、脚本を修正することは難しく、それはあとでの編集にも響いてきますからね。撮影が始まると、1日に6〜9シーンが撮られるわけですが、それらを繋ぎながら、監督からの「どんな感じ? どう見える?」という質問に答えていきます。重要なシーンでは監督にラッシュを見せて、「ここがよくわかりませんね」とか言ったりもします。

でも、普通、その監督をよく理解していれば、編集もスムーズに行くものです。お互いにいい関係で、相手を尊敬していたら自分のエゴは出さないわけですし、そうするといいものが出来上がっていきます。自分の我を通そうとすれば、作品の質も下がってしまいますからね。幸いなことに、私はそんな監督には一度も当たったことがなくて、いつもいい仕事をさせてもらっています。映画というのは監督のものでもなく、編集者のものでもありません。全員が一緒に作り上げるもので、それぞれがベストを尽くし、いい関係を作り上げて、完成させるのが映画です。

 

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

Q:『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』ではデーヘラードゥーンでロケが行われましたが、その時も参加なさったんですか?

ディーパー:私はムンバイにいて、送られてくる映像を編集していました。カランとはお互いにすごくよく知っているので、彼の映像をどう編集すればよいのかもすっかりわかっています。どうすれば滑らかな編集になるかを考えながら、私はただ眺めて画面を楽しむだけでよかったんです。私がつないだのをカランが戻った時に見せて、お互いに意見を交換し合い、何シーンか完成したところで全体のミーティングを開き、また検討します。そして全体を撮り終えてから、また細部に磨きをかけていくわけです。そこが編集者の腕の見せどころというか、一番やりがいのある期間でもありますね。それぞれの独立したシーンを繋ぎ合わせて、エンターテインメント性などを持たせる、それはとても素敵なプロセスで、まさにマジックと言えます。

Q:編集期間は、普通どのくらいかかるんですか?

ディーパー:編集だけだと、6〜8ヶ月というところでしょうか。映画製作自体は、撮影を始めてから完成まで1年ぐらいかかりますね。でも、豪華な作品だと撮影自体にも長く時間をかけることになりますから、もっと時間がかかりますね。

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

Q:インド映画で特徴的なのは、ソング&ダンスシーンがあることだと思いますが、この「ミュージカル」シーンの編集はどうですか?

ディーパー:(笑いながら)私、ソング&ダンスシーンの編集がとーっても好きなんです! 芸術系の映画では味わえない、大いなる楽しみというところですね。ソング&ダンスシーンは、心底楽しめる、ユニークな様式だと思います。今は歌もリップ・シンクロ(注:画面で主人公が歌うのに音を合わせる)よりも、『わが人生3つの失敗』(2013)のようなBGM使用が多くなっています。欧米の映画のように、ストーリー上歌が必要とされない作品が増えているわけですね。だからよけいに、ソング&ダンスシーンの編集があると嬉しくなるんです。『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』は豪華なソング&ダンスシーンがいっぱいあって、尺も長かったから、これはすごい、と思いました。他の映画では真似できませんよね。あのディスコの曲とか、音楽も振り付けも大好きです。

Q:ああいう歌のシーンの編集は、どうすれば可能になるんですか?

ディーパー:それは、歌を聞いてイマジネーションを膨らませると同時に、客観的にそれを眺めてみて、どうすればこれまでにないシーンにできるかを考えてみるんです。全体の流れと、その中で浮かぶ斬新なものを掴んで、それを発展させていくという感じで、何かを掴まえる、というのが一番難しい作業かも知れません。うまく言葉では言えないんですが、それを捉えることが大事なんです。自分と素材との間で起こる、とても個人的な闘い、という感じでしょうか。一生懸命やってみていれば、何かが掴める瞬間がやって来ます。それで、他の人とは違った仕事ができることになるんですね。

Q:『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』の編集の時は、特に気をつけた点とかありましたか?

ディーパー:この作品は、そんなに深刻な映画じゃないでしょ。何もかも忘れて楽しめる映画で、技術さえあれば誰にでも編集出来る作品だと思います。カランとの人間関係があったので私も引き受けたんですが、彼のスタイルを重視すればそれでいいという作品でした。全体をクールに仕上げて、ソング&ダンスシーンをうまく繋いで、レースのシーンを盛り上げて....。だから、全然大変じゃなく、楽しんでやりました。


ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

Q:カラン・ジョーハル監督作品は、ソング&ダンス・シーンにいつも力が入ってますよね。

ディーパー:特に『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』のソング&ダンスシーンは、たくさん入ってますからね。カランはソング&ダンスシーンを見せ場にしたいので、山ほど素材を撮影するんです。セットも豪華ですしね。見せ場なので編集にも時間をかけて、カラン・ジョーハル・スタイルというか、派手なシーンにするよう心がけました。特にクラブ・シーンは、エネルギーいっぱいのキラキラした撮り方だから、それが出るような編集にしたりとか、これまでの編集経験を総動員して完成させました。

Q:カラン・ジョーハル監督は、ダンスシーンでいつも手前に人とか柱とかを入れますよね。

ディーパー:スケール感を出すためですね。前の方に何かがあると、奥行きが出るでしょ。カランはすごく才能のある監督です。登場人物のキャラクターを深く理解していて、何かが足りないと思うと、必ずピッタリのものを出してきてくれます。彼が描こうとするものはいつだってドンピシャで、映画が要求するものをとてもよく知っている監督です。優れた商業映画監督だと思うし、それ以上のものを持っている賢い人だと思います。『ボンベイ・トーキーズ(Bombay Talkies)』(2013)(注:インド映画百年を記念して作られたオムニバス映画)の編集も担当しましたが、カランのパートはホモ・セクシュアルを扱ったとても難しい作品でした。でも、それを美しく観客に呈示するなど、彼はインド映画にとって本当に重要な監督だと思います。監督の仕事の一方で、自分の製作会社では作品を作り続けているし、とても才能のある人ですね。

Q:テレビ番組のホストもしてますし、才能ありすぎですね。

ディーパー:本当にそうです。それから彼は、いろんな人に援助の手も差し伸べてくれるんです。『スタンリーのお弁当箱』(2011)の時だって、配給の目処がつかなくて困っている私たちに、たくさんの配給会社を呼び集めて試写をしてくれたのは彼でした。素晴らしい映画だと気に入ってくれて、それだけで、どうしていいかわからなかった私たちを助けてくれたんですよ。彼の助けがなかったら、『スタンリーのお弁当箱』は世に出なかったと思います。友人や知人を助けるのが、彼の生き方のモットーみたいですね。

ⓒ2012 EROS INTERNATIONAL MEDIA LIMITED

Q:『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』撮影時で、何か面白いエピソードとかありましたか?

ディーパー:忘れられなかったのは、シッダールト・マルホトラとヴァルン・ダワンのケンカのシーンですね。シッダールトが力を入れて殴りすぎたものだから、ヴァルンが鼻をケガしてしまって、3週間撮影がストップしてしまいました(笑)。まあ、撮影ではよくあることですけど。でも、この映画で主演した3人は、すぐに続いて主演作が作られています。アーリアー・バットは『ハイウェイ(Highway)』、シッダールトは『美女にご用心(Hasee Toh Phasee)』、ヴァルンも『僕は君のヒーロー(Main Tera Hero)』が控えています。『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』がとてもいいスタートになった、という証拠ですよね。これからみんな、大スターになると思います。

Q:ところで、ご主人のアモール・グプテー監督の新作はどうなりました?

ディーパー:今、編集しているのがそれです。タイトルは『ハワー・ハワーイー(Hawaa Hawaai)』になりました。

 

Q:あら、シュリデヴィ主演の『Mr.インディア』(1987)の歌の題ですね。

ディーパー:アハハ、そうです。インライン・スケートに夢中になる子供たちの話なんですが、インライン・スケートなんてお金持ちの遊びでしょう? 村から出て来た、パルソーが演じる少年とかがやってみたいと思って、いろんな物を集めて手作りをするんです。そしてそのスケートに「ハワー(風)・ハワーイー(風の)」と名付ける、という物語で、パルソーは村の生活を体験したりしてがんばりました。公開は、5月9日からの予定です。 

Q:ぜひ、見てみたいです〜。今日はお忙しいのに、どうもありがとうございました。


『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』に少し遅れてインドで公開される『ハワー・ハワーイー』、予告編はこちらです。日本でも公開されるといいですねー。

 

 

五月の「ゴ」はゴリラの「ゴ」、『ミスターGO!』へ「ゴー!」

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5月24日(土)から、私の大好きな韓国映画が公開されます。その名も『ミスターGO!』。昨年夏香港で広東語吹き替え版を地元のお子様たちと一緒に楽しみ、こんなブログ記事をアップした作品です。今回日本語字幕版で試写を見せてもらって、新たな発見もいくつかあり、あらためてうならされました。下は、やってきた試写状です。このカットアウトからしてもう、ワクワク感が漂います。


さらに、試写のプレスとして配られたのが、何と「ゴリラスポーツ」というタブロイド判スポーツ新聞。配給のギャガさん、やりますねー、というわけで、さらにノリノリになりました。


では、まずは基本データからどうぞ。 

『ミスターGO!』 公式サイト

 2013年/韓国/カラー/133分/原題:MR. GO
 監督:キム・ヨンファ 
 出演:リンリン(ゴリラ)、シュー・チャオ(徐嬌)、ソン・ドンイル、キム・ガンウ、オダギリジョー

 配給:ギャガ

※5月24日(土)シネマライズ他全国順次ロードショー

 

© 2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS ALL RIGHTS RESERVED.

お話は、中国吉林省から始まります。ウェイウェイ(シュー・チャオ)は祖父がわりの団長(ピョン・ヒボン)が経営するサーカス団で、ゴリラのリンリンと共に大きくなりました。サーカス団の子供たちをまとめるお姉さん的存在のウェイウェイでしたが、突然襲った大地震で団長は死亡、以後サーカスの責任者としてがんばらなくてはいけなくなってしまいます。ところが、団長が残した多額の借金が発覚し、サーカスに乗り込んできたヤクザに「金を返せ」と迫られる羽目に。そこに登場したのは、韓国球界の凄腕エージェントであるソン・チュンソ(ソン・ドンイル)でした。ソンはゴリラのリンリンを韓国球界にスカウトしたいと言い出しますが、スカウト先は最下位チームのトゥサン・ベアーズ。とにかくお金を稼ぐ必要に迫られたウェイウェイは、ソンの話に乗ることにします。


© 2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS ALL RIGHTS RESERVED.

韓国にやってきたリンリンは、「ミスターGO」としてウェイウェイと共にベアーズ入り。試合ではウェイウェイの指示に従ってバッターボックスに立ち、打てば毎回ホームラン。強力な代打選手として、ベアーズを常に勝利に導くようになりました。ベアーズの若き球団代表であるキム(キム・ガンウ)も大喜びします。キムは元選手で、日本のプロ野球界に挑戦したものの成果が出せずに帰国。ソンのおかげで球団代表になったのですが、ベアーズの弱小チームぶりにくさくさしていたのでした。「ミスターGO」は韓国で大人気となりますが、その一方リンリンの体の故障も出始めました。


© 2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS ALL RIGHTS RESERVED.

そんな時、ライバル球団が同じゴリラの選手ゼロズを獲得。ゼロズはウェイウェイのサーカスにいたのですが、凶暴で手の付けられない問題ゴリラでした。ですが投球パワーはものすごく、それに目を付けたヤクザたちが韓国の球団に売り込んだのです。ゴリラ打者対ゴリラ投手の対決に湧く韓国球界。しかし、韓国球界以外にもゴリラに注目した球界がありました。日本のプロ野球界から、読売ジャイアンツと中日ドラゴンズがトレード話を持って韓国にやってきたのです。中日ドラゴンズのオーナー伊藤(オダギリジョー)はいち早く韓国に乗り込み、リンリンを獲得しようとしますが、その頃リンリンは膝の故障のため動けなくなっていました....。


© 2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS ALL RIGHTS RESERVED.

何よりもまず、リンリンとゼロズがCGとは思えない動きをしてくれて、ストーリーにリアル感を与えてくれます。特にリンリンのゴリラ顔は、無表情な中にいろんな感情が表れるようにデザインされており、実に繊細。体毛1本1本を手描きにしたようなリンリンの体も、本当のゴリラがやっているのでは、とつい思わせられてしまうぐらい上出来です。ひと言もセリフはないのに、生身の俳優たちを超える演技力が感じられるのは、受け手の俳優たちの演技のたまものでしょうか。よくぞこんなストーリーを考えついたものです。

それに、オダギリジョーのこのキャラ! 実は香港で見た時はオダジョーだと全然気が付かず、あとで出演者リストを見た時には、「オダギリジョー? どこにカメオ出演してたっけ?」と思ったほど。この中日ドラゴンズのオーナーを巡るエピソードを始め、ちょっと教訓っぽいエピソードも散りばめられているのですが、ミスターGOの演技力の前にはすべてがお添え物という感じです。『カンナさん、大成功です!』(06)や『国家代表!?』(09)のキム・ヨンファ監督、またまた新しい分野を切り開きました。

© 2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS ALL RIGHTS RESERVED.

ただ残念なのは、日本での公開は2D版で、日本語吹き替え版のみだということ。ボールが飛んでくる場面などは3Dだとものすごい迫力なのですが、 そのお楽しみは今回はお預けです。でも、3Dでなくても、リンリンやウェイウェイたちがスコアボードのてっぺんに登る場面とか、観客が盛り上がる球場客席シーンとか、撮り方+CG処理の上手な場面がいっぱい出てきて、とても楽しめます。アジア映画界もCGをここまで使いこなせるようになったか、という里程標的作品を、ぜひシネマライズの大スクリーンでご覧下さい。

あ、その前に23日(金)までシネマライズで上映されているインド映画、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』もお忘れなくねっ!! 『ミスターGO!』も、風船持ってマサラ上映(韓国映画だから「キムチ上映」?)やればいいのになあ。


 

今日は母の日『マダム・イン・ニューヨーク』

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今日は母の日です。私もカーネーションをいただきました。


送ってきてくれたのは、大学の元教え子で中国人のSさん。とても優秀な留学生だった上、いろいろと心配りができる人で、感心することが多かった学生さんでした。卒業後大学院に進み、研究テーマのこと等で相談を受けたり、彼女とのお付き合いの悩みを聞いたりして、年に1、2回会うようになりました。今は日本の大手企業に就職し、その中国人の彼女ともめでたく結婚、秋には赤ちゃんが生まれます。日本のお母さんがわり、ということらしく、毎年カーネーションを贈ってくれるのです。

さて、母といえば公開日が6月28日(土)に決まった『マダム・イン・ニューヨーク』。インド映画では主人公が母親というのは、芸術系の作品では何本かありますが、娯楽作では本当に珍しいのです。母親どころか、女性が主人公の映画というのもヒット作で見ると、『カハーニー/物語』 (2012)、『ダーティーな映画(The Dirty Picture)』 (2011)、『運命の糸』 (2007)、『ブラック(Black)』 (2005)、『セレブ・ページ(Page 3)』 (2005)など、数えるほどしかありません。ヒーローが活躍し、ヒロインも魅力的な映画というのは結構あるのですが、女性が主人公の映画はボリウッドでは本当に少ないのですねー。

(C) Eros International Ltd

そんな珍しい「女性映画」というか「母親映画」が完成したのも、主人公のシャシを演じたシュリデヴィという存在があったからこそ。というわけで、母の日のカーネーションはシュリデヴィにこそふさわしいのです。実生活でも2人のお嬢さん、ジャンヴィーとクシーのママであるシュリデヴィ。インドでも今日は母の日(Mother's Day)なので、お嬢さんたちからプレゼントが贈られていることでしょう。

ご存じでしょうが、シュリデヴィの夫君はプロデューサーのボニー・カプール。アニル・カプールやサンジャイ・カプールのお兄さんなので、アニル・カプールの娘ソーナム・カプールにとっては、シュリデヴィは「伯母さん」に当たります。また、ボニー・カプールは再婚で、前の結婚でできた息子がアルジュン・カプール。目下アーリアー・バットと共演した『2つの州(Two States)』が大ヒット中のアルジュン・カプール、義母に負けないビッグネームになれるでしょうか。

(C) Eros International Ltd

というわけで今日はシュリデヴィを讃えて、『マダム・イン・ニューヨーク』の主題歌「English Vinglish」の歌を一緒に歌いましょう。前にも書いたように、「English Vinglish」の「Vinglish」は語呂合わせなので、意味のない単語です。この歌でも、英単語をすべて「v」始まりにするという語呂合わせが行われています。下の歌詞では英単語には訳を付けてありませんが、ヒンディー語の方には音と意味を付けておきました。ノリのいい、とっても歌いやすい歌詞なので、一緒に口ずさんでみて下さい。

(C) Eros International Ltd

「English Vinglish」 映像  音楽+歌詞付き映像  

Coffee-voffee, sugar-vugar, paper-vaper,
News-vews, clock-vock, time-vime, run-vun-vun..
Train-vain, pass-vass, late-vate, class-vass
Friendship-vendship, bonding-vonding, fun-vun-vun..

バドラー・ナザーラー・ユーン・ユーン・ユーン
Badla nazara yun yun yun
変わる  光景が   こんな風に
サーラー・カー・サーラー・ニュー・ニュー・ニュー
Saara ka saara new new new
全部    が  全部    新しい
マイン・ハッピー・ヴァッピー・キューン・キューン・キューン
Main happy-vappy kyun kyun kyun
私が  幸せなのは  なぜ
マイン・ビジー・ヴィジー・フーン・フーン・フーン
Main busy-vusy hoon hoon hoon
私は  忙しく    しているの
ディーメー・ディーメー・スローリー・スローリー
Dheeme dheeme, slowly slowly
ゆっくりと       少しずつ
アイム・ラーニング・ヴァーニング・シークーン・ヴィークーン・ナイー・ズバーン
I'm learning-vearning seekhun-veekhun nayi zubaan (最後2行繰り返し)
私は 学んでる      勉強してる     新しい 言語を

アフラートゥーン
Aflatoon (English vinglish)
プラトン/頭のいい人
ハイン・ジュヌーン
Hain junoon (English vinglish)
あるわ 情熱が
モーニング・ヌーン
Morning noon (English vinglish...) (3行繰り返し)
朝も   昼も

It’s all about English vinglish! Oh o o..
Morning noon English vinglish! Woh o o o..


テーラー・ラグター・ハイン・サブ・クッチュ・ユーン
Tedha lagta hain sab kuch yun
ゆがんで見える   何もかも  こんな風に
アッチャー・ラグター・ハイン・ピル・ビー・キューン
Acchha lagta hain phir bhi kyun
でもステキに見える  (でも)  なぜかしら
アイム・トライイング・ヴァイイング・デーコー・トー
I'm trying vying dekho toh
私は トライしてるの 見てみてよ
アイム・ライキング・ヴァイキング・ディス・ザット・ウォー
I'm liking viking this that woh
私は好きになる  これと あれと それと
ディーメー・ディーメー・スローリー・スローリー
Dheeme dheeme, slowly slowl
ゆっくりと      少しずつ
アイム・ラーニング・ヴァーニング・シークーン・ヴィークーン・ナイー・ズバーン
I'm learning vearning seekhun-veekhun nai zubaan (最後2行繰り返し)
私は 学んでる     勉強してる     新しい 言語を

Aflatoon (English vinglish)
Hain junoon (English vinglish)
Morning noon (English vinglish...)(3行繰り返し)

It's all about English vinglish! Oh oh oh!
Morning noon English vinglish! Oh oh oh!


カイサー・アサル・チャラー・ハイ・サル
Kaisaa asar chadhaa hai sar
どんな  効果が やってきたのか 頭に
キー・チャルテー・チャレー・ハム・ベーカバル
Ke chalte chale hum bekhabar
(それは)進んでいく 我々には わからない
ルクネー・コー・ナー・カホー
Rukne ko naa kaho
止まれとは  言わないで
チャルテー・ヒー・ジャーネー・ドー
Chalte hi jaane do, oh oh
進んで  行かせてくれ
カトラー・ハイン・ダル、カトラー・フィクル
Qatraa hain darr, qatraa fikar
危険が ある 恐れに、危険がある 心配
カヒーン・ラーホーン・メーン・ハム・コー・ジャーエーン
Kahin raahon mein hum kho naa jaaye
どこか 途中で    我々が 迷ってしまわないよう
ラーホーン・コー・モール・ドー
Raahon ko mod do
道を    正してほしい
ルクネー・コー・ナー・カホー
Rukne ko naa kaho, oh oh
止まれとは  言わないで


バドラー・ナザーラー・ユーン・ユーン・ユーン
Badla nazara yun yun yun
変わる 光景が  こんな風に
サーラー・カー・サーラー・ニュー・ニュー・ニュー
Saara ka saara new new new
全部  が 全部  新しい
マイン・ハッピー・ヴァッピー・キューン・キューン・キューン
Main happy-vappy kyun kyun kyun
私が  幸せなのは   なぜ
マイン・ビジー・ヴィジー・フーン・フーン・フーン
Main busy-vusy hoon hoon hoon
私は  忙しく   しているの

Aflatoon (English vinglish)
Hain junoon (English vinglish)
Morning noon (English vinglish...)(3行繰り返し)

It's all about English vinglish! Oh oh oh!
Morning noon English vinglish! Oh oh oh!

Hurry vurry, walk shalk, train vain
Clock vlock, late vate, home vome, run vun run vun
Hello vello, food vood, call vall, talk valk
TV Shivi, sleep veep, num num num num...

 

(C) Eros International Ltd

いかがでしたか? 『マダム・イン・ニューヨーク』の公式サイトはこちら、FBはこちらです。さあ、どちらもこまめにチェックして下さいね〜。朝のコーヒー・ヴォーヒーと共に毎日チェック!で、どうぞよい1日を。

 

 

『めぐり逢わせのお弁当』チラシ出来ました!

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5月1日のイベント@阿佐ヶ谷ロフトでは、校正用の版下をチラとお見せした『めぐり逢わせのお弁当』宣伝チラシ、出来上がりました〜。配給会社ロングライドさんからいただいたのですが、びっくりしたのはチラシの紙のよさ。手ざわりがとてもいいんですねー。とりあえずこちらにヴィジュアルをアップしておきますが、皆様、ぜひシネスイッチ銀座付近にお出かけの時は、チラシをゲットしてきて下さいませ。

うちのスキャナーはボロなので、ちょっと色が実物とビミョーに違っている気が...。いずれにしても、『マダム・イン・ニューヨーク』(これもチラシの紙が上等でしたねー。デザインもよかったし)と共に、この夏シネスイッチ銀座をインド色に染める作品となるはずの『めぐり逢わせのお弁当』、タイトルをぜひ憶えて下さいね。原題は「The Lunchbox」。お弁当が入ったランチボックスがどんな風に人と人とをめぐり逢わせてくれるのか、人生の機微を見事に描いた、胸にしみ透る作品ですので、どうぞお楽しみに!

<追伸>

公式サイトFBがオープンしていました。こちらへもご訪問下さい。日本版予告編はまだのようなので、海外版予告編(ヒンディー語台詞には英語字幕付き)をどうぞ。私の大好きな俳優、ナワーズッディーン・シッディーキーが言うキメ台詞が出てきます。「カビー・カビー・ガラト・トレイン・ビー・サヒー・ジャガハ・パフンチャー・デーティー・ハイ」、上のチラシ裏にある「人はたとえ間違った電車に乗ったとしても、正しい場所へと導かれる」という台詞ですね。『カハーニー 物語』や『血の抗争』とは全然違うキャラを演じるナワーズッディーン・シッディーキーの演技力も見どころの一つ。またおいおいご紹介していきますね〜。

 

 

なりきり『ダバング 大胆不敵』キメ台詞はこれだっ!![その1]

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目玉作品の公開が次々と決まるインド映画夏の陣。その中でひときわ異彩を放っているのが、言わずと知れた『ダバング 大胆不敵』。いや〜、オモロイいうたら絶対コレでんなあ、というわけで、ちょっと旗振りを致します。配給会社太秦さんから、日本語字幕入りDVDもお借り出来たので、主人公チュルブル・パンデーの名台詞の数々をご紹介しましょう。


中には”迷”台詞もありますが、藤井美佳さんの名訳が付いていますので、それも立派にキメ台詞になっています。では、まずはこのシーンから。ちょっと三面記事風にシーンをご紹介してみますね。

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パンデー警部またもお手柄 〜銀行強盗を一網打尽〜 

【ラールガンジ、UP発】ラールガンジの「ダバング(大胆不敵)」警官として知られるチュルブル・パンデー警部が、昨日午後警官隊を率いて銀行強盗一味のアジトに乗り込み、20数名いた一味を全員叩きのめした上で逮捕した。警官隊の負傷は、弾丸が胸に当たった1名のみ。

銀行強盗の一味は昨日白昼、町の中心部にあるウッタル・プラデーシュ銀行を襲ったもので、銃で銀行員と客を脅し、数百万ルピーを奪って逃走した。パンデー警部はすぐさま彼らの行方を追い、アジトを突き止めるや間髪を入れずに急襲。警官隊の本隊が到着する前に1人で乗り込み、全員に逃げる隙を与えず平定したもの。パンデー警部ほぼ1人の働きで事が終わった格好となった。

建物の外で待機していた警官隊の1人は、「サングラスを襟首の後ろに引っかけて、カッコよく戦っておられましたっ!」と直立不動の姿勢で話したが、中でも消防ホースを縦横に駆使しての戦いは大いに見ものだったようだ。その時の、パンデー警部が放ったキメ台詞がこれだ!!

「水洗いもあきた。次は叩き洗いだ!」 Translation by藤井美佳

パンデー警部の肉声は、こちらの2分25秒で聞ける。日本の読者のために、ローマナイズ表記も付けておこう。

アビー・タク・サブ・コー・ナフラーヤー・ハイ、アブ・サブ・コー・ドーウーンガー
Abhi tak sab ko nahlaya hai, ab sab ko dhounga.
今 までは 皆 を 水浴びさせてやった、今度は 皆 を 洗ってやる

なお、銀行強盗で奪われた金は行方不明という有力情報もある。金の行方を知りたい読者は、7月26日(土)に劇場へ駆けつけること。読者諸君、今後のパンデー警部の活躍に乞うご期待! 以上、ウッタル・プラデーシュ(UP)州ラールガンジからのレポートでした。

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皆さん、原文も憶えて、マサラ上映の時には画面のチュルブル・パンデー(サルマーン・カーン)と一緒にこの台詞を言って下さいね。ドスの効いた声なら、なおよろしいかと思います。

ストーリー等のご確認は公式サイトで。ああっ、キャスト紹介欄のソーヌー・スードのとこ、「表作」がまだ直ってへんがな〜。太秦はん、早よ「代表作」に直してくれな、あかんやんかー。(今、朝井まかて著「すかたん」を読んでいるので、ついあちこちに大阪弁が。清太郎をシャー・ルク・カーンに演らせたいわぁ、うちら....)

 

 

テルグ語映画も試写開始

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テルグ語映画『あなたがいてこそ』と『バードシャー テルグの皇帝』の試写が今週から始まります。私はどちらも未見なので、詳しいご紹介はまた試写で拝見してから、ということにして、とりあえず基本データだけお知らせしておきます。写真は試写状からスキャンしたので、ちょっとボケてますがお許しを。

『あなたがいてこそ』 公式サイト
2010年/インド/テルグ語/125分/原題:Maryada Ramanna/字幕監修:山田桂子

監督:S.S.ラージャマウリ
出演:スニール、サローニ、ナジニードゥ、スプリート、ヴェーヌゴーパール、ブラフマージー
提供:マクザム、アジア映画社、アジアヴォックス/配給:太秦
7/26(土)より シネマート六本木
8/2(土)より シネマート心斎橋 にて順次公開

 

『バードシャー テルグの皇帝』 公式サイト
2013年/インド/テルグ語/158分/原題:Baadshah/字幕監修:山田桂子

監督:シュリーヌ・ヴァイトラ
出演:NTRジュニア、カージャル・アグルワール、ケリー・ドルジ、ナブディープ
提供:マクザム、アジア映画社、アジアヴォックス/配給:太秦
8/9(土)より シネマート新宿、シネマート心斎橋 にて順次公開

どちらも字幕は英語字幕台本を使って翻訳され、テルグ語の専門家である茨城大の山田桂子先生が監修なさったようです。ちょっと内輪ネタを書いてしまいますと、山田先生のご主人は松沢靖さんとおっしゃって、なんと1997年に公開された『ラジュー出世する』の仕掛け人なのです。当時は新日本映画社にいらして、シャー・ルク・カーン主演作『ラジュー出世する』でインド映画ブームの先鞭をつけたあと、ヴェンカテーシュ主演のテルグ語映画『愛と憎しみのデカン高原』 (1997)も1999年に公開。さらにチランジーヴィ主演作『バブーをさがせ!』も紹介と、日本でのテルグ語映画紹介では先人と言える方なんですねー。

テルグ語映画はその後『マッキー』 (2012)がヒンディー語版で公開されましたが、今回の2本はどんな作品なのか、大いに楽しみです〜。なお、『バードシャー』の方は、テルグ語映画上映会で上映された時にこちらでも紹介してあります。現地予告編も出してありますので、ご参照下さいね。

 


<臨時ニュース>『マダム・イン・ニューヨーク』シュリデヴィ来日決定!!

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『マダム・イン・ニューヨーク』の主演女優シュリデヴィが、来週プロモーションのため来日します。6月28日(土)の初日まであと1ヶ月という5月29日(木)の午後には、インド大使館で記者会見とトークショー、そして特別試写会が行われる予定とか。楽しみですね〜。

(C) Eros International Ltd

29日のイベントの詳細は次の通りです。 

《プログラム》(敬称略)

第1部:来日記者会見/15:25-15:55(予定)
 登壇:シュリデヴィ  司会:花田景子

第2部:トークショー/16:05-16:35(予定)
 登壇:シュリデヴィ、ディーパー・ゴーパーラン・ワードワー駐日インド大使、アグネス・チャン   司会:花田景子
 花束贈呈:安倍昭恵

第3部:特別試写会/16:45-18:59(予定) 

会場:駐日インド大使館 ICCホール

このほかにも、ファンとふれあうイベントが何かあるのでは、と思うのですが、現在のところ届いたご案内はマスコミ向けの上記のイベントだけ。何か決まれば公式サイトに出ると思うので、ご注目下さいね。(あれ、来日情報もまだ出てませんねー。大丈夫かしら、ブログに書いちゃって)

(C) Eros International Ltd

実は、シュリデヴィの来日は今回が初めてではありません。1996年10月20日に、東京ベイNKホールで行われたインド・スターショー「インターナショナル・ギャラクシー・ショー」に出演のため、18年前にも来日しているのです。その時のショーは、シュリデヴィと当時「メイド・イン・インディア」をメガヒットさせていた歌手アリーシャー・チナーイーがメイン。加えて、男優のジテーンダル、歌手兼女優のサルマー・アーガー、歌手のディーパー・シャー、バーブル・ボースといった出演者を組み合わせた、楽しいショーになっていました。その時の舞台写真をいくつか付けておきましょう。

 

この時は、シュリデヴィ・ファンのインド映画研究者次良丸章さんが彼女に直撃インタビューし、その記事は「インド通信」第219号(1997.1.1発行)に掲載されました。その中でシュリデヴィは、「日本へは初めて来ました。今日は東京タワーと池袋のデパートに行きましたが、とってもカラフルで活気のある町ですね。人々もとても親切でした」と語っています。今回の来日でも、オフもしっかり楽しんで下さいね、シュリデヴィ様。

後日、様々な媒体にインタビューが掲載されることと思います。テレビ出演もあるのでは、と思われますので、皆さん注目していて下さいね! 

 

ジャ・ジャンクー監督新境地『罪の手ざわり』

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賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の新作『罪の手ざわり』が、いよいよ来週から公開となります。初期の3作品『一瞬の夢』 (1998)と『プラットホーム』 (2000)、そして『青の稲妻』 (2002)では、故郷山西省にこだわり、汾陽(フェンヤン)や大同(ダートン)でくすぶる若者たちを描きました。続いてそこから北京に視点を移したジャ・ジャンクー監督は、『世界』 (2004)という北京の世界各国テーマパークを舞台にした作品を作ります。その後作品の舞台は三峡ダム建設中の長江へと移動し、『長江哀歌』 (2006)、『四川のうた』(2008)などが誕生します。そして2013年、中国大陸を縦断する物語集『罪の手ざわり』が完成するのです。

『罪の手ざわり』は、まず山西省の山村から話が始まり、次にはそこを通過していった男の出身地、四川省の重慶近くの農村へ、さらにはその東にある湖北省の町で、やはり長江沿いにある宜昌(イーチャン)へ、そして4番目に、南部広東省の東莞で物語が語られて南行の旅は終わるのですが、最後の最後にエピローグが追加されます。いずれも殺人(自殺、という自分自身を殺す殺人も含む)がからむ物語で、現代中国に溢れる「罪」が、実際の事件を元にして観客に呈示されていきます。殺人場面では残酷な描写もあり、これまでのジャ・ジャンクー監督作品とは、文字通り「手ざわり」を異にしています。

劇中では、以前の作品では「哀しみ」として描かれてきた中国人の心にわだかまるものが、「怒り」のエネルギーに転化して噴出し始めたのでは、と思わせられる場面が多々あり、ジャ・ジャンクー監督が一歩踏み出したという印象も受けました。ジャ・ジャンクー監督の新境地とも見える『罪の手ざわり』、見ていると現代中国で起きている様々な事件が頭の中をよぎっていきます。この作品の主人公たちの後ろには、同じような人々が列をなしているとさえ思えてくるのは、ウィグル族のテロ事件始め、「怒り」の噴出による殺人事件が今もたびたび起こっているせいかも知れません。

ではまずは、基本データからご紹介しましょう。

 

© 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO

『罪の手ざわり』

2013年/中国=日本/129分/原題:天注定・英語題名:A Touch Of Sin

監督・脚本:(ジャ・ジャンクー)
出演:趙涛(チャオ・タオ)、姜武(チァン・ウー)、王宝強(ワン・バオチャン)、羅藍山(ルオ・ランシャン)
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野

5/31(土)より Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

© 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO

最初の山西省の物語の主人公は、炭鉱夫の大海/ダーハイ(チァン・ウー)。彼が働く炭鉱は、以前は村の共同所有でしたが、今では都会に住む実業家で同級生のジャオのものになっています。ダーハイは、村長と村の会計係がワイロをもらい、ジャオに炭鉱を下げ渡したと思っており、憤懣やるかたない思いに駆られています。政府に訴えようとしたダーハイはジャオの手下にスコップで殴られ、その様子がゴルフに似ているからと「ゴルフさん」と呼ばれるようになります。その時ダーハイの中で何かがプツリと切れ、猟銃を肩にしたダーハイは、会計係の家、村長が参る丘の上の廟、そしてジャオの会社へと乗り込んでいきます...。

これは、2001年10月に山西省の村で起きた、14人銃殺事件に基づくものとか。山西省方言をあやつり、チァン・ウーが自身の中で殺人の意志を膨れあがらせていく生真面目な男を、モンスター的な形象で演じています。

© 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO

ダーハイが殺人の意思を固めた時、そばをバイクで通っていったのが、四川省重慶市郊外の農村出身の周/チョウ(ワン・パオチャン)。彼はその直前、山道で強盗を働こうとした若者3人を拳銃で撃ち殺したばかりでした。チョウは村にいる妻には出稼ぎと偽って、その実強盗行脚を続けている男。母親の誕生日に合わせて帰省したチョウは、妻が自分を疑っていることを知ります。その前で、線香代わりのタバコ3本に火を点けるチョウ。自分が奪った命への弔いです。そして村をあとにしたチョウは、街で再び強盗行為を、用意周到かつ冷酷に実行するのですが....。

この事件のモデルは、2012年8月に重慶で強盗事件を起こし、数日後に警官隊に射殺された男。冷静な上に簡単に人の命を奪うその酷薄さを、ワン・パオチャンが別人のような無表情さで演じています。

© 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO

続く宜昌の事件の主人公は、風俗サウナの受付嬢で、不倫を続けている小玉/シャオユー(チャオ・タオ)。不倫の相手は、広東省で工場長を務める中年男佑良/ヨウリャンで、二人の関係はもうかなり長く続いています。シャオユーはヨウリャンに妻と別れてほしいと迫りますが、彼はハッキリと返事しません。そんなある日、シャオユーの職場にヨウリャンの妻と親族が乗り込んできて、シャオユーを襲います。何とか逃れたシャオユーでしたが、そのあとやってきたしつこい客に迫られ、「私は受付係ですから」と言うのに娼婦扱いする客に、ついにシャオユーの中で何かが爆発してしまいます。気が付くと彼女は、ヨウリャンの持ち物で、駅のセキュリティで引っかかったため預かったナイフを握りしめていました....。

ジャ・ジャンクー監督夫人であり、彼のミューズでもあるチャオ・タオが、強い女でありながら弱さもいっぱい持っているシャオユーを好演しています。特に最後の殺人場面には、胡金銓(キン・フー)監督作『侠女』 (1970)の徐楓がオーバーラップします。それもそのはず、『罪の手ざわり』の英語題名「A Touch of Sin」は、『侠女』の英語題名「A Touch of Zen」から取られているのですから。しかし侠女シャオユーは、そのあと暗い夜道をトボトボと、母が働いていた工事現場に向かって歩き続けるのです....。

© 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO

第4話は、広東省を舞台にしたストーリーで、主人公の年齢がぐっと下がります。ヨウリャンが工場長を務める工場で働く、まだ十代の青年小輝/シャオホイ(ルオ・ランシャン)は、縫製中の友人と無駄話していて、友人の手に大怪我を負わせてしまいます。責任を取らされ、彼の分をただ働きさせられることになったシャオホイは、そこを飛び出して東莞市のナイトクラブに就職。コスプレ・ダンサー嬢のリェンロンと親しくなります。ですが厳しい現実を突きつけられてあえなく失恋、台湾系の工場勤務に鞍替えして働くことに。しかし、親からは金を催促する電話が入り、さらに傷つけた以前の友人が姿を現して、シャオホイは追いつめられます。その彼が取った道は....。

この事件は特定のモデルがあるわけではなく、東莞市の台湾系企業で2010〜2013年に相次いだ従業員の自殺に材を取っているのだとか。日系企業も多く進出している東莞市ですが、脆い青年たちの心の闇が山ほど潜んでいる土地でもあるのです。

そしてエピローグ、「玉堂春」の地方劇上演を見るシャオユーは、どう自分の罪と折り合いをつけたのでしょうか....。

© 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO

これらの事件の主人公と、山西省や長江で接していたのがジャ・ジャンクー監督作品でお馴染みのサンミンこと韓三明(ハン・サンミン)。その変わらず誠実なたたずまいは、観ている者をホッとさせてくれます。また、シャオユーに迫るサウナ客の役で、『一瞬の夢』などの王宏偉(ワン・ホンウェイ)も出演。彼らはジャ・ジャンクー監督作品にとって、それが監督の作品と証明するイコンのような存在です。新たな冒険を試みたジャ・ジャンクー監督ですが、古くからのジャ・ジャンクー監督ファンのために「お約束」を残してくれたのでしょうか。

昨年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『罪の手ざわり』、中国ではまだ公開されていないようですが、日本ではいよいよ5月31日(土)から公開です。がっしりと見応えのある作品をご希望の方は、ぜひお見逃しなく。

 

 

6月のマラヤーラム語映画上映会

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テルグ語映画の公開が決まり、ボリウッド映画だけでなく南インド映画にもがんばってほしいこの夏です。テルグ語映画上映会と並んで、日本で気を吐いているのがマラヤーラム語映画上映会。5月は何やら都合で上映会がなかったようなのですが、その代わり6月1日(日)に開催、さらにもう1回6月中に上映会があるようです。今回も、Periploさんから情報をお寄せいただきました。

『Mr.ペテン師』


(2014/マラヤーラム語/英語字幕付き/原題:Mr. Fraud) 予告編
 監督:B.ウンニクリシュナン
 主演:モーハンラール、デーヴ・ギル、ヴィジャイ・バーブ、ミヤ・ジョージ、マンジャリー・パドニス、シッディク
■日時:2014年6月1日(日)午後2:00〜
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza
■料金:大人1,900円
■字幕:英語字幕付き
■主催者:CELLULOID Japan 公式FB(英語/こちらから予約可能)

Periploさんによるご紹介サイトを見てみると、宮殿に眠っていた秘宝をめぐって、4組の相続人たちが争う中、凄腕のボス(モーハンラール)に率いられた窃盗団がその宝を狙う、というものらしく、何やら『オーシャンズ〜』シリーズか、韓国映画『10人の泥棒たち』をほうふつさせる作品のようです。ポスターは、上のものを除いて、これでもかこれでもかのモーハンラールのオンパレード。まあ大スターですからね〜。


今回は英語字幕付きとのことで、マラヤーラム語がわからない皆様にもお楽しみいただけると思います。「ボリウッド映画とは違うテイストの作品を配給してみたい」とお考えの配給会社様も、ぜひお運び下さい。カンヌよりも、インドよりも近いですよ〜、SKIPシティ。


 

邦題は『バルフィ!人生に唄えば』

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『Barfi!』の邦題が決まりました。『バルフィ!人生に唄えば』となり、6月2日から試写が始まります。本日、下のような試写状をいただきました。


8月TOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開となります。原作・脚本・監督はアヌラーグ・バス、主演はランビール・カプール、プリヤンカ・チョープラー、そしてイリアナ・デクルーズ。配給はファントム・フィルムで、藤井美佳さんの字幕です。現地版予告編はこちらをどうぞ。

チラシ等もこれになると思われる上のヴィジュアル、キャッチコピーがステキですね。そこにある通り、耳が聞こえず、言葉をしゃべることができない(正確に言うと、ひと言だけはしゃべることができる)バルフィ(ランビール・カプール)が主人公です。バルフィが一目惚れしてしまう美女シュルティ(イリアナ・デクルーズ)は、のちには夫となる婚約者がいるのにバルフィに引きつけられていき、ずっとバルフィと関わることになってしまいます。バルフィの幼なじみで大金持ちの一人娘ジルミル(プリヤンカ・チョープラー)は、幼女の心のままに大きくなった女の子。ジルミルもまた、バルフィの人生に深く関わってくるのです....。風光明媚なダージリンやコルカタなどを舞台に、3人の間でからまる赤い糸が描かれていきます。

監督であるアヌラーグ・バスは、バンコク・ロケを敢行した『殺人(Murder)』(2004)をヒットさせて注目され、韓国ロケによる『ギャングスター(Gangster)』(2006)と、続く『大都会の生活(Life in a... Metro)』(2007)で実力を認められました。大阪アジアン映画祭で上映されたリティク・ローシャン主演作『カイト』(2010)はアメリカとメキシコでロケしていましたし、海外で撮るのが好きな監督なのかも知れません。そのアヌラーグ・バス監督が、ムンバイを舞台にした『大都会の生活』に続き、東部インドにこだわって撮ったのが本作です。2013年の沖縄国際映画祭で上映され、その後ファントム・フィルムに買い上げられて公開の運びとなりました。

邦題は、ハリウッド・ミュージカルの傑作『雨に唄えば』(1952)を連想させますが、本作の中では古今東西の名作から引用されたシーンがいっぱい見受けられます。それで、『バルフィ!人生に唄えば』という邦題が付けられたのかも知れません。「これはチャップリン? そっちはジャッキー・チェン? こちらは北野武??」とシネフィルには堪えられない引用ぶりで、インド映画ファン以外の映画好きのハートもきっと掴むことでしょう。

今夏はいよいよ忙しくなりますねー。6月28日(土)公開の『マダム・イン・ニューヨーク』(シュリデヴィ、無事来日したそうです!)、7月26日(土)公開の『ダバング 大胆不敵』と『あなたがいてこそ』、8月9日(土)公開の『バードシャー テルグの皇帝』、そして8月公開という予定の『めぐり逢わせのお弁当』と本作『バルフィ!人生に唄えば』。それぞれのパンフレットも、美麗で、資料価値の高いものになる予定。皆さん、ボーナスが出たら「インド映画預金」をしておいて下さいね。今夏はインド映画が頂点取るぞ!!

<追記2014.5.30>

当初アップした時は、邦題を『バルフィ!〜人生に唄えば』と書いたのですが、正しくは『バルフィ!人生に唄えば』でした。本日配給会社のファントム・フィルムの方から、「”人生に唄えば”はサブタイトルではなく、『バルフィ!人生に唄えば』で正式タイトルとなっております。こちらに変更していただければ幸いです」というご連絡をいただきました。お詫びして訂正した次第です。と同時に、素敵なスチールもご提供いただきましたので、後日あらためて作品のご紹介をいたします。「バルフィ!」ファンの方は、楽しみにしてお待ち下さいね〜。

 

 


『マダム・イン・ニューヨーク』主演女優シュリデヴィ来日イベント<1>

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『マダム・イン・ニューヨーク』の主演女優シュリデヴィが5月28日(水)に来日し、本日29日(木)に在東京インド大使館でイベントが行われました。まずは美しいシュリデヴィの写真をどうぞ。イベントのご報告は一瞬お待ち下さいませ〜。

(つづく)

 

『マダム・イン・ニューヨーク』主演女優シュリデヴィ来日イベント<2>

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『マダム・イン・ニューヨーク』主演女優シュリデヴィの記者会見、トークショー、そして特別試写会が行われた5月29日(木)の駐日インド大使館。開場は3時10分だったのですが、少し早めに行ってみると、大使館前にはインド人二人組を始め、ちらほらとファンらしき方々が。シュリデヴィはもう到着しているだろうし、出待ちするにはあと数時間も....と気の毒に思っていたら、主催者側の暖かいご配慮により、門前にいた皆さんも最終的には中に入ることができ、2階席に案内されていました。よかったですね〜。

そしてほぼ予定通りに始まった第1部の来日記者会見。司会は花田景子さんです。さすが元アナウンサー、マダムとしての貫禄も十分で、甘い声でストーリーをまずご紹介。「ここ数年、インド映画が日本でもたくさん上映されるようになりましたが、インド映画の大スターがプロモーションで来日するのはきわめてまれなことです」と、今回シュリデヴィの来日がいかに大事件かを強調して、いよいよシュリデヴィが登場。ゴージャスなサリーに目を奪われます。


第一声は何と日本語! 「コンニチハ。オゲンキデスカ?」そして英語で、「皆様、ありがとうございます。日本に来られてとても嬉しいです。『マダム・イン・ニューヨーク』が日本で公開され、多くの皆様に見ていただけて、気に入っていただけることを願っています」とご挨拶。映画のタイトルを『English Vinglish』ではなく、ちゃんと『Madam in New York』と言ってらっしゃいましたよ。偉いですねー。英語タイトルを付けるとこういう利点もあるんだ、と思いました。

そしてお席に座り、司会者からの質問に答えていきます。最初の質問は、「ご結婚を機に家庭に入られて、今回は15年ぶりの映画出演とうかがっています。この映画に出演なさるにあたっては、何か素敵なエピソードがあったとうかがいましたが」というもの。

「私の夫はプロデューサーのボニー・カプールなのですが、夫とこの作品のプロデューサーであるバルキさんが親しくて、ある日彼からこう言われたんですね。”私の妻が監督しようとしている作品があるんですが、その脚本を奥さんに見てもらいたいんです”。それで、特に先入観もなく脚本を読んでみたところ、ぜひやってみたいと思ってしまいました。というのも、まるで私―夫と子供の世話をし、子供の学校のPTAに出席する、といった生活を送っている私に向けて書かれたかのような作品でしたから。それで出演して、こうして皆様の前に立っているわけです」


第2問は、「来日は二度目だそうですが、日本の印象は?」。

「最初の来日はもう20年前です。ほんの2日間だけで、ほとんど憶えていません。その時とは違って、今回は夫や2人の娘と一緒に来日しました。今日と明日の2日間は取材などで忙しいのですが、そのあとは観光をしたいと思っています。東京のことはいろいろと話に聞いているので、あちこち見て回りたいですね」


続いての質問は、「日本では今、”美魔女”という言葉がよく言われるんですが、シュリデヴィさんはまさに美魔女ですね。50歳とは信じられません。美を保つ秘訣は何なんでしょう?」 これは、みんなが聞いてみたい質問ですね〜。

「率直に言うと、日本に来て美しい人にたくさん出会ったので、私の方こそ聞いてみたいです。特に花田さんにお聞きしたいわ(笑)。私自身としては、”心の中で感じていることが外に出る”という信念を持っています。ですので、規則正しい生活をして、家族とのよい関係を保ち、心の状態をよく保っておくことでしょうか。それから、適度な運動をすることも必要ですね。まさしく、”No Pain, No Gain”です。あと、揚げ物はNGで、お水をたくさん飲むこと。いつもポジティヴで、ハッピーでいること、ですね」


この後、会場のマスコミ関係者からの質問となりました。トップバッターは「キネマ旬報」のOさんです(「キネマ旬報」には後日単独インタビューも掲載される予定。お楽しみに)。「15年ぶりにスクリーンでお姿を拝見できて幸せです。この15年間で、映画界が変わった点は?」

「変化はたくさんありましたね。現場の統率が取れ、とても仕事がしやすくなりました。以前は野外ロケだと、着替えは木の陰で、とかだったのですが(笑)、今は大型バンがあって、とても助かります。また、以前は1人のスタッフがあれもこれもやったりしていましたが、今はちゃんと担当が分かれていて、それぞれのパートにスタッフがいます。それに、脚本も撮影前にちゃんと台詞も書き込まれて仕上がっていますしね(笑)。あと、『マダム・イン・ニューヨーク』はすべて同時録音でした。台詞をあとで吹き込むということがなくなり、演技の質を高めることができてとてもいいと思いました」


続いて、映画ライターのSさんから、「主人公とご自分が似ているのはどんなところですか? また、全く違うところは?」という質問が。

「主人公シャシのキャラクターは、とてもシンプルで繊細。私自身母親なので、母としてのシャシの気持ちはよく理解出来ます。でも、シャシというキャラクターはすべての世代にアピールすると思います。子供も含めた若い世代も共感できると思いますし、中でも女性が強く共感できるキャラクターですね。この映画を見たある観客が、見たあと母親に電話して謝った、という話を聞いたのですが、その時は、この作品をやってよかった、と思いました」


「シネマ・ジャーナル」のKさんからは「インドも多民族の国ですが、こちらも多民族のニューヨークではどんな気持ちで撮影に臨まれましたか?」という質問が。「シネマ・ジャーナル」は特に女性映画に力を入れて紹介してくれる雑誌で、あとでKさんに聞いたお話によると、『マダム・イン・ニューヨーク』等インド映画公開が重なる今夏はインド映画紹介のミニ特集を企画中とか。楽しみですね。

「ゴウリ・シンデー監督は、撮影に入る前に長い期間ニューヨークでリサーチをしました。ですので、実際にロケを行う前に、どこで撮るか、どういうショットを撮るかといったことがすべて完璧に決まっていたのです。現場のスタッフも多くがニューヨークの人でしたので、とてもよく統率がとれていました。アメリカの撮影方法は時間厳守なんですね。もうあと1場面だけ、という状況でも、予定の時間が来たら、はい、撮影は終わり(笑)。こういうのもいいな、と思いました」


そして続いては、「ナマステ・ボリウッド」編集長のSさん。「この映画のあとに、ステージ・パフォーマンスもしてらっしゃいますね。映画での演技とステージのショーでは、どちらがお好きですか?」

「その2つは別物ですからね。映画撮影の時は、監督やスタッフといった少人数の前で演じるわけですし、それと大勢の前で演じるステージ・ショーとは全く違う世界です。ステージ・ショーでは大勢のファンに囲まれて演じますし、ファンの反応が舞台を盛り上げてくれます。こちらも私にとっては楽しいものですね」


そして最後の質問者は、フリーランスの映画ジャーナリストSさん。「週刊金曜日」によくインド映画の紹介を書いて下さる方です。「2つ質問があります。1.本作でアミターブ・バッチャン氏と共演してらっしゃいますが、久しぶりに共演なさってみてどうでしたか? 2.プロデューサーとしてのお仕事もしてらっしゃいますが、活躍が目立つ新しい女性監督たちをどのようにご覧になっていますか?」

「偉大な俳優アミターブ・ジーとの共演はいつも楽しいです。彼のプロフェッショナリズムには感銘を受けますね。この映画のプロデューサー、バルキさんが来て、あの役をアミターブ・ジーがやって下さると聞いた時にはとても驚きましたし、嬉しく思いました。この作品に特別な要素を加えて下さったと思います」

「女性監督の作品に出演するのは、今回が初めてでした。映画には性別は関係ないと思います。シンデー監督は自信に満ちていて、どういう作品にしたいのか、はっきりとしたヴィジョンを持っていました。今回彼女と仕事をしてみて思ったのは、女性監督とはコミュニケーションが取りやすく、仕事がしやすいということです。ですので、これからも彼女たちを応援して、一緒に映画を作って行ければと思っています」

あとはフォト・セッションとなり、昨日アップしたような美しいポーズを決めてくれました。もう少し、フォト・セッション時の写真を付けておきましょう。


「後方のテレビカメラに向かって、手を振るとかちょっと動いて下さい」という指示に、かわいく手を振るシュリデヴィ。ムービーのカメラが5台ほど入っていました。噂では、1台はNHKだとか。


ここでいったん休憩に入り、15分ほどして第2部が始まりました。司会は同じく花田景子さん。お召し替えして登場したシュリデヴィ、今度は真紅のレースのガーグラー・チョーリーです。


こちらも美しいですねー。腰の切り替えが続いている感じもするので、ロングドレスにドゥパッターの組み合わせなのかも知れません。


続いて、ディーパー・ゴーパーラン・ワードワー駐日インド大使と、本日のトークショーのお相手であるアグネス・チャンが登場。大使が歓迎のスピーチをします。


続いてが、よくぞ実現したと思わせられる安倍首相夫人安倍昭恵さんによる花束贈呈。司会者の話ですと、今年1月26日の共和国記念日に合わせてインドを訪問をした安倍首相夫妻が、インドで歓迎を受けたことに対するお返しなのだとか。その時インドでは日本映画祭が開かれ、インドの映画人から花束が贈られたそうで、その答礼の意味で首相夫人の登壇となったそうです。警備とか大変だったでしょうねー。

 

シュリデヴィと安倍首相夫人のツーショット。安倍昭恵さん、結構背がお高くて、スタイルがいい方でした。韓流に続いて、印流にもハマっていただきたいものです。


司会の花田景子さんも加わってのフォト・セッション。


で、安倍首相夫人と大使が客席に退かれ、シュリデヴィとアグネス・チャンによる約30分のトークショーが始まりました。司会の花田景子さんがお二人にいろいろ聞いていくのですが、『マダム・イン・ニューヨーク』に関する質問というよりは、映画にかこつけてお二人の妻、主婦としての側面にスポットをあてた質問が続きます。曰く、「作品の中でシャシが”もし私が料理上手でなかったら、あなたは私と結婚した?”と尋ねますが、皆さんのご家庭ではどうですか?」 「ご主人のここが好き、という点は?」 「結婚以来一番嬉しかった贈り物は?」などなど。これにはアグネスが、「今日は映画のことを聞かれると思って、昨日見直してメモ取ってきたのに」とこぼすほど。


シュリデヴィは時々ウィットをまじえながら、「私が料理上手だから私と結婚したの?なんてことは、私は夫に聞きません。だって、私は料理が下手だからです(笑)。でも、夫は、私が家で彼を待っているということ、彼をすごく愛していることを知っているので、ちゃんと家に帰ってきてくれます」 「夫の好きな点はいっぱいあって、答えるのが難しいです。夫は大黒柱となって、私たちを支えてくれています。外ですごいストレスがあっても、それを家に持ち帰ったりしませんし、私たちのためなら何でも一生懸命にやってくれますね」と答えていました。


「結婚以来もらって一番嬉しかったものは? サプライズは?」という問いには、「サプライズではないのですが...二人の娘、ジャーンヴィーとクシーですね」というグッとくるお答えが。また、「映画の中ではシャシの夫は朝起きるとまず”チャイ!”とシャシに頼みますが、シュリデヴィさんのお宅でもそうですか?」という質問には、「むしろ反対ですね。私は朝起きるのが遅いので、私の方が”チャイ作って〜”と言っています」という飾らないお答えが返ってきました。


アグネス・チャンの答えもユーモアがあって面白かったのですが、あまりに長くなるので割愛してしまいました。ごめんなさい。最後に花田景子さんが、「私事ですが、今日は実は結婚記念日で、これから親方と2人でデートです」と言うと、すかさずアグネスが記者たちに向かい、「皆さん、付いて行かないようにね」と言うなど、とっても頭の回転の速い方でした。「シャシが自分の中で輝いているところを見つけたように、この映画を見て、皆さんも自分の輝いているところを見つけましょう」とアグネスが締めくくってくれました。


その後、特別試写会が行われたのですが、その合間の休憩時間には、銀座のインド料理店ダルマサーガラのラッドゥーと、もう一つ、別のインド料理店が作った別種のラッドゥーが振る舞われました。ダルマサーガラのラッドゥーは本当においしくて大満足。その後の映画が2倍楽しくなりました。その時ロビーで、シュリデヴィのご主人、ボニー・カプール氏のお姿を見つけました。スター、アニル・カプール(『スラムドッグ$ミリオネア』)とサンジャイ・カプール(『たとえ明日が来なくても』)のお兄さんでもあります。


本日30日(金)は取材予定がぎっしりとのことですが、明日からほんの少しだけ、日本の休日を楽しんで下さいね、カプール家の皆々様。美しい女神(デヴィ)の日本来臨で、『マダム・イン・ニューヨーク』の公開に一段と弾みがつくことでしょう。本作は6月28日(土)から、シネスイッチ銀座、シネマイクスピアリ、名演小劇場で公開、その後は全国の映画館で順次公開となります。


公式サイトはこちらです。公式FBはこちらで、テレビ登場などが決まればこのFBにアップされるのでは、と思います。昨日おいでになれなかった皆様も、楽しみにしていて下さいね。

 

『ダバング 大胆不敵』の日本版予告編参上!

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インド映画の話題が次から次へと続きますが、サルマーン・カーン主演『ダバング 大胆不敵』の日本版予告編も公式サイトにアップされました。インド版予告編とはひと味もふた味も違った予告編になっています。こちらからまずはご覧下さい。

「ガチで戦う警察官」「イカれた正義を見せてやる」等々、拙ブログ「なりきり『ダバング 大胆不敵』キメ台詞はこれだっ!!」で使いたいと思っていた藤井美佳さんの名訳があれこれ入っていますね。後日、また解説を加えながら、皆様にこれらキメ台詞を憶えていただこうと思います。しかし、この予告編を見ているだけでも、「♪ ウルウル・ダバング」の歌と、「♪ ムンニー・バドナーム・フイー」の歌はすっかり耳タコになってしまいますね。

ヒロインの顔には馴染みがない方も多いかと思いますが、ソーナークシー・シンハーは60・70年代の人気男優シャトルガン・シンハーの娘。シャトルガン・シンハーはアクション俳優としてならした人で、名前に引っかけて”ショットガン・シンハー”と呼ばれたりしました。パパ、シャトルガン・シンハーの顔も付けておきましょう。

Photo by R. T. Chawla

主な主演作には、『白い巨象(Safed Haathi)』 (1977)、『ヴィシュワナート(Vishwanath)』 (1978)、日本でも映画祭上映された『黒いダイヤ』(1979)、そして同じくアミターブ・バッチャンと共演した『友情(Dostana)』 (1980)などがあります。ちょっといかついパパ、シャトルガン・シンハーからソーナークシーのような美女が生まれたのは、お母さんのプーナムさんが元女優の美しい人だから。でも、パパのシャトルガンも多才な人で、「フィルムフェア」誌に自分のページを持っていたりします。政治家でもあり、映画人として初めて大臣に就任した人、とまあ、ソーナークシー・シンハーはセレブの娘なんですね。

ソーナークシー・シンハーはこの2010年の作品『ダバング 大胆不敵』がデビュー作なのですが、その後『乱暴者ラートール(Rowdy Rathore)』 (2012)や、日本でも映画祭上映された『ターバン魂』 (2012)などヒットを次々と放ち、たちまちボリウッドのトップ女優に肉薄する位置に歩を進めました。顔立ちが古典的美人顔なので、昔ながらのテイストの作品にはぴったりで、今やひっぱりだこ。その魅力が、『ダバング 大胆不敵』でも堪能できます。

『ダバング 大胆不敵』の公式サイトはこちら、公式FBはこちらです。明日は”業界初!”とうたったマサラ上映方式によるマスコミ試写があり、私も盛り上げ役の1人として参加させていただく予定です。真面目な記者、ライターの皆さんがノって下さるか、ちょっと心配ではあります.....。

 

 


6月のテルグ語映画上映会のお知らせ

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先日のマラヤーラム語映画上映会に続いて、テルグ語映画の上映会もがんばっています。Periploさんから数日前にお知らせいただいていたのですが、アップするのが遅くなりました。ごめんなさい。

『我ら』


(2014/テルグ語/英語字幕(予定)/原題:Manam) 予告編
 監督:ヴィクラム・クマール
 主演:アッキネーニ・ナーゲーシュワラ・ラーオ(ANR)、ナーガールジュナ、ナーガ・チャイタニャ、サマンタ・ルス・プラブ、シュリヤー・サラン

■日時:2014年6月7日(土)午後2:00〜
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ・彩の国Visual Plaza
■料金:大人1,900円(予約)/2,000円(当日)
■字幕:英語字幕付き
■主催者:Indoeiga.com (こちらから予約出来ます)

■Periploさんによるご紹介&予約ご案内サイト
■カーヴェリ川長治さんによるわかりやすいご紹介サイト

本作は、今年2014年1月22日に90歳で亡くなった、アッキネーニ・ナーゲーシュワラ・ラーオ(ANR/1923.9.20生まれ)の最後の出演作です。テルグ語映画ではNTR(N.T.ラーマラーオ)と並ぶ代表的な俳優で、75年の俳優人生で出演した作品は250本以上にのぼるとか。本作の撮影開始後に結腸ガンであることがわかり、昨年10月にそれを公表したあと手術を受けたのですが、最終的には心臓マヒで帰らぬ人となりました。手術後の回復期に本作のアフレコも自ら進んで済ませたそうで、そういったエピソードもPeriploさんのブログに紹介されています。


そのANRの息子が、1980年代後半にデビューし、たちまちテルグ語映画のトップ男優となったナーガールジュナ。1990年代の活躍ぶりから見るとちょっとペースが落ちましたが、近年も様々なヒーロー役をこなしている二枚目俳優です。さらに、このナーガールジュナの息子がナーガ・チャイタニャ。つまり、本作はANRが息子&孫と共演した遺作なのです。


ストーリーもこの三代共演を意識した、ちょっとややこしい輪廻転生物語とか。とはいえ、2人の人気女優サマンタ・ルス・プラブ(『マッキー』)とシュリヤー・サラン(『ボス その男シヴァージ』)も巻き込んで、ナーガールジュナとナーガ・チャイタニャにはクラシカルな前世シーンとモダンな現在の両方を演じさせるという、1本で二度おいしい作品にもなっています。その象徴みたいな、メイキングも入ったソング・シーンはこちらです。


さらに、このお方などもカメオ出演なさっているとか。ボリウッド映画ファンにとっても見逃せませんね。どうも梅雨入り期間中となりそうな土曜日の6月7日、テルグ語の文字通りの”ファミリー映画”でうっとうしさを吹き飛ばすのもいいかと思いますよ〜。 

 

『バルフィ!人生に唄えば』のアヌラーグ・バス監督のこと

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『マダム・イン・ニューヨーク』は主演女優シュリデヴィの来日フィーバーで盛り上がり、『ダバング 大胆不敵』はマサラ試写で大フィーバー。となると、今夏公開されるあと4本の作品、ヒンディー語映画『めぐり逢わせのお弁当』と『バルフィ!人生に唄えば』、そしてテルグ語映画『あなたがいてこそ』と『バードシャー テルグの皇帝』も、もっと力を入れてご紹介していかないといけないですね〜。ということで、まずはヴィジュアル素材を早々にいただいた『バルフィ!人生に唄えば』からご紹介していきましょう。(他作品の宣伝をご担当の各社様、お願いしているヴィジュアル素材を早く下さいませ〜)

『バルフィ!人生に唄えば』 公式サイト
2012年/インド/ヒンディー語/151分/原題:Barfi!


(C)UTV Software Communications Ltd.

監督:アヌラーグ・バス
出演:ランビール・カプール、プリヤンカ・チョープラー、イリアナ・デクルーズ
配給・宣伝:ファントム・フィルム

8月より TOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開

公式サイトがまだ本格始動していませんが、公式FB、そして公式ツイッターはエンジン始動済み。早くも中身の濃い書き込みが躍っています。

本作のストーリーはすでにご存じの方が多いかと思いますが、耳が不自由でそのため話すこともできない青年バルフィ(ランビール・カプール)が主人公です。彼はインド北東部の避暑地ダージリンで、お金持ちの家の運転手である父親と2人暮らし。障がい者ではあっても、とても陽気でいたずら好きのバルフィは、ダージリンにやってきた良家の娘シュルティ(イリアナ・デクルーズ)に恋をしてしまいます。あの手この手でアタックし、シュルティもだんだんとバルフィに惹かれていきますが、実はシュルティにはすでに婚約者がおり、恋の成就は難しそうです。

そんな時、バルフィの父が倒れ、多額の治療費が必要になってしまいました。バルフィは銀行強盗(!)やらいろいろ試してみたあげく、父が勤めていたお金持ちの家の一人娘、ジルミル(プリヤンカ・チョープラー)を誘拐して身代金を取ろうとします。ジルミルにも障がいがあって、幼い時施設に預けられていたりしたため父母とはしっくりいっていないのですが、誘拐事件をきっかけにジルミルはバルフィを慕うようになってしまいます。そしてバルフィが彼女を解放したあともジルミルは家には帰らず、結局バルフィについてコルカタへと出てきてしまいます。コルカタには結婚したシュルティがいて、3人は再会するのですが...。

(C)UTV Software Communications Ltd.

上の写真が、美しいイリアナ・デクルーズ演じるシュルティですが、物語は老年の彼女のモノローグから始まり、彼女の回想によってほぼ進行していきます。回想があっちへ飛び、こっちへ飛びするのでちょっとわかりにくいものの、場面をパッチワークのようにつなぐことで、バルフィの魅力とジルミルのいじらしさが観客をどんどん魅了していく仕掛けになっています。さらにもう1人の狂言回しとして、バルフィを捕まえようとするダージリンの警部(ソウラブ・シュクラー)も加わり、風変わりな物語が転がっていくというワザあり!の1本です。

この複雑な脚本を書き上げ、監督したのがアヌラーグ・バス。生年月日がウィキにも載っていないので年齢がわからないのですが、おそらく40歳ちょっとぐらいではと思います。現在はチャッティースガル州になっている、ビラーイーという町のベンガル人家庭に生まれ、父母の演劇活動を見て育ったそうで、その後コルカタや中部インドのジャバルプルで学び、ムンバイ大学で物理学を専攻。でも大学時代にテレビや映画の現場で働いたことでカメラマンを志し、やがて監督を目指すことになります。(下の写真はWikipedia "Anurag Basu"より)


テレビ畑でキャリアを積んだあと、劇映画の監督としてアヌラーグ・ボース名でデビューしたのが2003年の『何かはある(Kucch To Hai)』。続いて同年にジョン・アブラハム主演の『影(Saaya)』を監督。『影』はあまり話題にならなかったのですが、翌年の作品『殺人(Murder)』は大ヒットします。これは、ムケーシュ・バット、マヘーシュ・バット兄弟の製作になるもので、低予算ながらユニークでアクの強い作品を世に出してきたムケーシュ・バットの手腕が発揮された作品でした。『殺人』はバンコクを舞台にして、夫がいながら再会した昔の恋人(イムラーン・ハーシュミー)との関係を復活させてしまう美貌の妻(マッリカー・シェーラーワト)、という不倫ストーリーに、妻を疑う夫というサスペンスを加味して、ひとときも目が離せない作品に仕上がっています。この『殺人』は製作費の7倍を稼ぐという大ヒットとなり、アヌラーグ・バスの名は一躍注目されるようになりました。


そしてその2年後、2006年には、第4作『ギャング(Gangster)』がまたまたヒットします。こちらもやはり、ムケーシュ・バットとマヘーシュ・バット兄弟が製作した作品です。ムンバイのギャング組織から逃れてソウルへ渡った男(シネーイ・アフージャー)と、彼がギャング組織を離れる原因となった女(カングナー・ラーナーウト)、そして彼女の心に入り込んでくる男(イムラーン・ハーシュミー)との、緊迫した関係が秋の韓国を舞台に描かれます。こちらも製作費の倍という興収をあげ、アヌラーグ・バスがコーヒーショップで発見したいという女優カングナー・ラーナーウトをスターに押し上げました。(実はシネーイ・アフージャーもこの作品でスターダムに登るのですが、2009年にレイプ事件で訴えられ、その後落ち目になることに...)


続く2007年の作品『大都会...の生活(Life in a...Metro)』も注目されます。会社員の青年(シャルマーン・ジョーシー)は同僚の女性(カングナー・ラーナーウト)に片思い中、でも彼女は上司(K.K.メーノン)と不倫関係にあり、満たされぬ上司の妻(シルーパー・シェーッティー)は街で出逢った男(シネーイ・アフージャー)に惹かれていく。さらに妻の妹(コンコナー・セーン・シャルマー)は中年男(イルファーン・カーン)と見合いをするものの、本当は別に好きな男がいて....と、まるでロンドのような恋愛模様が展開していく作品ですが、それぞれに見応えのあるエピソードになっていて、俳優たちの達者な演技と相まって魅力的な作品に仕上がりました。アヌラーグ・バスはここでバット兄弟から離れて、名プロデューサーのロニー・スクリューワーラーと組むことになります。また、『大都会...の生活』では、作曲家プリータムを中心とするバンドが主人公たちと同じ画面に現れ、街角などで挿入歌を歌うという珍しい手法が取られていて、これも「インド映画初」と注目されました。

その手腕がプロデューサー兼監督のラーケーシュ・ローシャンに買われて、リティク・ローシャン主演作を任されたのが、2010年のヒット作『カイト』です。2011年の大阪アジアン映画祭でもクロージング作品として上映された『カイト』は、全編をアメリカとメキシコでロケ、ヒロイン役にメキシコ人女優を起用した異色作です。そのほかカングナー・ラーナーウトも出演し、情熱的なストーリーとリティクの魅力で興収第9位というヒット作となりました。


そして2012年に登場したのが、『バルフィ!人生に唄えば』です。製作はアヌラーグ・バス自身に加えて、ロニー・スクリューワーラーとUTVの社長シッダールト・ロイ・カプール。起用スターもランビール・カプールとプリヤンカ・チョープラーという超人気者に、ボリウッドでは新人に等しいながら、南インド映画では経験を積んでいる美女イリアナ・デクルーズという豪華ラインアップ。しかしながら、ランビールとプリヤンカを単なる美男美女役ではなく、ひとクセもふたクセもある主人公に設定したのがアヌラーグ・バス監督の面目躍如というところです。ランビールとプリヤンカの演技力全開の本作は、興収第10位のヒットとなりました。

また、『バルフィ!人生に唄えば』では、『大都会...の生活』と同じように、ローカルなバンドが画面に登場してテーマ音楽を奏でます。このセルフ・パロディのほか、過去の作品にオマージュを捧げたシーンが次々と登場し、アヌラーグ・バス監督ってずいぶんシネフィルだったのね、とちょっと目を見張る思いです。まだまだ引き出しを持っていそうなアヌラーグ・バス監督、これからどういう作品を見せてくれるのか非常に楽しみな人です。『バルフィ!人生に唄えば』で、ぜひ彼の手腕を堪能して下さいね。

<追記>ブログで訴えたせいか、早速テルグ語映画2本の宣伝を担当してらっしゃるオムロの担当者の方から、『あなたがいてこそ』と『バードシャー テルグの皇帝』の画像が送られてきました。ありがとうございます! 張り切って宣伝に務めますので〜。


<緊急告知!>『マダム・イン・ニューヨーク』のシュリデヴがテレビに登場

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先日来日したそれはそれは美しいマダム、『マダム・イン・ニューヨーク』のシュリデヴィがテレビにも登場することになりました。明日、6月10日(火)朝、日本テレビの「スッキリ!」(8:00〜10:25)です。昨年の「ボリウッド4」の時も力を入れた紹介をして下さった日テレさんの「スッキリ!」。今回は『マダム・イン・ニューヨーク』宣伝担当の方のお話によると…

「WEニュース」のコーナーでシュリデヴィにクローズアップします! 勿論、映画の紹介もされますが、「シュリデヴィってどんな人?」的な内容が濃いです。


「私って、どんな人??」

だそうでございます。楽しみですね〜。『マダム・イン・ニューヨーク』のFBにも告知されています。おっと、このお断りを入れておかなくちゃ。「やむを得ない事情により、放送内容が変更になる場合もございます。悪しからずご了承下さい」

「スッキリ!」の公式サイトに明日の予定が出るのはいつかしら? とりあえずBDで録画予約しておくことにしましょう。ということで、『マダム・イン・ニューヨーク 日テレ』のお知らせでした。

 

 

テルグ語映画美麗チラシできました

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7月末から8月にかけて公開されるテルグ語映画2本の本チラシができました。

『バードシャー テルグの皇帝』(2013)は昨日試写を拝見したのですが、いやー、もう、アクション、コメディ、親子情愛ドラマ、恋愛、ソング&ダンスシーン等々がテンコ盛りどころか、テンコ超大盛り状態。「あなたはどのNTRジュニアがお好き?」というショーケースみたいな作品でした。なつかしいマニラトナム夫人スハーシニもヒーローの母親役で出ていて、ヒンディー語映画の悪役の面々も、ムケーシュ・リシ(ヒーローの父親役)やサヤージ・シンデー(警察幹部役)のようないい役から、やっぱり悪役のケリー・ドルジー(ラーラー・ダッターの元恋人。いつの間にあんな長髪に?)やアーシシュ・ヴィデャールティー(『バルフィ!人生に唄えば』のジルミルの父親役)などなどまで、濃い顔がこれまたコテコテのテンコ盛り。ちょっと胸焼けを起こしてしまいました。最後の方で、すっごく爽やかな方がゲスト出演していて、それでだいぶ持ち直しましたけど(笑)。

チラシはこちらです。公式サイトはこちらをどうぞ。

一方『あなたがいてこそ』(2010)は、とっても上出来のコメディ・ドラマ。脚本がしっかりしていて見応えがありました。惜しむらくは、ヒーロー役のスニールにいまいち華がなく、ヒロイン役のサローニがとってもかわいいだけに、恋愛パートはチグハグ感が漂います。でも、さすが大人気コメディアンだけあって、スニールのコメディ演技は抱腹絶倒の芸達者ぶり。対する悪役の面々、家長役のナジニードゥにその息子役のスプリートやヴェーヌゴーパールらが上手な演技を見せてくれ、スニールの演技をしっかりと受けてくれて、ご覧になって損はない秀作に仕上がっています。これなら、ボリウッドが『ターバン魂』としてリメイクするはずだわ〜、と大納得です。

チラシはこちらです。公式サイトはこちらをどうぞ。


チラシに使ってあるヴィジュアルはソング&ダンスシーンばかりで、しっかりしたドラマの各シーンが出ていず不満が残ります。もっと詳しく本作をご紹介したいため、実は今宣伝会社さんにいいヴィジュアルをもらおうと粘り強く交渉中。『バードシャー』ともども、ピッタリのヴィジュアルを使ってご紹介したく思いますので、本格的なご紹介は今しばらくお待ち下さいね。

あ、申し遅れましたが、字幕の担当は『バードシャー テルグの皇帝』が西村美須寿さん、『あなたがいてこそ』は藤井美佳さんで、テルグ語の監修はどちらも茨城大学の山田桂子先生が腕を振るっておられます。藤井美佳さんは皆さん『タイガー 伝説のスパイ』(2012)等でよくご存知だと思いますが、西村美須寿さんもインド諸言語のご専門ではないものの、1998年公開のマニラトナム監督作品『ボンベイ』(1995)を手がけるなど、インド映画とのお付き合いは古い方です。よくできた字幕で、久々に日本上陸したテルグ語映画2本を楽しんで下さいね〜。


『めぐり逢わせのお弁当』<その1>サージャン

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『めぐり逢わせのお弁当』の公開が「8月」と決定しました。東京での公開劇場は、『マダム・イン・ニューヨーク』と同じくシネスイッチ銀座です。シネスイッチ銀座はスクリーンが2つあるのですが、現在は2(182席)で午前と午後にわけて上映中の2作品『チョコレートドーナツ』と『ブルージャスミン』がヒット中。1(273席)は6月27日で現在上映中の作品が終わり、28日(土)からは『マダム・イン・ニューヨーク』が始まるのでは、と思われます。実は、『マダム・イン・ニューヨーク』のガウリ・シンデー監督はウッディ・アレンが大好きだとか。ウッディ・アレンの監督作『ブルージャスミン』と同じ劇場で並んで上映されるとわかったら、とっても喜ばれるのではないかと思います。

そして、『ブルージャスミン』の配給会社ロングライドが配給するインド映画が、『めぐり逢わせのお弁当』。『マダム・イン・ニューヨーク』より1ヶ月ちょっと遅れて公開、ということで、インド映画2本立て興行@シネスイッチ銀座が実現しないかしら、と秘かに願っている次第です。それなら夏休み期間中に、東京に来て2本見て帰ろう、と思う方がいるかも知れませんからね。

というわけで、公開時期が決まったこの機会に、『めぐり逢わせのお弁当』を正式にご紹介しておきましょう。


(C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

『めぐり逢わせのお弁当』 公式サイト(予告編すぐ始まります) 公式FB

2013年/インド=フランス=ドイツ/英語・ヒンディー語/105分/原題:Dabba/英語題名:The Lunchbox

 監督:リテーシュ・バトラ

 出演:イルファーン・カーン、ニムラト・カウル、ナワーズッディーン・シッディーキー 

 提供:東宝、ロングライド
 配給:ロングライド
 パブリシティ:アンプラグド

8月より シネスイッチ銀座ほか全国公開 

(C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013

この作品には、主人公が3人います。今日はその1人、サージャン(イルファーン・カーン)について少し詳しくご紹介したいと思います。

サージャンはある会社に勤める初老の男。その会社には35年勤務し、間もなく定年を迎えようとしています。会社はどうやら保険会社らしいのですが、サージャンはそこの会計係として、保険請求に関する査定を長らく担当してきました。机やその回りには古ぼけた書類が積み重ねられ、コンピュータなど影も形もない旧弊な職場。サージャンは左手で電卓をはじき、査定金額を確定するといった地味な仕事をずっと続けてきたのです。

(C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

そんなサージャンに、その日、2つの珍しい出来事が起こります。ひとつは、上司がサージャンの後任者としてアスラム・シャイク(ナワーズッディーン・シッディーキー)という男を連れてきたこと。サウジアラビアで会計主任として働いていたというシャイクは、サージャンと引き継ぎをするために少し前倒しで雇われ、その日の顔合わせとなったものです。やる気満々のシャイクに対し、サージャンは複雑な思いを抱きます。そのせいで、引き継ぎもなんのかんのと先延ばしするのです。

もうひとつの出来事は、配達されてきたお弁当がいつもの食堂のものではなかったこと。弁当袋は同じように見えたため、昼休みに食堂で袋から出したサージャンでしたが、金属の4段重ねのお弁当箱はいつもと違ってぴっかぴか。さらに、中に入っていた料理も手の込んだものでした。いつもなら、アールー・ゴービーと呼ばれるカリフラワーとじゃがいものカレーなのに、野菜の炒め物風カレーにスパイスの効いたダール(豆のスープ)、そしてライスとチャパーティー(薄焼きパン)。チャパーティーもパサパサではなく、しっとりとおいしそうでした。料理人が変わったのか、と首を捻りながら食べたサージャンでしたが、あまりのおいしさにきれいに完食してしまうのです。

(C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

その空のお弁当箱が主婦イラ(ニムラト・カウル)の元に戻り、「いつもは残す夫が完食してくれた! 愛情一杯のお弁当の奇跡だわ!」と、夫の無関心ぶりに悩んでいた彼女を喜ばせます。でも、すぐに夫が食べたのではないことがわかり、そこからイラとサージャンの交流が始まるのです。お弁当を通じてイラとの手紙のやり取りを始めたサージャンでしたが、本当は人嫌いの偏屈者。仕事は確かなので上司の信頼はあついものの、職場ではほとんど口をきかず、冷たい心の持ち主と思われています。近所の子供たちにも冷ややかに接し、自宅に入ったボールすら取ってやらない始末。だいぶ前に妻を亡くしてからは、特に人嫌いの傾向が強まったようです。そんなサージャンが、イラのお弁当&手紙のマジックと、お調子者シャイクのマジックとで少しずつ変化していくのが、本作の見どころです。

その変化を、イルファーン・カーンが実に繊細な演技で見せてくれます。セリフも動作も最小限なのですが、目線や額のしわ、なにげない動作などでサージャンの心持ちを十分すぎるほど伝え、観る者に彼の心の波動を伝えてくれるのです。イラやシャイクと対照的に、内へ内へとこもっていくサージャンのかたくなな心をたっぷりと見せ、そして知らないうちにそれが溶けていっていた様子を、また自然な演技で教えてくれる....。これまでも演技巧者として名高かったイルファーン・カーンですが、『めぐり逢わせのお弁当』では演技を超えた何かが彼に乗り移っているようです。

(C)AKFPL, ARTE France Cinema, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm - 2013 

それにしても、なぜ「サージャン」なのか? 彼の名前はサージャン・フェルナンデスと言うのですが、「フェルナンデス」という姓からは、おそらくゴア出身か、ゴアがルーツのキリスト教徒であろうという想像がつきます。ムンバイでの住居もバンドラ地区で、ここはキリスト教徒が多く暮らす下町です。クリスマス・シーズンになると、それぞれの家の前に大きな紙張りの星がつるされたり、街角にベツレヘムの馬小屋がしつらえらえて、幼子キリストやマリア、ヨセフの人形が飾られたりする町なのです。ですから多分キリスト教徒であろうとは思うのですが、ファースト・ネームが「サージャン」というのが解せません。

「サージャン」とは、ヒンディー語で「愛しい人、夫、恋人」時には「神、最高神」といった意味を持ちます。キリスト教徒の名前どころか、ヒンドゥー教徒の名前としてもあまり見かけない名前です。よく出てくるのは映画の挿入歌で、『何かが起きてる』(1998)の中でも「サージャン・ジー・ガル・アーエー((花嫁の)夫どのが家にやってきた)」というがあります。また、1991年にヒットした映画では、『サージャン 愛しい人』というそのものズバリの作品もあります。サンジャイ・ダット、サルマーン・カーン、マードゥリー・ディークシトが主演したこの映画は、日本でもNHKで放映されたことがありました。その中の主題歌は『めぐり逢わせのお弁当』でも使われているのですが、まさかこれを使いたいがために主人公の名前を「サージャン」にしたとも思えず....。リテーシュ・バトラ監督に、ぜひとも聞いてみたいところです。

映画をご覧になって、「サージャン」のネーミングの謎が解けた方は、ぜひお教え下さいね。では、しばらくしたら今度は「<その2>イラ」のお弁当をお届けしますので、当分の間は公式サイト公式FBで本作をお楽しみ下さい。

 

 

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